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夢見る人に之聴く人のようです
1
:
名無しさん
:2017/04/25(火) 21:04:20 ID:gNviqX360
母親がわりの親戚に手を引かれ、おずおずと診察室にやって来た君は当時九歳であった。
(゜д゜@「うちの子変なんです」
変、とは一体なんだろう。
生きる意欲を失くした人のことか。
支離滅裂な妄想に囚われ習慣に固執する人のことか。
はたまた集中力が切れやすく、走り回ってしまうのか。
言葉の意味を図りかねている僕に、如何なる異常が見られるのか、その人は語り始めた。
しかしそれよりも、僕の視線は彼女に釘付けであった。
貧相な体つきに伸ばしっぱなしの髪。
頭皮は白く粉が吹き、風が吹けば雪のように舞いそうだった。
爪もまた伸びっぱなしだった。
白貝のような爪の奥には、垢がどっちゃり積もっているようだった。
そういえば微かに異臭もする。
饐えた臭いは、少女には似合わなかった。
なにより一番気になるのは表情だ。
目の下は窪み、まなこは赤く充血し、瞼は薄く晴れていた。
血色の悪い唇は噛み締められている。
針の筵に座り続けているような雰囲気が、診察室に満ち始めていた。
ともすれば、隣の夫人は彼女の獄卒であろうか。
(゜д゜@「こういうわけで」
と、どういうわけかは分からないが、夫人はとにかく困っているようだった。
(´・_ゝ・`)「お話しはよくわかりました」
分かっていない。
分かっていないが、分かることはある。
(´・_ゝ・`)「では直ちに入院ということで」
僕の申し出に、夫人は大喜びしていた。
少女は僕をちらと見た。
僕もまたちらと見返すと、少女はそっと目をそらした。
子に親は必要であるが不必要なこともある。
彼女に最適な空間を提供すべきだろう。
(´・_ゝ・`)(ところで何が変なのやら)
入院の手続きを機械的に行う一方で、僕は気になっていた。
彼女の奇妙な性質については、一夜明けてから分かった。
44
:
名無しさん
:2017/04/28(金) 19:13:17 ID:e/mmtW/w0
乙
筆早くて嬉しい
45
:
名無しさん
:2017/04/29(土) 05:31:57 ID:H/oF2I0A0
結構暗い雰囲気なのにどこか暖かくて癖になる
46
:
名無しさん
:2017/05/01(月) 23:00:08 ID:ou/2bQ8c0
乙
いい感じです 先生の過去談も気になる
47
:
名無しさん
:2017/05/05(金) 18:41:55 ID:0F6Mr28Q0
これはたまらん
48
:
名無しさん
:2017/05/05(金) 21:45:56 ID:CNGbkiag0
素直に面白いね
49
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 12:56:46 ID:FgKqm1Kw0
休みの日であれば朝から、仕事の時は昼休みに。
僕は、児童相談所へと通い詰めた。
君の口から語られる話は、あまりにも酷いものだった。
物心ついた頃には親戚の家にいたこと。
実の両親の名前すら分からないこと。
幼稚園にも保育園にも行ったことがないこと。
一人で過ごしているうちに、夢の内容はどんどん悪化していったこと。
そのせいでますます疎まれ、空気のような存在と化していたこと。
表現こそ疎いが、そのような内容がつらつらと淀みなく飛び出してきた。
何度か僕は気分を害し、しばしば一人になった。
相談員であるヒートは、やはり慣れているのだろう。
いつでも真剣に耳を傾けてくれた。
ノパ⊿゚)「今日、ペニサスちゃんのご親戚に連絡を取りました」
(´・_ゝ・`)「どうでしたか?」
ノパ⊿゚)「……里親でも施設でも何でもいいと仰っていました」
50
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 12:57:26 ID:FgKqm1Kw0
さすがにあの明るいヒートも、今回は沈痛そうな表情を見せた。
僕は黙って、少女を見た。
('、`*川「だとおもった」
どうでもいいとでも言いたげに、アポロチョコの包装を解いていた。
伸びかけの爪が、カリカリとフィルムを引っ掻く。
その音だけが部屋に響いた。
(´・_ゝ・`)「……出来れば僕が引き取りたいのですが」
ノパ⊿゚)「ですよねえ」
と言いつつも、僕ら二人はおし黙る。
親戚が今更引き取ると言いだすまいと踏んではいた。
問題はその先だ。
僕には身寄りがいない。
両親は他界し、頼れる親戚はいない。
一人っ子ゆえに兄弟からの助けも借りられない。
恋人も実は出来た事もないし、そもそも異性の友人もいない。
あるのは両親から継いだ家と何の目標もなく貯めた金だけだ。
養育条件は、満たしている。
僕が独り身でいなければ。
(´・_ゝ・`)「……やっぱり、僕だけでは里親になれませんかね」
ノパ⊿゚)「……申請することは出来ますが、それが通るかはちょっと」
(´・_ゝ・`)「ですよね」
('、`*川「あっ」
ざんざんと、床にアポロチョコがばら撒かれた。
箱を開ける拍子に落としてしまったのだろう。
51
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 12:58:08 ID:FgKqm1Kw0
('、`*川「ごめんなさい」
(´・_ゝ・`)「いいよ、後で新しいのを買ってあげるから」
('、`*川「おこんないの?」
(´・_ゝ・`)「僕も君くらいの時にはよくやった。だけど怒られなかったよ」
拾い食いしようとしたら怒られたけれど、と付け加える。
ノパ⊿゚)「わたしもよくやりましたよ」
ヒートも、軽快に笑ってみせた。
ノパ⊿゚)「ゴミはこっちで処分しますから」
(´・_ゝ・`)「すみません」
ノパ⊿゚)「いいですよ」
机の上に、チョコの山が築かれた。
勿体なさそうに、少女はそれを見つめていた。
52
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:01:27 ID:FgKqm1Kw0
結局、その日は何の結論も出ないまま帰ることとなった。
手を繋ぎ、僕は君と歩いた。
君の手は温かった。
最初に手を繋いだ時はとても冷えていて、それなのに汗をかいていた。
骨ばっていた手は肉付きがよくなり、きちんと血が巡っているのが分かった。
歯噛みしてボロボロだった爪も、今では手入れをしている。
きちんと生き始めたような気がして、僕は嬉しくなった。
変化したのは手だけではない。
顔も少しふっくらとして、血色がよくなった。
髪の毛には艶が出てきて、きちんと櫛が通るようになった。
目つきも、心なしか柔らかくなった。
言葉は相変わらず遠慮がちだが、僕に話しかけてくれることも多くなった。
滅多に笑わないが、笑うととても可愛かった。
もっと笑ってほしい。
幸せになってほしい。
僕はずっとそう思うようになった。
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
最近になって、僕は名前を呼ぶようになった。
それまでは名前を聞くことすら出来なかった。
もしもこの子を手放す時が来るのなら、名前なんて知らない方がいいとすら思っていた。
ダメな大人である。
きっと今までだって、君の名前を呼ぶ人なんていなかっただろうに。
('、`*川「なあに、せんせい」
顔をあげ、しっかり見つめてくるペニサスに僕は問う。
53
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:07:32 ID:FgKqm1Kw0
(´・_ゝ・`)「君はこの先どうしたい?」
('、`*川「せんせいといっしょにいたいよ」
予想していた答えが、すぐに飛んできた。
('、`*川「せんせいがおとうさんになってくれたらなんでもいいよ」
(´・_ゝ・`)「なんでもいいか」
('、`*川「がっこういけなくてもいいよ。せんせいのしごとばにいくのもすきだし」
(´・_ゝ・`)「退屈してないかい?」
('、`*川「んーん。ほかのひとたちとやさしくしてくれるし」
ペニサスは、職場のスタッフからも可愛がれていた。
もっとも、あそこにいるのは性根が優しい連中である。
彼女の事情を知っていたら、なおさらだ。
(´・_ゝ・`)「それでも学校には行かなくちゃいけないよ」
('、`*川「じゃあいくからずっといっしょにいよ」
(´・_ゝ・`)「……そうだね」
目を逸らし、時計台を見た。
もう夕方の六時だ。
夕飯を買って帰らなくてはいけない。
(´・_ゝ・`)「今日は何が食べたい?」
('、`*川「てっかまき」
(´・_ゝ・`)「それは三日前食べただろう」
('、`*川「じゃあオムレツ」
(´・_ゝ・`)「オムレツか……」
('、`*川「こないだのはおいしかったしき」いだった」
(´・_ゝ・`)「まぐれかもしれないよ」
('、`*川「ずーっとわたしのためにつくってよ」
54
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:20:00 ID:FgKqm1Kw0
(´・_ゝ・`)「あー、うん、努力するよ」
ぎちりと小さな指が、手のひらに食い込んでくる。
僕が適当な返事をすれば、すぐにバレてしまうのだ。
だけど僕にだって考えはある。
このままでいけば彼女は施設に行く確率が高かった。
であれば、先々の別れに備えなければならない。
あまり親ぶるのも良くないのでは、と思い始めていた。
いつかその時が来れば、余計彼女に悲しい思いをさせるのだから。
('、`*川「ねー、せんせい」
(´・_ゝ・`)「なんだね」
('、`*川「がっこうにいけたらちゃんとせんせいもきてね」
(´・_ゝ・`)「……うん」
('、`*川「がっこうってがんばったことをおやにみせるんでしょう?」
(´・_ゝ・`)「そうだね」
('、`*川「したらがんばるから、みにきてよ」
(´・_ゝ・`)「行くよ、絶対」
もし君が施設に行ってしまっても、会いに行くことは出来るだろう。
親にはなれなくても、友達かお兄さんくらいにはなれるだろう。
(´・_ゝ・`)(大丈夫、縁が切れるわけでなし)
55
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:21:34 ID:FgKqm1Kw0
それでも一人で帰るようになったら、家の中はとても静かになるだろう。
それが、憂鬱なことに思えて仕方がなかった。
オムレツは、上手く出来なかった。
考え事が手元に絡みつき、菜箸もうまく扱えなかった。
ぐちゃぐちゃになったそれを、君は笑いながら食べた。
(´・_ゝ・`)「ごめんなあ、本当に」
('、`*川「せんせい、きにしないで。ケチャップかけたらおんなじよ」
(´・_ゝ・`)「……でも君が望むものは出来なかった」
何もかもうまくいかなかった。
いつまでもこうしていられるわけがない。
いつ、その時が来てしまうのか。
僕は怖くて仕方がなかった。
56
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:23:05 ID:FgKqm1Kw0
(´・_ゝ・`)「髪の毛伸びたなあ」
ドライヤーを片手に、思わず呟く。
温風に煽られる君には、何も聞こえていない。
目を瞑り、ひたすら耐えている。
髪の毛を乾かすのも、最初は不慣れであった。
そもそもドライヤーを何処にしまったのかも僕は忘れていた。
物置から見つかったそれは、随分と前のものだったが十分に働いた。
ちょっと音がうるさすぎるのが玉に瑕だが。
(´・_ゝ・`)(今度床屋に連れて、いや美容室か)
美容室で、合っているのだろうか。
(´・_ゝ・`)(分からないことばっかりだ)
施設に行ってもこうして髪の毛を乾かす人はいるのだろうか。
自分で出来るようにした方がいいのだろうか。
悩んでいるうちに、髪はどんどん水気を失っていく。
(´・_ゝ・`)(もっとこうして世話をしてあげたい)
それで君が喜ぶのなら。
57
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:26:17 ID:FgKqm1Kw0
('、`*川「だしすぎちゃった」
差し出された歯ブラシには、歯磨き粉がてんこ盛りになっていた。
(´・_ゝ・`)「じゃあちょっともらうよ」
大人が子供の歯磨き粉を使ったって、問題はないだろう。
口に含むと科学的なイチゴ味が広がった。
なにせ甘ったるい。
歯を磨いた気にもならない風味だ。
昔懐かしいといえば、そうだけど。
('、`*川「かんせつきすだね」
(´・_ゝ・`)「…………」
少し歯磨き粉を飲み込んだ。
喉の奥からイチゴの風味が這い出してくる。
せり上がってくる不快感を、根性で堪えた。
(´・_ゝ・`)「…………どこで覚えてきたの、それは」
呆れながら聞くと、本で読んだと返ってきた。
(´・_ゝ・`)「本ってどんな?」
('、`*川「びょういんのろびーのほん」
(´・_ゝ・`)「ああ……」
多分受付嬢のキュートが持ってきたやつだろう。
読み飽きた恋愛小説を、病院の本棚に突っ込んでいるからだ。
58
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:27:24 ID:FgKqm1Kw0
(´・_ゝ・`)「もう少し大人になってから読みなさい、ああいうのは」
('、`*川「なんで?」
(´・_ゝ・`)「ちょっと君には早いから」
('、`*川「でもおもしろかったもん」
(´・_ゝ・`)「他にも本はあるだろう」
('、`*川「きゅーちゃんはなんでもよみなさいっていってた」
(´・_ゝ・`)「……まあ、そうだけど、対象年齢っていうのがあるんだよ」
がらがらとうがいするペニサスに、はたして言葉は聞こえているのだろうか。
(´・_ゝ・`)「聞いてますか?」
('、`*川「なあに?」
ペニサスは、にっこりと笑った。
僕は、言い返すのを止めた。
59
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:28:33 ID:FgKqm1Kw0
セミダブルのベッドに、僕とペニサスは潜り込む。
今はまだ小さいからこれでもいいが、二、三年したら一緒に寝ることは出来ないだろう。
何より犯罪臭がして、恥ずかしかった。
幸いにも部屋は三つほど余っている。
そのうちの一つを子供部屋にすれば……。
(´・_ゝ・`)(そうなる日が来るとは限らないのに?)
もうダメだ、本当に。
僕は彼女を手放せるのだろうか。
('、`*川「せんせい」
寝ていると思った君が、声をあげた。
(´・_ゝ・`)「どうした?」
暗闇の中、体を寄せて来る気配がした。
されるがまま、僕は固まっていた。
('、`*川「しせつなんか、やだ」
(´・_ゝ・`)「……僕だって嫌だよ」
('、`*川「なんでいっしょじゃだめなの?」
(´・_ゝ・`)「僕みたいな人ばかりではないからね。子供を悪い大人から守りたいんだよ」
('、`*川「やだ、やだ」
60
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:31:28 ID:bt.X64dY0
支援
61
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:39:39 ID:FgKqm1Kw0
鼻をすする音がする。
胸元に、ぎゅっと顔を押し当てられた。
どうしたらいいのか分からない。
幸せになって欲しかったはずなのに、どうして泣いているのか。
原因は分かっていても、僕がその根本を変えることはできない。
(´・_ゝ・`)「ペニサス、」
('、`*川「やだやだやだ、せんせいやだぁ」
泣き声は、いよいよ大きくなっていた。
僕はひたすらに抱きしめて、頭を撫で続けた。
赤ん坊に戻ったように、君は泣き続けた。
('、`*川「こうなっちゃうんならせんせい、わたしのことひきとらなきゃよかったのに!」
(´・_ゝ・`)「……ごめんね」
('、`*川「せんせいのばか、ばか」
(´・_ゝ・`)「……ごめん」
('、`*川「せんせいはわるくないもん……」
(´・_ゝ・`)「…………」
('、`*川「わがままいうから、ごめんなさい……」
(´・_ゝ・`)「……僕だって君といたいよ」
('、`*川「…………」
(´・_ゝ・`)「君がここからいなくなったらどうしようってずっと思ってた」
('、`*川「…………」
62
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:42:01 ID:FgKqm1Kw0
(´・_ゝ・`)「さみしいし、かなしいし、もしかしたら泣いちゃうかもしれない」
('、`*川「……せんせいも?」
(´・_ゝ・`)「君からずっと名前を聞けなかったのも、いつかこうなるんじゃないかと思って、思って……」
その先は、話せなかった。
奥歯同士が、ぶつかり合う。
ぎちぎちと、顎が痛くなるほどに。
熱くなる目頭も閉じ締めて。
そのまま夜が明けなければいいと思った。
明日が怖かった。
僕と君が引き剥がされてしまうのではないかと思って。
声を殺して、いい年の大人である僕は泣いた。
('、`*川「せんせ」
泣き腫らした声は、眠気によって掠れていた。
僕は無言のままそれを受け入れる。
('、`*川「ずっといっしょにいよ?」
(´・_ゝ・`)「…………」
('、`*川「ね、いるっていってよ」
(´・_ゝ・`)「…………うん」
('、`*川「いようね」
(´・_ゝ・`)「……うん」
('、`*川「ずっとだよ」
(´・_ゝ・`)「うん」
('、`*川「ぜったいだよ」
(´・_ゝ・`)「うん」
('、`*川「ずっとだから」
(´・_ゝ・`)「うん、うん」
63
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:42:43 ID:FgKqm1Kw0
そうして、気付けば朝になっていた。
(´・_ゝ・`)「…………」
ベッドはもぬけの殻で、僕は時計を見た。
七時四十分。
起きなきゃいけないのは七時。
家を出ている時間は七時四十分。
(´・_ゝ・`)「うっそだろ」
僕は飛び起きた。
慌てて服を着替え、寝室を飛び出した。
キッチンではペニサスがパンにバターを塗っていた。
('、`*川「おはよ、せんせい」
(´・_ゝ・`)「おはようペニサス、起こしてくれてもよかったんだよ!」
('、`*川「だってきもちよさそうにねてたから」
(´・_ゝ・`)「大人は遅刻しちゃいけないんだよ!」
鞄とパンとペニサスの手をひっ掴み、僕は外へ飛び出した。
いつも載っているバスはもう行ってしまっただろう。
パンを食べながら、僕は職場に電話をした。
o川*゚ー゚)o「はあい、盛岡メンタルクリニックです」
(´・_ゝ・`)「もしもし、僕だ。寝坊した」
o川*゚ー゚)o「あらー、ペニサスちゃんが?」
(´・_ゝ・`)「いや僕が」
o川*゚ー゚)o「やだぁー、院長が寝坊とか、やばーい!」
64
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:43:45 ID:FgKqm1Kw0
口調はムカつくがぐうの音も出ない。
(´・_ゝ・`)「それで朝の予約は?」
o川*゚ー゚)o「今日は高岡さんですねえ。でもいっつも遅れて見えるから大丈夫じゃないですかぁ?」
(´・_ゝ・`)「そうじゃない時もあるかもしれないじゃないか!」
o川*゚ー゚)o「ですねえ。とりあえず気をつけて来てくださいよ〜。焦って飛び出したりなんかしたらダメですからね、パパさん!」
(´・_ゝ・`)「パパじゃないっての」
そう言った時にはとっくに電話は切れていた。
それからまもなく、バスはやってきた。
開院ギリギリになんとか着いて、僕はホッとした。
汗だくで診察しなければいけないのが心残りだが、それ以外は問題ない。
(´・_ゝ・`)「キュートくん、ちょっと」
o川*゚ー゚)o「朝からお疲れ様ですー、パパさん」
(´・_ゝ・`)「パパじゃないっての」
げんなりした顔で言い返すと、キュートは不思議そうな顔をした。
o川*゚ー゚)o「パパじゃないですか、ペニサスちゃんの」
(´・_ゝ・`)「そうなりたかったけど」
o川*゚ー゚)o「???」
(´・_ゝ・`)「なんだその顔は」
o川*゚ー゚)o「だってこないだ親権取れたって言ってたじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「はぁ!?」
65
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:44:37 ID:FgKqm1Kw0
いつ、と問おうとして、僕は思い当たる。
診察室を飛び出し、ロビーへ向かう。
ペニサスは相変わらず恋愛小説を読んでいた。
まだ君には早いと言ったばかりなのに。
(´・_ゝ・`)「ペニサス、ちょっと」
('、`*川「なあに?」
本から顔をあげず、声だけが返ってきた。
彼女にしては珍しいことである。
(´・_ゝ・`)「今日の夢はどんな夢を見た?」
('、`*川「…………」
ぺら、とページをめくる音がする。
答えはない。
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
('、`*川「みてない」
(´・_ゝ・`)「見てない?」
('、`*川「たまにはそんなひもあるよ」
もう一度、ページをめくる音。
本当だろうか?
懐疑的な気持ちが湧いたが、口を閉じた。
(´・_ゝ・`)「……ペニサス」
('、`*川「ん?」
(´・_ゝ・`)「お昼は何がいい?」
('、`*川「てっかまき」
(´・_ゝ・`)「それは四日前に食べたじゃないか」
('ー`*川「ふふふ」
(´・_ゝ・`)「それ以外のものを食べに行こうよ」
呆れてそう言った僕に、
('ー`*川「ふふふ」
君はいつまでも笑っていた。
66
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:45:51 ID:FgKqm1Kw0
3.夜泣きとパパ 了
67
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 13:46:16 ID:FgKqm1Kw0
お題一覧
コーヒー
狐の嫁入り
番狂わせ
おとぎ話
パルクール
68
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 15:16:31 ID:ifDqmyIg0
おやおや
69
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 16:23:35 ID:gOu1Ej8s0
乙です
ペニちゃんかわいいし楽しみ
70
:
名無しさん
:2017/05/06(土) 18:32:40 ID:wTHqwgyI0
おつおつ
幸せな夢は初めてじゃないのかな
71
:
名無しさん
:2017/05/09(火) 23:15:44 ID:7wggKyTs0
鉄火巻き相当思い出の品になってるんだなぁ
乙
72
:
名無しさん
:2017/05/10(水) 13:02:18 ID:nii2cIEw0
ペニサスと一緒に鉄火巻食べたいだけの人生だった
73
:
名無しさん
:2017/05/11(木) 20:22:54 ID:KKVcuG7w0
乙乙
話もキャラも展開も、揃いも揃って好きです
お題
催花雨
74
:
名無しさん
:2017/05/12(金) 22:17:00 ID:xeD.YwWI0
やっばい、可愛い、語彙消える
75
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:55:30 ID:pzTUlDPc0
小さな手が、茹でたじゃがいもに衣を纏わせていく。
細かく砕いたパン粉である。
僕は荒いパン粉よりもこっちの方が好みであった。
油を余分に吸わないし、サクサクとして美味しいからだ。
('、`*川「これでいい?」
(´・_ゝ・`)「ありがとう、ペニサス」
バットに次々と並べられていくじゃがいもを、油の中に放り込む。
途端、皮付きのそれはじゅわじゅわと踊り始めた。
('、`*川「せんせいあつくない?」
(´・_ゝ・`)「大人は熱くないんだよ」
というのは嘘で、少し熱い。
それも我慢できるうちだから、なんてことはないのだが。
('、`*川「あ」
と、君は声をあげた。
('、`*川「じゃがいもがないてる」
ぴー、ちちちち……。
皮と実の間に入った空気が、油の熱で振動しているのだろう。
それをじゃがいもが鳴いたと勘違いしたのだ。
(´・_ゝ・`)(子供の感性はかわいいなあ)
説明するのも野暮であろう。
僕はそうだねと返してあげた。
76
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:56:01 ID:pzTUlDPc0
(´・_ゝ・`)「どうして鳴いてるのかな」
('、`*川「んー……」
パン粉だらけの手を洗いながら、君は考える。
('、`*川「たぶんね、とりがいるの」
(´・_ゝ・`)「鳥?」
('、`*川「じゃがいものとり」
(´・_ゝ・`)「じゃがいもの鳥かあ」
('、`*川「それがね、かわをやぶってうまれようとしてないてるの」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
それじゃあ熱いところに入れられて可哀想じゃ無いだろうか、とは言わない。
思っても、言わない。
('、`*川「きっとそのうちとんでいっちゃうの」
(´・_ゝ・`)「なら安心だね」
('、`*川「あんしん?」
(´・_ゝ・`)「無事に飛んでいけるんだね、その鳥は」
77
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:56:26 ID:pzTUlDPc0
菜箸で、ぐるぐるとフライを混ぜる。
フライ同士がくっつかないように、卵を撫でるように。
ペニサスは、ふふりと笑った。
('、`*川「うん、どこまでもいけるのよ」
ぴしゅーーー……。
と、じゃがいもの皮が破裂した。
手の甲に、赤い点を作り上げ、鳥はどこかへと飛んでいったのだろう。
僕にはそれが見えないし、誰の目にも見えるものではないだろう。
しかしペニサスの頭の中ではそうなのだ。
鳥は、たしかに飛んで行ったのであった。
朝からじゃがいものフライを作っているのには理由がある。
僕の病院では月に一度、デイケアを行なっている。
先月はお花見。
今月はピクニック。
来月は梅ジュース作り。
再来月はそれを使ったパーティーだ。
そして今日が、ピクニックに行く日なのである。
天気は良好、最近吹き荒れていた風も少なく出かけるのにはちょうどいい日であった。
あとは熱中症にならないよう、ペニサスに帽子をもたせれば完璧である。
78
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:56:49 ID:pzTUlDPc0
ピクニックでは、各自が料理を持ち寄ってもいいことになっていた。
もちろん持ってこなくたっていい。
バドミントンやフリスビーなどの遊び道具を持ってくる人もいれば、飲まず食わずでただそこにいる人もいる。
帰る時間は自由だし、夕方の五時までずーっと一緒にいたって構わない。
来たい人は来ればいいし、行きたくないなと思ったらそれでいい。
勇気がなかったら、その時は僕たち医者や看護師が助ける出番だ。
その人が馴染む手伝いをして、楽しく過ごす。
それがデイケアの目的であった。
(´・_ゝ・`)「じゃあ行こうか」
('、`*川「はあい」
ポテトフライにサンドイッチ、飲み物もたくさん持って、僕たちは家を出た。
79
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:57:18 ID:pzTUlDPc0
バスで三十分ほどかかって、自然公園に着いた。
ある程度行政の手が入っているものの、野山といった雰囲気である。
比較的麓にある広場が、集合場所になっていた。
o川*゚ー゚)o「院長おはようございますぅー」
キュートがぶんぶんと手を振りながら、挨拶して来た。
僕もそれに倣い、手を挙げた。
(´・_ゝ・`)「早かったね」
o川*゚ー゚)o「シューちゃんが早く行きたいってゆうから来ちゃった」
既に敷かれているレジャーシートの上では、少女が一人座っていた。
キュートの妹である、シュールだ。
しばらく見ないうちに随分と大きくなったな、と僕はペニサスと見比べた。
年も近いし、いい友達になれるかもしれない。
ペニサスも、シュールのことが気になっているようだった。
(´・_ゝ・`)「遊んでてもいいよ」
('、`*川「いいの?」
(´・_ゝ・`)「まだ準備があるからね」
('、`*川「……てつだわなくていい?」
(´・_ゝ・`)「じゃあ帰りに手伝ってもらおうかな。今はたくさん遊んでおいで」
途端、ペニサスはにっこりと笑った。
ありがと! と一言その場に置いて彼女は走っていった。
80
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:57:45 ID:pzTUlDPc0
o川*゚ー゚)o「シューちゃんも女の子が来るって楽しみにしてたんですよー」
キュートはにまにまと、ペニサスの背を見てそう言った。
(´・_ゝ・`)「それはよかった」
ホッとしたところで、僕たちは準備を始めることにした。
レジャーシートを張ったり、パラソルで日陰を作ったり。
そのうちに、
(-_-)「はよざまー、せんせ」
(´・_ゝ・`)「ヒッキーくんおはよう」
(-_-)「これ、コンビニの廃棄の」
o川*゚ー゚)o「フランクフルトに唐揚げ棒ー!」
(´・_ゝ・`)「バイト帰りかい?」
(-_-)「うす、夜勤明けっす」
(´・_ゝ・`)「大丈夫かい?」
(-_-)「昔に比べたら元気っす全然」
o川*゚ー゚)o「あ、お茶飲む?」
(-_-)「うす」
81
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:58:06 ID:pzTUlDPc0
ちらほらと人が集まり始めて、
从 ゚∀从「せんせーおはよ」
(´・_ゝ・`)「おはよう、ええと」
从 ゚∀从「今日はくんの気分で」
(´・_ゝ・`)「ああ、じゃあ高岡くんおはよう」
从 ゚∀从「オレ何にも持って来てないんだけどいい?」
(´・_ゝ・`)「いいんだよ、ゆっくりしていってくれ」
从 ゚∀从「はあいー」
82
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:58:30 ID:pzTUlDPc0
いつのまにか、
ノパ⊿゚)「す、すみません森岡さん。すっかり遅くなっちゃって」
(´・_ゝ・`)「いえいえ、今準備が終わったところです」
ノパ⊿゚)「あちゃー……」
(´・_ゝ・`)「気にしないでください、楽しみましょう」
ノパ⊿゚)「……あの、アイス買って来たんですけど」
lw´‐ _‐ノv「アイス?」
('、`*川「アイスー?」
o川*゚ー゚)o「アイスぅ!?」
(´・_ゝ・`)「キュートくんもう少し落ち着きなさい」
ノパ⊿゚)「アイス食べたい人ー」
从 ゚∀从「もらっていいんすか?」
ノパ⊿゚)「どうぞどうぞ」
83
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:58:54 ID:pzTUlDPc0
ピクニックは、
(#゚;;-゚)「先生こんにちは」
(´・_ゝ・`)「でぃさん、来てくれたんですね」
(#゚;;-゚)「うん、邪魔にならないようにするから」
(´・_ゝ・`)「邪魔になんて思ってないよ。好きに過ごしていいからね」
(#゚;;-゚)「…………」
(´・_ゝ・`)「困ったことがあったらなんでも言ってください。きっと力になれるから」
(#゚;;-゚)「……はい」
始まっていた。
84
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 16:59:30 ID:pzTUlDPc0
(´・_ゝ・`)「…………」
かなたから、子供の叫び声が聞こえる。
それは悲惨な色ではなく、喜びと興奮に満ちたもので。
千切れるように笑うペニサスの後を、ヒッキーが追いかけている。
疲れているだろうに、その体からはエネルギーが満ちていた。
そのまた後ろから、今度はシューが追いかけていた。
ルールは全くわからない。
わからないが、皆楽しそうに互いを追いかけ回していた。
(´・_ゝ・`)(あ、ペニサスがヒートさんにタッチした)
ちょっと待ってて、と手で制したヒートは、アイスコーヒーを飲み干した。
紙コップを置くと、ヒートは追いかけっこの輪に馴染んだ。
まるで最初から加わることが決まっていたかのように。
(#゚;;-゚)「先生」
(´・_ゝ・`)「ん?」
いつのまにか僕の横に、でぃが来ていたらしい。
全く気付いていなかった。
(´・_ゝ・`)「どうかしました?」
(#゚;;-゚)「いえ、先生がなんだか寂しそうな顔をしてたから」
(´・_ゝ・`)「…………」
(#゚;;-゚)「先生もそんな顔をするんだなと思って、珍しくて来ちゃいました」
(´・_ゝ・`)「はは、そうでしたか」
85
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:00:17 ID:pzTUlDPc0
笑顔を取り繕い、かなたから手元へ視線を移す。
サンドイッチ、卵焼き、佃煮、唐揚げ棒、フランクフルト、つくねハンバーグ、プチトマト、アスパラのベーコン巻き、たこさんウインナー、ポテトフライ、おにぎらず。
誰がどれを持ってくると言ったわけでもないのに、どうしてか被りは少なかった。
(#゚;;-゚)「先生も寂しいと思う時があるんですね」
長袖の先から、華奢な手が伸びた。
その指先が向かった先はおにぎらずであった。
キュートがシュールと一緒に作ったと自慢していた一品だ。
意外とこれが、食べやすくてみんなには好評であったのだ。
(´・_ゝ・`)「そりゃ僕も寂しいと思う時はありますよ」
(#゚;;-゚)「ですよね。何言ってんだろ」
(´・_ゝ・`)「何言ってもいいんですよ。言わなくてもいいですけど、でも申し訳なく思うことはありません」
(#゚;;-゚)「……そう思いたいんですけどね」
小さく口が開き、歯がおにぎらずをむしり取った。
大して咀嚼もせず、丸呑みといった風に喉を下っていった。
86
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:00:56 ID:pzTUlDPc0
('、`*川「つっかれたあ」
火照った顔で、ペニサスはやって来た。
(´・_ゝ・`)「大丈夫か?」
昨日見た天気予報では三十度近くまで気温が上がると言っていた。
熱中症にでもなられたら困るので、キンキンに冷えたアクエリアスを差し出した。
('、`*川「ありがとせんせい」
きゅっ、きゅっ、きゅっ、と細い喉が飲み下して行く。
('、`*川「あとねせんせい」
(´・_ゝ・`)「うん?」
ぽす、と額にペニサスの手が当てられる。
そして振り向いたかと思うと、
('、`*川「せーんせとこーうたい!」
lw´‐ _‐ノv「えー、抜けちゃうの?」
不満そうなシュールの声が、遠くから響いた。
(´・_ゝ・`)「なに、僕が今度は鬼?」
('、`*川「いっぱいタッチしたひとがかち」
(´・_ゝ・`)「勝てるかなぁ……」
運動不足にも程がある僕は、しかし不思議とやる気が湧いていた。
(´・_ゝ・`)「君はしっかり休んでいるんだよ」
なんなら日陰に行くといい、と付け加えて僕は駆け出した。
87
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:01:31 ID:pzTUlDPc0
('、`*川「いってらっしゃい先生」
手を振ったけれど、先生は振り返ることなく走っていってしまった。
('、`*川「…………」
なんだかそれが面白くなくて、コップを軽くにぎりしめた。
ぺこ、と透明なコップは、ジュースに波紋を作った。
(#゚;;-゚)「……先生の娘さん?」
先生の隣に座っていたお姉さんは、急に話しかけてきた。
わたしはびっくりして、首を横にふった。
('、`*川「んーん、でも先生はパパになってくれた人」
(#゚;;-゚)「……なんだか複雑そうね」
顔に火傷のあるお姉さんは、聞き取りにくい声でそう言った。
火傷は、何かしょもあった。
右目のくまからほっぺたまで、赤茶色の傷が絵の具のようについていた。
(#゚;;-゚)「……気になる?」
お姉さんは、やんわりと笑った。
わたしは正直にうなずいた。
(#゚;;-゚)「これはね、わたしがわたしのことを嫌いで罰を与えた跡なの」
分かる気はした。
わたしも、変な力を持つわたしが大きらいだった。
(#゚;;-゚)「すぐ人のこと怒らせたり、嫌われるようなことしちゃうから、嫌になってわざと焼いちゃった」
('、`*川「…………」
火傷は、すごく痛いものだ。
でも、先生も今朝火傷したけど、大丈夫そうだった。
もしかしたら大人は痛くないのかもしれない。
88
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:02:05 ID:pzTUlDPc0
(#゚;;-゚)「……あなた、日陰に行った方がいいかも」
ふと、お姉さんは心配そうな顔になった。
(#゚;;-゚)「顔が真っ赤よ」
('、`*川「うーん……」
(#゚;;-゚)「頭痛くなったりしてない?」
そういえば、さっきヒッキーさんを追いかけていて頭がクラクラした。
少し休めば大丈夫かと思ったけど、まだそれは治りそうになかった。
(#゚;;-゚)「一緒に行きましょ?」
と、お姉さんが指差した先にはパラソルの刺さったシート。
そこには、銀ぱつの人が寝転んでいた。
从 -∀从「…………」
すやすやと、その人は子どものように寝ていた。
瞼にはラメがキラキラと光っていて、鼻筋は高くって、すごくきれいな人だった。
(#゚;;-゚)「……そういえば自己紹介してなかったね」
お姉さんの一言に、わたしもハッと気がついた。
('、`*川「もりおかペニサスです、よろしくお願いします」
(#゚;;-゚)「桐崎でぃ、よろしくね」
お姉さんは、ちらと寝ている人を見た。
(#゚;;-゚)「そこにいるのは高岡ハインさん。何回かデイケアで見たことあるの」
('、`*川「ふうん……」
もう一度、わたしは高岡さんを見てみた。
89
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:02:35 ID:pzTUlDPc0
('、`*川「……この人、男の子か女の子かわかんないね」
从 ゚∀从「おー、今日は男の気分だね」
ぱち、と目が開いて、わたしは声をあげそうになった。
从 ゚∀从「あーあ、よく寝た。一ヶ月ぶりによく寝たわほんと」
(#゚;;-゚)「よかったね、高岡くん」
お姉さんの言葉に、高岡さんはにひひと笑った。
从 ゚∀从「時々ロビーで見かけるお嬢ちゃんだな」
(#゚;;-゚)「盛岡先生の娘さんみたいよ」
从 ゚∀从「ああそう」
高岡さんは、さして興味がなさそうに言った。
从 -∀从「あー……まだ寝足りねえ、眠くってしょうがねえ」
('、`*川「寝るのが怖いの?」
だとしたらちょっと前のわたしとそっくりだった。
眠いけど寝れないのはとても辛いことだっていうのはよく知っていた。
从 ゚∀从「怖いわけじゃねえんだよ」
ふわぁ、と口からあくびが逃げた。
そのかわり、しんせんな空気をぱくりと飲み込んでしまった。
从 ゚∀从「寝たいんだけど寝てるとおっかねえ夢を見ちまうのさ」
('、`*川(おっかない夢ってどんな夢だろう)
起きてから、怖いとか楽しかったとか、そう思うことはたくさんあった。
だけどどんなに怖い夢でも、飛び起きたことはなかった。
それは、わたしには関係なくて、わたしの身の回りの人に起きる夢だから。
もうすぐに現実になってしまう夢だから、あんまり怖いと思ったためしがないのだ。
('、`*川(怖いのは、現実になった後に怒る人たち)
だから、夢が怖くて眠れないというのはよく分からなかった。
90
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:03:02 ID:pzTUlDPc0
从 ゚∀从「……水の夢でさあ、オレは溺れてるんだよ」
('、`*川「…………」
从 ゚∀从「暗くて、冷たくて、最初は遠くに光が見えるんだ」
('、`*川「…………」
从 -∀从「……だけど、そのうち縦横上下がわかんなくなってさ」
('、`*川「…………」
从 ゚∀从「……沈むんだよ、ずっと」
そして最後には苦しくなって起きてしまうのだと、高岡さんは言った。
('、`*川「……怖い夢だね」
もしそんな夢が現実になったら、わたしだって怖いだろう。
(#゚;;-゚)「水の夢は怖いよね」
お姉さんも、はぁとため息をついた。
从 ゚∀从「しかも時々鯨が出てきてさぁ」
(#゚;;-゚)「鯨?」
从 ゚∀从「そ。でっけえやつ」
('、`*川「それが怖いの?」
从 ゚∀从「……遠くでさ、溺れてるオレを見つめてるんだよ。まるで早く死なねえかなっていう風に」
('、`*川「…………」
死ぬ。
それは、とても怖いことだった。
91
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:03:45 ID:pzTUlDPc0
从 ゚∀从「その鯨がゆっくり近づいてくることもあるから飛び起きちまうんだよな」
(#゚;;-゚)「やな夢ね」
从 ゚∀从「まったくな」
(#゚;;-゚)「わたしも昔、水の夢見たことがあるよ」
('、`*川「どんな夢?」
(#゚;;-゚)「綺麗な海を泳ぐ魚の夢」
从 ゚∀从「へえ、いいじゃん」
(#゚;;-゚)「だけど海底から急に網が持ち上がって、その中に捕まってしまうの」
('、`*川「…………」
(#゚;;-゚)「釣り上げられたら死んでしまうって、その時はすごく怖くて暴れるの」
从 ゚∀从「…………」
(#゚;;-゚)「でも、網にはフジツボやサンゴが生えていてね、暴れるとそれが突き刺さるの」
从; ゚∀从「…………」
(#゚;;-゚)「そのうちふと思うの。ああ、このまま釣られて死んじゃってもいいかな、って」
('、`*川「…………」
从; ゚∀从「おい……」
(#゚;;-゚)「……という夢を高校生の時に見たことがあるわ。もう七年前になるかしら」
ふ、と柔らかく微笑んで、お姉さんはそう言った。
(#゚;;-゚)「今はもう見ない夢だから、高岡くんも早く丘に上がれるといいわね」
从 ゚∀从「……ありがと」
高岡さんは、照れ臭そうにそう言った。
('、`*川「…………」
水の夢が、少し怖くなった。
92
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:04:38 ID:pzTUlDPc0
散々子供を追いかけ回しているうちに、帰る時間はやってきてしまった。
lw´‐ _‐ノv「きゅうと姉、またぺにちゃんと遊べるかな?」
o川*゚ー゚)o「うん、遊べるよ」
('、`*川「わたしもまたしゅーちゃんとあそびたいよ」
lw´‐ _‐ノv「約束だからね、またね」
(-_-)「あーしんどいこれもう家帰ったらばったりだわ」
(#゚;;-゚)「お疲れ様」
(-_-)「桐崎さんもおつかれー、じゃお先っす」
从 ゚∀从「またなー引津」
ノパ⊿゚)「今日は誘っていただきありがとうございました」
(´・_ゝ・`)「いえ、忙しいのにこちらこそ」
ノパ⊿゚)「また日程が合ったら来てもいいですか?」
(´・_ゝ・`)「もちろんです」
93
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:05:03 ID:pzTUlDPc0
楽しく時間を過ごす。
自分のペースで会話を出来るようになる。
人がいることに慣れる。
そのきっかけになるのなら、こんなにも嬉しいことはなかった。
(´・_ゝ・`)「今日はいい日だった」
バスは、少しずつ公園から遠ざかっていく。
その膝の上では、遊び疲れた少女が眠りについていた。
(´・_ゝ・`)(どんな夢を見ているのやら)
起きたらぜひ、聞かせてもらおうと思っていた。
94
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:06:09 ID:pzTUlDPc0
('、`*川「…………」
水の上に、わたしは浮いていた。
太陽はない。
お月様もない。
それなのに空は明るい青空で、時折黒い点が動いていた。
('、`*川(ここはどこだろう)
体を動かす気はなかった。
居心地がよくて、いつまでも浮いていたかった。
('、`*川(鳥だ)
はるかかなたの点は、鳥だったらしい。
一羽の鳥だ。
ぐるぐると、円を描いて飛んでいる。
その影が、少しずつ大きくなっていった。
95
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:06:37 ID:pzTUlDPc0
家に着いてもなお、ペニサスは眠っていた。
よほど疲れているのだろう。
ベットに横たえて、僕は夕飯を作ることにした。
(´・_ゝ・`)「じゃがいもが余っているんだよなあ」
ポテトサラダにでもしようか、簡単だし。
冷蔵庫にはきゅうりとハムがあった。
メインは、冷凍のハンバーグがあるし……。
96
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:07:04 ID:pzTUlDPc0
鳥は、少しずつ降下していく。
わたしめがけて。
('、`*川「…………」
不思議と怖くなかった。
嘴がどれほど鋭くても、射抜くようにこちらへ向かって来ても。
('、`*川(鳥……)
わたしは、怖くなかった。
ただ、欲しいものが、一つあった。
97
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:07:33 ID:pzTUlDPc0
(´・_ゝ・`)「……ん?」
手にしたじゃがいもの皮が、少しうねった。
(´・_ゝ・`)「……気のせいかな」
じゃがいもの皮に包丁を当て、切れ込みを入れようとした時だった。
「…………ーーー、ちちちちち」
(´・_ゝ・`)「…………」
包丁を持つ手が、止まる。
鳴いた。
たしかに、じゃがいもが鳴いた。
「……ぴーーー、ちちちちち……」
(;´・_ゝ・`)(ほら、ほら)
そのうち、じゃがいもの皮がぷつりと破けた。
ぴり、ぴり、と向こうから、嘴が見える。
かすかにじゃがいもが揺れる。
手のひらの上で、蠢いている。
明らかに生命を持った何かが、じゃがいもから生まれようとしていた。
(;´・_ゝ・`)「どうすればいいんだ」
ひとまず包丁を置いて、僕は見守る。
ゆらゆらと揺れるじゃがいも。
スリットはもう三分の一ほどになる。
その向こうから、柔らかな毛が見えた。
98
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:08:17 ID:pzTUlDPc0
(´・_ゝ・`)(獣だ)
爬虫類ではないらしい。
それだけでもよかった。
そして一つの可能性にたどり着く。
(´・_ゝ・`)(これは、もしや)
じゃがいもの、とりだ。
おとぎ話のような存在が、今まさに生まれようとしていた。
(´・_ゝ・`)(頑張れ……)
じゃがいもの皮はほぼ破れかけている。
(´・_ゝ・`)(生まれてくるんだよ)
生まれたら真っ先にペニサスに見せてあげよう。
君の思いつきが、現実になったのだよ、と。
(´・_ゝ・`)「頑張れ……!」
そして、
( ゚∋゚)「ちちちっ」
薄くクリームがかった色の、小鳥が生まれた。
99
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:08:49 ID:pzTUlDPc0
ペニサスは起きてきたのは、それからしばらく経ってからだった。
('、`*川「せんせい、ゆうはんは?」
(´・_ゝ・`)「あ」
すっかりと忘れていた。
なにせ小鳥なんか飼ったことがないし、道具もない。
そもそもじゃがいもから生まれた小鳥は、普通の小鳥と同じ世話をしていいのだろうか?
生まれて数分で飛び回る小鳥に、僕は頭がいっぱいになっていた。
('、`*川「わ、これじゃがいものことりさん?」
( ゚∋゚)「ちちっ」
ペニサスはすぐ状況を理解したらしい。
早速小鳥と遊び始めていた。
(; ゚∋゚)「ちちちっ」
心なしか小鳥は戸惑っているように見えるのは気のせいだろうか?
(´・_ゝ・`)「まあいいか」
そのまま一人と一羽をそっとしておいて、僕は再び夕食の準備に取り掛かった。
100
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:09:17 ID:pzTUlDPc0
4.ピクニックとじゃがいもの小鳥 了
101
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 17:09:43 ID:pzTUlDPc0
お題一覧
催花雨
狐の嫁入り
番狂わせ
パルクール
以下お題を一つ募集します
102
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 19:18:11 ID:ChOhSqhc0
乙!ペニサスかわいい
お題:海
103
:
名無しさん
:2017/05/19(金) 22:09:21 ID:ql7z0N1w0
面白かった、デイケアの描写がリアルだなぁ
104
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 06:15:52 ID:eXmXpTr.0
クックルが可愛く見えたのは初めてかもしれない……おつおつ
105
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 17:08:35 ID:.wU3B1tk0
クックルだから一瞬ムキムキの鳥が生まれたのかと思ったけど可愛かった
乙
106
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 19:35:52 ID:eZ915dbw0
せっかくなのでお題をさらに五つ追加しようと思います
よかったらどうぞ
107
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 19:36:43 ID:hTCL./jI0
お題フリスビー
108
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 19:57:46 ID:XIX68tJ60
お題 かたつむり
109
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 20:11:08 ID:AHurv2u.0
お題ゲーム
110
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 20:11:31 ID:qtfStNhY0
お題 マグロ漁船
111
:
名無しさん
:2017/05/20(土) 20:22:52 ID:WeXk37pI0
お題 歌
112
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:57:47 ID:2mqlnhtM0
君が僕と暮らし始めてから一月が経った頃。
僕は初めて君と離れ離れになった。
('、`*川「……ほんとに行っちゃうの?」
足にぴったりとくっついてるペニサスは、不満げに僕を見上げた。
(´・_ゝ・`)「ごめんよ、ペニサス。だけど夜遅くに出かけて、もっと遅くに帰ってくるようだから、それだと君は眠くなっちゃうだろう?」
('、`*川「……なんないもん」
絶対寝ないもん、と言い切る君に、思わずため息が飛び出した。
僕が院長として勤めている病院は、今は亡き父が開業したものである。
その父の知り合いは、今でも存命で、僕のこともなお可愛がって良くしてくれていた。
僕もその人のことをとても尊敬しているし、会うのはとても楽しみであった。
ただひとつ、その人が酔っ払うと話が長いことを除けば、憂鬱なことなんて何もなかったのに。
(´・_ゝ・`)(困ったなあ)
しがみつくペニサスごと、足を進めながら僕は考える。
もうすぐ僕の友人が二人やってくる。
彼らに泊まってもらって、ペニサスの面倒を見てもらおうと思っているのだが……。
(´・_ゝ・`)(泣いて離れなかったらどうしよう)
今までペニサスが泣いたのは、あの一回以来なかった。
駄々をこねることもあまりなかったし、大人しい子供だと思っていた。
でもまあ、子供というのは大体手のつけられない存在である。
人形のように押し黙って、大人の言うがままにしていた時のことを考えると健全になりつつあるのだろう。
と、インターホンがなった。
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
('、`*川「やだ」
113
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:58:16 ID:2mqlnhtM0
離れるように、と言う前に言葉が返って来た。
友人が来ることは昨日から伝えてあった。
ますます細い腕が足に絡みついた。
仕方なく、僕はそのまま玄関へと向かった。
玄関を開けるなり、二人の友人はぽかんとそれを見つめた。
( "ゞ)「ぶふっ……」
と、デルタは控えめに笑い、
爪'ー`)「すーっかり懐かれてんじゃねえか」
と、フォックスはゲラゲラと笑った。
('、`*川「……おじさんおさけくさい」
笑われて恥ずかしかったのか、ペニサスは離れてそう言った。
酒臭いのはもちろんフォックスのことだ。
元は詩人であったが、今では日がな一日酒を浴びるように飲むダメな男である。
フォックスは、なおもケラケラと笑った。
( "ゞ)「ツボにはまったらしいな」
(´・_ゝ・`)「フォックスのツボは浅いからな」
爪'ー`)「笑いは健康にいいんだぜ」
114
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:58:17 ID:W51GjhGE0
しえしえ
115
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:58:38 ID:2mqlnhtM0
スニーカーを並べながら、フォックスは反論が返ってきた。
底がすり減って、ぺったんこになったスニーカーだ。
よく履いて靴がバラバラにならないな、と感心してしまうくらいぼろぼろだった。
その隣に、デルタが上質な革靴を並べた。
( "ゞ)「初めて、ペニサスちゃん。僕はデルタって言います」
190センチ近い長身を屈めながら、デルタは挨拶をした。
('、`*川「……よろしくおねがいします」
ペニサスは、観念したようにお辞儀をした。
( "ゞ)「で、あっちのフラフラしてるおじさんはフォックス」
爪'ー`)「フォックスでもおじさんでもいいぜ。オレだって分かればなんだって」
('、`*川「……」
何も言わず、ペニサスは僕を見た。
ほんとに置いていくのね、という非難の混じった視線だ。
(´・_ゝ・`)「ごめん、なるべく早く帰るようにするから」
こうして、三人を置いて僕は家を後にした。
116
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:59:04 ID:2mqlnhtM0
先生がいなくなってすぐ、フォックスはリビングへ向かった。
爪'ー`)「おー、ほんとに酒がある」
先生が一生懸命用意した、お菓子の盛り合わせと、大きなウイスキーのペットボトルを見て、感動したような声をあげていた。
('、`*川(ほんとにこの人まともなのかしら)
先生の言うことは信用していたけど、フォックスに関しては違うような気がした。
( "ゞ)「ペニサスちゃん、夕飯は何がいい?」
声のした台所に行くと、デルタさんはたくさんのパンフレットを見せてきた。
そういえばここ最近、先生は宅配のチラシを熱心に集めていた。
この日のために取っておいたのかしら。
('、`*川(じゃあ、昨日言ってた、急に飲みに行くっていうのはウソだったんだ)
先生のウソつき。
( "ゞ)「……お腹すいてない?」
('、`*川「ううん、空いてます。てっか巻きがいいな」
( "ゞ)「マグロ美味しいもんねえ」
爪'ー`)「おー、なんだ、寿司か。マグロづくしってのがいいなオレ」
( "ゞ)「なんだ、寿司食べるのか」
爪'ー`)「ウィスキーのロックに寿司、最高じゃねぇか。マグロ漁船に感謝しながら食うぜ」
117
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 18:59:26 ID:2mqlnhtM0
言いたい事だけ言って、フォックスはまたリビングへ戻った。
( "ゞ)「……じゃあ僕はちらし寿司にしようかなあ」
何事もなかったかのように、デルタさんはそう言った。
慣れているのだろう。
('、`*川(大人って大変だ)
ついそんなことを思いながら、デルタさんを見つめてしまった。
唐揚げとポテトフライもどうかな、と視線に気付いたデルタさんは言ってきた。
最初の頃、先生もよくそう言ってきた。
こういう時の大人は、わたしのことを気遣っている証拠だって分かっているから、嬉しそうに頷いてみせた。
そうだ、置いてった先生が悪いんだ。
デルタさんにはなんにも非がないのだ。
迷惑かけたりわがまま言ったりするのは、やめておこう。
('、`*川(ちょっとさみしいけど、先生が帰ってきたらうんと振り回してやろう)
絶対そうしよう、と思った。
118
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:00:06 ID:2mqlnhtM0
( "ゞ)「それにしてもデミタスが子供を引き取るなんてなあ」
お寿司を食べた後、デルタさんはしげしげとわたしを見つめてきた。
爪'ー`)「どっちかいうと苦手って感じだったろ」
イチゴ味のポッキーを、ぽりぽりつまみながらフォックスが言った。
('、`*川「そうなの?」
爪'ー`)「科目は違うけどおんなじ大学に通っててさ、オレたち」
('、`*川「……大学行ってたの?」
フォックスも?
思わずそう言いかけて、飲み込んだ。
フォックスは気付かない様子で、頷いた。
爪'ー`)「オレは文学部、こいつは情報処理」
( "ゞ)「デミタスは医学部」
爪'ー`)「んでたまたま三人とも心理学取ってたんだよなー」
( "ゞ)「席が隣同士になった縁でね、そのままずっとさ」
爪'ー`)「んでさ、大学の中に小学校もあったんだけど、子供はうるさくて嫌いだって言ってたんだよな」
( "ゞ)「嫌いというか扱いに困るって感じだったけどね」
爪'ー`)「そうそう、泣かれると困るってな」
('、`*川「ふうん……」
わたしの知らない先生の話は、面白くて、意外なところもあって、だけどつまらなかった。
なんでだか、むねの中がもやもやする。
ちょっと、悔しいという気持ちに近いみたいだった。
119
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:00:36 ID:2mqlnhtM0
( "ゞ)「ああ、もう十時だ……」
爪'ー`)「オレのガキの頃ならとっくに寝ろって言われてた時間だな」
('、`*川「……まだねむくない」
なんとなくまぶたは重いけど、気持ちは全然ねむくなかった。
( "ゞ)「じゃあまだ寝なくていいから、お布団でお話ししよっか」
('、`*川「したら寝ちゃうもん……」
まだ起きていたかった。
( "ゞ)「うーん……」
困ったように、デルタさんはわたしを見つめていた。
('、`*川(せんせがかえってくるまでおきるもん)
そう思っていた矢先だった。
爪'ー`)「オレもねみーや」
('、`*川「きゃあ!」
フォックスは、わたしを小脇に抱えて立ち上がった。
爪'ー`)「わりー、デルタ、もう酒片付けといてくれや」
フラフラとした足取りで、フォックスは歩き始める。
時には壁が顔すれすれに近付いたりなんかして、ひやっとした。
爪'ー`)「借りるぜぇ、デミタース」
ぼふん、とベッドに投げ飛ばされ、フォックスは倒れ込んだ。
('、`*川(……寝たかな?)
そっと音を立てないように、わたしは起き上がろうとした。
120
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:01:15 ID:W51GjhGE0
フォックスへの猜疑心で笑う
121
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:01:21 ID:2mqlnhtM0
でも、
爪'ー`)「寝えな、ペニサス」
たった一言で、わたしは動けなくなった。
爪'ー`)「寝ろ寝ろ、寝る子は育つんだから」
('、`*川「…………」
爪'ー`)「それともあれか、怖い夢見そうで嫌か」
暗闇の中で、柔らかく声がひびいた。
お酒のせいで、ろれつが回っていなかった今までとは全然違う声の調子だった。
爪'ー`)「オレはさー、なんにも取り柄がないけど、一個だけバカみたいな取り柄があってさ」
('、`*川「…………」
爪'ー`)「人から言われたことはなんでも信じちゃうのよ」
('、`*川「……うん」
爪'ー`)「デルタとかはさ、頭いいから、どっかで嘘っこと思いながら話の調子を合わせられるわけよ」
('、`*川「……」
爪'ー`)「……デミタスから聞いてんだよ、夢の話」
('、`*川「……うん」
爪'ー`)「デルタは知らないけど、聞いただけじゃ信じないだろうからってさ」
('、`*川「…………」
爪'ー`)「……オレは逆に、夢が正夢になる瞬間、見てみたいけどなあ」
('、`*川「……そんないいもんじゃないよ」
まぶたを閉じて、わたしは言った。
('、`*川「初めて正夢になったのは、三歳の頃で。おばあちゃんが死ぬ夢だった」
爪'ー`)「……」
('、`*川「すごく怖い夢だから、話したけど、信じてもらえなくて。その日のうちに本当に死んじゃった」
爪'ー`)「……」
122
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:01:48 ID:2mqlnhtM0
('、`*川「……それから眠るたびに夢を見て、人にそれを離さずにはいられなくて」
爪'ー`)「アレだなあ、アレ」
フォックスの微睡んだ、あったかい声が言う。
爪'ー`)「言い当たるってやつだなあ」
('、`*川「……口に出すからそうなるんだっていうから、もう誰にも話さなくなっちゃった。それでも正夢になっちゃって」
爪'ー`)「……うん」
('、`*川「先生に会うまで、ほんとに一人ぼっちだった」
先生は、やっぱり特別な人だった。
どんなことを話しても、自分のことみたいに悲しんだり、喜んだりして。
普通の大人が普通の子供にするようなことを、わたしにもしてくれた。
変な子供でも、先生には普通の子供みたいにしてくれて。
だから先生は、やっぱり特別だった。
爪'ー`)「昔さ」
ぽつり、とフォックスは呟いた。
爪'ー`)「近所に住んでたお姉さんがいたわけよ。スゲー美人だったんだけど」
('、`*川「うん」
爪'ー`)「で、その時さ、ウエハースチョコにカードが入ってる駄菓子流行ってて」
123
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:02:16 ID:2mqlnhtM0
('、`*川「うん」
爪'ー`)「時々そのお姉さんが選んでくれるとすげーいいカードが出たりするのよ。で、子供ながらにスッゲーと思ってたんだよ」
('、`*川「うん」
爪'ー`)「で、なんでなのってオレ、しつこく聞いたんだよ」
('、`*川「うん」
爪'ー`)「したら、夢で当たりのカードが見えたからって」
('、`*川「……」
爪'ー`)「お姉さんスゲー!って言っちゃったんだけど、それっきりもう当たんなかったね」
('、`*川「当たんなかったの?」
爪'ー`)「当たんなかったねー。予知夢とかそういうのって欲かいたら外れちゃうもんなんだろうね」
('、`*川「ふうん……」
爪'ー`)「うん、それだけ。なんか言いたいことあったけど忘れたわ」
('、`*川「なにそれ」
ふふ、と笑い声が漏れる。
つられて、フォックスも笑った。
そのうち、わたしは眠ってしまって。
夢を、見た。
124
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:02:41 ID:2mqlnhtM0
子供っつうのは不思議なことに、電池が切れたみたいにして急に寝るんだなぁとつくづく思った。
笑い声が聞こえなくなって、ちょっと明かりつけて見てみたら、もうスウスウ寝息たてて寝てるもんだから羨ましくなっちまった。
爪'ー`)「たーだいまー」
( "ゞ)「おかえり」
デルタは、テレビを見ながら酒を飲んでいた。
テーブルの上にはまだグラスが残っていて、それが自分の飲みかけだってことにすぐ気が付いた。
爪'ー`)「サンキュー」
( "ゞ)「お前のことだから飲むだろうと思ったんだよ」
爪'ー`)「全くもってその通りです」
氷とウィスキーを混ぜてグイッと煽れば脳みそに直響いた。
この酩酊感がたまらないのだ。
( "ゞ)「ペニサスちゃんは寝た?」
爪'ー`)「寝た寝た。かわいいよな」
もうひと口、グビッといっちゃう。
あー、最高にうまい。
うまいってか染みる。
脳に。
125
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:03:09 ID:2mqlnhtM0
( "ゞ)「さっき宅配寿司待ってる時にさ」
爪'ー`)「ん」
( "ゞ)「先生にランドセル買ってもらったのー、ってパンフレット見せてきてさ」
爪'ー`)「はー、かわいすぎか」
( "ゞ)「今まで学校行ったことないからランドセル持つの初めてだって言ってたぞ」
爪'ー`)「……マジか」
( "ゞ)「ラベンダーピンクにするって言ってた、ランドセル」
爪'ー`)「らべんだあぴんく」
またずいぶんと、おじさんには分からない色だった。
最近のランドセルは色が複雑すぎる。
オレの頃なんか赤と黒しかなかったってのに。
爪'ー`)「……なんかそのうち買ってやるか、ペニサスに」
( "ゞ)「今の小学生って何喜ぶかな」
爪'ー`)「バトル鉛筆とか」
( "ゞ)「そりゃ男子だろ」
爪'ー`)「だって女子のことなんかわかんねーもん」
( "ゞ)「俺もわからん」
爪'ー`)「わからんな」
( "ゞ)「な」
そうしているうちに、酒のボトルはどんどん軽くなり。
気付いた時にはもう、二人でソファーで寝潰れていた。
玄関から誰かが入ってくるまで。
そのままずーっと。
126
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:03:47 ID:2mqlnhtM0
「っっっ、びっくりしたー!!」
目覚ましがわりに、叫び声がした。
つられてオレも飛び起きて、ソファーから落っこった。
(´・_ゝ・`)「ただいま」
デミタスは、バツの悪そうな顔でそう言った。
( "ゞ)「ずいぶん早かったな」
十二時前。
下手すると明日の朝まで帰れないかも、と言っていたデミタスは、やんわりと笑った。
(´・_ゝ・`)「うん、まあ、色々あって」
爪'ー`)「色々ってなんだよ、全然酔っ払ってねえしさー」
酒の席に行ったデミタスよりも、オレたちの方がもっとずっと酔っ払っているようだった。
それもまた、デミタスは笑って受け流す。
( "ゞ)「酔ってないならちょうどいい、二次会でもするか」
もうすっかり水桶と化したアイスペールを持って、デルタは立ち上がった。
オレは、なんだか不思議な気持ちになって、デミタスを見つめていた。
(´・_ゝ・`)「どうかした?」
爪'ー`)「……いや」
何故だろうか。
視線をそらす気にはなれなかった。
(´・_ゝ・`)「なにかあるなら言ってくれよ」
と、耳朶から、蛞蝓が這い出ていた。
127
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:04:21 ID:2mqlnhtM0
爪'ー`)「…………あ?」
デミタスは、蛞蝓に気付いていないのだろうか。
ぬらぬらと光沢を帯びたそれは、首元を濡らしていく。
(´・_ゝ・`)「どうかした?」
再三の問いかけにも、声が出なくて答えられなかった。
今度は、瞼の隙間から、蛞蝓が。
(´・_ゝ・`)「どうかした?」
口からも。
泡まじりの唾液とともに、蛞蝓が、蛞蝓が。
爪;'ー`)「な、なめくじ……」
やっとのことで、声が出た。
(´・_ゝ・`)「なめくじ?」
目が、すぅと細められて、その隙間から、また、ずるりと。
(´・_ゝ・`)「かたつむりだよ、これは」
愛しそうに、デミタスは、顔を這うそれを指で捕らえた。
(´=_ゝ・`)「かたつむりだよ、これは」
薄目を閉じたまま、デミタスは言う。
そこからまた、細長く、ぬめりけを帯びたものが、床へと落ちる。
爪; ー )「ひっ……」
128
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:04:54 ID:2mqlnhtM0
デルタは戻ってこない。
氷を取りに戻っただけなのに。
戻ってこない。
微動だにせず、殻のない、かたつむりを生み出すデミタスと、オレだけが、ここにいる。
爪;'ー`)(なんの悪夢だよ)
(´・_ゝ・`)「どうかした?」
壊れたゲームのキャラのように、デミタスは繰り返す。
限界だった。
オレは走って部屋を出た。
(´ _ゝ `)「どうかした?」
背後から、すぐ後ろから、そんな声が聞こえた。
気がした。
気のせいだ。
キッチンへ逃げ込む。
デルタはいない。
なぜ。
なぜいない。
どこに行った。
オレは走る。
(´ _ゝ `)「どうかした?」
爪;'ー`)「どうかしてんのはそっちの方だよ!」
精一杯怒鳴りつけて、足を奮い立たせる。
酒の飲み過ぎで酷い夢でも見ているのか。
爪;'ー`)「夢……?」
違う。
夢を見ているのは俺ではない。
デミタスの話を信じるなら、ペニサスの話を信じるなら。
129
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:05:28 ID:2mqlnhtM0
爪'ー`)「ペニサス!!」
寝室に飛び込み、電気をつける。
額に汗をかきながら、ペニサスは眠っていた。
いい夢を見ているようには思えない。
爪'ー`)「ペニサス、ペニサス!」
揺さぶって、何度も呼びかける。
そのうち、微睡んだ瞳がこちらを見た。
('、`*川「…………うぅ、おさけくさい……」
爪;'ー`)「ペニサス!」
(´・_ゝ・`)「どうかした?」
爪;'ー`)「ひっ……!」
いつのまにかデミタスは、寝室のドアに立っていた。
スーツにかたつむりを這わせて、こちらを見つめている。
オレはもう動けなかった。
寝起きのペニサスは、目を見開き、オレにしがみついてきた。
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
('、`;川「……」
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
爪;'ー`)「どうすればいい……」
誰に向けたわけでもなく、呟いた。
目を細めて、デミタスは近付いてくる。
ぬるりとまた、かたつむりが床へと落ちた。
ぐち、と踏み潰される音。
と、同時に。
130
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:06:05 ID:2mqlnhtM0
('、`;川「先生じゃない」
はっきりと、ペニサスは言った。
('、`;川「にせもの、にせもの、にせもの……」
(´・_ゝ・`)「ちがうよ」
爪;'ー`)「そうだ、にせものだ」
(´・_ゝ・`)「ちがうよ」
('、`;川「ゆめ、ゆめ、ぜんぶゆめ」
(´・_ゝ・`)「ちがぅよ」
爪;'ー`)「いいや夢だ!」
オレは、心の底からペニサスを信じた。
爪;'ー`)「夢! 夢だよ! ペニサスの夢!!」
(´・_ゝ・`)「ちがぅよぉ」
否定する口元から、かたつむりが溢れ出す。
131
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:06:14 ID:W51GjhGE0
しえしえ
132
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:06:38 ID:2mqlnhtM0
(´・_ゝ・`)「ちがう、ちがぅぅ、」
爪#'ー`)「ちがわねーっての!!」
('、`*川「!」
爪#'ー`)「大事にしてる子供怖がらす保護者がどこにいるー!!!! 消えろ!!!!」
瞬間、デミタスの姿は消えた。
空気と同化するように、溶け込むようにして。
('、`*川「…………」
爪'ー`)「…………」
オレたち二人は、そのまま気絶するように眠った。
133
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:08:25 ID:2mqlnhtM0
(´・_ゝ・`)「…………大変だったね、それは」
事の顛末を聞いた僕は、そうとしか返せなかった。
爪'ー`)「ほんとにねー、めっちゃ怖かったんですけどー?」
(´・_ゝ・`)「ごめんて……」
爪'ー`)「しかもデルタにはペニサスに手出そうとした変態と間違えられるしぃー?」
( "ゞ)「それは本当に申し訳ないんだが、俺の身にもなってくれ……」
爪'ー`)「そーだよねぇー、デルタはずーっと、ずーっと、ずぅーっとソファーで寝てたらしいもんなー? オレが怖い目にあってたのに!!」
('、`*川「……ごめんなさい」
爪;'ー`)「あ、いや違うんだよペニサスは悪くないんだって、ほんと、ね、ごめんって、ね?」
フォックスの注意がペニサスに向いた隙に、僕は考える。
偽物のデミタス、偽物のデルタと一時消失した本物のデルタ。
どうやらペニサスの能力は、思っていたより強力らしい。
(´・_ゝ・`)(どうしたものかなあ)
わいわいと騒ぐ三人を尻目に、僕は考える。
六月。
もうすぐ、ペニサスの学校生活が始まりが、やってくる。
(´・_ゝ・`)(何事もなく無事に、とはいかないだろうな)
僕は、何度目になるかわからないため息を吐いた。
外では、鈍色の雲が空を覆っていた。
134
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:14:07 ID:2mqlnhtM0
(´・_ゝ・`)「なあどうすればいいと思う?」
小声で問いかける僕に、
( ゚∋゚)「チチッ?」
昨夜はすっかり寝こけていたクックルは、存じませんとばかりに鳴いてみせた。
(´・_ゝ・`)「平和に暮らすって難しいね」
( ゚∋゚)「チチィッ」
そうだろう、そうだろう、と言わんばかりにクックルは鳴いた。
じゃがいもの小鳥は、人の話がわかるらしい。
そう思ったら、少し愉快になって、
(´・_ゝ・`)「ところで朝食は何がいい?」
僕は、エプロンを手に取った。
135
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:14:36 ID:2mqlnhtM0
4.にせものとかたつむり 了
136
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:15:18 ID:2mqlnhtM0
お題一覧
催花雨
狐の嫁入り
番狂わせ
パルクール
海
フリスビー
歌
あと3つお題を募集します
137
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:16:00 ID:W51GjhGE0
おつおつ!デルタもフォックスも何だかんだいいやつだ
138
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:16:30 ID:W51GjhGE0
お題・かんな
139
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 19:55:53 ID:E.iIlJlc0
お題
虹
140
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 22:22:28 ID:M5XODB8Q0
面白い乙
141
:
名無しさん
:2017/06/02(金) 22:30:32 ID:FQFD..d.0
お題 お薬
142
:
名無しさん
:2017/06/03(土) 11:04:37 ID:1tYyaric0
乙乙
デルタとフォックスのキャラ好きだ
143
:
名無しさん
:2017/06/06(火) 10:24:07 ID:0vU0vUxY0
今1話を読み終えた面白い
これから追うわ乙
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