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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

19名無し募集中。。。:2016/07/31(日) 11:27:25
港を歩きながら、さくらは吹きすさぶ風に肩をすくめた。
白い波頭から飛び散るしぶきをまともに顔に受ける。
予測不可能な夏の猛烈な嵐が接近していた。
頭上には積乱雲が現れ、稲光が水平線を照らしている。

入り江の端の遊歩道で、さくらは数日前に目をつけておいた店へ近づいた。
倉庫やみすぼらしい店が雑然と並んでいる一角にある、スクーターや小型バイクを貸し出している店だった。
さくらは、いちばんありふれたスクーターを借りた。
愚鈍そうな店員に運転免許証を見せて、近づいてくる嵐の方角へ走り出た。

うらさびれた路地に入り、轍のできた道でスクーターを停めて、ナンバープレートに泥をこすりつけた。
取り外すより安全だ。警官に見咎められたとしても、知らなかったと答えればすむ。
スクーターを借りた理由は単純だった。
これからやろうとしている「仕事」に不測の事態が起きた場合、素早く逃走できるからだ。

最初の雨粒がまわりに落ち、風が吹きつけてきた。
さくらは、目的の建物の裏側へまわり、狭い道に入った。
夜闇にまぎれ、さくらはスクーターのサドルに足を乗せて立ち上がった。

ジャンプしてブロック塀の上端をつかむと、その勢いで塀の上に登った。
横殴りの風を受けながら、雷鳴に負けないよう神経を研ぎ澄ました。
足を踏み外さないようにしながら屋根によじ登る。
身を屈めて雨に濡れたタイルを横切り、裏口の隙間を飛び越えた。
窓に取りつけられた装飾用の鉄格子と、絡み合った古い導管をつかみながら、傾斜した屋根に登った。

暗闇のなかでひざまずき、テラコッタのタイルを外した。
さくらは、慎重に屋根裏部屋に飛び降りた。
点検用パネルがあるはずなので、天井を蹴破る必要はなかった。

暗がりに目を慣らし、さくらはパネルをそっと動かす。
隙間から階段の吹き抜けを覗いた。
防犯用センサーや警報機を探してみたが、そうしたものはなさそうだった。

さくらはパネルを開けて、静かに梯子を下りた。
念のため、腰から拳銃を抜き出し、足音を忍ばせて階段を下りて目的の部屋の扉に近寄った。

敵の心臓部に近づいているという思いに駆り立てられて、さくらは本能的な恐怖心を覚えた。

暗がりに包まれた室内で、さくらは窓際に素早く移動してカーテンをしっかり閉じた。
スタンドを見つけて、明かりをつける。
誰かの家に侵入する際に最もしてはならないのは懐中電灯を使うことだ。
光は漏れて、隣人や通行人は家のなかを動きまわる光を見て必ず警戒する。
一方、ほの暗い明かりは安心感を与え、警戒されることはまずない。

室内の片隅に書類が散乱した机があった。
ファイルや請求書の山のなかで、かろうじて開けられたスペースにコンピューターのモニターとキーボードが鎮座している。
マウスを動かすとスクリーンが明るくなった。
ありがたいことに家主が電源をつけたままにしていたため、パスワードを解読したりハードディスクを外したりする心配はない。

さくらはポケットに手を入れて、USB メモリーを取り出した。
コンピューターに差しこんで、内容をすべてバックアップするよう操作した。
ファイルとメールの内容をコピーしながら、さくらは机を調べはじめた。
机を4分割して、急ぎたくなるのをこらえて順序立てて見ていく。

手がかりになりそうなものはすべて携帯カメラで撮影した。
しかし、直感的に今回の「仕事」につながるものはないような気がした。
「疑惑」への加担をうかがわせるようなものは、見当たらない。

そのとき、スタンドの明かりが消えた。


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