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ガルパン みほルートGOODエンド
114
:
名前なんか必要ねぇんだよ!
:2016/11/03(木) 15:21:52 ID:gXtuJRo2
「ハァ、ハァ……まったく……」
マラソンでは一切乱れのなかった息を荒くしていた彼女は、それを整えると、
「すみませんでしたッ!!」
こちらへ向き、そう叫びながら勢いよく頭を下げた。
「せっかく作ってもらった朝食を食べられなかったばかりか、お弁当を忘れてそれを届けてもらい、挙句の果てには生徒たちにあんな……本当にすみませんでしたッッ!!」
体育会系である彼女は、自分が悪いと思ったときは今のように全力で心からの謝罪を行う。ちなみに敬語なのは彼女がひとつ年下だからである。こちらとしては夫婦で対等な関係なのだから必要ないと言ったのだが、年長者を敬うというポリシーは曲げられないとのことだ。
なんにせよ、大したことはしていないのだからそんなに謝らなくてもいい、と告げる。典子の全身全霊の謝罪はむしろこちらが申し訳ない気持ちになってくるのだ。
「ありがとうございますッッ!!」
そういってもう一度頭を下げると、ようやく元の姿勢に戻った。しかし、確認しなければならないことがひとつあった。
「?なんでしょうか?」
先ほどの生徒たちの態度は気にしていないが、彼女らが口にしていた情報はいったいなんなのか。
「あー……あれは……」
一瞬歯切れが悪くなったかと思ったら、
「すみませんでしたッッッッ!!!!!」
先程よりも大きな声で再び頭を下げた。
「生徒たちに聞かれて、つい我慢できずに自慢してしまいましたッ!たくさん言ってしまいましたッッ!!本当にすみませんッッッ!!!」
……この様子ではあれら以外に色々と話しているらしい。頭を抱えたくなったが、同時に妻の愛情を感じて嬉しくなってしまう。嘘のつけない彼女だ、それだけこちらを深く想ってくれている証拠といえるだろう。
とは言え恥ずかしいのも事実なので、とりあえずもう少し自重するよう注意した。
「はいッ!努力しますッッ!!」
……絶対に言わない、とは約束できないのもやはり正直な彼女らしい。その努力を信じ、これ以上は言わないことにした。
「ああ……でも……」
不意に肩と声を落とし、典子が言う。
「絶対にあの子たち、さっきのこと噂してます。明日には絶対学園中に伝わって……あぁぁぁ、間違いなくイジられる……」
憂鬱そうに嘆息する姿に同情を禁じえないが、こればかりはどうしようもないだろう。
「……よしッ!」
パァンッ、と自身の頬を両手で張り、背筋を伸ばす。その表情は、すっかりいつもの気合に溢れたものになっていた。
「ウジウジ悩んでいても仕方ありません!こうなったら真正面から受けるのみです!」
まるでバレーか戦車道の試合に臨むかのようなやる気に満ちた様子の彼女に、餞別代わりに包みを渡す。というか、これが目的で来たのだが。
「ありがとうございますッ!大丈夫ッ!どんなことだって、根性と―――」
なんとも頼もしい笑顔で、典子は宣言する。
「旦那様の愛があればッ!乗り越えられないはずがありませんッ!!うおぉぉぉーーーッッッ!!!ラブ&根性ーーーーーーッッッッ!!!!」
叫びながら校舎の方へと突貫していくその背中を見送りつつ、先ほどの約束はおそらく果たされないだろうな、と思う。
さて、こちらもそろそろ戻らねば。思いもがけず騒がしい昼休みになってしまったが、それ以上に活力をもらえた。彼女に負けない愛と根性で、午後の仕事をかたづけてしまおうか。
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