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海のひつじを忘れないようです

230名無しさん:2017/08/21(月) 21:43:27 ID:vG2lH35Y0
           三章 踊るひつじ


               1

「おはよう、ハイン」

「……おはよう、ナベ」

目を覚ましたら、ナベの顔があった。いつもと同じように。
そしてこれもまたいつもと同じように、ナベの指があたしの目元をぬぐった。
その指先に、水滴が付着している。その水滴の曲面に、
丸く歪曲したあたしの顔が映っていた。目元を腫らした、あたしの顔。

「あたし、また、泣いてた?」

「いいんだよ」

ナベの顔がさらに近づく。額が、鼻が接触する。

「あなたが見たのはただの夢。思い出すことなんて、何もない」


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