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ガルパン みほルートGOODエンド
54
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/10/29(土) 01:12:25 ID:q7Vj.Cqo
「お気づきになりましたか」
と、後ろから声がかかった。振り返ると華がひとりで戻ってきていた。
「あの子は部屋でそのまま休んでいますよ。本当ならいつもどおりお片づけまでやれせないといけないのですけど……今日は特別に」
そう言いながら彼女はテキパキと稽古の片付けを進める。こと花道の稽古に関しては厳しい彼女らしからぬ行動だ。裏を返せば、今の娘はそれだけ平時と異なる状態だということになる。
「心の乱れは花道において隠せるものではありませんから。あの子くらい幼ければなおさら」
すっかり片付けを終えた華は、そのまま流れるような動きでふたり分のお茶を淹れると、それを運びながらこちらの横に座って話を続ける。緑茶の香りと、様々な花の香りが混ざりあった華の香りが漂った。
「どうやらあの子、学校で好きな相手ができたみたいなんです」
思わずお茶を吹き出しそうになるのをなんとかこらえるが、動揺はとても収まらない。まだあんなに小さい娘に好きな相手?いつもおとうさんだいすき、と言ってくれるあの子に?いやまさかそんな―――。
「もう、あなたがそんなに心を乱してどうするんですか」
クスリと微笑みながら、彼女が背中を優しくさすってくれたおかげでだいぶ平静を取り戻せた。
「もちろん子供の言うことですから、恋人とかそんな話とは程遠いものですよ。だからそんなに心配することはありません」
華は自身の湯呑のお茶で喉を潤しながらなんでもないことのように言う。確かに考えてみればその通りだ。まだラブとライクの区別がつくような年齢ではない。
「とりあえずあの子には、しっかりと考えなさい、それまで稽古は禁止します、と伝えておきました。今のままでは良い花を生けることなんて出来ませんから」
こういう時、彼女は柔軟だ。ただ厳しく稽古をつけるだけではない。それは、伝統を軽んじることなく、それでいてその伝統にとらわれないとい気質からきているのだろう。かつて戦車道の中で自身の花道に対するひとつの答えを見つけ、新たな境地に至ったというのと同じように。
「ふふ、大げさですよ。でも、そうですね。確かに私はそういう部分があるのかもしれません」
そういうと、彼女はこちらの手を取りながらその身を寄せ、体重を預けてきた。心地よいぬくもりと香りを感じる。
「もし、ただただ伝統を、五十鈴流を守ることしか考えていなかったら、あなたと結ばれることはなかったでしょうから」
痛いところを突いてくる。確かにおよそ花道に関して門外漢であり、家柄もごくごく一般的な自分が、歴史ある花道の名家である五十鈴流の後継者と婚姻にまで至るなんてことは、普通ならありえないことだ。このあたりは、婿入りの際にも揉めに揉めたところだ。その時も、そして現在も華の助けがなかったらとっくに追い出されているだろう。
「私はただ、あなたのことを経歴だけで判断しようとする人たちに教えて差し上げているだけですよ。私の愛する人が、いかに素晴らしい人か、どれだけ五十鈴流の一員になるのにふさわしいか」
どこか誇らしげでさえあるその言葉に顔が熱くなるのを感じた。時折、我が妻はこんな風にかなり直球な愛情表現をしてくるのだからとても敵わない。
「……さて、と。そろそろあの子の様子を少し見てきますね」
そう言いながら美しい所作で立ち上がる華。そこに自分のような動揺は全くと言っていいほどになかった。
「今のうちからしっかりと考えさせないと。将来世界で二番目に素敵なひとを見つけられなくなってはかわいそうですから」
二番目?と思わず聞くと、先ほど以上に自信満々な―――世間一般でいうドヤ顔にも近い表情で堂々と宣言した。
「だって、世界で一番素敵な人は、私の―――私だけの旦那様ですから」
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