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海のひつじを忘れないようです
238
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 21:47:57 ID:vG2lH35Y0
「ハイン!」
叫んで手を伸ばすナベの姿が、斜めに傾いていた。
違う。斜めになっているのは、あたしだ。あたしは倒れかけていた。
いけない、踏ん張らなきゃ。
とっさに足へと力を込め――ようとしたが、それは叶わなかった。
足が、動かない。
そう思った直後、あたしは肩をしたたか地面に打ち付け倒れていた。
みんなの駆け寄ってくるぱたぱたとした足音が、重層的に鳴り響いている。
「ハイン、大丈夫か」
「ハイン、平気か」
心配して掛けてくれた声に、しかしあたしは反応できずにいた。
声そのものは聞こえていたけれど、言葉の意味が脳まで届いてこない。
あたしの意識は、自分の足。動かなかった足に集中していた。
無意識に、手を伸ばしていた。足に、触れていた。
足を、動かせた。
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