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海のひつじを忘れないようです

140名無しさん:2017/08/20(日) 21:42:58 ID:sRmmAC9s0
それでも、人権という言葉が騒がれた当初の思想は理解できないでもなかった。
それはすなわち、“私の”権利を認めよという叫びだったからだ。
俺の、私の、ぼくの権利を認めろ。短絡的で直裁的な、けれど人間らしい主張。

それが奇妙に歪みだしたのは、いつからなのか。
彼らの思想は人権とはどこまでの人間を含むのか、
人間とはどこから人間なのかというラインの線引へとシフトしていった。
女は人間なのか。老人は人間か。こどもは、障害者は、異教徒は
――うちで扱っている商品は?

得意先の数は目に見えて減っていった。
兄の責任とはいえない。誰も彼もが及び腰になっていた。
周囲の目に、強硬派の襲撃に、新しく制定されるという噂の法律に。

それでもまだうちは、同業他社に比べマシな方だった。
父の築いたパイプはそれなりに強固であったし、
兄もそれらを断ち切られぬよう日夜奔走していた。
それにこの稼業はまだ、多くの者に求められていた。
買う側はもちろん、売る側にとっても。社会がこの仕事を必要としていた。

故に俺も、働けた。あれこれ考えることなく、働く時間を得ることができた。
これからもそうだ。これからもそうするために、
俺はこの店を潰させるわけにはいかなかった。
そのためには、可能性を考慮せぬまま商品を廃棄する余裕などなかった。


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