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:
(-_-)さん
:2013/08/25(日) 18:58:54 ID:XVTPOFPI
「奥さん蕎麦を食うにもいろいろ流儀がありますがね。
初心の者に限って、無暗にツユを着けて、そうして口の内でくちゃくちゃやっていますね。
あれじゃ蕎麦の味はないですよ。
何でも、こう、一としゃくいに引っ掛けてね」と云いつつ箸を上げると、長い奴が勢揃いをして一尺ばかり空中に釣るし上げられる。
迷亭先生もう善かろうと思って下を見ると、まだ十二三本の尾が蒸籠の底を離れないで簀垂れの上に纏綿している。
「こいつは長いな、どうです奥さん、この長さ加減は」とまた奥さんに相の手を要求する。
奥さんは「長いものでございますね」とさも感心したらしい返事をする。
「この長い奴へツユを三分一つけて、一口に飲んでしまうんだね。
噛んじゃいけない。
噛んじゃ蕎麦の味がなくなる。
つるつると咽喉を滑り込むところがねうちだよ」と思い切って箸を高く上げると蕎麦はようやくの事で地を離れた。
左手に受ける茶碗の中へ、箸を少しずつ落して、尻尾の先からだんだんに浸すと、アーキミジスの理論によって、蕎麦の浸った分量だけツユの嵩が増してくる。
ところが茶碗の中には元からツユが八分目這入っているから、迷亭の箸にかかった蕎麦の四半分も浸らない先に茶碗はツユで一杯になってしまった。
迷亭の箸は茶碗を去る五寸の上に至ってぴたりと留まったきりしばらく動かない。
動かないのも無理はない。
少しでも卸せばツユが溢れるばかりである。
迷亭もここに至って少し躊躇の體であったが、たちまち脱兎の勢を以て、口を箸の方へ持って行ったなと思う間もなく、つるつるちゅうと音がして咽喉笛が一二度上下へ無理に動いたら箸の先の蕎麦は消えてなくなっておった。
見ると迷亭君の両眼から涙のようなものが一二滴眼尻から頬へ流れ出した。
山葵が利いたものか、飲み込むのに骨が折れたものかこれはいまだに判然しない。
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