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ドクオの背骨

41 ◆hmIR/WZ3dM:2016/04/03(日) 21:48:25 ID:LBDXupdA0
          十  計画


  ショボンが小惑星<マンドクセ>にやって来た理由。
入港資料には商売のためと思わせていたが、それは表向きの理由だった。
最大の理由は、かつての無法者達と同じようにモディフィカ・スライムの誘拐。

  だがしかし、超えなければならない難関がいくつも存在していた
フッサール人が誇らしげに宣言した通り、まともに釣れ出してしまうと露見しない筈がない。
細胞検知と、感情察知。屈辱の歴史が難攻不落の防衛システムを作り上げたのだ。

(´・ω・`)(しかしこのシステム。穴があるのです)

  付け入る隙はいくつかあった。

  小惑星<マンドクセ>は不毛の地だ。あらゆるものを輸入に頼って暮らしている。
痩せた土地、育たない作物、草花果実には毒性があり、草を口にする草食動物は体内に毒を貯めこむ。肉食動物も同様に。
食物連鎖の上に行けば行くほどに増していく毒に対して、モディフィカ・スライムは耐性を持てなかった。
そのため、完璧にモディフィカ・スライムを守るなら取るべき手段……鎖星――全宇宙から交易を断つ――が出来なかった。

  誘拐の対象であるモディフィカ・スライムの協力を得た場合、細胞検知と感情察知のどちらも解決できた。
種の特性を最大限に活かして自身の肉体を別のものに変態させた場合、採取したライブラリーに該当せず、
希望や楽天が増すように感情を煽り、恐怖や不安や猜疑心を抱かせなければ、双方とも物言わぬ検知器と化す。

  ショボンは夢見がちな年齢のモディフィカ・スライムに目をつけて興味を惹き続けようと考えた。

  目当ての人材を探し、白羽の矢が立ったのがドクオだった。

  宇宙にも影響力を持つ父親がいたのは意外だったが、宇宙へ出てしまえば何の障害にもならない。
捜索願いが流布したところで、存在が発覚した時点で狙われる種族の“生存証明”をしてしまえば、
宇宙の跳梁跋扈は眼の色を変える。救出したところで誰も親切に<マンドクセ>まで送り届ける訳がなかった。

  そういう輩に比べるとショボンはいくらかマシであった。
同じように無限に金を生み出す生物と見なしてはいるが、無闇に売りさばいたり切り刻んだりするつもりはなく、
自らが有用的に使うつもりでいた。労働力、宇宙船の補修、簡単な機械の制作等……。
余程の危機、予測できなかった非常事態に見舞われた際に財産にも成りうる船員として扱う予定だ。

  これらすべてを、ショボンはブーンに伝えていない。
計画の全容を知れば情に厚い彼が良く思わないのは火を見るよりも明らかであったため、
あくまでも“ドクオの望みを我々商人が善意で叶えてあげる立場”を演出する必要があった。

(´・ω・`)「ドクオ殿。昨日も言いましたが……」

('A`)「親父は説得してきた。『行っていい』だとよ。ほら、こんなにも金を持たせてくれたんだぜ」

  宝石、札束、価値ある異星の調度品。ドクオは持ってきた荷物をテーブルの上に広げる。
あまりにも明瞭なドクオの嘘は、双方の利害の一致を表す。両者合意の元に<マンドクセ>を飛び出すのだ。


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