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ガルパン みほルートGOODエンド
231
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/11/24(木) 23:16:10 ID:.ux1uMxQ
【沙希ルート GOODエンド】
「……」
朝目覚めると、至近距離に顔があった。能面の如き無表情―――なようでいて、ほんのわずかだが頬を紅潮させている。息がかかるレベルで接近している今のような状態でないと気づけないレベルのものだが。
「……」
無言のままリビングの方向を指差す妻―――沙希。朝食ができたので起こしに来てくれた、ということだろう。基本的に毎朝こんな感じなのでいい加減慣れてはきたが、できればもう少し心臓に優しい起こし方にしてほしい。
すぐに起きるよ、と彼女に言って起き上がろうとする―――が、その沙希が微動だにしないのでそうもいかなかった。現在、彼女はこちらに馬乗りの状態なので、どいてくれないと何もできないのだが。
「……」
相変わらずの無言・無表情の沙希。彼女が両手を上から押さえつけられているので抗いようがない。かつて戦車道において装填手を務めていたその腕力は華奢な見た目とは裏腹に相当なもので、一般的成人男性の体格を持つ自分が(もちろん体勢もあるが)全く振りほどけないほどである。
「……」
ただでさえ近い顔をさらに近づけてくる。―――ここまできてようやくその意図がわかった。つまり彼女は……。
「……んっ」
唇を合わせるだけの軽いキス。しかし沙希の口元はわずかに緩んでおり、満足したことが伺える。
「……」
やはり無言で立ち上がり、トコトコとリビングへ向かう妻の背中を、押さえつけられていたせいで軽く痺れる手首を抑えながら追った。
「……」
我が家の食卓は朝昼夜を問わず非常に静かである。沙希は黙々と箸を動かし、自分もそれに倣う。最初は若干の居心地の悪さを感じなくもなかったが、いい加減彼女との付き合いも長い。もはやこの静寂に落ち着きさえ感じるようになってきたのだった。
彼女は基本的に食事中は自身の手元を見ているが、時折手を止めてこちらをじっと見つめてくることがある。以前はその考えが読めず戸惑うこともあったが、最近はその視線が食事の出来を問うものであるとわかってきた。しっかりと目を合わせ、美味しいよ、と笑顔で答える。沙希はその回答に満足したようにわずかにうなずくと、ふたたび手を動かし始めた。
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