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ガルパン みほルートGOODエンド
33
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/10/27(木) 23:12:38 ID:ayxgt20w
【麻子ルート GOODエンド】
「……おはよう」
寝室から出てキッチンへ向かいそこにあった人影に声をかけると、ただでさえ普段からハスキー気味な声をさらに二音階ほど低くしたような、ともすればうめき声のようなあいさつが返ってきた。こちらを振り返った妻―――麻子は、街の不良のごときすさまじい目つきの悪さだった。見ようによってはB級ホラーのゾンビのようなそれは、彼女をよく知らない人間が見ればまず間違いなくギョッとするだろう。しかし、家族である自分からすればそれは朝のいつも通りの光景であり、むしろ安心感すら覚えるほどだ。
「おはよー」
「ああ、おはよう。ふたりとも、もう少しでできるから座って待っててくれ」
ほどなくして起きてきた娘も自分と同じくその姿に驚きもせず、さっさとテーブルの自分の定位置につく。あいかわらずの目つきの悪さで電子レンジとトースターを威嚇するかのような視線を送る妻を見守りつつ、我が子に習い椅子に腰を下ろす。
麻子が朝に弱いということは交際が始まる前からいやというほど味わっている。当然、結婚して同棲することになった際も朝の家事は自分がやる、と言ったのだが、彼女は頑として譲らずに現在に至る。
『仮にも専業主婦が家事をやらないのはおかしいだろう』
というのが彼女の言い分だった。妙なところで義理堅い麻子らしい。最初のうちはその睡魔との激闘ぶりに見ていてハラハラしたものだが、慣れとは恐ろしいもので、彼女のそんな姿をある種楽しみにさえしている現在がある。
「さあ、できたぞ」
どうやら多少は眠気も晴れてきたようで、先程までは麻子の体感でおそらく3トンはあったであろう瞼が今では幾分か上に持ち上がっている。それでも午後以降の彼女に比べれば3分の1程度の速度でしか動けていないのは仕方ないだろう。せっせと運んでくる皿には、人数分のトーストとベーコンにスクランブルエッグ、それにサラダが盛り付けられていた。大半は昨日の夜に用意していたものだ。さすがに早朝の彼女に包丁を持たせるだけの勇気は自分にはない。ちなみに手伝わないのは亭主関白を気取っているからではもちろんなく、麻子がすべて自分でやると言って聞かなかったからだ。このあたりも彼女にとって譲れないラインらしい。
「「「いただきます」」」
三人で声と手をあわせる。なるべく我が家では家族揃っての食事をするよう心がけているが、これは麻子の希望も大きい。人一倍家族というものに思い入れのある彼女らしい方針である。
「今日は遅くなるのか?」
トーストを齧りながら麻子が聞いてきた。どこか不安そうなその表情に、間髪入れずに早く帰る、と答えた。毎朝同じやりとりをしているが、この顔に勝てた試しがない。
「……そうか」
幾分か柔らかくなった彼女の顔を見て、先ほどの宣言を絶対に守ることを内心誓う。これも毎朝のことだ。
「わたしもがっこうおわったらすぐにかえるね!」
最近になって一人称が自分の名前から「わたし」に変わったばかりの娘も力強く宣言する。こういうところは父親である自分に似たらしい、と思わず苦笑する。
「わかった」
言葉こそそっけないものだが、ますます頬を緩めた麻子は、満足げに残りの朝食を早々に平らげた。
それに続いて自分と娘も食事を終えると、それぞれ出勤と登校前の支度に入る。
スーツに着替えている最中に、娘の支度の手伝いを終えた麻子がやってきた。
「だいぶくたびれてきたな。そろそろ新しいスーツを買ってもいいんじゃないか」
ジャケットをこちらに手渡しながら麻子が言う。しかしそれは少々受け入れ難い提案だ。なぜならこのスーツは、現在の職場への就職が決まった際にほかならぬ麻子がプレゼントしてくれたものだからだ。高級ブランドのものではないが、自分にとっては代え難い価値のある一着なのだ。
「……なにも捨てろとは言っていないだろう。他にも何着か持っていた方が便利だって話だ」
わずかに頬を染めつつ彼女は言った。それはわかっているのだが、やはりこのスーツを着ないとどうにもスイッチが入らないようになってしまっている自分が居るのだからいかんともしがたい。
「やれやれ。それならしばらくお前へのプレゼント類は全部スーツだな」
表情を苦笑に変えた麻子の言葉にそれはいい考えだ、と返した。彼女からの贈り物は自分にとって例外なくラッキーアイテムだ。勝負服が増えるのは悪いことではあるまい。
「皮肉で言ったんだ、馬鹿」
呆れたようにしながらも笑顔のままの彼女にこちらも笑顔で答えつつ、その首元に光る結婚前に贈ったネックレスを、いまだに常に身につけているあたりお互い様だ、と思うのだった。
「
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