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( ^ω^)の冬休みのようです

123 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:27:18 ID:hzNFG4rg0


一階は暖房が切られていたため、吐いた息が白くなるほどに冷えていた。

( ´・ω・`)「今暖房を入れるから、ちょっと寒いけど少しの間我慢してくれ」

ショボンが暖房のスイッチを入れる。

少し埃っぽい臭いがする風が、部屋の中をゆっくりと温めていく。

ブーンは静かにカウンター席へと座った。


( ´・ω・`)「豆はこちらで決めても良いかな?」

(  ω )「・・・構いませんお」


ショボンがコーヒー粉をネルにセットし、お湯を注いでいく。

BGMは何もかかっていない。

店内には、コーヒー液がサーバへと落ちる音だけが響く。

124 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:29:03 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「はい、お待たせ」

ショボンから渡されたコーヒーを無言でコーヒーを受け取る。

( ´・ω・`)「今日淹れたのはマンデリンという種類の豆だよ」

(*゚∀゚)「ブーンにはちょっと苦いかもしれないけどね」


以前つーに教えてもらったように、飲む前にカップを鼻に近づけて香りを嗅ぐ。

マンデリンの香りは、前に飲んだグァテマラとは全然印象が違った。

同じ見た目、黒に近い茶褐色の液体なのにここまで違うのか、と不思議に思う。

一口、カップから啜る。

やはり味も別物で、グァテマラにあったような酸味はない。
正に『コーヒー』というようなどっしりとした苦味があった。


(  ω )「・・・苦いですけど、飲めそうですお」

(*゚∀゚)「ブーンには苦味が強すぎるかもしれないね」

(*゚∀゚)「砂糖やミルクを入れても美味しいから、お好みで入れなよ」

125 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:30:19 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「さて、ブーン君。友達の家で宿題をしていたんだろう?」

( ´・ω・`)「それなのに、どうしてこんなに早く帰ってきたんだい?」

(  ω )「途中で具合が悪くなっちゃったんですお・・・」

(  ω )「だから・・・、それだけですお」

おそらく、ショボンたちにはもう嘘だとバレているだろう。

それでも、震える声で嘘をつく。

ソーサクに来てからのこの数日間は、いじめとは無縁の生活で、とても楽しかった。

友だちと遊び、笑い合うことができた。


今ここで、ハインの家での出来事を正直に話してしまったら。

学校ではいじめられているんだと、出来たばかりの友だちに嘘をついて逃げ出してきたんだと告げたら。

ショボンたちにもよく思われないかもしれない。

126 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:31:56 ID:hzNFG4rg0


(  ω )「・・・」

頭の中で、ニダーたちの笑い声が響く。

もう誰にも、自分がいじめられていることを知られたくない。

これ以上、惨めな気持ちになりたくない。


( ´・ω・`)「・・・ブーン君。僕とつーはコーヒー屋だ」

( ´・ω・`)「コーヒー屋っていうのは、ただコーヒーを商品として売るのが目的じゃないんだよ」

ショボンが諭すような声で言う。

( ´・ω・`)「この【喫茶ひととき】だって、コーヒーでお金を稼ぐためだけに始めたわけじゃない」

(´-ω-`)「僕らは、お客さんのちょっとした話や悩みを聞いてあげて、この店で過ごす時間、ここでコーヒーを飲む"ひととき"を少しだけ贅沢にしてあげたいんだ」

127 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:33:19 ID:hzNFG4rg0


(*゚∀゚)「本当のことを言うのは嫌かもしれない。ひどく苦しいかもしれない」

(*゚∀゚)「でも、私たちは偽りない気持ちで、このひとときを過ごして欲しいんだよ」

つーが隣の席へ座り、ブーンの頭を優しく撫でる。


( ;ω;)「うぅ・・・」

涙が堰を切ったように流れ出す。

頬を伝う涙が、膝の上で固く握りしめられている拳の上に落ちる。

128 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:35:14 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「・・・ここに砂時計があるだろう?」

ショボンがカウンターの上に、一つの砂時計を置く。

( ´・ω・`)「コーヒーを淹れるとき、時間は非常に大切なもので、味に大きく影響してくる」

( ´・ω・`)「そして、僕たち人間にとっても時間という概念は特別なものだ」


( ´・ω・`)「砂時計は、上から下に砂が落ちることによって時を刻む。決して戻る事はない」

( ´・ω・`)「上の部分、"未来"にある砂が下の部分、"過去"へと流れていくんだ」

ショボンが砂時計をひっくり返すと、砂がサラサラと空っぽの"過去"へ流れていく。


( ´・ω・`)「そうすると、この真ん中の砂が通り抜ける部分は"現在"、なんだよ」

( うω;)「・・・」

涙を拭い、ショボンが指差した"現在"をじっくりとみる。

129 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:38:06 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「"未来"から"現在"を通り、"過去"になる。そうして時は流れていく」

( ´・ω・`)「じゃあブーン君。この穴が、"現在"が塞がってしまったらどうなる?」

(  ω )「・・・砂は落ちないですお」

(´-ω-`)「その通り。つまり"現在"を塞いでしまうと、時間は流れなくなってしまうんだ」


(*゚∀゚)「塞がってしまう理由は人それぞれさ。不安や悲しみ、怒りだとかね」

(*゚∀゚)「でも、それは全部負の感情なんだよ。辛い時間が長く感じるのは、その所為さ」


( ´・ω・`)「必要なのは、しっかりと"現在"に、自分の心に穴を開けておくことだ」

(´-ω-`)「滞ることなく、時間が流れるようにね」

130 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:39:34 ID:hzNFG4rg0


砂時計の砂が全て落ちきった。


(  ω )「叔父さん、おばさん・・・。僕、が、学校でいじめられてて、一人も友だちいなくて」

( ;ω;)「さ、さっきもみんなにいじめられてるのがバレて・・・。それで嘘までついて逃げてきちゃって!」

( ;ω;)「せっかく、せっかく出来たばかりの友だちなのに!嫌われるようなことしちゃって!」


(#;ω;)「みんなにだけは、いじめられてるの知られたくなかった!

(#;ω;)「誰も、いじめられてる奴なんかと遊んでくれないから!一人ぼっちはもう嫌だから!!」


カウンターに突っ伏して、泣き叫ぶ。

今まで我慢していた言葉たちが一気に溢れ出してきて、まとめようにも上手くまとめられない。

131 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:41:10 ID:hzNFG4rg0


つーが優しく、ブーンの肩を抱きしめる。

(*゚∀゚)「話してくれてありがと、ブーン。いいかい?一人で抱え込んじゃダメなんだよ」

ブーンの頭を撫でながら、宥めるように言う。


( ´・ω・`)「・・・ブーン君、これからやらないといけないことはわかるかい?」

( ;ω;)「う、うぅ・・・」

( ;ω;)「み、みんなに謝らないと・・・」

( ´・ω・`)「そうだね。キチンとみんなに話さないといけない」

( ´・ω・`)「そうしたらブーン君の時間も、流れるはずさ」

(*゚∀゚)「さ、いっておいで」


鼻水をかみ、つーの肩を借りてブーンはフラフラと立ち上がる。

涙を拭い、いってきますと呟き外へ出る。

132 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:41:51 ID:hzNFG4rg0


(*゚∀゚)「大丈夫かな、ブーン・・・」


(´-ω-`)「大丈夫さ。子どもっていうのは、僕らが思ってるよりずっと大人なものだよ・・・」


カチャカチャと、つーがコーヒーカップを洗う音が部屋の中へ響いた。

133 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:43:20 ID:hzNFG4rg0


(  ω )(みんなに、謝らないとだお・・・)

項垂れながら、ハインの家まで向かう。

外には雪がちらついていた。

足は重たかったが、それでも自然と前に歩き出せた。

みんなに伝えるのは、もちろん怖い。

それでも。

(  ω )(それでも、しっかり伝えないと・・・)


ふと、自分を呼ぶ声が聞こえたため顔を上げると、みんなの姿が見えた。

(; ゚ω゚)「あっ・・・」

(;'A`)「はぁ、はぁ。ブーン・・・」

川; ゚ -゚)「今、みんなでショボンさんのところへ行こうと思っていたんだ」

どうやら走ってきたらしく、みんな息を切らしてブーンの前に来る。

134 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:44:26 ID:hzNFG4rg0


(; ゚ω゚)「み、みんな、その・・・」

从; ゚∀从「心配したんだぞ。急に飛び出してったから」

( ;^ω^)「ほ、本当にごめんなさいだお!」

何度も、みんなに向かって頭を下げる。

ξ゚⊿゚)ξ「何で飛び出していったかは、説明してくれるのよね・・・?」


(; ω )「じ、実は僕・・・」

雪が少し強くなってきて、風も冷たく吹いている。

だけれど、体は変に熱く汗をかいてくる。

顔が自然と下を向いてしまうが、それでも何とか言葉にしようとする。

135 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:45:29 ID:hzNFG4rg0


(; ω )「僕、学校でいじめられてて・・・。それをみんなに知られたくなくて・・・」

寒さで震えている訳ではない拳を握りしめて、みんなに打ち明ける。


从; ゚∀从「何でそんなにいじめられてんのをあたしたちに知られたくないんだよ?
てか、何でブーンがいじめられないといけないんだよ」

(  ω )「僕の父親は他所に他の女の人がいて、家を出てっちゃったんだお。だから、片親だからっていじめられてるんだお」

(; ω )「みんなにいじめられてるって知られたら、仲間に入れてもらえないかと思って・・・」

(; ω )それで・・・」


自分のことがどんどんと惨めに思えてきて、そこで言葉が詰まってしまう。

136 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:46:28 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「なんだよ、それだけの理由かよ」


(; ω )「・・・え?」


今まで一言も発しなかったジョルジュが、口を開く。

その、ジョルジュの返答に耳を疑う。

そんなこと?僕のこの悩みをそんなことで片付けるのか?

('A`)「おい、ジョルジュそんな言い方は・・・」

  _
( ゚∀゚)「なぁ、たったそれだけの理由だったのかよ」

(  ω )「・・・それだけって、なんだお」

挑発的な口調のジュルジュに対して、戸惑いから苛立ちへと気持ちが徐々に変わっていく。

137 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:47:27 ID:hzNFG4rg0


だが、なおもジョルジュは強い口調で続ける。
  _
( ゚∀゚)「いじめられてる自分を俺らに隠そうとして、逃げたんだろ?」
  _
( ゚∀゚)「本当のことは言わねぇで。んで、さらには嘘まで吐きやがって」
  _
( ゚∀゚)「つまりは俺らのこと、信じてなかったってことだろ」

ジョルジュはブーンのことを睨みつけ、強い口調で言う。


(; ω )「べ、別にそうとは思ってないお。ただ・・・」
  _
( ゚∀゚)「ただ?ただなんだよ?」

(; ω )「そ、それは・・・」


川 ゚ -゚)「ジョルジュ、その辺にしておけよ」
  _
( ゚∀゚)「ほら、何にも言えないじゃねぇかよ」

138 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:48:51 ID:hzNFG4rg0


(; ω )「・・・何で、ジョルジュにそんな言い方されないといけないんだお」
  _
(#゚∀゚)「なんでだぁ!?元はと言えば、お前が逃げたからだろうが!」


(# ω )「ジョルジュには!ジョルジュにはいじめられてる奴の気持ちがわかるのかお!!」

イライラが頂点に達し、とうとう怒鳴り返してしまった。

こんなのは八つ当たりだ、と頭のどこかでは思っていても、止めることはできなかった。


(# ゚ω゚)「何もしてないのにみんなから無視されて!誰も僕のことなんて友達と思ってくれなくて!」

(# ゚ω゚)「誰にも相談できないで一人でいる寂しさが、ジョルジュにはわかるのかお!!」

どうしようもない怒りが外に溢れ出る。

139 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:50:17 ID:hzNFG4rg0


  _
(#゚∀゚)「じゃあお前は!今まで変わろうとしたことがあんのかよ!!」

(# ゚ω゚)「そんなの、無理に決まってるお!

(# ゚ω゚)「嫌がったり、言い返したりしたら、それ以上のいじめを受けるんだお!!」


(#;ω;)「もう我慢してるしか、どうしようもないんだお!!」

泣きながら、大声で叫ぶ。

もう頭の中はぐしゃぐしゃだった。

クーやツンも、戸惑いの表情を見せている。

140 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:51:29 ID:hzNFG4rg0


  _
(#゚∀゚)「馬鹿かてめぇはぁ!!」



(#;ω;)「ぶへっ!!」



ジョルジュが勢いよくブーンに殴りかかる。

よろけたブーンにさらに飛びかかろうとするジョルジュをドクオとハインが止める。

(#'A`)「ジョルジュ!お前いい加減にしろ!」

从# ゚∀从「一旦頭冷やせよ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっとブーン平気?」
  _
(#゚∀゚)「結局お前は逃げてるだけなんだよ!いじめてる奴らからも、自分からもな!!」

2人に羽交い締めにされながらも、ジョルジュはブーンに向かって叫ぶ。

141 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:52:30 ID:hzNFG4rg0


  _
(#゚∀゚)「我慢するしか方法がないだぁ?お前はそれでいいのかよ!!」

(#;ω;)「・・・っ!!」

勢いよく立ち上がり、ジョルジュ目掛けてタックルする。

ドクオとハインが、慌ててジョルジュから離れる。



(#;ω;)「ああああぁ!!」



  _
(#゚∀゚)「っ!!」




倒れたジョルジュに馬乗りになり、ジョルジュの頬を殴る。

手の骨がジンジンと痛んだ。

142 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:53:38 ID:hzNFG4rg0


川# ゚ -゚)「お前ら!いい加減にしろ!!」

(#'A`)「おい!ブーン!」

普段は飄々としているクーも、大声を出して止めにかかる。

ドクオに羽交締めにされ、ジョルジュから引き離される。


(#;ω;)「ぼ、僕だっていじめられたくないお!!」

(#;ω;)「バカにもされたくないし、殴られたりなんて、したくないお!!」

(#;ω;)「ただ、母さんに迷惑かけたくないんだお!みんなにだって、純粋に嫌われたくなかったんだお!」


( ;ω;)「我慢なんて・・・。我慢なんて、したくないお・・・」

一気に足の力が抜けて、ドクオの腕から滑り落ち、地面へ座り込む。

143 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:55:11 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「・・・ブーン。この世の中に、いじめられても仕方ない奴なんて、絶対にいないと思うんだ」

ジョルジュが先程までとはうってかわり、優しい口調で続ける。
  _
( ゚∀゚)「もう、我慢すんな。自分にまで嘘ついて、塞ぎこんじゃいけねぇよ」

ブーンの肩に手を置き、いつも通りの笑顔を向けてくれる。

俺がついてるから、と思わせてくれるような笑顔だ。


( ;ω;)「うぅ・・・」

( ;ω;)「ジョルジュ、みんな。本当にごめんなさいだお!」

  _
(;゚∀゚)「てか、こっちがすまん。熱くなりすぎちゃって、つい殴っちまって・・・」

( ;ω;)「そんなの、全然いいんだお。僕の方こそ、ごめんだお」

144 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:56:19 ID:hzNFG4rg0


从;∀从「うおおぉ!!ブーン!!」

ハインが号泣しながらブーンのことを抱きしめる。

地味に首が締まっているため、少しハインを遠ざける。

ハインは気にすることなく、顔を赤くしながら泣きついてくる。


从;∀从「お前つらかっただろ!嫌だっただろ!!」

从#;∀从「よし、お前のこといじめてる奴ら、全員ブッコロしてやる!!」

( うω;)「別にそこまでしなくてもいいおー・・・」


(;'A`)「というかジョルジュ。お前本当にやり過ぎだろうが」

ドクオがジョルジュの頭を一発はたく。
  _
(;゚∀゚)「本当に悪いと思ってんだ。ただ俺はブーンのことを思って・・・」

145 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:57:03 ID:hzNFG4rg0


川 ゚ー゚)「昔っから、変に友達想いなんだよ、こいつは。ブーン、許してやってくれないか?」

( ;^ω^)「お、本当にいいんだお。僕も殴っちゃったし・・・」

( ^ω^)「むしろ、そこまで思ってくれて嬉しいお」

ξ-⊿-)ξ「当たりまえじゃn从;∀从「当たり前だブーン!あたしたちはもう親友同士だろ!!」



ξ#゚⊿゚)ξ

146 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:57:57 ID:hzNFG4rg0


親友。


いじめられていると知っても、嘘をつかれても、喧嘩をしても。

みんなは自分を親友だと言ってくれる。

自分一人では抱えきれないような悩みでも、みんなが一緒に背負ってくれる。

何でみんなそんなに優しいのか。

その優しさに、また涙が溢れる。


( ;ω;)「お・・・。本当に、ありがとうだお」

('A`)「おい、もう泣くなって」

ドクオがポンポンと肩を叩く。

147 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 10:59:11 ID:hzNFG4rg0


( うω;)「穴、開いたお・・・」

小さく口から言葉が漏れる。


ショボンの言っていたことが、理解できた。

ようやく自分の心にも穴が開いて、止まっていた時間が流れた。

下を向き、立ち止まっていた自分の時間。

今、ようやく歩き出すことができる。

時が、進み始める。


心の中に溜まっていたモヤモヤも、薄れていk 从;∀从「穴ぁ!?コートにか?ズボンにか!?」


( ;ω;)

148 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:00:39 ID:hzNFG4rg0


ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ブーン口元・・・!」

( うω;)「・・・お?あ、血が・・・」


ツンに言われ口元を拭うと、手にうっすらと血が付いた。

どうやらジョルジュに殴られた時に、唇が切れてしまったらしい。

  _
(;゚∀゚)「大丈夫かブーン!?」

( ;^ω^)「まぁこれくらいは特に何ともないお」


慌てた様子で、ジョルジュが心配してくれる。

しかし、ニダー達に殴られたときは酷く嫌な気持ちになったが、今は何だか清々しい気分で、あまり気にならなかった。

149 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:01:55 ID:hzNFG4rg0


手に付いた血を積もった雪で拭う。

真白い雪が赤く染まるが、それをまた降りゆく雪が白へと変えていく。


ξ゚ー゚)ξつ「はい、これ当てておきなさいよ」

( ^ω^)つ「お、雪かお??」

ツンに手渡されたのは、小さな雪玉。

言われた通りにそっと傷口に当てると、痛みで熱を帯びていた唇が一気に冷やされていく。

ヒンヤリとした雪の温度が、気持ちよかった。


( ^ω^)「おっおっ、ありがとうだお、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、そんなに心配はしてないけどね」

( ;^ω^)「そこはしてくれお・・・」

150 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:02:51 ID:hzNFG4rg0


川 ゚ -゚)「ま、とりあえずは仲直りってことでいいのかな?」

( ^ω^)「うん、問題ないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、ハインの家に戻って宿題の続きしましょうか」
  _
( ゚∀゚)「ブーンも来いよ!俺まだ解き方教えてもらってないしな!」

笑顔で、そう言って誘ってくれる。

本当に、友達想いなのだろうと思う。

( ^ω^)「じゃあ、荷物取ってから行くお」

('A`)「んじゃ、先に行ってるぞ」

( ^ω^)「把握だお!」


みんなと別れ、走って荷物を取りに戻る。

( ^ω^)(ショボン叔父さんたちに、お礼を言わないとだお)


( ^ω^)(・・・今日の夜、母さんにもちゃんと言うお)

151 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:03:46 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「どうやらその様子だと、仲直りできたみたいだね」

(*゚∀゚)「良かった良かった」


家に入ると、ショボンとつーがコーヒーを飲んでいた。

( ;^ω^)「叔父さんたちのおかげですお。本当にありがとうございましたお」

( ´・ω・`)「何も問題ないよ。これからまた友だちのところに行くのかい?」

( ^ω^)「お、そうですお」

(*゚∀゚)「それじゃ、気をつけて行くんだよ?」

つーがブーンの頭を撫でる。

(*^ω^)「じゃ、行ってきますお!!」

カバンを持って!外に出る。

先ほどまで降っていた雪は止んでいて、雲の隙間からは太陽が覗いていた。

152 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:04:57 ID:hzNFG4rg0


『あ、もしもし。母さんかお?』


皿洗いを終えてお茶を飲んでいると、ブーンから電話がかかってきた。


ミセ*゚ー゚)リ「もしもしー。そっちは雪なのかな?」

『昼間は降ってたけど、今はもう止んでるおー』

『あ、母さんにちょっと話があるんだけど・・・』

ミセ*゚ー゚)リ「ん、なぁに?」

『・・・』

受話器からの声がなくなる。
どうやら言い淀んでいるようだ。

ミセ*゚ー゚)リ「ブーン?」

『えっと、実は母さんには言ってなかったんだけど・・・』



『僕、学校でいじめられてるんだお・・・』

153 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:05:58 ID:hzNFG4rg0


ミセ;゚ー゚)リ「・・・」

か細い声で、息子から打ち明けられる真実。

いじめられている、ということは気付いていたが、実際に伝えられるとその衝撃はすごいものだった。


『・・・今まで、嘘ついててごめんなさいお。ただ、ただ母さんに迷惑かけたくなくて・・・』

ミセ;゚ー゚)リ「・・・ブーン」

『本当に、ごめんなさいお・・・』

ブーンの震えた声が胸に突き刺さる。


ミセ;゚ー゚)リ(「ブーンが謝ることないよ」って言わないといけないのに・・・)

何て声をかけて良いかわからなかった。

ミセ;゚ー゚)リ(子どもに、謝らせるなんて・・・)

154 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:07:02 ID:hzNFG4rg0


先日のショボンとの電話の後からずっと、ブーンと話をしようと思っていた。

だがどうしても決心が付かず、冬休みが終わってからにしようなんて考えていた。


『今まで、ずっと嘘ついてたお・・・。本当に、ごめんなさいだお・・・』

ミセ;゚ー゚)リ「・・・ブーン。悪いのは、悪いのはお母さんよ!」

ミセ;゚ー゚)リ「ブーンがもしかしていじめられてるんじゃないかって、思ってたの・・・」

ミセ;゚ー゚)リ「でも、でもブーンに気を遣わせてると思ったら、私から言い出せなくて・・・」


電話の声からして、もしかしたら泣いているのだろうか。

自分の不甲斐なさを噛み締め、遠くソーサクにいる息子の顔を思う。

きっと、何か打ち明けるきっかけがあったのだろう。

恐らく、ショボンたちが作ってくれたきっかけが。

155 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:08:13 ID:hzNFG4rg0


ブーンが勇気を出して打ち明けてくれた以上、自分も正面から向き合わないといけない。

ミセ*;-;)リ「辛かったでしょう?本当にごめんね、ブーン!」

それが、親の為すべきことだ。

ミセ*;-;)リ「本来なら、母親の私から話をするべきよね。でも、逃げてた・・・」

『母さん・・・』

ミセ*;-;)リ「ブーンは何も悪くないよ。本当に・・・」

ミセ*;-;)リ「打ち明けてくれてありがとね、ブーン」

『うぅぅ、母さん・・・!』


受話器から聞こえるブーンの泣き声。
あぁ、何て愛おしいのだろうか。

ミセ*;-;)リ「大丈夫だよ。ちゃんと、ちゃんと私が守るからね?」

涙を拭い、なるべく明るい声を出そうとして、深く息を吸う。

ミセ*゚ー゚)リ「だから、もう溜め込まなくていいからね?」


帰ってきたら、ブーンの好きなものをたくさん作ってあげよう。

オムライスに、ハンバーグに、それから・・・。

156 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:09:58 ID:hzNFG4rg0


( うω;)「・・・うん、そうだお。そういえば、明後日は友だちの家でクリスマスパーティをするんだお」

『あら、そうなの?めいっぱい楽しんでおいでね!』

( ^ω^)「おっおっ!ありがとうだお!」


( ^ω^)「それじゃあ、そろそろ切るおー」

『あったかくして寝なさいよ?ちゃんと髪乾かした?』

( ^ω^)「ちゃんと乾かしたお!」

『じゃあオーケーね。そしたら、おやすみなさい』

( ^ω^)「はーい!おやすみなさいだお!」


受話器を置き、ほっとため息をつく。

( ^ω^)(・・・ちゃんと言えたお)

きっと、このまま母に話をせず、誰にも相談しなかったら。

いつか、ストレスで潰れていただろうと思う。


( ^ω^)(叔父さんとおばさんのおかげだおね・・・)

ショボンたちの後押しがあったからこそ、素直に打ち明けることが、"心に穴を開ける"ことができた。

157 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:11:50 ID:hzNFG4rg0


ブーンの周りには、お店でいつも使われているコーヒーミルや、先の細いドリップ用のポットなんかが置かれている。

一人きりで母に電話をかけるために、ショボンに頼んで一階【喫茶ひととき】の電話を貸してもらっていたのだ。


今ブーンが座っているのはカウンターの中、普段はショボンたちが仕事をしている場所。

立ち上がってぐるりと店内を見渡し、自分がショボンたちのようにここでお客さんにコーヒーを淹れているのを想像してみる。


(*^ω^)(・・・なんかかっこいいお)

自分も練習したら、あんな美味しいコーヒーを淹れるようになるのだろうか。


(*^ω^)(後でちょっと聞いてみるかお)

158 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:12:56 ID:hzNFG4rg0


ふと時計を見ると、もう21時を回っていた。

(;^ω^)(お、もうこんな時間・・・。それに、泣いたからなのかちょっと寒いお)

きちんとストーブのスイッチを切り、電気を消す。


( ^ω^)(・・・・・・)

もう一度、店内を見渡す。

自分も、もしかしたら人の為になれるのかもしれない・・・。


二階からほんのりとコーヒーの香りが漂ってくる。

早速、ショボンにコーヒーについて聞いてみようと思い、階段を上る。

159 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:14:18 ID:hzNFG4rg0


(*゚∀゚)「はい、もしもし・・・。あ、ミセリ義姉さん!」

(*゚∀゚)「・・・そんな、いいんですよ!私も楽しませてもらってますしね」

(*゚∀゚)「・・・はい、ショボンですね。ちょっと待ってください」


(*゚∀゚)「ショボーン、ミセリ義姉さんから電話ー」

( ´・ω・`)「え、こんな時間に?一体どうしたんだろう」


( ´・ω・`)「もしもし、どうしたんだい?」

『あ、ごめんね?こんな時間に』

受話器から聞こえるミセリの声は、心なしか以前よりも明るい声だった。

160 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:15:19 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「僕は全然構わないさ。それより、ミセリからこんな時間に連絡が来るなんて珍しいと思ってね」

『ま、たまにはね。・・・ブーンはもう寝た?』

( ´・ω・`)「そうだね。今日はいつもより早く寝たみたいだ」


( ´・ω・`)「・・・ブーンから、話があったのかい?」

『うん、全部教えてくれた』

『本当、びっくりしたよ。私があんなに悩んでたのにーっ、てね』

『ショボンとつーちゃんのおかげだよ。ダメな私の代わりに、本当にありがとう』

161 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:16:43 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「・・・子どもたちのこういうことって、難しい問題だと思うんだ。当然子ども一人だけでは、解決しようがない」

( ´・ω・`)「だからといって、ミセリ一人が悪いってことはないって」


( ´・ω・`)「それに、今回は僕らもあんまり関わってないよ。ブーン君の友だちが、背中を押してくれたんだと思う」

『いつも電話で話してくれる子たちね・・・。さっきも、クリスマスパーティーやるんだって、嬉しそうだったもん』

( ´・ω・`)「確かに、とても良い笑顔で話してた」


『子どもじゃないね、もう・・・。中学生になるんだもんね』

『むしろ、子どもだったのは私だったのかもね』

162 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:17:33 ID:hzNFG4rg0


(´-ω-`)「・・・大人になるにつれ、世間体を気にするようになってしまうからね」

( ´・ω・`)「ああしないといけない、こうしないといけないっていう制約を自分でかけてしまう」

( ´・ω・`)「助けを求める声も、助けてあげるための手も出せないまま、終わってしまうことが多いね」


『事なかれ主義になっちゃうわよね・・・。それが一番良くないことなのに』

( ´・ω・`)「本当は素直な気持ちで、その問題と向き合わないといけないのにね」


『そうね・・・。いつか、その子たちにもお礼をしないとだね』

163 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:18:35 ID:hzNFG4rg0


( ´・ω・`)「ふふ、そうしてあげてくれ。とりあえず、問題は解決ってことだね」

『・・・何度も言うけど、本当にありがとうね。つーちゃんにも伝えておいてよ』

『色々落ち着いたら、改めてそっちに遊びに行くよ』

( ´・ω・`)「ああ、つーも待ってるからさ。それじゃ、おやすみ」

『うん、おやすみ』


(*゚∀゚)「・・・これで一件落着だね」

コーヒーを啜りながら、つーがショボンの隣へ座る。

(*゚∀゚)「まっ、本当にツンちゃんたちのお陰だね。あの子たちは、本当に良い心を持ってるよ」

(´-ω-`)「その通りだよね。ブーン君は、本当に良い友だちに恵まれた・・・」


ブーンの寝ている部屋の方から、ぐーぐーといびきが聞こえて来る。

164 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:19:27 ID:hzNFG4rg0


(*゚∀゚)「ふふっ。普段はいびきなんてかかないのに」

( ´・ω・`)「今日は色々と疲れていたんだろうね。ゆっくり寝られるっていうのは、良いことさ」

ショボンはゆっくりと立ち上がり、冷蔵庫からウイスキーを取り出す。


(*゚∀゚)「・・・ショボン、明日仕事なんだからね」

(*´・ω・`)「わかってるってば。少しだけだからさ」

(*´・ω・`)(最悪、朝はつーに任せようっと)


つーの小言を右から左、トクトクとロックグラスへウイスキーを注いでいく。

165 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:21:03 ID:hzNFG4rg0


1月―――
冬休みも、残すところあと2日。

今日でソーサクで過ごす冬休みが終わる。

午後から、ショボンに送ってもらいビップへと帰る予定になっている。

( ;^ω^)(もう少しで終わっちゃうのかお)

クリスマスもお正月も、みんなの仲間に入れてもらい、楽しく過ごすことができた。

そんな思い出が増えれば増えるほど、ソーサクで過ごした時間が長くなればなるほど、
何だか一日の時間の流れが速くなっているような気がする。


( ;^ω^)(・・・嫌だおー)

カバンに荷物を詰める手が、度々止まる。

立ち上がって部屋の窓から外を見る。


青空と、太陽の光を反射して輝く雪。

この雪景色とも、今日でお別れだ。


ビップに戻ったら、また以前のようにいじめられる生活が始まってしまう。

だが、それが一番嫌なのではなく、単純にみんなと会えなくなることが嫌だった。

166 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:22:39 ID:hzNFG4rg0


今まで友だちのいなかったブーンにとって、ここで出会ったみんなと別れるのは本当につらいことだった。


コロコロと表情が変わり、一緒にいて楽しいハイン。

無愛想だけど、実は仲間想いのドクオ。

少し変わってるけど、話すと面白いクー。

ブーンがいじめられてると知って、ブーンのために怒ってくれたジョルジュ。


そして何より・・・。


( ^ω^)(ツンに会えなくなるのかお・・・)


ソーサクに来て、初めて知り合ったツン。

みんなの仲間に入れてくれて、そっけない態度だけど、いつもこちらを気にかけてくれるツン。

人を好きになると、どういう気持ちになるかなんてわからない。

ただ漠然と、ツンのことが好きなんだろう、と思う。

( ;^ω^)(ただ、告白とかなんて出来るわけないお・・・)

( ;^ω^)(冬休みの間だけしか遊んでないし。それに僕今日でビップに帰るし・・・)


ぽりぽりと頭をかき、荷作りを再開する。

167 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:23:36 ID:hzNFG4rg0


荷作りを終えると、時刻は12時半になっていた。

つーが作ってくれたおにぎりを食べていると、一階からつーの声が聞こえた。


(*゚∀゚)「おーい、ブーン!ツンちゃん達が来てるよ!」

( ^ω^)「おっ?今行きますおー!」

どうしたんだろうと思いながら一階に下りると、カウンター席にみんなが座っていた。


川 ゚ -゚)「やぁブーン。荷作り中だったかな?」

( ^ω^)「おっおっ、ちょうど終わらせたところだお」

从 ゚∀从「それならいいや!今日で帰っちまうんだろ?うちで少し遊ぼうぜ!」

( ^ω^)「僕は構わないけれど・・・。叔父さん、行ってきていいかお?」

( ´・ω・`)「ああ、もちろんいいよ。ただ、15時くらいまでには戻ってきて欲しいかな」

( ^ω^)「わかりましたお!じゃあ、コート取ってくるお!」

168 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:24:30 ID:hzNFG4rg0


一度部屋に戻り、コートを羽織ってからみんなの元へ行く。


('A`)「よし、準備できたみたいだな」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃ、いきましょっか。すみません、お邪魔しました」

(*゚∀゚)「いいんだよ!ブーン、楽しんでおいでよ」

(*^ω^)「はーい!いってきますお!」


外に出ると冷たい風が吹いていて、舞い上がった雪がキラキラと輝いている。

  _
( ゚∀゚)「それにしても、今日でブーンが帰っちまうのか・・・。マジで寂しいなー」

ポッケに手を突っ込んで、ブーンの前を歩いているジョルジュが、ポソリと言う。

169 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:25:43 ID:hzNFG4rg0


( ^ω^)「冬休み、あっという間だったお」

川 ゚ -゚)「楽しい時間っていうのは、すぐに過ぎてしまうからな」

从; ゚∀从「もったいなく感じるよなー。怒られてる時とかは、全然時間経たないってのに」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、仕方のないことよね。ハインはしょっちゅう怒られてるからあれだけど」


('A`)「そういやさ、あいつらの宿題はもう手つけてないんだろ?」

( ^ω^)「そうだお。何だか僕がやるのもバカらしくなって」


あの一件以降、ニダーたちに押し付けられていた宿題をやらなくなった。

罵倒されても、殴られても良い。

そんなものに時間を割く暇があったら、みんなと遊んでいたいと思ったのだ。

  _
(#゚∀゚)「んなもん、それが正解だぜ!」

从 ゚∀从「だなー。よし、ただいまーっと。親仕事でいないけどさ」

( ^ω^)「お、お邪魔しますおー」

170 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:26:59 ID:hzNFG4rg0


ハインの家に着き、みんなでゲームをすることになった。

だがブーンは参加せず、いつもの4人、ジョルジュ、ハイン、ドクオ、クーのプレイを見ているだけだ。

  _
(;゚∀゚)「なんでお前らそんな強いんだよ!」

从 ゚∀从「修行がなりねぇな!」

('A`)「センスが無いんだよ、センスが」

川 ゚ -゚)「むしろ何でそこまで弱いんだジョルジュは」

  _
(#゚∀゚)「くっそ!もっかいだもっかい!」


いつも通り、ゲームセンスがズバ抜けて無いジョルジュが一人で自滅していく。

そのくせ、一番ゲームをやりたがるのがジョルジュだった。

171 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:28:05 ID:hzNFG4rg0


( ^ω^)(こうやって、遊ぶのも最後かお・・・)

ハインのお母さんが作ってくれたココアも飲みながら、ジョルジュたちのやり取りを見守る。

ふざけあって、笑い合って。

そんな光景を見ているとますます、ビップへと帰りたくなってくる。


共にゲームに参加していなかったツンが、お菓子を取りに隣へと来る。

ξ゚⊿゚)ξ「元気、無いわね」

( ^ω^)「・・・そんなことないおー」

ξ゚ー゚)ξ「ふん、嘘ばっかり。バレバレよ」


ツンがニヤリとして、顔を覗き込んでくる。

可愛くてドキリとするが、精一杯平常心を装う。


ξ゚⊿゚)ξ「・・・やっぱ帰るのやなんだ」

( ^ω^)「まぁ、そんなとこだおねー。冬休みの間っていう短い時間だったけど、楽しかったし」

172 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:28:57 ID:hzNFG4rg0


( ^ω^)「最近、朝起きた時に思うんだお。あぁ、もう少しで冬休み終わっちゃうのかって」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんと、あっという間の冬休みだったわね。あんたが来てからほぼ毎日遊んでたし」

( ^ω^)「おっおっ、一緒に遊んでもらえて嬉しい限りだお」


( ^ω^)「・・・ツンのおかげだお」

自分でもキザだと思う台詞。

顔が燃え上がりそうになりながら、ツンにだけ聞こえるような小さな声で呟く。



ξ゚⊿゚)ξ



ξ///)ξ「な、何言ってんの!?かっこつけないでよ!」



ツンは体育座りをしていた膝へ、顔を埋めて悶える。

173 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:29:41 ID:hzNFG4rg0


  _
(;゚∀゚)「あー!これもうやるだけ無駄だわ!」

川 ゚ -゚)「今更気が付いたのか」

ξ*゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょうど良かった!あんたらゲーム終わったんなら、ブーンに挨拶とかしなさいよ!」


ジョルジュがコントローラーを放り投げるのを見て、ツンが言う。


川 ゚ -゚)「む、確かにブーンを放っておいてゲームっていうのもおかしいしな」

( ;^ω^)「僕は僕で楽しいからいいんだけどね?」

从 ゚∀从b「よし!じゃあドクオから!バシッと決めてくれ!」


('A`)イキナリー

174 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:30:58 ID:hzNFG4rg0


('A`)「でもまぁ、伝えたいことはあるからな」

手に付いたお菓子の粉をティッシュで拭き、ブーンと向かい合わせに座る。


('A`)「とりあえずさ、短い間だったけど、お前とは何か昔っから知り合いみたいで、本当に楽しく遊べたよ」

照れくさいからか、頭をかきながら小さな声で言う。

('A`)「・・・ブーン。お前は弱くないんだ。何も怖がることなんかねぇよ」

('A`)「俺らと遊んでるときの、あの明るいお前が、本当のお前だろ?」


( A )「だから、さ。向こうに、ビップに帰っても、お前らしくいればいいと思うよ、俺は・・・」

震える声を抑えて、ドクオがぎこちない笑顔を見せる。


('∀`)「今日で帰っちまうけど、俺たちはずっと、友だちだからさ。また遊びに来いよ」

( ^ω^)「・・・ありがとだお、ドクオ」


はい次、とドクオが俯いて呟く。

175 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:32:12 ID:hzNFG4rg0


川 ゚ -゚)「それじゃあ、次は私が」

クーも崩していた足を直し、ブーンと向かって座る。


川 ゚ -゚)「ブーン、君と別れるのは本当につらいよ。本当に・・・」

いつもとは違い、真剣な顔をしたクー。

その瞳は、ブーンの目をしっかりと見つめている。

川 ゚ -゚)「私は、人と人との繋がりなんて、雪みたいなものだって思ってるんだ」

川 ゚ -゚)「脆くて、簡単に溶けて、砕けて、無くなってしまう・・・」

( ^ω^)「お・・・」


いつだったか、クーが同じようなことを言っていたのを思い出す。

川 ゚ -゚)「ただ、だからこそ美しくて、かけがえのないものなんだって思うんだ」

川 ゚ -゚)「ブーン。私たちとの繋がりだって、そのうち崩れてしまうかもしれない」

川 ゚ -゚)「私はそれが嫌だ。みんなだって、そう思ってる」

クーの手が、膝の上でぎゅっと握られる。

176 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:33:15 ID:hzNFG4rg0


川 ゚ -゚)「だから、私たちと過ごしたこの冬を忘れないでくれ」

川 ゚ー゚)「寒くなってきたら、雪が降る季節になったら、私たちと笑い合ったことを思い出してくれ」

( ^ω^)「クー・・・」


クーの瞳が、心なしか潤んでいる。

ブーンも涙を堪えるのに必死だった。

( ^ω^)「絶対に、絶対に忘れないお。僕だって、忘れたくないんだお」

川 ゚ー゚)「ありがとう、ブーン。君は、親友だよ」

指で目を擦り、優しい笑顔を見せる。

その笑顔につられて、ブーンの口元も緩む。


川 ゚ -゚)「さて、随分と大人チックな話をしてしまったな。ほら、ハイン。泣いてないで」

177 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:34:28 ID:hzNFG4rg0


从;∀从「だ、だってお前が、凄い良いこと言ってるから・・・」

既に号泣しているハインの頭をクーがワシャワシャと撫でる。

ティッシュで鼻をかみ、ふーっと一息ついて、ハインがブーンの目を見る。


从;∀从「ブーン。お前は、お前は本当に良いやつだよ。いっつも笑顔だし、ぽっちゃりなのに動けるしさ」

( ^ω^)「おっおっ、褒め言葉として受け取るお」

从;∀从「だからこそ、お前がいじめられてるっ知ってさ、あたし本当に腹立って・・・」


从#;∀从「何でこんな良いやつがいじめらないといけないんだって思って・・・!」

ハインがまた、大粒の涙を流す。

从;∀从「ブーン!お前がどんなにつらくたって、あたし達がずっと仲間だから!!絶対にだ!」

178 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:35:20 ID:hzNFG4rg0


( うω;)「ありがとだお、ハイン・・・」

ハインの感情が移り、今まで堪えていた涙が溢れ出す。


从;∀从「泣くなよブーーーン!もう泣くなー!!」

( ;ω;)「ハインのせいだおー!!」

二人で肩を叩き合って号泣する。


从;∀从「うぅ、これ以上は無理だ。泣き過ぎてつらい。あとジョルジュ頼んだ・・・」

  _
(;゚∀゚)「泣きすぎだろお前ら・・・」

ブーンとハインを見て、ジョルジュが少し呆れた様子で言う。

179 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:37:20 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「でもまぁ、ブーンが帰るのは俺もすっげぇ寂しいよ」

( ;ω;)「お、本当かお?」

  _
( ゚∀゚)「当たり前だろ?」

  _
( ゚∀゚)「冬休みの間だけって言ってもさ、こういうのって付き合ってた時間の長さじゃないと思うんだ」

  _
( ゚∀゚)「ブーン。ドクオが言ったように、お前は決して弱くない。いじめられて仕方ないなんて、俺は絶対に思わないよ」

  _
( ゚∀゚)「たとえ離れてても、俺たちは親友だろ?今度は夏とかに遊びに来いよ。川釣りも教えてやっからさ!」


いつもと変わらない笑顔を見せて、ジョルジュがブーンに拳を突き出す。

( ;ω;)「ありがとだお、ジョルジュ」

その拳に、ブーンも拳を合わせる。

180 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:38:15 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「さ、ツン!締めてもらおうか!」

('A`)「考える時間もあったしな」

冷めてしまったココアを一口飲んで、ツンがうーんと唸る。


ξ゚⊿゚)ξ「大体言おうと思ってたことも、みんなに言われちゃったしなぁ・・・」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、みんなあんたのことを友だちだって思ってるのは嘘偽りのないことよ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんまり思いつめないでさ、たまには逃げたっていいと私は思うの」

ξ゚ー゚)ξ「その時は、またソーサクに来なさいよ。ケーキくらいならご馳走してあげるからさ」


言い終えて、ひらひらと手を振る。

他のみんなと比べると短い挨拶だが、それがツンらしいなと思った。

181 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:39:01 ID:hzNFG4rg0


( うω;)「みんな、本当にありがとうだお・・・」

涙を拭い、目を閉じて深呼吸をする。

みんなに伝えたいことが頭の中をぐるぐる回る。

それを出来るだけ短くまとめて伝えようとする。


( ;ω;)「ソーサクに来る前は正直不安だったお。いじめられていることを隠し通せるのかって」

( うω;)「でも、考え過ぎだったお」


( ;ω;)「みんな、僕のことを友だちとして受け入れてくれて・・・。僕のためを思って、声をかけてくれて」

( ;ω;)「あぁ、僕はこのままで良いんだって、初めて気がついたお」

182 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:40:08 ID:hzNFG4rg0


( ;ω;)「クーと一緒にいると、何だか僕まで自信が湧いてきて。それが大事なことだと思ったお」

川 ゚ー゚)「胸を張って生きているだけさ」


( ;ω;)「ドクオと一緒にいると、気兼ねなく、本当にありのままの自分を出すことが出来たお」

('∀`)「そういってくれんのは、スゲェ嬉しいよ」


( ;ω;)「ハインと一緒にいたら、いつも笑っていられたお。ビップにいるときは、そんなこと全然無かったのに」

从;∀从「ああああぁ、折角ちょっと泣き止んだのにぃ・・・」


( ;ω;)「ツンといると、毎日がただただ楽しくて仕方なかったお」

ξ゚ー゚)ξ「それは大げさよ」


( ;ω;)「ジョルジュには、ジョルジュには僕が間違えてるって、真っ直ぐに指摘してくれたお」

( ;ω;)「ジョルジュのお陰で、僕は吹っ切ることができたお」

  _
( ゚∀゚)「友だちのためだ。殴ったのは、本気で悪いと思ってるけどな」

183 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:40:52 ID:hzNFG4rg0


みんな、ブーンの話に笑顔で答えてくれる。

ハインだけは、号泣度がマックスに達して、鼻水もとんでもないことになっているが。


( ;ω;)「そして、いじめに負けないように、少しずつ頑張っていく勇気をみんなには貰ったお」

( ;ω;)「ソーサクで過ごした、みんなと過ごした時間は、僕にとっての大切な宝物だお!」

( ;ω;)「僕と友だちになってくれて、本当にありがとうだお!!」


みんなに向かって、頭を下げる。

もう、涙で前は見えなくなっていた。

184 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:42:02 ID:hzNFG4rg0


从;∀从「うぉぉぉ!ブーン!」

ハインがものすごい勢いで飛びかかってきて、頭をバシバシと叩く。

( ;ω;)「痛っ!痛いおっ!」


(うA`)「ほら、痛がってんだろハイン」

从;∀从「だって!だってブーンが・・・!」

( ;ω;)「大丈夫だお、絶対また会いに来るからお・・・」

( ;ω;)「おーん!おーん!」


川 ゚ー゚)「はいはい、二人とも顔ぐしゃぐしゃじゃないか。ほら、鼻かみなよ」

( ;ω;)「お・・・、ありがとだお」


( ;ω;) チーン


('A`)(・・・漫画みたいな音だな)


从;∀从 ブァー!ブォーン!!


( ;ω;)(エンジンみたいな音出すおね)


从;∀从 ピーピー


从;∀从(鼻から笛みたいな音鳴る・・・)

185 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:43:02 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「・・・それじゃ、そろそろ行くかー」

( うω;)「もうそんな時間になってたのかお」

川 ゚ -゚)「折角だし、最後まで見送らせてもらうよ」

( ^ω^)「お、ありがとだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「よし、忘れ物は無いわね。じゃあ出ましょうか」


コートを羽織り外に出ると、雪が静かに降っていた。

ジョルジュとハインがふざけ合いながら、ドクオとクーがそれを眺めながら、ブーンの前を歩いていく。


( ^ω^)(この雪も、みんなの後ろ姿を見るのも最後かお・・・)

さっき散々泣いたのに、また涙がこぼれそうになる。

186 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:43:57 ID:hzNFG4rg0


ξ゚⊿゚)ξ「・・・雪、綺麗よね」

隣を歩いていたツンが、ポソリと言う。

( ^ω^)「本当にそう思うお・・・」

道の先では、3対1でドクオに雪玉が集中している。


( ^ω^)「みんなのこんな光景を見てると、何でか泣きそうになるんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「そいえばさ。さっき、あんた言ってたじゃない?最近朝起きたらーって」

( ^ω^)「ああ、言ったおね」

ξ゚⊿゚)ξ「私も、さ。最近寝る前とかに考えるのよね」

ξ -⊿-)ξ「あぁもう少しでブーンが帰っちゃうんだなぁって」

(*^ω^)「おっ、寂しがってくれるのかお?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ば、バカじゃないの?あんたは大袈裟に受け取りすぎなのよ!!」


顔を赤くして、バシバシと肩を叩かれる。

187 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:44:56 ID:hzNFG4rg0


ξ*゚⊿゚)ξ「でも、そりゃ少しはね・・・。何かあんたって放っておけないし!」

(*^ω^)「それでも、そう言ってくれるのは嬉しいお」

ξ*゚⊿゚)ξ「だ、だから!また絶対こっちに来なさいよ!少しは成長してね!」

(*^ω^)「おっおっ、頑張るお」


ξ゚ー゚)ξ「・・・うん。あんたはそうやって、笑顔でいた方が絶対に良いわよ」

(*^ω^)(おっ・・・)

寒さと恥ずかしさのせいで、顔が少し赤らんでいるツンの笑顔。


それは、この先ずっと忘れられないものだった。

188 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:46:06 ID:hzNFG4rg0


( ^ω^)「つーおばさん。本当にお世話になりましたお」

【喫茶ひととき】の前に停めてあるショボンの車に荷物を載せた後、改めてつーに対してお礼を言う。


(*゚∀゚)「いいんだよ!私も楽しかったし、ブーンの助けになったんなら嬉しいよ」

にっこりと笑顔を見せ、ブーンの頭をわしゃわしゃと撫でる。

つーに撫でられるのは、母に撫でられる時とはまた違う安心感がある。

(*゚∀゚)「またいつだって遊びに来ていいからね?今度はお母さんも連れてさ!」

(*^ω^)「ありがとうございますお!」


( ´・ω・`)「さて、そろそろ行こうか。みんなも、わざわざ見送りに来てくれてありがとね」

189 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:47:10 ID:hzNFG4rg0


  _
( ゚∀゚)「やっぱ少しでも一緒にいたいんで!」

从;∀从「うぅ、また涙が・・・」

(*゚∀゚)「ブーンは本当良い友だちに恵まれたね!」

(*゚∀゚)「みんなは良かったらココアでも飲んでいきなよ」

川 ゚ -゚)「すみません、ありがとうございます」


川 ゚ー゚)「それじゃあ、ブーン。私たちはここで待ってるからな」

クーがひらひらと手を振る。

その表情はいつもと変わらない、何だか自信に満ちた表情。

会える日が必ず来ると、信じて待っていてくれるんだろう。

190 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:48:14 ID:hzNFG4rg0


( ^ω^)「みんなには、ありがとうじゃ足りないおね」

  _
( ゚∀゚)ノシ「そんなん良いんだよ!また笑ってさ、バカやって遊ぼうぜ?それだけでいいんだよ!」

ジョルジュもまた、普段と変わらない笑顔でブーンに手を振る。


('A`)「それじゃあな、ブーン。楽しかったよ!」

从;∀从「ああぁぁぁ・・・。今は涙止まんないけど、次会う時までには泣きやんどくぞー!」

( ^ω^)ノシ「おっおっ、そしたらまたねだおー!」

191 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:49:24 ID:hzNFG4rg0


別れの時間は長くなればなるほど、つらくなるものだ。

みんなに手を振って車に乗り込もうとした時、突然、ツンの呼び止める声が聞こえた。


ξ;⊿;)ξ「ねぇ!その・・・」


( ;^ω^)「ツン・・・?」


ξ;ー;)ξ「ブーン!わ、私も、待ってるからね!!」

今まで涙を見せなかったツンが、泣いていた。

ただ彼女らしく、ただ泣くんじゃなくて、必死に笑顔を見せようとしていた。

192 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:50:14 ID:hzNFG4rg0


(*^ω^)「・・・絶対戻ってくるお!!」




ξうー;)ξ「うん!!」




だからこそ、笑顔で返さないと。


彼女が、笑顔の僕が良いと言ってくれたから。

193 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/02(土) 11:51:07 ID:hzNFG4rg0


以上、第3章【初めての親友と冬休みの終わり】でした

次回最終回となります

194名無しさん:2016/04/02(土) 11:52:15 ID:Z3QcXWBs0
乙ワクテカしてまってるよ

195名無しさん:2016/04/02(土) 11:59:36 ID:wbRoiMO.0
よかったなあブーン
いい友達ができた
次も楽しみに待ってる

196名無しさん:2016/04/02(土) 15:38:52 ID:QYd.UNZo0
早く!早く!

197名無しさん:2016/04/02(土) 19:02:48 ID:KS.dvD960

この話、すげー好きだわ
続き待ってる!

198 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:42:41 ID:0FtvOE/g0


車から降り、肺いっぱいに空気を吸い込む。

この町の冬の匂いは、3年前とまったく変わっておらず、それだけで涙が出そうになった。

そしてこの店、【喫茶ひととき】も何一つ変わっていなかった。

澄み渡った空の青さも、静かに積もった雪の白さも、張りつめた冷たい空気の透明さも、全てが同じだった。


たった3年、離れていただけなのに。

たった半月、ここで過ごしただけなのに。

何もかもが、ひどく懐かしく思えた。


この町と離れている間、みんなとの再会をずっと思い描いていた。

この町を離れたあと、ずっと一つの夢を抱いていた。

今日は、その第一歩目だ。

199 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:44:01 ID:0FtvOE/g0


ミセ;゚ー゚)リ「つーちゃん今更だけど、本当にごめんね?たくさん迷惑かけると思うけど・・・」

(*゚∀゚)「いいんですいいんです!元々、部屋も余ってましたし!」

( ´・ω・`)「気にしなくてもいいよ、ミセリ。ブーン君も、もう子どもじゃないからね」

( ´・ω・`)「それに、ブーン君にこの道を進んでもらうのは、僕らにとっては嬉しいことさ」

(´-ω-`)「あの頃から思っていたが、ブーン君の舌は中々に優秀だよ」

母たちのやり取りを少し離れて聞く。


我ながら、ひどくわがままを言ってしまっていると申し訳なく思う。

だけど、ここまで周りに迷惑をかけてまで、進みたい道があった。

多分、僕が一度もソーサクに来ていなかったら、この道は選択肢にも入らないだろう。

母と話し合い、ショボンやつーへ相談しながら、ブーンがやりたいならとオーケーをもらったのだ。

200 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:45:15 ID:0FtvOE/g0


ミセ*゚ー゚)リ「ブーン、荷物は私が運んでおくからさ。行っておいでよ、友だちのとこ」

( ^ω^)「おっ、いいのかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「ずっと会いたがってたじゃない。ほら、行ってきなさい!」

母に背中を押され、大きく頷く。

いってきます、と3人に手を振って、【茂良菓子舗】へ向かって走る。


再会への不安は、不思議と全くなかった。

頭の中を過るのは、あの頃の思い出。

どんな顔をして、驚いてくれるだろう。


僕のリアクションが面白いからといって、いつもちょっかいを出していた人。

僕の笑顔が良いといって、最高の自信を与えてくれた人。


ソーサクに帰ってきたら、真っ先にその人へ会いたかった。

201 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:46:46 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)(変わってないおー)

【茂良菓子舗】もまた、3年という時間の中でも何一つ変わっていなかった。

弾んだ息を整え、店内に足を踏み入れる。


(゚、゚トソン「いらっしゃい・・・」

(゚ー゚トソン「あら、久しぶりですね」

商品の陳列をしていた店員、トソンがブーンへ笑顔を見せる。

( ^ω^)「ご無沙汰していますお。えっと、ツンいます?」

(゚ー゚トソン「はいはい、ちょっと待っててね」

トソンが店の奥へとツンを呼びに行く。


( ^ω^)(あ、このチーズケーキ凄い美味そうだお)

ショーケースの中のお菓子も、どれも相変わらず美味しそうだった。

202 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:49:02 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)(お、新作の抹茶シュークリーム・・・。後で買おうかお)

( ・∀・)「チーズケーキと抹茶シューくらいならご馳走するよ」

( ;^ω^)「おわっ!モ、モララーさん!」


いくらショーケースに集中していたとしても、人が近づいて来たら分かるものだ。

なのに一切気配なんて感じなかった。

それに、常識的に考えて読心術なんて使えるわけがない。

( ・∀・)「ま、訓練の賜物さ」

( ;^ω^)(地の文まで読まれるし、一体何の訓練積んでんだお)


( ・∀・)「ともかく!久しぶりだね、ブーン君。話はショボンさんから何となくは聞いていたよ」

( ^ω^)「お、そうなんですかお?」

( ・∀・)「あぁ。もちろん、ツンには言ってないけどね」

そう言って、悪戯な笑みでウインクをする。

203 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:50:34 ID:0FtvOE/g0


ξ゚⊿゚)ξ「・・・え?」




( ^ω^)「お・・・」




( ・∀・)「ほら、ツン。会いたがってただろう?」

店の奥から出てきたのは、ずっと会いたかった人。

小さな顔に、切れ長の目。

あの頃から身長は伸びているが、それ以外は全く変わっていなかった。

何でここにいるの?と困惑の表情で、ブーンを見つめている。


その顔が何だか可笑しくて、笑いそうになってしまう。

ただ、後が怖い。

ここは笑うのを堪えて、帰ってきた挨拶をしよう。

204 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:51:57 ID:0FtvOE/g0




( ^ω^)「ただいま、だお」





ξ゚ー゚)ξ「・・・待たせすぎよ、バカ」






変わらない、笑顔。





そう、この笑顔が大好きなんだ。

205 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:54:15 ID:0FtvOE/g0


ツンと会った後、みんなにも顔を見せようと行くことで連絡を取り、ハインの家に集合していた。

みんな、ブーンとの再会に驚き、そして喜んでくれた。

みんなも全然変わっておらず、何だか安心した。


聞くと、ジョルジュとハインは中学校でバスケをやっていたらしい。

しかも二人ともエースだという。

ただ、体つきこそしっかりしているものの、ハインもジョルジュも身長は然程変わっていない。

特にジョルジュはその点を不満がっていた。


クーも相変わらずで、溢れんばかりの謎の自信と独創性をもってして、みんなを巻き込んでいるようだ。

ドクオはそんなクーに一番振り回されて、毎日苦労しているらしい。

206 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:55:57 ID:0FtvOE/g0


  _
(;゚∀゚)「それしても、ブーンが俺らの高校に、来るとはなぁ・・・」

( ^ω^)「おっおっ。ソーサク高校に推薦入学して、ショボン叔父さんのところでコーヒーのことを教えてもらうんだお・・・」

Σ( ;^ω^)「あぁ!ハイン、鼻水はやめて!!」

从;∀从「うぉぉ、一旦泣きやもう・・・」

(;'A`)「会ってからずっと泣いてるじゃねぇかよ・・・」


ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、喫茶店をねぇ・・・。ま、夢があるのは良いことよね」

(*^ω^)「頑張って、将来は自分のお店を持つんだお!」

川 ゚ー゚)「ただ、ブーンは頭も良かったし、わざわざこんな田舎の高校じゃなくても良かったんじゃないか?」

( ;^ω^)「まぁショボン叔父さんから教えてもらいたかったっていうのもあるんだけどね・・・。他のとこだと、下宿代とかも結構かかるし」

207 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:57:10 ID:0FtvOE/g0


( ^ω^)「それに、みんなに会いたかったし・・・」






从 ゚∀从






从;∀从






从;∀从つ「ブーーーーーン!!!」

(; ゚ω゚)「おごぉ!!鳩尾はだめ・・・」


('A`)「ま、ブーンの決めた進路だからな。俺らが口出しなんて出来ねぇよ」

('∀`)「これから一緒に遊べんのは嬉しいしな」

208 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:58:03 ID:0FtvOE/g0


  _
( ゚∀゚)「そーだな!よし、これから鬼ごっこしに行くか!」

川 ゚ー゚)「ほう、私たちに勝負を挑むとは。ジョルジュも偉くなったもんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「自惚れは身を滅ぼすわよ」

  _
(;゚∀゚)「くっ!言ってやがれ!うし、外行くぞ外!!」

  _
(;゚∀゚)「おら、ハインも泣いてねぇで!」

从;∀从「うぐっ、いまいぐってば・・・」

209 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 05:59:13 ID:0FtvOE/g0


みんな張り切って、外へと飛び出していく。

(*^ω^)「行くおー!」

ブーンもみんなに続いて、外へと出る。


川 ゚ -゚)「おっと、ブーン」

( ^ω^)「お?どうしたお?」

急にクーとハインに呼び止められ、耳を貸せと言われる。

从 ゚∀从「ツンはな、彼氏いたことないぞ」

川 ゚ -゚)「告白されても、ちゃんと断ってたぞ」

二人が悪いことを企んでいる顔で、そっと耳打ちする。

( ;^ω^)「き、急に何の話だお!?」

从 ゚∀从「なーにもー?ただの情報提供だぜー?」

川 ゚ー゚)「じゃ、健闘を祈る」


にやけ顔でそう言うと、前を行くジョルジュたちの方へと走っていく。

210 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 06:00:31 ID:0FtvOE/g0


( ;^ω^)(全く、何なんだお・・・)

( ;^ω^)(べ、別にツンに彼氏がいるかどうかなんて、気にしてなかったしー!)

ポーカーフェイスを意識して、動揺している気持ちを落ち着かせる。


( ^ω^)(それにしても、懐かしいおね・・・)

昔は、毎日のように見ていた光景。

昨日まで、夢にまで見ていた光景。

ジョルジュとハインがふざけあって、クーとドクオがそれを笑っていて。

そして・・・。

211 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 06:01:43 ID:0FtvOE/g0


ξ゚ー゚)ξ「・・・何か、懐かしいね」


( ^ω^)「だおね・・・。でも、みんなあんまり変わってなくて良かったお」


ξ゚⊿゚)ξ「確かにね。小学生から、体だけ大きくなりましたーって感じね」


ξ゚⊿゚)ξ「高校生になるっていうのに、鬼ごっこしてる人たちなんて、なかなかいないわよ」


( ^ω^)「そのくせ、ツンも結構ノリノリだったお」


ξ゚⊿゚)ξ「まっ、遊べるうちに、遊んどかないとね」

212 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 06:03:03 ID:0FtvOE/g0






ξ*゚ー゚)ξ「それに・・・。ブーンも帰ってきたし」







(*^ω^)「・・・ありがとだお」







そして、ツンが優しく微笑んでくれていて。


雪はあの頃と同じように、心奪われるほど真っ白だった。

213 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 06:04:46 ID:0FtvOE/g0


以上、最終章【雪の季節に】でした

たくさんの乙、ありがとうございました

214名無しさん:2016/04/03(日) 07:06:37 ID:JdCRVOy.0

心が暖かくなった良い作品だった!

215名無しさん:2016/04/03(日) 07:58:40 ID:t2gkAICk0

出来ればニダー達との関わりがどうなったか知りたかったな

216 ◆IDKgEZ2b96:2016/04/03(日) 10:52:42 ID:0FtvOE/g0
>>215
その点を書くかどうか悩んだんです
構想上では宿題をやってなかったことでニダーたちと大ゲンカ→中学からはいじめ脱却的な感じです

217名無しさん:2016/04/03(日) 11:59:36 ID:pyMzJzZk0
まぁ今の( ^ω^)見ればいじめられなくなったのわかるけど描写して欲しかったな

218名無しさん:2016/04/03(日) 12:18:01 ID:qn.J5W2k0
これはこれで綺麗な終わり方だし
いじめについて読者の想像がちゃんと及ぶ書き方だから満足だよ
いい話だった乙

219 ◆mQ0JrMCe2Y:2016/04/04(月) 01:40:39 ID:PxUnJIBo0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
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220名無しさん:2016/04/07(木) 11:50:08 ID:.O054vjY0

ちくしょう泣いたぜ

221名無しさん:2016/04/10(日) 14:57:15 ID:iRllYli.0
乙!心が温かくなるいい話だった。
コーヒーが飲みたくなったよ

222名無しさん:2016/04/21(木) 23:55:58 ID:fC5WpYg.0
ほのぼのとは何たるかを思い出しました



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