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( ^ω^)の冬休みのようです
23
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:53:11 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)「来年は中学生になるからって、宿題がたんまり出されちゃったんだお」
( ^ω^)「だからどうせ暇だし、今からやっとこうと思ったんだお」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなのね。あら、唇のとこどうしたの?」
ニダーに殴られた場所を母に指摘され、ギクリとする。
( ;^ω^)「今日は寒かったからって走って帰ったら、転んじゃったんだお」
ミセ;゚ー゚)リ「えぇー・・・。本当にもう。気をつけなさいよ?」
24
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:54:20 ID:Zui5vrAE0
苦笑いで、嘘の出来事をさも本当にあったかのように伝える。
嘘をつくことには慣れてしまっている自分に対して、嫌悪感を抱いてしまう。
( ;^ω^)(でも、殴られた事を伝えるよりかはマシだお・・・)
もう傷が塞がりかけている唇ではなくて、胸の奥がズキリと痛んだ気がした。
ミセ*゚ー゚)リ「さて、お腹すいたでしょう?今パパッとオムライス作っちゃうからね」
(*^ω^)「やったお!久しぶりにオムライスが食べられるお!」
ブーンは母の作る、シンプルなオムライスが大好きだった。
食べると心も嬉しくなる、そんな味がするからだ。
25
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:55:51 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)「何か手伝うことあるかお?」
ミセ*゚ー゚)リ「いいのよー、いつもしてもらってるし。宿題も忙しいんでしょう?」
( ^ω^)「んー、そしたらそうするお!」
母はブーンの返答に微笑み、エプロンを着けて台所に立つ。
それから、髪を後ろでひとつに結び、ケチャップライスの具材を切っていく。
包丁の、トントントンという軽やかな音。
その音を聞くと、ブーンは不思議と安心感に包まれた。
( ^ω^)(母さんが偉いっていってくれたお)
( ^ω^)(・・・尚更、余計な心配はさせたくないお)
そう思い、オムライスが出来上がるまでの間、ブーンは黙々とプリントを解いていった。
26
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:56:56 ID:Zui5vrAE0
ミセ*゚ー゚)リ「さぁ、出来たわよ」
食欲をそそる匂いが、ブーンの鼻に届く。
ミセ*゚ー゚)リ「ブーン、運ぶの手伝ってくれる?」
( ^ω^)「おっおっ、わかったお!」
宿題をランドセルへしまいこみ、二人分のスプーンを用意する。
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃ、いただきます」
(*^ω^)「いただきますお!」
手を合わせてから、なるべくケチャップ・卵・ライスがいいバランスになるよう心がけて、スプーンをいれる。
27
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:57:49 ID:Zui5vrAE0
特別な調味料だとかは使っていない、シンプルな味。
だが、それ故にとても美味しく感じる。
ミセ*゚ー゚)リ「ブーンは本当に美味しそうに食べるねぇ」
むしゃむしゃと頬張るブーンを見て、母が微笑む。
(*^ω^)「ほんとに美味しいからだお!やっぱり母さんのオムライスは絶品だおね」
ブーンもそれに笑顔で返す。
ミセ*゚ー゚)リ「そう言ってくれると嬉しいよ」
母も満足気に、オムライスを口へ運んだ。
28
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 22:59:31 ID:Zui5vrAE0
ミセ;゚ー゚)リ「悪いね、皿洗いしてもらって」
緑茶を啜りながら、母が言う。
( ^ω^)「いいんだお。母さんは仕事で疲れているだろうし、それくらいやらなきゃだお」
皿洗いを終えてかじかんだ手を湯呑みで温めるようにして、ブーンもお茶を飲む。
外を吹く風が、窓をカタカタと叩いている。
ミセ*゚ー゚)リ「そうだ、ブーンに一つ話があったんだ」
( ^ω^)「何だお?」
ミセ*゚ー゚)リ「冬休みのあいだ、ショボン叔父さんのところに遊びに行かない?」
( ^ω^)「ショボン叔父さんって、ソーサクにいる?」
ショボン叔父さんとは、母の弟で、今はソーサクで小さな喫茶店を営んでいたはずだ。
最後にあったのは小学3年生のお正月。
人あたりが良く、柔和な人という印象が残っている。
なによりお年玉をたくさんくれたため、ブーンはショボンに好感を持っていた。
29
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:00:38 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)「ショボン叔父さんのとこに行くのは全然構わないけど、それって冬休み丸々かお?」
ミセ*゚ー゚)リ「そのつもりよ。ちょっと長いけどね」
ミセ*゚ー゚)リ「終業式が終わったら、ショボン叔父さんが迎えに来てくれることになってるの」
ブーンは少し考える。
冬休みの間、ソーサクに遊びに行くのはきっと楽しいだろう。
だが、今日の宿題の件がある。
ソーサクに行っていたら、宿題をやる暇なんてないんじゃないだろうか。
30
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:01:38 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)(いや、でも・・・)
逆に冬休み中に自分がいなければ、母の家事の負担が減るんじゃないだろうか。
( ;^ω^)(何だか最近、前より疲れて見えるし)
母だって、仕事が休みの日くらい一人でのんびりしたいはずだ。
( ^ω^)「そしたら、折角だし行ってみるお。お年玉もらえそうだし!」
ミセ*゚ー゚)リ「ブーンったら、それ目当てね?」
ミセ*゚ー゚)リ「まぁわかったわ。後でショボン叔父さんに連絡しておくから、明日の夜には荷作りしておいてね?」
( ^ω^)「わかったお!」
ミセ*゚ー゚)リ「そしたら、先にお風呂入っちゃってね」
(*^ω^)「はーい」
31
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:02:29 ID:Zui5vrAE0
(*´ω`)(はぁ、あったまるお・・・)
湯船の中でお湯に肩まで浸かりながら、目を閉じる。
今日1日の疲れが、体の外へ滲み出していくような感覚だ。
( ^ω^)(ショボン叔父さんの家かお。久し振りに会うから少し照れくさいおね)
普段、他人とはあまり話さないブーンにとって、叔父たちとの会話が少し不安に思える。
( ;^ω^)(・・・疎まれたりしないかお)
色々なことを考えていたら、だんだんとのぼせてきた。
( ;^ω^)(ふぅ、そろそろ上がるかお)
風呂から出て、バスタオルで体を拭く。
( ´ω`)(宿題は、空いてる時間にコツコツやれば何とかなるお)
( ω )(きっと、何とかなるはずだお・・・)
少しでも前向きに考えよう。
そう思いながら、パジャマへと着替えた。
32
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:04:00 ID:Zui5vrAE0
( ^Д^)「えー、それじゃあ皆さん。ケガや病気には気をつけて、冬休み楽しんでくださいね!」
*(‘‘)*「先生、さよーならー!」
( ^Д^)「はい、良いお年をー!」
(’e’)「お前餅食べ過ぎて太るんじゃねーぞー!www」
<ヽ`∀´>「よし、飯食ったらウリの家に集合ニダ!」
今日は終業式のため、午前中で学校は終わる。
クラスメイトたちは、ちょっとの時間を無駄にしないよう、走って教室から出て行く。
ブーンも急いで荷物をまとめて、学校を出る。
( ;^ω^)(きっと、叔父さんはもう家に来てるはずだお)
少しでも早く帰ろうと、いつもの帰り道を小走りで進んでいく。
ふと見上げた空はからりと晴れていて、青空が澄んでいる。
12月の下旬とあって、空気は冷たいが、太陽の光がほんのりと暖かいため、そこまで寒いとは感じなかった。
33
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:05:07 ID:Zui5vrAE0
結局、あれからニダーたちからは絡まれなかった。
恐らく、彼らの中ではブーンが了承したものとなっているんだろう。
( ´ω`)(まぁ、殴られるよりは宿題の方がマシかお)
ほっとするが、胸の奥がチクリと痛む。
その痛みは気にしないようにして、ブーンは走りながら、もう一度空を見上げる。
そこには、やはり先ほどと何も変わらない青空が広がっていた。
アパートの前に着くと、駐車場には見覚えのない車が止まっていた。
( ^ω^)(きっと叔父さんの車だおね)
深呼吸をして、上がった息を整える。
( ^ω^)「ただいまだお!」
玄関には見知らぬ靴が揃えており、部屋の中からは、ふわりとコーヒーの匂いが漂っている。
34
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:06:26 ID:Zui5vrAE0
ミセ*゚ー゚)リ「おかえり、ブーン」
( ´・ω・`)「やぁ、おかえり。久し振りだね、ブーン君」
母と一緒に出迎えてくれたのは、温かな笑みを浮かべたショボン叔父さんだった。
短く整えられた髪と口ひげ。
そのどちらにも、白髪が混じっている。
服装は白のネルシャツとジーンズという、シンプルなもの。
その笑顔と雰囲気から、温和な印象を受ける。
ブーンのイメージしている"喫茶店のマスター"をそのまま絵に描いたような人だ。
年齢は母と3,4歳ほどしか変わらないはずだが、良い意味でさらに歳上に見える。
( ^ω^)「久し振りですお、ショボン叔父さん」
ブーンは軽く頭を下げて挨拶をする。
緊張しないようにと意識すると、逆に緊張してしまう。
( ´・ω・`)「最後にあったのは3年前か。相変わらず、礼儀正しい子だ」
ショボンにそう微笑みかけられ、素直に嬉しい気持ちになる。
35
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:07:27 ID:Zui5vrAE0
ミセ*゚ー゚)リ「さ、まずはお昼ご飯を食べちゃいましょう」
( ^ω^)「おっ、わかったお」
母に促され、ブーンも後に続いて部屋に入る。
ショボンへの挨拶はきちんとできたはずだ。
小さく息を吐いて、緊張していた体をほぐす。
机の上にはショボンが淹れたのであろう、飲みかけのコーヒーがある。
( ^ω^)「家の中、コーヒーのいい香りがするお」
( ´・ω・`)「ふふ、ブーン君にそう言ってもらえると、何だか嬉しいな」
36
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:09:27 ID:Zui5vrAE0
( ´・ω・`)「ブーン君はコーヒー飲めるのかい?」
( ;^ω^)「まだ一回も飲んだことないですお」
( ^ω^)「でも、よく母さんが飲んでいるから、コーヒーの香りは好きになりましたお」
( ´・ω・`)「そうかそうか。本当は今飲ませてあげたいところだけど、あいにく持ってきたコーヒー豆が切れてしまってね」
( ´・ω・`)「うちに着いたら、コーヒーを淹れてあげるから、飲んでごらんよ」
( ^ω^)「おっおっ、ありがとうございますお。楽しみですお」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、ブーン。ショボンがドーナツを買ってきてくれたの」
そう言って母がドーナツを皿に2つ、プレーンとチョコ味のものを盛ってきてくれた。
( ´・ω・`)「うちの近所にあるお菓子屋さんのなんだ。とても美味しいから食べてごらんよ」
( ^ω^)「ありがとうですお!いただきます!」
どちらも美味しそうだが、まずはプレーンから手にとる。
持つとズッシリとしており、チェーン店などのドーナツとは全く違う。
37
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:10:59 ID:Zui5vrAE0
一口食べてみると、口の中にほのかな甘みが広がる。
その甘みはしつこくなく、それでも確かに舌へと残るものだ。
( ^ω^)「とっても美味しいですお!」
( ´・ω・`)「口に合ったのなら良かったよ。ソーサクに着いたら、自分でお礼を言いに行くといい」
( ^ω^)「はい、そうしますお!」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、ホットミルクよ」
母がホットミルクを作って持ってきてくれた。
(*^ω^)「お、ありがとだお」
熱すぎない程度に温めてあり、砂糖は多め。
母の作ってくれるホットミルクも、ブーンは大好きだった。
火傷をしないように、ホットミルクを飲む。
甘い香りが鼻を通り抜け、温かいミルクが胃の中へと流れていく。
外から帰ってきて、冷えていたブーンの体がポカポカと温まっていく。
38
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:12:05 ID:Zui5vrAE0
あっという間にプレーン味を食べてしまい、チョコ味へと手を伸ばす。
こちらも甘すぎず、ビターな味わいだ。
プレーンよりもしっとりとしていて、ホットミルクとの相性は抜群だった。
( ^ω^)「そういえば、つーおばさんは?」
つーとは、ショボンの奥さんだ。
( ´・ω・`)「つーは店の方に出てもらっているよ。帰ったら挨拶をするといい」
( ´・ω・`)「つーも、ブーン君が来るのを楽しみにしているからね」
( ^ω^)「おっおっ、それなら良かったですお」
39
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:12:48 ID:Zui5vrAE0
(*^ω^)「ごちそうさまでしたお」
ホットミルクも飲み干して、手を合わせる。
お腹だけでなく、心まで満たされた気がした。
ミセ*゚ー゚)リ「さ。大きな荷物はもう詰めてるし、あとは細かいものだけ用意してね」
母にそう言われ、手持ちカバンに荷物を入れていく。
読みかけだった本と、財布と、そして・・・。
40
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:13:34 ID:Zui5vrAE0
( ;^ω^)(3人分の宿題かお・・・)
この宿題をソーサクへと持って行こうかどうか、少し躊躇してしまう。
( ´ω`)(これがなかったら、もっと乗り気でソーサクに行けるのに)
クシャクシャにして、ゴミ箱へ捨ててしまいたい。
ため息をかみ殺して、それもカバンへと突っ込む。
( ω )(今日の夜も、少しやらないと終わらなさそうだおね)
叔父たちには疲れたと言って、早く部屋に行かせてもらおう。
心なしか、手に持ったカバンがとても重く感じた。
41
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:14:41 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)「叔父さん、準備できましたおー」
( ´・ω・`)「そうか。そしたら、そろそろ出発しようか」
ミセ;゚ー゚)リ「・・・本当にありがとうね、ショボン」
( ´・ω・`)「いいよ別に。うちには子どもいないし、冬休みの間はブーン君を息子として迎えるさ」
ミセ*゚ー゚)リ「ブーンも、迷惑かけないようにね。それと、風邪だけはひかないようにね!」
( ^ω^)「平気だお!」
ミセ*゚ー゚)リ「そしたら、いってらっしゃいね」
( ^ω^)「いってきますお!時々電話かけるおー!」
母への挨拶を済ませた後、ショボンの車へと乗り込む。
42
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:15:43 ID:Zui5vrAE0
( ´・ω・`)「さて、ソーサクへは結構かかるからね。具合が悪くなったりしたら言ってくれ」
( ^ω^)「わかりましたお」
ショボンがエンジンをかけ、ゆっくりと駐車場の外へと車を進める。
(*^ω^)ノシ「いってきますおー!」
窓を開けて、家の前で見送ってくれている母へと手を振る。
ミセ*゚ー゚)リ「いってらっしゃーい」
ブーンの声に手を振り返す母の笑顔を見ると、何故だか胸が締め付けられる。
43
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:17:07 ID:Zui5vrAE0
ショボンの運転する車は、国道へと抜けていく。
カーステレオからは、ショボンのイメージとはあまり結びつかないような、ロックな曲が流れている。
( ´・ω・`)「こう見えて、元々はパンクロック好きなんだよ」
ショボンがブーンの心を見透かしたかのように言う。
( ^ω^)「おっおっ、やっぱり叔父さんのイメージはジャズとか、そういうオシャレな曲でしたお」
( ´・ω・`)「もちろん、ジャズとかも大好きだよ。コーヒーを飲むときの雰囲気に合うからね」
( ´・ω・`)「でも、ドライブとかの時は、こういうノリやすい曲の方が良いんだ」
( ^ω^)「確かに。英語だから歌詞はわからないけど、何だかかっこいいですお」
( ´・ω・`)「そうだろう?」
( ´・ω・`)「〜♪」
曲に合わせ、ショボンはフンフンと鼻歌を歌う。
Day after day your home life's a wreck...
The powers that be just breathe down your neck...
You get no respect, you get no relief...
You gotta speak up and yell out your piece....
44
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:18:35 ID:Zui5vrAE0
ショボンの運転する車は、ソーサクへと繋がる高速道路を走っていた。
( ´・ω・`)「あと30分ほどで着くからね」
景色はどんどんと、後ろへ流れていく。
ソーサクに近づくにつれ、周りは雪景色へと変わっていった。
(*^ω^)「綺麗だおー」
遠く見える山も、広大な畑も、雪に覆われて太陽の光を反射している。
ブーンの住んでいる町、ビップには、雪があまり降らない。
そのため、このきらめくソーサクの雪景色に胸を打たれる。
( ´・ω・`)「そうだね。こう晴れた日には、余計にそう見える」
( ´・ω・`)「白く輝く大地に、青く澄んだ空。僕は冬のソーサクの景色が大好きなんだ」
( ´・ω・`)「ブーン君も、少しでもこの景色を好きになってくれたら嬉しいよ」
45
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:19:13 ID:Zui5vrAE0
ソーサクで過ごす冬休みが楽しみになればなるほど、押し付けられた宿題のことを思い出してしまう。
( ^ω^)(楽しくなればいいお・・・)
段々とモヤモヤが広がっていき、胸がチクリと痛む。
ふと、車の窓から見えた雪原には、キツネの親子がじゃれ合いながら走っていた。
46
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:20:39 ID:Zui5vrAE0
( ´・ω・`)「さて、着いたよ」
( ^ω^)「ありがとうございましたお」
ずっと同じ体勢で座っていたため、身体が強張っている。
車から降り、ぐっと伸びをすると、全身に血が巡っていく。
( ;^ω^)「おっ、やっぱり寒いおね」
温かかった車内から出たため、余計に寒く感じる。
【喫茶 ひととき】
ショボンの家、喫茶ひとときのドアにはOPENの札が掛かっている。
店の外見は、普通の2階建の民家のようだ。
( ´・ω・`)「流石に荷物を持ったまま、店の方から入るのはあれだからね。まずは荷物を運ぼうか」
ショボンの手を借りて、車から荷物を運び出す。
( ´・ω・`)「1階を店として使っていて、2階が生活スペースだ。ちょっと狭く感じるかもしれないが我慢してくれ」
そう言って、ショボンが家のドアを開ける。
47
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:21:41 ID:Zui5vrAE0
その瞬間、コーヒーのいい香りが漂ってきた。
(*^ω^)「すごくいい香りがしますお。いつもコーヒーの匂いがするなんて、何だか羨ましいお」
( ´・ω・`)「僕にとってはどんな香水よりも、コーヒーの香りの方が魅力的に思えるよ」
重たい荷物を落とさないように気をつけながら、階段を上っていく。
( ´・ω・`)「ブーン君はこの部屋を使ってくれ」
( ^ω^)「わかりましたお」
( ´・ω・`)「僕は店に出て、つーと交代してくるよ。ひと段落ついたら、ブーン君も店に降りてくるといい」
ショボンは部屋の真ん中へブーンの荷物を置いて、1階へと降りていく。
荷ほどきといっても、とりあえずは手持ちかばんから細々したものを出すだけだった。
( ;^ω^)(あっ、この宿題は見られたらマズいおね‥‥‥)
流石に3人の宿題を持っているのがバレたら、疑問に思われるに違いない。
( ;^ω^)(とりあえず、こうして誤魔化すかお)
ニダーたちの分の宿題は、自分の宿題の間に挟み込んで隠す。
( ^ω^)(こうしたら、ぱっと見量が多いだけだおね)
48
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:23:08 ID:Zui5vrAE0
荷物の整理が終わった頃、1階の方から人が上がってくる気配がした。
(*゚∀゚)「やぁブーン、久し振りだね」
つーが部屋に入ってきて、笑顔で頭を撫でてくる。
(*^ω^)「お久しぶりですお、つーおばさん。冬休みの間は、お世話になりますお」
(*゚∀゚)「いいんだよ、かしこまらなくたって!荷ほどきは終わったのかい?」
( ^ω^)「何となくは終わらせましたお」
(*゚∀゚)「そしたら、下に降りよっか。今はお客さんもいないしね」
(*゚∀゚)「ブーンも早くコーヒーデビュー、しないとでしょ」
(*^ω^)「そしたら、今行きますお」
つーの後に続いて、1階の店へと降りていく。
49
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:24:03 ID:Zui5vrAE0
(*^ω^)「おお・・・」
店の中は、より一層コーヒーの香りで満ちていた。
木目調の落ち着いた内装に、暖色系の照明。
レコードからは小さく、ジャズが流れていて、喫茶店の雰囲気を作り出している。
何とも大人な空間で、緊張してしまう。
( ´・ω・`)「さぁ、ブーン君。座るといいよ」
( ;^ω^)「し、失礼しますお」
ドキドキしながら、カウンター内にいるショボンの向かいへと座る。
( ´・ω・`)「ブーンの記念すべきコーヒーデビューだからね。一応、まずはメニューを見てもらおうか」
ショボンから手渡されたメニューを開く。
50
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:26:03 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)「・・・コーヒーってこんなにたくさん種類があるんですおね」
メニューにはブレンドが4種類、そしてストレートコーヒーが10種類用意されている。
( ^ω^)「ブレンドは何となくわかりますけど、ストレートコーヒーっていうのは?何か色んな国の名前書いてますけど」
( ´・ω・`)「ブレンドコーヒーの反対の意味、と言えば良いのかな?」
(*゚∀゚)「ブレンドっていうのは、何種類かの豆を混ぜているのを言うよね?」
(*゚∀゚)「それに対して、ストレートコーヒーは1種類の豆だけで淹れたコーヒーだよ」
( ^ω^)「なるほどですお」
( ´・ω・`)「コーヒーは農作物だからね。当然品種によって味がガラリと変わるんだ」
( ´・ω・`)「だから、色々なコーヒーを飲んでみて、自分の好きな味の豆を見つけるのも醍醐味なんだよ」
ショボンにそう言われ、もう一度メニューへと目を戻す。
51
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:27:30 ID:Zui5vrAE0
( ;^ω^)(とは言っても、何が何だかわからないし、適当でいいかお)
( ^ω^)「それじゃあ、この"グァテマラ"っていうのをお願いしますお」
( ´・ω・`)「グァテマラだね、わかったよ」
ショボンがコーヒー豆を取り出し、電動ミルで粉にする。
(*゚∀゚)「グァテマラは中々いい選択だと思うよ。とても飲みやすいし、美味しいからね」
( ^ω^)「おっおっ、楽しみになってきましたお」
ショボンがネルドリッパーにコーヒー粉を入れ、お湯を注いでいく。
手慣れている、一連の動作。
手に持つポットの口からは細いお湯がゆっくりと注がれている。
コーヒーを淹れているショボンの姿は、正に職人だった。
慎重に、気持ちを込めて、淹れてくれている。
52
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:28:59 ID:Zui5vrAE0
( ´・ω・`)「はい、お待たせ。グァテマラだよ」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
(*゚∀゚)「まずは一口飲む前に、鼻を近づけて香りを嗅いでごらん」
つーの言う通りに、カップを鼻のそばへ持ってくる。
(*^ω^)「・・・」
インスタントのものとは比べ物にならないほど、いい香りだ。
( ´・ω・`)「いい香りだろう?さぁ、飲んでごらん」
火傷をしないように、慎重にコーヒーを啜る。
( ^ω^)「・・・おぉ」
口に入れた途端、広がる香りと苦味。
しかしその苦味は顔をしかめるようなものでは無く、心が落ち着くような苦味だ。
( ^ω^)「思ったよりも苦くなくて、これなら飲める気がしますお」
( ´・ω・`)「グァテマラはスッキリとした苦味が特徴なんだ。朝に飲むと、また一層美味しく感じるよ」
(*゚∀゚)「良いコーヒーデビューが出来たじゃないか」
つーの言葉に、ブーンも笑顔で返す。
もう一口、コーヒーを飲んでみる。
少し舌が慣れてきたのか、先ほどよりも味がよく分かる気がする。
53
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:30:08 ID:Zui5vrAE0
窓からは、夕陽が優しく差し込んでくる。
聞こえるのは、静かなジャズと、お湯の沸くクツクツという音だけ。
( ^ω^)(とても落ち着くお・・・)
何だか、自分が随分と大人になった気がした。
すると、つーが店の冷蔵庫からチョコレートケーキを一切れ持ってきてくれた。
(*゚∀゚)「うちはデザートだとかは置いていない、完全に飲み物だけの店なんだけどね」
(*゚∀゚)「モララーさんっていうお菓子屋をやってる人が、時折こうやって差し入れをくれるんだよ」
54
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:31:05 ID:Zui5vrAE0
( ´・ω・`)「ほら、今日のお昼に食べたドーナツのお店だよ」
(*^ω^)「なるほど、それなら絶対に美味しいですお!」
(*゚∀゚)「コーヒーにはやっぱり、甘いものが合うからね。食べてごらん」
(*^ω^)「それじゃあいただきますお」
見た目はシンプルなチョコレートケーキだ。
お昼のドーナツが美味しかったこともあり、期待して口に入れる。
(*^ω^)「すっごく美味しいですお」
甘すぎないチョコレートクリームが、苦味に覆われていた口の中を中和してくれる。
何よりスポンジ部分がとても美味しかった。
もう一口と、どんどん食べられてしまう。
その合間に、甘くなった口の中にコーヒーを入れる。
55
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:32:23 ID:Zui5vrAE0
(*´ω`)「幸せだお・・・」
(*゚∀゚)「その年でもうコーヒーの美味しさがわかるなんて、やっぱり最近の子は大人だねぇ」
( ;^ω^)「おっおっ、全然そんなことないですお」
恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
( ;^ω^)(ちょっと調子に乗りすぎたかお・・・)
あんまりいい気になっちゃいけないと自分に言い聞かせ、残りのケーキとコーヒーを食べる。
(*^ω^)「ごちそうさまでしたお」
(*゚∀゚)「口にあったようで何よりさ」
( ´・ω・`)「店閉めるまでまだ時間もあるし、モララーさんのところへお礼を兼ねて挨拶に行っておいでよ」
( ´・ω・`)「ブーン君が遊びに来ていることは話していたし」
(*゚∀゚)「それがいいね。この道沿いに行ったら見えてくるから、すぐわかると思うよ」
( ^ω^)「そしたら、そうしますお」
56
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:33:18 ID:Zui5vrAE0
自分の荷物の中から、コートを取り出して羽織る。
( ´・ω・`)「もう日も暮れてるし、気をつけるんだよ?」
(*゚∀゚)「あ、ツンちゃんにも挨拶忘れないでね」
( ;^ω^)「ツ、ツンちゃん??」
(*゚∀゚)「モララーさんのとこの娘さんだよ。丁度ブーンと同い年だから、仲良くしなよ」
( ;^ω^)「わ、わかりましたお・・・。そしたら行ってきますお」
急に女の子の話が出て、何だかよくわからないままに頷いて家から出る。
外に出るとだいぶ暗くなっていて、空気も一段と冷たくなっている。
57
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:34:19 ID:Zui5vrAE0
((( ;^ω^)))「おおお、かなり寒いお・・・」
コートのポケットに手を突っ込み、ショボンたちに言われた通りに道沿いをずっと歩く。
ぎゅっぎゅっと雪を踏む音が道に響く。
(;´ω`)(女の子かお・・・。ウザがられたりしたら嫌だおね)
普段、クラスメイトの女子からは無視されたり、陰口を言われたりしている。
そのため、まともに女子と話したことなんて数える程しかない。
夜道を1人で歩いているのもあり、心細くなってくる。
58
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:36:16 ID:Zui5vrAE0
( ^ω^)(お、あれかお?)
悩みながら歩いていると【茂良菓子舗】と書かれた看板が見えてきた。
( ^ω^)(オシャレなお店だおね)
外から店の中が見えるように、道路に面した壁がガラス張りになっている。
そこから、女性の店員がケーキを並べているのが見える。
呼吸を整えてから、店内へと入る。
(゚、゚トソン「いらっしゃいませー」
店員がケーキを並べる手を止めて、ブーンに声をかける。
( ;^ω^)「あ、あの、モララーさんいますかお?」
(゚、゚トソン「あら、もしかしてショボンさんのところに遊びに来てるっていう・・・」
( ^ω^)「あ、そうですお。内藤ホライゾンと言いますお。叔父さんとかからはブーンって呼ばれてますが」
(゚、゚トソン「じゃあ、改めていらっしゃいませ、ブーン君。今モララーを呼んできますね」
( ^ω^)「はい、お願いしますお」
店員さんが厨房へとモララーを呼びに行く。
59
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:37:55 ID:Zui5vrAE0
待っている間、ケーキが並べられているショーケースを眺める。
ショートケーキやチーズケーキ、シュークリームなど、美味しそうな洋菓子が綺麗に陳列されている。
( ・∀・)「ドーナツはお口に合ったかな?」
急に声がしたので、驚いて顔を上げるとモララーが笑顔で立っていた。
( ・∀・)「ブーン君だね?ショボンさんから聞いてるよ。僕がモララーで、こっちが妻のトソンだよ」
( ^ω^)「おっ、はじめましてですお。ドーナツもケーキも、とても美味しかったですお」
( ・∀・)「ははは、それなら良かったよ。冬休み中はこっちにいるんだろう?いつでも遊びに来るといいよ」
(゚、゚トソン「そうですね、ツンとも仲良くしてあげてください」
( ・∀・)「そうだ、ツンとも顔合わせておいたほうがいいね」
ちょっと待っててくれ、とモララーがツンを呼びに行く。
( ;^ω^)「あ、ま・・・」
( ;^ω^)(うう、やばいお。まだ心の準備もできてないし。というか今日は緊張することが多すぎるお)
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。ツンは少し気が強いけど、根は優しい子ですから」
不安そうなブーンを見て、トソンが微笑む。
60
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:39:00 ID:Zui5vrAE0
( ・∀・)「お待たせ。これがうちの娘のツンだよ」
モララーの後ろについてきたツンは、小さな顔に切れ長の目、小柄ながらその雰囲気は自信に満ちている。
( ;^ω^)(か、かなり可愛いお・・・)
ξ゚⊿゚)ξ「はじめまして、ツンよ。冬休み中はソーサクにいるんですって?」
( ;^ω^)「な、内藤ホライゾンです。ブーンって呼んでくださいお」
( ;^ω^)「ショボン叔父さんのところでお世話になってますお・・・」
心の準備も出来ていないうちに、さらに予想以上に可愛い女の子が出てきて、うまく挨拶ができない。」
ξ゚ー゚)ξ「ブーン、ね。私のことはツンでいいわ。それに、同い年なんでしょ?敬語なんて使わなくてもいいわよ」
おどおどしているブーンが可笑しかったのか、ツンが笑いながら言う。
61
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:39:50 ID:Zui5vrAE0
ξ゚⊿゚)ξ「そうだ、明日は暇?他にも同い年の子がいるし、会わせてあげるわ」
( ;^ω^)「特に何も予定はないお!」
( ;^ω^)(あっ、吃らないようにしたら声おっきくなったお・・・)
ξ゚⊿゚)ξ「わかったわ。そしたら明日の13時に迎えに行くわ」
言葉での返答は諦め、コクコクと頷く。
( ・∀・)「そしたら、気をつけて帰るんだよ?ショボンさんにもよろしく言っておいてくれ」
( ^ω^)「わかりましたお!」
3人に見送られ、ショボンの家へと帰る。
冬の夜風は先ほどと変わらず冷たかったが、気持ちは軽くなっていた。
62
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:40:59 ID:Zui5vrAE0
明日は友だちに会わせてあげると言っていた。
そのことがとても嬉しかった。
(;´ω`)(ただ、話すときに動揺しすぎたお。笑われて恥ずかしかったし・・・)
歩きながら、自分の挨拶を思い出して情けなくなる。
今日みたいな挨拶だったら、バカにされてしまうかもしれない。
( ;^ω^)(十分、気をつけないといけないおね)
( ^ω^)(それにしても、ツンは可愛かったお・・・)
思い出して、少し顔が熱くなる。
明日への不安もあるが、友だちが出来るかもしれないという希望と、またツンに会えるという事実が嬉しかった。
( ´ω`)(だから今日は、少しでも宿題進めるかお・・・)
一瞬風が強くなり、積もっていた雪が中へと舞い上がった。
63
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/03/31(木) 23:41:41 ID:Zui5vrAE0
以上、第1章【冬休みのはじまり】でした
64
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 00:50:08 ID:shRcPAOE0
乙
いいねいいね
65
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 01:17:04 ID:RUbU.auI0
乙乙
コーヒー飲みたくなった
66
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 12:16:29 ID:pFARnPJg0
乙
こういう雰囲気だいすき
67
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:26:57 ID:6CJd7nVo0
( ^ω^)「それじゃあ、いってきますお」
( ´・ω・`)「うん、帰りもあまり遅くならないように気をつけるんだよ」
(*゚∀゚)「ツンちゃん、ブーンのことよろしくね」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、おばさん。それじゃ、いってきます」
昨日の約束通り、13時きっかりにツンがブーンを迎えに来てくれた。
おそらくは外で遊ぶことになるだろうとツンが言うので、スキーウェアに着替える。
ツンは淡いピンク色のスキーウェアに身を包み、同じ色のニット帽を被っている。
寒さから鼻や頬が少し赤くなっていた。
68
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:28:50 ID:6CJd7nVo0
見惚れかけたが、気持ち悪いと思われそうなので、なんとか意識して視線をそらす。
ξ゚⊿゚)ξ「多分、みんなもう学校のグラウンドに集まっていると思うわ」
( ^ω^)「今日会う友だちって、何人くらいいるんだお?」
ツンたちの通うソーサク小学校へと向かう道中、疑問に思っていたことを聞いてみる。
ξ゚⊿゚)ξ「いっつも遊んでるのは、私も入れて5人ね」
ξ゚ー゚)ξ「ま、みんな良いやつだし安心していいと思うわよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういや、ブーンは冬休み中に友だちと遊ぶ予定とかなかったの?」
( ^ω^)「うーん、みんなおばあちゃんの家とか行ったりしてて、僕だけ暇だったんだお」
69
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:29:55 ID:6CJd7nVo0
スラスラと嘘をつき、ツンもそうなんだとすぐ納得してくれた。
( ;^ω^)(いじめられてて友だちは一人もいません、なんて言えるわけないお)
必ずこの手の質問は誰かからされると思い、受け答えを考えていた。
歩きながら、ひたすらみんなへの自己紹介のイメージトレーニングを繰り返す。
ξ゚⊿゚)ξ「さ、着いたわよ」
ソーサク小学校は、ブーンの通っている小学校よりも小さい校舎だった。
70
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:31:28 ID:6CJd7nVo0
(*^ω^)「おおぉ・・・」
広いグラウンドには雪が積もり、光を反射してキラキラと輝いている。
その光景に思わず声が漏れる。
ブーン自身、雪遊びは数える程しかしたことがないため、この光景は新鮮なものだった。
グラウンドの中央にはツンの友だちであろう4人が、こちらの方へ手を降っている。
ツンもそれに笑顔で応えて走っていったため、ブーンもその後を追う。
从 ゚∀从「おっせーよツン!」
ξ゚⊿゚)ξ「悪いわね、待たせちゃって」
_
( ゚∀゚)「お前が遅刻するなんて珍しいな」
_
( ゚∀゚)「ん?てかそいつ誰だ?」
キリっとした眉毛の男子がブーンのことを指差す。
71
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:33:08 ID:6CJd7nVo0
ξ゚⊿゚)ξ「冬休みの間、ビップからショボンさんのとこに遊びに来てるブーンよ。ブーンを連れてきたから、遅れちゃったの」
( ^ω^)「は、はじめまして。内藤ホライゾンですお。ブーンって呼んでほしいお」
_
( ゚∀゚)「へー!ビップからか!それにしても、冬休みの間って結構長いこといるんだな」
_
( ゚∀゚)「あ、俺はジョルジュってんだ。よろしくな、ブーン」
( ^ω^)「あ、よろしくだお」
手袋をしたまま差し出されたジョルジュの手を握り返す。
ジョルジュは見た目こそ少し怖いが、その笑顔は爽やかだった。
72
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:34:13 ID:6CJd7nVo0
ジョルジュに続いて、他のみんなも自己紹介をしてくれる。
从 ゚∀从「あたしは高岡ハインってんだ。よろしくな」
( ;^ω^)「おっ・・・、よろしくだお」
先ほどツンと話をしていた、ボーイッシュな女の子、ハインがブーンの肩をバシバシと叩きながら言う。
思ったよりも力が強く、少し狼狽えてしまう。
川 ゚ -゚)「こら、ハイン。初対面の相手をバシバシと叩くんじゃないよ」
すると、そんな様子を見て長い黒髪の女の子がハインを止めてくれた。
73
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:35:47 ID:6CJd7nVo0
从; ゚∀从「いや、これはあたしなりのスキンシップだよ」
川 ゚ -゚)「そんなのするのアメリカ人くらいだろう。それに、お前は男並みに力が強いんだし」
ため息混じりで、呆れるように言う。
川 ゚ -゚)「さて、私は素直クール。みんなからはクーと呼ばれているよ」
よろしくな、と言ってクーが手袋を脱ぎ、ブーンに右手を差し出す。
女の子と手を繋いだ事などないため、本当に手を握り返して良いものか悩む。
( ;^ω^)「こちらこそよろしくだお」
恐る恐るクーと手を握り返す。
74
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:37:12 ID:6CJd7nVo0
('A`)「あ、俺・・・。鬱田ドクオっていうんだ」
声が小さいドクオが、ブーンに軽く頭を下げる。
( ^ω^)「よ、よろしくだお!」
ξ゚ー゚)ξ「よし、これで全員と挨拶したわね」
ツンが満足そうに笑顔で言う。
_
( ゚∀゚)「よーし。そしたら今日は何をするかね」
( ^ω^)「僕、こんなたくさんの雪で遊んだ事ないお」
川 ゚ -゚)「そういや、父さんがビップはほとんど雪が積もらないとこだと言ってたな」
从 ゚∀从「おう!そしたらさ、こうしようぜ!」
ブーンの後ろからハインが大きな声で言うので、何をするんだろうとハインの方へ振り返る。
75
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:39:30 ID:6CJd7nVo0
(; ゚ω゚)「ッヘブ!!」
その瞬間、ハインが投げた雪玉が顔面に直撃した。
从* ゚∀从「やっぱり雪遊びといえば雪合戦だろ!」
(;+ω+)「おっおっ・・・」
顔についた雪を払いのけて目を開けると、ハインはすでに5個以上の雪玉を持っていた。
从 ゚∀从「いくら新参者だからって、容赦はしn」
从 ∀从「ぶへぁ!」
_
( ゚∀゚)「仕掛けてきたくせに長々と話をするなんざぁ、なめてやがるぜ!」
ξ゚⊿゚)ξ「今のはやられたブーンの分よ」
ツンの投げた雪玉はハインの顔にヒットし、ハインは仰向けで倒れてしまった。
76
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:40:39 ID:6CJd7nVo0
その隙にブーンも立ち上がり、ジョルジュとツンの近くに行く。
(;´ω`)「おっおっ、ありがとうだお」
_
( ゚∀゚)「そんなん良いって事よ!」
从; ゚∀从「人が話してる時くらい、手を出さないのが普通だろ!」
ハインがガバッと起き上がり、顔を振って雪を払う。
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってるの?先に仕掛けてきたのはハインじゃない」
从; ゚∀从「ええい、やかましい!」
从# ゚∀从「クー!ドクオ!!」
ハインの号令により、クーとドクオがブーンたちを取り囲むように配置を組む。
いつの間にか、クーとドクオの手にも雪玉が握られている。
77
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/01(金) 22:42:25 ID:6CJd7nVo0
_
(;゚∀゚)「しまった、囲まれたか!」
ξ;゚⊿゚)ξ「な!?裏切ったわね、クー!この前あんたにシュークリームあげたじゃない!」
川 ゚ -゚)「ん?ああ、あの時か。悪いな、私はエクレアの方が好きなんだ」
何食わぬ顔で、クーが受け答える。
从 ゚∀从「やっちまえお前ら!」
その一声とともに、三方向から雪玉が飛んでくる。
( ;^ω^)(これが雪合戦かお・・・)
何だかよくわからないうちに始まった、一方的な雪合戦。
ブーンたちは雪玉を避ける事が出来ず、みんな雪の上へと倒れた。
(; ゚ω゚)「ブホォ!」
ブーンだけは、また顔面に雪玉をくらいながら。
78
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:43:31 ID:6CJd7nVo0
('A`)「大丈夫か?」
(;´ω`)「へ、平気だお」
ドクオの手を借りて、体を起こす。
(;'A`)「ご、ごめんな。まさか顔に当たると思ってなくて・・・」
ドクオがあたふたとしながら謝る。
決してブーンの顔を狙ったわけではなく、コントロールをミスしてしまったらしい。
( ;^ω^)「全然平気だお。それに・・・」
顔について溶けてしまった雪を拭う。
体が火照っているため、雪の冷たさが気持ちよかった。
(*^ω^)「それに、すっごく楽しかったお!!」
満面の笑みでみんなに言う。
79
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:47:16 ID:6CJd7nVo0
その笑顔につられて、他のみんなも大きな声で笑った。
_
( ゚∀゚)「よし、ブーン!今日から俺たちは友だちだし、明日からも暇だったら遊ぼうぜ!!」
(*^ω^)「ほ、本当にかお!?嬉しいおー!」
从 ゚∀从「よーし!そうと決まったら、早く雪合戦の続きしようぜ!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー、裏切ったこと後悔させてあげるわ」
川 ゚ -゚)「人と人との繋がりなんて簡単に崩れてしまうんだよ、ツン。そう、まさにこの雪のようにな」
_
( ゚∀゚)「くらえドクオ!」
('A`)「遅いな」
(#^ω^)「時間差だお!」
('A`)「それも読んでる」
从* ゚∀从「隙だらけだな!」
_
(;゚∀゚)「ぐはぁ!」( ω ;)
80
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:48:29 ID:6CJd7nVo0
―――――――
―――――
―――
_
( ゚∀゚)「そしたら、また明日も今日くらいの時間になー!」
川 ゚ -゚)「わかったよ。みんな気をつけてな」
('A`)「また明日な」
从 ゚∀从ノシ「じゃーなー!ブーン、明日も続きやっからな!」
(*^ω^)ノシ「おっおっ、わかったおー!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、私たちも帰りましょっか」
ツンと2人、暗くなった帰り道を歩く。
あれから時間を忘れて、雪合戦をしていた。
81
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:49:35 ID:6CJd7nVo0
ドクオに向かって本気で雪玉を投げても、いとも簡単に躱されてしまう。
そして雪玉を投げた後の隙を狙って、ハインの豪速球が飛んでくる。
もう今日は何発、顔に雪玉が当たったかわからない。
ジョルジュと一緒に雪に倒れるたび、何度も顔を見合わせて笑った。
( ^ω^)(でも、本当に楽しかったお)
今では、スキーフェアの隙間から背中に入った雪の冷たさが気持ちよく感じる。
82
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:55:08 ID:6CJd7nVo0
( ^ω^)「ツン、今日は誘ってくれてありがとうだお」
ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ別に。いつも同じメンバーだから、新鮮だったし」
ツンは手の中で雪玉を一つ、ギュッギュッと固めながら歩いている。
ξ゚ー゚)ξ「それに、別に一緒に遊ばない理由がないしね」
ツンは何も特別な意味を込めて放った言葉ではないだろう。
ただ、その言葉は涙が出てしまいそうなくらい嬉しかった。
友だちと呼べる人なんて、思い当たらない。
学校でも、遊ぼうなんて声はかけられない。
ソーサクに遊びにきて良かったと心から思った。
83
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:57:18 ID:6CJd7nVo0
2人でたわいもない会話をしていると、喫茶ひとときの前まで来ていた。
ξ゚⊿゚)ξ「さーて、とっ!」
(; ゚ω゚)「ヌォウ!?」
じゃあまた明日、と言おうとした瞬間。
ツンがガチガチに押し固めた雪玉をブーンの頭に投げつけた。
雪玉は砕けることなく、そのまま雪の上へと転がった。
( ;ω;)「い、痛いおツン!何するんだお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「あはははは!あんたのリアクションが面白いから見たかっただけよ」
( ;ω;)「それだけのために僕はこんなダメージを!」
ξ゚ー゚)ξ「ま、それも運命よ。そしたら、明日また迎えにくるわね」
( ^ω^)「全く意味がわからないお。とりあえず、また明日だお!」
ξ゚ー゚)ξノシ「じゃ、またね」
ツンが笑顔で手を振る。
その笑顔に、ブーンはドキドキしてしまう。
ただ、可愛いからドキドキしてしまうのか、はたまた別の理由なのか。
それはまだブーンには分からなかった。
84
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 22:59:04 ID:6CJd7nVo0
(*^ω^)「はぁぁぁ〜」
湯船にゆっくりと、静かに浸かっていく。
身体が冷えているため、最初はとても熱く感じる。
だが、それを我慢して乗り越えると、何とも言えない快感がやってくる。
( ^ω^)(雪国の人は、毎日こんな気持ち良くお風呂に入ってるのかお)
ビップも寒いが、やはり雪があるのとないのでは全然違うんだなと思う。
( ^ω^)(とにかく、今日は本当に楽しかったお。明日からも遊んでもらえるし)
(*^ω^)(ふふ、友だちだお・・・)
夢にまで見た、友だち。
今は何よりも、自分に友だちが出来たことだけが嬉しかった。
( ^ω^)(みんな優しいお・・・。ニダーやセントとかに比べると全然)
ジョルジュやハインは、あの元気さだ。
きっとクラスの人気者なんだろう。
85
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:00:08 ID:6CJd7nVo0
だけどそんな彼らでも、自分を友達だと迎えてくれる。
ビップではいじめられている自分と遊んでくれる。
嬉しいが、不安なこともある。
今まで友だちがいなかったから、みんなとどう接したら良いのかわからない。
とりあえず控えめに、でしゃばらないように。
うざがられないように、嫌われないように。
いじめられてるのも、知られないように。
( ´ω`)(みんなにまで嫌われるのは嫌だお・・・)
ジャブン、と顔にお湯をかける。
( ω )(・・・母さんとの電話終わったら、宿題しないとだお)
少しのぼせかけていたので、風呂から出ることにした。
86
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:01:25 ID:6CJd7nVo0
( ´・ω・`)「・・・あぁ。ブーン君は電話が終わったあと、宿題をするって言って部屋に行ったよ」
『本当にごめんね、迷惑かけて』
( ´・ω・`)「平気だって。つーも喜んでるからさ」
( ´・ω・`)「それに、ミセリも話聞いただろ?ブーン君も楽しんでくれてる」
『うん、良かったよ』
(;´・ω・)「でも、信じられないな。ブーン君がいじめられているなんて」
『・・・ランドセルとかもボロボロよ。ブーンは転んだって言っているけどね』
『冬休みの宿題も、他の子たちのを押し付けられてるみたいなの。私には隠してるみたいだけど』
( ´・ω・`)「そうなのか。道理で熱心に宿題をしていると思ったけど・・・」
87
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:03:52 ID:6CJd7nVo0
(´-ω-`)「恐らく、ブーン君もミセリに気を遣ってるから話せないんだろうね」
『そうね。私も仕事で忙しいから』
『結局、私にブーンと話をする勇気がないのが、一番ダメなんだよ・・・』
『私が片親だからいじめられてるんだって考えたら、中々言い出せなくて・・・』
『親の私が何とかしないといけないのにね。
ショボンたちに迷惑かけちゃうし、何より子どもに気を遣わせちゃって・・・』
(;´・ω・)「一人で抱え込むのはミセリの悪い癖だよ。大丈夫、友だちもできたみたいだし」
( ´・ω・`)「でも、ブーン君はどこかで自分から助けを求めないと、とは思う」
( ´・ω・`)「一人で抱え込むのは、あまりに重すぎるし、このままだったら周りに壁を作ったまま過ごすことになる」
88
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:05:18 ID:6CJd7nVo0
(´-ω-`)「何かきっかけはあるだろうし、何より僕はコーヒー屋だからね。任せてくれよ」
『本当にありがとう。とりあえず、また連絡するね?』
( ´・ω・`)「ああ。あまり自分を責めないようにね」
電話が終わり、夜の【喫茶ひととき】に一瞬の静寂が訪れる。
窓の外は、どうやら雪が降っているようだ。
( ´・ω・`)「ふぅ・・・」
(´-ω-`)(大変なんだな、親は・・・)
2階からはテレビを観ているのか、つーの笑い声が聞こえた。
89
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:07:50 ID:6CJd7nVo0
( ^ω^)「今日は雪だおねー」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、ビップはこんなに雪降らないんだっけ?」
ツンと2人で話しながら学校まで歩く。
昨日よりはスムーズに会話できるようになっていた。
( ^ω^)「そうだお。降ってもすぐに止んじゃうから、積もることなんて滅多にないお」
昨日の夜から、雪が降り続いていた。
深々と降る雪というのは、ビップで見ることが出来ない。
そんな雪国ではありきたりなことに、小さな感動を覚えた。
ξ゚⊿゚)ξ「ま、あんまり降られるのも困りものだけどね」
ξ;゚⊿゚)ξ「朝、布団から出るのもつらいし、雪はねは手伝わないといけないしで」
( ^ω^)「うーん、やっぱりそういうものなのかお」
90
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:09:03 ID:6CJd7nVo0
( ^ω^)「今日は何するんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「さぁ?最近はハインもジョルジュも雪合戦にハマってるみたいだし、昨日言ってた通り今日もそうなんじゃない?」
今日こそはドクオに雪玉を当てるぞ、と心の中で意気込んでいると、いつの間にか学校へと着いていた。
グラウンドにはもうドクオとクーが来ており、こちらに手を振っている。
('A`)ノシ「よっす。ツン、ブーン」
( ^ω^)「こんにちはだお」
ξ゚⊿゚)ξ「クーがもう来てるだなんて珍しい。いつもは割と最後の方に来るのに」
川 ゚ -゚)「何だ何だ。私だって、たまにはみんなより先にくる日だってあるさ」
( ;^ω^)「クーは時間にルーズなタイプなのかお?」
川 ゚ -゚)「ふふ、違うよブーン。私をそんなダメな人間だと思わないでくれ」
91
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:10:11 ID:6CJd7nVo0
('A`)「学校でも、いっつもチャイムギリギリで学校に来るんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何なら遅刻もしてるしね」
川 ゚ -゚)「悪く聞こえるように言うな。ちょっとばかしスリルを味わいたい年頃なだけさ」
( ;^ω^)「昨日から思ってたけど、クーは少し変わってるのかお?」コソコソ
(;'A`)「そのうち慣れちまうさ」コソコソ
从 ゚∀从「お?何だ、もうみんな来てんのか」
4人で話していると、ハインとジョルジュが一緒に走ってくる。
_
( ゚∀゚)「おいーっす!あ、ブーンも来てくれてんだな!」
ジョルジュが明るい笑顔を見せて、ブーンの肩を叩く。
92
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:11:05 ID:6CJd7nVo0
川 ゚ -゚)「さ、鬼ごっこをしよう」
_
(;゚∀゚)「・・・随分と唐突だな」
( ;^ω^)「二人に挨拶する暇もないお」
从 ゚∀从「クーがいつもより早く来てっから何か言い出すと思ってたよ」
川 ゚ -゚)「それなら話は早いじゃないか。鬼は2人でやろう!」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・あんた本当に鬼ごっこ好きよね」
( ;^ω^)「ん?この雪の上で鬼ごっこするのかお?」
('A`)「そうだよ。確かに、雪慣れしてないブーンにとっては走るのもちょっとキツいかもな」
川 ゚ -゚)「それならブーンは最初鬼じゃなくても良いぞ」
( ^ω^)「おっ・・・、お言葉に甘えてそうするお」
93
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:12:29 ID:6CJd7nVo0
鈍臭そうな見た目だが、走ることは苦手ではない。
むしろ、周りに比べると早い方だと思っている。
しかし、あまり履き慣れていない長靴というのと、この雪の上ではいつものようには走れないだろう。
( ;^ω^)(深いとこだと膝くらいまで埋まるし・・・)
まずは走ることに慣れることを目標にして、鬼を決めるためのジャンケンを見守る。
川 ゚ -゚)「よーし、負けた奴2人が鬼だからな」
川 ゚ -゚)「最初はグー!ジャンケンホイ!!」
クーの掛け声とともに、全員が自分の手を出す。
_
(;゚∀゚)「うげっ!」
从; ゚∀从「おいおい、マジかよ・・・」
勝負は一回で決まり、鬼はクーとツンになった。
川 ゚ー゚)「よし、ツン。私たちの本気を見せてやろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。最短で決めるわよ」
自信満々な2人は、項垂れている他のみんなの隣でガッチリと肩を組んでいる。
( ;^ω^)「あの2人、そんなに速いのかお?」
从;-∀从「かなり速いぜ。何より連携が取れすぎてる。ちょっとやそっとじゃ振り切れないぜ」
94
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:13:46 ID:6CJd7nVo0
川 ゚ -゚)「ブーンのために、念のためルールを確認しておこうか」
クーが肩組みを外し、人指し指を立てる。
( ^ω^)「悪いけど、お願いするお」
川 ゚ -゚)「ま、やるのは普通のこおり鬼だがね。鬼にタッチされた人はその場で凍って動けなくなる」
川 ゚ -゚)「そして、鬼以外の人にタッチしてもらうことで動けるようになる」
川 ゚ -゚)「鬼側は出来る限り凍ってる人の近くにはいないようにする。全員を凍らせたら鬼側の勝ちさ」
川 ゚ー゚)「それと、相手に雪玉を投げつけるのもありだ。逃げる相手への攻撃や追ってくる鬼を退ける時に投げつけろ」
基本的には普通のこおり鬼とルールは変わらない。
加わるのは【雪玉を投げつけてもよい】という、正直何でもありな雪国特有のルールだ。
95
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:15:20 ID:6CJd7nVo0
( ^ω^)「おっ、大体わかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「難しいルールでもないし、やってたらわかるでしょ。フィールドはこのグラウンド内全てよ」
ツンの言葉に、今一度グラウンドを見渡してみる。
鬼ごっこをするには少し広すぎるほどだ。
( ;^ω^)(でも雪に足を取られてうまく走れなさそうだし、これくらい広くないと逃げられなさそうだおね)
気合いを入れるため、その場で1度屈伸をする。
川 ゚ -゚)「さ、始めようじゃないか」
从# ゚∀从「クッソ、やるからには今日こそ逃げ切ってやるからな!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、キャンキャン鳴いてる暇があるなら逃げた方がいいわよ?」
川# ゚ -゚)「10秒数えるぞー!いーちっ!にぃーい!」
_
(;゚∀゚)「よし逃げるぞ!!全力で走れ!!」
ジョルジュの声とともに、4人は一斉に広大なグラウンドの向こうへ散らばる。
( ;^ω^)「で、できるだけ鬼からの距離を・・・」
ブーンも、何とかクーたちからの距離を稼ごうと走る。
96
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:17:10 ID:6CJd7nVo0
( ;^ω^)(うっわ、雪めっちゃ重いお!!)
雪に足を取られて中々上手く走れない。
普通に走るよりも足を高く上げないといけないため、想像以上につらい。
川# ゚ -゚)「・・・きゅーう!じゅう!!」
( ;^ω^)「はぁ、はぁ・・・。ヤバいお、もう鬼がスタートしたお」
10秒数える間に走っただけで、もう息切れをしてしまう。
この状態で追いかけられてはマズいと思い、できるだけゆっくりと呼吸をして息を落ち着かせる。
ξ゚⊿゚)ξ「クー、まずは1番近いドクオから片付けましょう」
川 ゚ -゚)「そうするか。私は右から攻める!援護を頼むぞ!」
(;'A`)「うぉ、こっちに来やがった!」
走るのはあまり得意じゃないドクオが、真っ先に2匹の鬼の目に止まる。
クーが雪の上とは思えない程の軽快な走りで、ドクオの元へと駆ける。
正に本物の鬼がこっちに向かってくるかのような覇気。
ドクオは冷たい汗が背中に流れるのを感じながら、必死にその場から逃げ出す。
97
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:18:57 ID:6CJd7nVo0
(;'A`)「はぁ、はぁ。やっぱ逃げられねぇ・・・」
川 ゚ -゚)「さぁドクオ!!大人しく捕まらないか!!」
懸命に走るも、クーとの差は縮まるばかりだ。
('A`)(仕方がねぇ・・・!)
このままではすぐに追い付かれてしまうと踏み、右手に隠し持っていた雪玉を握り直す。
(#'A`)「そらっ!!」
川 ゚ -゚)「!?」
一気に後ろを振り返り、クー目掛けて雪玉を投げつける、
はずだったが。
ξ゚⊿゚)ξ「隙だらけね」
(; A )「ぐぇ!」
おぞましいオーラを放つクーに気を取られ、ツンへのマークが甘くなっていた。
いつの間にか回り込んでいたツンに、顔面に向かって雪玉を投げつけられる。
雪の上に倒れたドクオは、そのままクーにタッチされてしまった。
98
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:20:14 ID:6CJd7nVo0
川 ゚ -゚)「よし、まずは1人目」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらほら、逃げてばっかいたらドクオが風邪引くばかりか、雪に埋まってくわよー」
('A`) タスケテクレー
_
(;゚∀゚)「ええい、待ってろドクオ!」
从 ゚∀从「埋まる前に助けてやっから!!」
川 ゚ー゚)「ふふふ、行くぞツン!」
ξ゚⊿゚)ξ「合点!」
_
Σ(;゚∀゚)「ぬぉ、来んじゃねぇ!」
三从; ゚∀从「うぁぁぁ!!」
仰向けの状態で倒れたまま凍りついているドクオを置いて、クーがジョルジュを追い、ツンがハインを追う。
99
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:22:13 ID:6CJd7nVo0
この中で最も足の速いジョルジュだが、雪の上だとそうはいかない。
何がどう違うのか、雪の上ではクーの方が僅かに速いのだ。
_
(#゚∀゚)「おらぁ!!」
追いかけてくるクー目掛けて、あらかじめ用意しておいた雪玉を走りながら投げつける。
_
(;゚∀゚)(雪玉はあと2つ・・・。何とかして、これでドクオを助けねぇと)
ドクオとの距離を確認する。
ジョルジュからは50m以上離れている。
さらに、ドクオから反対方向に追いかけられているため、中々反撃に向かえない。
川 ゚ -゚)「ふんっ!」
_
(;゚∀゚)「ぬぁ!」
どうしたものかと考えながら走っているジョルジュの背中に、クーの雪玉が当たった。
ガチガチに押し固められた雪玉のため、痛みに顔が歪む。
しかし、ここで怯んでしまえばその隙を突かれて捕まってしまう。
一体どこに隠していたのかというほど、立て続けに後ろから飛んでくる雪玉に構うことなく、ジョルジュは走り続けた。
100
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:23:44 ID:6CJd7nVo0
( ;^ω^)「おっ!」
ブーンは、ジョルジュが雪玉を当てられた瞬間を見ていた。
しかし、ジョルジュはそれでも逃げ続けている。
そしてハインも依然としてツンを振り切れず、ドクオ救出の余裕は無いように見えた。
( ;^ω^)(仕方ない、ジョルジュとハインには悪いけど、囮になってもらうお)
今ノーマークなのは自分だけ。
ドクオを助けるには、このチャンスしかない。
ブーンはもう一度、鬼とドクオの位置を確認する。
('A タスケテクレー
雪に埋もれかけているドクオの右側でジョルジュとクーが、左側でハインとツンが追いかけっこをしている。
全力で走れば、ドクオまで何とか辿り着けそうだ。
( ;^ω^)「行くおっ!!」
覚悟を決め、ドクオ目掛けて走り出す。
101
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:25:28 ID:6CJd7nVo0
ξ゚⊿゚)ξ「かかったわね、ブーン!!」
(; ゚ω゚)「なっ!?」
('A ブーン、タスケテクレー
見ると、ツンがこっちに向かって走ってきている。
ドクオまでの距離はまだある。
ツンに追い付かれる前に助けられるかは微妙なところだ。
( ;^ω^)(でも、ここで退くわけにはいかないお)
負けるものかと、必死にスピードを上げる。
ξ;゚⊿゚)ξ(意外に速いじゃない・・・)
(' タスケテ…
(# ゚ω゚)「ぬぉぉぉぉ!!
しかし、ブーンは気が付かなかった。
ドクオを助けることに、ツンから逃れることに必死になるあまり、もう1人の鬼がこちらを睨んでいることなど。
102
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:27:08 ID:6CJd7nVo0
(# ゚ω゚)(勝てるっ!)
ドクオとはもう目と鼻の先。
勝利を確信し、雪に埋まってるドクオに手を伸ばそうとした瞬間、顔の右側に雪玉が直撃する。
( ;ω;)「ぶぎゃ!」
バランスを崩し、ドクオにタッチする前にその場へ倒れてしまった。
( ;^ω^)「痛たた・・・」
何が起こったか分からぬまま、立ち上がろうとする。
川 ゚ー゚)「捕まえたぞ、ブーン」
( ;^ω^)「あっ・・・」
立ち上がる前に、肩に置かれるクーの手。
ξ゚⊿゚)ξ「狙いはジョルジュでもハインでもなく、始めっからブーンだったのよ」
川 ゚ -゚)「意外に走るのが速くて、焦ったがね」
( ;^ω^)「おっおっおっ、参ったお」
"从; ゚∀从「速いし、何より連携が取れすぎてる。ちょっとやそっとじゃ振り切れないぜ」"
鬼ごっこの開始前、ハインの言っていたことを身をもって理解した。
103
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:28:04 ID:6CJd7nVo0
从# ゚∀从「だー!逃げられるわけねぇだろ!」
_
(;゚∀゚)「くそ、何でそんな速く走れんだよ・・・」
川 ゚ -゚)「修行が足らんのだよ」
結局ジョルジュとハインも逃げ切ることが出来ず、全員が捕まってしまった。
タスケテ・・・
Σ( ;^ω^)「あぁ!ドクオがどこにいるかわかんなくなってるお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「正直忘れてたわ」
_
(;゚∀゚)「今掘り起こすぞー!!」
104
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:29:18 ID:6CJd7nVo0
从 ゚∀从「あぁ・・・。疲れた・・・」
_
(;゚∀゚)「久し振りに本気出して走ったわ」
川*゚ -゚)「いやぁ今日は実に楽しかったな!」
(;´ω`)「嬉々としてるおね・・・。僕なんか息切れが治らないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「こんなに輝いた表情のクーは中々見られないからね・・・」
あの後も散々鬼ごっこをしたが、誰も鬼となったクーから逃げることは出来なかった。
ξ゚⊿゚)ξ「そういやさ、あんたたちって宿題やってんの?」ポンポン
ツンがスキーウェアに付いている雪をほろいながら、ハインとジョルジュに聞く。
105
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:30:29 ID:6CJd7nVo0
从 ゚∀从
_
( ゚∀゚)
从; ゚∀从「ま、まだ冬休み始まったばっかじゃんかよ!」
_
(;゚∀゚)「そうだぞ!まずは自由を謳歌すべきだろ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「今年の宿題の量見たでしょ?それだったら間に合わなくなるわよ」
どうやら、ソーサク小学校でも冬休みの宿題が山ほど出されているようだった。
从 ゚∀从「やばくなったらクーに聞くさ」
川 ゚ -゚)「だが断る。自分のことで精一杯なんでな」
从;∀从「おいおい、友だちだろ〜」
膝をついて、クーに泣きつくハイン。
クーはハインを無視して、帽子の雪をほろっている。
( ^ω^)「おっ、そんなにたくさん宿題あるのかお?
_
(;゚∀゚)「来年から中学だからーつってな。迷惑な話だぜ」
(;´ω`)「僕のところもだお・・・。一応コツコツやってはいるけど」
106
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:32:09 ID:6CJd7nVo0
从;∀从「なぁブーン。勉強、教えてくれねぇかな・・・」
涙目になったハインが、今度はブーンにすがってくる。
普段元気なハインがしおらしくなっている姿は、不覚にも可愛いと思ってしまった。
( ;^ω^)「べ、別に僕で良ければだけど・・・。うまく教えられるかはわからないお」
川 ゚ -゚)「ブーン、あんまり甘やかしt 从* ゚∀从「マジかブーン!神だな!!」
川# ゚ -゚)
今までの涙は何処へやら、ハインはスクッと立ち上がり、バンバンとブーンの肩を叩く。
从 ゚∀从「よしっ!明日は全員宿題持ってうちに来い!!」
_
( ゚∀゚)「ブーン!俺にも教えてくれな!」
(*^ω^)「勿論いいお!」
ξ゚ー゚)ξ「呆れた。そしたら、いつもの時間でいいのね?」
从 ゚∀从「おう!待ってるからな!」
107
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:33:54 ID:6CJd7nVo0
川 ゚ -゚)「そしたら、今日は解散しようか。ドクオも震えたままだし」
(((('A`))))
( ;^ω^)「ドクオはそれ平気なのかお・・・?」
(((('A`))))b
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオも平気そうだし、帰りましょ。じゃあ、また明日ね」
_
( ゚∀゚)「おう!じゃーなー!」
(((('A`))))ノシ
朝から止むことなく雪が降り続いているため、帰り道はがっつりと雪が積もっていた。
夜空はほんのりと明るく、2人が雪を踏みしめる音しか聞こえないくらい、辺りは静かだった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンも宿題かなり出てんだ?」
( ^ω^)「そうだおね。コツコツやらないと結構つらいお」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり、どこもそうなのかなぁ。算数とか得意なの?」
( ^ω^)「まぁ嫌いではないおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「うわっ、変わってるわね」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしても図形の問題とか苦手なのよね」
108
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:35:04 ID:6CJd7nVo0
何でも卒なくこなしそうなツンにも、苦手なものがあるのかと驚いた。
だが、それなら僕が教えようか、とは言い出せなかった。
( ;^ω^)(流石にまだそんな勇気は出ないお・・・)
( ;^ω^)「あれはある程度パターン覚えたら解けるようになるお」
ξ゚⊿゚)ξ「それが出来たら苦労はしないわよ・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「さ、着いたわね。そしたら、また明日ね」
( ^ω^)ノシ「おっ、今日もありがとうだお!気をつけておー!」
ξ゚ー゚)ξ「じゃあねー」
109
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:36:11 ID:6CJd7nVo0
―――――――
―――――
―――
(*^ω^)「・・・そうだお!明日は一緒に宿題するんだお!」
『そうなんだ。ブーンは頭良いから、教えてあげられるね』
母に電話で、今日は鬼ごっこをしたこと、明日はハインの家で宿題をすることなど、今日の出来事を話す。
母も嬉しそうに、それを聞いてくれる。
『楽しそうでなによりね。でも、ちゃんとお手伝いとかもするのよ?』
( ^ω^)「それはキチンとやってるお!」
『ふふふ。そしたら、夜更かししないようにするのよ?』
(*^ω^)「わかったおー!そしたら、おやすみだお!」
『はい、おやすみ』
110
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:38:13 ID:6CJd7nVo0
母との電話を終えて、受話器を置く。
時刻は20時半過ぎだ。
( ^ω^)(とりあえず、今日で理科は終わらせるかお)
この2日間で、国語の宿題は終わらせた。
他の教科もなるべく早く終わらせて、ニダーたちの分へ答えを写さないといけない。
(*゚∀゚)「・・・ブーン、今日もまた宿題するのかい?」
部屋に行こうとすると、つーに呼び止められた。
( ;^ω^)「そうですお。やっぱり量が多いから、中々終わらないですお」
(*゚∀゚)「あの量は確かに多過ぎるよね。今ちょうどホットミルクが出来たからさ、これ飲んで頑張りなよ」
( ^ω^)「お、ありがとうございますおー」
つーの作ってくれたホットミルクを机に置き、カバンから理科の宿題を取り出す。
( ^ω^)(・・・これのせいで、あんまり心から楽しめないおね)
やる気なんて一つも湧いてこないが、それでも理科の問題を解いていく。
( ω )(・・・早く終わらせるお)
外は吹雪いているようだ。
轟々と吹いている風に、何だか寒気を覚えた。
111
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:39:56 ID:6CJd7nVo0
以上、第2章【雪遊びと初めての友だち】でした
112
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:42:35 ID:0FLHQcb.0
乙乙楽しそうなブーンを見ることが出来て嬉しい
ミセリは気付いてたんだな…
続きも楽しみ
113
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:44:47 ID:TxzpGy4A0
おつ
どんなふうに転ぶか期待
114
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 23:48:49 ID:wlRLIyXk0
乙!鬼ごっこシーンにニヤニヤした、いいね面白い
115
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:17:24 ID:hzNFG4rg0
次の日、約束通りみんなハインの家へ集合し、各自宿題にとりかかっていた。
ブーンは算数が大の苦手のハインに、速さを求める問題の解き方を教えていた。
( ^ω^)「だからここはこうなるんだお」
从 ゚∀从「おおぉ、わかりやすいな!ブーンすごいじゃん!」
( ;^ω^)「そ、そんなことはないお」
(*^ω^)(でも、頼りにされるのはやっぱり嬉しいお)
川 ゚ -゚)「そういや、明後日のクリスマスパーティもツンの家でやるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そっか、忘れてたわ。多分親も良いって言うと思うわ」
从 ゚∀从「ブーンも来ないか?」
( ^ω^)「クリスマスパーティかお・・・?」
('A`)「ああ。ツンの家、お菓子屋さんだろ?だから毎年ツンの家で集まってるんだよ」
(;^ω^)「僕も行って良いのかおそれ?」
ξ゚⊿゚)ξ「一人くらい増えたところで構わないわよ。それに、お父さんもブーンが来るって言ったら喜びそうだしね」
116
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:18:41 ID:hzNFG4rg0
( ^ω^)「そ、それじゃお言葉に甘えてお邪魔するお!」
(*^ω^)(クリスマスパーティなんて呼ばれたことないから、楽しみだお)
_
(;゚∀゚)「それまでにある程度宿題やっとかねぇとか・・・。ブーン、俺にもちょっと教えてくれよ!」
( ^ω^)「おっおっ、見せて欲しいお」
ジョルジュが教えて欲しいといったのは、理科の問題。
水溶液の特性などをまとめたプリントだった。
( ^ω^)(これは確か昨日の宿題に似た問題があったおね)
そう思い、カバンから自分の理科の宿題を取り出し、ジョルジュの問題と見比べる。
( ^ω^)「これはリトマス紙が赤色になってるから・・・」
_
( ゚∀゚)「ん?ブーン、このプリント・・・」
117
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:19:16 ID:hzNFG4rg0
_
( ゚∀゚)「何で同じのが3枚もあるんだ?」
(;°ω°)「・・・あっ!」
118
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:21:54 ID:hzNFG4rg0
ジョルジュの手には同じ理科の問題が3枚。
すっかり浮かれてしまっていて、ニダーたちの宿題を抜いてくるのを忘れてしまった。
(;^ω^)「いや、それは念のためにコピーしておいたやつで・・・」
何とか誤魔化さないとと思うも、焦ってしまって自分でも何を言っているのかわからなくなる。
从 ゚∀从「・・・ブーン、それは一体誰のだよ?」
ハインも手を止め、ブーンの宿題を指差して、睨みつけるように言う。
( ;^ω^)「だ、だから!それは全部僕の・・・」
_
(;゚∀゚)「嘘つくなよ!自分の宿題をわざわざ増やすやつなんていないだろうが!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、落ち着きなさいよ」
('A`)「そうだぞ、デカイ声出すことないだろ?」
_
(;゚∀゚)「いや、でもさ!」
川 ゚ -゚)「ブーン、実際それは何なんだ?・・・そして何故嘘をつく?」
119
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:22:58 ID:hzNFG4rg0
(; ω )「〜〜〜っ、何でもないお!」
みんなから向けられる疑いの目。
それに耐えることが出来ず、カバンを持ってハインの部屋から飛び出す。
从; ゚∀从「あっ!待てって、ブーン!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!!」
みんなの呼び止める声に構わずに外へ出て、ひたすら走る。
(; ω )「はぁ、はぁ・・・」
この3日間、完全に浮かれ過ぎていた。
楽しさのあまり、油断していた。
自分がいじめられていることを忘れていた。
せっかく、念願の友だちが出来たのに。
そして、その人たちに嘘までついて、逃げてきてしまった。
(; ω )(みんなにはこの宿題が他の誰かのだって、絶対バレちゃったお)
120
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:24:02 ID:hzNFG4rg0
つまり、いじめられているということが、みんなにバレてしまった。
あれだけ注意していたのに。
自分は何て馬鹿なんだろう。
いじめられっ子のくせに、何で調子に乗ってたんだろう。
( ω )(いじめられてるのがバレたら、きっともう遊んでくれないお)
いじめられている奴となんて、もう遊んでくれないだろう。
嘘をついて逃げた奴となんて、もう話してくれないだろう。
こんなダメな奴となんて・・・。
( ;ω;)
ニダーたちに馬鹿にされても、殴られても、滅多に流れることのない自分の涙。
今はどうしようもないほど溢れ出て、頬を伝っていく。
今はただ、その涙を拭うこともなく走った。
121
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:25:12 ID:hzNFG4rg0
家の前に着いてから、ようやく涙を拭う。
息を整えて、気持ちを一度落ち着かせてから家の中に入る。
今日は喫茶ひとときが定休日のため、ショボンもつーもいるはずだ。
何かあったことは悟られないようにしないといけない。
ズキズキと胸の奥が痛む。
その痛みに耐えながら、階段を静かに登っていく。
( ω )「・・・ただいまですお」
(*゚∀゚)「あれ?おかえりブーン。随分と早かったね」
( ω )「ちょ、ちょっと具合が悪くなっちゃって、途中で帰ってきたんだお・・・」
つーの顔を見ることができず、下を向いたまま嘘をつく。
122
:
◆IDKgEZ2b96
:2016/04/02(土) 10:26:08 ID:hzNFG4rg0
(´-ω-`)「・・・本当にそうなのかい?」
ショボンが低い声で言う。
( ´・ω・`)「本当に、ただ具合が悪いだけかい?」
( ω )「・・・」
何も言えない。
ただ、唇をギッと噛み締めて時が過ぎるのを待つ。
すると、つーがブーンの横に立って、肩に手を置く。
(*゚∀゚)「言いづらいことかもしれない。ただ、本当のことを言って欲しいんだよ」
(*゚∀゚)「・・・今日は店休みだし、下でコーヒーでも飲もうか」
つーの提案に黙って頷き、二人の後に続いて階段を下りる。
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