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ハロ異聞録ペルソナ

12名無し募集中。。。:2020/01/07(火) 23:41:35
「ほらどうする高橋さん? クラスのみんながあなたを食べたいって」
「そっか……じゃあ、私がどうやってここまで来たか、教えるよ」 
 高橋を中心に風が巻き起こる。
「ペルソナ!」
 言葉と共に高橋の背後からヌエが飛び出し、近くの生徒を吹き飛ばした。
 その場の誰もが困惑した。怪物が突然現れたのだから当然だ。
「愛ちゃんそれって――」 訊く新垣の言葉を遮って高橋は言った。「詳しい話はあと」
「ヌエ!」黄色い化物の爪がにょきにょきと伸びた。人と同じ丸みを帯びた形がその姿と相まって逆に不気味である。
 ヌエが何を合図にするでもなく、近くの生徒に飛び掛かった。
 女子生徒は食らうものかといった表情で仰け反る。すると指先から十センチは食み出た黒い爪が相手の頬を掠めた。
 少女が上体をもどし頬を手でなぞる。そこには数本の擦り傷が張り付いていた。
 躱された。やはりもう駄目だ、と新垣は思った。
 少女も惜しかったねと言わんばかりに嘲笑う。
 しかし高橋は自信に満ちた表情でこう言った。
「それで十分」
 どういう意味? と訊ねる前に異変は起きた。少女の頬につけられた傷から、いくつも小さな気泡が生まれたのだ。
 それは煙を立ち昇らせ、紙が水を吸うが如く、瞬く間に顔全体を浸食した。
 少女は悲鳴と共にその場に転げまわった。顔が溶けていく。そこに触れた手も。その手を拭った腕や腹も。凄い勢いで溶けていく。
 ヌエの黒爪は酸の効力をもっていたのである。
 女子生徒達の視線が改めて高橋を向いた。彼女達にはもう高橋愛しか見えていない様子だった。
 そして何人もいる化物を相手に立ち回る高橋を見て、新垣は思った。結局またこれだ。いつだってみんなは愛ちゃんの方を向いている。誰も自分を見てくれない。今じゃ化物の餌にすら値しない。
 愛ちゃんすらも自分を見ていない。
「あたしはここにいるっ!」 
 新垣の周りで風が渦巻く。

“我は汝 汝は我 我は汝の心の海よりいでし者”

「シーサー!」
 高橋の時と同様にその背後から力が飛び出す。
 大型犬ほどもある短毛の四足獣。まん丸い大きな瞳に、口からはみでた大きな牙。頭部と四足と尾っぽには、黄緑色の長毛が渦巻いている。

“我は汝 汝はーって、堅苦しいのはここまでだぜ〜 お前は俺だ だからやる事はわかるな? いっちょ見せてやれ”

 新垣はシーサーと共に駆けた。高橋を通り過ぎ、変貌した女子生徒の一人へ攻撃を仕掛ける。
 新垣のハッ! という気合の声と共にシーサーは頭から目標に突進した。
 ぶつかり傾いだ少女の体を頭部と牙でぐいぐいと押し込んでいく。
 黒板とシーサーにサンドウィッチにされた少女が、その禍々しい口から赤黒い血をぶちまけた。
 自分に何が出来るのか自然とわかる。愛ちゃんもこんな感覚なのだろうか。
 新垣は後方の高橋を肩越しに一瞥した。見ていて、これがあたしの力。
 シーサーの長毛が大きく揺らめく。周りの風を集めているのだ。
 そしてそれを竜巻の様に渦にして女子生徒へぶつけた。少女の躯体が明後日に捻じ曲がり、再度黒板に激突した。
「凄いじゃんガキさん!」
 高橋の声に新垣はどんな顔をしていいのかわからなかった。多分笑っていたのかもしれない。愛ちゃんも満面の笑みだったから、きっとそうだ。
「あと一人!」二人の声が重なった。
 ヌエの雷と、シーサーの風が同時に炸裂する。
 やっと教室が静かになった。
 いったい何が起こっているのだろう。そしてこの力はいったい。
 とりあえず今は少し休みたい。
 二人は背中合わせでその場に座り込んだ。


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