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ガルパン みほルートGOODエンド

112名前なんか必要ねぇんだよ!:2016/11/03(木) 15:19:18 ID:gXtuJRo2

 【典子ルート GOODエンド】

 正午。午前の勤務時間終了の合図と同時に、引き出しの中の二つの包みのうち明るい色の方を取り出し、社屋を駆け足で出発する。目的地は妻の勤務先だ。
 事の起こりは今朝だ。妻は起きてきた途端に朝の会議があるから早く出勤しなくてはならないのを忘れていた、と言い出した。今日の食事当番は自分だったのだが、彼女はせっかく作ってくれた朝食を食べられなくて申し訳ないと何度も謝りながらトーストだけを咥えて家を飛び出した。そしてその時、この包み、すなわち弁当を忘れていった、というわけだ。彼女の職場には食堂があるはずだが、今日の弁当は結構な自信作だ。どうせなら食べて欲しい、と思い、こうして届けに行こうとしているのだ。目指すは妻の勤め先―――大洗女子学園。

 10分もかからないで目的地に到着した。我々夫婦の職場は非常に近く、普段は一緒に出勤をしているくらいだ。さて、確かこの学校の午前最後の授業である4時間目は12時15分終了だったはず。と、すればおそらく妻はまだ仕事中という事になる。とりあえず正門前にいる警備の方に事情を話し、昼休みに入ったら彼女に取り次いでもらうのがベターか。そう考え、さっそく声を掛けようとしたのだが、

 「ほらーッ!へばるなーッ!あと少しでゴールだッ!根性ーーーッッ!!!」

 少し離れたところから聞こえた声に動きを止める。まさに腹の底から出ている、といった風の理想的な大声と、いつもの口癖。間違えるはずもない、彼女だ。
 声の方を見てみると、案の定妻―――典子は、ジャージ姿で体操服姿の少女たちの先頭を走っていた。どうやら体育教師である彼女の今日の授業はマラソンであるらしい。
 なんとなく悪戯心が働き、物陰に身を隠してみる。せっかくの機会だし、我が妻の仕事っぷりを見るのも悪くないだろう。

 「よーし、みんなよく頑張った!ナイス根性!」
 
 満足気な笑顔で言う典子がまったく息が上がっていないのに対し、生徒たちの方はすっかり音を上げていた。皆ゼェゼェと荒く息をついている様子に少し同情してしまう。典子の体力はまさに規格外だ。休日のたびに彼女の趣味であるスポーツ、特にバレーボールの練習に付き合うたびに似たような状態になっている身としては他人事とは思えなかったのだ。もっとも、おかげで腹が出始めたと嘆く同年代の同僚に比べ、体型や運動能力はずいぶんマシなものになっているが。

 「さあ、お待ちかねの昼休みだ!みんなしっかり食べて体力つけて、午後の授業も頑張るように!」

 彼女がそういった直後、ちょうどチャイムが鳴った。生徒たちはありがとうございました、と揃って礼をすると校舎の方へ歩いていく。

 「さてッ!私もお昼……に……」

 そこまで言うと、急に典子は硬直、そしてすぐに頭を抱えながらしゃがみこんでしまった。

 「……あぁぁぁぁぁ……!!」

 うめき声のようなものまで上げ始めた。……どうやら肝心の自分の昼食である弁当を忘れたことに気づいたらしい。
 さて、そろそろ頃合か。普段見られない妻の姿を堪能し終えたところで、当初の目的を果たすべく彼女に近づき、その肩を叩く。

 「うぅ……何か質問?悪いけど後にしてくれ……今は私は……うぅ……」

 顔を伏せたままでそう答える典子。どやら生徒と勘違いしているらしい。誤解を解くべく、あえてわざとらしい口調でなにかお困りですか、と声をかけてみる。


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