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海のひつじを忘れないようです
249
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 21:54:18 ID:vG2lH35Y0
2
「あなたに頼みたいことはひとつだけ。向こうへもどったら、
このノートに書かれた内容をすべて世間に公表してほしい」
この時をどれだけ待ち侘びたことだろう。
私がここへ来てから、どれだけの月日が過ぎ去ったのか。
長くここに居過ぎたせいで、もはや時間の概念が失せている。
次々と消えていく同胞を横目に、老いる事も成長することもなく、
ただただ書き続けてきた日々。まるでそう、
魔導書をつづることだけに執心した魔女、そのもののように。
魔女と呼ばれた、私。
「この森を抜けたその先に、この幽世と現し世との境界がある。
あなたが生きるべき現実へと架けられた橋が」
指を差し、彼に進むべき方向を示す。
森は深く暗く、目の前に潜むは闇しかないように思える。
しかしその先には、必ずある。この停滞した死の世界から逃れ、
生へと至るべく開かれた道が。
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