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もしもだーさくこと石田亜佑美と小田さくらが賞金稼ぎコンビだったら

15名無し募集中。。。:2016/04/10(日) 21:02:25
亜佑美が運転するターボクルーザーは、オールド・センダイの中産階級の住宅地を走っていた。
大半が穏やかな家庭を持つ、比較的安全な地域だった。

だが、20分も走ると風景は悪い方へと変わっていく。
汚れた庭のある古びた小さな家が並ぶ平地。
カラフルないたずら書きに覆われた低いビル。
いたずら書きにも、様々なものがあり、どうしようもないものもあるが、アーティスティックに描かれたものもある。

通りの人々は奇妙だった。
若かろうが年寄りだろうが、男だろうが女だろうが、
ふたりの乗ったターボクルーザーが通りすぎると、必ずそれを目で追った。
別の地域ではみんな他人のことなど無関心だが、ここは違った。
みんなが他人を見つめる。誰もが例外なく。恐怖や怒りの視線で…。
通りかかるものはすべてが脅威なのである。

さくらは、ターボクルーザーに乗る前にドーナッツを買っていた。
道路を見つめたままの亜佑美が箱のふたを開けてひとつ取り出した。
それを見つめると、まるで猫の寝藁の中から取り出したような顔をした。

「いつも、どんなやつがこんなものを食べるのか不思議だった」
毒々しいピンクの砂糖をまぶしたドーナッツに亜佑美は噛みついた。
「こういうやつですよ」さくらは唇を噛んでしまい、痛かった。

そのとき、前方の舗道にしゃれたバンがあるのが見えた。
バケット・シートの助手席側で、窓を巻きおろして顔をのぞかせている男と、若い女が話しこんでいる。
売春婦かもしれないし、そうでないかもしれない。
そのバンの車体にはワイキキの夕陽が描いてあった。アロハ。

亜佑美とさくらは、その女がバンの乗員ふたりを誘っているのかと思った。
ところが、その女の顔がこわばり、助手席の男が目を離したと思われるたびに、じりじりと後退りしていく。

本能的に、亜佑美は拳銃に手を伸ばした。
女が「嫌よ」とはっきり言ったのが聞こえた。もう充分だった。

亜佑美はターボクルーザーの外へ出た。
空のカップとドーナッツをさくらの膝にぶちまけながら。

一歩踏み出したところで、バンの助手席の男が片手に安物の拳銃を光らせて、いきなり舗道へ飛びだした。
もうひとりの男もやはり武装しており、女を車内へ連れこみ、サイド・ドアをぴしゃりと閉めた。

亜佑美とさくらは拳銃を抜き、バンの方へと大股で歩いた。
最初の男が大声でふたりに向かって叫んだ。「そこを動くな、バカ野郎!」

男の拳銃が火を噴いたが、ふたりは撃ち返さなかった。まだ早い。
亜佑美とさくらは汚れたアスファルトを踵で切るように前進した。
バンの薄い板金に流れ弾を貫通させるわけにはいかない。人質がいるあいだは。

安物の拳銃は幾度も幾度も発射されたが、そのたびに外れた。
見るからに慣れていない男は、ふたりの表情すら変わらない接近にすっかり狼狽えていた。

さくらは微笑を浮かべた。バンのフロントガラスがあらかた視界におさまった。
そこで女が後部座席に押しこめられているのを確かめた。

アイコンタクト。「解決方法はふたつ。その女性を放しなさい。さもないと――」
亜佑美が言い終わる前に、男は死体となって地面に倒れた。
「え?」拳銃は無害の道具となって舗道にガチャンと落ちた。
続けて、車内の男の頭部の残骸が人質のブラウスの上一面に撒き散らされた。

「ちょっと!なんなの!」女が悲鳴をあげ続けているので、亜佑美は大声になった。
「いや、撃てってことかと。違ってましたか」

「まったく」亜佑美は言った。「あんたと一緒のときはウェット・スーツを着てたほうがいいわね」
飛び散った血に亜佑美は顔をしかめた。
「ドーナッツのお返しです」さくらが言い返した。
「食べこぼしは自分の膝へ落としてください」


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