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『スウィート・メモリーズ』ロールスレッド

597家路 ◆4J0Z/LKX/o:2023/01/14(土) 02:02:55 ID:???
「……みんなの決断は……わかった」
「ごめんなさい、私が我慢すれば……みんなが幸せになれると思ってたけど……それは私の傲慢だった」

越境者それぞれの結末の迎え方を聞き入れて、ニュクスは噛み締めるように頷いた。
過去へ戻り歴史を変えるトリガーとなる者、そして未来に残り多元宇宙の渡り人となる者。
そのどちらもの意志を、ニュクスは尊重する。元々自分の暴走のせいで時を跨がせてしまったのだから。
これ以上彼らの運命に介入する気は、ニュクスにはどうしてもなれなかった。

>>589
「コミ……うおおぁぁあッッ!?」

この場では最良の決断を下したつもりだったジョシュアだが、降り掛かるイムカの制裁!
彼は誰かの為に自らを投げ打つことを平気でする男だ。だからこそ生粋の兵士である。
兵士としてはよく出来ているが、一人の人間としては……ダメダメだ。平気で他人を傷付けてしまう。

「あぅあぅ……まあ、ごえんあひゃい……!」
「あのね、アーティファクトは…全部食べちゃったの」

ベティの下敷きになったジョシュアを見てガタガタと震えていたニュクスだったが、
そのもちもちほっぺをうにうにと押しつぶされると、気の抜けたノイズを出すだろう。
ヒリヒリと痛む頬をさすりながら、越境者が集めたアーティファクトはほとんどニュクスが取り込んだことを伝える。

「遺物(アーティファクト)はその尽くがニュクスの、いやALICEの力となるべく吸収されている」
「現存する物はなく、彼女の感覚でやり繰りしなければならないだろう……一応、データは送っておく」

メモリーボルトの一撃により余分な記憶はトコロテン式に押し出され、今や残るのは微かな残滓のみ。
だがサーボスカルの演算結果次第では、結末に多少影響を与えられるかもしれない。
無論、最も重要視されるべきはニュクス本人のパフォーマンスなのだが。そこは心配いらないだろう。

「コミッサー……イムカ、いや…………ラヴィニス」
「…………俺は諦めた訳じゃありません。絶対に……今度こそ、誰も取りこぼさない」

ややあって、ようやくベティの下から這いずり出てきたジョシュア。
可哀想なベティを裏返しの状態から起こしてやると、ズズンと地響きを立てて砂塵が舞い上がる。
それからイムカの隣に戻ると、迷うそぶりを見せつつも、今の彼女が誰であるかを汲み取った名で呼んだ。

>>592
「……すまない、私は……結局、誰かを苦しませる事でしか生きることができない愚かな存在だ」
「それでも私を父と呼んでくれるのなら……今度こそ、君を守り抜くと誓おう」

自らの胸に顔を埋め、音も立てずに涙を流すニアの小さな身体をダグラスの両腕が優しく包む。
こうしたことはこれまで数える程も無かったけれど、それでもずっと抱き続けていた愛情は。
ようやく罪の意識を乗り越えて、娘を守り続けるという選択肢を優越に選ばせる。

「だからもう、これ以上悲しまないで欲しい」
「ニア……私が名付けた、私の自慢の娘よ」

両手で優しくニアの頭を、柔らかな髪の流れに従って撫で、そのまま頬を伝う涙を親指が拭い去る。
名前のない兵器であった彼女を、かつてこの手で下したダグラスは。
人間のように怯える姿を見て剣を振り下ろすことを躊躇してしまった。
それが全ての始まり。気付けば自らを父と慕う一人の少女が生まれていた。だからこそ人に寄り添う者になってほしいと、ダグラスは彼女をNearと名付けた。

「君は私の怒り、濁っていた心を……洗い流してくれたのだから」

ニアはダグラスの願う通りの人間になった。今度は父が娘の願う姿になる番だ。
胸を張って誇れる、立派な父親に。

>>593
みんなで元の世界に帰る。これまで当たり前であり、そうでない事など考えたこともなかった結末。
戸惑いを見せていたアキレスだったが、やがて自らの役割を受け入れ、嗚咽と共に決意する。
彼は戦士でもないのに最後まで心折れずに戦った。誰よりも多くのものを失ったというのに。
だからこそアキレスには最後の役目が残されているのだが、それは今語るべきではない。

「……寂しくなるな」

柔らかな表情は親友へと向けるもの。ジョシュアの笑みは優しく、それでいて恋しさに満ちていた。
二人の出会いは穏やかなものではなかった。落書きに精を出すアキレスをジョシュアが追いかけて。
治安維持部隊と悪童。相反する立場の二人が、いつしか意気投合して悪友となり親友となった。

「時間が巻き戻った時、もしこの旅の事を忘れたとしても、俺は……必ずお前に会いに行くよ」

アキレスへと近づくと、ジョシュアはその両腕に痛いほど力を込めて彼を抱きしめた。
交錯し全てが朧げとなった世界で、互いの存在を暫し確かめ合って。背中を何度か叩いてから離す。

「他の世界のどんなアキレスでもない、"お前"に」

戻った世界にジョシュアは居ない。けれど一生の別れにはしないと、この最果ての世界から再会を約束する。
どれだけの時間が、世界が二人を隔てても。アキレスは彼の親友なのだから。


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