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海のひつじを忘れないようです
158
:
名無しさん
:2017/08/20(日) 21:52:33 ID:sRmmAC9s0
彼女はぼくが何をしたのか知っているのかもしれない。
ぼくがどんなに下劣でおぞましい存在であるか、知っているのかもしれない。
もし、そうであるなら。本当に、そうであるならば。
彼女こそが、真に、ぼくの求めていた――。
けれどぼくは、彼女に近づかなかった。
機会がなかったわけではない。彼女に近づく機会はいくらでもあった。
彼女はいつも一人であったし、声をかけようと思えば
いくらでもそうできたはずだった。それでもぼくは、近づくことをしなかった。
小旦那様に、禁止されていたから。
初めてここの鐘を聞いたあの後、再会した小旦那様はぼくに厳命した。
車椅子の魔女に関わるな、と。理由はわからない。
しかし、理由などどうでもいいのだ。命令されたのならば、それを守る。
自分の考えも、感情も、必要ない。なぜならぼくは、ひつじなのだから。
故にぼくは彼女、車椅子の魔女を避け続けてきた。今日、いま、この時までは。
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