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海のひつじを忘れないようです

200名無しさん:2017/08/20(日) 22:11:11 ID:sRmmAC9s0
それは、ぼくを見下ろしていた。
それらはぼくを取り囲んでいた。頭を打ちつけるぼくを取り囲んでいた。
悲鳴を上げて額を裂くぼくを取り囲んでいた。
血と涙と吐瀉物にまみれたぼくを取り囲んでいた。

ぼくを取り囲んでいた。



「許して……」
赦さないで。



呼吸ができなくなった。頭が、何かに埋まっていた。
手足の末端に、かゆみとも痺れともつかない強張りが生じる。
眼球が眼窩の奥へと圧迫される。苦しさに身を捩る。

しかし、身体がいうことを利かない。
何かに抑えつけられている。頭をつかまれ、そこへ叩き落されている。

口から、巨大な泡がこぼれだした。

同時に何かが、ぼくの頭をそこから引き抜いた。
気道へと侵入した異物を吐き出そうと、ぼくの身体は意志とは無関係に咳き込みだした。
しばらくそうして咳き込み、ようやく身体がその自由を意識へと明け渡した時には、
ぼくの周りにはもう、だれもいなかった。だれもぼくを取り囲んではいなかった。

人の代わりに、何かが空から降っていた。


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