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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

8名無し募集中。。。:2016/03/20(日) 18:45:15
亜佑美はターボクルーザーの側面に寄りかかり、周囲の焼け落ちたまま放置されているビルを眺めた。
5年以上前のこの街は、まだ活気に満ちていた。
大勢の家族が住み着いており、何代にもわたって住み着いている古顔たちがたくさんいた。

頭上には暗くて不気味な雲が立ちこめている。
ポロポロと崩れていく過去の破片を見おろすような陽光が、雲の間から出たり、引っこんだりしていた。

この区画でたった一軒だけポツンと店を開いているバーガースタンドに、亜佑美は目をやった。
ヘルメットを脱いださくらが、2杯分のコーヒーの勘定をクレジットカードで済ませているところだった。

さくらがコーヒーを手にして歩み寄ってきた。
亜佑美にコーヒーを手渡し、ふうとため息をついた。
「なによ?」
訊かれてさくらは恥ずかしげに微笑した。
「コーヒー、苦手なんですけど。チャレンジします」

「ああ…あそこ、コーヒーしかないからね」亜佑美はコーヒーをすすった。
一口飲んで苦味に顔をしかめたさくらを見て、亜佑美はニヤニヤと笑った。
「お子ちゃまか」

さくらはじっと、この新しい相棒を見つめた。
「石田さん、どうしてこの仕事を?」
「さあね」
「“さあね”って、どういう意味ですか?」

亜佑美はコーヒーをすすり、一瞬考えこんでから答えた。
「この街をなんとか救おうと…そんなところね」
「善良な市民のために街を安全に」さくらはうなずいた。

「あんたこそ、どうしてなのよ?」
さくらが答えるより先に、車の計器盤が甲高い音をたててパッと点灯した。
さくらは、開けたままの運転席の窓に頭を突っこんだ。
グリッド上に情報が表示されはじめている。グリッドマップが点灯した。
移動する青い光点を追尾している。

“リンク”の通信回線がやかましい音をたてはじめた。
「周辺のハンターに通知――事案発生。112進行中。プレート701、サブセクター61にて北上中の白色のバンを追跡せよ」

運転席につこうとしたさくらを追い越して、亜佑美はするりと自分がハンドルの後ろへすべりこんだ。
「さあ、乗りなさい。置いてくよ」

ぶつぶつ小声でぼやきながら、さくらはターボクルーザーを回りこみ、助手席に飛びこんだ。
間髪を入れず、亜佑美はアクセルを踏みこむ。
もうもうと土埃と砂利をあとに残してターボクルーザーはバーガースタンドを離れた。

さくらは前屈みに“リンク”の方へ身を乗りだした。
「こちら石田と小田。本部どうぞ」
ピクピクと脈打つ青い光点をじっと見つめた。
計器盤上に表示されたセクターのグリッドをジグザグに横切っていく。

“リンク”の指令員の声は、冷静かつ能率的であった。
「了解。容疑者は複数で武器を所持している。当該容疑者は高性能爆発物を使用して強盗事件を起こし――」

ターボクルーザーの何ブロックか先方に、キズだらけの白色のバンがいた。
無法者集団と、武器と、焼け焦げた現金袋をすし詰めにして、裏通りを轟音とともに驀進していた。


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