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海のひつじを忘れないようです

218名無しさん:2017/08/20(日) 22:19:18 ID:sRmmAC9s0
その時になってようやくぼくは、すぐそばにだれかが立っていることに気がついた。
その人影は微動だにすることなく、じっと、自分のてのひらを見つめていた。
人影は、小旦那様、その人だった。

「小旦那様……?」

鐘が、響き出した。
教会中に幸いを告げる、その鐘が。
けれど小旦那様は身体を震わせるほどに大きなその鐘の音も聞こえない様子で、
とにかくただじっと、何も持たない自身のてのひらを見つめていた。

空のてのひらを、じっと、じっと――――





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