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海のひつじを忘れないようです

244名無しさん:2017/08/21(月) 21:50:30 ID:vG2lH35Y0
ここまで話して初めて、ギコの顔に表情が現れた。
けれどギコの心中へ浮かんだそれは、決して良い感情ではなかったのだろう。
何かを歯噛みするような苦悶の顔のまま、ギコは目を伏せている。

「その誰かを、思い出せない?」

ギコはうなづかなかった。否定もしなかった。

「あたしもさ、誰かに会おうと思ってここに来たんだ。
 知らないはずなのに、知ってる誰かをさ」

努めて明るく、茶化すように話をする。

「なんだかこれってさ、ジョルジュが鳴き真似する動物みたいだよな。
 ほんとはいないはずなのに、なんだかいるような気がして、
 実はほんとにいたんじゃないかって思い込みそうになるとこなんか、さ」

ギコがあたしを見つめていた。その目はわずかにうるんでいて、
あたしは自分が見当違いのことを言っているとその時ようやく気がついた。

ギコの口が、ためらいがちに、開いた。
ちがう、と。


ギコが、いった。
大切な人が誰だったのか、思い出せないんだ、と。


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