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海のひつじを忘れないようです

157名無しさん:2017/08/20(日) 21:52:11 ID:sRmmAC9s0
「逃げることは許さない」

彼女の操る車輪がぼくの進路を塞ぎ、ついでその場で器用に旋回した。
車椅子ごと向きを変えた彼女とぼくは、再び正対する。

彼女の顔からは、何を考えているのか、何を思っているのか、
まったく読み取ることができなかった。無表情というよりも、
あまりに屹然としすぎていて理解を越えているといった風情だ。
ぼくとさほど変わらない背格好であるというのに、
彼女からはこどもらしい稚気を一切感じ取れなかった。まるで――大人のようだった。

彼女が再び、同じ言葉を発した。
ぼくは答えなかった。答えることができなかった。

彼女のことはずっと、気にしていた。
周りのこどもたちの言うとおり彼女は時折人前に姿を現しては、
何事かをノートに記述していた。輪の中に一切交じることなくこちらを
“観察”している姿は確かに不気味で、
魔女と呼ばれても仕方のないものがあるとぼくですら思った。

それでもぼくは、彼女と接触したかった。
『あなたの罪を忘れてはならない』。この言葉が、頭から離れないでいた。
罪。ぼくの罪。彼女は明らかに、ぼくを咎めていた。


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