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ドクオの背骨
38
:
◆hmIR/WZ3dM
:2016/04/03(日) 21:37:37 ID:LBDXupdA0
(//‰ ゚)「お体が減量しているようですね……マンドクセ・タブレットを三つ持って参ります」
ドクオの種族モディフィカ・スライムが絶滅の危機に貧し、宇宙法で保護されているのは、
肉体を意思によって変質させあらゆるものを作ることが可能な能力のためであったが、
それぞれ文化・倫理観が違う宇宙中の種族がこぞって<マンドクセ>人を狙った一番の理由は、成長の速度にあった。
エネルギーを摂取した分だけ――蓄えておくことも可能で――身体が大きくなり、
その完璧に近い万能性を持つ肉片を、毎日、かなりの量数剥ぎ取れる。それも、寿命を迎えるまで。
モディフィカ・スライムをひとり捕まえれば、大勢に人間が一生生活に困らないのだ。
かつてひとりのモディフィカ・スライムを求めて、複数の宇宙海賊同士が争いを始めたのが発端となり、
無法惑星<ジョルジュ・ザ・デュエリスト>が作り上げられたのは有名な話であるが……
けれどもこれは別の物語、いつかまた、別の時に話すことにしよう。
('A`)
ドクオが並べられた料理を平らげる頃を見計らい、ヨコホリはタブレットと水を差し出した。
食後に摂取することによりエネルギー効率を爆発的に高められるこの錠剤は、
誘拐犯が、彼らの身体をより効率的に削り取るために発明されたものであったが、
皮肉にも現在の<マンドクセ>で最も流通していた。
タブレットを飲み下したドクオは無言で席を立ち、自室へ向かった。
柔らかな赤い絨毯の上を歩くドクオが、不意に振り帰った。ヨコホリは何も言わず食器の後片付けを始めている。
ドクオの視線は、動きに合わせてひらめく皮膚と剥き出しの骨組みに向いていた。ヒューマノイドは今日も直っていない。
('A`)(別に、期待はしていなかっただろ)
踵を返し、食堂を出る。柔らかな赤い絨毯から、硬いタイル張りの上へ。
部屋に入ったドクオは一目散に本棚に手を伸ばし、分厚い本を手にとった。
黒い装丁は何度も何度も読み込んだために擦り切れている。ページを開き、読み込んでいく……。
('A`)(恒星を再び活力を得るまで体内で育て、やがて銀河のどこかに吐き出すという恒星を食らって宇宙を渡る鳥。
惑星<ヘブンズ・アルバム>には多くの智慧を持つ住民が建造した、触れるだけで劇的な進化を促してくれるオベリスク。
惑星すべての生命の源であり、今なお新種を産み続ける<地球>に存在する、惑星を覆う途方も無く巨大な水たまり)
いつものように、日常の延長。本を片手に空想の果てまで旅をする。
このままずっといつまでも変わらないままで、ただ過ぎていく月日の上……。
そんなものはもう、ごめんだった。
ドクオの胸中で欲望が今にもはち切れそうなほどに膨れ上がっている。
少し手を伸ばせば届く場所に目当てのものがあるとわかってしまったその時こそ、
欲望は何よりも強い狂乱となって身体を衝き動かす。薄暗い部屋の中、ドクオの目は危険な色に光っていた……。
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