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【麗しのブロンディ】八宮めぐる【SS】
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名前なんか必要ねぇんだよ!
:2020/11/13(金) 20:08:30 ID:rZxOlIjE
「わー! すっごーい! 夕日が綺麗!この時間に来て逆に正解だったかもね、プロデューサー!」
九十九里浜に到着した時には、太陽の下弦がちょうど地平線に触れた頃だった。
海面が陽光を反射させて、海水全体が光っているようだ。
「ああ……綺麗だ」
「あ、そうだ!写真撮ってよ、プロデューサー!」
そう言って、めぐるが自分のスマホを俺に渡す。
「この前の写真集より、とびきりいいショットをお願いね!」
めぐるが桟橋へと駆けていく。金髪を後ろに流しながら。そんな後姿が『彼女』の被って、
一瞬、桟橋が永遠に伸びて行って、手の届かないところにめぐるが行ってしまうのではないか。そんな錯覚に襲われた。
半ば無意識に俺も駆けだして、めぐるの手を取った。
「……プロデューサー?どうしたの?」
めぐるが不安そうな顔で俺を見上げる。
「あー、その…… い、一緒に撮らないか? 写真」
「え? ……エへへ、だったらそう言ってくれればいいのにー!いきなり走ってくるからびっくりしちゃったよー!」
一瞬だけでもめぐるを不安にさせてしまったことを申し訳なく思いつつ、めぐると一緒に夕日を浴びながらスマホのレンズにぎこちなく笑いかけた。
『彼女』との一件以来、俺は恋とはおよそ無縁に生きてきた。
夏の後も俺と彼女は『友達』として過ごし、そして予定通りに彼女は両親と一緒にカナダに帰国して、それ以来連絡を取っていない。
SNSやテレビ通話もなかった時代だ。文通という手段もあるにはあったが、その時にはもう俺に夏の時のような情熱はなかった。
人を好きになること。好きになった人が遠くへ行ってしまうこと。その痛みに怯えながら生きてきた。
人生は出会いと別れの連続だ。それが嫌なら、一人で孤独に生きていくしかない。
けれど、社会に出てプロデューサーとなることを選んで時点で、その選択肢も消えた。
だから俺は、遅かれ早かれ、いつかこのジレンマを解消するしかない。
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