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海のひつじを忘れないようです

228名無しさん:2017/08/21(月) 21:42:33 ID:vG2lH35Y0



「起きろ、――」

星のない曇天の夜の下、ぼくは肩を揺られて目を覚ました。
そこここからかすかな寝息が聞こえてくる。まだ、深夜だ。
起こされたばかりのぼくもまだ眠気が取れず、意識は朦朧としていた。

が、直後。ぼくの曖昧だった意識は、即座に覚醒した。

そこには、小旦那様がいた。片膝をついた格好で、そこにいた。
別におかしなところのない、いつもの、ごく当たり前の小旦那様だった。

全身が、血にまみれていること以外は。

「小旦那様……?」

小旦那様の腕が、ぼくへと伸びていた。
ぼくは差し出されたその手を見て、ついで、逆側の手を見た。
そこには小旦那様がいつも携帯している、奇妙な紋様の浮かぶ短刀が握られている。
いつもは汚れのひとつもない静謐な気配を漂わせているそれが、
いまは、その本来の用途を存分に感じさせる修飾を施されている。赤い、修飾。


その姿は、ぼくが待ち続けていたものに酷似していた。

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