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【麗しのブロンディ】八宮めぐる【SS】

4名前なんか必要ねぇんだよ!:2020/11/13(金) 20:08:00 ID:rZxOlIjE
「……俺、君のことが好きだ」
二人でひとしきり地元の海で遊んだ後、俺は意を決してしたためていた想いを口にした。
何の捻りもない、平凡な告白。 覚えたばかりの英語かフランス語の愛の言葉を囁こうかとも思ったが、そのどちらも発音が完璧ではないのは分かっていたし、
誰かが飾った言葉ではなく、不格好でも自分の言葉で言いたかった。
『彼女』はその碧眼で俺を見つめて、ふっと笑った。
「ありがとう、■■君。 嬉しい」
「じゃあ……!」
「でも、いいの? 私、あと少しでいなくなっちゃうんだよ?」
そうだ。わかっていたことだ。彼女が日本に居れる時間は限られたもので、それは彼女が転入してきた初日に自己紹介で分かっていたことだった。
わかっていたことなのに、俺は言葉を詰まらせてしまった。
もし、「それでも俺は限られた時間を大切にしたい」「それまで君と一緒に居たい」と、精一杯気障なことを言えることができたら、もっと違っていた結果になったかもしれない。
……いや、何も変わらない。彼女がほんの一年以内にカナダへ戻ることは最初から確定事項で、高校生だった俺がどうこうできることではない。
多分、だから何も言えなかった。
目の前の『彼女』と友達以上の大切な誰かになれたとして。
俺はいつか来る別れをどう受け止めるのだろうか。
純粋にそれを、良い思い出として持ち歩けるだろうか。
そう思ったとき、俺は自信を持って首を縦に触れなかった。
要するに、俺は逃げた。不可避な『彼女』との別れが、俺に傷を残していくことが、怖かったから。
だから、俺は『彼女』と特別な関係になれなかった。
揺れる俺の瞳を見た彼女はふと顔を上げ、沈みゆく夕日に顔を向けた。 金色の長い髪が、オレンジ色の陽光の中へ流れ出し、夏へ溶けていく。
「……帰らなきゃ」
日が沈む。高校生の男女が二人で外を出歩ける時間ではなくなっていた。
言葉も少なく、俺と彼女は来た道を原付で戻り。 
俺の一世一代の大博打は、終わった。


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