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ガルパン みほルートGOODエンド

35名前なんか必要ねぇんだよ!:2016/10/27(木) 23:14:32 ID:ayxgt20w
 「ふたりとも、忘れ物はないな?」

 そうこうしているうちに家を出なければいけな時刻となってしまった。玄関で娘と一緒に靴を履いているところに麻子から声がかかる。それに揃って大丈夫、と答えるのも毎朝のお約束だ。

 「事故には気を付けるんだぞ。なにかあったらすぐに連絡しろ」

 ―――気付いたのは一緒に暮らしはじめ、こうして朝の見送りをしてもらうようになってひと月ほど経った頃だった。どうして朝に弱い彼女がこうまでその生来の体質に抗い、早起きをして家事をするのか。もちろん、先の通りに専業主婦としての意地や義理もあるのだろう。だが、一番の理由は麻子の過去にある。幼少期に両親を事故で失ったこと。その日偶然にも母親と喧嘩をしてしまったこと。それらは彼女の心にいまだに―――そしてこれからも消えることのないであろう傷を残した。ゆえに、毎朝彼女は奮闘するのだ。二度と同じ後悔をしないように。
 
 「よし。じゃあ―――いってらっしゃい」

 その言葉に、我が子と揃ってしっかりと返事をする。

 「「いってきます!」」

 麻子の両親は帰ってこない。それは当然だ。だが、現在の彼女にとって、自分と娘がもっとも大切な存在であるという確信がある。ならば、これもやはり当然、彼女の想いと願いに答える義務があるだろう。
 ドアを出て、こちらの姿が見えなくなるまで見守ってくれている妻を見て、今日も無事に一日を過ごし、彼女のもとに少しでも早く帰るという決意を新たにして職場(せんじょう)へと歩みを進めた。


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