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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

6名無し募集中。。。:2016/03/20(日) 11:29:13
さくらはロッカーに薄紫色のスポーツバッグを放りこんだ。
背後では、壁に埋めこまれた2台のモニターが、オールド・センダイ市内の各地域からの情報を中継している。
低いハム音が絶えずあたりに流れていた。

さくらは後ろにあった木のベンチに腰をおろした。
ベンチは体重を支えきれないような派手な音をたてて、壊れんばかりにたわんだ。

「そこ、座らないほうがいいよ」と、左側にいたハンターが忠告した。「怪我する」
すぐそばで、3人のハンターが小声でなにごとか話し合っている。
さくらはゆっくりと防具を装着しながら、その会話に耳を傾けた。

「鈴木さんのこと、なにか聞いた?」
「まだ危篤状態だって」

さくらはボディスーツのパッドを調整し、窮屈な袖を引っ張った。
さくらの左側にいたハンターが、にっこりと笑いかけてきた。
「で、あなたなんでこの“楽園”にやってきたわけ?」
さくらはあいまいに肩をすくめた。
「人事異動です。アップフロントによる組織再建の一環だそうで」
「佐藤優樹」ハンターが名乗った。
「小田さくらです」

別のハンターが歩み寄ってきた。
胸のポケットに工藤という名前が縫いつけてある。
「組織再建?ふん、あんな連中に任せておいたら街はガタガタになるだけだよ」

「なんでもかんでも予算、予算だからさ」優樹が言った。
「こっちは使えるものなら戦闘機でも使いたいのに」
「嘘だと思うなら、困った時に援軍を呼んでみな」と工藤遥。皮肉っぽく笑っている。

遥が鼻を鳴らして続けた。
「鈴木さんが、先輩のハンターなんだけどさ、救護班を呼んだんだ。
1時間近く放っておかれたんだよ。誰かがやっと見に行く気になるまでね」

さくらは靴の紐をぎゅっと締めた。室内が静かになった。
さくらが顔をあげると、聖がむっつりした顔で段ボール箱を手に持ち、
鈴木と名札のついたロッカーに歩み寄るところだった。
聖は名札をしばらく凝視し、やがてゆっくりとロッカーの中身を箱にあけはじめた。

全員の視線が聖に集中した。ただ、聖に背を向けていた遥だけがそれに気づかず熱弁をふるい続けた。
「会社のアホどもに、どう対処したらいいのか教えてやるよ。
ストライキをぶつんだよ。うちらがいなきゃどうなるか思い知らせるのさ」

さくらは遥に“まずいですよ”と目配せした。
遥はゆっくりと後ろを振り返った。
聖が鈴木香音の荷物を箱に入れている。ロッカーの名札をはがし、それを香音の私物の一番上に置いた。

目を赤くした聖が、ハンターたちに向き直った。
さっきより10年は老けこんだような顔だった。
「葬儀は明日」と聖。感情を押し殺した声だ。
「参列できる人は全員お願い。遺族への弔慰金は…慣例通り払われる」

ハンターたちは全員が床をにらみつけた。懸命に怒りを抑える表情である。
箱を持ちあげて出口に向かう聖は、遥の前でちょっと立ち止まった。
「ストライキの話なんてしないで。治安を守るために働いてるのよ。そのことを忘れないで」


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