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ガルパン みほルートGOODエンド

351名前なんか必要ねぇんだよ!:2016/12/15(木) 00:55:00 ID:eVc2Z042

 【番外編 麻子と冬のある日】


 ぐつぐつと耳に心地よい音が届く。目の前の小さめな土鍋からは、湯気が立ち始めていた。

 「おい、そろそろいいんじゃないか」

 こたつの反対側に座る少女―――麻子は、身を乗り出して鍋を見ながら言った。クリスマスプレゼントを前にした子供のようにそわそわとしている姿は大変可愛らしいが、もう少し待て、と制した。食べごろまで大体あと2〜3分だ。

 「……」

 恨めしそうな目でこちらを睨む麻子。しかし、せっかく作った料理なのだ、どうせならしっかりと美味しく食べたいと思うのが人情だろう。

 「……おい、2分たったぞ。さあ開けよう」

 土鍋の蓋に手をかけようとする麻子を再び制止する。ただし今度は食べごろ云々の話ではなく、単純に彼女が素手で蓋を取ろうとしたからだ。こういう食べ物関連の話になると、日頃天才の名を欲しいままにしている才女も隙だらけになる。
 鍋つかみを渡して、今度こそ御開帳である。鍋からは一気により多くの蒸気と食欲を誘う香りが広がった。

 「おぉー……!」

 麻子は目をより一層キラキラと輝かせると、ものすごい速さで自身の取り皿に具を掬っていく。しかも肉ばかり。こちらが自分の分をよそう頃には、すでにもっしゃもっしゃと取った分を頬張っていた。早業にも程がある。

 「……ふぅ、美味しい」

 ゴクリと口に含んでいたものを飲み込むと、麻子は満足げに息をついた。食べているのが温かい鍋料理ということもあり、頬がわずかに上気している。

 さて、なぜ我々が二人で鍋をつついているのかと言うのは、数時間前に遡る。学校が冬休みに入り、普段つるんでいる面子が軒並み実家に帰ってしまい、暇を持て余した結果、たまには料理でもするか、と思いたち、スーパーへと向かった。するとその道中、コンビニの店内に見慣れた友人―――冷泉 麻子の姿を見つけた。無視するのもどうかと思い店に入ると、彼女はコンビニ弁当を両手にひとつずつ持って、難しい顔でそれらを交互に睨みつけていた。声をかけると、

 『ん……ああ、お前か。ちょうどいい、この『特盛カツ丼弁当』とこっちの『20%増量ナポリタン』のどっちがいいと―――』

 麻子はそこまで言いかけたが、こちらをじっと見つめると、

 『お前、確か料理が出来たよな?』

 その後、なし崩し的に二人で手料理を食べることになった。当初はこちらにすべてやらせようとしていたが、流石に割に合わないので押し問答の末、麻子が場所と食器を提供し、こちらが料理のメインを担当、材料費は折半、という形になった。


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