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ハゲタカのようです
1
:
名無しさん
:2016/03/27(日) 01:07:40 ID:SoEOAtLY0
>プロローグ
(´-_ゝ-`) 「っふー……」
昼間にもかかわらずブラインドを降ろした仄暗い部屋の中で、男は長い息を吐いた。
風の流れを描いた白い煙は、空気中に溶けて消える。
壊れかけの暖房がロボットのように首を振りながら、誰も座っていない席の周りを温めていた。
部屋には五つの机があり、男は一番奥の席から扉側に向かって座っている。
二つ一組で向かい合うように並べられた目の前にある部下の座席は、ここ数週間いつも同じ光景。
つまりどういう事かと言うと、四つあるうちの三つは空き、である。
男は灰が指先まで迫った煙草を押し潰し、目の前にあるパソコンでメールの画面を開く。
受信ボックスには案の定何もなく、苛立ちを隠さずに煙草の箱を胸ポケットから取り出した。
くしゃくしゃに潰れたケースの中には一本も残っておらず、
男はそれをゴミ箱目掛けて強く投げつけた。
(´・_ゝ-`) 「ちっ……」
縁に当たって床に転がったゴミを拾いには行かず、机の二段目の引き出しから新たな一箱を取り出す。
他に何も入らないぐらい詰め込まれた煙草のケースが、
男がどれだけのヘビースモーカーであるか教えてくれる。
200
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:04:03 ID:J.heRfoA0
( <●><●>) 「そうでしょうか。あなたにもできることがあると私は思いますが」
从 ゚∀从 「……思いつきません」
( <●><●>) 「もう少し待って居ればわかりますよ」
立ち上がっていた高岡は、若田の言葉を聞いて再び椅子についた。
ただ座っていることが気に食わず、手元に転がっている資料の一つ一つをじっくり読み始める。
孫を見守る好々爺のように、その姿を見て微笑む若田。
(´・_ゝ・`) 「ったく……つまらねぇ時間だ」
新たな煙草を取り出して火をつける出実。
静かな呼吸で火種をゆったりと燃やしていた。
ただただ、流石兄弟の仕事が終わるのを待つ。言葉とは裏腹に静かな闘志を滾らせながら。
201
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:05:17 ID:J.heRfoA0
>>
【姓名】 若田 桝
【読み】 ワカタ マス
【年齢】 60
【役職】 警視正
【専門】 暗記
【付記】 特対課の暴れ龍と呼ばれていた荒巻龍をしても頭が上がらない警察庁の重鎮。
役職は止まっているものの、多くの警察官から慕われている。
特技の暗記はもはや神域に達しており、数日前程度の会話ならほぼすべて暗唱できる。
格闘や交渉など何でもこなす元特対課の中でも絶対的エース。
>>
202
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 19:34:41 ID:c1Ma10bo0
読んでるぞ 支援
203
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:46:08 ID:23xxBFUg0
18
アーカーシャの最奥、部屋の中に用意された椅子に男が座っていた。
額の両サイドから抉れるように無くなっている髪の毛。
中年男性特有のふっくらとした体形。
誤りであってほしいとの願いが聞き届けられることはなかった。
( ^ω^) 「久しぶりな気がするな、諸本」
(メ´・ω・`) 「っ! なんであんたが……」
( ^ω^) 「別におかしかねぇだろ。ロマネスクに傾倒してた信者が警察内にいても。
当時は勝てなかったから、戦わなかった。それだけだ」
全身傷だらけの諸本に対して、武雲は椅子に座ったまま余裕を見せる。
自分に向けられている銃口を全く気にかけず、足を組み替えて話を続けた。
( ^ω^) 「お前が来たのは予想通りだったな。
茂羅と一緒に来るとは思ってたんだが……それは外れていたみたいだな」
(メ´・ω・`) 「……あんたがゲ=ハを?」
( ^ω^) 「違う。俺よりも上のやつはまだ何人かいる」
204
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:47:45 ID:23xxBFUg0
(メ´・ω・`) 「あんたがその扱いだということは、ゲ=ハは随分と人材に恵まれているらしいな」
( ^ω^) 「なに、そう褒めることはない。この現状を見ればわかるだろう?」
(メ´・ω・`) 「……あんたの負けが見えるな」
( ^ω^) 「いや、残念ながら相打ちってところだろう。お前はこの爆弾を解体できない。
処理班だってエレベーターシャフトを下りるなんて真似は出来ないだろうしな。
逆に俺はお前から……いや、特対課から逃げられない。目標の達成度合いで言えば俺に分があるか。
ロマネスクを解放できなかった時点で俺の負けだが」
(メ´・ω・`) 「……嘘だったのか、特対課でのあんたは」
( ^ω^) 「それなりに楽しかったさ。少しくらいはこのままでもいいかと思うほどにはな。
もう一人の仲間と会うまでは。さて、どうする」
武雲は右手側に置かれた電子表示の上に手を重ねた。
朱い時刻が浮かび上がるのは、爆弾が起動するまでの時間が刻まれている二つのタイマー。
それぞれが異なる数字を示しており、片方は現在時刻、
もう片方は一秒よりも僅かに早い速度で減っていた。
205
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:48:41 ID:23xxBFUg0
( ^ω^) 「ここの爆弾が爆発すれば、換気口に仕掛けられた猛毒ガスヴィップの中心部に撒き散らされる。
被害はとんでもない規模になる。俺を殺さなければ、解体することは出来ない。
目の前でみすみす解体されるわけにもいかないしな。多少の抵抗ならできるだろう」
(メ´・ω・`) 「戻っては……これないのか」
( ^ω^) 「心残りは無い。お前が引き金を引くならな」
(メ´・ω・`) 「俺にあんたを殺せと……言うのか」
音が聞こえそうなほどに強く噛み締める。
銃口はひと時たりとも武雲の胸から離れていない。
( ^ω^) 「どうする?」
(メ´・ω・`) 「あんたには……世話になった」
諸本は銃を握り直す。
腕と一体化してしまったのかと思える銃は鉛の様に重く、真っ直ぐ突き出して支えるのに両手を使う。
痛みに邪魔をされてか銃口が震えて定まらない。
206
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:49:55 ID:23xxBFUg0
(メ´-ω-`) 「あんたには……!」
( ^ω^) 「どうせ処理班が来るには間に合わない。
この地下深くから電波は届かず、エレベーターはもうお釈迦だからな。
その身体じゃあ階段はきついだろ。最後の最期まで俺と話でもしておくか?」
(´ ω `) 「いいや…………さよならだ」
引き金がひかれた。
乾いた音はアーカーシャの地下に静かに染み込んでいき、すぐに聞こえなくなった。
諸本は立っているだけの力を失い、うつ伏せに倒れる。
弾丸は一直線に武雲の心臓を貫いており、その生命活動を終わらせていた。
同時に、一つ目のタイマーは残り時間を表示したまま止まる。
諸本はぼやける目で二つ目のタイマーが静かに時刻を刻んでいるのを眺めていた。
何もすることもできず、残った唯一の力で歯をかみしめながら。
その時聞こえた足音に、諸本は手放しかけた意識を掴みなおす。
足音が近づいてくるのを認識しておきながら、満身創痍のショボンは振り向くことすらできない。
影は、彼の頭のすぐ横で止まった。
207
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:49:55 ID:DKj5qlHo0
ハゲェ!
208
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:52:28 ID:7qi4lCeQ0
ショボン様……
209
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:52:39 ID:23xxBFUg0
(; ・∀・) 「諸本さん……これは……」
冬の真っただ中でありながら、汗を流して呼吸も乱れている茂羅。
長く黒い頭髪の姿はそこに無く、額は前に会った時よりもずっとずっと広かった。
それに天井の光が反射していたせいで、目を細めながら諸本が答える。
(メ´・ω・`) 「茂羅……か? ……あとで説明する。すぐに……爆弾を解体してくれ」
その姿に困惑しながらも、諸本は指示を出す。
彼にしかできない仕事をさせるために。
茂羅もまた、武雲の死体と傷だらけの諸本の姿がいる光景を理解しようと、必死で脳を働かせていた。
諸本に言われ思考を中断し、すぐさま黒いボックスのねじを外していく。
一人で抱えるには大きすぎる箱の中には、無数の配線が通っていた。
(; ・∀・) 「これは……」
(メ´・ω・`) 「間に合うか?」
( ・∀・) 「間に合わせてみせます。じゃなきゃ毒男さんに生かしてもらった意味がないですから」
210
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:53:16 ID:23xxBFUg0
(; ・∀・) 「これは……」
(メ´・ω・`) 「間に合うか?」
( ・∀・) 「間に合わせてみせます。じゃなきゃ毒男さんに生かしてもらった意味がないですから」
持ってきた荷物の中に入った道具を並べる。
外装を取り外し、丁寧に解体していく。
細かい電気配線を確認して、血だまりに濡れる床に残ったスペースに書いていく。
目の前に表示されているタイムリミットを気にしながらも、時間をかけて、丁寧に。
( ・∀・) 「解体に入ります。失敗しても恨まないでください」
(メ´-ω-`) 「お前に任せる。どうせ俺には出来ないんだからな」
( ・∀・) 「はい」
大きく息を吸って覚悟を決めた後、リード線を次々と断ち切っていく。
一つでも順番を間違えれば即爆発してしまうような危険な解体方法。
残り時間内に解体しきるには、その手段しかなかった。
211
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:54:08 ID:23xxBFUg0
額に流れる汗をぬぐう茂羅。
手を止めず、処理速度の限界を超えて計算し続ける。
残り時間のタイマーは既に三十分を切っていた。
(メ´・ω・`) 「一つ、聞きたいことがある」
( ・∀・) 「後でもいいですか」
(メ´・ω・`) 「後なんてないかもしれねぇだろうが」
( ・∀・) 「なんっすか」
返答にはほとんど意識を向けない。
目の前にある大きすぎる問題のせいで、そんな余裕がないのは当然ではあったが。
二つ目の起爆用の芯を引き抜いた。だが最後の一つまで分解しなければ意味はない。
残りの起爆用の芯は三つ。休憩する間もなく茂羅はすぐにとりかかった。
(メ´・ω・`) 「毒男はな」
(メ´・ω・`) 「毒男はこの状況を読んでたんじゃないか」
212
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:55:09 ID:23xxBFUg0
( ・∀・) 「……」
茂羅の作業音だけが聞こえる空間。
壁にもたれて休憩していた諸本は、他にすることもなく言葉を紡ぐ。
(メ´・ω・`) 「相手に爆弾のプロがいることを。
だからこそ、お前を生かした。だからお前にできることは、そいつを無事に解体することだ」
( ・∀・) 「言われなくてもわかってます」
さらにもう一本、芯を取り外した。
八割がたの配線を無力化し、残り二割は前回と同じように溶接されたボックスの中へと導かれている。
茂羅は電動工具を手に取った。
( ・∀・) 「たぶん、こうなってると思ってました。だから、対策はしてます」
溶接部のみを破壊するための極細ドリル。
力をかけすぎればすぐに折れてしまうため扱いの難しいそれのスペアを、大量に持ち込んでいた。
ゆっくりと、確実に溶接部を削っていく。
残り時間が五分をきった時、茂羅は漸くブラックボックスを開封した。
213
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:58:11 ID:23xxBFUg0
>>
【カツラ】
中年男性の光(を隠す装備)。上司からも部下からも気を使われるようになる。
極稀に気にしない人もいるが、それを揶揄されているのを外から見ているのはあまり気分が良くない。
蒸れる為、残っている僅かな希望にも悪影響を与える諸刃の剣。
ニット帽との併用はできない。※最近の高性能なものは除く。
最近は増やす奴が流行っているものの、維持費が高くなかなか手を出せない。
カツラ、それは君が見た光、僕が見た希望。
カツラ、それは触れない心、幸せの黒い髪
>>
214
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:58:43 ID:23xxBFUg0
単純だが、数の多い配線。
その行く先全てを精査している時間は無い。
茂羅は極限まで切り詰めた集中力でもって、配線の役割を予測する。
( -∀-) (毒男さん……ッ!)
十数本もあるカラフルな線。
そのうちの一本、黒色の線を引きずり出す。
未練を断ち切るかのように、震える手で線を支えニッパーで挟む。
ほんの少しの力をいれれば、線は断ち切られ二つに一つの未来が訪れる。
秒数のみがカウントされている表示。
もはや、照準している時間はなかった。
何かに祈るように目を瞑る。
もしかしたら最後になるかもしれない煙草を持ってくるべきだったと少し後悔しながら、茂羅は右手に力をいれた。
215
:
順番ミス
:2016/03/30(水) 22:59:14 ID:23xxBFUg0
>>
【カツラ】
中年男性の光(を隠す装備)。上司からも部下からも気を使われるようになる。
極稀に気にしない人もいるが、それを揶揄されているのを外から見ているのはあまり気分が良くない。
蒸れる為、残っている僅かな希望にも悪影響を与える諸刃の剣。
ニット帽との併用はできない。※最近の高性能なものは除く。
最近は増やす奴が流行っているものの、維持費が高くなかなか手を出せない。
カツラ、それは君が見た光、僕が見た希望。
カツラ、それは触れない心、幸せの黒い髪
>>
216
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:03:38 ID:23xxBFUg0
19
( ´_ゝ`)(´<_` ) 「見つけた!」
膨大な契約者リストの中から、いじられた形跡のある顧客を見つけ出した流石兄弟。
住所と名前を含むすべての情報を印刷する。
( <●><●>) 「高岡君」
从 ゚∀从 「すぐにっ!」
タイムリミットまで残り一時間。
アジトにしているであろうマンションは、どんなに急いでも一時間以上かかる場所にあった。
それでも高岡は全く諦めるそぶりも見せずにコートを掴んで部屋を飛び出していく。
それを見送った出実は、両の手指合わせてこね回す。
軽い運動を始める前のように、腕から肩へと筋肉をほぐしていく。
(´<_` ) 「ここまでだな。俺たちにできることは」
( ´_ゝ`) 「後は任せた。出実さん」
(´・_ゝ・`) 「ああ」
217
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:05:51 ID:23xxBFUg0
手始めに数行のアルファベット文字列を打ち込む。
流れるようなタイピングで、打鍵音はほとんど聞こえない。
あっという間に画面上が意味のあるプログラムで埋め尽くされた。
(´・_ゝ・`) 「ハッキングなんて久しぶりだな」
( <●><●>) 「楽しそうですね」
(´・_ゝ・`) 「俺のパソコンをぶち壊した糞野郎に仕返しができるんですから……待っていたかいがありました」
マシンは文句なく一級品。
流石弟者によって作成され、モンスター級の能力を誇る。
出実の考えでは、フォーエバースタイルの事務所から移動されたらしきパソコンに十分対抗できる見立てであった。
攻撃用のプログラムを組んで用意してあるUSBメモリを三本、机の上に置く。
かつて暇な時間を見つけて作っていたもので、一度も使ったことはない。
それらを頼りに、出実は電子の世界に潜り込んだ。
(´・_ゝ・`) 「行くぞ」
大きく息を吸い、肺を満たす。
ハッキングは集中力との戦いである。
一瞬の油断ですべてが無に帰してしまう。
218
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:08:37 ID:23xxBFUg0
失敗すれば、チャンネル国そのものすら揺るがしかねないほど危険な任務。
相当なプレッシャーを感じていたはずの出実は、笑っていた。
緊張と興奮で自らを鼓舞し、恐怖を飲み込む。
宣戦布告の合図のように、大きな音を鳴らしてエンターキーを叩いた。
黒い背景に白い文字が永遠と浮かび上がる。
複数のウィンドウを開きながら、各所に次々と書き込んでいく。
(; ´_ゝ`) 「はえぇっ……」
(´<_` ;) 「力の差を痛感するな」
( <●><●>) 「私にはよくわかりませんが、お二人も同じようなことをしていませんでしたか」
ナンジェイネットワークに侵入し、情報を抜いた流石兄弟。
それを後ろから見ていた若田には、画面上の文字を追うことすらできていなかった。
(´<_` ) 「俺らがやっていた程度のことであれば、チャンネル国内でも十数人くらいができるでしょうね」
219
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:10:21 ID:23xxBFUg0
( ´_ゝ`) 「サイバー犯罪対策課じゃ、勿論俺たちが一番ですがね。
口惜しいが、ヴィップどころかチャンネルで最も優秀でしょうね」
( <●><●>) 「そうですか、ではいい結果を期待して待つとしましょう」
後ろで話している三人の声は、出実の頭の中には入らない。
瞬き一つせずに流れていく文を読み取る出実。
左右に細かく振れる眼球に映る情報だけを脳で処理する。
(´・_ゝ・`) 「……見つかった」
それは誰かに聞かせるための言葉ではない。
自分自身の集中力を極限まで尖らせるための合図。
電子の世界で侵入者となった出実は、張り詰められたあらゆるトラップをすり抜けていた。
即時の判断で、より深いところへ潜っていく。
メインコンピューターの管理者権限をおさえるために。
相手は、不意打ちとは言え出実のパソコンを完全に破壊した能力の持ち主。
出実に驚きはない。見つかるのが時間の問題だとわかっていたからだ。
220
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:12:02 ID:23xxBFUg0
静かなタイピングが一転、なりふり構わず速度を求める荒々しいタッチに変わった。
情報戦で最も重要な速度を得るために。
出実の目に映るのはもはや文字の羅列ではなく、一つのイメージ。
電子の世界に入り込みその力を振るう。
侵入を拒むかのように、再度張り直されるバリケード。
それらを力技で強引に引きちぎる。
(´・_ゝ・`) 「……」
出実の手が止まった。
彼のコントロールするウィルスが完全に包囲されたためだ。
敢えて突破できるように創り出したバリケードを目くらましにした戦法。
ゆっくりと空間を狭めて完全に出実の存在を捉えようとする。
捕まってしまえば、二度と進入は許されない。
出実は封鎖された空間から脱出するために一つ目のプログラムを使った。
一時的に回線の処理速度を超える負荷をかけ、同時にコントロールするウィルスを複数に分裂させる。
相手の苛立ちが手に取るようにわかった。
221
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:13:26 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「本気を出せよ。じゃないとすぐに権限を奪う」
パソコンに向かって話しかける。
すぐ目の前にいる人間に声をかけるような気軽さで。
その答えは、アンチウィルスプログラムの猛威となって返ってきた。
ダミーを次々と破壊していく。
出実が直接操っていたウィルスを残し、空間は再び相手の手に落ちた。
(´・_ゝ・`) 「……」
出実には、彼自身が組み上げたアンチウィルスソフトを抜いたのはまぐれではない、と宣言が聞こえた。
溢れて来る汗を軽く拭い、再び対峙する。
迫り来る追跡プログラムから逃れるために指を動かし続ける。
隠れる場所を模索しながらも、強力なウォールを破るためのプログラムの構想を練っていた。
相手の追跡をすんでのところで躱しながら、管理者権限から距離をとる。
正六角形の赤いパネルが組み合わせられた球形のウォール。
試しに簡易プログラムをぶつけるが、ビクともしない。
(´・_ゝ・`) 「ったく、でたらめな硬さだな」
222
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:15:07 ID:23xxBFUg0
通常、ウィルスでの攻防戦において有利なのは防衛側よりも攻撃側である。
攻撃プログラムは常に新しいものが生み出され続けるが、
防御プログラムをあらゆる攻撃に対してる備えさせることはできないからだ。
出実は相手の実力が自分よりも上にあるかもしれないと、若干の焦りを感じていた。
激しいやり取りの最中に創り出したウィルスに対して、全く揺るがなかった防御壁。
( <●><●>) 「どうなっているのですか?」
( ´_ゝ`) 「状況は悪いですね。相手の防御が思っていたよりも堅いですから」
(´<_` ) 「出実が残り三十分で突破できなければ……っ! 危なかったですね」
若田の問いに、まだ辛うじて状況についていけている双子が答えた。
刻一刻と変化する状況を、可能な限り分かりやすく。
二つ目のU(SBメモリの中に保存されたプログラムを起動する出実。
彼がストックしている攻撃用のプログラムの中で最も危険なそれは、
作ったはいいものの一度も起動されていない。
相手の回路ごと焼き尽くしてしまう恐れがあるために。
出実はキーボードを叩く指先に僅かに熱気を感じた。
223
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:16:45 ID:23xxBFUg0
電子の世界に生み出された灼熱の炎。
あらゆるセキュリティを焼き尽くして、管理者権限を護るウォールを容易く溶解させる。
(;´・_ゝ・`) 「これでっ……!」
コントロールのきかない炎が回路を焼き尽くす前に、管理者権限へと手を伸ばす。
掴んだはずの権限が忽然と消えた。
(;´・_ゝ・`) 「なっ!」
(; ´_ゝ`) 「嘘だろ……」
( <●><●>) 「何が起きたんですか?」
(´<_` ;) 「管理者権限のダミーを掴まされたんです」
画面上を埋め尽くしてもなお、開き止まないウィンドウ。
秒刻みで現れ続けるものを、危険度の高いものから順に効率よく消していく。
出実が自身のパソコンのコントロールを取り戻した時、その間無防備だったウィルスはその大部分を解析されていた。
(´<_` ;) 「まずいな……」
224
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:19:04 ID:23xxBFUg0
黒い明滅が急速に小さくなっていく。
すぐに残り少ないウィルスすぐに脱出させる。
(; ´_ゝ`) 「ギリギリだったか……」
(#´・_ゝ・`) 「ったく、舐めんな……!」
三つ目のUSBメモリに入ったプログラム。
出実が用意した正真正銘最後の切り札。
パソコンの右下に表示された時計を見れば、残り五分に迫っていた。
焦りが心を蝕むのと対照的に、崩壊した赤い壁はゆっくりと再生していく。
電子空間を侵食している真っ赤な太陽は弾けて消えた。
同じだけの破壊力を持つものはもう用意できない。
つまりこれが、出実にとってのラストチャンス。
たった五分でチャンネル国の趨勢の決まる。
真っ暗闇の中に一つだけ浮かぶ管理者権限の光。
その直線状に存在する崩壊しかけたウィルス。
周囲には防衛プログラムの網。
しつこく追いかけてくるのは、ウィルス除去プログラムの赤い槍。
225
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:20:12 ID:23xxBFUg0
一瞬の隙も許さないかのような追撃。
それを振り切ることが出来ずに、秘蔵のプログラムを使うタイミングが無い。
(´-_ゝ-`) 「」
追い詰められ、あろうことか出実はその両の眼を閉じた。
それは自殺行為であるし、隣でずっと様子を窺っていた流石兄弟も驚き息をのむ。
僅かな時間全く動かなくなったウィルスに対して、逃げ道を塞ぐように迫る敵のプログラム。
視界すらも閉じて自分だけになった世界で、出実は両手を動かす。
即興で思いついた防衛プログラムを、ウィルスが解析されきるコンマ一秒手前で間に合わせた。
弾かれた赤い槍。
相手に生まれた驚きと、ほんの一瞬の隙。
226
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:22:43 ID:23xxBFUg0
(´-_ゝ・`) 「これで!! 終われっ!」
残り三十秒。
出実は最後の切り札を発動させた。電子世界で弾けたジャミング用プログラム。
それは自分自身の行動すら制限する諸刃の剣。
電子世界が二次元平面上に固定され、ウィルスと管理者権限とが同じ平面上に固定される。
上下左右に拡がっていた網と槍は、自身の存在を固定できずに不安定な状態になった。
相手にそれを書き直すだけの余裕は与えない。
出実はすぐさま最終攻略地点に向けての一手に取り掛かった。
二次元平面上での戦いは速度と物量での攻防ではなく、
可能な限り強力なプログラムを簡潔に作り出す発想力の戦い。
積み上げられたブロックの中心を、ボロボロに崩れながらも出実のウィルスが真っ直ぐに貫いた。
227
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:33:17 ID:23xxBFUg0
>>
【USBメモリ】
出実が常日頃から試行錯誤しているプログラムが用途に分けて保存されている。
特対課の室内に保存されているその数は百をゆうに超える。
ある意味普段から仕事熱心にしているわけだが、誰からも評価されていない。
出実の性格故、攻撃的なプログラムよりも遊びを目的としたものが多い。
>>
228
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:38:03 ID:WR6DazdA0
切り札ギャングを思い出す熱さ
229
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:38:45 ID:23xxBFUg0
>エピローグ
从 ゚∀从 「犯人……確保ッ!」
後ろに手を回されて押さえつけられている二人の男。
その両手に錠をかけ高岡は深く息をついた。
腕時計の針が指し示す時は、十二時を三十分ほど回っている。
悪態を吐き続けている男を見下ろし、出実の仕事の成果を知った。
从 ゚∀从 「室内にある物には触るなよ。後で専門のやつらが来る」
武装した警察官達は仕事の達成を確認して階下へ降りていく。
逮捕された男達は暴れることもなく連れていかれた。
从 ゚∀从 「捕まえました」
( <●><●>) 『お疲れ様です』
从 ゚∀从 「これで、全部終わったんですかね」
( <●><●>) 『いえ、ゲ=ハの残党はまだ残っているでしょう。
これからもヴィップの平和を頼みますよ』
230
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:40:57 ID:23xxBFUg0
从 ゚∀从 「はい!」
ところ変わって、特対課室。
流石兄弟はパソコンをすでに運び出し、自分たちの場所へと戻っていった。
( <●><●>) 「さて、お疲れ様でした」
(´-_ゝ-`) 「はい……」
( <●><●>) 「とりあえず、今のところは他の騒ぎは起こっていないようです。
諸本君もうまくやってくれたのでしょう」
(´-_ゝ-`) 「っあー……疲れた」
( <●><●>) 「後の始末は私がしておきましょう。少し休みなさい」
(´・_ゝ・`) 「ありがたいですが、そういうわけには」
( <●><●>) 「その代わり、一つの質問に答えてください」
231
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:41:18 ID:KJ7h6Jyk0
こいつら大体がハゲてんだよな
232
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:44:35 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「なんですか」
( <●><●>) 「ハゲタカ、まだ続けますか? 辛いことばかりで、楽しいことなんてない仕事です。
命は常に危険と隣り合わせで、失う事ばかりでしょう。
それでも、出実君はハゲタカを続けるんですか?」
(´・_ゝ・`) 「……当然ですよ」
少しばかり笑いながら答えた。
233
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:46:08 ID:MW.JpIwk0
(´・_ゝ・`) 「ハゲの居場所は此処にしか有りませんからね!」
234
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:47:00 ID:23xxBFUg0
事件が収束してから三日後、特対課室で火のついた煙草を三本も銜えて寛いでいた出実。
地下のアーカーシャから戻ってきた茂羅と二人きり。
諸本は流石に重症で一ヶ月の入院を余儀なくされていた。
病院のリハビリセンターで暴れまわっているようで、じきに退院して来るだろう。
( ・∀・) 「ふぅー……」
(´・_ゝ・`) 「で、話ってなんだ」
( ・∀・) 「武雲さんの事です」
(´・_ゝ・`) 「……」
アーカーシャで起きていたことはすぐに緘口令が敷かれた。
茂羅は語る。諸本が出実と荒巻だけに話した事実の誤りを訂正するために。
235
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:48:01 ID:23xxBFUg0
( ・∀・) 「アーカーシャの地下で、諸本さんが武雲さんを殺しました。
武雲さんの口から、裏切りが確信できる発言を聞いたからです」
(´・_ゝ・`) 「録音してた音声データは確認した。状況的には間違いないだろ」
( ・∀・) 「……武雲さんのそれが、芝居だったんだとしても?」
(´・_ゝ・`) 「どういう事だ」
( ・∀・) 「司法解剖するつもりないんですよね。……武雲さんの手首にあった仕掛け。
タイマーと連動してたのは脈拍でした。俺が解体したんですけどね」
(´・_ゝ・`) 「ああ。だから諸本には殺して止めるしかなかった」
( ・∀・) 「違います。武雲さんがもしその連動を外したら、VXガスがあの部屋の中に充満する仕掛けがありました。
武雲さんの体内に、です。
それこそが武雲さんが裏切り者ではなく、裏切り者を演じていた、という証拠です。
人質として、あの場に武雲さんはいたんですよ」
236
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:52:40 ID:23xxBFUg0
(´・_ゝ・`) 「人質……?」
( ・∀・) 「爆弾の解体を難しくするよりも、物理的に解除できないようにしてたんです。
俺らが武雲さんを殺せなければ、爆発は防げない。それを分かっていたからこそ、武雲さんは……」
(´・_ゝ・`) 「…………」
( ・∀・) 「武雲さんは裏切り者ではないです。その事実を、せめて俺らの間だけでも共有できれば、と」
(´・_ゝ・`) 「お前、その話は諸本にしたのか」
( -∀-) 「いえ……」
茂羅が戻ってきてから一番悩んでいたことは、武雲の事実を諸本に伝えるかどうか。
責任を感じさせてしまうことを避けたいが、事実を知らないままにすることも躊躇われた。
(´・_ゝ・`) 「……絶対にするな。俺とお前の間だけだ」
( -∀-) 「はい……それじゃ、失礼します」
茂羅は緩慢な動作で部屋を出ていった。
(´・_ゝ・`) 「裏切り者は……最初っからただの脅しか……それとも……」
現場警官レベルでは存在してもおかしくはない。
しかし、管理側にいればそれは重大な問題である。
出実は煙草を灰皿に捨て、部屋を出ていった。
特対課室に満ちた煙は、ゆっくりと換気扇で吐き出されていく。
誰もいなくなった部屋の中で、からからと音を立てて回っていた。
237
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:53:55 ID:23xxBFUg0
END
238
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:24:09 ID:xyUpB6MA0
ドクオやっぱダメなのかー
おつ!すげーわくわくした
239
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:46:05 ID:na56zDnw0
ショボン様がフサボコるとことかかっこよかったけどハゲなんだよな
240
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 00:50:44 ID:BJXZIumI0
おつ!かっこいい禿どもだった
241
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:42:45 ID:scIkbq5.0
面白かった!乙!
242
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:23:38 ID:3HsROInw0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
243
:
名無しさん
:2016/04/05(火) 20:23:06 ID:jMdIHJO.0
うおおお乙
熱かった……ハゲタカ…………
244
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 18:08:45 ID:adCBHYjI0
大満足な読み応えと緊迫感溢れるストーリーのおかげで
上質な洋画を見ていた気分になったよ
めっちゃ面白かったです
ドクオ…
245
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:52:42 ID:.DaWa1Lg0
>>233
クッソwwwww
246
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 13:14:07 ID:MBwiOLdA0
主催と参加者の皆様、お疲れさまでした。
ハゲタカを読んでくださったかた、投票してくださったかたは本当にありがとうございました。
おかげで、作者賞で11位、作品賞で9位にはいることができました。
個人的な理由でスレをあげてしまい申し訳ないのですが、投票まとめにある感想で、ハゲタカについて語りたい、
と書き込まれていたかたに、是非このスレに書き込んでいただければと思いますので、あげさせていただきました。
247
:
名無しさん
:2016/04/25(月) 08:18:25 ID:X/.IJ65E0
おう乙
語りたいと言った人とは違うがハゲタカに投票したよ、おめでとう
248
:
名無しさん
:2016/05/12(木) 21:10:16 ID:QqHCSt/g0
まあ、色々臭わせてるよな。
おめでとう、乙。
249
:
名無しさん
:2024/08/24(土) 17:26:56 ID:itkE3dVI0
乙乙
ハードなストーリーと同じ速度で頭皮事情が紹介されてるのがもうどんな気持ちになれば良いのか分からなかったけど、みんな格好良かった!
敵はまだ解体された訳ではないし、シーズン2もぜひ読みたくなる作品。
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