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海のひつじを忘れないようです

225名無しさん:2017/08/21(月) 21:41:13 ID:vG2lH35Y0
「なんの話だよ」

「お前のお気に入りを使うことにする」

嫌な予感がしていた。兄の視線の先には、
うちの商品――奴隷として売られる予定のこどもたち――を収容している隷舎がある。
隷舎を見て、兄は何かを物色している。思案している。

何を?

予感は、確信へと変わりつつあった。
その確信を払拭しようと叫んだ俺の声は、もうほとんど覇気を失い、悲鳴と化していた。

「だから、なんの――」

「お前にはもう一度、“通過儀礼”を受けてもらう」

トソンの顔が、思い浮かんだ。

歌い、ほほえみ、時には厳しくもあったが、
いつも同じ目線で語り、同じ程度のバカをして、
同じ時間を共有してくれた、トソンの顔。

俺が壊し尽くした、トソンの顔。


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