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ハロ異聞録ペルソナ

22名無し募集中。。。:2020/01/07(火) 23:54:53
「じゃあなんでさゆみ達は悪魔化しないんですか?」
 一口にペルソナ使いだからと言われても納得できなかった。
 つんくが答えると室内に驚きの声があがる。
 曰く、ペルソナとは魂が半悪魔化した状態を指すらしく、すでに半分悪魔なのだからそれ以上の変化は起きないとのことだ。異界に対しての免疫機能の現れみたいなもので――インフルエンザの予防接種と同じ原理だ。
 ただ、ここで少女達は疑問に思った。つんくからは特有の共鳴を感じないのである。つまりはペルソナ使いではない。なのに受胎の中で平然としている。
「まあ俺はサマナー、デビルサマナーやからな。仲魔がおんねん」
 高橋達が一斉に「ナカマ?」と口にした。
 五人はつんくに指をさされた箇所に目をやる。
 おかっぱ頭の可愛らしい人形が棚の上に立っていた。大きさは道重のピクシーくらいだろうか。「あれがなにか?」と言いかけたところで人形は飛び上がり少女達の間を縫って校長の机の上に座り込んだ。
「これがいま校長室に結界を張ってくれてる仲魔のモーショボーちゃんや」
 小さな少女がぺこりとお辞儀した。
 物珍しそうに五人がモーショボーを観察するなか、保田がつんくに訊ねた。
「にしても珍しいですね。つんくさんなら自力で受胎を破るのかと思ったんですけど」
「それなぁ――」
 どうやら彼も最初はそのつもりだったらしいのだが、悪魔召喚プログラムの調子が悪いらしく、思うように仲魔を呼べないのだという。
 原因は携帯を変えた際のプログラムのインストールが上手くいっていないからではないか、とのことだ。
 なので受胎が始まってから今の今ままでその修理に追われていたらしい。
「ちゃちゃちゃっと直せないものなんですか? 叩くとか」 訊ねたのはモーショボーを撫でている道重だった。
「昔のテレビとちゃうぞ――」
 曰く、悪魔召喚プログラムとはつんくが開発したアストラルテクノロジーであり、魂の言語化とそれを用いた“アストラル言語”で構成されているらしい。
「とにかくや! 俺は今ここを動けん。だから君等に受胎破りをお願いしたいねん」
 つんくが神妙な面持で告げる。
「それ、保田さんじゃダメなんですか?」道重が訊ねた。
「あかん。保田にはわしの手伝いをしてもらわな。そろそろモーショボーちゃんもつかれてくる。結界をはれる者が必要や」
 五人はしばらく黙っていた。
 口火を切ったのは高橋だった。
「受胎破りっていうのは具体的にどういう?」
「それはやな」
 つんくが言うにはこれだけ広範囲の受胎を行うにはそもそも術者もその中にいる必要があるとのことだった。それを行っているのが人間なのか悪魔なのかはわかないが、術者を倒してしまえば受胎は解ける――
「やってくれるか?」
 五人は顔を見合わせた。
 どのみちここから出るにはそれしか方法がないのだ。やる以外の選択肢は最初から用意されていない。
「やります」少女達の声が自然と揃う。
「その意気や。あと術者がどこにおるのかは俺もわからんからけど、ごっつ強いやろうから相応に目立つはずや」
 保田はそれに付け加えるようにペルソナの使い方について役にたつ情報をくれた。
 そうして部屋を出ていく五人を見送ってから、つんくは机に頭打ち付けた。
「すまん……わしに力があれば……」
「つんくさん、彼女達は強いですよ。あの頃の私達みたいに」
「……そうか――まあ、顔はあの子らが上やな」
「…………はやく直してください」

23名無し募集中。。。:2020/01/07(火) 23:55:53
 校長室を出た五人は歩きながらこれからどうするか話し合った。
 高橋と新垣のいた三年生のフロア、つまり四階では沢山悪魔はいたが術者らしき者はいなかった。道重は保田と共に校長室へ向かい、途中で亀井を助けるために二年生のフロアである三階へ。光井は体育の授業を見学していたらしく、そこから階をあがり二階の職員用トイレへ。
 つまり各自が通ってきた経路と合流後の経路をまとめると、二階から四階に術者と疑わしい者はいなかったという事になる。
 一つ気になる点があるとすれば――
「えりの言う“フード”が怪しいかな」
 高橋は口元に手をやった。
 話しを聞くかぎり、そいつは自分達が相手にした悪魔よりも数段格上に思える。つんくの言った強い力とも合致する。
 他の者たちも高橋に同意したが、問題はやはり相手の居場所である。
 各階にはまだ見ていない多目的教室等が幾つか存在する。
 とりあえずはそれらをしらみつぶしに当たっていく他ないだろう。
 放送室についた五人はそっと室内へ侵入した。
 ドアノブに血がこびり付いていたので悪魔がいるかもしれない。
「あ!」道重が声をあげる。
 新垣がすぐにその口を手で覆ったが遅かった。
 ブースにいる一つ目の悪魔がぎろりとこちらを向いていた。
 頭部は人間で異様に長い首がダンゴムシのような胴体に繋がっている。
 やばい、と思った直後、悪魔はかさかさと音をたてながら襲い掛かってきた。
 五人はバラけるように転げる。
 放送室は狭い。ペルソナをだして戦うには不便だ。
 各自が校長室での保田のアドバイスを思い出す。
『ペルソナは強力だが使用者の消耗も激しい。しかも小回りもきき辛い。だから『降魔』を使え――』
 高橋が右手のピンキーリングに意識を向けた。ヌエを使うイメージで――その力だけを集める――
 リングに火花が散った。
 そして、ハッ! という気合と共に平手で悪魔の頭部を打った。
 バチッとスパーク音が鳴り、長い首が傾いだ。頭部からは煙をあげている。
「愛ちゃんどいて!」
 新垣が引き絞った腕を大きな動作で横に振る。
 轟! と風が吹いた。
 一つ目は飛ばされ壁にぶつかると首(こうべ)を垂れ、動かなくなった。
「二人とも、凄い」道重が感嘆する。
 きっとこれが保田さんの言っていた――『降魔』
 それはペルソナの力の一部を本人に付与する業である。
 現れ方は本人とペルソナの性質に依存し、超常的な力の一端を生身で扱う“アストラルアーツ”なのである。
 ペルソナほどの力はないものの弱い悪魔であれば十分な効果を発揮する。
 高橋の場合は物体に電撃を潜ませ、本人の意思でそれを開放するというもの。新垣は動作に合わせて風を起こせるようだ。
 どちらもペルソナ能力と同じで現実の物理法則を無視していた。

24名無し募集中。。。:2020/01/08(水) 00:22:17
「二人が居れば怖いもの無しじゃないですか」
 道重はルンルン気分で悪魔に近付き指でつついた。
「さゆー調子に乗ってるのと起き上がってくるかもよ」新垣が意地の悪い顔をする。
「まっさか〜! そんなわけ――!?」 本当に起き上がった。
「危ない!」亀井は思わず近くにあった椅子を掴む。すると椅子はひとりでに動き出し、道重に齧り付こうとしている一つ目に体当たりをかました。しかも意思でもあるかのように悪魔を壁に押し付けてサンドウィッチに拘束する。
「あ、危なかった……さゆみだって、怒ったら怖いんだからね」道重の手にステッキが具現化される。
 えいっ! と、それで悪魔の頭を叩いた。何も起こらなかった。
「ちょっ、さゆっ! こんな時にギャグかまさないでっ――も、もう押さえておけないっ」
 一つ目が椅子を破壊し、道重に襲い掛かる。
 高橋と新垣が迎撃態勢に入るも、間に合いそうになかった。
 道重がキャッと叫びながらデタラメにステッキをふる。悪魔の側頭部に当たった。
 次の瞬間、一つ目をはりつけた頭部が爆弾ように破裂した。
 一同は二、三秒ほどそのままの状態でポカンとしていた。
「さ、さゆの力?」新垣が訊いた。
「た、多分――」
 降魔もペルソナと同様、使用者には力の詳細が“なんとなくわかる”のだが、道重にはそれをどう説明していいのかがわからなかった。
 彼女の力はステッキによる攻撃の威力をランダムに変動させるというものだった。謂わばクリティカルヒットである。それが起こる確率も威力の倍率も当然ランダムである。
 かたや亀井の力は手で触れたり掴んだりした物をテレキネシスで操る、という非常に説明しやすいものだった。 
「私だけ何もできなかった」
 光井が申し訳なさそうな顔をしている。
 亀井はそんな彼女を慰めた。
 今後もこういう展開が続くのかと思うと気が遠くなる。無事受胎破りをやり遂げられるのだろうか。
 五人は不安に駆られながら放送室を後にした。
 その頃、田中れいなは校門前に来ていた。
 当然帰宅するためだが、そう上手くはいかなかった。
 校門を境に斑色の壁――というよりは膜が邪魔をしていたからだ。
 手を当ててみると何とも言えない感触だった。
 どうしたものかと考えていると、ふと背後に気配を感じた。
 振り向くと初老の男性が立っていた。作業着を着ているので用務員だろう。
「ここからは出られんぞ」
「またったい――」
 田中の視線が明後日を向く。
「隙あり!」
 と、男が飛び掛かり、二人が交差した――刹那、銀光が真一文字に奔った。
 着地した男は途端に勢いと覇気を失い、覚束ない足取りのまま俯せに倒れた。
 まだ辛うじて人の姿を保っていた頭部が体から離れてコロコロと転がった。
 ゆるりと振り向く田中――その右手の爪が一〇センチ以上も伸びていた。
 五枚とも刀のように鋭く、銀色の金属光沢を持っている。
 しかも悪魔の首を刎ねたばかりだというのに、一切の刃毀れも血汚れも無く、油による淀みも無い。あるのは無機質な機能美だけ―― 
 彼女はまだそれを降魔だとは知らない。ただ効率のいい力の使い方を、効率のいい戦い方を求めた結果だった。
 そしてここにくるまでに殺傷した悪魔の数は既に二〇を超えていた。
 田中は男の頭部に爪を突き刺し止めを刺すと、校舎に目を向けた。
 少女が五人かたまって廊下を歩いている。
 ずっと感じていた共鳴はあれが原因か――
 斑の膜へ向き直り右手を奔らせる。しかし膜は破れなかった。薄い傷がついただけだ。それも直ぐに再生してしまう。
 ただ収穫がなかったわけではない。爪で触れた事で分かった事がある。  
 膜はたしかにここに存在しているが、同時にここには存在していない。
 矛盾しているがそんな感じだ。
 きっと根本はペルソナと同じ。何処かに“本体”がある。
 それを殺すか壊すかすればいいのだろう。
 田中はもう一度校舎を向いた。
 五人がまだ廊下を歩いている。
 内の一人と目が合った気がした。嫌な目つきをしていた。

25名無し募集中。。。:2020/08/12(水) 13:48:14
まさかこんな作品があったなんて。。。ハロプロとメガテン・ベルソナ好きな自分としてはドストライクな内容!
続きが早く読みたいです!!お願いします


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