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ハゲタカのようです
149
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:49:33 ID:SoEOAtLY0
事件が解決した後、荒巻は特対課を再結成し、若田は捜査の一線を退いた。
その若田が助太刀に来たことが、出実にとって何よりも心の支えになる物であった。
集まったのは錚々たるメンバー。
捜査一課所属。
犯罪をスピード解決へと導く天才。高岡 葉音。
サイバー犯罪対策課所属。
電子の魔術師こと流石 兄者と流石 弟者。
元特対課、現交通課所属。
ヴィップのありとあらゆる事件、地名と建築物を頭の中に詰め込んでる生き字引、若田 桝。
それに加えて特対課の出実と諸本。
もはや警察庁の総力と言っても過言ではない。
(´・_ゝ・`) 「指揮は若田さんに……」
( <●><●>) 「いえ、私は既に現場を退いた身。
咄嗟の判断や事件に対する嗅覚はあなたたちの方が優れているでしょう。
私はただ、責任を取るためにここに来たのです。それこそが老いたる将の役目ですから」
150
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:50:52 ID:SoEOAtLY0
(´<_` ) 「若田さんはまだまだ現役でしょう」
( <●><●>) 「残念ながら……。それにしても兄者君も弟者君も、随分年を取りましたねぇ」
( ´_ゝ`) 「俺たちがここまでやってこれたのも若田さんのおかげです」
( <●><●>) 「今はその気持ちを胸にしまっておきなさい。指揮は出実君が執るように」
(´・_ゝ・`) 「わかりました。さて、今この瞬間からこの特対課室をゲ=ハ対策本部とする。
とにかく時間が惜しい。各々が調べて分かっていることを教えてくれ」
( ´_ゝ`) 「計算上、爆風だけでチャンネル国を更地にしようと思ったら、百発以上の核が必要になる。
なんにしろ、それだけの火薬を用意できるとは思えない」
(´<_` ) 「昨日の特対課の映像は見せてもらった。
VXガスは強力だが、揮発性が低く広範囲にばら撒くのは難しい」
兄者と弟者はそれぞれのデータをパソコンに表示して示した。
それを見ながら、高岡は一つの机の上に資料を投げる。
从 ゚∀从 「そうだろうな。っつーことは、狙うのはヴィップに存在するチャンネル国の頭だ。
政治、経済、保安、流通、情報」
151
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:51:43 ID:SoEOAtLY0
( <●><●>) 「ここ警察庁を含めて、ヴィップでの最重要機関は既に調べています。
国会議事堂、ヴィップセントラル駅、国立図書館」
ワカッテマスは特対課の壁に貼り付けられた地図に書き加えていく。
当然、ほとんどの重要建築物は近い地域に密集している。
( ´_ゝ`) 「加えて、あらゆるデータが保管されているスタンドアローンのデータバンクもだ」
(´<_` ) 「アーカーシャか。地下にあるから、狙いにくいとは思うがな」
从 ゚∀从 「昨日の事からゲ=ハはフォーエバースタイルっていう会社名を使っていたことが分かっている。
それの事務所のピックアップは出来てるか?」
( ´_ゝ`) 「当然だ」
(´<_` ) 「資料はここに用意してある。しかも、関係が無さそうなものは削除しておいた」
双子が配った髪はわずか三枚。
そこには、毒男と茂羅が向かったホテルのほかに、二つのビルが書き込まれていた。
(´・_ゝ・`) 「だが流石にもぬけの殻だろう」
从 ゚∀从 「位置関係から爆発物を搬入できるポイントは狭められる」
152
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:52:35 ID:SoEOAtLY0
大都市である中心部は、寝静まることはない。
不審物を安全に、かつ大量に輸送できる場所は限られている。
从 ゚∀从 「その、あーかーしゃ? データバンクか、国立図書館が爆破ポイントの可能性が高い」
( <●><●>) 「いい推理ですね」
从 ゚∀从 「有難うございます」
( <●><●>) 「ですが、もう一歩欲しいですね。
地下データベースのセキュリティキーを作ったセキュリティ会社の名前はご存知ですか?」
(; ´_ゝ`)(´<_` ;) 「そうか!! キジョロック!!!」
( <●><●>) 「正解です」
皺を寄せてにっこりと笑う若田。
从 ゚∀从 「もしもし、テレビ? ああ、わかった」
電話中だった高岡が手で催促する。
出実は机の上に放置されていたリモコンのボタンを押した。
映し出されたのは、もう何回目かわからない犯行予告。
153
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:53:56 ID:SoEOAtLY0
≪我々はゲ=ハ。どうやら、この国は滅びを望んでいるようです。
我々としても甚だ残念であることは皆さんに伝えておきたい。今、私の後ろにあるのがこの国を終わらせる爆弾です。
どこに逃げようと無駄ですよ。国そのものがなくなりますから。
政府の懸命な対応を期待します。タイムリミットまで残り18時間です。それでは≫
無数の細長い光が輝き続ける薄暗い部屋。
男の背後の爆弾を執拗に映し、映像は終わった。
从 ゚∀从 「わざわざ尻尾を出してくれるとはね」
(´<_` ) 「ゲ=ハもそれだけ焦っているのだろう。すぐに突入部隊を編成するか?」
( ´_ゝ`) 「冷静になれ。これも罠かもしれない」
(´・_ゝ・`) 「……若田さんはどう思いますか」
( <●><●>) 「焦っているというのはほんとでしょう。
ですが、これ以上交渉のラインを引き下げてくることはないと思います。
時間が来れば躊躇わずに爆弾のスイッチを入れるでしょうね」
154
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:54:29 ID:SoEOAtLY0
(´・ω・`) 「俺の出番か?」
( ´_ゝ`) 「お前の頭は飾りか? これだけ用意周到に計画していた奴らだ」
(´<_` ) 「二の矢、三の矢を構えている可能性が高い。アーカーシャからどうやってヴィップを崩壊させる」
(#´・ω・`) 「馬鹿にしやがって……ぶっ殺してやる」
拳を握り締めた諸本が、流石の兄者の顔を吹き飛ばさんと振りぬいた。
風が唸るほどの剛腕が血を浴びることはなかった。
(;´・_ゝ・`) 「っ!」
大きな音を立ててひっくり返っていたのは諸本。
兄者との間にはいつの間にか若田が立っていた。
( <●><●>) 「昔と変わらないですね諸本君。イライラしているとすぐに手が出るところは」
(;´・ω・`) 「っ……」
155
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:56:09 ID:SoEOAtLY0
何が起きたのかわからなかったのショボンも同じだったようで、
ひっくり返ったまま若田を見上げている。
( <●><●>) 「拳を振るう相手が違うでしょう。行ってきなさい」
(´・ω・`) 「……アーカーシャですか?」
( <●><●>) 「そう言ってるつもりですよ。二の矢三の矢を潰すのは私たちの仕事です。ね、出実君」
(´・_ゝ・`) 「はい。諸本、誰か寄越すか?」
(´・ω・`) 「いや、俺一人で十分だ。行ってくる」
諸本が出発したのを確認し、出実はパソコンから一通だけメールを送った。
156
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 22:58:03 ID:SoEOAtLY0
>>
【姓名】 高岡 葉音
【読み】 タカオカ ハイン
【年齢】 36
【役職】 警部補
【付記】 捜査一課で活躍している。
特定の数人を除き、誰にでもため口で話すため上司からはかなり嫌われている。
しかしその能力は高く、数々の事件をスピード解決しており、局内ではわりと有名。
>>
157
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 19:26:23 ID:3x8mpSUc0
いいところで終わってんじゃねーよ はよ
158
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 19:46:42 ID:7ewP.RtM0
わずか3枚の髪
159
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 21:08:41 ID:yTAlaLRc0
モララーとドクオは一緒に行動したことも殆どないのか最もともに活動することが多い二人なのか
160
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 21:18:45 ID:lm5V0GPk0
そこな
気になった
161
:
名無しさん
:2016/03/28(月) 22:12:17 ID:cSD2yePg0
すいません。
個人活動が多い特対課の中で、茂羅と毒男のペアで行動することが他のペアで動くことよりも多い、ということです。
お手数お掛けしますが、補完をお願いします。
【毒男 & 茂羅】
個人活動が基本の特対課の中で、たまにペアで活動することがある二人。
銃火器と危険物という重なるところも多いそれぞれの専門分野を持っているためである。
また二人ともが課内でパシリとして先輩に使われているため、割と結束している。
二人を有名にしたのは、ヴィップグランドホテル立てこもり事件。
最上階である55階まで階段で登り切って、犯人を確保。
巨大な爆弾を僅か十分で解体した。死傷者はゼロ。
162
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 11:10:03 ID:jtZ4zI2g0
すごく面白い
続き待ってる
163
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 12:07:33 ID:cQ9HzwBw0
いいところで…
続き待ってる
164
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:08:43 ID:J.heRfoA0
15
(;´・_ゝ・`) 「まずいな」
パソコンを打ち込む出実の手が止まった。
その視線はテレビに釘付けになっている。
( ´_ゝ`) 「どうした」
(´<_` ;) 「テレビを見ろ、兄者」
特対課の備品である小さなテレビに映っていたのは、爆破炎上するバス。
ゲ=ハのテロと思われる行為で恐らく最初の人的被害。
これにより、民衆の怒りは警察に向くことになる。
( <●><●>) 「諸本君が出向いているのですから、アーカーシャの件は問題なく解決するでしょう」
(´・_ゝ・`) 「ええ。ですが、アーカーシャはここから遠いです。交通渋滞等があれば、尚更時間がかかってしまう」
从 ゚∀从 「厄介だな。俺らが出ていったところで何かができるわけでもない。
例の爆破予定表。どこにある?」
( ´_ゝ`) 「これだ」
165
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:10:44 ID:J.heRfoA0
兄者が資料を投げ渡す。
それを受け取ってさっと内容に目を通す。
从 ゚∀从 「裁判所に始まって、シンフォニーホール、公民館、植物園、美術館、果ては電話ボックスまで。
あちこち好き勝手やってくれたもんだ。今日の予定は……ないんだな」
資料に記述されている日付は、昨日と一昨日のものしかなかった。
(´・_ゝ・`) 「ここから先は無差別ってことかもしれないな……」
从 ゚∀从 「犠牲者が出ないようにするにはどうすりゃいい。……ロマネスクを解放するフリはどうだ?」
(´・_ゝ・`) 「無理だろう。国が許可するとは思えない」
从 ゚∀从 「あんたと流石兄弟がいるんだ。ロマネスクが収監されている監獄の解錠くらいできるだろう」
( <●><●>) 「出来ないとは思いませんが、リスクが高いでしょう。
あの男は絶対に自由にはさせてはいけません」
从 ゚∀从 「ですか……」
166
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:11:46 ID:J.heRfoA0
(´<_` ) 「……おい、バスの影にいる男。諸本じゃないか?」
荒い画像ですらそれとはっきりわかる姿が映っていた。
爆破炎上するバスのすぐ横で、謎の人物を地面に叩き付けている。
( <●><●>) 「犯人でしょうか」
(;´・_ゝ・`) 「流石に何の罪もない人を傷つけるような奴じゃありませんから。
しかしなぜ……。っ! 後ろっ!」
叫んだ警告は届かない。
諸本の後ろに突然現れた何者かが、顔に向けてスプレーのようなものを吹き付けた。
直前まで動き回っていた諸本は、二、三歩ふら付き倒れて動かなくなる。
その体を後から現れた三人がカメラの視野の外へと担いでいった。
(;´・_ゝ・`) 「何が起きた」
( <●><●>) 「倒れ方からすると、死んだのではなさそうですが」
(; ´_ゝ`) 「ちょっとまて、じゃあアーカーシャはどうする」
俄かに緊張がはしる。
兄者の問いを受けて出実は静かに課内を見渡した。
167
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:13:24 ID:J.heRfoA0
流石兄弟は戦闘に関して全くの素人である。
多様な罠が仕掛けられているかもしれない場所に向かわせることは出来ない。
同時に高岡の選択肢も消えた。
優秀ではあるが警察官としては常識の域を出ない。
ゲ=ハにはまだ諸本すら打ち倒した相手がいる。そんな敵と相対できるわけがない。
自分自身の能力はよく理解出来ていた。
先の三人には劣らないものの、さほど上手ではないことを。
残る選択肢は若田一人。
しかし、いくら諸本を瞬時に転ばすことができても、六十になった老人では体力的な問題が大きすぎた。
(;´・_ゝ・`) 「くそっ……高岡、捜査員出せるか?」
从;゚∀从 「今連絡してる。ちょっと待て……。
俺だ、高岡だ。すぐに人が欲しい。え? 特対課の出実さんからだ!
最低でも十人以上! 危険物が処理出来る奴もいる! は? 三時間も待ってられるか!
いますぐやれ!」
刺々しい言葉を捲し立てる高岡。
出実は電話の相手に多少なりとも同情しながらも、会話の行く末を窺う。
叩き付ける様に備え付けの電話を切った高岡は、頭に手をやって白髪をかき上げた。
168
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:15:13 ID:J.heRfoA0
从 ゚∀从 「駄目だ。どこの部署もてんやわんや。人を出すだけの余裕がないとさ」
( <●><●>) 「困りましたね。やはり私が行くしかないでしょうか」
(; ´_ゝ`) 「それは……」
(;´・_ゝ・`) 「それは許可できません」
取り敢えずの否定を返したものの、具体案が出せなかった。
武雲が生死不明、毒男が死に、茂羅は消息不明の状況で、特対課には動かせる駒がほとんど残っていなかった。
(;´・_ゝ・`) 「とりあえず、諸本に電話をかけ続けてみます」
从 ゚∀从 「解決までの道筋が見えた所でこれか……一筋縄ではいかねーな……」
(´<_` ) 「高岡、それで三時間後には人が出せるってことか」
从;゚∀从 「それが……」
高岡は俯き言いよどんだ。
その意味が察せられない人間は、今この特対課の部屋にはいない。
高岡が上司に直談判した時、告げられた事実。
それは、仮に人が空いたとしても特対課の要望に応えられるかどうかはわからない、という言葉だった。
169
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:16:27 ID:J.heRfoA0
ゲ=ハの恐ろしさは誰よりも知っている世代の管理職の人間達は、
自らの部下をすすんで危険に曝すようなことはしない。
何かあればその責を負わなければならないため、誰もが協力を渋る。
(#´・_ゝ・`) 「あーっくそ! どうすりゃいい……」
毛のない頭を強く掻きながら、苛立ちを少しでも和らげるために狭い室内を歩き回る出実。
( <●><●>) 「諸本君を探すしかないでしょう。玉砕覚悟で飛び込むことも止む無しですが、まだ時間はあります。
あの場でも殺そうと思えばできたはずですが、それをしなかったからには生かしている理由があるという事。
携帯はまだかかるのでしょう?」
(´・_ゝ・`) 「はい、留守番に繋がりますが、壊されたり電源を切られたりと言うことは無さそうです」
( <●><●>) 「もし本当に限界一杯……そうですね、残り時間が四時間を切った場合は私が出向きます。
いいですね?」
有無を言わせない若田の言葉に、出実はただ頷くことしかできなかった。
( ´_ゝ`) 「しかし、探すと言ってもどこを探す?」
(´<_` ) 「兄者、それを考えるのが俺たちの役目じゃないか?」
( ´_ゝ`) 「確かに」
170
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:17:42 ID:J.heRfoA0
( <●><●>) 「まだ生きていると仮定して、ゲ=ハはどう利用するつもりでしょうか」
(´・_ゝ・`) 「人質交換の材料か……正直俺ら特対課が特別だからと言って、それ程の価値があるとは思えません。
そのことはゲ=ハもわかっているはずだ」
出実には国は絶対に応じないという確信があった。
そしてそれは、他の四人ともが共有していた。
(´<_` ) 「だとすると、遠ざけるのが目的だとか?」
( ´_ゝ`) 「諸本の能力を警戒していれば有り得る。だが殺さない理由にはならないがな」
(´<_` ) 「遠ざけるとすれば、どこかに移動させるか、閉じ込めるか」
( <●><●>) 「私なら前者を取りますね。物理的に間に合わない距離にしてしまう方が、より確実でしょう」
(´・_ゝ・`) 「寝ている人間を移動させる方法は? あんな目立つ人間を電車に乗せたりは出来ないだろう」
鍛え抜かれ逞しい身体に、目立つ頭髪。
頭の側頭部からだけ長い髪の毛が垂れ下がっている男などそうはいない。
ロップイヤーと呟いた諸本の同期が、片手で足を持たれて振り回されてた光景を思い出す出実。
幸い怪我はなかったが、その後すぐに地方への転属を申し出ていた。
171
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:18:22 ID:J.heRfoA0
从 ゚∀从 「今、現場付近で目撃証言を探させてましたが、何人か見たと言ってます。
黒のハイエースに乗せて移動していったようですね。番号はわかり次第連絡してくれます」
(´・_ゝ・`) 「流石兄弟!」
(#´_ゝ`) 「ああ、もう調べ始めてる。ったく」
(´<_`#) 「あのハゲ、面倒かけやがって」
ぶつくさと文句を言いながらも、指は細かくリズムを刻む。
首都高から一般道まであらゆる道路上の監視カメラのシステムへと潜り込み、
指定されたハイエースを探す地道な作業。
流石兄弟は、それをいくつも同時並行で行っていく。
刻一刻と過ぎていく時間の中で、特対課の部屋に焦躁が満ちる。
高岡はただ座して連絡を待ち、若田は全員に目が覚める様な熱いお茶を用意した。
出実もまた、特対課に置いてあるパソコンでできる限りを尽くす。
172
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:19:47 ID:J.heRfoA0
突如として鳴り響いた音楽。
十年ほど前に流行ったその曲は、高岡の携帯電話から流れていた。
从#゚∀从 「なに!?……番号が分かった? ああ!
三三〇四か! ありがとう! だそうだ!」
( ´_ゝ`) 「オーケィ。ばっちり聞こえた」
(´<_` ) 「番号が分かればわけはない。すぐに見つけてやるさ」
それは時間との戦いであった。
誰も話すことなく、ただただパソコンを叩く無機質な音だけが響く。
( ´_ゝ`) 「見つけた!!」 (´<_` )
173
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:20:43 ID:J.heRfoA0
環状線から北東方面のニューソクへ抜けるバイパス道。
完全に目張りをした黒色のハイエース。
番号は高岡の言っていた通りの三三〇四。
兄者と弟者がハイエースの向かっている先をあらゆる手段を用いて特定していく。
諸本が攫われてから五時間かけて、ようやくその居場所を突き止めた。
現在もヴィップから離れるように動き続けている車は、戻ってこれない程遠くへ向かおうとしていた。
(#´・_ゝ・`) 「高岡! すぐに止めろ!」
从#゚∀从 「あぁもう! わかってるって! 今、現地の警察に連絡してる!」
高岡は出来るだけ簡潔に、その用件を伝えた。
どうやら現地警察署の署長が電話を取っていたようで、話はスムーズに終わった。
从 ゚∀从 「今すぐ検問をしいて止めてくれるらしい!」
ゲ=ハの爆破予告まで残り十一時間。
174
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:26:08 ID:J.heRfoA0
>>
【姓名】 流石 兄者
【読み】 サスガ アニジャ
【年齢】 42
【役職】 警視
【専門】 ソフトウェア 情報整理
【付記】 特対課の諸本と同期。双子の兄。思考が真逆のため非常に仲が悪い。
警察庁内では出実に次ぐ実力の持ち主。
【姓名】 流石 弟者
【読み】 サスガ オトジャ
【年齢】 42
【役職】 警視
【専門】 ハードウェア 情報整理
【付記】 特対課の諸本と同期。双子の弟。兄と比べれば多少温厚であるが、諸本とは犬猿の仲。
資料作りなどの細かい作業が得意。
>>
175
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:28:49 ID:J.heRfoA0
16
(´-ω-`) 「ん……」
ずきずきと痛む頭を押さえ、諸本はゆっくりと座った。
立ち上がるほどの力は入らず、聞こえてくる声の意味も未だ理解できていない。
ただ何度も肩を揺らす腕が鬱陶しくて、振り払おうともがく。
「諸本警視! 諸本警視!」
(´-ω・`) 「っ……ここは……お前は……」
「特対課の諸本警視ですね! 落ち着いて聞いてください。私はニューソク警察署の者です」
(;´-ω・`) 「ニューソク……ニューソク!?」
急に立ち上がろうとした諸本は頭を打ち、頭を押さえて座り込む。
勢いに押されてひっくり返りかけた警官が、車の扉を掴んで堪えていた。
「警察庁の兀山警視長からの言伝です」
(;´-ω・`) 「デミさんから……?」
176
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:30:56 ID:J.heRfoA0
「生きているなら、すぐに戻って任務を果たせ、と。
無茶苦茶です。薬で眠らされていたんでしょう。少し休んでいかれますか?」
(´・ω・`) 「いや、いい。パトカーを使ってもいいか?」
諸本を連れてきた男達は、手錠に繋がれて他のパトカーへと連れ込まれているところだった。
それを見ながら、両手で自分の身体の調子を確かめる。
若干の眠気と、かつてゲ=ハに襲われたときの傷は残っていたが、それ以外はおおむね良好。
問題なく動けると判断した。
「では、せめて運転だけでも変わります。ヴィップのどこに向かえばいいですか?」
(´・ω・`) 「アーカーシャでわかるか?」
「ヴィップにある複合情報施設でしたか。ナビでなんとか」
(´・ω・`) 「出来るだけ急いでくれ。時間が無い」
「はい」
パトカーに乗り換え、諸本は来た道を戻り始めた。
緊急車両用のサイレンを鳴らしながら高速をとばす。
177
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:32:08 ID:J.heRfoA0
(;´・ω・`) 「くそっ……」
しかし、ヴィップに入るか否かの地点で、高速道路の渋滞によってその足を止められた。
同時に、環状線の一部がテロによって崩壊したとの無線が入る。
高速の降り口はまだ遠く、車の間を縫って進むだけのスペースもない。
諸本は苛立ちを何度も窓にぶつけ、頑丈な防弾ガラスに小さな罅を創り出す。
「すいません……」
(;´・ω・`) 「頼む……時間が無い……!」
祈り虚しく、車は一向に進まない。
空気を叩く激しい音が聞こえたのは、その時であった。
車の窓を開けて空を見上げると、ロープを垂らしたヘリコプターが頭上でホバリングしていた。
その運転席は暗くなってきていたせいでほとんど見えない。
しかし、諸本はすぐに正体に気づいた。
(;´・ω・`) 「助かった!」
「え? どうするんですか!?」
178
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:32:47 ID:J.heRfoA0
驚くニューソクの警察官をよそに、諸本はロープに掴まった。
重たい身体は機械の力でゆっくりと持ち上げられ、空いたドアから中に入る。
運転席から後ろを振り向いたのは、荒巻龍。
(;´・ω・`) 「ほんと……何でもできるんですね」
/ ,' 3 「許可もとらずに勝手に飛ばしてるからな。後で始末書ものだ」
(´・ω・`) 「……」
/ ,' 3 「若田さんに頼まれちゃ仕方ないだろ。あの人にはお世話になってんだ。
ま、どのみちお前だけが頼りなんだ。儂も歳を取った。あと十年若けりゃなぁ」
(´・ω・`) 「龍じい……」
/ ,' 3 「感傷に浸ってる暇は無いぞ。アーカーシャまで体を温めておけ。
武器は後ろにおいてあるやつの中から好きなのを持っていけばいい。
それから、その鞄は必需品だ。必ず持っていけ」
(´・ω・`) 「わかった」
179
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:35:25 ID:J.heRfoA0
諸本は山と積まれた武器の山の中から、一つのハンドガンを手に取った。
マガジンを何本かと爆発物を腰のベルトにさすと、緩んでいたネクタイを首元まで締め直す。
空をゆく間に、諸本は荷物のチェックを済まし、用意されていた資料を読みふける。
(;´・ω・`) 「急いでくれ」
/ ,' 3 「言われんでもわかっとる!」
荒巻の操縦するヘリコプターに乗って一時間。
完全に陽は落ちて、ヴィップの空も夜の顔になる。
ようやく複合情報処理施設、アーカーシャの入り口の前についた。
ヘリコプターが限界まで高度を下げたところで、飛び降りて着地する。
地下にあるアーカーシャの入り口は小さな小屋程度の大きさしかない。
諸本はすぐさま玄関にある認証機器にカードキーを差し込んだ。
(´・ω・`) 「……エラーか」
荒巻の話によると、事前にデータベースを管理している期間に連絡して登録していたようだが、扉は開かなかった。
出実から預かって来たというスマホ程度の大きさの機械を鞄から取り出す。
扉の機械にケーブルの端子を挿す。
180
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:38:12 ID:J.heRfoA0
同時に、出実からの電話が鳴った。
鞄の中からスマホを取り出し、応答する。
(´・ω・`) 「俺だ」
(´・_ゝ・`) 『無事だったか』
(´・ω・`) 「そんなものは後でいい。指示をくれ」
(´・_ゝ・`) 『そのまま五秒待て。扉を開ける。……諸本、気をつけろよ』
(´・ω・`) 「ああ、わかってる。同じ轍は踏まない」
軽い電子音と共に玄関のドアが開く。
狭い廊下の突き当たりには二つのエレベーター。
(´・_ゝ・`) 『それに乗って一番下の階まで行け。そこから先は電波が届かない。頼んだ』
(´・ω・`) 「了解」
181
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:39:17 ID:J.heRfoA0
下三角のボタンを押して、諸本はエレベーターに乗り込んだ。
暫くして扉は閉まり、ゆっくりと降りていく。
(;´・ω・`) 「っち」
高度を下げるためのワイヤーが軋む音に気が付いた諸本は、すぐに天井の点検口を殴って開けた。
金属の箱が自由落下に囚われる直前に、天井から脱出する。
数秒後には奈落の底のようなシャフトに轟音が響く。真っ暗闇の空間が一瞬だけ照らされた。
(´・ω・`) 「最初から階段を使えばよかった」
鋼材でくみ上げられたシャフトは、人間が下りるようにはできていない。
諸本は適当なとっかかりを探しながらおよそ十数階分の高さを降りて行く。
足を滑らせれば御陀仏になるような状況はしかし、逆に彼の得意分野でもあった。
まるで階段を下りるかのごとく壁伝いに降りていく。
一番下のエレベーター残骸に着く直前で止まり、適当な金属を拾って扉にぶつけた。
即座にシャフト内を襲った嵐のような銃撃。
扉に一センチの隙間も赦さない程の鉛玉が叩き込まれた。
(´・ω・`) (ったく、馬鹿か)
( ´ー`) 「殺したか……見てこい」
カル`・ロ ・) 「了解」
182
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:40:22 ID:J.heRfoA0
崩れかけた扉をこじ開け、完全武装の男がシャフト内に侵入した。
諸本はその首の後ろから頸椎を破壊する弾丸を放つ。歩いていた男は糸が切れたように瓦礫の中に倒れ込んだ。
それを廊下にいるであろう敵に理解させる間も与えず、スタングレネードを投げ込む。
激しい閃光と爆音を確認し、諸本は階に降り立った。
状況を確認しながら敵を打ち抜いていく。
ものの数十秒で、二ケタに近い数の死体が転がっていた。
全ての死体は額もしくは喉元を打ち抜かれていたために即死。
(´・ω・`) 「毒男ほどじゃないけど、銃が使えないわけじゃない」
狭い廊下の仕掛けを警戒しつつ、諸本は奥へと進む。
コントロール室の防弾ガラスの扉は、開いたままになっていた。
室内は空調の音が唸り、肌寒い位の温度。
立ち並ぶ巨大な黒い箱は、等間隔に並べられている。
野球スタジアムほどの広さがあるコンピュータールームの図は、すべて頭に入っていた。
一番奥にある空調制御管理用の部屋。
そこが出実が予測した爆弾の設置個所であった。
183
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:42:17 ID:J.heRfoA0
アーカーシャでは室内の温度を保つために、大量の空気を外と交換し続けている。
大爆発が起これば、ヴィップの中心部に存在する複数の換気口から大量の毒物がまき散らされてしまう。
流石兄弟が概算で計算した被害者数は死傷者合わせて三百万人。
被害総額は五十兆円。それだけの重圧が諸本の背にかかっていた。
(´・ω・`) 「……」
( ゚∋゚) 「意外と元気だな」
考え事をしながら歩いていた諸本の前を遮るように、コンピューターの陰から現れた二つの影。
どちらも諸本に比肩する大男。
銃を構えている諸本に対して、その二人はナイフすら持っていなかった。
ミ,,゚Д゚彡 「撃つのはやめとけよ。ここにあるコンピューターに当たっちまったら困るだろうが」
(´・ω・`) 「邪魔をするな」
銃を降ろしコートのポケットに仕舞う諸本。
目標を逸れた弾が機械に当たってしまえば、損害額は計り知れず、
二人が武器に類するものを持っていなかったことも諸本の行動を後押しした。
184
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:42:51 ID:J.heRfoA0
( ゚∋゚) 「二対一だが、悪く思うな」
ミ,,゚Д゚彡 「俺は一対一で言ったんだがね。玖狂程度に負けた奴なんか。
というより、あんたがあのままニューソクの田舎で大人しくしていてくれりゃあ、
一対一が出来たんだがな」
(´・ω・`) 「どういうことだ」
ミ,,゚Д゚彡 「あんたを殺さないように頼んでおいたのさ。俺の実力をはかるためにな」
( ゚∋゚) 「油断するな冨佐」
拳を目前で構える二人に対して、諸本も同様に徒手空拳での戦闘に意識を変える。
完璧なコンディションには程遠い状態であったが、痛む筋肉を無理やり動かす。
(´・ω・`) 「……」
諸本が構え終わらないうちに、冨佐と呼ばれた男の方が動いた。
数十歩の距離を瞬く間に詰め、握りしめた右こぶしを振りぬく。
岩をも砕きそうな一撃を諸本は身体を捻ることで避ける。
ミ,,゚Д゚彡 「よく避けた! が、死ねぇ!」
185
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:44:28 ID:J.heRfoA0
すれ違った瞬間に床が弾けそうな音でブレーキをかけ、
身体が斜めに傾いた諸本の頭を拳が追う。
ミ,,゚Д゚彡 「っ!?」
(´・ω・`) 「……」
弾けるような音がして、諸本の左手が受け止めた。
冨佐は一度拳を引いた後、体重をかけて何度もたたき込む。
ミ,,゚Д゚彡 「……!」
最後を飾るように顔に向けて躊躇いなく放たれた渾身のストレート。
それを含めた十を超えるラッシュは、全て諸本の掌によって受け止められた。
(´・ω・`) 「寝てろ」
胸ぐらを掴み無理やり引き倒す。
自身の猛攻を完璧に受けられて焦った冨佐は、無様に床に転がった。
その顔を体が浮くほど蹴り上げ、握りしめた右手の鉄槌で地面に叩き付けた。
額で床を砕いて血だまりを作った冨佐は動かない。
186
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:45:43 ID:J.heRfoA0
( ゚∋゚) 「化け物め」
(´・ω・`) 「次はお前がこうなる」
言葉が終わらないうちに玖狂と諸本の拳が交わった。
お互いの一撃を受けてぐらつき、踏みとどまりながら相手を倒さんと拳を振るう。
(;´・ω・`) 「ぐっ」
玖狂のボディーブローが直撃し、下がった諸本に追い打ちをかける。
一歩を踏み出した瞬間、諸本の蹴りが脇腹に突き刺さった。
(; ゚∋゚) 「っく」
蹴り飛ばされた玖狂の衝撃で、ボルトで固定されているはずのコンピューターが大きく揺れた。
(´・ω・`) 「くたばれ」
踏み下ろすような諸本の一撃を躱し、玖狂は足を掴んで押し倒す。
マウントポジションを取り、腕を存分に叩き付けた。
絶え間なく振る降ろされる衝撃を、ガードを固めてひたすらに耐える諸本。
187
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:46:42 ID:J.heRfoA0
連撃が緩んだ一瞬の隙で身体を捻って、諸本は不利な体勢を逃れる。
再び正面切って立ち会う二人の吐く息は荒々しい。
一撃一撃が重く、打つ方も受ける方も大きく体力を削られていた。
瞬き程度の油断で打ち倒されるかもしれないという極限の精神状態が、魂すら削る。
一瞬一瞬に激しくぶつかり合う肉体は、黒に、赤に汚れていく。
頬を殴られた玖狂は、左目の下を腫らす。
こめかみに踵を打ち付けられて血を流す諸本。
(メ´・ω・`) 「このネクタイ……いくらすると思ってんだ……」
(メ゚∋゚) 「ブランドもの……だったか。……残念だな」
腕が上がらず、身体を傾けて受けた諸本の左肩の外れる音が響く。
身体中を駆け巡る痛みをかみ砕くほどに食いしばり、右腕を振りぬいた。
(#´・ω・`) 「妻と娘からの……大事なプレゼント……だっ!」
188
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:47:47 ID:J.heRfoA0
玖狂のぶつかったコンピューターが、何度も明滅し、煙を出して静かになった。
僅かな火気にセンサーが反応したせいで警告音が鳴り響く。
両腕をぶら下げたまま立ち上がる玖狂。
狂気にその瞳を染めて諸本へと迫った。
(メ゚∋゚) 「あああああああああああああああああ」
(メ´゚ω゚`) 「ああああああああああああああああああ」
それを迎え撃つ諸本は、自らに流れる血と拳にこびりついた玖狂の血を吹き飛ばすような一撃。
唸り、風すらも引きちぎる其れは、まさに暴風雨かの如く。
カウンターとして真っ直ぐに玖狂を捉えた。
それでも倒れずに立ち上がる玖狂。
しかし、彼にはもはや構えるだけの力すらなかった。
足を引きずりながら、諸本が近づく。
それに対して玖狂は何の反応も見せない。
限界を超えて傷ついた身体で、右の拳を振り抜いた。
抵抗する力すらない玖狂は、弾かれたように吹き飛んで倒れたまま起き上がらない。
189
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:48:32 ID:J.heRfoA0
(メ´・ω・`) 「はぁ……はっ……糞が……」
鳴り響く警報を気にせずに、諸本は片手で煙草を取り出した。
潰れで千切れた欠片の中で一番長い一本を取り出し、火をつけて燻らせる。
(メメ∋゚) 「……一本……くれ……」
(メ´・ω・`) 「まだ……意識があんのか。驚いたな……」
ゆっくりと起き上がり千切れた煙草を差し出す。
それを咥えたまま、玖狂は気絶した。
痛む身体に鞭を打ち、一番奥の部屋にたどり着く。
開け放たれただ扉の中には、大量の爆薬が隙間もないほど詰め込まれていた。
そして、事の顛末を全て見ていたであろう男は、
部屋の中心にある椅子に静かに座っていた。
190
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:51:11 ID:J.heRfoA0
>>
【アーカーシャ】
国家のあらゆる情報を管理している地下データベース。
スーパーコンピューターも併設されており、かなり広い空間。
空調関係の維持には相当な費用がかかっているため、つねにコスト削減の対象に挙がっている。
>>
191
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:53:17 ID:J.heRfoA0
17
(#´・_ゝ・`) 「おい! 突入班の様子はどうなってる! 安全確保が出来てない?
そんなんなら突入班やめてしまえ」
从#゚∀从 「だーから、さっさと一般市民を非難させろ。時間が無い!
あ? ゲ=ハが国を滅ぼすって言ってんだろうが! 今すぐやりやがれ!」
諸本からの通信が途絶えて三十分ほど経った頃、特対課の室内は異様な熱気に包まれていた。
その場にいた誰も状況が分からず、方々に電話をかけている。
ただ一人、若田だけがゆっくりとお茶を飲んでいた。
( <●><●>) 「この騒がしさ、懐かしいですね……」
( ´_ゝ`) 「若田さん、流石に不謹慎ですよ」
( <●><●>) 「そうでしたね。それよりもあなた方は何もしなくていいんですか?」
(´<_` ) 「俺らの任務は、爆弾の在処を特定することでしたから」
( <●><●>) 「成程。ただし、私の経験から物を言わせてもらうならば、事はそう単純ではないと思いますよ」
192
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:54:59 ID:J.heRfoA0
飲みかけの湯呑を机の上に戻し、若田は地図を見つめる。
大きく×印がかかれた場所が諸本の向かった複合情報施設、アーカーシャ。
空調用のダクトが付近の地上に何地点も存在していることから、ガスの拡散には最も効率が良い。
出実と高岡が話し合って出た結論だった。
兄者と弟者はそれに反対するだけの意見も考えもなく、手放しで賛成した。
後は諸本が敵を鎮圧すればすぐに爆弾処理班を投入することができる状況。
今日が終わるまで後三時間もあり、諸本に全幅の信頼を置いている出実は、
特対課内で後処理の話をする余裕すらあった。
( <●><●>) 「諸本は優秀です。特にこと戦闘においては他の追随を許しません。
地下の複合情報施設の方は恐らく解決するでしょうね」
(´<_` ) 「じゃあ何が」
( <●><●>) 「ゲ=ハの何者が今回の騒動の原因かわかりませんが、
その者がロマネスクの教えを忠実に実行しているとするならば、この程度では済まない筈です」
193
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:55:49 ID:J.heRfoA0
( ´_ゝ`) 「俺らはどうするべきでしょうか」
( <●><●>) 「私にはそれが分かりません。
国一つ滅ぼすほどの爆弾が仕掛けられる場所など限られているはずです。
貴重な毒ガスを複数施設に分散して用いるほど愚かなことはしません。
逆にその効果が薄まってしまいますから。火薬以外で国を破壊することは果たして可能でしょうか」
(´・_ゝ・`) 「若田さん、その話ちょっといいですか」
いつの間にか電話を終えた出実と高岡が机に戻ってきていた。
( <●><●>) 「はい、様子はどうですか」
(´・_ゝ・`) 「いまいちですね。こっちは命を懸けてるのにどうも後に着いて来ないです」
( <●><●>) 「そう言ってあげないでください。向こうの感覚が普通ですから」
从 ゚∀从 「そういえば、連絡来てたの忘れてました。
高層ビルの方は収穫無しです。残りのフォーエバースタイル事務所も同じでしたね。
ただ、大きな何かを移動させた後はあると」
高岡は特対課のパソコンのメールを開き、写真を広げる。
地面に残っている日焼けの痕が、かなり重く大きなものだということを窺わせた。
194
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:57:11 ID:J.heRfoA0
(´・_ゝ・`) 「それで、さっきの話ですけど。ゲ=ハがまだ奥の手を隠してると?」
( <●><●>) 「実際はわかりません。ただ、ロマネスクなら確実にもう一手打っているでしょう。
それも、此方が気づいた時には手遅れのような重い一手を、です」
从 ゚∀从 「火薬を使わない爆弾か……プラスチック爆弾とかっすね」
( ´_ゝ`) 「葉音、お前黙ってたほうが良いぞ」
从 ゚∀从 「あぁ?」
(´・_ゝ・`) 「プラスチック爆弾は火薬を使っている。プラスチックとは可塑性、と言う意味だ。
粘土みたいに変形できるってことな」
从 ゚∀从 「……マジかよ」
(´<_` ) 「ひとつ勉強になったな。まぁそれで、どうだろうな出実さん」
(´・_ゝ・`) 「化学薬品だったら茂羅の知識が必要になる。あいつは今連絡が取れないが……」
昨日、特対課の事務所を出て行ってから、誰も茂羅がどこにいるのか知らなかった。
朝から定期的に出実が電話していたが、携帯は圏外でつながらない。
195
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:58:33 ID:J.heRfoA0
( <●><●>) 「すいません、どうも混乱させてしまっているみたいですね」
(´・_ゝ・`) 「いえ、そんなことは」
出実自身も感じていた言葉にできない違和感。
それは若田の言う通りであった。
かつてチャンネル全域を恐怖のどん底に落としたゲ=ハが、こんなにも単純な仕掛けで済ませるだろうか。
その疑問に答えることのできる人間はいない。
(´・_ゝ・`) 「流石兄弟、もう一回事件簿を見せてくれ」
( ´_ゝ`) 「ほらよ。ただ、それはこの前までのデータだ」
投げられた資料の束を掴み、乱雑にページをめくっていく。
一つずつの事件の概要を無言で読む。
最後の事件の日付は、一週間前。特対課とは何の関係もないもの。
(´<_` ) 「それに足して、ゲ=ハの活動が表立ってきた時の事件が……」
(;´・_ゝ・`) 「……っ! そうか!」
弟者の補足で気づきを得る。
196
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:00:30 ID:J.heRfoA0
从 ゚∀从 「何か気づいたんですか?」
(´・_ゝ・`) 「ゲ=ハが起こした最近の事件に二つ。
俺のパソコンを破壊したウィルスと、毒男の命を奪った爆弾。
どっちもこちらが不利な状況だったことは否めないが、
特対課を上回るほどの人材がいる可能性があるってことだ。
たった一人で、この二つの事件が可能だと思うか?」
(´<_` ) 「……! 爆弾を作ったやつがアーカーシャを狙っているとすれば」
( ´_ゝ`) 「ウィルスを作ったやつがどこかを狙っているはずだ」
( <●><●>) 「コンピューターウィルスなら、ヴィップを一瞬で滅ぼすこともが可能ですか?」
(´・_ゝ・`) 「一瞬には語弊がありますが。破壊するのは一瞬、その結果が影響するのはその後です。
あらゆる国家、民間のデータバンクに対してウィルスをばら撒けば……」
( ´_ゝ`) 「大混乱だろうな。戸籍も銀行口座も、全てランダムに変更されてしまえば」
(´<_` ) 「となると移動されたのはパソコンか。それも、かなりのスペックの」
197
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:01:25 ID:J.heRfoA0
俄かに騒がしくなった特対課室。
流石兄弟が移動予測地点をいくつもピックアップしていく。
葉音はそれぞれの地点に警官を走らせるように電話で指示する。
(;´・_ゝ・`) 「何処だ……」
( <●><●>) 「少し落ち着きましょう、出実君」
(;´・_ゝ・`) 「若田さん、しかし時間がないんです」
ゲ=ハが宣言した時間まで残り四時間。
もし電子爆弾が存在した時、それを解除できるまでの時間を逆算する出実。
( <●><●>) 「そういう時だからです。何の手助けもできない私から言われるのは腹が立つでしょうが。
相手のペースに乗っては駄目です」
(´-_ゝ-`) 「……」
出実は大きく深呼吸をした。
閉ざされた会議室の中に充満した煙草の臭いで肺を満たす。
その行為を二、三度繰り返して思考を明快にする。
198
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:02:02 ID:J.heRfoA0
(´・_ゝ・`) 「こっちから仕掛ける」
( ´_ゝ`) 「は?」
(´・_ゝ・`) 「向こうは俺を倒して油断しきってるはずだ。
自分で言うのもなんだが、このチャンネルで俺よりも詳しい奴はいない」
(´<_` ) 「……傲慢だが、その通りだろうな」
(´・_ゝ・`) 「恐らく、時間通りにネットにばら撒くためにスタンドアロンにしてるなんてことはない……はずだ」
(´<_` ) 「だがどうやって探す。圧倒的に情報が足りない」
( ´_ゝ`) 「手当たり次第に調べる人手も時間もない」
出実は一瞬考え、自らの納得できる答えを導き出す。
苦いインスタントのブラックコーヒーを自前のコップに注いで、諸本の席に座った。。
(´・_ゝ・`) 「情報量だ。国家も民間も関係なく荒し尽すほどのウィルスの容量が小さいわけがない。
どんなに拡張子やファイル名を偽装しても、容量は誤魔化せない。
高性能なパソコンがあったとしても、回線が細ければウィルスは有効にネット上に放出されない」
199
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:03:06 ID:J.heRfoA0
( ´_ゝ`) 「……テストをしてるってことか」
(´<_` ) 「しかし、各プロバイダの上から順にみていくだけでも……いや、そうか。誘拐事件!」
(´・_ゝ・`) 「ナンジェイネットワーク」
流石兄弟が調べ上げたゲ=ハ関連予想事件簿。
その中の一つに少し変わった誘拐事件があった。
通報から数時間後、犯人からの電話を取った父親は、幾つかの条件をのんだらしい。
その内容は警察側には教えてもらえなかったが、娘はさほど時間を置かず無事に帰ってきた。
犯人は未だに捕まっていない。
被害者の父親が務めていた会社がナンジイェネットワーク。ヴィップ国の大手回線接続事業者である。
( ´_ゝ`) 「少し待て、俺と弟者ですぐに洗い出す」
(´<_` ) 「緊急事態だ、少々手荒な手段をとっても許されるだろうな」
( <●><●>) 「さて、調査はお二人の得意分野ですからね」
从 ゚∀从 「どうやら俺は全く役に立ちそうにないな」
200
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:04:03 ID:J.heRfoA0
( <●><●>) 「そうでしょうか。あなたにもできることがあると私は思いますが」
从 ゚∀从 「……思いつきません」
( <●><●>) 「もう少し待って居ればわかりますよ」
立ち上がっていた高岡は、若田の言葉を聞いて再び椅子についた。
ただ座っていることが気に食わず、手元に転がっている資料の一つ一つをじっくり読み始める。
孫を見守る好々爺のように、その姿を見て微笑む若田。
(´・_ゝ・`) 「ったく……つまらねぇ時間だ」
新たな煙草を取り出して火をつける出実。
静かな呼吸で火種をゆったりと燃やしていた。
ただただ、流石兄弟の仕事が終わるのを待つ。言葉とは裏腹に静かな闘志を滾らせながら。
201
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:05:17 ID:J.heRfoA0
>>
【姓名】 若田 桝
【読み】 ワカタ マス
【年齢】 60
【役職】 警視正
【専門】 暗記
【付記】 特対課の暴れ龍と呼ばれていた荒巻龍をしても頭が上がらない警察庁の重鎮。
役職は止まっているものの、多くの警察官から慕われている。
特技の暗記はもはや神域に達しており、数日前程度の会話ならほぼすべて暗唱できる。
格闘や交渉など何でもこなす元特対課の中でも絶対的エース。
>>
202
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 19:34:41 ID:c1Ma10bo0
読んでるぞ 支援
203
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:46:08 ID:23xxBFUg0
18
アーカーシャの最奥、部屋の中に用意された椅子に男が座っていた。
額の両サイドから抉れるように無くなっている髪の毛。
中年男性特有のふっくらとした体形。
誤りであってほしいとの願いが聞き届けられることはなかった。
( ^ω^) 「久しぶりな気がするな、諸本」
(メ´・ω・`) 「っ! なんであんたが……」
( ^ω^) 「別におかしかねぇだろ。ロマネスクに傾倒してた信者が警察内にいても。
当時は勝てなかったから、戦わなかった。それだけだ」
全身傷だらけの諸本に対して、武雲は椅子に座ったまま余裕を見せる。
自分に向けられている銃口を全く気にかけず、足を組み替えて話を続けた。
( ^ω^) 「お前が来たのは予想通りだったな。
茂羅と一緒に来るとは思ってたんだが……それは外れていたみたいだな」
(メ´・ω・`) 「……あんたがゲ=ハを?」
( ^ω^) 「違う。俺よりも上のやつはまだ何人かいる」
204
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:47:45 ID:23xxBFUg0
(メ´・ω・`) 「あんたがその扱いだということは、ゲ=ハは随分と人材に恵まれているらしいな」
( ^ω^) 「なに、そう褒めることはない。この現状を見ればわかるだろう?」
(メ´・ω・`) 「……あんたの負けが見えるな」
( ^ω^) 「いや、残念ながら相打ちってところだろう。お前はこの爆弾を解体できない。
処理班だってエレベーターシャフトを下りるなんて真似は出来ないだろうしな。
逆に俺はお前から……いや、特対課から逃げられない。目標の達成度合いで言えば俺に分があるか。
ロマネスクを解放できなかった時点で俺の負けだが」
(メ´・ω・`) 「……嘘だったのか、特対課でのあんたは」
( ^ω^) 「それなりに楽しかったさ。少しくらいはこのままでもいいかと思うほどにはな。
もう一人の仲間と会うまでは。さて、どうする」
武雲は右手側に置かれた電子表示の上に手を重ねた。
朱い時刻が浮かび上がるのは、爆弾が起動するまでの時間が刻まれている二つのタイマー。
それぞれが異なる数字を示しており、片方は現在時刻、
もう片方は一秒よりも僅かに早い速度で減っていた。
205
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:48:41 ID:23xxBFUg0
( ^ω^) 「ここの爆弾が爆発すれば、換気口に仕掛けられた猛毒ガスヴィップの中心部に撒き散らされる。
被害はとんでもない規模になる。俺を殺さなければ、解体することは出来ない。
目の前でみすみす解体されるわけにもいかないしな。多少の抵抗ならできるだろう」
(メ´・ω・`) 「戻っては……これないのか」
( ^ω^) 「心残りは無い。お前が引き金を引くならな」
(メ´・ω・`) 「俺にあんたを殺せと……言うのか」
音が聞こえそうなほどに強く噛み締める。
銃口はひと時たりとも武雲の胸から離れていない。
( ^ω^) 「どうする?」
(メ´・ω・`) 「あんたには……世話になった」
諸本は銃を握り直す。
腕と一体化してしまったのかと思える銃は鉛の様に重く、真っ直ぐ突き出して支えるのに両手を使う。
痛みに邪魔をされてか銃口が震えて定まらない。
206
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:49:55 ID:23xxBFUg0
(メ´-ω-`) 「あんたには……!」
( ^ω^) 「どうせ処理班が来るには間に合わない。
この地下深くから電波は届かず、エレベーターはもうお釈迦だからな。
その身体じゃあ階段はきついだろ。最後の最期まで俺と話でもしておくか?」
(´ ω `) 「いいや…………さよならだ」
引き金がひかれた。
乾いた音はアーカーシャの地下に静かに染み込んでいき、すぐに聞こえなくなった。
諸本は立っているだけの力を失い、うつ伏せに倒れる。
弾丸は一直線に武雲の心臓を貫いており、その生命活動を終わらせていた。
同時に、一つ目のタイマーは残り時間を表示したまま止まる。
諸本はぼやける目で二つ目のタイマーが静かに時刻を刻んでいるのを眺めていた。
何もすることもできず、残った唯一の力で歯をかみしめながら。
その時聞こえた足音に、諸本は手放しかけた意識を掴みなおす。
足音が近づいてくるのを認識しておきながら、満身創痍のショボンは振り向くことすらできない。
影は、彼の頭のすぐ横で止まった。
207
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:49:55 ID:DKj5qlHo0
ハゲェ!
208
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:52:28 ID:7qi4lCeQ0
ショボン様……
209
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:52:39 ID:23xxBFUg0
(; ・∀・) 「諸本さん……これは……」
冬の真っただ中でありながら、汗を流して呼吸も乱れている茂羅。
長く黒い頭髪の姿はそこに無く、額は前に会った時よりもずっとずっと広かった。
それに天井の光が反射していたせいで、目を細めながら諸本が答える。
(メ´・ω・`) 「茂羅……か? ……あとで説明する。すぐに……爆弾を解体してくれ」
その姿に困惑しながらも、諸本は指示を出す。
彼にしかできない仕事をさせるために。
茂羅もまた、武雲の死体と傷だらけの諸本の姿がいる光景を理解しようと、必死で脳を働かせていた。
諸本に言われ思考を中断し、すぐさま黒いボックスのねじを外していく。
一人で抱えるには大きすぎる箱の中には、無数の配線が通っていた。
(; ・∀・) 「これは……」
(メ´・ω・`) 「間に合うか?」
( ・∀・) 「間に合わせてみせます。じゃなきゃ毒男さんに生かしてもらった意味がないですから」
210
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:53:16 ID:23xxBFUg0
(; ・∀・) 「これは……」
(メ´・ω・`) 「間に合うか?」
( ・∀・) 「間に合わせてみせます。じゃなきゃ毒男さんに生かしてもらった意味がないですから」
持ってきた荷物の中に入った道具を並べる。
外装を取り外し、丁寧に解体していく。
細かい電気配線を確認して、血だまりに濡れる床に残ったスペースに書いていく。
目の前に表示されているタイムリミットを気にしながらも、時間をかけて、丁寧に。
( ・∀・) 「解体に入ります。失敗しても恨まないでください」
(メ´-ω-`) 「お前に任せる。どうせ俺には出来ないんだからな」
( ・∀・) 「はい」
大きく息を吸って覚悟を決めた後、リード線を次々と断ち切っていく。
一つでも順番を間違えれば即爆発してしまうような危険な解体方法。
残り時間内に解体しきるには、その手段しかなかった。
211
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:54:08 ID:23xxBFUg0
額に流れる汗をぬぐう茂羅。
手を止めず、処理速度の限界を超えて計算し続ける。
残り時間のタイマーは既に三十分を切っていた。
(メ´・ω・`) 「一つ、聞きたいことがある」
( ・∀・) 「後でもいいですか」
(メ´・ω・`) 「後なんてないかもしれねぇだろうが」
( ・∀・) 「なんっすか」
返答にはほとんど意識を向けない。
目の前にある大きすぎる問題のせいで、そんな余裕がないのは当然ではあったが。
二つ目の起爆用の芯を引き抜いた。だが最後の一つまで分解しなければ意味はない。
残りの起爆用の芯は三つ。休憩する間もなく茂羅はすぐにとりかかった。
(メ´・ω・`) 「毒男はな」
(メ´・ω・`) 「毒男はこの状況を読んでたんじゃないか」
212
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:55:09 ID:23xxBFUg0
( ・∀・) 「……」
茂羅の作業音だけが聞こえる空間。
壁にもたれて休憩していた諸本は、他にすることもなく言葉を紡ぐ。
(メ´・ω・`) 「相手に爆弾のプロがいることを。
だからこそ、お前を生かした。だからお前にできることは、そいつを無事に解体することだ」
( ・∀・) 「言われなくてもわかってます」
さらにもう一本、芯を取り外した。
八割がたの配線を無力化し、残り二割は前回と同じように溶接されたボックスの中へと導かれている。
茂羅は電動工具を手に取った。
( ・∀・) 「たぶん、こうなってると思ってました。だから、対策はしてます」
溶接部のみを破壊するための極細ドリル。
力をかけすぎればすぐに折れてしまうため扱いの難しいそれのスペアを、大量に持ち込んでいた。
ゆっくりと、確実に溶接部を削っていく。
残り時間が五分をきった時、茂羅は漸くブラックボックスを開封した。
213
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:58:11 ID:23xxBFUg0
>>
【カツラ】
中年男性の光(を隠す装備)。上司からも部下からも気を使われるようになる。
極稀に気にしない人もいるが、それを揶揄されているのを外から見ているのはあまり気分が良くない。
蒸れる為、残っている僅かな希望にも悪影響を与える諸刃の剣。
ニット帽との併用はできない。※最近の高性能なものは除く。
最近は増やす奴が流行っているものの、維持費が高くなかなか手を出せない。
カツラ、それは君が見た光、僕が見た希望。
カツラ、それは触れない心、幸せの黒い髪
>>
214
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:58:43 ID:23xxBFUg0
単純だが、数の多い配線。
その行く先全てを精査している時間は無い。
茂羅は極限まで切り詰めた集中力でもって、配線の役割を予測する。
( -∀-) (毒男さん……ッ!)
十数本もあるカラフルな線。
そのうちの一本、黒色の線を引きずり出す。
未練を断ち切るかのように、震える手で線を支えニッパーで挟む。
ほんの少しの力をいれれば、線は断ち切られ二つに一つの未来が訪れる。
秒数のみがカウントされている表示。
もはや、照準している時間はなかった。
何かに祈るように目を瞑る。
もしかしたら最後になるかもしれない煙草を持ってくるべきだったと少し後悔しながら、茂羅は右手に力をいれた。
215
:
順番ミス
:2016/03/30(水) 22:59:14 ID:23xxBFUg0
>>
【カツラ】
中年男性の光(を隠す装備)。上司からも部下からも気を使われるようになる。
極稀に気にしない人もいるが、それを揶揄されているのを外から見ているのはあまり気分が良くない。
蒸れる為、残っている僅かな希望にも悪影響を与える諸刃の剣。
ニット帽との併用はできない。※最近の高性能なものは除く。
最近は増やす奴が流行っているものの、維持費が高くなかなか手を出せない。
カツラ、それは君が見た光、僕が見た希望。
カツラ、それは触れない心、幸せの黒い髪
>>
216
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:03:38 ID:23xxBFUg0
19
( ´_ゝ`)(´<_` ) 「見つけた!」
膨大な契約者リストの中から、いじられた形跡のある顧客を見つけ出した流石兄弟。
住所と名前を含むすべての情報を印刷する。
( <●><●>) 「高岡君」
从 ゚∀从 「すぐにっ!」
タイムリミットまで残り一時間。
アジトにしているであろうマンションは、どんなに急いでも一時間以上かかる場所にあった。
それでも高岡は全く諦めるそぶりも見せずにコートを掴んで部屋を飛び出していく。
それを見送った出実は、両の手指合わせてこね回す。
軽い運動を始める前のように、腕から肩へと筋肉をほぐしていく。
(´<_` ) 「ここまでだな。俺たちにできることは」
( ´_ゝ`) 「後は任せた。出実さん」
(´・_ゝ・`) 「ああ」
217
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:05:51 ID:23xxBFUg0
手始めに数行のアルファベット文字列を打ち込む。
流れるようなタイピングで、打鍵音はほとんど聞こえない。
あっという間に画面上が意味のあるプログラムで埋め尽くされた。
(´・_ゝ・`) 「ハッキングなんて久しぶりだな」
( <●><●>) 「楽しそうですね」
(´・_ゝ・`) 「俺のパソコンをぶち壊した糞野郎に仕返しができるんですから……待っていたかいがありました」
マシンは文句なく一級品。
流石弟者によって作成され、モンスター級の能力を誇る。
出実の考えでは、フォーエバースタイルの事務所から移動されたらしきパソコンに十分対抗できる見立てであった。
攻撃用のプログラムを組んで用意してあるUSBメモリを三本、机の上に置く。
かつて暇な時間を見つけて作っていたもので、一度も使ったことはない。
それらを頼りに、出実は電子の世界に潜り込んだ。
(´・_ゝ・`) 「行くぞ」
大きく息を吸い、肺を満たす。
ハッキングは集中力との戦いである。
一瞬の油断ですべてが無に帰してしまう。
218
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:08:37 ID:23xxBFUg0
失敗すれば、チャンネル国そのものすら揺るがしかねないほど危険な任務。
相当なプレッシャーを感じていたはずの出実は、笑っていた。
緊張と興奮で自らを鼓舞し、恐怖を飲み込む。
宣戦布告の合図のように、大きな音を鳴らしてエンターキーを叩いた。
黒い背景に白い文字が永遠と浮かび上がる。
複数のウィンドウを開きながら、各所に次々と書き込んでいく。
(; ´_ゝ`) 「はえぇっ……」
(´<_` ;) 「力の差を痛感するな」
( <●><●>) 「私にはよくわかりませんが、お二人も同じようなことをしていませんでしたか」
ナンジェイネットワークに侵入し、情報を抜いた流石兄弟。
それを後ろから見ていた若田には、画面上の文字を追うことすらできていなかった。
(´<_` ) 「俺らがやっていた程度のことであれば、チャンネル国内でも十数人くらいができるでしょうね」
219
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:10:21 ID:23xxBFUg0
( ´_ゝ`) 「サイバー犯罪対策課じゃ、勿論俺たちが一番ですがね。
口惜しいが、ヴィップどころかチャンネルで最も優秀でしょうね」
( <●><●>) 「そうですか、ではいい結果を期待して待つとしましょう」
後ろで話している三人の声は、出実の頭の中には入らない。
瞬き一つせずに流れていく文を読み取る出実。
左右に細かく振れる眼球に映る情報だけを脳で処理する。
(´・_ゝ・`) 「……見つかった」
それは誰かに聞かせるための言葉ではない。
自分自身の集中力を極限まで尖らせるための合図。
電子の世界で侵入者となった出実は、張り詰められたあらゆるトラップをすり抜けていた。
即時の判断で、より深いところへ潜っていく。
メインコンピューターの管理者権限をおさえるために。
相手は、不意打ちとは言え出実のパソコンを完全に破壊した能力の持ち主。
出実に驚きはない。見つかるのが時間の問題だとわかっていたからだ。
220
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:12:02 ID:23xxBFUg0
静かなタイピングが一転、なりふり構わず速度を求める荒々しいタッチに変わった。
情報戦で最も重要な速度を得るために。
出実の目に映るのはもはや文字の羅列ではなく、一つのイメージ。
電子の世界に入り込みその力を振るう。
侵入を拒むかのように、再度張り直されるバリケード。
それらを力技で強引に引きちぎる。
(´・_ゝ・`) 「……」
出実の手が止まった。
彼のコントロールするウィルスが完全に包囲されたためだ。
敢えて突破できるように創り出したバリケードを目くらましにした戦法。
ゆっくりと空間を狭めて完全に出実の存在を捉えようとする。
捕まってしまえば、二度と進入は許されない。
出実は封鎖された空間から脱出するために一つ目のプログラムを使った。
一時的に回線の処理速度を超える負荷をかけ、同時にコントロールするウィルスを複数に分裂させる。
相手の苛立ちが手に取るようにわかった。
221
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:13:26 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「本気を出せよ。じゃないとすぐに権限を奪う」
パソコンに向かって話しかける。
すぐ目の前にいる人間に声をかけるような気軽さで。
その答えは、アンチウィルスプログラムの猛威となって返ってきた。
ダミーを次々と破壊していく。
出実が直接操っていたウィルスを残し、空間は再び相手の手に落ちた。
(´・_ゝ・`) 「……」
出実には、彼自身が組み上げたアンチウィルスソフトを抜いたのはまぐれではない、と宣言が聞こえた。
溢れて来る汗を軽く拭い、再び対峙する。
迫り来る追跡プログラムから逃れるために指を動かし続ける。
隠れる場所を模索しながらも、強力なウォールを破るためのプログラムの構想を練っていた。
相手の追跡をすんでのところで躱しながら、管理者権限から距離をとる。
正六角形の赤いパネルが組み合わせられた球形のウォール。
試しに簡易プログラムをぶつけるが、ビクともしない。
(´・_ゝ・`) 「ったく、でたらめな硬さだな」
222
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:15:07 ID:23xxBFUg0
通常、ウィルスでの攻防戦において有利なのは防衛側よりも攻撃側である。
攻撃プログラムは常に新しいものが生み出され続けるが、
防御プログラムをあらゆる攻撃に対してる備えさせることはできないからだ。
出実は相手の実力が自分よりも上にあるかもしれないと、若干の焦りを感じていた。
激しいやり取りの最中に創り出したウィルスに対して、全く揺るがなかった防御壁。
( <●><●>) 「どうなっているのですか?」
( ´_ゝ`) 「状況は悪いですね。相手の防御が思っていたよりも堅いですから」
(´<_` ) 「出実が残り三十分で突破できなければ……っ! 危なかったですね」
若田の問いに、まだ辛うじて状況についていけている双子が答えた。
刻一刻と変化する状況を、可能な限り分かりやすく。
二つ目のU(SBメモリの中に保存されたプログラムを起動する出実。
彼がストックしている攻撃用のプログラムの中で最も危険なそれは、
作ったはいいものの一度も起動されていない。
相手の回路ごと焼き尽くしてしまう恐れがあるために。
出実はキーボードを叩く指先に僅かに熱気を感じた。
223
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:16:45 ID:23xxBFUg0
電子の世界に生み出された灼熱の炎。
あらゆるセキュリティを焼き尽くして、管理者権限を護るウォールを容易く溶解させる。
(;´・_ゝ・`) 「これでっ……!」
コントロールのきかない炎が回路を焼き尽くす前に、管理者権限へと手を伸ばす。
掴んだはずの権限が忽然と消えた。
(;´・_ゝ・`) 「なっ!」
(; ´_ゝ`) 「嘘だろ……」
( <●><●>) 「何が起きたんですか?」
(´<_` ;) 「管理者権限のダミーを掴まされたんです」
画面上を埋め尽くしてもなお、開き止まないウィンドウ。
秒刻みで現れ続けるものを、危険度の高いものから順に効率よく消していく。
出実が自身のパソコンのコントロールを取り戻した時、その間無防備だったウィルスはその大部分を解析されていた。
(´<_` ;) 「まずいな……」
224
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:19:04 ID:23xxBFUg0
黒い明滅が急速に小さくなっていく。
すぐに残り少ないウィルスすぐに脱出させる。
(; ´_ゝ`) 「ギリギリだったか……」
(#´・_ゝ・`) 「ったく、舐めんな……!」
三つ目のUSBメモリに入ったプログラム。
出実が用意した正真正銘最後の切り札。
パソコンの右下に表示された時計を見れば、残り五分に迫っていた。
焦りが心を蝕むのと対照的に、崩壊した赤い壁はゆっくりと再生していく。
電子空間を侵食している真っ赤な太陽は弾けて消えた。
同じだけの破壊力を持つものはもう用意できない。
つまりこれが、出実にとってのラストチャンス。
たった五分でチャンネル国の趨勢の決まる。
真っ暗闇の中に一つだけ浮かぶ管理者権限の光。
その直線状に存在する崩壊しかけたウィルス。
周囲には防衛プログラムの網。
しつこく追いかけてくるのは、ウィルス除去プログラムの赤い槍。
225
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:20:12 ID:23xxBFUg0
一瞬の隙も許さないかのような追撃。
それを振り切ることが出来ずに、秘蔵のプログラムを使うタイミングが無い。
(´-_ゝ-`) 「」
追い詰められ、あろうことか出実はその両の眼を閉じた。
それは自殺行為であるし、隣でずっと様子を窺っていた流石兄弟も驚き息をのむ。
僅かな時間全く動かなくなったウィルスに対して、逃げ道を塞ぐように迫る敵のプログラム。
視界すらも閉じて自分だけになった世界で、出実は両手を動かす。
即興で思いついた防衛プログラムを、ウィルスが解析されきるコンマ一秒手前で間に合わせた。
弾かれた赤い槍。
相手に生まれた驚きと、ほんの一瞬の隙。
226
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:22:43 ID:23xxBFUg0
(´-_ゝ・`) 「これで!! 終われっ!」
残り三十秒。
出実は最後の切り札を発動させた。電子世界で弾けたジャミング用プログラム。
それは自分自身の行動すら制限する諸刃の剣。
電子世界が二次元平面上に固定され、ウィルスと管理者権限とが同じ平面上に固定される。
上下左右に拡がっていた網と槍は、自身の存在を固定できずに不安定な状態になった。
相手にそれを書き直すだけの余裕は与えない。
出実はすぐさま最終攻略地点に向けての一手に取り掛かった。
二次元平面上での戦いは速度と物量での攻防ではなく、
可能な限り強力なプログラムを簡潔に作り出す発想力の戦い。
積み上げられたブロックの中心を、ボロボロに崩れながらも出実のウィルスが真っ直ぐに貫いた。
227
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:33:17 ID:23xxBFUg0
>>
【USBメモリ】
出実が常日頃から試行錯誤しているプログラムが用途に分けて保存されている。
特対課の室内に保存されているその数は百をゆうに超える。
ある意味普段から仕事熱心にしているわけだが、誰からも評価されていない。
出実の性格故、攻撃的なプログラムよりも遊びを目的としたものが多い。
>>
228
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:38:03 ID:WR6DazdA0
切り札ギャングを思い出す熱さ
229
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:38:45 ID:23xxBFUg0
>エピローグ
从 ゚∀从 「犯人……確保ッ!」
後ろに手を回されて押さえつけられている二人の男。
その両手に錠をかけ高岡は深く息をついた。
腕時計の針が指し示す時は、十二時を三十分ほど回っている。
悪態を吐き続けている男を見下ろし、出実の仕事の成果を知った。
从 ゚∀从 「室内にある物には触るなよ。後で専門のやつらが来る」
武装した警察官達は仕事の達成を確認して階下へ降りていく。
逮捕された男達は暴れることもなく連れていかれた。
从 ゚∀从 「捕まえました」
( <●><●>) 『お疲れ様です』
从 ゚∀从 「これで、全部終わったんですかね」
( <●><●>) 『いえ、ゲ=ハの残党はまだ残っているでしょう。
これからもヴィップの平和を頼みますよ』
230
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:40:57 ID:23xxBFUg0
从 ゚∀从 「はい!」
ところ変わって、特対課室。
流石兄弟はパソコンをすでに運び出し、自分たちの場所へと戻っていった。
( <●><●>) 「さて、お疲れ様でした」
(´-_ゝ-`) 「はい……」
( <●><●>) 「とりあえず、今のところは他の騒ぎは起こっていないようです。
諸本君もうまくやってくれたのでしょう」
(´-_ゝ-`) 「っあー……疲れた」
( <●><●>) 「後の始末は私がしておきましょう。少し休みなさい」
(´・_ゝ・`) 「ありがたいですが、そういうわけには」
( <●><●>) 「その代わり、一つの質問に答えてください」
231
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:41:18 ID:KJ7h6Jyk0
こいつら大体がハゲてんだよな
232
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:44:35 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「なんですか」
( <●><●>) 「ハゲタカ、まだ続けますか? 辛いことばかりで、楽しいことなんてない仕事です。
命は常に危険と隣り合わせで、失う事ばかりでしょう。
それでも、出実君はハゲタカを続けるんですか?」
(´・_ゝ・`) 「……当然ですよ」
少しばかり笑いながら答えた。
233
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:46:08 ID:MW.JpIwk0
(´・_ゝ・`) 「ハゲの居場所は此処にしか有りませんからね!」
234
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:47:00 ID:23xxBFUg0
事件が収束してから三日後、特対課室で火のついた煙草を三本も銜えて寛いでいた出実。
地下のアーカーシャから戻ってきた茂羅と二人きり。
諸本は流石に重症で一ヶ月の入院を余儀なくされていた。
病院のリハビリセンターで暴れまわっているようで、じきに退院して来るだろう。
( ・∀・) 「ふぅー……」
(´・_ゝ・`) 「で、話ってなんだ」
( ・∀・) 「武雲さんの事です」
(´・_ゝ・`) 「……」
アーカーシャで起きていたことはすぐに緘口令が敷かれた。
茂羅は語る。諸本が出実と荒巻だけに話した事実の誤りを訂正するために。
235
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:48:01 ID:23xxBFUg0
( ・∀・) 「アーカーシャの地下で、諸本さんが武雲さんを殺しました。
武雲さんの口から、裏切りが確信できる発言を聞いたからです」
(´・_ゝ・`) 「録音してた音声データは確認した。状況的には間違いないだろ」
( ・∀・) 「……武雲さんのそれが、芝居だったんだとしても?」
(´・_ゝ・`) 「どういう事だ」
( ・∀・) 「司法解剖するつもりないんですよね。……武雲さんの手首にあった仕掛け。
タイマーと連動してたのは脈拍でした。俺が解体したんですけどね」
(´・_ゝ・`) 「ああ。だから諸本には殺して止めるしかなかった」
( ・∀・) 「違います。武雲さんがもしその連動を外したら、VXガスがあの部屋の中に充満する仕掛けがありました。
武雲さんの体内に、です。
それこそが武雲さんが裏切り者ではなく、裏切り者を演じていた、という証拠です。
人質として、あの場に武雲さんはいたんですよ」
236
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:52:40 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「人質……?」
( ・∀・) 「爆弾の解体を難しくするよりも、物理的に解除できないようにしてたんです。
俺らが武雲さんを殺せなければ、爆発は防げない。それを分かっていたからこそ、武雲さんは……」
(´・_ゝ・`) 「…………」
( ・∀・) 「武雲さんは裏切り者ではないです。その事実を、せめて俺らの間だけでも共有できれば、と」
(´・_ゝ・`) 「お前、その話は諸本にしたのか」
( -∀-) 「いえ……」
茂羅が戻ってきてから一番悩んでいたことは、武雲の事実を諸本に伝えるかどうか。
責任を感じさせてしまうことを避けたいが、事実を知らないままにすることも躊躇われた。
(´・_ゝ・`) 「……絶対にするな。俺とお前の間だけだ」
( -∀-) 「はい……それじゃ、失礼します」
茂羅は緩慢な動作で部屋を出ていった。
(´・_ゝ・`) 「裏切り者は……最初っからただの脅しか……それとも……」
現場警官レベルでは存在してもおかしくはない。
しかし、管理側にいればそれは重大な問題である。
出実は煙草を灰皿に捨て、部屋を出ていった。
特対課室に満ちた煙は、ゆっくりと換気扇で吐き出されていく。
誰もいなくなった部屋の中で、からからと音を立てて回っていた。
237
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:53:55 ID:23xxBFUg0
END
238
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:24:09 ID:xyUpB6MA0
ドクオやっぱダメなのかー
おつ!すげーわくわくした
239
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:46:05 ID:na56zDnw0
ショボン様がフサボコるとことかかっこよかったけどハゲなんだよな
240
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:50:44 ID:BJXZIumI0
おつ!かっこいい禿どもだった
241
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:42:45 ID:scIkbq5.0
面白かった!乙!
242
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:23:38 ID:3HsROInw0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
243
:
名無しさん
:2016/04/05(火) 20:23:06 ID:jMdIHJO.0
うおおお乙
熱かった……ハゲタカ…………
244
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 18:08:45 ID:adCBHYjI0
大満足な読み応えと緊迫感溢れるストーリーのおかげで
上質な洋画を見ていた気分になったよ
めっちゃ面白かったです
ドクオ…
245
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:52:42 ID:.DaWa1Lg0
>>233
クッソwwwww
246
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 13:14:07 ID:MBwiOLdA0
主催と参加者の皆様、お疲れさまでした。
ハゲタカを読んでくださったかた、投票してくださったかたは本当にありがとうございました。
おかげで、作者賞で11位、作品賞で9位にはいることができました。
個人的な理由でスレをあげてしまい申し訳ないのですが、投票まとめにある感想で、ハゲタカについて語りたい、
と書き込まれていたかたに、是非このスレに書き込んでいただければと思いますので、あげさせていただきました。
247
:
名無しさん
:2016/04/25(月) 08:18:25 ID:X/.IJ65E0
おう乙
語りたいと言った人とは違うがハゲタカに投票したよ、おめでとう
248
:
名無しさん
:2016/05/12(木) 21:10:16 ID:QqHCSt/g0
まあ、色々臭わせてるよな。
おめでとう、乙。
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