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横山よこやんのお気持ちが加賀かえでーのド真ん中に届かない!
1
:
名無し募集中。。。
:2017/09/14(木) 19:54:13
助けて!
http://pbs.twimg.com/media/DHVX1-oXUAASZOf.jpg
元スレ
横山よこやんのおちんちんが加賀かえでーのおまんまんに届かない!3本目 [無断転載禁止]©2ch.net
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1505366325/
前スレ
横山よこやんのおちんちんが加賀かえでーのおまんこに届かない!2本目 [無断転載禁止]©2ch.net
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1504149574/
横山よこやんのおちんちんが加賀かえでーのおまんこに届かない! [無断転載禁止]©2ch.net
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1502942102/
74
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:30:57
三人は打ち合わせが終わると カフェを出て
外苑前駅から銀座線に乗り 赤坂見附まで行った
里保はこの周辺のホテルに泊まっていた
「じゃあ 今日はこれで さっき話した通り 明日は朝10時に水道橋ね」 加賀が言った
「わかった 今日はありがとう 明日からもよろしくね」
里保が消えて行った
「さてと ボクらも帰るか 疲れたろ? 今日はウチに帰って ご飯食べなよ」
「そうする」 玲奈が言った
「明日からは またお願いするね」
玲奈は黙ったまま 口を尖らせていた
里保とはレンタカーで広島に行くことにした
新幹線や電車では 狙われる可能性が高いと判断したのだ
玲奈は学校がある
2・3日はかかる行程を考えると 事務所で電話番を頼むことになった
加賀はこの状況に満足していた
ナイフの女は里保の喉を狙ったのだ
できるだけ玲奈を巻き込みたくなかった
「また もみじ饅頭買って来るから」
「もう飽きた 別のものにしろ!」 玲奈が加賀の腕をこづいた
「わかった わかった」
加賀は腰を落として 玲奈と同じ目線にする
「帰って来たら 何か美味しいもの食べに行こう 行きたいところ考えといて」
見つめ合うと玲奈の尖った口が微笑みに変わっていった
「このシャツ 洗っといてあげる」 玲奈が膨らんだバッグを見せた
「忘れてた ありがとう お願いするよ」
「じゃ 気をつけて帰るんだよ」 加賀は玲奈の頭をポンポンと軽く叩いた
二人はそれぞれ 丸の内線と有楽町線のホームに下りて行く
すぐに電車が入って来た
加賀が事務所に戻ってくると 夕方の6時だった
事務所に入ると電話が鳴っていた
早足で近寄り 受話器を取る
「はい 加賀調査事務所です」
「あ 加賀君か?」
「はい」
「広島の石田だ 何度か電話してたんだが やっと捕まったよ」
「すみません 外出してまして どうしました?」
「勝田から聞いておいてくれって言われてな
八反組が昨日壊滅した 何か知らんか?」
「え? 八反って 総道会の?」
「そうだ 組員の大半が事務所で殺された 勝田はその捜査で外に出てる」
「いや でもボクは八反の組員とは 直接会ってもいないんで」
「そうか キミが八反の話しをしてたから なんか知ってるかと思ってな」
「いえ 先日広島に行った時 一緒にいた助手の女の子が 声をかけられて
怖い思いをしたので どんな連中か知りたかっただけなんです」
「そうなのか」 石田の声にはまだ加賀に対する疑念が残っていた
「しかし 殺されたって 誰にですか?」
「それを調べてんだよ わかった また勝田が電話するかもしれんが」
そう言って電話は切れた
テレビを付けてみた
ちょうど夕方のニュースをやっている
確かにそこには 広島の暴力団事務所で起きた殺人事件について伝える
アナウンサーがいた
昨晩 何者かに襲われ 組員6人死亡 1人重体 暴力団同士の抗争か?
そんな内容だ
工藤はどうなったのだろうか? 橋本や大澤組が関わっているのだろうか?
加賀は気になったが 確認する手段が思い浮かばなかった
組同士の抗争が疑われる神経質な時期に いろいろ聞いて回るのは
墓穴を掘るのに等しい
また電話が鳴った
75
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:31:54
勝田さんか?
「はい 加賀調査事務所です」
「おっ いたね 山木だ」
「山木さん 先日はありがとうございました」
「加賀くんこそ わざわざ広島土産を家に持って来てくれたそうじゃないか」
「いいえ お世話になってますから それで どうしました?」
「いや ちょっと 加賀君に警告しておこうと思ってね」
「はい?」
「広島の暴力団事務所で起きた殺人事件 知ってるだろ?」
「ええ さっき県警の石田さんから 何か知らないか聞かれました
テレビでも大騒ぎですね」
「キミが今やってる案件から すぐに手を引け」
「え? それは どういう?...」
「キミの周りに その殺人者の影がチラついている」
「山木さん! 何を知ってるんですか?」
「私の捜査対象でもないし 広島の連中も必死にやってるから
あまり言えないんだが 福村さんにキミを紹介した手前 心配でね」
「山木さん!」
「...同期の公安の奴から聞いたんだよ 張琳(Zhang Lin)という女を
マークしてたら キミがいたと」
公安? 張琳? 中国人? スパイ? 女?
ナイフの女か!?
「何者ですか そいつは?」
「どうやら 中国人民解放軍の工作員だったらしい」
「なんで そんな奴が?」
「5月と7月に 華国鋒が来日したろ?
中国は2年前から鄧小平が実権を握ってるが 裏では華国鋒が
しぶとく返り咲きを狙っていた それで日本でおかしな行動に
出ないように張り付いてたんだ」
「公安は身柄を拘束できなかったんですか?」
「いろいろあるんだよ 2年前の日中平和友好条約とか去年の米中国交正常化とかな
なのに 先走った外事二課の奴が 張琳と一緒に潜伏してた銭純(Qian Chun)を
一時拘束してしまったんだ」
「秘密裏に強制送還ですか?」
「そういうことだ それ自体はたいした問題にもならなかったんだが
銭純(チエン・チュン)が司令塔 張琳(チャン・リン)が実動隊の役割だったんで
糸の切れた凧状態になったわけだ」
「張琳は どんな女ですか?」
「身長154cm 痩せ型 色白でけっこうカワイイ顔してるそうだぞ
でも 生まれてこの方 人を殺す訓練しかして来なかったような人間らしい」
「参ったな」
「見たんだろ? 相方を失った奴は 今 暴力団に囲われてるらしい」
「山木さん そんなにペラペラ喋っちゃって大丈夫ですか?」
「さっきも言ったけど キミが奴に近づくきっかけを作ったのが 私だからな
危険な目に合わせたくないんだ」
「お心遣い 痛み入ります」 加賀は皮肉っぽく言ったつもりだった
「わかったら すぐ手を引いてくれ」
「そこまで言うなら 今日その女に狙われた山崎里保を 護衛付きで広島まで
送り届けてくださいよ」
「すまん そういう権限は 私には全くない 誰の指示で 何の目的で
張琳が動いてるのかもわからない 同期が 張琳の流れた先で起こしてそうな
事件がないか 組織犯罪対策の私に 参考で聞いて来ただけだからな」
「相変わらず警察の縦割りの酷さと言ったら... 広島県警がかわいそうですよ」
加賀は少し意地悪でもしてやらないと やってられない気分だった
「そうだな キミの言う通りだ 本当にすまない」
山木が素直に謝罪するのを聞いて 加賀は自分の言を恥じた
「いいえ 言ってくれて助かりました
張琳は 広島で暴力団を襲って その足で東京に来たということですね?」
加賀がおさらいをした
「ああ そういうことだね バックアップしてるのは 波浪興産の周りにいる暴力団関係だろう」
76
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:33:04
山木は三度 加賀に手を引くように言うと電話を終えた
とかなんとか言っちゃって 公安はいつから見てたんだよ?
少し腹ただしかった
山木には感謝の気持ちがあったが 山﨑里保の存在も既に知っていたようだし
公安の内偵がどこまで進んで 何を知っているのか 張琳のような危険人物を
泳がせているのではないか? と気になった
しかし 流石に7人の死傷事件を黙って見ているわけはなく 里保が殺されかけたことも
事後に情報収集したことだと思いたい
張琳の所在が掴めていないのなら 明日以降の里保と加賀を囮として 確保するつもりだろう
日本で殺人鬼と化した張琳を もう野放しにしておく理由はない
やってやろうじゃないの!
加賀は笑って済ませられない事態になっても 意地になっている自分が好きだった
里保をどうやっても山﨑直記の前に立たせる!
「楓! なんや いるやん!」
騒々しくあかりが事務所のドアを開けた
「あんた せっかく ええことせぇへん?って誘ったのに すぐ電話切りよったな」
「仕事で忙しかったんだよ」
あかりは緑の長袖VネックTシャツを着ていたが 胸元の切れ込みがかなり深く
谷間が見えていた
柔かな生地を押し上げる 胸のお椀型の隆起も目が吸い付けられるようだった
「モリトチ! こっち来ぃや」 パーテーションの向こうから チワワがテトテトやって来た
あかりが胸の上に乗せるように抱き上げる
「なぁー せっかく モリトチが凄い技見せたげるって 言ってたんやけどなー」
「なんだよ?」
「見たい?」
「あー はいはい 見たい見たい」
「ハーイ トチ トチ! これなーんや?」
あかりがペットフードを上にかざした
モリトチが必死に伸び上がる
「ハーイ いない いない!」
あかりがペットフードを自分の胸の谷間に突っ込んだ
モリトチがTシャツの襟元に首を入れ 潜り込む
一瞬白い2つの半球が蛍光灯で光って見えた
間を置かず あかりのTシャツの裾からペットフードを咥えたモリトチが
落っこちて来て着地した
「大成功! 凄いやろ?」
「あー 凄い 凄い」
「何や その やる気のない 言い方?」 あかりが睨んだ
「最近毎日 仕事で忙しいの モリトチの芸なら また今度にして」
「忙しくて 精力減退や言うの? スタミナないのー」
あかりはそう言って 胸を大きく反らした
あ やめて! 来た来た 疲れ何とか言うやつだ
「今ちょっと ムラムラ来たんで 部屋出てってくんない?」
「ほー ムラムラ来たんか? ホンマに?」
あかりが10cmと離れていない近さで顔を覗き込んだ
遊んでやがる
「あのなー おっぱいなんて 脂肪やでー そんなんで
チンチンに 血いっぱい溜め込んで 大っきくなるんやから 難儀やなー」
恥じらいというものが無いのだろうか この女は?
「おっぱい 欲しいでちゅかー?」
あかりが腕を胸の下で組んで 目の前に突き出して来た
そこまでやられたら 我慢の限界だ
「あかり!」
加賀は思わず抱きしめた
「きゃっ! 何や! 変態や! 変態! 触りよったで! 信じられへん!」
あかりはモリトチを抱き上げると あっと言う間にドアを出て行った
加賀は黙って立ち上がると インスタントコーヒーを入れて飲んだ
なんかよくわからないけど 釈然としない思いが湧き上がって来る
ラーメン食べに行こ! ドアを開け 階段を下りて行った
77
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:33:51
ラーメンこぶしは客が2人だった
この時間にしては珍しく少ない
「浜さん 今日ヒマそうだね」
「それ言っちゃダメだって つっても さっきまでは半分以上埋ってたんだよ」
「そっか じゃあいい時に来たな チャーシュー麺と.. 野菜炒めももらおっかな」
「あいよ」
「いらっしゃい 大家さん」 エプロンをした女性が水を持って来た
「大将にヒマそうとか言っちゃダメだって」
「あっ ゴメン サクちゃん つい いつものクセでさ」
サクはラーメンこぶしの従業員だ
加賀と同じくらいの年齢で ガタイがいい
「いつものクセって それじゃいつもお客さんいないみたいじゃん」
サクは大きな体を揺すって抗議した
それほど太ってはいないのだがガッシリとした体格で 性格は温厚
包容力がありそうだ
ハッとする程 美人の時がある
こぶしの開業時から浜さんと一緒に働いているが
加賀は二人ができてるんじゃないかと思っていた
「サクちゃん 大将まだ食べ歩きしてんの?」
「うん 火曜の定休日はいつもラーメンだよ」
「自分で作ってんのに 休みの日までラーメンって どれだけ好きなのよ?」
「体に悪いから やめなって言ってんだけど」
「その割に細いし 顔も小さいのが謎だよね」
「本当 その遺伝子 あたしにわけて欲しいわ」
「わけてもらってんじゃないの?」 加賀がニヤけて言った
「バッカ! 大家さん けっこうドスケベね!」 サクが加賀の腕をはたく
結構痛かった
いかんいかん 最近あかりやローズ朋子さんのせいで下品になってきたぞ
加賀は反省したが サクがニコニコしているところを見ると
二人は上手くいっているようだ
「でも 野菜もたくさん食べなきゃね」
「そうなの 最近野菜食べるようにサラダとか あたしも意識して出してる」
「へぇー ご飯作ってあげてんだ?」
「た たまによ たまに」 サクが真っ赤になった
「はいっ チャーシューお待ち 炒め物もすぐ出るよ!」 厨房から声が飛ぶ
チャーシュー麺がやって来た
脂身の多い とろけかかったチャーシューが5枚乗っている
チャーシューのみ 麺とチャーシュー 麺のみ
いろんなパターンでラーメンを楽しんでいると野菜炒めもやって来た
「野菜炒めだけじゃ 一日分の野菜にならないからね」 皿を置きながらサクが言った
「大丈夫 昼間 鰻食べたから」
「バッカじゃない? 鰻は野菜じゃないよ」 サクが笑った
確かに 野菜不足は気にしてる
加賀は明日から野菜ジュースでも飲もうかと考えた
しかしプロが炒め物を作ると なんでこんなにシャキシャキになるんだろう?
自分で作ってもぐんにゃりして ソースで味をごまかして食べる代物しかできないのに
食欲の前に すっかりあかりのことを忘れていた
その前日 広島市内は台風が近づいているせいか 蒸し暑い夜だった
中区のはずれにある3階建ての建物の2階には 男たちが集まっていた
「な? 舐めてんじゃねーって 俺はそう思うんじゃ 違うか?」
サングラスに太い金色のネックレスが目立つ男が言った
「わかる わかるんじゃがの そこはちぃーと我慢よ」
太いもみあげにゲジゲジ眉の男がタバコを吹かして応える
隣にはソファにどっかり腰かけたごま塩頭の男が 向いに立つひょろっとした
若い男と身長180cmの大柄な男を相手に喋っている
「やっぱ 女は若いのに限る 肌のきめ細かさが違うんじゃ」
「オレはちょっと年上がいいや 色っぽいじゃないすか」 痩せ男が言う
「バカじゃのぅ 生娘が一番じゃけ」 ごま塩がニタリとした
「おぅ みんな揃ったか?」 奥の本皮張りの椅子に座った50絡みの男が声をかけた
78
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:37:57
「工藤と岸本がまだ来てねぇ」 ごま塩が言う
「工藤さん まだグレースで腰振ってんじゃないすか?」 痩せ男が笑って言った
「オメー 工藤さんの前でそれ言ってみ?」 大柄な男がたしなめる
「かんべんしてくださいよ そんなこと言ったら 俺 バラバラにされて
7つの川に浮いちゃうじゃないすか」 痩せ男がそう言うと 周りの男たちが笑った
「もうちょっと待とうや」 奥の椅子に座った男が言う
男の頭上には「八反組」の名前が入った提灯が飾られていた
横の壁に獅子の絵がかけられ 手前のサイドボードの上に
模造刀が抜き身で置いてある
事務所はエアコンが入っていたが いまいち効きが悪い
いくつかの扇風機が タバコの煙で白くなった室内の空気を攪拌していた
「工藤さんの女の好みって広いっすよね もうガキみたいのから
おばはんまで 何でも来いっていう」 痩せ男が面白そうに言う
「生娘が一番じゃけ 何も知らん女に教え込むのがええんじゃ」 ごま塩が言った
事務所は再び 雑談で溢れた
ドアが微かに キィと言う音を立てて開いた
傍にいた3人の男たちは 工藤が来たかと思い 入り口を見た
女?
白い顔をした若い小柄な女が立っていた
半透明の雨ガッパを着て フードを被っている カッパの下には濃紺の服が透けている
「なんだお前?」 痩せ男が一歩踏み出して言った
女は答えない
「町内会の案内か? カタギの来るところじゃねぇぞ?」
「まぁ ええけぇ 嬢ちゃんどっから来んさった」 ごま塩がニタリと笑いながら近づいた
「ほぉ かわいい顔しとるのぅ 雨も降っとらんのに カッパ脱いだらどうじゃ?」
痩せ男は頭の横で指をクルクルと回し 入って来た女を指さして 大柄な男を見た
ごま塩が女のフードを上げようとした瞬間 黒い手袋をした手が素早く上に動き
ごま塩の喉を裂いた
「うげぇ ぉぉっげっ」 ごま塩の喉から白い肉が見えたかと思うと忽ち
血飛沫が散り 続いて大量の血が溢れ出して ごま塩が倒れた
「後藤さん!」 痩せ男と大柄な男が同時にごま塩の名を呼んだ時
女はそのまま前に進み 二人の目と喉を刃渡り15cmくらいのナイフで切った
防御の腕を上げる前に切られた二人は 片や血の溢れ出る目を押えながら
床の上をバタバタと足を叩きつけて体をよじり 片や空気を漏らすゴボゴボと
言う音を出しながら頽れた
「なんじゃワレ!」
「おどれ どこの組じゃい!」
残りの男たちが怒りを発して立ち上がろうとしたところを 普通に歩いて
近づいて来た女が 事も無げに喉と耳の穴に ナイフを突き立て
あっという間に2人を黙らせた
女はとにかく 躊躇が無かった
相手が大声を出そうが覆い被さろうとしようが関係なく 最短距離で急所を襲い
殆ど反撃すらできずに 男たちは倒れていった
女は全く声を発せず 表情も全然変わらない
動きのリズムさえも殆ど変わらないように見えた
ここまで女が殺戮を始めてから 1分と経っていなかった
椅子に座っていた男と その傍にまで後退りした体格のいい男は
突然のことに驚きながら ようやく身構えた
「オヤジ! チャカ!」 体格のいい男が 椅子の男に言うと 自分は
壁際にあった模造刀を構える
椅子の男が 机の引出しを引っ張り出し 中を漁る
女はポケットに手を入れると 白い粉をばら撒いた
扇風機の風に粉が舞い上がり 男二人が咳き込む
女は片手で自分の口と鼻を押えると 前に進み
模造刀を持って咳き込む男の耳の穴にナイフを突きたて
ピストルを1発めくら撃ちした男の首筋を切った
10秒もすると 事務所の中はうめき声と
微かに動かす体がモノに当たる音しかしなかった
女はうめき声を上げる男を見つけては 喉を裂いたが
「イテぇ イテぇ」と泣き叫ぶ痩せ男はそのままにして ドアを出て行った
79
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:39:47
朝のニュース番組では一昨日の広島の事件を 暴力団の抗争として
まだ大きく取り上げていた
加賀は昨夜ラーメンこぶしで食べた後 玲奈と同様に疲れていたのか
夜9時には寝てしまった
今朝は4時に目が覚め コーヒーを飲みながら 昨日の情報の
整理と今日の予定の確認を行う
6時になると 早めの朝食を準備し 食べながらテレビを見た
目撃者のインタビューが流れる
「7時くらいだったかな? 男がこの前を歩いてったよ なんか怖い感じの」
胸から下の映像に 近所の主婦というキャプションが付いていた
「もう暗くなってたけど 小学生の女の子みたいなのとお父さんが
一緒にいて ヤクザ事務所があるのに危ないなって思った」 男性会社員が答える
まだ謎が多い事件ですが 周囲の住民の方 近くを通られる方は
充分注意してください アナウンサーはそう締めると次のニュースに移った
何故 八反組が襲われたんだろう? 加賀は考え込んでいた
以前から抗争に発展するくらいの敵対組織があって そこがヒットマンを送り込んだのか?
大澤組は仲良くは見えなかったが 敵対しているようにも思えなかった
里保を襲った人物と同じヒットマンなら 山木が言ったように
波浪興産の周りの暴力団関係という線が濃いだろう
橋本が関係しているのか?
橋本と八反の工藤はヤクザの兄弟関係だ
工藤も死んだのなら 橋本と仲間割れでもあったのか?
この件と里保の相続とは繋がっているのか?
橋本が動いているとすれば 山﨑会長の指示だろうか?
それとも西口? あるいは他の誰かか?
今日もあの女は襲って来るのだろうか?
次々と疑問が浮かんだ
プロが来るなら 闘って勝ち目はない
とことん逃げるしかないんだ
昨日の襲撃を見る限り 飛び道具は使い難いと見えた
日本では入手や携帯が難しいのか?
でも暴力団がバックにいるなら 楽観はできない
広島に行く手段として 入口・出口で所在を把握され易い電車を避け
レンタカーを選んだのは正解に思える
あの女は運転しないだろう 加賀達を追跡するなら 運転手が必要となる
女の行動に制限が出るのは必定で こちらには有利だ
そう思いたかった
移動の服装をいくつか選ぶと カバンのある事務所に下りた
7時半になると 電話が鳴った
こんな朝早くに誰だ?
少し不安になった
「もしもし 加賀調査事務所です」
「おー こんな早くに開いてんだな 広島の勝田だ」
「勝田さん? おはようございます」
「悪いな 昨夜歩き回ったので署で仮眠してたんだが 起きたら気になってな
本当に何も知らないのか?」
「は...い」
「なんだよ 歯切れが悪いな 石田さんもまだなんか隠してそうだって言ってたぞ」
「いや そうじゃないんですが... 八反の組員は殆ど死んだんですか?」
「組長 若頭始め 殆ど死んだよ 居合わせなかった幹部が一人と何人かの舎弟
準構成員が数人いるんで 捕まえて話しを聞いてる まだ探してる奴もいるがな」
「工藤?」
「あ? おまえ何でそんなこと知ってんだ? ふざけんなよ! 何知ってんだ?」
「いや あてずっぽうですよ」
「言えよ! じゃないとしょっぴくぞ!」
「昨日石田さんの電話の後 ちょっと聞いたんですよ」
「何を? 誰に?」
「誰が言ったかは勘弁してください」
「とりあえず 何聞いた? えっ?」 勝田の怒気を孕んだ低い声が 応えを急かした
80
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:40:29
「犯人が中国人民解放軍の元工作員だと」
「はぁ? 何言ってんだおまえ? 誰がそんなこと言ってんだ」
「...公安」
「チッ... ふざけやがって おまえ泣かすぞ!」
「そんなこと言われても でもプロの仕事だったんでしょ?」
「...」
「指紋もないし それに女だ」
「おまえ 本当に知ってんのか」 勝田が困った声を出した
「確かに指紋は出てない 地取りも事務所周辺にいた女の子の目撃が比較的多い
鑑識の話しだと 八反の連中は殆ど反撃もせずに殺されたようだ 防御創すらない」
「ナイフで喉を狙った?」 加賀はカマをかけた
「半分がそうだ 畜生! 外国人の女だってーのか!?」
あの女は 7人のヤクザを相手に反撃の隙も与えず殺したのか...
加賀は今更ながら 里保がラッキーだったことを覚った
それどころか 加賀も玲奈もターゲットじゃなかったから生きているだけで
下手をすれば巻き込まれて 死んでいたかもしれない
「他に何を知ってる?」 勝田が凄んだ
「後は殆ど知らないんです でも県警の上には話しが行ってんじゃないですか?」
警察が縦割り組織だと言っても ある程度公安から話しが行っているだろう
もし そうでなければ これがリークになってもいい という加賀の反抗でもあった
自分たちを囮に張琳を炙り出すなら それくらいのささやかな抵抗は 甘んじて受けろ
山木には多少泣いてもらうこともあるかもしれないが そうなったら警察庁に垂れ込んでやる
「本当だな?」
「本当です 誰がその女を使ったのか ボクが聞いた時点ではわかってないようでした」
「クソっ! 上に聞いてみるぜ 他になんかわかったら教えろよ!
でねーと 事情聴取で広島に呼ぶぜ」
「明後日くらいには また行きますけどね」
「はぁ? おまえ 本当にふざけてんのか? 何のために来るんだよ?」
「ちょっと用事がありまして 車で行きますから 広島に入ったら迎えに来てくださいよ」
「舐めんなコラッ! 岡山まで来たら電話しろ! ぶち込む用意しとくぜ」
「お願いします 詳しくは公安に あっ とぼけたら サッチョウが動いてるって
言えばいいですよ」
「おまえって奴は...」
勝田は呆れたようだったが こちらがのっぴきならない状況にあることも
なんとなく感づいているようだ
「気をつけて来いよ」 そう言うと勝田は電話を切った
これで 公安の見えない護衛と広島県警の監視を手に入れた
まぁ 無いものと思って行動しないと いなかった時に痛い目に会うどころじゃないが
朝8時半になるとレンタカーを借りに出かけた
愛車のイノチェンティ90は 大きな故障をしたことはなかったが
流石に広島までの長距離となると 無事に行けるか自信が持てない
電車で秋葉原に行き そこから歩いて電話予約した店まで行くと
車は既に店頭に止めてあった
現行S130の一つ前の型の 76年式フェアレディZだ
速い車としては申し分なかったが 色が赤しかないと言われた
目立ち過ぎだが仕方が無い
キーを捻ると惚れ惚れとするエンジン音が響く
たまにこういう車も悪くない
待ち合わせの時間にはまだ小一時間あったので 少し走って車に慣れることにした
やっぱ加速が違うね そんなことを思いながらバックミラーを確認する
特に追尾してくる車は無いように思えたが 一応適当に右折左折を繰り返した
里保には 国鉄水道橋駅側の外堀通り沿いで待つように言ってある
水道橋交差点を越え 少し行くとハザードを出して車道脇に車を寄せた
後続車を確認し 車を降りて歩道を見渡すと 30m程離れたところに
こちらを見つけて手を振る里保がいた
白シャツにジーンズ 左手には黒のレザージャケットを持っている
右手でスーツケースを引っ張って キャスターをゴロゴロ言わせながら
赤い車の傍まで駆け寄った
「おはよう! カッコイイ車ね」 里保が嬉しそうに言った
81
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:41:25
「おはよう! 派手で目立つけどね 荷物はここに入れて」
リアの扉を跳ね上げると シートの後ろにスーツケースを入れた
加賀のカバンもあるので 意外と広いスペースも一杯になる
「じゃあ 行こうか?」
「ロングドライブだね 運転気をつけて」
加賀は買ってあった缶コーヒーを里保に渡した
「ありがと」
里保は目を細くして微笑んだ
西神田から入って都心環状線を進む
三宅坂を過ぎると警視庁の方向を見ながら加賀は思った
ちゃんとついて来て 大事な時は出て来てくれよ
谷町ジャンクションで3号渋谷線に入る
5速MT車だがどうってことはない 車は快調だ
「長旅だから 寝たい時はいつでも気にせず寝ていいよ」
加賀はエンジン音が鳴り響く中 里保に言った
「私 車で広島に帰るのは初めて」
「ボクだって 富士山の近くまで行ったことがあるくらいさ」
「大丈夫?」 里保が目を見開いて加賀を見た
「たぶん」
「えー?」 里保が笑った
先程からバックミラーでチラチラ後ろを見ているが
付いてくる車はいないように見える
意外と拍子抜けするくらいにあっさり 広島まで行けるかもな
一応予定としては 夜になるまで大阪に着けたらと考えていた
500km弱か... 先は長い ゆっくりと安全運転しよう
用賀を過ぎ東名高速に入った 交通量は多いがまだ苦痛ではない
「ねー 昨日やった ブレイクダンスっていうの? アレって凄いね」
「うん ブレイキンはだいたい黒人やヒスパニック中心に盛り上がってるんだけど
私も初めて見た時 目を丸くしたわ」
「あの技みたいなのが他にもあるの?」
「そうね ウィンドミルはパワームーブの一つだけど 本来は
立った状態からリズムに乗って いろんなステップ踏んだりした流れで
あれをやったりするの」
「へー 見てみたいな」
「私も 面白くって見よう見まねで ちょっとやってみただけだから
上手く踊れないけどね ちょうど派手なウィンドミルだけ少し前まで
練習してたから 昨日思わず流れで出ちゃって 自分でもビックリした」
「でも それが良かったんだよ 昨日のナイフの女は殺しのプロだったらしい」
「えっ...」 里保が目を見開いて加賀を見た
「ちょっと昨日 警察の知り合いから情報が入ってね」
「殺しのプロ... あんな女の子が?」
「うん あまり怖がらせたくはないんだけど 楽観し過ぎても危険だから」
「あの子 運転できるの?」
「わからない できない可能性は高いと思う でも後ろについてる
組織がいるから安心はできないよ」
「組織...」
「広島のね」
「...」 里保は考え込んでいた
「ニューヨークでは どんな生活してたの?」 加賀は話題を変えた
「ジャズダンスのスクールに通って 夜はやっぱりディスコね」 里保が笑った
「本当にダンスが好きなんだね」
「うん 小さい頃からやってるから」
「スクールってどんな感じ?」
「いろんなところからいろんな人が来てるの 白人黒人アジア人メキシコ人
ヨーロッパやカリブの島々の人まで みんなダンサーや俳優を夢見て来てるわ」
「行ってみてどう?」
「凄く刺激受けてる みんな働きながらとか必死なの 私も日本にいたら
中途半端に教えてもらってるものをそのままマネするだけで終わってたかもしれないけど
今は自分で表現することまで考えて 基礎を学んでるわ」
「充実してるんだね」
82
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:42:29
「そう 充実してるの だから... それが終わってしまいそうで 怖かった」
里保の声が小さくなった
「でも あなたに会って気持ちが固まったわ やっぱりケジメをつけなくちゃいけない
お父さんに会って 自分の道に進むってちゃんと言うの」
加賀は黙って頷いた
「ねー この車って速そうだし 人気あるんじゃないの? なんか加賀さん
カッコ良く見えるし」
「え? そう」 加賀は背筋を伸ばした
「でも 人気はあったんだけど この赤い車は半年前に連続殺人事件で
使われた車でね」
「えっ?」
「ついでに今から入る日本坂トンネルは 一年前に大きな火災事故が起きてる」
「...」
加賀は余計なこと言っちゃったなぁと思いつつ 運転に集中しようと努める
「人間 いつ何が起こるかわからないものね」 トンネルを出ると
しばらく黙っていた里保が口を開いた
「そういうこと 注意を怠っちゃダメ」 バックミラーをチラ見した加賀は
2台後ろの黒いセダンが 追い越し車線に出てくるのを見た
グングンと迫り 横に並ぶとそのまま追い抜いて行く
黒いローレルの運転席にはワイシャツ姿の男が一人
思い過ごしか
人数 状況から考えて あの女の関係や公安ではなさそうだ
そろそろ一休みした方がいいな
流れ行く路肩の緑の看板を見ながら いつしか加賀は昨日のことを思い出していた
山木からの電話の後 少し遅い時間だったがミズキと飯窪に電話をした
山﨑の家に行った時点で ミズキへの報告はしなくてもよかったが
探りを入れるため ほぼ毎日電話をしている
ここ2・3日は 里保の友人関係を当たり 人を介して 里保と会えるように
説得しているという説明をしていた
ミズキは 急いでくださいと言ったものの 切迫感はあまり感じられなかった
飯窪からは もう帰るところだったと言われ もっと早い時間に連絡するように
注意された
里保に関しては ミズキへの説明と同じ話をしているが 山﨑会長の体調が
日に日に悪くなっているので できる限り早く里保を見つけて欲しいということだった
橋本が里保を襲わせていると考えるなら 橋本と繋がった飯窪が
里保を見つけて欲しいと言い続けるのは こちらを欺くポーズでしかない
何のため?
里保を亡きものにして相続を阻むのを 気取られないようにするためとしか思えない
しかし里保を排除したところで 橋本や飯窪に直接資産が回ってくることはないだろう
やはり長女さゆみと結婚を考えている西口ぐらいしか黒幕が浮かばないのだが...
里保の”優しい人”という西口評がひっかかっていた
優しさと野心は相容れるかもしれないし 打算の優しさも考えられるが...
車は愛知県に入った
外はすっかり暗くなり7時を回っている
そろそろ帰ろうとしていた飯窪は 加賀からの電話で山﨑の家に引き止められた
「もっと早く連絡してくれないと もう帰るところだったわ」
飯窪が注意すると 加賀は気をつけますと言った
学生気分でいるんじゃないかしら?
飯窪は ルックスは悪くはないものの 男を感じさせない加賀を ガキっぽいと思った
人を介して里保と会えるように説得しているという話だったが
一昨日からあまり進展していないように思える
山﨑が日に日に容態悪化しているから 急ぐように発破をかけた
電話を切ると 西条駅周辺のホテルに向かった
8時前にチェックインできたので ヨシとしよう
フロントで飯窪秋奈の名を記す
5Fのダブルの部屋に入り 電話を一本かけるとシャワーを浴びた
痩せた薄い体だが それが逆に 細い脚が伸びる丸みを帯びた腰周りの色気を強調していた
濡れた黒く長い髪も艶めかしい
部屋着を羽織り 髪を乾かしているとドアがノックされた
83
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:43:40
秋奈が招き入れたのは橋本だった
「仁 待ってたわ」
橋本はレザージャケットを椅子にかけると 白のTシャツにレザーパンツ姿で
ダブルのベッドに腰かけた
秋奈が自分から唇を重ね 橋本の首に細い腕を巻き付ける
橋本は秋奈を一旦脇にやり 体を折ってブーツを脱ぐとベッドに仰向けになった
待ちきれないとばかり 秋奈がレザーパンツを脱がしにかかる
トランクスが見えると 上からなぞるそうに掌を滑らした
「アレ? 大人しいのね 疲れてるの?」 下着をずり下し ペニスを愛撫し始める
少しずつ芯が入ったように 屹立してくると ぬめりの出て来た亀頭を口に含んだ
真っ直ぐに咥えたり 竿の横を舐めたりする
橋本は力を抜いて天井を見ていたが 秋奈の肩を押して止めさせると 部屋着を脱がした
ベッドに手を付いて後ろを向かせ そそり立ったペニスを 秋奈の脚を広げて埋めて行く
もう既にヌルヌルに濡れ 準備は整っていた
ジュプっ ブチュ そんな音を立てながら 前後に動かすと 秋奈は体をよじって
くぐもった声を漏らす
「ああっ いいわ あん.. あっ..」
橋本はハート型に突き出た 白い尻を掴むとペニスがもっと深く刺さるように
左右に押し広げた
その時 またドアがノックされた
橋本は動きを止めるとペニスを抜き取り 秋奈の尻をペシっと叩いて 「待ってろ」と言った
ドアを開ける音がして橋本が戻って来ると 後ろにハンサムだが どこか野蛮そうな
痩せた男が付いて来た
「誰?」 秋奈がシーツを引き寄せ 体を隠す
「兄貴 早すぎたんじゃねーの?」 痩せた男が言った
「いや 時間通りだ」 橋本はそう言うと シーツを剥ぎ取り
ほらッケツ向けろと 秋奈の太ももを叩いた
「イヤっ 見てるし」
「見せてやれよ おまえの綺麗な体を」
橋本は尻を上げさせ 再び秋奈に入って行く
痩せた男は反対側に回って 秋奈の顔の前に立った
「じゃあ お口がヒマそうなんで 仕事してもおうか」
「あっ 誰が.. あんっ あんたなんかに!」 突かれながら秋奈が反発した
「オレ いい仕事するよ? きっと姉ちゃんも後で もっとちょうだいって言うから」
痩せ男がニヤニヤしている
「あんまりジラすと そいつ暴れるぞ なにしろ狂犬って言われてるからな な ハルオ!」
後ろから橋本が言った
ハルオは自分でベルトを外すと 黒の薄いスラックスと一緒にトランクスを下げる
目の前に 15cmくらいのペニスがぶらんと垂れ下がった
カリ首には真珠が4つ程見える
秋奈は初めてそんなペニスを見た
ハルオが 口元までペニスを近づけた
秋奈は顔を背けたが 頭を掴み ペニスを押し付けて来る
「ほら 口開けなよ 美味しいぜ?」
秋奈はハルオみたいな軽い男が大嫌いだったが その男に無理矢理咥えさせられる
自分が悔しくて みじめに思えた
と同時に 橋本に突かれる快感とない交ぜになって いやらしい興奮が湧き起る
ハルオのペニスは口に含むと 突然膨張を始め 首が上に持っていかれるくらい
反り返ると口の中をいっぱいにした
その状態で ハルオはペニスを前後し始めた
柔らかな肉の塊と真珠の硬さが 口の中を摩擦する
秋奈は呼吸が苦しくなりながら 堕ちて行く快楽にクラクラしていた
橋本のピストンが激しくなり始める
秋奈の腰を掴む力が強くなり 搾り出すように突き入れたまま固まると果てた
秋奈も力が入り 口からハルオのペニスが外れ 甲高い声を上げた
「兄貴 中に出して大丈夫なんすか?」
「こいつは 安全日になるとしたくなる女だから」 橋本はそう言いながら
レザーパンツを履き始めた
秋奈の股間から生温かいものが ツーっと流れ落ちる
「アーン 出て来ちゃう」 思わず秋奈が声を上げた
84
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:44:56
「しっかし兄貴 あそこまでやるとは思わなかったよ」
「なんだ? ビビってんのか?」
「いや そういうわけじゃないけど」
「金は出せたんだろ?」
「ああ 真里から金庫の番号聞きだして 午前中に抜いといたよ」
「自分の組の姉さん捕まえて 呼び捨てだぜ?」 橋本が笑いながら秋奈に言った
「あいつ小柄だから いろんな体位できるんだよ
ひぃひぃ言いやがって いいわ〜 ウチの人より全然イイッ! だって」
「今度は あいつ呼ばわりかよ ヒデーなおまえ」 全然酷くない風に橋本が言う
「あいつも別れたがってたから ちょうど良かったよ 兄貴 あれ誰がやったんだ?
岸本なんて真面目だから おやっさんとカシラ殺った奴探して仇取りましょう とか言ってるよ」
ハルオが笑う
「ちょっと 拾いものがあってな テストしたんだ
おまえはもう少し隠れてろ まぁ 見つかっても アリバイあるんだろ?」
「ああ グレイスで2人相手してたから」
「おまえ 本当絶倫だな」 橋本が呆れた
「まぁ 岸本もそんな感じなら サツもわかんねーだろ
殺った奴は外人だから 足つかねーし もし事情聴取されても
おまえは知らねーで通してりゃ大丈夫だ」 ブーツを履きながら橋本が言った
「あー スッキリしたよ あいつらオレを拾ってやった扱いで
糞みてーな シノギばっか回しやがって ざまぁみさらせ!」
「俺はもう行くから おまえは もうちょっとそいつを天国に連れてってやれよ」
橋本はそう言うと部屋を出て行った
「私 帰る!」 秋奈はそう言うとシーツで体を隠し 服を着に行こうとした
「まぁまぁ 兄貴もああ言ってただろ? 天国に連れてってやるよ」
ハルオは秋奈をベッドに押し倒し 腕を払いのけて薄い胸に舌を這わせる
「おっ 乳首がピンピンに立って来たぜ」
ハルオがジュルジュルと音を立てて舐めながらそう言うと 体が急速に熱くなり始める
秋奈は抵抗し続けていたが 舌があそこにまで下りてくると快楽に身を委ねた
「いやっ ダメ! あぁん」
「それじゃ 行くぜ」
ハルオが正常位でペニスを突き立てると 身をよじって歓喜に震えた
大きな肉棒の圧力と点当たりで膣壁を擦る真珠が秋奈を狂わせる
「ああっ! あんあん イイっ ああん!」
抑えようとすればするほど 声が漏れ出て秋奈は我を忘れた
反り返りの強いペニスが 前後する度にえぐるように潜って行く
若い男のたぎりを味わった秋奈は 仁以上に体がハルオを求めているように感じた
ハルオは何度も何度も秋奈を求め 秋奈も次々と来る快感に 頭がおかしくなりそうだった
橋本はホテルを出ると 波浪企画に戻った
夜の10時前では もう会社に人影はない
名目上の社長ではあったが 実作業は真面目な奴らに殆ど任せていた
橋本は専ら 腕っぷしの強い奴を街で集めては 使えるかどうか試し
そういう舎弟と共に 波浪興産の敵を潰して回っている
電話が鳴った
「橋本だ」
「社長 竹内です 夕方から何度か電話してたんですが」
「おぅ 悪かったな 終わったか?」
「それが.. 失敗しました」
「そうか」
「チャン・リンは狙ったんですが 邪魔が入って」
「まぁいい 元々昼間に野外で簡単に殺れるとは思ってねーよ
チャン・リンを広島から出しときたかっただけだし サツは来てねーんだろうな?」
「来てないです チャン・リンは無事回収しました」
「おぅ それじゃ明日戻って来い」
「奴ら追っかけなくてもいいんですか? 中西興信所が張り付いてますが」
「チャン・リンを見たんなら 新幹線や電車では来ないだろう
車じゃ追っかけて狙うのも難しい 所構わずチャカ使うわけにもいかんしな
引き続き中西に見張らせて 近づいてからチャンスがあれば仕掛ける」
「わかりました」 電話が切れた
85
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:50:36
橋本はチャン・リンと出会った時のことを思い出していた
成田空港に野中を迎えに行く前日だった
野中は橋本が採用した実動部隊の人間で 英語が少し話せたため
今回の山﨑里保の件でニューヨークへ行かせていた
こちらのつてで手配したはずの 向こうのコーディネーターが機能せず
結局野中自身が里保を襲撃し 失敗に終わって帰って来ることになるのだが
事前に現地で上手く進んでいないと聞いていた橋本は 竹内と一緒に東京に出た
里保が戻って来た場合の追跡を依頼するため 渋谷にある中西興信所を訪ねる
竹内は元々渋谷・新宿辺りで遊んでいたチンピラだ
広島に流れ 流川界隈に居付いた竹内を 橋本が波浪企画に呼び込んだのだが
都内を案内させるため 連れて来た
「社長 今日はこれだけで終りですか?」 Tシャツにスカジャン ジーンズ姿の竹内が言った
「ああ 中西に写真を渡したし 明日からのことも依頼したから これで終わりだ」
橋本は 暑くないのか?と思いながら 竹内を見て答える
「だったらちょっとナンパでもして遊んで行きませんか?」
「バカヤロウ オレがナンパする年かよ?」
「そんなこと言わずに これがね ついて来る奴 結構いるんですよ」
竹内は久しぶりに来た古巣に 浮かれているようだった
道玄坂を上る 時刻は夕方の6時になるところだ
竹内は 通りを行く女を物色しては 「お姉ちゃん 何してんの? 遊ばない?」 と声をかける
橋本は少し遅れてついて行った
もう少し経ったら切り上げりゃいい 特に予定もないから それまではこいつを遊ばせておくか
そんなつもりだった
向こうに周りを恫喝しながら歩いてくる チンピラ風情の男がいる
明日以降のことを考えると ここでいちゃもんを付けられて 面倒を起こすわけにはいかなかった
「おい 竹内 行くぞ」 橋本は声をかけると方向を変え 角を何度か曲がる内に円山町に入った
適当に歩いていると デニムのジャケットを着て フードを被った小柄な女がゆっくりと歩いて来る
まだ幼さが残る整った白い顔をしているが 表情がない
「お姉ちゃん どこ行くの? ねぇねぇ」 竹内が声をかけるが全く反応を示さず通り過ぎて行く
辺りをグルっと回るとさっき見た風景に出くわした
「竹内 そろそろ戻るぞ」
「はい...」 竹内は残念そうに 今日は調子悪かったななどと呟いている
ふと 横の小路を見ると ラブホの入り口で さっきのデニムの女が 竹内と同類に
声をかけられていた
周りに人はいない
「一緒に遊ぼうぜ?」 男は女が反応を示さないところを見て 逆にラブホに引っ張り込もうと
腕を引いた
女がポケットに突っ込んだ手を引き抜いた瞬間 男は喉を掻き切られ 目を見開いて
血が噴出す喉を押えながら頽れた
女は無表情で そのまま倒れた男を見下ろす
橋本は走って倒れた男に近寄った
女は橋本を見たが 特に興味も無さそうだった
橋本はジャケットの胸元に忍ばせていたドスを取り出すと 助けてと声にならずに
口を動かす男の心臓に突き立てた
女が無表情のまま橋本を見る
「付いて来い」
女にそう言うと 歩き始めた
女が従う
竹内が「やばいですよ」と顔面蒼白で 走って橋本を追った
女と距離を置いて追い越すと 息を弾ませて橋本の傍まで来る
「社長 ヤバいっすよ どうすんすか?」
「誰も見てない 女と距離を取って 後ろを歩け 何もなかったようにしてるんだ」
それだけ言うと 橋本はそのまま特に急ぎもせず歩いた
角を曲がってしばらくすると キャーっという遠い声がした
ちょうど横にあるラブホに入る
女も付いて来た
橋本は竹内が追い付いて来たところで お前は今夜泊まるホテルへ先に行ってろと言った
「大丈夫だ 誰も見ていなかった 慌てず普通に歩いてれば問題ない」
そう言い聞かすと 竹内は何度も頷き 自分を落ち着かせようとした
竹内がいなくなると 橋本はここまでずっと無言で付いて来た女と部屋に入った
86
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:51:21
「おまえ 名前なんて言うんだ?」 橋本が聞いた
女は無表情のまま突っ立っている
「まぁいい 顔が汚れてるぞ 洗って来いよ」
返事をしないどころか 身じろぎ一つしなかった
この女 どこかイカれてんのか?
まぁいきなり人の喉掻っ切る奴はイカれてるわな
橋本は苦笑した
「来い」
手招きすると 女は傍まで来る
何故か 橋本は自分がこの女に切られることはない という自信があった
顔が汚れている あそこで洗え
橋本は自分の顔を拭い シャワールームを指さすと 顔を洗うジェスチャーを見せた
女はただ突っ立っている
しょーがねぇな
よく見ると女の髪に埃や土が付いている
橋本は デニムのジャケットに手をかけ 脱がせようとした
手を突っ込んでいるポケットは 右側だけ赤黒い染みが広がっている
右腕を持って引っこ抜くと 刃渡り15cm程のコンバットナイフが握られていた
ポケットどうなってんだ? 穴開いてんのか?
左手も引き抜き 背後からジャケットの襟を持ち上げると ようやく意図に気付いたのか
腕を上げて 脱ぐのに協力的になった
ジャケットの下は 無地の黒Tシャツ1枚だ
襷にナイフを入れるケースを吊るしていた
なるほど ポケットに穴を開けて ここにしまっていたのか
ケースを外してナイフをしまった
女は無表情で されるがままだったが ナイフをしまう時はジッと見ていた
黒のミニスカートを脱がす 白の下着を履いている
スカートを落としたまま動かなかったので 橋本が足首を掴んで
片脚ずつ持ち上げさせ スカートを取った
黒のTシャツをたくし上げると ブラジャー等下着は付けてなく
なだらかに盛り上がる 2つの綺麗な丘陵とその頂にあるピンクの乳首が現れた
肌が抜ける程白く キメ細かい
無表情な顔から20代だと思っていたが 体だけ見ると10代後半なのかもしれない
Tシャツ 黒のグローブ 靴と靴下 下着を脱がす 薄い柔らかな毛が少し生えていた
骨盤はそれほど張っていないが 女性らしい丸みを帯びた美しいラインが
くびれた腰から尻にかけて 形作られている
橋本は素っ裸の女を 肩を押してシャワールームへ連れて行き 一人残すと
ベッドに座り ガラス張りの中の様子を見ていた
女は また突っ立ったままで シャワーを出そうともしない
橋本は ため息を一つ付くと立ち上がり 自分も服を脱いでシャワールームに入った
一緒にシャワーを浴び 石鹸を泡立て体と顔を洗ってやる
女は目に水が入らないよう 瞼を閉じたりはしたが 表情は変わらず 声も出さない
胸や下半身を洗う時に 少し愛撫をしてみたが 何の反応もなかった
やっぱイカれてやがる しかも不感症だ
橋本はバスタオルで 女と自分の体を拭くと 裸のまま女をベッドに寝かし
隣に自分も横になった
しばらく無言で 2人して鏡の天井を見ていたが 橋本が女に覆い被さる
唇と舌を首筋から徐々に下して行った
女は目を開き 両手両足を真っ直ぐ投げ出したまま されるようにしている
乳首を口に含んだ 乳房を優しく掌で包んで形を変えて行く
反応はなかった
引き締まり 薄っすらと筋肉が浮いた 白く美しいヘソの周りに唇を這わせ
デルタ地帯へ向かう
先程綺麗に洗ったクリトリスを剥き 舐めた
体がビクッと少し動く
橋本は そこを可愛がり続けた
次第に 腕や脚が少しずつにじり動き始め 橋本の頭を両手で掴んだ
「う.. うぅ.. うん...」 初めて聞いた声は 幼くかわいらしい
更に続けていると ついに腰を浮かせ 体を仰け反らせて固まった
頭を掴んだ手に一瞬強く力が入ると その後一気に脱力した
87
:
かっちゃん
:2017/10/09(月) 04:52:49
橋本が頭を上げると女は目を閉じて余韻に浸っていた
顔から首にかけて白い肌が少し紅潮している
立ち上がり服を着ながら 女に脱いだ服を放り投げた
女は少しそのまま放心した後 ゆっくり体を起こすと服を着始めた
こいつのあの躊躇いのないナイフ捌きと冷静さは 何度も場数を踏んだ者しかできない
橋本は 女を一目で暗殺者の素養があると見抜き 使えると思った
暗殺者に必要な 余計な感情を持たない機械のような挙動には
処女を捨て 女になった時の気持ちの動きは邪魔だ
俺のモノだというマーキングだけで充分だった
服を身に付けた女を 強く抱きしめてやる
女は相変わらず突っ立ったままだったが 一瞬身じろぎした
体を離し目を見つめると 無表情ながらも見つめ返した
「おまえ 名前は?」 再び聞く
やはり答えない
口がきけないのではないかと思い 内線電話の前にあったメモ帳に 「名前?」と書く
女はゆっくりと 「張琳」と書いた
ちょうりん? チャン? 中国人か
「チャン・リン?」
橋本が尋ねると 女はゆっくりと頷いた
中国人か... こいつは俺にも風が吹いて来たな
この業界 どこの奴らも足の付かない暗殺者なんて いたら絶対傍に置いておきたい
香港マフィアか中国共産党か知らんが 落し物の届出が来るまでは 俺が使わせてもらう
橋本は片頬を歪ませた
「付いて来い」
部屋を出ると チャン・リンは橋本の後を一定の距離を保って従う
かわいい奴だ メシでも喰わせて 竹内と合流するか
渋谷駅まで戻るとタクシーを拾った
その後しばらくは 竹内にメシや寝場所の面倒を見させ
橋本はときどきチャン・リンを抱きしめてやった
相変わらず言葉は発しない 喋れないのだろう
無表情なのも変わらないが 橋本と竹内を相手にする時は 目を見つめ返した
東京から来た探偵稼業の奴らを脅してやれと 工藤に連絡を取った時
未だに潰れた和納組の三下を拾ってやったという態度で 使いっぱしりさせられていると
ボヤくのを聞いて閃いた
チャン・リンをテストしてみよう
工藤から組の連中が集まる日を聞き出すと 事前に取れるだけ八反の金を抜いて
おまえは集まりに顔を出すなと伝える
当日夕方 竹内と共にチャン・リンをワンボックスに乗せて連れ出すと
八反の事務所を指さし こぶしに立てた親指で 首を掻っ切る仕草を見せた
それで充分だった
竹内に用意させた雨ガッパを着させると 車から下す
一緒に下りた竹内は もう一度事務所を指して確認し 終わったら雨ガッパを捨て
傍で待ってる車まで戻って来いと言いながら 身振り手振りをした
チャン・リンがゆっくりと頷く
こうして八反組は壊滅した
予想以上に上手く行った
少女にも見える女がひょっこり現れても 組の奴らは誰もヒットマンとは思わない
ここで既に半数は行けると踏んでいたが 問題はその後だ
チャカを出して来たら どうするか?
竹内を車の外に出して 様子を見させていたが 結局銃声は一発しかしなかったようだ
帰って来たチャン・リンの黒のグローブと顔は 片栗粉のような白い粉がまぶされていた
ジャケットの左ポケットにでも入れていたのか?
なるほど 狭い室内での殺しは 問題なくこなせる
普段と同じ無表情で ゆっくりと歩いて帰って来たチャン・リンを見て 橋本は確信した
車に乗り込んだチャン・リンを 強く抱きしめる
竹内が言うには この時チャン・リンは 目を閉じて何か感じているようだったそうだ
レストランで食事をして帰った
チャン・リンはいつも通りサラダと少量の料理をつまんだが
竹内はいつもと違い 食が進まなかった
88
:
かっちゃん
:2017/10/22(日) 23:35:12
時刻は昼の2時前だった
加賀の運転するフェアレディZは岡崎ICを過ぎたところだ
「そろそろ昼ごはんにしようか?」
「うん お願い」
12時半くらいに牧之原SAでトイレに寄った時は 2人ともお腹が空いていなかったので
まだ食事をしていなかった
上郷SAに車を入れる
大型の長距離トラックがたくさん停まるトラックステーションを尻目に駐車場を進むと
ようやく見つけた空き区画に車を止めた
「結構込んでるね」
「うん あっ 飲食はあっちなんだ」
里保が示した先には歩道橋があった
本線を渡って行かなければならないみたいだ
「たぶん大丈夫な気はするけど 追っ手がいるかもしれない
ボクから離れないようにして」
里保は頷くと 辺りをキョロキョロと確かめた
飲食スペースに場所を取ると 少しの間 入り口と周辺を観察していた
追跡者がいるようには思えない
2人して 食べ物を選ぶ
どこかに気の焦りがあるのか 手っ取り早く天ぷらそばを頼むと 里保も同じものを頼んだ
「もし 次ここに来ることがあれば もっと美味しそうなもの じっくり選ぶよ」
里保が笑いながら言った
加賀も頷く
流石に4時間近く車に乗った後なので 2人とも無言でそばを啜る
「ちょっと事務所に電話するよ」
食器を片付けた後 そう言うと 里保は頷いて付いて来た
公衆電話に行く前に飲み物を2つ買い 2千円を小銭に崩す
赤いコーラの缶を里保に渡すと 嬉しそうに受け取った
里保には赤が似合う
受話器を持ち上げて硬貨を投入している横で 里保がコーラの
プルトップを引き千切り ゴクゴクと飲んでいる
「あーっ シュワシュワッ!」
美味しそうだった
3コールくらいで電話が繋がった
「はい 加賀調査事務所です」
「お疲れ様 玲奈 ありがとうね」
「うん ちょっと前に来たとこ カエデー今どこ?」
「愛知県の上郷サービスエリアでご飯食べたところ」
「何もなかった?」
「うん ここまでは大丈夫だったよ」
「里保さんはどんな感じ?」
「普通 元気だよ 事務所になんか電話あった?」
「今のところないよ ねー 何食べたの?」
「2人とも 天ぷらそば」
「あー 天そば いいなっ! 食べたい!」
「まだ2時だけど もうお腹空いたの?」
「だって 昼はサンドイッチちょっと食べただけだから 急いでここに来たんだぞ」
「あっ悪い悪い 流しの横に 緑のたぬきって言う カップラーメンあるから食べていいよ」
「緑のたぬき?」
「うん 最近見かけて買ったんだけど 天ぷらそばなんだぜ? 結構美味しいよ」
「え? 天ぷらそばのカップラーメンなの?」
「そう うどんで赤いきつねってあるじゃない あれのそばなの」
「へー そんなの出たんだ 食べたい 後でもらうね」
横で里保が 何の話をしてんだろう?と訝しげに見ている
「あっ それでは気をつけて 店番をしていたまえ」
硬貨の追加を促す何度目かの音が鳴った
「じゃあ もう切るから」
「うん カエデーも気をつけてね」
受話器を置いた
「結構重要な業務連絡してたようね」 里保がニヤニヤして言った
89
:
かっちゃん
:2017/10/22(日) 23:49:27
「さっき言ったけど 今日は大阪までのつもりだから あとちょっとだよ」
「うん なんかこのまま何もなく行けそうだね」
「そうね でも気を緩めちゃいけないよ じゃあトイレに行くけど」
「お先にどうぞ」 里保が掌を前に差し出して言った
トイレで何かあった場合は 大声を出して 前で待つ方に
知らせる取り決めにしていた
ズラっと小便器の列が続いていたが 入り口傍で用を足すことにする
人通りが多く 不審者が何かするにしてもし難いし 逃げ易い
表で里保に何かあった時も すぐに駆けつけられる
黒っぽいストライプスーツのスラックスのファスナーを下すと
すぐ隣に 小柄な男が立った
「ねー 加賀くん 困るんだよね ああいうことされると」
隣の男が自分の名前を呼んだので ギョっとした
思わず小便が止まる
横の男を見たが 全く見覚えがない
「こちらを見ない! そのうち体もこっちに向くと 悲惨なことになるからね」
「あなた誰ですか?」
「君は捜査情報を勝手に喋っていいと思ったのか?」
「え?」
色白な小男は黒のスーツを着ていたが センター分けした髪を一掴み 後ろで縛っていた
「おかげでこちらは 広島から突き上げられて めんどくさいことになったよ」
「公安?」
「声に出すのは良くないな 誰が聞いてるかわからないからね」
「あんたたち 影でこそこそ何やってんだ? チャン・リンはいつから泳がせてる?」
加賀は怒りで熱くなるのを感じた
「泳がせてる? 人聞きが悪いな 私たちはいつでも国家のために
全力で任務に当たっているよ」
「今だってボクらを囮にしてるんだろ?」
「若いのに尿の切れが悪いと 後が思いやられるぞ 私は桃永だ
覚えても もう一度会うことはないかもしれないがね お先に失礼」
そう言うと洗面台の方へ消えた
加賀は驚きと怒りで止めていた用を済ますと 急いで角を曲がって洗面台を見渡したが
桃永はいない
「クソっ! あいつちゃんと手を洗ったのか?」
水に濡れた手を振りながら 里保に小男がどちらに行ったか聞いた
里保は水しぶきがかからないように 体を遠ざける
「今出てった人なら 土産もの売り場の方へ行ったよ」
「ちょっ ちょっと待ってて 少しあっち見てくるから」
そう言うと加賀は土産もの売り場へ走った
奴に仲間がいるのか どんな車に乗るのか それだけでも見ておきたい
既に姿は無かった
すぐに外に出て駐車場を探すが見当たらない
一人にした里保に何かあるかもしれないため 諦めてトイレの前に戻った
「どうしたの?」
「あの男は公安だ」
「公安って?」
「キミを不用意に怖がらせたくなかったから まだ言ってないことがある
トイレに行って来て 車に戻ったら話すから」
里保がトイレから出て来ると キョロキョロと周りを確認しながら車へ戻った
「サービスエリアを出るまで 周りにあの男がいないか見てて」
そう言うとイグニッションキーを捻る
本線に出るともう一度バックミラーを見た
ファミリカーが付いて来るが それっぽい車はいない
「いなかったよ」 里保がこちらを見た
「まぁでも どこかで見てるんだろうな」
巡行速度に乗ると里保を一度見て話し始める
「さっき キミを狙った女がプロの殺し屋だと言ったけど 中国の軍の人間なんだ」
「え? なんで中国...」
「元々は中国の重要人物を 必要があれば襲う予定だったんだが いろいろ狂ったようで
ヤクザがあの女に命令するようになったらしい それを監視してる警察が公安だ」
90
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:03:33
「警察があの女を監視しているのなら安心じゃないの?」 里保がきょとんとして言った
「ところが そう簡単じゃないんだ 公安というところは国家や社会秩序の安全を
維持するのが優先で 場合によっちゃ個人の安全を後回しにしかねない」
「うそ?」
「今も殺し屋を捕まえる為に ボクらを囮にしている可能性が高い」
「そんなこと許されるの?」
「相手が元々は 中国という国家が差し向けた人間だからね 勝手に日本で
犯罪を起こしても それが元で騒ぎが大きくなると外交問題に成りかねない
デリケートなのさ」
「あてにならないってことね」
「まぁ流石に いざと言う時は助けてくれるんじゃないか?とは思うけど
期待してはいけないな 寧ろ広島県警とか普通の警察の方が頼もしいよ
でも対処のスピードが遅いし キミや山﨑家は家のゴタゴタを公にしたくないんだろ?」
里保は黙って頷いた
「ところでなんで その公安が現れたの?」 少し間を置いて 里保が再び口を開いた
「そこなんだよ ボクが広島県警に殺し屋のことを漏らしたと怒っていたけど
まさか それだけ言いに来たとは思えない 自分たちが監視してるのを明確に
こちらへ知らせたかったのかもしれないが たいした意味も無いし それだけじゃないだろう」
「わからないね」
「うん あの桃永という男が何を狙っているのか まだわからない
ホテルに付いたら 警視庁の知り合いに 何か知らないか聞いてみるよ」
車は竜王ICを越えたところだった
外は曇り始め フロントガラスには雨粒が落ちて来ている
「玲奈さんは彼女なんでしょ?」 里保が唐突に聞いた
「え? まぁその 一応助手だけど」
「隠さなくたっていいじゃない」
「うん...」
「煮え切らないわね」 里保が意地悪く笑う
加賀は黙っていた
「そんなんじゃ嫌われるぞ! 男の子はちょっと強引なくらいがいいんだから」
「男の子って ボクもう26なんだけど...」
「ゴメンゴメン 加賀さん見てるとなんか年下みたくて 仕事じゃしっかりしてるように見えるのに」
「なんか女性には いつもそんな感じに見られてる気がする」
「女の子はワガママだからね 乱暴なのは嫌いなのに ちょっと危険な感じが欲しいとか」
「里保さんは 彼氏いるの?」
「え? そ それは関係ないでしょ?」
「えー なんでー? 人に聞いといてそれはないでしょう
アメリカ人のナイスガイがボーイフレンドよ!とか言ってよ」
「そう! アメリカ人のナイスガイの彼氏がいるわ!」
「絶対ウソ! 見栄張ってる!」
「ウソじゃないよ!」
「ウソ! じゃあどんな人か言ってみて」
「えっと フィラデルフィア出身のイタリア系白人で ボクシングやってて
垂れ目だけど眉毛が濃くて逞しいの!」
「それ ロッキー・バルボアじゃん!」
「アレ? バレた?」
「なんだよそれー」
「ダ ダンスのレッスンで忙しいのよ! 遊んでいるヒマなんてないの!」
「もう 彼氏もいない子に 男を教えられちゃったよ」
「悪かったですねー」
「なんなら ボクが彼氏になってあげようか?」
「え?」
車内に沈黙が流れる
加賀は悪ノリし過ぎたと反省した
「ゴメン ウソです ボクには玲奈がいるから」
「良かった... タイプじゃないし」
「え? 正直ちょっとショック」
二人は お互いの眉間に皺を寄せた顔を見合わせる
「バッカじゃないの」 里保が言うと二人は声を出して笑った
重い雲の切れ間から 明るい光が差していた
91
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:10:50
夕方5時過ぎに豊中ICで名神高速を下りた
もう少し距離を伸ばすこともできたが ホテルも押えてあるし
長距離ドライブに無理は禁物だ
「疲れたでしょ?」
「ちょっとね」 里保は首を回しながら言った
先程から何度も欠伸をかみ殺している
多賀SAで少しだけ給油していたが 明日に備えて適当なガソリンスタンドに入った
給油中車の外に出ると 雨上がりの肌寒い風が弱く吹いている
里保はレザーのジャケットを羽織った
「私たちを監視してる人たちも 高速下りたかな?」 里保が呟く
「たぶんね」
交通量の多い時間だ
加賀はノロノロと流れる車に視線を向けていたが 殺し屋も公安も関係のない
日常があるだけだった
けたたましい喋りと威勢のいいBGMを流した 今夜のプロレスの試合を宣伝する
ワンボックスが通り過ぎて行く
里保の黒髪が風になびいていた
切れ長な目が遠くを見ている
端正な横顔を見ていると 周囲の喧騒が消えて行く
里保がこちらを向いた
「どうしたの?」
「え? いや なんでもないよ」
この小柄な和風美人が ニューヨークでダンスを学び 命を狙われながらも
人生を切り開こうとしているのだから 世の中わからない
「44リッター満タン入りました!」 学生時代は陸上競技でもやっていたような
細身のハタチくらいの従業員が 威勢良く声を上げた
「じゃあ ちょっと早いけど ホテルにチェックインして 少し休んでから夕食に出かけようか」
「うん」
暗い灰色の雲の端から 赤い光が射し 里保の顔を車より赤く燃え上がらせる
加賀は美しさに息を呑んだ
ホテルに入るとしばらくロビーで宿泊客や通行人を観察した
とくに気になる人間はいない
チェックインしてセミダブルのベッドの部屋に入る
里保ははす向いの部屋だ
室内の電話から玲奈と連絡を取る
特に変わったことはなかった もう帰ると言った
福村ミズキに電話をし 近日なんらかの報告ができると また伝える
飯窪にも電話をしたが 不在だった
電話に出た山岸が 飯窪には珍しく 体調不良で休んだと言う
朝 牧野がハァハァと苦しそうに話す飯窪から 連絡を受けたそうだ
山岸には 明日また広島に行くと伝える
「お待ちしてます!」 彼女は明るい声で返した
次は警視庁に電話をかけ 山木を呼び出す 席を外していた
電話を終えるとスーツを脱ぎ すぐさまシャワーを浴びる
熱めの湯が 長時間の運転で固まった筋肉を解して行くようで 心地良かった
襲撃者も今日は完全に移動日だろうか?
安心はできないが そんな気がする
白シャツの上にこげ茶の長袖カットソー コーデュロイのパンツを履く
髪は洗いざらしで乾かしただけだ
うなじが隠れるくらいの長髪が 軽くウェーブがかっている
鏡を見ながら手グシで髪を整えていると
「ヨシ! 今日もカワイイぞ!」 という言葉が浮かんだ
山﨑さゆみが言ってるんだっけ? バカな自分に照れた
6時半に里保と待ち合わせをしている
もうそろそろだ
ラッセルモカシンを履いてドアを開けると ちょうど里保も出て来たところだった
「ジャスト タイミンッ!」 加賀が里保を指差し そう言うと
発音悪いね と里保が笑って返した
相変わらず 当たりがキツイぜ!
92
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:14:41
里保はジーンズはそのままに ボーダーカットソーの上に茶系ニットカーディガンを
羽織っている
ホテルを出て少し歩くと ステーキハウスに入った
アメリカでの食生活の話を聞きながら 食事をする
赤ワインを飲んだ
里保は成人したばかりだが それなりに飲めるようだ
少し頬が赤くなり 口が軽くなる
すっかり命を狙われていることなど忘れたように 二人は会話を楽しんだ
結局 まだ本当に怖い思いをしていなかったと言える
「ねぇ もしもよ もし 私が加賀さんと付き合ったら どこに連れてってくれる?」
「うーん 秋葉原かな?」
「秋葉原? 何すんの?」
「えー ラジオ会館で電子パーツ見たり」
「はぁ? バカじゃないの?」
「あっ! バカって言ったな」
「加賀さん 女の子わかってない!」
「いや 面白いんだよ ダイオードとか トランジスタとか いろんな形の部品が
山盛りになってて」
「もっとロマンティックな所行こうよ」
「ロマンティックって?」
「夜景の素敵な所に出かけたり」
「夜景? 石丸電気とかロケットのネオンが綺麗だけどなー 秋葉原」
「港から大きな船が見えたり」
「船? 鉄道模型ほどじゃないけど 船の模型もあるよ」
「ワザと言ってない?」
「バレた?」
「喧嘩売ってんの?」
「いやー ロマンティックとか言われると なんか反発したくなっちゃって」
「子供みたい」
「子供ようなピュアなハートなのさ」
「...せっかく 加賀さんって素敵な人だなって思い始めてたのに こんな人だったなんて」
アレ? この展開... 玲奈と一緒だ
と言うか ボクが幼稚なのか... 加賀は愕然とした
「ごめん ボクが悪かった... もう少し大人になるよ」
里保の少し赤い目をまっすぐ見つめた
里保もしばらく見つめ返していたが 酔ったせいなのか赤い顔をして目をそらした
「ちょっとクラクラして来たから もうホテルに戻らない?」
「そうしようか 大丈夫?」
フラフラする里保の腕を掴みつつ 勘定を済ませホテルに戻った
加賀は部屋着に着替えてベッドに転がると あっと言う間に眠りに引き込まれた
電気スタンドの暗い光の外に誰か立っている影が見える
「誰?」
「加賀さん 怖くて眠れないの」
「里保さん?」
赤いTシャツ姿の里保がいた
目が潤んでいる
加賀は体を起こしベッドに座った
「どうしたの?」
「一緒に寝てくれる?」
「え?」
そう言うと里保は赤いTシャツを脱ぎ始め 白い下着姿になった
「どうしたの? それはダメでしょ!」
「いいの」
里保が近づいて来る
「...して」
「さっき ボクのことタイプじゃないって 言ったじゃない」
「あれはウソ 照れくさかったの」 後ろ手にブラのホックを外す カップが胸の上で浮いた
里保はそのまま加賀の上に被さり ベッドの上に押し倒す
「ちょっと...」 サラサラな黒い髪が加賀の上にかかり いい匂いがした
93
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:21:15
「アレ? 最近これと似たことが... なんだっけなぁ?」
加賀は一所懸命思い出そうとした
「あかりだ!」
思い出せたことにスッキリした瞬間 里保はいなくなり
体の上には布団の感触があった
なんつー夢だ
ボクは里保さんのことを好きになったんだろうか?
カワイイとは思うが まだそこまで行っていない
第一玲奈がいるのに
無意識に溜まってんのかな?
その欲望が女性に見透かされているのではないかと不安になったが
考えてもどうしようもないと思うと もう一度色気のある夢を見れることを願って眠った
「おはよう!」 朝7時に里保の部屋をノックする
出て来た里保は既に着替えていた
「おはよー」
昨日の夢はまだ覚えていて 気まずいような照れ臭いような気分を感じながら
それを気取られまいと敢えて目を逸らさず 里保と向き合うようにした
「よく眠れた?」
「どうだろ? けっこういろんな夢を見て うつらうつらしてたから
眠れていないような気がする 加賀さんは?」
「え? あっ うん ボクは うん よく眠れたよ」
「うん? なんで今あわてたの?」
「なんでもない なんでもないよ ハハ」
里保は首をかしげる
加賀は目を逸らした先が 里保の胸だったことに気づいて また慌てて違う方を向いた
「な〜に? なんかおかしいよ 加賀さん! 大丈夫?」
「大丈夫! 大丈夫だって! まだ寝ぼけてるだけだよ」
「それならいいけど」
里保はそう言うと 加賀の腕を取って組もうとした
「うわっ!」 加賀は声をあげて後じさる
「何? やっぱりちょっとおかしいよ? なんか私を微妙に避けてるようだから
試しに腕組んでみようとしただけなのに」
「いや 避けてなんかないよ 突然でビックリしただけだから」
里保は意地悪くニヤニヤ笑って見ている
加賀はあり得ないのに 見透かされたような気がして カーッと体が熱くなるのを感じた
「ごはん ごはん! 朝メシ食べないと!」 里保の気を逸らそうと 大声で言う
エレベーターに乗って4階から1階へ下りる
乗客は加賀と里保の二人だけ
加賀は階数表示をずっと見上げていたが 隣で里保が面白いものを観察するように
うすら笑いでこちらを見ていることには気付いていた
いかん! 出鼻をくじかれた 立て直さなければ
エレベーターのドアが開く
「姫! どうぞ!」 加賀は入り口脇で片腕を外に向け 真顔でそう言った
里保が噴いた
「アハハハ! ...腹痛いっ 何この人っ アハハハ」
加賀は顔が真っ赤だった
「私も良くないけど 随分寝起きが悪いのね 早くちゃんと起きてよ」
里保は 加賀の胸を右手の甲で叩いた
ロビー横の喫茶コーナーに入ると 朝食バイキングになっていた
トレイに皿を乗せると 好きな料理を盛って行く
サラダと卵焼きとパンにバターとジャム コーヒーを揃えて席に着いた
里保もほぼ似たようなものだ
コーヒーを飲む
あまり酸味が強くなく飲み易い
「ヨシ! 目が覚めた」
加賀が突然喋ったので 里保はパンをモグモグ食べながら目を丸くした
オレンジジュースをストローで吸うと一息ついて口を開いた
「いよいよ広島ね!」
加賀は里保を見つめながら ゆっくりと大きく頷いた
94
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:25:47
竹内はベッドに座るチャンリンを見ていた
こんな体の小さな女の子がどうしてあんな恐ろしいことができるのだろう?
初めて出遭った時の殺人や 血だらけの雨ガッパで八反組から出て来た時のことを思い出す
今日は橋本からの指示で 新幹線に乗って東京から広島へ戻って来た
朝早く出たので まだ昼過ぎだ チャンリンは常に従順で 竹内の後に付いて来た
今は広島駅から4km程離れたマンションの 竹内の部屋にいる
部屋は波浪企画に入った時に 橋本が用意してくれたものだ
チャンリンを初めてここに連れて来てから かれこれ2週間以上になる
最初は 目の前で人を殺した人間を相手に おっかなびっくりしていた
トイレやシャワー ベッドを日本語と身振り手振りで教えると チャンリンはすぐに覚え
必要な時は自分で勝手に使った
一緒に部屋にいる時は チャンリンが一点を見つめてボーッっとしているか
ナイフの手入れをしているので 殆ど気を使うことはない
食事は 買って来たものを渡せば 選んで食べるし
声をかければ外食にも付き合うが 出歩きたくない時は そのままの状態で動かなかった
いつも サラダとわずかな肉を食べるだけで 主食とすべき炭水化物は殆ど口にしない
好きなものを食べても 暑さ寒さにも 常に感情を表さなかったが 竹内は気付いていた
橋本と会う時だけは 体から少し力が抜けることを
時間がある時は 竹内もチャンリンとコミュニケーションを取るように努めた
チャンリンの目の前で 自分を指差し 「タケ」と教える
興味無さそうに真っ直ぐ見つめ返しているだけだったが 何度か試みた
「竹内」は覚え難いだろうから 「タケ」と言ったが 本当はその呼び方が嫌いだった
これまでの人生 「タケ」と呼ぶ奴に禄な奴がいなかった
小学3年で母が家を出て行った後 しばらくしてやって来た継母 中学の時
イジメて来た奴ら 高校でドロップアウトする切っ掛けとなった上級生
新宿界隈でチンピラをしていた時の兄貴分 みんな竹内を遣いっぱしりのように扱い
嘲るように「タケ!」と呼んだ
兄貴分がヘマをして 一緒にエンコ詰めさせられそうになった時 竹内は広島に逃げ込んだ
実母が広島出身だったが詳しいことは知らなかったので 結局繁華街を
飲み歩き 都合のいい女を掴まえては 金をもらって凌いだ
流れ者のヒモは喧嘩もしょっちゅうだ
たいして強くはなかったが 逃げる要領は良かった
そんな時 橋本と出合う
殴られ蹴られ 防戦一方の竹内を救ってくれた
相手を容赦なく叩き潰した橋本は 竹内に酒をおごり
おまえのことは ちょくちょく見かけていたと言った
「名前なんつーんだ?」
「竹内」
「下は?」
「あきたけ」
「下もタケかよ? じゃあ竹内 おまえ 俺の下で仕事やんねぇか?」
それ以来橋本は 竹内に部屋を宛がい 会社の机で仕事をしたことはないが
橋本の指示で動くと 係長クラスの給料をくれた
竹内は橋本を恐ろしい人だと思っていたが 尊敬もしていた
橋本の助けになることなら なんでもやろうと思った
チャンリンがやって来た日 遅れて待ち合わせのホテルに来た橋本は
「この女 今日からおまえが面倒見ろ」と言った
「え? こいつ... 大丈夫ですか?」
「ああ こいつは中国人だ しかも殺しのプロだろう こんな繁華街を
ウロウロしてたんだ 面もサツに割れてないさ」
「でも...」
「大丈夫だって 俺の言うことは聞くから おまえが寝首掻かれないよう言っとくよ」
「はぁ」 竹内は困惑した
「チャンリンだ おまえの部屋に泊めろ メシも用意してやれ
そのうち仕事させるから体調管理しっかりやれよ それと こいつ喋れないから」
「喋れない? 日本語が?」
「いや 喋ること自体できない 目を見て身振り手振りで話せ あと 俺の女だから
手出すなよ」 橋本はニヤリと笑った
「もっとも 手ぇ出して 首掻っ切られても知らんがな」
タバコの煙をフッと吹き出すと 橋本は上目遣いで面白そうに竹内を眺めた
95
:
かっちゃん
:2017/10/23(月) 00:28:57
まだ チャンリンはベッドに座って窓の外をジッと見ていた
窓の外と言っても マンションの転落防止の柵のせいで その位置から見えるものは殆どない
竹内はチャンリンの心情を慮った
寂しくはないのだろうか? 人を殺すことを生業とすることに恐怖はないのだろうか?
おそらく家族も恋人もいないのだろう
情が移ったのか チャンリンがかわいそうだった
すぐ隣まで行き ベッドに腰を下した
チャンリンは特に反応しない
そのまま真っ直ぐ外を見ているだけだ
しばらく一緒になって柵と空のツートンを眺める
自分が物になって行く
物になって ただそこに置かれているだけなのだ
そんな気がした
電話が鳴る
竹内はビクっとした
隣を見るとチャンリンが変わらず 身じろぎ一つしないで座っている
立ち上がり電話に出た
「はい」
「あっ 竹内さんですか? 中西興信所の小野です」
「なんかあった?」
「加賀と山﨑里保は 車で東名高速に乗るのを確認しました そのまま真っ直ぐ行ってれば
時間的に愛知に入る頃です 一人付けてますが昨日言った通り 高速ではすぐに
相手に見つかるので 距離を取って追尾してますから 見失ってるかもしれません」
「しょうがないよ 出口で押えられればいいから」
「はい この後は名神で大阪か兵庫まで行くと思われます 行こうと思えば広島まで
一気に行けますが 暗くなりますし一泊するのではないかと思ってます」
「途中で見てんでしょ?」
「はい 赤いフェアレディーZを確認してます 吹田と尼崎のICが見えるように人を
置いてますので大丈夫です」
「じゃあ 何かあったらまた連絡してよ」
「わかりました」
おそらく 今日はもう出番はないな
ふーっと一息吐くと 竹内は橋本に電話を入れた
竹内が翌朝7時に目を覚ますと チャンリンはもう起きて着替えていた
橋本からは指示があるまで待機するように言われている
昨夜中西興信所から 加賀が豊中で名神を下りたという報告があった
下道で距離を伸ばされる可能性はあるが 吹田JCTで中国自動車道に
乗らなかったのなら おそらく豊中市内か近くで宿泊するのでは? という話だ
追尾が上手く行っていれば楽だが そうでなければ中国自動車道のどこかで
見張るしかない
そこは中西興信所に任せておくしかないので 次の連絡待ちだった
チャンリンにサラダを作ってやり 自分用にパンをトースターへ突っ込んだ
ハムを厚く切ってフライパンで焼くと チャンリンは小さなテーブルの自分の席に着く
さっき付けたテレビでは 八反組壊滅についてやっていた
3日前の事件はもう扱いがかなり小さい 未だ犯人はわからずと締めた
まぁ わからないだろうな ここにいるんだから
竹内はニヤリとした
朝食を食べ テレビを見ながら一服していると電話が鳴った
「おはようございます 中西興信所小野です」
「早いな なんかあった?」
「すみません 昨夜追尾の者が豊中で下りて 市内を流してたところ
偶然加賀の車を見つけたらしく 朝から追尾できます」
「おお! やるじゃん」
「吹田と尼崎で定点観測させてた者も配置し直します」
「そこんとこは任せるよ 岡山や最悪広島に入る時 どこにいるかわかればいいから」
「わかりました 引き続き加賀を追います」
「よろしく」
いよいよだな
竹内は右の拳で左の掌を叩くと ベッドに座るチャンリンを見た
96
:
かっちゃん
:2017/10/31(火) 05:05:46
加賀は中国池田ICから中国自動車道に乗った
ついさっきまで本降りだった雨も 今はパラパラ程度まで弱まっている
「久しぶりだなー 広島」 里保が呟いた
「ボクはこの10日間で3回目」
「ちょっとぉ せっかくの感動に水を差さないでよね」
「ごめん 無事にお父さんと会えるといいね」
「うん 久しぶりにちゃゆ姉やあかねにも会えるし」
「黒木さんの料理も食べられる」
「そうそう 黒木さんは和食全般美味しいけど 手羽先の甘辛煮みたいなのが絶品なの」
「へー 食べてみたいな」
「お母さんの所にも行かなきゃ」
「心配してたよ 流川にも何度かキミを探しに行ったって」
「お母さん... でもヨシ子先生はなんでそんな嘘付いたんだろう」
「多分ボクらの霍乱だね キミを狙っている誰かに脅されたんじゃないかな?」
「そっか...」
「ねー 話は変わるけど 波浪興産には西口さん以外 有力な後継者がいないの?」
「会社の話はそれほど詳しくはないんだけど 昔は父と一緒に会社を大きくした
寺田さんっていう番頭みたいな人がいたの」
「その人はどうしたの?」
「2・3年前かな 体を壊して隠居しちゃった その後は西口さんが有力という話だったわ」
「ふーん」
「他にも 堀内さんとか畠山さんとか経塚さんとか 社長の瀬戸さんとかいるんだけど
やっぱりちゃゆ姉とのこともあったし」
「そうか... その中で 里保さんが山﨑家の資産を受け継ぐことに難色を示す人っている?」
「さぁ...? 私はその気はないけど 西口さんと堀内さん以外はあまり知らないし」
「堀内さんって?」
「取締役の一人なんだけど いつも帽子被って 飄々としてる人」
「野心的?」
「全然 どっちかって言うと欲があまり無さそうな」
「会ったことあるのは 西口さんと堀内さんだけ?」
「経塚さんにも会ったことある」
「どんな人?」
「見た目は怖いと言うか 背が高くて威圧感のある人だけど 話してみると気さくな感じ」
「うーん」 加賀は言っていいものかどうか迷ったが
そろそろ本丸に近づいて来たこともあって 正直に言うことにした
「実は 里保さんを狙う指示を出してるのが 橋本さんのようなんだ」
「えっ?」
「あのナイフの殺し屋を差し向けたのも 多分そう」
「...どうして?」
「里保さんがいなくなることで 得することがあるんだろうね」
里保はしばらく考え込んでいたが 鋭い目付きで加賀を見て口を開いた
「加賀さんは いつから知ってたの?」
「3日前広島に行った時 先週の水曜に玲奈を襲ったヤクザが
橋本の指示で動いていたことがわかったんだ
昨日警視庁の知り合いと話したら あの殺し屋をバックアップしてるのは
多分波浪興産の周りにいる者だろうと言っていた」
里保は黙って聞いている
「まぁ 波浪興産の周りにいると言うのは キミが狙われたことによる推測だろうが
玲奈を襲わせた橋本が指示している 少なくとも関与していると考えるのが妥当だろうね」
里保は下を向いて一点を見つめていた
「疑心暗鬼にさせて悪いが それで西口さん始め 会社のお偉方について聞いてたんだよ」
「なんで...」
「欲は人を狂わせるのさ 飯窪さんは橋本と男女の関係だ いろんな情報を橋本に
流していると考えられる 状況から見て 橋本のバックには西口さんがいるんじゃないか?
これが今のところ ボクの正直な考えだよ」
里保は目を瞑り 右手で額を押えて悩んでいた
「そんなの! 山﨑の資産や会社が欲しければ 西口さんにあげるわ!
なんでそんなことするの?」 里保が苦しそうな声を絞り出した
「山﨑会長の思惑もあるからね...」
車は上月PAを過ぎ岡山へ入った
97
:
かっちゃん
:2017/11/06(月) 02:35:00
車で来てる里保達をどこで捕まえるかだ
橋本の中では一応のプランはできていた
山﨑家へ向かう山の道に入ったところで前後を塞ぐ
できればもう少し早く仕掛けたかったが 人目の付く昼間では
交通量が少なく必ず通るルートとしては あそこしか最適な所がない
ガキと変わらない女を殺るのは避けたかったが
山﨑直記が思ったよりも生き延びている以上仕方がなかった
山﨑直記の容態については飯窪から連絡が入るようになっている
昨日は飯窪が仕事を休んだせいで 細かい状況がわかっていない
飯窪は自分の部屋にも戻っていなかった
工藤の奴 どこの天国まで連れて行きやがった?
タバコの本数が増えていた 目の前のクリスタル灰皿が埋り掛けている
「竹内! 野中は何人連れてってるんだ?」
「田口と井上 2人です」
「笠原はどうした?」
「さっき電話したらまだ寝てたみたいで すぐこっちに来るように言っときました」
「ガキだからしょーがねぇか」
「すみません」
竹内はチャンリンを連れて 波浪企画の社長室にいた
中西興信所からの連絡待ちだ
橋本は社長の机に座って もの思いに耽っていたが
タバコの量を見れば 少しイラついているのがわかる
髪の長い 細身の若い女がドアを開けて入って来た
秘書とまでは言わないが 橋本が会社にいる間
身の回りの世話をしている 和田という事務員だ
黒のスーツに白いシャツ タイトスカートという没個性の装いが
逆に長い手足と美形の顔を際立たせている
「お茶をどうぞ」
橋本にお茶を出し 灰皿を新しいものと交換する
「おぅ」 橋本は今気付いたように和田を見上げると
腰の位置が高い和田の 小さめだがキュッと引き締まった尻を揉んだ
「止めてください」 拒んではいたが怒っているようには見えない
竹内は和田が橋本の愛人であることを知っていた
和田は読書や絵画鑑賞が好きという 見た目通りの大人しそうな女だったが
「ああいう女がスケベなんだよ 芸術的なセックスが好きだからな」 と
以前橋本が言ったことがある
「タケちゃんもお茶いる?」
「当たり前だろ」
「じゃあ あげる」
和田はガチャンと竹内の前にお茶を置くと チャンリンの前にはどうぞと
丁寧に置いていった
竹内は気にいらなかった
社長の愛人の傲慢さなのか 和田はいつの間にか竹内をタケちゃん呼ばわりし
からかうようになった
「チッ」 お茶を啜る
「熱っ」 危うく湯呑みを落としそうになる
前を見るとチャンリンが黙って橋本を見ている この部屋に入ってからずっとそうだ
竹内は橋本が和田の尻を揉んだ時 チャンリンがまばたきしたのを見逃さなかった
何人もの女と同時に付き合っている橋本を慕うチャンリンが かわいそうだった
橋本の前にある電話が鳴る
タバコを右手に 左手で受話器を持ち上げた
「橋本だ なんかあったか?」
右手のタバコを灰皿に押し付けた
「わかった 女は追わなくていい 戻って事務所を見張れ」
そう言うと受話器を置いた
「竹内! 加賀の女が動いた 笠原連れて捕まえて来い」
「え?」
「まだ来るまで時間がある 今9時だから1時くらいだろう」
いい牌が回って来た 引きがいいぜ 橋本はニヤリと笑った
98
:
かっちゃん
:2017/11/06(月) 02:36:13
加賀はトイレタイムで勝央SAに入った
豊中を出てからおよそ2時間
早朝に出ることも考えたが 交通量が多い方が何かと相手には不都合だろうと
8時過ぎにホテルを出ていたので 10時を回ったところだ
トイレを済まし自販機で買ったつぶつぶ入りジュースを飲む
「ブドウのつぶつぶって初めて飲んだ」 里保が缶をマジマジと見て言った
「美味しいよね ミカンのつぶつぶも美味しいけど」
「あれ 最後につぶつぶがたくさん残って出て来ないのがちょっと」
「それそれ! けっこうよく振って飲んでも絶対ひっかかって出て来ないよね?」
「もう ズズッて吸い込むのもカッコ悪いし それだけやっても出て来ないし」
「わかる でもブドウなら大丈夫そう」
二人とも味わいながら飲み干すと 公衆電話に向かった
警視庁にかけ 山木を呼び出す
「あっ 山木さん? 加賀です」
「おー加賀くん 今どこにいるんだ? 結局まだあの件に関わってるみたいだな」
「すみません ここまで来て降りれませんよ」
「そうか 気をつけろよ で 今どこだ?」
「広島に車で向かってます 今勝央SAです」
加賀は現在地を伝えるべきか迷ったが 公安にばれてるのなら 隠す意味もない
「そうか 勝央と言うと岡山か」
「はい」
「もう少しだな」
「はい 山木さん 電話したのはちょっと聞きたいことがあって」
「何だ?」
「公安に桃永という人はいますか?」
「ああ 外事二課 3係の係長だ」
「昨日ボクに声をかけて来ました こっちに来てるみたいですね」
「普段は係長クラスはあんまり出張ったりしないがな」
「なんかあったんですか?」
「チャン・リンだよ 中国共産党が動いてる」
「と 言いますと?」
「華国鋒の件がほぼ落ち着いたようで 後始末するのに何人かこちらへ回したらしい
一昨日チャン・リン達をバックアップしてたスパイが一人殺された
その時日本人の巻き添えが出てね」
「こっちも巻き添えですけど」
「すまんな それでチャン・リンがヤクザに飼われてるなら 奴らが無茶やって被害が
拡大する前に確保しようって話さ ヤクザも奴らも動いてて 東京で指揮してちゃ後手に回る
その場の状況判断が必要だから 係長登場ってわけ」
「なるほど とすると 俺たちが見てるから 余計なことはせず囮に徹しろってことですか?」
「ん まぁな そういうことだろう すまないとしか言えないが」
「これも 予定通りのリークですか?」
「...」
「山木さんを責める気はありませんよ」
「ウチもヤクザの方で少し関わってんでね 今広島とも連携して情報集めてる」
「もうすぐヤクザがボクらに仕掛けて来るはずです どこまでやってもらえるか
わかりませんが 囮は引き受けますので バックアップお願いしますよ」
「わかった 外事と広島にも言っておくよ 今日はできるだけ自分の席に張り付いているから
何かあったらすぐに連絡してくれ」
「そんな勝手に連絡係請け負っていいんですか?」
「こっちも乗りかかった船だよ 巻き込んだのはこっちだし
広島の動ける範囲を考えれば 公安とも連絡取れる私の方が適任だろう」
「助かります よろしくお願いしますね」
「ああ わかった そっちも気をつけてな」
電話を切った 硬貨追加係の里保が加賀の顔を見上げる
「ま ボクらの状況はあまり変わらないさ もう少しで広島だ 気をつけて行こう」
里保が頷いた
もういくつか電話をしておきたかった
里保に万札を渡し 好きなもの買っていいからお金を崩して来て と頼む
メモ帖に山木との電話を書き込んでいると里保が戻って来た 両手に赤いコーラを持っている
「もう炭酸飲めないよ!」 不平を言うと 里保がシュワシュワと言って 嬉しそうに缶を渡して来た
99
:
かっちゃん
:2017/11/06(月) 02:43:09
里保が緑の公衆電話に100円玉を投入する
福村ミズキに電話をした
「後でみーちゃんの声だけ聞かせて」 里保が言う
念には念を入れ山﨑直記に会うまでは里保の存在を隠しておきたかった
例え橋本が動いている状況があったとしても 情報を絞っておくことは重要だ
どこで秘密の暴露に繋がるかわからない
ミズキは外出中だった
「久しぶりに声が聞けると思ったのに」 里保が残念そうに言った
次いで山崎家に電話をした
「はい 山﨑です」 女の子が出た
山岸ではない 牧野だ
「牧野さん?」
「はい」
「この前会った加賀だけど」
「あー 加賀さん!」
「飯窪さんはいる?」
「それが昨日から休んでまして あっすみません ちょっと今忙しくて
申し訳ありませんが 電話切りますね また後でお願いします」
飯窪が二日続けて休んでいる 橋本の動きと関係があるのだろうか?
「飯窪さん 今日も休みだって そのせいか忙しいから また電話してくれって切られちゃった」
「父の容態を考えると こんな時に続けて休む人じゃないと思うんだけど」
「なんか持病でもあるとか」
「そんな話は聞いたことないなー」
「うーん 飯窪さんがいないと 山崎家はどうなるの?」
「飯窪さんの休みの日は 須藤さんが中心になって みんなで仕事を分担してやってると思う」
「そうか... 橋本と繋がってる飯窪さんがいなければ キミもお父さんに会い易いのかな?」
「どうなんだろ? 父が心配だわ 西口さんはいるかもしれないけど 加賀さんの話だと敵みたいだし」
「お父さんが病気で倒れてから 松原さんって言う弁護士がよく来てるらしいよ」
「そうなんだ!? 知らなかった」
「多分医者も毎日のように来てるはずだから...」
「...私がここまでグズグズしてたせいなのに 今更父の容態が心配とか言うのもおかしな話ね」
「無事に会えることを祈って急ごう」
「そうね」
「あと ウチの事務所に電話させて 昨日玲奈が 休講だから9時くらいに来るって言ってたんで」
「うん 二人の秘密の業務連絡はほどほどにね」
「え?」 プッシュボタンから顔を上げると 里保が微笑んでいた
調子が狂って違うボタンを押してしまい 受話器を一度おいて かけ直す
「はい 加賀調査事務所です」
明るくハキハキした女性の声だった
「え? 玲奈?」
「はい 加賀調査事務所です 何かご入用でしょうか?」
大人っぽい ちゃんとしたオペレーターみたいだ 玲奈じゃない
「誰?」
「お客様 調査のご用命でしたら まずお名前をお願い致します」
「え? ボクは加賀です! そこの事務所の所長!」
「あ? 楓! なんや最初からそう言うてや!」
「あかり? なんで?」
「なんでって 玲奈ちゃんの代わりや」
「え? 玲奈は?」
「やっぱり広島行くから 今日休みの私に電話番お願いっ言うて そっち行ったで」
「ええ? 本当に?」
「そうや」
「何時に行ったの?」
「8時半くらいやな」
「ったく 危ないから そこにいろって言ったのに あかりに言ってもしょうがないか
じゃああかり 悪いけど そのまま電話番お願いしていいか?」
「バイト代で部屋代無しな」
「ああ わかった わかったよ その代わり明日もな」
「オッケー!」 鼻歌を歌うようにあかりが答えると 電話は切れた
玲奈は直接山﨑の家に向かうつもりか? 嫌な予感がする
100
:
かっちゃん
:2017/11/12(日) 06:37:45
「玲奈が新幹線で広島に向かったらしい」 加賀が里保を見て言った
「え? 待ち合わせでもしてたの?」
「いや 今回はずっと留守番のはずだった おそらく一人で山﨑の家に行って
ボクらと落ち合うつもりなんだろう」
「良かったじゃん」 里保がニヤっとする
「良くないよ 玲奈は一度橋本の指示で連れ去られてるんだ 顔を知られてるから
また連れて行かれる可能性がある」
「それはマズいね」
「そうだ もう一件電話しなくちゃいけなかった」
里保が小銭を取り出した
「広島県警と話しとかなきゃ」
「あっ もしもし 捜査四課の勝田さんいますか? はい 加賀と申します 言えばわかりますから」
取次ぎの間 受話器の向こうの ざわざわと慌しい雰囲気が伝わってくる
「え? 打ち合わせ中? すみません急ぎなんです なんとかお願いできませんか?」
再びざわざわと聞こえ始めたと思ったら オルゴールの音に変わった
しばらくすると ゴソゴソ ゴンッ! と乱暴に受話器を取る音がした
「勝田だ 急ぎってなんだよ?」
「あっ 勝田さん 居て良かった 今高速で勝央まで来てるんですが
ちょっとお願いしたいことがありまして」
「勝央? 岡山か お願いの前にお前の目的を言え 洗いざらい言うんだ」
「人探しの仕事だったんですよ その人が見つかったんで クライアントの所へ連れて行くんです」
「人探し? 誰だそれは?」
「すみません まだ終わってないんで それは言えません」
「じゃあ それと八反壊滅との関係はなんだ? 公安からも情報は下りて来てるが
細かい指示ばかりで 概要がさっぱり掴めねぇ おまえなんか知ってんだろ?」
「八反を潰した殺し屋が広島のある会社に匿われています ボクらはそいつらに狙われてるんです」
「おまえ! そこまで知ってて なんで言わなかったんだ! どこだその会社は?」
「すみません これはまだ あくまでボクの推測の域なんで ハッキリと言えないんです」
「波浪企画なんだろ?」
「え?」
「石田さんが おまえがそこについて聞いて来たって教えてくれたよ
しかも今朝 警視庁からあった協力要請も 波浪企画に関してだ」
加賀は里保を見た
里保は 波浪について相手に突っ込まれていることを察知したようだ 任せると言った
「動きを見張っててください」 加賀はそれだけ言うと 咳払いをした
「あ? ああ 今出かけるさ それについての打ち合わせをしてたところだ 公安はどうしてんだ?」
「八反潰しの犯人を早く確保したいんで 躍起になってるそうですよ」
「おいおい またこっちはお下がりしか来ねぇのかよ」
「それで急ぎの件なんですが」
「おっ それがあったな」
「ウチの事務所の助手の女性が単独で広島に向かったんです 今朝8時半頃出たらしいんで
新幹線でおそらく昼の1時前後に着くと思うんですが 奴らに連れていかれないように
保護してもらえないでしょうか?」
「あぁ? 顔もわからないのに どうやって保護すんだよ?」
今から顔写真の手配は無理だ 公安も協力してくれるかどうかわからない
今はまだ波浪企画と山崎家を警察の前で近づけたくないから 玲奈を知っている人を
連れて来るのも難しい
「じゃあ 制服姿の警官をホームに何人か立たせておいてもらえるだけでもいいです」
「そんな権限ねぇよ あるかどうかもわからない誘拐なのに」
「高い確率で 奴らの誰かが来ると思います もし新幹線ホームで その誰かが
身長153cmのハタチ前後の女の子に声をかけたら 押えてもらえませんか?」
「上に言ってみるが 望み薄だぞ 波浪企画から出てった奴が 広島駅まで行くなら別だがな」
「お願いします」
「あと 知ってて言ってないことないか?」
「特にないと思いますが ボクらはこの後 三次まで行ってそこから 東広島市の方へ
向かいます 乗ってる車は赤いフェアレディZのレンタカーです」
「高速下りて375だな そっちのフォローは交機の知り合いに話してみるよ」
礼を言って電話を切ると 里保が心配そうに見ていた
「まぁ なるようになるよ もし玲奈が捕まったら こちらと連絡を取ろうとするはずだ
玲奈を人質にして ボクらを呼び寄せるために」
101
:
名無し募集中。。。
:2017/11/26(日) 06:19:56
OCNモーニングリポート
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1511628377/
102
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:27:29
なぜかコピペできない
103
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:32:13
加賀たちが勝央SAを出てから1時間余り経っていた 神郷PAを越え 広島県に入ろうとしている
加賀は玲奈のことが気になり 押し黙ったまま運転を続けていた
「やっぱり車で広島行くのは結構時間がかかるね」 里保が口を開いた
「建設中の山陽自動車道ができればもう少し早く行けるんだけど」
「そんなのができるんだ?」
「開通が再来年になるのかな? 今走ってる中国自動車道は中国地方の真ん中を
走ってる感じだけど 山陽自動車道は瀬戸内海側を走るから距離が短いんだ」
「ふ〜ん」
「この後ボクらは三次で高速を下りて 下道でキミの実家まで行くけど 調べたところ
50kmくらいかな? 結構山の中走るみたいだから1時間半程かかると思う」
「三次まではあとどれくらい?」
「こっちもあと50kmちょいだから 40分くらい?」
「じゃあ家に着くのは 1時半くらいかー」
「上手く行ってね キミの家に近づいたら ボクは地図と睨めっこになるから
もう少し時間がかかるかもね あっ でも地図見れる?」
「え? 見方わかんない」
「そうか まぁいいや あと2時間ちょっとだ その前に一回どこかで止めて 電話入れさせて」
「うん 玲奈さんが気になるのね」
「もし捕まっていれば 奴らが連絡してくるのは事務所だと思うから あかりに電話するよ」
「そのあかりさんって従業員?」
「いや ボクの従兄弟」
「ふーん 仕事一緒にやってんの?」
「ううん 彼女は普段大阪で なんて言うのかな? イベントの受付みたいな仕事やってて
9月から一ヶ月東京で仕事があるから ウチのビルの一部屋貸してんだ」
「ウチのビル?」
「あっ たいしたもんじゃなくて 実家が不動産屋やってるからさ おんぼろの雑居ビルを
一つもらって そこに事務所作って ボクも住んでんの」
「お金持ちじゃん」
「いやいや 波浪興産のお嬢様ほどじゃありませんよ」
少し気まずい沈黙があり 里保が話題を変えた
「玲奈さんとは いつ知り合ったの?」
「もう3年かな?」
「え? そしたら彼女が高校生くらいの時?」
「うん 仕事でテニスサークルに入ったんだけど そこで合ったんだ」
「へー そうなんだ デートとかどこに行くの? 秋葉原?」 里保が意地悪そうな目で聞いた
「いや 別にそんな付き合ってるってわけでもないような」
「えー? 知り合って3年なのにそれ?」
「えっ? どうして?」
「どうしてって 玲奈さん それでよく我慢してるね」
「なにが?」
「なにがって 玲奈さん見れば 加賀さん好きなのわかるし 加賀さんも玲奈さん好きなんでしょ?」
「...まぁ」
「だったら ちゃんとしてあげなよ」
「ちゃんとって何を?」
「もう! デートしたり いつまでも友達じゃなくて 恋人として扱いなさいってこと!」
「いや 今のままでもお互い いい感じだと思うんだけど」
「あーーもう 加賀さん! 女の子は絶対そんなの満足してないから!」
「そうなのかな?」
「ダメだこりゃ」
広島に近づくに従って 重い雲が千切れ千切れになって行き 青い晴天が顔を出していた
玲奈は新幹線の指定席で 間もなく広島に到着という車内放送を聞いた
動き回り易いように 着替えは持って来なかった
多分何日も東京に戻れないことはないだろう そうなればなったでその時考えればいい
ダンガリーシャツにベージュのチノパン 紺のローカットスニーカーというイデタチだ
加賀たちよりも早く山﨑家に着けるかどうかはわからなかったが 加賀の驚く顔を
思い浮べて 玲奈はほくそ笑んだ
「待ってろカエデー!」
座席から立ち上がって薄いオレンジのフェンディのショルダーバッグを肩にかけると
出口に向かうワイシャツ姿のサラリーマンの後ろに並んだ
104
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:34:03
5.5スレ目の
>>192
がどうしてもコピペできないので
飛ばして
>>103
を貼りました
105
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:35:59
新幹線のドアから出た玲奈は 出口へと向かう乗客の流れから外れてホームを見渡した
階段の下り口で鉄道公安官が2人 降車客に目を配っている
加賀に内緒で広島に来てしまった後ろめたさからか 玲奈は鉄道公安官に
呼び止められそうな気がして不安になった
後ろで降りた家族ずれが楽しそうに追い越して行く
玲奈はその家族と並んで歩き 子供に微笑むと 一緒に来たように見せかけた
階段を下り改札を出ると フーッと息を吐く
何やってんだろ私? 別に悪いことしてるわけじゃないのに
少し可笑しくなった玲奈は 天井から下がる表示板を見ながら出口を目指した
つい最近来たばかりなのに心細い
この前は加賀が隣にいたので安心していたのだろうか?
加賀のことばかり見ていたわけじゃないだろうが 見たことあるはずの駅の構内が
初めて見るような気がして来る
それでも外の景色が見えてくると あの時加賀とホームから見た広島の空と一緒だ!
と嬉しくなった
駅を出て タクシー乗り場を探す
様々な形の表示灯を屋根に載せた 黒や白のカラーリングの車が並ぶ一角は
すぐに見つかった
同じ目的の人の流れに乗って歩き始める
「横山さん?」
手前に止められた深緑の車の横に立っている男から声をかけられる
え? なんで私の名前を? それとも私じゃない横山さん?
玲奈は周りを見たが 誰もそれらしき人はいない
「横山さん 山﨑の遣いで迎えに来ました」
山﨑ということは 横山は私のことだ
「はい」
一応返事はしたものの 玲奈は立ち止まり 男をジーっと観察した
年は20代半ばくらい 背はそれほど高くないが 小男と言うほどでもない
色白の人懐っこい丸顔で微笑んでいる
薄い青のワイシャツに赤いネクタイとグレーのスラックス姿は 隣の車の色と合わさって
キザっぽく見える
「私 波浪興産の谷崎と言います」 男はそう言って名刺を出した
波浪興産 総務部主任の肩書きがあった
「先程 山﨑の家の飯窪さんから 横山さんを迎えに行って欲しいと連絡がありまして」
「飯窪さん? 何で私が広島来るの知ってるんですか?」
「朝そちらの事務所に電話した時に 聞いたそうですよ」
「そうですか」 カエデーにもバレてるかな? 口止めして来なかったことを悔やんだ
「いやー 山﨑の家が忙しい時は こうやって借り出されるんですよ
ほら 総務ってなんでも屋でしょ?」
「はぁ」 玲奈は頷いてはみたものの 総務と言う部署がどういう業務をするのか
よくわかっていなかった
「山﨑の家まで送りますので 後ろに乗ってください」
玲奈はいまひとつ釈然としなかったが タクシーに乗ったとしても 行き先が
波浪興産会長の山崎さんの家までくらいしか言えず 運転手がわからない時は
山﨑家に電話をして聞くつもりだったので ラッキーと思うことにした
「でも よく私が横山だってわかりましたね」 玲奈がドアを閉めながら言った
「飯窪さんから 背格好聞いてたので あと東京から来るお嬢様だから
すぐわかるって言われてて 実際見たらすぐわかりましたよ」
「またまたー ご冗談を」
「あっ ちょっと待ってください 飯窪さんから 一緒にあの人の甥っ子を拾って来るように
言われてまして 来た来た 笠原くん こっち!」
「えっ?」
玲奈がキョトンとしていると 体の大きなやんちゃそうな男の子が助手席に乗り込んで来た
「ども 笠原です」 男はニキビが目立つ顔をニタっとさせた
男臭い汗の臭いがする
「あのー」 玲奈は何かおかしさを感じ せっかく来てくださったのにすみませんが
下りますと言おうとしたが 笠原がドアを閉めるやいなや 車は急発進した
谷崎はアクセルを踏み込み 早々とギアをトップまで持って行くと
片手でネクタイを緩めながら 楽し気に言った
「まぁ楽にしてくださいよ まずはちょっと海の方へ散歩に行きますか」
106
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:37:00
橋本は宇品の外れで車を降りた
晴れてはいたが 海からの風が少し冷たい
錆びたトタンに囲まれた倉庫の裏の路地は ひっそりとしていた
チャンリンが助手席から静かに降りて来る
擦りガラスが上に嵌った 動きの悪いドアを開けると すぐ横にあるスイッチを入れた
ジーッという音を立てて 天井の蛍光灯が点く
薄暗い通路の脇には 埃にまみれたスコップや軍手 ロープが散乱していた
5m程歩くと 通路の壁と天井が無くなった
壁に付いた6つのスイッチを全部カチカチと入れる ガランとした空間が現れた
300坪 高さ6mくらいだろうか 片隅には乱雑に積み上げられたパレットと
ペンキが剥げ サビが見えているドラム缶がいくつか置いてある
橋本はひんやりした埃っぽい空気を感じ タバコに火を点けた
踵を返して通路に戻ると すぐ右のドアを開け 入り口脇のスイッチを入れる
そこは机が並べられた 8畳ほどの事務所になっていた
倉庫を見た後のせいか 天井が低く 狭く感じられる
奥の席まで行くと 合成皮革が破れ 中から黄色のスポンジがはみ出した椅子に どっかと腰を下した
チャンリンも近くまで歩いて来て 橋本をジッと見下ろす
「日本のメシは美味いか? 痩せ過ぎてたのが普通になって 綺麗になったな」
タバコの煙を吐き出し チャンリンを見て言った
チャンリンは 目を細めて微笑む橋本を見て 無表情ながら瞬きをした
机の上の電話がけたたましく鳴る
「はい ああ橋本だ そうだ 予定が変わったんでこっち来た おぅ おまえらも
予定変更だ こっちに来い ああ あ? いなくなった? おぅ ほっとけ ああ じゃあな」
里保たちを捕捉しに行った 野中からの電話だ
社長室へかかって来た電話には この事務所の電話番号を教えるようにしてある
山﨑の家の近くで待ち伏せするのは止め 野中たちをこちらに合流させることにした
一緒に行った田口が途中で消えたらしい 若いチンピラにはよくあることだ
今は構っている場合じゃない 次に街で見かけたら痛い教育をするだけだ
続けてベルが鳴る
「はい.. 工藤 おまえどこに居たんだ? あ? ったく 飯窪は? 早く山﨑のとこに戻すんだ
ああ もうすぐこの前おまえがやりそこなった女が来る フッ おまえに会いたくて
また広島に来たんだとよ ああ 場所わかるよな? あー じゃあ待ってるわ」
工藤からの電話だった この2日間飯窪とやりまくっていたらしい 好き者で離してくれないと言い訳をした
加賀の女を脅すのに 馴染みのある工藤を呼ぶことにする
竹内の丸顔よりは 充分恐怖を感じてくれるだろう 加賀を誘き寄せる道具立てはできた
受話器を取り 加賀調査事務所に電話する
「はい 加賀調査事務所です」 女が出た
「今から 電話番号を言う メモして 確実に加賀へ伝えろ
伝わらなければ たいへんなことになるぞ」
「どちら様ですか?」
「加賀に伝えればそれでわかる 余計なことはするな 早くしろ」
女は困惑していたが メモの用意ができましたと言った
電話番号を言うと 女が確認する 「それでいい 確実に伝えろ」 電話を切った
倉庫にオールキャストが揃ったら 里保を拘束する
加賀と女はその時次第だ 必要以上に梃子摺れば チャンリンに始末させる
タバコを灰皿に押し付けて消すと 橋本は椅子から腰を上げ チャンリンの目の前に立った
「また少し働いてもらうかもな」 そう言うとチャンリンを抱きしめた
チャンリンは目を閉じ そっと橋本の腰に手を回す
橋本は体を離すと チャンリンの目を見つめ 頬を撫でた
表のドアを乱暴に開ける音がした
「ここで待ってろ」 橋本は事務所を出て 入り口を見る
竹内がドアの外で振り返って指示しているのが見える
「社長 連れて来ました」 竹内が入って来ると 続いて笠原が女の腕を掴んでドアをくぐった
「痛い やめてよっ」 玲奈が腕を払いのけようとする
「早かったな そこのロープと事務所の椅子を倉庫持ってて 女を動けないように縛れ」
「はい おい笠原 あっちに連れてけ」 ロープを拾いながら竹内が言った
「もうすぐ野中たちも来る」
「待ち伏せは止めたんですか?」
「確実に加賀は来るだろう その女がいれば」 橋本がニヤリと笑った
107
:
かっちゃん
:2017/12/06(水) 23:38:47
加賀のフェアレディーZが三次ICを下り 国道375号に入って既に一時間以上経っていた
片側一車線の狭い道は山の合間を通っていて 鬱蒼とした木々に挟まれたかと思えば
開けて民家がちょぼちょぼとある景色の繰り返しだった
中国自動車道を下りた後 すぐ事務所に連絡を取ったが あかりは特に電話はないと言った
そろそろもう一度電話をしなくてはならない
標識に賀茂郡豊栄町と出ている 山﨑の家が近づいていた
「そろそろ電話しなくていいの?」 里保が聞いた
「さっきから大きめの施設を探してるんだけど あまり無くてね」
「その辺のお店で借りたら?」
「そういう所はピンクか赤の電話だから 10円玉だけなんだ 東京にかけるには
両替もしなくちゃならないしキツイ」
「そっか」
更に4km程走り福富町に入ると 農協を見つけた
黄色電話が設置してある ついでに窓口でお札を100円硬貨に両替した
時刻は一時半を回っていた 電話をかける
「はい 加賀調査事務所です」
「あっ ボク なんか連絡あった?」
「さっき 変な電話あったで 番号だけ言うて 楓に伝えればわかるって」
「やっぱりそうか! 番号言って!」
加賀は番号をメモ帖に書くと 「どうしたん?」と聞くあかりの電話を 「ありがと」と言って切った
今 あかりに玲奈のことを言うのは得策じゃない 説明に時間をかけている暇は無いし
下手に警察へ通報されたら 玲奈の命が危険に晒されるかもしれなかった
急いでメモした電話番号を回す 警察に連絡するかどうかは 相手の出方次第だ
「もしもし?」
「もしもし あんた誰?」 間延びした年輩の男の声がした 周りがうるさい パチンコ屋のようだ
「加賀と言いますが」
「あんたか じゃあ伝言言うよ」
「え? あなたが橋本さん?」
「あ? 違う違う オレは伝言頼まれただけだ じゃあ言うぞ 15時半まで広島港の
宇品旅客ターミナルまで来て欲しい 横山が山﨑を待っている わかった?」
「クソッ! え? どこですって?」
「宇品旅客ターミナルだよ フェリー乗り場だろ? わかった?」 男はそう言って電話を切った
「ハッタリかもしれないが玲奈が捕まった 15時半まで 広島港の宇品旅客ターミナルまで来いって」
「広島港に行くんなら あまり時間無いよ」 里保が言った
「待って待って キミが狙われてるんだよ このまま行っていいのか?」
「.. 時間が無いわ 行って」 里保が車に乗り込んだ
加賀も車に乗り込んでキーを回す 運転しながら何かいい手はないか 考えるつもりだった
倉庫の事務所には 橋本 竹内 チャンリン 笠原がいた
橋本は押し黙ったままタバコを吸っている
チャンリンは 竹内が座っていいよと言うとようやく腰を下し ずっと橋本を見ている
「竹内さん あの女 ちっこいけど おっぱいデカいっすよ」 笠原が嬉しそうに言う
「ロープで縛りながら 揉みましたよ ロープも食い込む食い込む」 ケケっと笑った
「本当おまえそればっかだな 歩くチンポかよ」
「男なら女好きなの当たり前じゃないっすか その子もカワイイし」 笠原がチャンリンを見て言った
「バカ! おまえ手出したら 社長に殺されっぞ」
「ふっ オレは殺さないけど チャンリンがおまえ殺すよ」 橋本が薄っすら笑う
「えー そんなおっかねーんすか?」
「おまえ チンポ切り落としてもらえ!」 竹内が言い放った
電話が鳴る 橋本はタバコを灰皿に押し付けて受話器を取った
「はい おぅ どうだ? そうか 伝わったようだな わかった おまえはもういいぞ お疲れ」 電話を切る
「中西興信所からだ 加賀が八本松の方を通って こっち方面へ向かったらしい」 橋本が竹内に言った
「3時になったら 笠原連れて 旅客ターミナルの前に行け 里保と加賀が確認できたら
ここへ連れてくるんだ」
倉庫入り口のドアが開く音がした 中背の真面目そうな顔をした30代の男と 20そこそこの
細面のハンサムが 事務所のドアを開けた
「社長 戻りました すみません田口が..」
「気にすんな それよりおまえら戻って来てすぐで悪いが 6時くらいまで南警察から
県立病院 御幸橋辺りを車で流して 警察がいつもより動いてないか見張っててくれ
何か気付いたら ここに電話しろ」 橋本が鋭い目付きで指示を出した
108
:
かっちゃん
:2018/01/04(木) 05:39:39
加賀の車は途中から国道2号線に乗り 広島市安芸区を走っていた
左右に山を見ながら 瀬野川に沿って進む
農協で電話をかけてから既に1時間経っていた
相手が指定した15時半まではあと40分ほどしかない
「間に合うか?」 加賀が険しい顔で言う
「結構ギリギリだと思う」 里保も眉間に皺を寄せている
ここまで二人は車内で 何度もこの先のことを確認し合った
加賀がここから先は警察に任せるべきでは? と提案するのに対して
里保は頑なに 自分を広島港に連れて行くように言った
「私は私の信じた道を行きたい でも そのために誰かが犠牲になるかもしれないなんて絶対に嫌!」
加賀も本心では 警察に任せたくは無かった
警察が動くのを待っていたら 時間がかかり過ぎる
相手に警察の動きを察知されれば 玲奈にどんな危険が降りかかるかわからない
覚悟を決めて突っ込むしかないのだが それでも里保の安全を考えるべきであり 何度も翻意を促した
最終的に本人の主張を尊重するというのは ボクの狡さだろうか?
加賀の胸の中にその問いと罪悪感が ずっともたれている
しかし もう時間が無い 里保を橋本の元に連れて行ってからの助かる道を模索すべきだ
相手は 宇品の旅客ターミナルで 警察の追尾の有無を確認するのだろう
そこで警察と連絡を取っていると思われれば もう二度と玲奈と会うことはできないかもしれない
しかし 自分たちのみでヤクザと殺し屋を相手に立ち回って 逃げることは不可能に近く
どこかで何らかの警察の助けは必要なのだ せめて公安が陰で見ててくれれば..
相手に取って里保の存在が邪魔なら 既に命を狙われていることから
すぐにではないにせよ いずれ殺されることは容易に想像できた
その時に 加賀と玲奈はどうなるのだろう?
事情を知っている二人が 無事解放されるとは考えづらかった
とは言え 相手は3人も手にかけるのだろうか?
答えはイエスだ 既に八反組の6人を殺している
警察に捕まった場合 実行犯のチャンリンに罪を全て背負わせるつもりかもしれないが
追加の加賀達3人だって 極悪非道なチャンリンがやったと言えるし そもそも3人を消して
捕まらなければいいだけだ
加賀と玲奈が助かるためには 里保も無事で切り抜けるしかなかった
ヒントは山﨑会長の命にある
会長と橋本との繋がりがまだわからず ハッキリしたことは言えないが
遺産を巡って このタイミングで起った策謀なら 会長が存命かどうかは
重要なポイントとなるはずだ
そこを読み間違えてはいけないと加賀は思った
瀬野川に架かる海田新橋を渡り 続いて猿猴川の黄金橋を渡る
猿猴の文字は 両方ともサルのことだが サルのように毛が生えたカッパの一種らしい
この川を帰りに跨ぐ時は 生き肝を抜かれた状態でないことを 加賀は祈った
マツダの工場の脇を走ると 宇品海岸は目と鼻の先だ
南警察署前を通る
自分たちに気付いて欲しい気持ちと 気付いて欲しくない気持ちが拮抗する
そのまま黄金山通りを進み 宇品通りに突き当たると 路面電車の軌道が現れた
V字に左折して 広電に沿って行く
加賀にとっては初めて運転する併用軌道のある道 里保にとっては懐かしい町並みの
はずだったが 二人は無言で前を見つめていた 時刻は15時15分だった
竹内は笠原を連れ 宇品旅客ターミナル前に車を停めた
「赤いフェアレディっすよね この辺 マツダ車ばっかだから すぐわかっるすよ」
笠原が窮屈そうに体を動かすと 脚をダッシュボードに上げようとした
「テメー 脚上げんな! 汚れっだろ!」 竹内が怒る
「俺も欲しいな フェアレディ 竹内さんも こんなカッコ悪いの止めて
スカイラインとか乗ればいいじゃないすか?」
「金ねーよ」
「でも なんか社長見てっと 近々大金が入りそうじゃないすか」
「そんな簡単じゃないんだよ」
竹内にはわかっていた 大金を掴むためには 人を殺さなければならないかもしれないことを
さっき 駅で捕まえて来た東京の女 あの娘も始末しなければならないのかも
社長を信じて付いて来たが それを考えると
このまま従っていていいのか? という疑問が湧き上がる
109
:
かっちゃん
:2018/01/04(木) 05:46:41
野中と井上 竹内と笠原がそれぞれ倉庫を出て行くと
事務所には橋本とチャンリンだけになった
「もうすぐ 金にはあまり困らなくなる そしたら俺は 日本を出て大きな仕事がしたい
付いて来るか?」 橋本が目を細めてチャンリンに言った
「ふっ わからないか まぁいい おまえが後に付いてくるようなら連れてってやる
東南アジア 南米 ビジネスパートナーは世界中にいる 忙しくなるぞ」
その時倉庫のドアが開く音がした
橋本は席を立ち上がり 懐に手を入れると 事務所のドアを開ける人間を見極めようとした
「兄貴 来たぜ」 黒のトレーナーに金の太いネックレスをぶら下げ
だぶついたグレーのジャージ下に サンダルを履いた細面の男が ドアを開けて入って来た
「工藤 遅いだろ」
「すんません あの女 離してくんなくて」
「飯窪は? ちゃんと山﨑の家に置いて来たか?」
「あっ? はい」 工藤は咥えていたタバコを下に落とすとサンダルで踏み消しながら言った
「ちょっと待ってろ」
橋本はそう言うと 山﨑家に電話をかける 話し中だった
ガシャンと黒電話の受話器を置く
「ちっ 山﨑が生きてるかどうかわかんねぇ」 橋本が呟く
「兄貴 女の趣味変わったんか?」 工藤がチャンリンに近づいて言った
「それ以上近づくな ノド裂かれるぞ」
「あん?」 工藤が眉根を寄せる
「八反を潰したのはそいつだ」
「ああ? 本当に? 嘘だろ?」 工藤は首を傾げてチャンリンの全身を眺めた
「普通のガキだぜ?」
「信じなくてもいいが そんときゃ おまえが死ぬだけだ」
沈黙があった
「倉庫の方に行ってみろ」 橋本が口を開く
工藤はポケットからハイライトと100円ライターを取り出すと タバコに火を付け
事務所を出て行った
「いよー 嬢ちゃん またおうたのぉ」
椅子に縛られた玲奈は 後ろから声が聞こえ 必死に首だけをそちらに向けて 顔を確認しようとした
口にはタオルで 猿ぐつわがされている
「俺のアレがよっぽど気に入ったんじゃろ?」
玲奈は声の主が工藤だとわかり 恐怖に固まった
「なんか 今度は好きにさせてもらえそうじゃけぇ 仲良くしようや」
工藤はそう言うと 玲奈の肩に手を置き そこから下に滑らせて
縛ったロープの間から突き出た胸を握った
「ううっ」 痛い!と言おうとしたが 口を塞がれているため 声にならない
玲奈は怖さに逃げ出そうと 体を揺すり ロープを解こうとするが 緩む気配もない
「まぁまぁ そう嫌がんなって 直に気持ちよくさせてやっからよぉ」
「ううーっ ううーっ!」 玲奈は必死に声を上げて助けを求めた
しかし どこかにこんなことをしても無駄 もうお終い という絶望感があった
「お楽しみはもうちょい後な」 橋本が出て来て 工藤に声をかけた
加賀の車は宇品旅客ターミナル前の通りをゆっくりと走っていた
時刻は15時25分 約束には間に合ったはずだ 相手がどう現れるのか?
ターミナルの建物と 隣のそれなりに埋っている駐車場を通り過ぎてしまい
Uターンして もう一度ゆっくりと流す
先程も停まっていた 対向車線の脇に路駐している深緑のルーチェが パッシングした
「あれだ」 加賀が呟くと 里保も前に乗り出して頷いた
男が二人乗っている 加賀は車をまたUターンさせ ルーチェの後ろに停めた
前の車の助手席が開き 身長180cm,以上はある ガタイのいい若い男が
加賀のところへやって来た
ウインドを下す
まだ十代に見える ニキビ面の荒っぽそうな男の子だった
「警察は付いて来てないだろうな?」 男が低い声で言う
「大丈夫だ 本当に横山がそちらにいるのか?」
男は無言で首を振り 付いて来いと促した 車から下りる
里保には 鍵を閉めて ここにいるように と言った
110
:
かっちゃん
:2018/01/04(木) 05:54:19
デカい男は 後ろに少し歩くと 電話ボックスに入る
加賀は付いて行きながら 辺りを見回した
向こうのターミナルには 荷物を手にいそいそと歩く人が何人か見える
隣には広電の停留場があり 3人が電車を待っていた
会話をしているおばさん達二人に 小柄なスーツ姿の男性
後ろ髪を一つに縛る珍しい格好をしている
電話ボックスのドアまで来ると 男が 「ほらっ」 と受話器を加賀に渡した
「うぅっ ハーーッ ハァハァ」
荒い息遣いが聞こえた
「玲奈?」
「ハァハァ カエデー? カエデー?」
「玲奈! 大丈夫か?」
「ごめん カエデー! 余計なことしてゴメン!」 泣き声で玲奈が謝る
「無事ならいいんだ! 今そこに行く」
「ごめんなさい..」 玲奈が泣きじゃくった 電話が切れる
「あの車の後ろに付いて来い 変なことはするな」 男はそう言うと 車に戻って行った
加賀も電話ボックスを出て車に戻る ターミナルを見ると 表を歩く人がいなくなっていた
広電の停留場も いつの間にか電車が来たのか 誰もいない
フェアレディの鍵を開けて 運転席に乗り込む
里保が心配そうな顔で見た
「やっぱり捕まってた でも今のところ大丈夫だ」 加賀はそう言って 里保に頷いて見せる
ルーチェが右ウインカーを出し ゆっくりと発進した
フェアレディもそれに続く
しばらく進むと大きな倉庫の間の小路に入って行き 何度か右折左折をした
目の前に白のセドリックと 黒のローレル4ドアハードトップが停まっていた
ルーチェがその後ろに停まる 加賀もフェアレディを停めた
「チャンスがあれば合図するから 逃げる時は死ぬ気で 後ろを振り返らずに逃げるんだ」
加賀は里保に言った
「うん」 里保の切れ長な目が 更に細く吊り上がる 二人は車を下りた
ルーチェからは先程のデカい男と 中肉中背の丸顔の男が車を下りて こちらを待っている
加賀と里保が並んで歩き始めると 二人の男も背を向け 先に進んだ
と ローレルの隣で丸顔の男が歩みを止める
窓から中の様子を伺い 助手席側に回るとドアを開け 「出て来て」 と呼びかけた
長い黒髪の細い女が ゆらりと立ち上がる
「飯窪さん?」 里保が呟いた
「え?」 加賀はその名前に驚き 目を凝らす 確かに飯窪だった
髪が顔にかかり ハッキリとはわからないが かなりやつれて見える
「なんで こんなところに..」 里保が言う
「橋本と関係があるから ここに居てもおかしくはないけど 様子が変だね」
加賀は もう少しよく見ようと 前との距離を詰めた
丸顔の男が手を貸し 飯窪を倉庫裏のドアに連れて行く
加賀と里保は デカい男に睨まれながら 後ろに付いて行った
「社長!」 丸顔の男が呼ぶ
奥から 青のポロシャツに金ネックレス 白の2タックスラックスに チゼルトゥの黒革靴姿の男が出て来た
40代後半か? スポーツをやっていそうな引き締まった体で 銀縁のメガネをしていたが
レンズの向こうの目付きは冷やかだった
社長と言うことは この男が橋本か! 加賀はようやく敵の顔を見れたと思った
「なんで ここに飯窪がいるんだ?」 橋本が眉間に皺を寄せて言う
「表のローレルの中にいました 面倒が起ると嫌なんで 連れて来ましたけど」
「チッ 工藤!」 橋本が振り返り 奥に向かって呼ぶ
「なんだよ 兄貴」 めんどくさそうに 奥から細面の喧嘩っぱやそうな男が現れた
「飯窪は 山﨑の家に帰したんじゃなかったのか?」
「ああ? こいつがここに来たいって言ったんじゃけ」
「工藤!」
「わかったって 後で 連れてく」
「飯窪 どうした?」 橋本が下を向く飯窪の髪をかき上げ 顔を覗き込んだ
何かに気付いた橋本は 飯窪の右腕を持ち上げて 長袖をまくり上げる
「工藤! てめぇ シャブ打ちやがったな!」
「ああん? 天国に連れてってやれって言ったのは 兄貴だろ?」
「馬鹿野郎! こいつが使えねーと 山﨑の様子がわかんねーだろうが!」
111
:
名無し募集中。。。
:2018/02/07(水) 22:11:18
てすてす
112
:
かっちゃん
:2018/06/03(日) 13:29:19
「うるせー! 知ったこっちゃねーよ」 工藤が怒鳴り返した
「ガキが! イキガってんじゃねーぞ!」 橋本が工藤の顔を殴った
工藤が後ろに飛ばされ 尻餅を付く
「ここまでのシナリオが台無しじゃねーか! 糞が!」 橋本は工藤に罵声を浴びせた
「ざけんなよ! 橋本ー!!」 殴られた頬を摩りながら 工藤がヨロヨロと立ち上がる
手には蛍光灯を反射して光る ピストルが握られていた
工藤を蹴り倒そうとしていた 橋本が立ち止まる
「おまえ.. やっぱり馬鹿だな.. 安全装置もねー銀ダラをどこに持ってたんだよ?」
「うるせー 兄貴づらしやがって.. 俺は誰の指図も受けねー」
パンッ! 乾いた破裂音が響いた 地面に向けた工藤の威嚇射撃だった
里保がビクっとする 加賀は体を翻し 里保を庇う
「いいか橋本! 俺に持ってる金を全部渡せ! でねーと撃つぞ!」
工藤がはぁはぁと息を弾ませながら言う
「おいおい こんなところに金があると思うか? そもそもテメーのおかげで大金がフイに
なっちまったんだぜ?」 橋本は目を細め 首を傾げて工藤を睨んだ
「だったら 金を集めろ! あるだけここに持って来い!」
「... 竹内 会社戻って金持って来い 金庫にある分全部だ」 橋本が傍らの竹内に言う
「え? 金庫って?」 竹内は目を見開いて橋本を見た
「和田に言え」 橋本はそう言って 行けというように 出口へ首を振って見せた
竹内はその時見た 橋本が右手の親指を立て 首をかっきる仕種をしていたことを
踵を返して 竹内が倉庫の出口へ向かおうとする
「テメー勝手に行くんじゃねぇ! おおっ」
背後からいつの間にか 音も無く近づいていたチャンリンが 腕を回して腹を刺し
前に体を折った工藤の喉を切り裂いた
工藤が頭から地面に落ちる
パンッ! 屑折れながら 地面に向かって引き金を引いた
甲虫の幼虫のように丸くなって倒れた工藤の周りに 血の水溜りが広がって行く
攻撃対象の最期を確認したチャンリンが ゆっくり視線を上げると 3m程先に立っていた
橋本が胸を押えて倒れて行った
「社長!」 倉庫を出て行こうとしていた竹内が 橋本に駆け寄る
チャンリンは呆然と橋本を見つめた
工藤の最後の一発が 跳弾となって橋本の胸に当たった
「馬鹿な奴だ.. 俺が海外に行ったら 奴に後を継がせるつもりだったのに..」
ふいごのような音を出しながら 橋本が呟いた 口の端で血の泡が弾ける
「社長!」 竹内がまた呼んだ
チャンリンは ヨロヨロと倒れた橋本に歩み寄り 紙のように白い顔で見下ろした
「桃永さん 今です!!」 加賀が叫んだ
「マルタイ 確保ー!」 どこからか声が飛ぶ
倉庫入り口 遅れて倉庫側から 数人のスーツ姿の男達がなだれ込んで来た
呆然と立っているチャンリンを押えかかる
チャンリンは全く抵抗せず ナイフを地面に落とした
「確保しました!」 チャンリンに手錠をかけた男が大声で叫んだ
竹内と笠原は驚いてキョロキョロとしていたが すぐに警察だとわかり
仰いだり 俯いたりして観念し 男達に従った
「いい合図だったよ」
慌しい状況に目を奪われていた加賀の横に いつの間にか後ろ髪を一つに縛った
小柄な男が立っている
「チャンリンは抵抗しなかったな」 両脇に立った男に連れられて行く チャンリンを見ながら言った
「司令塔だったチエン・チュンの代わりにチャンリンを動かすには 金では無く 強力な信頼関係
男女の関係みたいなものが必要だと思ってました 橋本が倒れた時のチャンリンの様子で
それが窺い知れたので 立て直す前に桃永さんを呼びました」 加賀が桃永を見て言う
「いい推察だ ところで私がいなかったらどうしてたんだ?」
「いえ 旅客ターミナルの広電の停留場にいるあなたを見て 必ずここでタイミングを
見計らっているはずだと思っていたので」
「食えない男だねー 君は ..この後用事があるんだろ? 一日猶予をあげるよ」
そう言うと 桃永は倉庫から出て行った
倉庫の方から 玲奈が刑事に連れられて出て来る
「玲奈!」 加賀と玲奈は走り寄り 抱き合った
「カエデーごめん! 私っ」 嗚咽で喋れなくなる
「いいんだ 無事で良かった」 加賀は抱き締めた温もりに これ以上はない喜びを感じていた
113
:
かっちゃん
:2018/06/03(日) 13:33:30
「玲奈さんが無事で良かった..」 里保が呟く
加賀はこのまま玲奈を慰めていたかったが すぐに動いた方がいいと言う直感で 気持ちを切り替えた
「玲奈 僕は里保さんを山﨑会長に会わせなければならない 君には悪いが
どこかで宿を取って休んでいてくれないか? 事務所のあかりに連絡先を伝えてくれれば
山﨑家で用事が終わったら僕もそこに行くから.. いずれは警察から事情聴取されるだろうが
公安の桃永さんは一日くれると言った もうすぐここには県警が来るだろうし 早く動かなくちゃならないんだ」
玲奈は涙を拭い 鼻を啜りながら黙って加賀を見つめていた
正気を失っていた飯窪も いつの間にか連行されたようだ
倉庫内には公安の刑事と思われる男が一人いるだけで 後は橋本と工藤の亡骸しか
残されていないかった
「じゃあ玲奈 途中まで一緒に行こう」 加賀が踵を返し 出口へ向かおうとする
「待って..」 涙声の玲奈が加賀を引き止める
振り向いた加賀に 玲奈が縋り付いて来た
「カエデー 私も連れてって 一緒に行きたい」
「君はゆっくり休んだ方がいい」 加賀は玲奈の両肩に手を置き説得する
「いいんじゃない? 玲奈さんは加賀さんといた方が気持ちが安らぐと思うよ」 里保が言った
加賀は玲奈の目を見た
潤んだ瞳は 必死に一緒に居たいと訴えかけていた
「お願い.. お願い!」 玲奈が繰り返す
「わかった 里保さん 悪いけど玲奈も連れて行くよ」
「私は構わないよ 玲奈さんが居てくれた方が 私の気の迷いも起きないし」
「ありがとう え? それってどういう..?」 加賀は里保の言葉に首を捻った
「行こう!」 里保が二人に外へ出ようと促す
刑事は三人を見送るだけで 特に何も言わなかった
倉庫のドアをくぐると 既に暗くなりかけていて 風が冷たい
パトカーと救急車の音が 近くに迫っていた
「県警がすぐ傍まで来てる あの車ではすぐに止められる可能性が高いから
どこかでタクシー拾おう こっち!」 そもそも2シーターのフェアレディでは 普通に3人乗れない
加賀は二人を先導した
倉庫の間の道を足早に進みながら 記憶を頼りに旅客ターミナルを目指す
背後では緊急車両が到着する慌しい気配がしていた
建物の間から 白と黒のツートンの車が赤色灯を輝かせて姿を現しては消えて行くのが見える
「あっちだ」 加賀はパトカーが通り過ぎて行った広い道の傍まで来ると
手を挙げて女性二人を制止し 様子を窺った
旅客ターミナルの横の道だった 道を渡れば 広電の停留場もある
左右を見渡すと パトカーはもう見当たらなかった
左から来る黒のセダンをやり過ごしてから 道を渡ろうと後ろの二人を呼び寄せる
黒のセダンが通り過ぎたと思ったら 急停止した
「マズい 早く!」 加賀が振り返って二人に手招きする
車の右側のドアが開き パーマをかけた大柄な男が下りて来る
勝田だ!
加賀は道を渡りながら 勝田の方を向いて合掌し ペコペコと頭を下げた
勝田は意外にも 行けと言うように 首を振った
加賀が改めて頭を下げると 勝田は自分を指した後 受話器を持つ格好をした
後で連絡しろと 言っているようだ
勝田が戻ると車はすぐに走りだし 少し先で倉庫の間に消えて行った
「助かった」 加賀が呟く
「誰だったの?」 里保が聞いた
「県警の刑事だ 見逃してくれた」
「どうして?」
「持ちつ持たれつさ」 加賀はニヤリとした
「玲奈 もう少し頑張って! あのタクシーに乗ろう!」
加賀は 少し足取りが怪しい玲奈を励ます
間もなく三人は旅客ターミナルの脇に停まる タクシーに辿り着いた
後ろに女性二人を乗せ 加賀は助手席に座る
「ちょっと遠いんだけど まず国鉄の西条駅まで行ってもらえます?」
「はいよ」 50絡みの白髪が混じる運転手は 加賀の言った行き先に応えてからは 寡黙に仕事をこなした
「疲れたでしょ? 着くまで寝ててもいいよ」 加賀は振り返って女性2人に言う
チャンリンは連行されたし 非常線を張られることはないだろうが 外の状況に注意しなければ..
加賀は 暮れ行く秋の広島の街並みを凝視した
114
:
かっちゃん
:2018/06/03(日) 13:34:24
「玲奈さんが無事で良かった..」 里保が呟く
加賀はこのまま玲奈を慰めていたかったが すぐに動いた方がいいと言う直感で 気持ちを切り替えた
「玲奈 僕は里保さんを山﨑会長に会わせなければならない 君には悪いが
どこかで宿を取って休んでいてくれないか? 事務所のあかりに連絡先を伝えてくれれば
山﨑家で用事が終わったら僕もそこに行くから.. いずれは警察から事情聴取されるだろうが
公安の桃永さんは一日くれると言った もうすぐここには県警が来るだろうし 早く動かなくちゃならないんだ」
玲奈は涙を拭い 鼻を啜りながら黙って加賀を見つめていた
正気を失っていた飯窪も いつの間にか連行されたようだ
倉庫内には公安の刑事と思われる男が一人いるだけで 後は橋本と工藤の亡骸しか
残されていないかった
「じゃあ玲奈 途中まで一緒に行こう」 加賀が踵を返し 出口へ向かおうとする
「待って..」 涙声の玲奈が加賀を引き止める
振り向いた加賀に 玲奈が縋り付いて来た
「カエデー 私も連れてって 一緒に行きたい」
「君はゆっくり休んだ方がいい」 加賀は玲奈の両肩に手を置き説得する
「いいんじゃない? 玲奈さんは加賀さんといた方が気持ちが安らぐと思うよ」 里保が言った
加賀は玲奈の目を見た
潤んだ瞳は 必死に一緒に居たいと訴えかけていた
「お願い.. お願い!」 玲奈が繰り返す
「わかった 里保さん 悪いけど玲奈も連れて行くよ」
「私は構わないよ 玲奈さんが居てくれた方が 私の気の迷いも起きないし」
「ありがとう え? それってどういう..?」 加賀は里保の言葉に首を捻った
「行こう!」 里保が二人に外へ出ようと促す
刑事は三人を見送るだけで 特に何も言わなかった
倉庫のドアをくぐると 既に暗くなりかけていて 風が冷たい
パトカーと救急車の音が 近くに迫っていた
「県警がすぐ傍まで来てる あの車ではすぐに止められる可能性が高いから
どこかでタクシー拾おう こっち!」 そもそも2シーターのフェアレディでは 普通に3人乗れない
加賀は二人を先導した
倉庫の間の道を足早に進みながら 記憶を頼りに旅客ターミナルを目指す
背後では緊急車両が到着する慌しい気配がしていた
建物の間から 白と黒のツートンの車が赤色灯を輝かせて姿を現しては消えて行くのが見える
「あっちだ」 加賀はパトカーが通り過ぎて行った広い道の傍まで来ると
手を挙げて女性二人を制止し 様子を窺った
旅客ターミナルの横の道だった 道を渡れば 広電の停留場もある
左右を見渡すと パトカーはもう見当たらなかった
左から来る黒のセダンをやり過ごしてから 道を渡ろうと後ろの二人を呼び寄せる
黒のセダンが通り過ぎたと思ったら 急停止した
「マズい 早く!」 加賀が振り返って二人に手招きする
車の右側のドアが開き パーマをかけた大柄な男が下りて来る
勝田だ!
加賀は道を渡りながら 勝田の方を向いて合掌し ペコペコと頭を下げた
勝田は意外にも 行けと言うように 首を振った
加賀が改めて頭を下げると 勝田は自分を指した後 受話器を持つ格好をした
後で連絡しろと 言っているようだ
勝田が戻ると車はすぐに走りだし 少し先で倉庫の間に消えて行った
「助かった」 加賀が呟く
「誰だったの?」 里保が聞いた
「県警の刑事だ 見逃してくれた」
「どうして?」
「持ちつ持たれつさ」 加賀はニヤリとした
「玲奈 もう少し頑張って! あのタクシーに乗ろう!」
加賀は 少し足取りが怪しい玲奈を励ます
間もなく三人は旅客ターミナルの脇に停まる タクシーに辿り着いた
後ろに女性二人を乗せ 加賀は助手席に座る
「ちょっと遠いんだけど まず国鉄の西条駅まで行ってもらえます?」
「はいよ」 50絡みの白髪が混じる運転手は 加賀の言った行き先に応えてからは 寡黙に仕事をこなした
「疲れたでしょ? 着くまで寝ててもいいよ」 加賀は振り返って女性2人に言う
チャンリンは連行されたし 非常線を張られることはないだろうが 外の状況に注意しなければ..
加賀は 暮れ行く秋の広島の街並みを凝視した
115
:
かっちゃん
:2019/02/17(日) 13:22:11
緊急措置
緊急措置
116
:
よーろぴあん! 間借り
:2019/02/17(日) 13:23:14
え? ちょっとちょっとっちょっと..
佐藤は驚いた
譜久村がアレを淫らに舐めていた場景が浮かぶ
あの後譜久村は加賀とキスをし..
きちゃない! きちゃないよぉ!!!!
と思った瞬間 足元から熱い感覚が上がって来た
加賀の舌が佐藤の引っ込んでいる舌を突付く
佐藤は何か感染したと思った
ワタシハワタシジャナイ..
ワタシハモウベツジン...
加賀との間に両腕を捻じ込み 体を離す
唇が離れると 鋭い目付きで加賀を睨んだ
「佐藤さん..」 潤んだ目で加賀が呟く
佐藤は無言で喉元に手を伸ばし 加賀を壁に押し込んだ
ずり落ちていたTシャツを捲り上げ 加賀の白い乳房を再び晒すと荒々しく揉む
アレが屹立する角度が 3時を指す短針くらいから早い時間へと逆戻りする
「ガハッ 面白いぃ 何これぇ.. かっちゃん どんな感じ?」
佐藤はアレを凝視しながら 加賀の乳首をカリカリとこじった
「ぃゃ..」 加賀は顔を逸らす
アレの鈴口から 透明な液が出て来た
「わっ これ凄い! これ凄いよ?」
亀頭をチョンと突付いた佐藤が ビヨンと跳ね返る様を見て加賀に報告する
「佐藤さん遊ばないで.. 私もう...」
「もう?.. もう?..」
理解しかねるという風に 佐藤が繰り返し亀頭を突付く
アレはまた太く逞しく育ち 臍の下まで反り返った
「すっごぃ.. 動物みたぃ..」
佐藤は竿の部分を恐る恐る指で摘んでみた
「ぁっ 熱い.. ぅわっ ヌルヌル..」
一度触れてみて大丈夫だったのか 今度は指を回して握ってみる
「熱い.. ぁっ 動くっ 動くよ?」 また加賀の顔を見た
加賀はいつもとそれほど変わらないように見える佐藤の目に 違う光が宿っているのに気付いた
「佐藤さんっ」 ガバっと佐藤に抱き付き 唇を頬に押し付ける
「ぅふふっ」 佐藤は自分から唇を重ね 舌を挿し込んで来た
唾液をたっぷりと混ぜ合う
「んっ.. んっ」
笑ったような顔で佐藤は貪るように何度も顔の角度を変えて 加賀と唇を合わせる
加賀の唇の端から垂れた唾液を ペロンと舌で舐めると
細く開けた目で妖しく見つめて囁いた
「いいよ かっちゃん..」 スイッチが入ったように加賀が動く
佐藤と体を入れ替え 壁に押し込む
Tシャツを捲り 自分よりボリュームのある白い乳房を露出させた
ブラのカップをずり上げた時に乳首が引っ掛かり ふるんふるんと揺れた
「綺麗..」
「ゃあだぁ..」
加賀の感嘆に佐藤は短く応え 口を尖らせた
かぶりついて 乳首を吸う
頬に触れる肌理の細かい乳房が温かく 吸い付くように心地良かった
コリっとした乳首を舌と唇で舐めたり挟んだりする度に 佐藤がビクンビクンと肩を揺らす
「ぁっ.. ぁんっ.. んっ..」 下唇を噛んで 目を瞑った佐藤が 加賀のショートの髪を撫でる
「ぁっ.. なんで? どこで こういうこと んっ 覚えたの?..」
加賀は応えず もう片方の乳房の乳首をいじくっていた指で スベスベとしたお腹を愛撫する
ジャージの中に手を入れ 股間のすぐ脇の内ももを撫で回した
温かで柔かな ツルツルとした触感を楽しみながら その間の湿ったショーツにも触れて行く
「ぁっ そんなとこ.. 触っちゃダメなんだよ」
小さな声で佐藤が呟くが 本人すら本気で言っているわけではなかった
加賀の体に隠れて見えないアレに 手探りで触れた佐藤は その硬さと熱さに驚き
舌でねぶられた乳首からの快感が増幅されて 背筋をゾワゾワさせた
「佐藤さん..」 胸から顔を上げ 加賀が見つめる
2本の指を股間で震わせると 佐藤は怯えたような顔で小さく頷いた
117
:
よーろぴあん! 間借り
:2019/02/18(月) 05:51:06
「ねぇ さこ.. ウチら大丈夫だよね?」
「うん 心配してもしょうがないし..」
井上は抜けるような白いお腹に唇を這わせていた
本当に和田の色白は羨ましい..
両手は少し上に伸ばし 生パフのように柔かで大きな乳房に乗せて
力を入れずに形が変わるままの感触を楽しんでいた
掌をコロコロと刺激する乳首が心地良い
和田の温かく吸い付くような白い肌に体を重ねていると 自分の日頃のネガティブな感情が
スーッと溶けて消えて行くような気がした
あの夏の日のキス...
あれから井上は それまで以上に和田の傍にいるようになった
飯窪に毒されて 変わって行く自分を留めて置きたい気持ちがそうさせたのかもしれない
和田という凪いだ海のような穏やかな存在に 錨を下して置かないと
どこかに流されて 自分を見失ってしまいそうだった
ただ 飯窪との接触は二人の関係にも影響を与えた
女同志でも 肉体的にお互いを快楽に誘うことができることを知ってしまったのだ
暑さも薄らいだ秋も深まろうという頃 井上は和田をひと気のない場所へ誘い出し キスから先へと進んだ
驚くことに和田はたいした抵抗を見せず どころか 薄っすら慈母のような微笑を湛えて井上を受け入れた
あれから数ヶ月..
二人の仲は少しずつ更に深まり 和田は井上にとって欠かせない大事な人になった
単純に癒されると言う ありきたりな関係ではない
もちろん和田は見た目の通り 周りをはんなりと癒す人ではあったが
井上にとっては それ以上に自分を預け 彼女からも預けてくれる存在だった
時には愛し合う前や後に 自分たちの今後についての話もした
そういう時 普段は隠すように努めている末っ子気分が出るのか
井上はこぶしの不安を度々口にする
和田はその都度 大丈夫だよ と言ってくれ 井上は安らぎを得る
しかし17になった井上は 和田のためにも変わらなければと 最近考えるようになった
そしてまずは 飯窪との爛れた関係を終わらせる
裏の関係は和田に知られていないはずだったが いつまでも続けて深みに嵌って行くのは
考えられなかった
今こうして 和田との穏やかな時間を過ごしていることを思えば やはり正解だったと言えよう
それが完全に安息の時間と言えなかったのは 年齢から来る社会的な身の振り方や
そこに深く関わる こぶしの存在があるからだ
こぶしがこれからも長く続くものではないにしても 楽しく輝かしい思い出として
残って欲しいと思うのは 贅沢の謗りを受けるまでもないことだろう
NGPから首の皮一枚でこぶしに入り 今があるからこそ
続けて来たステージのパフォーマンスで もっと輝きたいと思うのは当然と言えた
生え抜きの研修生上がりの和田とて その思いは一緒だ
「ごめん いっつも同じこと言って」
「そんなことないよ レイの不安はわかるし..」
和田が井上の髪を撫でる
「アカペラは上手く行ったけどね.. 次だよ」
「うん 次..」
井上は上に伸ばしていた手を下にやり 柔かな薄い茂みを越えて 泉の湧き出る聖地を窺う
「チャンスはそれ程多くないからね.. 少ない中でものにしないと..」
「んっ.. 練習はしてるけど.. ぁっ..」
和田の井上の髪を撫でる手に少し力が篭る
「..人自体も変わらなきゃいけないと思うんだ ..さこ 気持ちぃい?」
「ぁっ レイ... ぃぃ...」
二人はお互いが気持ち良くなる行為に没頭して行った
「ぁっ.. んんっ! ぁ ..っちゃうっ! ぃ....」
背中がベッドから離れる程反らし 頭が白くなった井上の 和田の頭を押える力が強まる
一瞬止まった時が再び動き始めると 井上は脱力し ベッドに沈み込んだ
目を瞑って ピンと立つピンクの乳首を乗せたかわいい乳房を上下させて
呼吸する井上を見て 少し顔を上げた和田が満足そうに微笑んだ
井上がもじもじと手を顔にやり 長い睫毛を軽く擦って 恥かしそうに微笑みながら薄目で和田を見る
「ありがとう さこ..」
和田は大きな口を横にいっぱい広げて優しく微笑む
白く丸い双肩が美しかった
118
:
よーろぴあん! 間借り 訂正版
:2019/02/18(月) 05:58:42
「ねぇ さこ.. ウチら大丈夫だよね?」
「うん 心配してもしょうがないし..」
井上は抜けるような白いお腹に唇を這わせていた
本当に和田の色白は羨ましい..
両手は少し上に伸ばし 生パフのように柔かで大きな乳房に乗せて
力を入れずに形が変わるままの感触を楽しんでいた
掌をコロコロと刺激する乳首が心地良い
和田の温かく吸い付くような白い肌に体を重ねていると 自分の日頃のネガティブな感情が
スーッと溶けて消えて行くような気がした
あの夏の日のキス...
あれから井上は それまで以上に和田の傍にいるようになった
飯窪に毒されて 変わって行く自分を留めて置きたい気持ちがそうさせたのかもしれない
和田という凪いだ海のような穏やかな存在に 錨を下して置かないと
どこかに流されて 自分を見失ってしまいそうだった
ただ 飯窪との接触は二人の関係にも影響を及ぼした
女同志でも 肉体的にお互いを快楽に誘うことができることを知ってしまったのだ
暑さも薄らいだ秋も深まろうという頃 井上は和田をひと気のない場所へ誘い出し キスから先へと進んだ
驚くことに和田はたいした抵抗を見せず どころか 薄っすら慈母のような微笑を湛えて井上を受け入れた
あれから数ヶ月..
二人の仲は少しずつ更に深まり 和田は井上にとって欠かせない大事な人になった
単純に癒されると言う ありきたりな関係ではない
もちろん和田は見た目の通り 周りをはんなりと癒す人ではあったが
井上にとっては それ以上に自分を預け 彼女からも預けてくれる存在だった
時には愛し合う前や後に 自分たちの今後についての話もした
そういう時 普段は隠すように努めている末っ子気質が出るのか
井上はこぶしの不安を度々口にする
和田はその都度 大丈夫だよ と言ってくれ 井上は安らぎを得る
しかし17になった井上は 和田のためにも変わらなければと 最近考えるようになった
そしてまずは 飯窪との爛れた関係を終わらせる
裏の関係は和田に知られていないはずだったが いつまでも続けて深みに嵌って行くのは
考えられなかった
今こうして 和田との穏やかな時間を過ごしていることを思えば やはり正解だったと言えよう
それが完全に安息の時間と言えなかったのは 年齢から来る社会的な身の振り方や
そこに深く関わる こぶしの存在があるからだ
こぶしがこれからも長く続くものではないにしても 楽しく輝かしい思い出として
残って欲しいと思うのは 贅沢の謗りを受けるまでもないことだろう
NGPから首の皮一枚でこぶしに入り 今があるからこそ
続けて来たステージのパフォーマンスで もっと輝きたいと思うのは当然と言えた
生え抜きの研修生上がりの和田とて その思いは一緒だ
「ごめん いっつも同じこと言って」
「そんなことないよ レイの不安はわかるし..」
和田が井上の髪を撫でる
「アカペラは上手く行ったけどね.. 次だよ」
「うん 次..」
井上は上に伸ばしていた手を下にやり 柔かな薄い茂みを越えて 泉の湧き出る聖地を窺う
「チャンスはそれ程多くないからね.. 少ない中でものにしないと..」
「んっ.. 練習はしてるけど.. ぁっ..」
和田の井上の髪を撫でる手に少し力が篭る
「..人自体も変わらなきゃいけないと思うんだ ..さこ 気持ちぃい?」
「ぁっ レイ... ぃぃ...」
二人はお互いが気持ち良くなる行為に没頭して行った
「ぁっ.. んんっ! ぁ ..っちゃうっ! ぃ....」
背中がベッドから離れる程反らし 頭が白くなった井上の 和田の頭を押える力が強まる
一瞬止まった時が再び動き始めると 井上は脱力し ベッドに沈み込んだ
目を瞑って ピンと立つピンクの乳首を乗せたかわいい乳房を上下させて
呼吸する井上を見て 少し顔を上げた和田が満足そうに微笑んだ
井上がもじもじと手を顔にやり 長い睫毛を軽く擦って 恥かしそうに微笑みながら薄目で和田を見る
「ありがとう さこ..」
和田は大きな口を横いっぱいに広げて優しく微笑む
白く丸い双肩が美しかった
119
:
めた
:2019/02/19(火) 01:16:32
こっちで続けていてくれたのですね
ありがとうございます
120
:
名無し募集中。。。
:2019/02/19(火) 01:23:42
さこれいとはたまげたなぁ
121
:
よーろぴあん! 間借り
:2019/02/22(金) 03:23:53
加賀が屹立した肉棒の根本を持つ
赤く怒張しているアレを見下ろした佐藤は後ずさりした
「ひぃぃ..」 加賀の顔と肉棒を不安そうに何度も交互に見ている
「ちょっと待ってちょっと待ってかっちゃん! それどうするの?」
「入れるんですよ?」
「どこに?」
「そこに! 今更何言ってんですか?」
「いやちょっと待って! 入んなぃ! 入んなぃって!」
「入りますよ!」
「ひぃぃぃぃん 入れなきゃダメ?」
「は? 元はと言えば 佐藤さんが言い出したんじゃないですか?」
加賀は前から佐藤に体を密着させ 股間に肉棒を押し付けた
体を逃がそうとするものの 硬い肉棒の刺激に佐藤は抗い切れず 加賀の腕に掴まっている
キスをしてやる気になったと思っていたが.. やはり佐藤の気持ちは掴み切れない..
加賀は 更にダメ押しのキスをした
唇を重ねながら強く抱き締め お尻の割れ目から前に指を回して 雫が垂れる程かき混ぜてやる
「んっ んんっ んっ..」
暴れる体を押さえ込んで舌を絡め合っていると やがて佐藤は大人しくなった
唇を離して目を開ける
加賀はビクっとした
目の前で 佐藤が妖しい目を細めて唇を舐めている
「脱いで」
「え?..」
無言で加賀の上半身を指さす
股間のはちきれそうな肉棒の欲望を抑えながら 加賀は従った
Tシャツを個室のドアのフックに掛ける
冷えた空気の寒さと恥かしさで 胸を押えて振り返った
強めに腕を押し付けたため 白い乳房にくっきりと谷間ができた
佐藤は首を少し傾げて上目遣いで頷くと 今度は自分が脱ぎ始めた
上も下も全て脱ぎ対峙する
髪が掛かる鎖骨の下に つんと盛り上がった白い双丘が美しかった
腰の張りはそれ程でもないが 少し寒さで赤くなった肌の柔らかそうな太ももと
間にできた絶対空域 その上の薄い草原が加賀の欲情を煽る
佐藤の全裸に合わせて 加賀もジャージ下を脱いだ
艶めかしい長く白い スッとした脚の上に肉棒がそそり立つ姿は 悪くないバランスだった
佐藤が手の甲を見せて指だけ動かし おいでと無言で呼ぶ
熱く華奢な体を抱き寄せ 加賀は吸い付くような肌の背中に手を巡らせる
胸と胸が合わさり 軟らかに歪んだ乳房のつるつるした肌合いを通して お互いの熱が行き交う
肌に食い込む乳首の硬さが更に興奮を呼び 乳首と乳首が偶然触れると 快感の電気が走った
佐藤が肉棒を掴み 自分の孔へと誘う
どちらからも出ている たっぷりの潤滑液で にゅるっと取っ掛かりが入った
佐藤の片方の腿を指を食い込ませて抱え上げ 加賀が肉棒を押し込んで行く
纏いつく肉壁の圧力が快感を生み 更に深く挿し込む動機をもたらした
佐藤が 震えるようにフフっと 力を逃がす笑いを浮かべる
「おっきぃ...」 加賀の耳元に囁く
欲情の火に油が注がれ 加賀は背中に回した手で佐藤の髪ごと肩を掴んで
上下に突き挿し始めた
「ぁっ ぁんっ ぁっ んっ んっ ぅぅんっ」
突かれるリズムに合わせて佐藤は目を瞑って首を振り 口の端を歪ませる
ピンピンに立った互いのピンクの乳首が 並んだエレベーターのように
交互に上に行ったり下に行ったりした
体の中で肉棒が移動する度に 佐藤は快楽に攫われる
乗馬のリズムを思い出すと同時に 風を感じた気がした
そうか! おちんちん!.. お馬さんの見たことあったんだ..
不意にもやもやが晴れ 合点した
そう言えば何年か前の撮影以来 乗馬をしていなかった
体の中に跳ね回る快感にゾクゾクしながら これは乗馬にも勝る気持ち良さだと佐藤は思った
肉棒に突かれ 浮き上がる体が恍惚と何かを高みに積み上げて行く
「ゃだっ ..ぃぃっ んっ ぁっ ぁんっ ぁっ ぅぅん んんっ ぁふっ」
加賀の鎖骨に頬を押し当て 肌を唾液で濡らしながら 佐藤は止まらない喘ぎを漏らした
122
:
名無し募集中。。。
:2019/11/07(木) 15:34:22
DVD「モーニング娘。'19 13期メンバーWebトーク『リバーシブルラジオ』Part2」
https://www.youtube.com/watch?v=79jllksxKYk
Hello! Project ファンクラブ会員限定通信販売商品。
受付締切日:2019年11月28日(木)
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FC WEBサイトで毎週木曜日に配信していた、FC会員限定WEBトーク
「モーニング娘。’19 13期メンバー リバーシブルラジオ」のDVD第2弾の発売が決定しました!
vol.51?122までのWEBトーク収録の中から、ダイジェストでお届けします。
123
:
よーろぴあん! 間借り
:2019/12/15(日) 08:50:55
岡見は両手でボリューミーな腿に触れた
指が押し込まれる 羽二重餅の感触
唇を這わせればきっとあのお菓子のように 吸い付くような肌が歓喜させてくれるだろう
親指を広げ ずっしりと存在感のある腿を持ち上げる
頬を撫でる至福の感触の未練を断ち切って頭を抜くと 岡見はそーっと譜久村の両脚を
揃えて下し 立ち上がった
「ミズキさん! 俺 頭冷やして来ます!」
キッパリと言ったものの 股間の欲情が邪魔をし 岡見は前屈みでの退出を余儀なくされた
ふー...
ドアが閉まるのを見届け 譜久村が息を吐く
「さわやかな奴w...」
目を閉じると 瞼にへっぴり腰でそそくさと部屋を出る岡見の姿が残っている
「そうでもないかw..」
可笑しさが込み上げて来ると同時に 自分がエリナ不在の寂しさを感じていたのではないか
と言う憐憫を覚え 首を横に振った
強くならなくては...
気がつくと 左の目尻に涙が滲んでいた
井上は興奮する自分の乳首を 薄い背中に擦り付けながら 上下に腰を揺らしていた
柔かな尻臀の間を割って にゅるんにゅるんと肉棒が奥へと抽送される
野村のくぐもった快楽の喘ぎが漏れ聞こえて来た
気持ち良さにはちきれんばかりの肉棒を 微妙に挿入角度を変えて その声の変化を
聞くのが楽しくてしょうがなかった
ようやくこの子を手に入れた...
生真面目で スローなマイペースで でも自分をしっかりと持っているから ひっかかると
頑固さに梃子摺るこの子を 大人の快楽に目覚めさせることは こぶしを今よりも
輝かせることに繋がると 井上は信じて止まなかった
実際野村の美しさは 写真集を出して以来 少しは自信もついたのか どんどん上がっている
でも もったいない! もっと女性らしさが出てくれば 更に輝くのに..
和田や浜浦と関係を持ち 自分たちに訪れた女としての自覚を 井上は野村にも伝えたいと思った
浜浦とベッドの上で相談し 策を練る
野村は思っていた通り ガードが堅かった
ちょっとしたボディタッチは受け入れるし 自分の方からやって来ることもあるが ベタベタはしない
仕事の話は真面目に聞くし それを聞いた上で確固たる自分の意見も出すが
プライベートな話にはどこか壁があって そこから入って来ないし 相手も奥まで入れない感じがした
強引に引きずり出すしかない.. 井上は自分が飯窪にされた手口を思い出し 浜浦に協力を求める
三人でラーメンを食べに出掛けた
レンゲを小さな取り皿にして その中に一旦麺をよそって食べる野村に 浜浦はイライラしながらも付き合い
三人で店を出ると ウインドショッピングの続きを少しした後 どこかで一服しようと提案する
落ち着く先を探している内に 井上の気分が悪くなる
月に一度のあの期間にあることは メンバーならなんとなく知っており 少し横になりたいと言う井上の言葉に
二人は慌てて周囲を見渡す
実際はOCNが出ていて 体調が悪いことはなかったが あらかじめ考えていたプランに従い
とりあえずビジネスホテルに入ろうと言う 浜浦のメチャクチャな提案に井上は頷いた
ここで浜浦は退場する
突然用事を思い出し すぐに帰らなければならないから ”申し訳ないけどのむさん 後は頼むね ごめんネ!”
とまくし立てると ホテルのフロントからいなくなる
帰った方がいいと言う心細い野村に ”ごめんね でも 一緒にいて 少し横になればよくなるから” と懇願し
井上はツインの部屋になだれ込んだ
とっかかりは荒っぽくても 後を綺麗にまとめればなんとかなるものだ と言う経験則が井上にはあった
飯窪との爛れた関係で学んだ
そしてそれは浜浦との関係を持つ際にも実証された
ベッドに仰向けになり 気分が悪そうに顔を横に向ける
大丈夫? と覗き込む野村が顔を近づけると 井上はここぞとばかりに 両腕を伸ばして抱き付いた
「え? ちょっと! どしたのれいちゃん?」 抱き付いて助けを求めるほど 気持ち悪くなったのかと思った野村が
慌てて井上の額に手を伸ばして熱をみようとしたところで 唇を奪う
驚きに野村は目を大きく開けて 逃げようとした
年下のかわいい女の子に唇を奪われるなんて 考えたこともなかった
そして それが今まで感じたことのない そういう話を誰かがしていたら 近寄りたくもなかったはずの
性欲を自分にもたらすことも
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