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宇宙盗賊ぽんちぃ

6名無し募集中。。。:2020/05/30(土) 10:49:10
[プロローグ]

知沙希は死の際から引き戻される。
命を救ってくれたのは、崩れた壁の上に斜めに倒れかかった鉄骨だった。
敵の大攻勢のせいで、基地の複合施設は完全に破壊され、跡形もなくなっている。

ひしゃげた瓦礫の山に、ぽっかりと小さな隙間ができ、知沙希はかろうじて息をすることができた。
とはいえ、土ぼこりがもうもうとしていて、まともに吸える空気ではない。

知沙希はむせて咳きこみ、自分は死んだのではないかという気がしていた。
狭く息苦しい空間に押しこめられ、視界も利かず、肺に入ってくるのはほこりばかり。
これが地獄というところなのではないか?死んで埋葬されているのではないか?

そのとき、知沙希は痛みを感じる。
腕が血にまみれていて、ぬるりとした感触があった。
生きている証拠だ。死人は血を流さない。死んでいない。

瓦礫を取り除き、よろめきながら知沙希は地表に立った。
腕も脚も頭も、もぎ取れたものはひとつもない。
目の前の巨大な陥没を呆然と見つめる。と、何かが臭う。
ガスに火花が飛び、爆発を引き起こした。
知沙希が見上げると、至るところで火の手が上がっている。まるで空気が燃えているようだ。

どこを向いても、土ぼこりの雲の中に見えるのは、崩れたり折れたりした建物ばかりだった。
一帯の路上には、石やコンクリートのかけら、ねじれた鉄骨などが山と降り積もっている。

ショックが治まり、アドレナリンが退いて、痛みがいよいよ現実のものになってくる。
猛り狂うように噴き出す火が、冥府の闇を赤く照らしていた。
屍の放つ腐臭、肉の焼け焦げる異臭、人間の排泄物の強烈な臭気――。

足を引きずりながら、知沙希は地獄絵の中を歩いた。
どこへ向かうという目的があるわけではない。
だいたい、自分がどこにいるのかすら正確には分からない。
ただこの場所から、とてつもない規模の殺戮と破壊から、少しでも遠ざりたかった。


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