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ガルパン みほルートGOODエンド
76
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/10/30(日) 22:31:06 ID:OsjqZxVQ
「うぅ、人が真面目に話してるのに……」
一通り堪能すると、髪を整えつつ恨みがましい眼で優花里がこちらを見てくる。ちなみに、我々夫婦はお互いがお互いの散髪を行っている。手櫛であっさりと元に戻るあたり、我ながら腕を上げたな、などと思う。
「どういうつもりなんですかぁ」
どういうつもりもなにも、先ほどの彼女の話は真面目に聞いてやるようなものではなかった、というだけの話である。押し付け?嫌な思い?自分が?まったく、見当はずれも甚だしい。
「……」
確かに、彼女と出会った時には戦車のことなんて何も知らなかったし、理髪師になるなど考えもしなかった。だが、それから彼女と会い、話し、知っていくにつれ、自然と惹かれた。嬉しそうに戦車について語り、誇らしそうに友人や両親のことを話す彼女が、たまらなく可愛く思えた。
だから、この道を選んだ。理髪師の資格を取ったことも、戦車について学んだことも、自分の姓を捨て秋山家に婿入りし店を継いだたことも―――ただの一度さえ後悔したことはない。むしろ誇りでさえある。それらすべてが、秋山優花里の夫に、あの子の父になるための―――今のこの幸せへと至るための道のりだったのだから。
「……ありがとう、ございます。本当に」
瞳を潤ませながら、優花里は微笑む。
「こんな私ですが、あの子の母として、そしてあなたの妻として、一生ついて行きます。どうか、改めて―――よろしくお願いします」
深々と頭を下げる優花里にもちろん、こちらこそ、と答え、顔を上げた彼女と見つめっていると―――。
「おかあさんもおとうさんも、なにしてるの?」
「へ!?」
いつの間にかこちらに来ていた娘が、首をかしげながら問いかけてくる。
「あ、わ、あわわわわ」
隣では優花里が頭から湯気でも出そうな真っ赤な顔になっていた。周囲を見回すと、周りの客からもなにやら生温かい視線を感じた。先ほどのやり取りで気づかぬうちに目立ってしまっていたようだ。娘もそれをなんとなく感じ取って戻ってきたのだろう。
「っ、ふ、ふ、ふ、……」
ふ?
「不肖ッ、秋山優花里!お手洗いに行ってまいりますッ!!」
そう叫びながら立ち上がると、そのまま館内のトイレの方向へ突撃していく優花里。どうやら、完全に羞恥の許容量をオーバーしたらしい。結婚以来、少しずつおしとやかになろうと努力している彼女であったが、今ばかりはそれも吹き飛んでしまっていた。
「おかあさん、どうしたの?」
尋ねてくる娘の頭をなんでもないよ、と撫でてやりながら、妻のクールダウンと帰還を待つ事にする。穏やかな午後の日差しを浴びながら、秋山理髪店改め、ミリタリーバーバーアキヤマの定休日は過ぎていく。
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