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ガルパン みほルートGOODエンド
64
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/10/30(日) 00:47:52 ID:OsjqZxVQ
そしてほどなくして華の指定した日がやってきた。ふたりで彼女の実家である五十鈴家の本家邸宅を訪れると、母である百合さんと、奉公人の新三郎さんが迎えてくれた。
「華さん、お帰りなさい。それにあなたも、お久しぶりね。遠いところをご苦労様」
そう言いながら百合さんは笑顔で歓迎してくれる。この家を訪れるのは交際を始めた直後にあいさつに来て以来だった。
「さあ、早く奥にお入りなさい。新三郎、ふたりの荷物を」
「はい、お任せください」
百合さんの言葉にすばやく動く新三郎さん。自分より年上の彼に荷物を運んでもらうのには多少抵抗があったが、ここで断るのもかえって悪いだろうと恐縮しつつバッグを手渡した。
その時、一瞬目がった彼の視線に、何かを訴えかけるようなものを感じたが―――。
「ほら、早く行きましょう」
華からかかった声にそれは遮られた。何事もなかったように新三郎さんがふたり分の荷物を運んでいくのに慌ててついていった。
「ごめんなさいね。今夜はどうしても外せない用事があるの。あなたたちは気にせずくつろいでいってね」
夜になり、料亭のような豪勢な料理を振舞われたあとに、百合さんが言ったその用事はここから少し離れたところに行かなければならないらしく、新三郎さんもそれに同行するそうだ。……正直に言えば、何かと住む世界の違いを娘以上に感じさせるその立ち居振る舞いには常に緊張させられるので、若干の安心を感じてしまった。
「では、私は外出の支度をします。華さん、少し手伝ってくれるかしら。新三郎は車の用意を」
「はい、お母様」
「はい、奥様」
そんなやりとりの後、百合さんは華を伴い自室へと向かい、新三郎さんは玄関へと歩いて行った。なんだがひとりで何もしないのが申し訳ないような気がして、だからといって女性の支度を手伝うわけにはいかず、自然と新三郎さんのあとに付いていくことになった。
彼のあとを追い屋敷の外に出ると、すでにある程度用意してあったのか、車―――正確には人力車―――が玄関のすぐ横に置かれ、その隣で新三郎さんが待機していた。
「あぁ、もしかしてお手伝いに?申し訳ありません、お客人に気を遣わせてしまって」
そういって深々と頭を下げる彼に慌てて勝手についてきただけですから、と答える。むしろ悪いのは客の身でありながら動き回った自分だ。
「……ひとつ、お伝えしたいことが」
不意に表情を険しいものに変えた新三郎さんが、こちらをまっすぐ見ながら言った。まるでなにか葛藤に葛藤を重ねたかのような顔と声だった。
「―――どうか、心を強く持ってください。あなたには選べるはずの未来がある。だから」
「新三郎」
まだ言葉を続けようとしていた新三郎さんだったが、いつのまにか玄関までやってきていた百合さん―――後ろには華の姿もある―――の声がそれを遮った。
「何を話しているのかしら?」
咎めるような視線を彼に向けながら問いかける百合さんに、新三郎さんは表情を普段通りのものに戻すと、
「……いえ、ちょっとした世間話です。奥様が気にされるようなものではありません」
「そう。ならいいわ」
その答えに納得したのか、視線の鋭さを消して微笑んだ百合さんは、そのまま人力車の座席へと優雅な所作で腰掛けた。新三郎さんもすぐに全部の取手をもち、出発の準備が万端に整った。
「では。―――華さん、しっかりとね」
「はい、お任せ下さいお母様」
百合さんがこちらに軽く挨拶をしたあと、華に言葉をかけた。それを合図としたのか、直後に人力車は夜道へと走り去っていった。
「さて、中に戻りましょうか。お風呂の準備も出来ていますよ」
華に促され、屋敷の中に入る。頭の中では、新三郎さんの言葉がぐるぐると回っていた。
華道の名門だからなのか、屋敷の中は何かの花の香りが常に漂っており、それは風呂場でも同じだった。ある種のアロマテラピーを受けているかのような気分で入浴を終えると、すでに先ほど頭を支配していた不安のようなものはすっかり取り払われていた。
「今日はこちらでお休みになってください」
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