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海のひつじを忘れないようです

100名無しさん:2017/08/19(土) 22:46:32 ID:rN6ohdMg0
ハインと呼ばれた彼女が、照れ隠しに頭をわしゃわしゃと掻いた。
ただし、ぼくの頭を。ぐらぐらと頭を揺さぶられながら、ぼくは目の前の人を観察する。
ぼくはこの人を知っていた。といっても、遠い昔からの知り合いというわけではない。
彼女を知ったのはついさっき。壇上で踊っているのを目撃した、というだけだ。

ここで催されたこどもたちの出し物はどれも楽しげではあったけれど、
根本的にはその場の盛り上がりに準じて好き勝手やるだけの、
――言い方は悪いかもしれないが――素人芸に過ぎなかった。
そのことが悪いというわけではないし、
実際に観客も盛り上がっていたのだから彼らの試みは成功しているのだと思う。

けれどハインとワタナベのペアは違った。
二人のダンスは大人顔負けに洗練されていた。
息のピッタリあった動き、指先にまで意識が行き届いたキレ、
わずか三分程度の舞台上で、彼女たちはその培ってきた
熱意と練習量を存分に披露していた。

特にハインの技の冴えは、素人目で見ても圧巻だった。
足の運び、首の振りひとつとっても、その動作の端々には華があった。
空気が、光が彼女の味方となって、まるでひとつの
神話世界を描き出しているようにすら感じられた。

だからぼくは、覚えていた。
このとても印象的な女の子のことを、知らず記憶していた。
こんなふうに人の頭をわしゃわしゃする子だとは思わなかったけれど。


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