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ガルパン みほルートGOODエンド

97名前なんか必要ねぇんだよ!:2016/11/02(水) 00:20:18 ID:yTFYy33M
 肩を震わせながら弱々しく呟いたその言葉は、自分の知る逸見エリカがそこにいないことを確信させた。
 それから、今に続く生活が始まった。なんとか学園側の計らいもあって卒業はできたエリカだったが、当然当初の予定だった大学への進学は断念せざるを得なかった。部屋への籠城を続ける彼女のもとへ、大学の授業が終わってから直行する。その道中で彼女の好物であるハンバーグ弁当を買っていく。エリカはこの弁当以外は一切口にしないらしく、それもその身体をやせ細らせる原因となった。何度か試しに別の弁当を買ってきたこともあったが、手を付けようともしなかった。エリカの家族から弁当代を渡されるようになったのは通いだしてから1ヶ月を過ぎた頃だった。正確には数回目の訪問の時点で差し出されていたのだが、断っていた。しかし、そんな日々が続いて、肉体的、精神的、そして経済的な負担が無視できなくなり、受け取ってしまった。一回そうなってしまえばどんどん躊躇はなくなっていき、やがて当然のことになってしまった。

 「……ねぇ、どうしたの……?」

 いつの間にか弁当を食い終わっていたエリカがこちらを見ながら言った。弱々しく、何かに怯えるような眼だった。

 「ねぇ、あなたまで私を見捨てるの?黒森峰みたいに!戦車道みたいに!」

 突然大きな声を出しながらこちらに迫って来るエリカ。だが、こうして不安定になるのも今に始まったことではない。

 「いや、いや……捨てないで、一緒にいて……でないと、私……」

 こちらにすがりつきながら、すすり泣くように彼女が言う。これも初めてのことではない。
 人は慣れる。どんな異常な状況でも、それが長く、何度も繰り返されれば慣れてしまう。最初に抱いた、恋人を救いたい、という想いも、一向に改善しない状況の連続に、どんどん摩耗していった。もはやこうしてエリカの下へ来るのは、義務感や責任感ではなく、ただの惰性になりつつあった。
 
 「お願い……捨てないで……」

 目の前で嗚咽する、かつて逸見エリカだったものを見下ろす自分の目は―――はたして、あのときの周囲の視線と、どちらが冷たいだろうか。


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