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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

505 ◆V9ncA8v9YI:2015/09/22(火) 00:08:26
フクに味方したのは"運動番長"タケ・ガキダナーと"勉強番長"カナナン・サイタチープの2名だった。
自国の王であるアヤチョ王に殴る蹴るの暴行を受けてからしばらくは大人しくしていたが
今こそタチアガール時だと信じ、鉄球を投げたのだ。
ハルナンとハルを目がけて投球したのは決してアヤチョを恐れていたからではない。
こうすることこそがアヤチョを倒す唯一の方法であるとカナナンが考えたのだ。

「ハルナン!愛しの君!いま助けるからねっっっ!!」

アヤチョには「愛する者を絶対にかばう」超反射神経が備わっている。
いくら鉄球の速度が速かろうと、雷神のスピードで動けるアヤチョには無意味のはずだった。
ところが、今のアヤチョはピクリとも動いていない。
自身の身体の変化に、アヤチョは自分で自分が怖くなってくる。

(なんで!?なんで動かないの!!アヤの身体が変になっちゃった!!)

アヤチョの身体は決しておかしくなったわけではない。
反射神経だって依然変わらず正常だ。
ただし、守るべき対象が1名から2名に増えたことによって、脳が混乱しているのである。
遠くにいる親友ハルナンを剛速球から守るべきか、
近くにいる最愛の人ハルを低速球から守るべきか、
これまで複数の人間を同時に愛したことがないために、どうすればよいのか判断することが出来ない。
その結果、アヤチョはちょびっとだけ優先度の高いハルを守ることを選択してしまった。
となれば選ばれなかった側ハルナンに向かう球は止まらない。
勢いをまったく落とさぬまま、平らな胸へと衝突していく。

「はうっっっ!!!」

激しい回転のかかった鉄球はゴリゴリと言った音を鳴らしながらハルナンの骨を粉砕する。
もともと死んだふりをする程に追い詰められていたハルナンに、この攻撃に耐える気力があるはずもなく
フクを斬るより先に床にぶっ倒れてしまう。

「ハルナン!!」

友人がやられるのを見たアヤチョは心臓がえぐられる思いだったが
ここでさっきのように戦意喪失しても仕方がない。
ハルナンの犠牲を無駄にせぬためにも、最愛の人ハルの援護に全力を注ごうとする。
しかし、カナナンの投球はそれすらも許さなかった。

「ウチの弾道計算は完璧です……鉄球はそこで落下する。」

アヤチョが球を弾こうとする直前、低速球の軌道は変化した。
そのボールはなんとフォークボールだったのだ。
球が落ちる先にあるのはハルの脇腹……つまりは折れた肋骨部分にあたる。
フクがサイリウムを叩きつけていた個所に、さらなる追い打ちをかけていく。

「ぎゃああああ!」

スピードは遅くても、鉄球が骨折部にぶつかる痛みは気が遠くなるくらいに強烈だった。
白目をむいて苦しむ最愛の人の姿を目の当たりにして、
アヤチョは吐き気がするほどに気が滅入ってしまう。

「やだ……なんでこうなるの……やめてよ、やめてよ……」


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