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ドクオの背骨

22 ◆hmIR/WZ3dM:2016/04/03(日) 20:40:33 ID:LBDXupdA0
(´・ω・`)「争いが無い惑星というのであれば、惑星<ヴァニ・ロー>が有名ですね。
        “すべての可能性”を崇拝する教義を持ち、永遠に殉ずる宗教惑星です」

('A`)「すべての可能性?」

(´・ω・`)「ええ。住民は“何もないからこそ、すべてが存在する”という信仰心を持っております。
        私のような異文化人からすれば、虚無や虚空の言い換えとも呼べますが」

(´・ω・`)「<ヴァニ・ロー>は教祖と少数の神官が惑星を支配しておりまして、
        うまく住民を従えることによって、永遠を求める宗教は保たれているというわけですね。
        その方法こそが、惑星<ヴァニ・ロー>の素晴らしいところでもあり、奇妙なところでもあるわけです」

('A`)「ほほう。その方法とは?」

(´・ω・`)「創作ですよ、ドクオ殿。
        絵画、建築、音楽、彫刻、工芸、漫画、小説……あらゆる創作物を神官達が日々制作しているのです。
        これらを鑑賞して受け取ることによって、星に住む人々は毎日を安寧に過ごす指針を持つのでございます」

(´・ω・`)「一般的なものと比べて、違っている――<ヴァニ・ロー>の根幹となっている――点はただひとつ。
        “決して完成しない創作物”を作り、惑星住民に提供し続けている。この一点だけでございます」

( ;^ω^)「はあ?」

(´・ω・`)「ブーンが疑問を抱くのも当然でしょう。しかし、教義を改めて考えてみてください。
        何もないからこそ、すべてが存在するという信仰。やがてくる終着の瞬間を排除し続けて、永遠を求める姿勢……」

(´・ω・`)「進行している事態をあえて打ち切りにすることで、教徒各々が自分の中で好きなように空想を続けられるのです。
        ……これが惑星<ヴァニ・ロー>の平穏の秘訣です。他星はもとより、国々の間でも戦争が起きた歴史は存在しません」

('A`)「ちょっと待て。そんなの、空想の違いで争いにならないのか?
    他人の考えが自分にとってムカつくものになっているのが普通だろう」

(´・ω・`)「さすがはドクオ殿。慧眼ですな。いやはや鋭い着眼点をしておられる……。
        ですが、その問には否定を返さざるを得ません。
        個々人による解釈の違いを尊重し、受け入れるという寛容さこそが最も重要な教義となっております故」

  寛容。その言葉にドクオは身じろぎした。現在、涙滴型でまとまっている彼の表皮が波打つ。

(´・ω・`)(何かしら、思うところがあるのでしょうね)

  椅子の上でぷるぷると揺れるドクオを見て、同じく椅子に座るショボンは足を組み替えた。
自分達への憧憬から、ドクオが現状に不満を抱いているのは容易に理解できた。
解決の方法もわかるが、今はまだその段階ではない。
“ここではない、どこか”を強く求める気持ちをドクオが持ち続けていれば、そう遠くないうちに、とショボンは思う。


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