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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

21名無し募集中。。。:2016/07/31(日) 15:51:21
問題は倉庫の屋根からどうやって逃げるかだった。
屋根のどこかにメンテナンス用の階段があるはずだ。
そこから建物に入り、裏手にあるスクーターまで抜け出さなければならない。

追っ手との競争になるだろう。
さくらは全速力で屋根の鋼材を突っ切り、給水塔を目指した。
きちんと保守点検されているならば、給水塔には扉があり、そこが階段に通じている。

あった。さくらは扉を蹴り開けて、階段を飛ぶような勢いで駆け下りた。
幾筋ものサーチライトが点灯されて、倉庫の外から光が差しこんできている。
さくらはそれらを片っ端から拳銃で撃ち抜きたかったが、そんなことはしなかった。

サーチライトを増やそうと配線を伸ばしている警官が見えた。
ライトを上に傾けて、順番に照らされている。
さくらは、見つからないように給水管を伝って物品庫の屋根に飛び降りた。

屋根から側壁に手を伸ばし、警官隊が自分を捜すのを横目にアルミニウムの突起を握って下りた。
サーチライトは、頭上の梁を照らしている。
さくらは裏手へ駆け出した。

シャッターを抜けて夜気のなかへ飛び出した。
スクーターのイグニッションに鍵を挿しっぱなしにしておいて正解だった。
両手がひどく震えていたので、鍵を挿しこむだけで手間取ったに違いない。

コンテナの山を突っ切り、横滑りしながらスクーターを走らせた。
警官隊がまだ倉庫にいるうちに、さくらは夜の闇に消えた。

追跡してくる気配はなかった。交通量の多い通りに出ると、さくらは荒っぽい運転をやめた。
“寮”に着いて、小さな車庫にスクーターを入れた。
さくらは、自分が負傷していることにさえ気づかないほど疲れていた。

しかし、気づいた者がいた。
「こんな嵐の夜に、あんた仕事熱心だね」亜佑美が言った。
さくらが答える前に、亜佑美の表情が変わり、心配と当惑の入り混じった顔になった。
「怪我してるじゃない!?」

いつも塵ひとつないタイルの床に血の足跡がついている。
さくらは床を見下ろし、自分の左のふくらはぎが出血しているのに気づいた。
逃げる途中、深い傷を負ったようだ。
血で濡れた靴底で歩いていたのだ。

「道の真ん中に錆びた鉄の手すりがあって。飛び越えたとき、こすれたかもしれないです」
とっさに思いついたことをさくらは口にした。
特に疑う理由もないので、亜佑美は納得したようだった。

さくらはなるべく床を汚さないようつま先立ちで歩いて、自分の部屋へ戻った。
傷口はやはり屋根から飛び降りたりしているときに、どこかにこすれたのだろう。
きれいに洗ってから止血用の包帯を巻いた。

とにかく今回はいろいろとお粗末だった。
ヘッドラインを飾るニュースになるとは思わないが、隠密行動と呼ぶには騒がしくなりすぎた。
夜明けまではとりあえず動かないほうが賢明だろう。
さくらは、不安と怒りを覚えながらも疲労に負けて就寝した。


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