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海のひつじを忘れないようです

142名無しさん:2017/08/20(日) 21:44:02 ID:sRmmAC9s0
先に折れたのは、不良商品だった。
不良商品は震える手でハーモニカをつかみ、何度も何度も俺のことを見ながら、
俺が決して首を振らないことを認め、そしてついに、それに口をつけた。

何を恐れていたのかと訝りたくなるような音色が、
不良商品の持つ楽器からこぼれだした。不良商品の技量は、
明らかに昨日今日で培ったものではない。
長大な時間を、おそらくは一日と休まずに励んでようやく身につけたであろう熟練の技。
奏でられるその音楽は、この不良商品が――彼が生きた存在であることを明確に語っていた。

けれど、そんなものはどれも、些細な事柄に過ぎなかった。

俺は、不良商品に掴みかかった。


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