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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか、今度こそ」

1Mii:2020/12/13(日) 04:46:59 ID:9GX1QhWw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」 【前々スレ】

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」【前スレ】

に引き続く続編となります。前々スレ、前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。
過去作を読まれていないと把握困難な設定、独自解釈が多々あります。

遅い進行のうえに寄り道万歳のスレですが、引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

ラナ「たったーん♪たかたかた〜ん♪
  そのほか、いくつか注意点をお知らせするよー。

     ・スレ主の、基礎体力面での戦闘能力解釈は、ざっくり言うと…
      キャラとしての登場時期の早さと、登場回数の多さで大方決まるからね!

      マリオ、クッパ、リンクを『3強』と表現してるけど、たとえばクッパVSガノンドロフだと、
      クッパが欠伸しながらパンチを繰り出すだけでガノンドロフを一撃粉砕できるくらいの力量差があるよ!
      パーティゲームに参加しないから仕方ないってことで、うん。敵があっさりやられても嘆かないで…。
      リンクとの差が付いた理由は、前々スレを読めばわかる、のかなあ…?

     ・前々スレ・前スレ同様、いろんなパロディ、メタ発言が散りばめられてるよ!
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義が白けるなら
      急がず慌てず別のスレに移って、このスレのことは忘れよう!
      
     ・ようやくスマブラ編が完結して…マリオカート編にちょっとずつ戻っていくんだって!よかったよかった!」

シア(…………ちょっとずつ?)

169Mii:2021/06/01(火) 01:21:37 ID:ykdUu4jg
からだが、いうことを、きかない。
ぶるぶる、がたがた、ふるえにふるえて、とまらない。
さっきまで、へいきなように、みえたのに。

ど、うして?
からだが、いたい。
てきが、こわい。
しぬのが、こわい。

マリオに、すがり、つきながら。
そのまま、ずるりと、へたりこむ。



ロゼッタ「しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないぃ………!!
    たす、けて、マリオ…!おねがい、でず、がらぁ!!」ガタガタガタガタガタガタ



ただただ、マリオに、すがりついて、なくばかり。

まわりの、ひとたちが。
わたしの なさけない すがたに あぜんと しています。

デイジー「ロ、ロゼッタ!?い、今さら、どうしちゃったの!?
     まるで別人だよ!?何が起こったの!?」

ヒルダ「そ、そんな!あんなにロゼッタったら、心が強かったじゃないですかっ!!
    これじゃ、最初の頃の私…いいえ、それ以上に怯えてしまって――!?」

170Mii:2021/06/01(火) 01:28:41 ID:ykdUu4jg
マリオ「そ、そうだぞロゼッタ!まさか、残機が無くなったことで怖くなったのか?
   大丈夫だ、これ以上の深手は絶対に負わせやしない…………

   ――――――――残機が、無くなった?」

デイジー「何か気付いたのマリオ!?」

マリオ「…………おいデイジー!ロゼッタは、デイジーに鍛えられてる間、どんな精神状態だった!?
   あと、何回くらいロゼッタの残機を奪った!?」

デイジー「…えっと、すっごく精神は安定してたよ!?こんな姿が想像もできないくらい!
    残機を奪った回数は…3000は超えてたと思う、けど」

マリオ「――――3000だって!?多すぎるだろ!?
   基礎体力レベルが50行かない奴が、数か月で消費していい回数じゃないぞ!?
   そんでもって、ロゼッタの主観だとそれほど非常識な状況じゃなかったんだな!?
   ってことは……………………まさか、ロゼッタ、お前…………!

   残機が無い現実空間での命懸けの特訓や修行、碌にやってこなかったんじゃ…?
   残機制度は確かにすごく便利だが、それに依存し過ぎていたとしたら、
   さっきので一気に反動が…!?ってことは―――――――――まずいっ!?」





ロゼッタ「――――――――たす、け、てぇ……!!」ポロポロポロポロ

致死寛容レベル:Lv.51 残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 50%鈍感化!
恐慌耐性レベル:Lv. 3 残機がない状態での 精神負担は 2%しか 軽減できません!

171Mii:2021/06/01(火) 01:31:36 ID:ykdUu4jg
マリオ「おいロゼッタ!思い起こせ!
   そもそも、マリオカートWiiのときだって割と死に掛けつづけただろ!
   今感じている恐怖は唯の錯覚だ!思い込みだ!

   残機による死に慣れからの落差が大きすぎて、
   そんなでもないのに、とんでもない窮地と誤解してるだけだ!
   目を醒ますんだロゼッタ!おいっ!」ユサユサ



わたしの まわりで おおさわぎ。
なんだか よく わからないけれど みんながみんな スキだらけ。
わたしじしんも あたまが どうにかなりそうで なにもかんがえられない。



あ。
タブーが しゃにむに タックルを しかけてきました。
これまでで いちばんつよそうな 「はどう」を なんじゅうにも ともなって。
せなかを むけていたせいで きづくのが おくれすぎました。

タブーは いっしゅん ヒルダひめに ねらいをさだめたように みせかけて
サッとねらいなおして わたしのもとへ。

なんと マリオまでもが フェイントに ひっかかって。
ヒルダひめを まもろうと とっさに うごきだしてしまい。

さいごのさいごで フリーになった わたしに タブーがせまる。
フラリとちゅうとはんぱに ふりかえったわたしの おなかめがけて
ニヤリとわらう タブーの てのひらが あてられて。

172Mii:2021/06/01(火) 01:34:08 ID:ykdUu4jg









――――ゼロきょり、さいだいパワーの、OFFはどう。









ロゼッタ「――――――――」

ロゼッタ「――――――――」



い  いや   た     す        け―――――――――――――



ロゼッタは 一瞬で 石になっ―――――――――――――――――▼

173Mii:2021/06/01(火) 01:35:41 ID:ykdUu4jg
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――はっ!?」



ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…し、死ぬかと、おもい、ましたぁ!
    と、とんでもない目に遭いました!こ、怖かった…!」

174Mii:2021/06/01(火) 01:37:40 ID:ykdUu4jg
思わず、前にどてっと倒れ込む。

なんとか手を付いて、顔面を打つのは免れます。

冷や汗、ダラダラ。一生分かいたかもしれません。
ありとあらゆるこの世の恐怖を凝縮して、一身に注ぎ込まれたような感じ…!
幸い、こうして動けているということは、克服したようですが…!



ロゼッタ「さて、と」










なんだか見覚えのない色をした地面に付いた、両手を見ます。
うん、「なんともありません」。

175Mii:2021/06/01(火) 01:42:10 ID:ykdUu4jg
ロゼッタ「…………ええ、と」

周りをぐるりと見渡します。一応、冷静になるために、深呼吸して、それから。

もう一回、両手を、見ます。
…おっかしいですねえ、右手の怪我が治っているような。

…更に妙なことに…なんだか地面が透けて見えるのですが。



ロゼッタ「…………んー?」



あまり思考がまとまらずに、ふわふわと周囲を見渡して――――――――
とりあえず、まず最初に、少し叫ぼうと思います。










ロゼッタ「ここ、どこですかぁ――――!?」

周りに、誰も、いませんでした。

176<削除>:<削除>
<削除>

177Mii:2021/06/20(日) 16:44:45 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「いや本当に、どこですか、ここ…」



空間把握、失敗。「存在しないエリアです」とか言われそうな探索結果。

もう、元の空間だとか閉ざされた空間だとか、そういう話では収まりそうにありません。
まだ、夢の世界とか妄想の世界とかの方がしっくり来ます。
空間魔法ですらたどり着けないような場所に来てしまったみたいです。…誰の仕業?



ロゼッタ「まさか、死後の世界だとか…ふふふ」



小さく笑ったら、たちまち身震い。

ロゼッタ「…………笑えないです!」



「でも、割といい線ついていると思いますよー」

ロゼッタ「え、嘘!?そんなの嫌ですよ冗談はやめてください!」



おもわず蒼白になります。思わずブルッと震えて、我が身をギュッと抱き締めて。
やり残したことが多すぎて、後悔しても、し切れない!

178Mii:2021/06/20(日) 16:47:10 ID:D5kkqxG.
「人生、諦めが肝心ではないでしょうか」

ロゼッタ「ふざけないでください!最後まであきらめません!
     …………って、さっきから誰ですか一体!」クルッ



思わぬところに先客が。
そしてその先客は、まったく、これっぽっちも、予想だにしていない人でした。











サヤカ「それでも一応、言わせてください。


   
    ――――ロゼッタさん、ようこそ『幽玄の間』へ!!」ニコッ

ロゼッタ「―――――――――――――サ、サヤカァ!?」

あまりにも懐かしい、でもどこか口調の異なる、娘のような女の子。
普通の流れで、普通とは真逆の出来事が、起きようとしていました。

179Mii:2021/06/20(日) 16:50:10 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「どう、して、サヤカが、こんなところに?」



彼女は、サヤカ。
かつて、星々の降りしきるお祭りの間だけ、絆を育んだ、大事な娘のような…
いえ、娘と断言してもいいくらいの大切な存在の女の子。



素朴で、当然すぎる疑問を投げかけます。
会えたことは嬉しいのですが。時間も距離もまるで噛み合いません。
すると彼女は、のほほんと思案顔。

サヤカ「うーん、ちょっと勘違いされてますね。
   私は『サヤカ』って人の姿はしていても、『サヤカ』本人ではありません。
   …まあ、雰囲気出すために性格を同期するくらいはできますけど。
   ちょっと待っててくださいね。あなたの記憶をもとに再構成しますから。
 
   ――――メモリーを 検索しています…
   ――――データベースに 1件の該当人物あり…
   ――――ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう…」

ロゼッタ「!?」



サヤカが眉間に人差し指を当てて神妙に目をつぶったと思ったら…
ぐるんぐるんと、妙な、奇天烈な、電子音が聴こえてきます!
何が起こっているのですか!?

180Mii:2021/06/20(日) 16:53:16 ID:D5kkqxG.
サヤカ「――――ダウンロード、無事に終了しました。再起動します…
    
   これでどうかな、ママ!ママの記憶通りの『サヤカ』になりきれてる?
   えへへー!どう?どう?お久しぶり!私も会えて嬉しい!」

ロゼッタ「」

たちまち、私の知る「サヤカ」になって、ピョンピョンと可愛く跳ねる彼女。
その笑い方、振る舞い方、サヤカそのものですが。訳がまったくわかりません。

ロゼッタ「貴方は『サヤカ』であって『サヤカ』でない!?何が何やらさっぱりです!
    復活そうそう、頭がまた混乱してきました!」

対話も、サヤカに対する、娘に対する砕け調にはなかなかできず。
どうしても、初対面の人に対してのものに引き摺られてしまいます。

サヤカ「しょうがないなあ、私がママに一から説明してあげるよー。
   ホントの私は名も無き存在、■■■■■…あ、言語認識できないか。
   とりあえず、サヤカって呼んでくれていいよ。私も引き続きママって呼ぶから。

   この空間、『幽玄の間』の管理者にして、ママの内面のウツシミ!
   
   『幽玄の間』にやってきた人の記憶を素早く読み取って、
   『一定期間以上会ってなくて、それでいて十分な絆で繋がってる人』を
   探し出して、成りきるの!今、『サヤカ』になってるみたいに!
   きっと『サヤカ』本人も光栄なことだと喜んでくれると思うな!

   そんな親しい人になって、やってきた人と対話して――――
   最期の悔いを、思う存分吐き出させるのが役割なんだよ!
   この塩梅の人選が、いちばん心穏やかになると評判なんだって!」

181Mii:2021/06/20(日) 16:56:36 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「最期の悔い…!?さっきから言っている、『幽玄の間』とは…?」

サヤカ「肉体的に死ぬことが確定した人が、冥土に向かうときに訪れるのが『三途の川』。
   一方でね、精神的に死ぬことが確定した人が、精神崩壊間際に訪れるのが――――



   この精神世界… 『幽玄の間』 なんだー」





ドクン。
動悸が、突如として襲い掛かる。





ロゼッタ「精神的に…死ぬ?――――わた…しが?」

サヤカ「うん」



サヤカは、こちらの気も知らずに、心拍数が上がり続けるのも気に留めずに。
あっけらかんと言ってのける。

――まるで、今日の晩御飯はカレーだよ、程度の気軽さで。

182Mii:2021/06/20(日) 16:59:40 ID:D5kkqxG.
サヤカ「人の心ってさ、風船みたいなものなんだ」

突如として、目の前に可愛らしい風船が現れました。
サヤカが紐の一端を持っているそれは、ふわふわのんびり浮かんでいます。

サヤカ「ストレスが掛かると、中にガスを送られて膨らんでいくわけ。
   限界超えて膨らみ過ぎるとパーンと割れて、二度と元には戻らない。
   だから割れ過ぎないように、定期的にガス抜きをする必要があるよ。
   あるいは、何か丈夫な素材で外周を補強してあげるのもいいかもね。

   ママは今の今まで…いっぱいいっぱいストレスを受けながらも、
   急成長しながらのらりくらりと、風船が割れるのを防いでいたんだけど」



風船が、膨らんで限界に近づいていく。



サヤカ「このたび、精神的にもとから致命傷を受けていたところに――
   最大級のOFF波動を、モロにゼロ距離で一点集中で食らっちゃって」



サヤカ「それはそれはもう、盛大に風船が割れてしまいましたとさ。
   ざんねん!!ロゼッタの ぼうけんは これで おわってしまった!!」



冗談を言われる傍らで――――破裂音が、ひとつ響いて、消えて行きました。

183Mii:2021/06/20(日) 17:03:36 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「……………………」

自分が精神的に死んだだなんて、とても信じられない。信じたくない。

ロゼッタ「私は…っ!本当の私はどうなっているのですか!
    そして、今の私の状況は!もっと詳しく!一体だれの目論見ですか!?」

サヤカ「一度にいっぱい尋ねるなあ…いいよ、答えていくね。
   この空間では、管理者の私はママ至上主義で行動するからねー。
   本当のママ…というか、現実空間の状況は、こんな感じ」

ぽいっという投げやりな動作で、パッと出現、イベント会場にあるような特大スクリーン。
こんな魔法、見たこともない。未知にもほどがあります。

映し出されるは、私の…おぼろげな記憶の、続き。



中心にいるのは私。
どこからどう見ても、怯え切った表情で、完全に石になって佇んでいます。

目を見開いて絶叫したデイジー姫が、手を投げ出して駆けよる態勢。
マリオが、ヒルダ姫を庇った状態で…激しく後悔しているような表情で振り返っている。
リンクが、何かを叫んでいるものの、判別つかず。
クッパが怒りに燃え、距離を取ろうとするタブーを鬼の形相で睨みつけ――――



そんな、静止画。

184Mii:2021/06/20(日) 17:07:07 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…………静止画?」

サヤカ「現実世界と『幽玄の間』とじゃ、時間の流れ方がざっと10000倍違うんだよ。
   だから正しくは『超スローで動いている映像』だね。

   ここで目覚めるまでにちょっと時間が掛かったけど、
   それでも現実世界…あっちだと、石化してから0.1秒すら経ってないよ」

ロゼッタ「0.1秒!?」

話についていくのがきついです!



サヤカ「で、精神的に死ぬことが確定したママは、その死の10秒前に精神体として
    『幽玄の間』に飛ばされた。今も猶予をちゃくちゃくと消費中。

   ちなみにこれ、任天堂の計らいね。極悪人じゃなけりゃ大体は飛ばされるよ。
   そんでもって、時間が来たら、ママの精神体は元の体に戻っていくの」

ロゼッタ「…前から思っていましたが、任天堂って何者ですか?」

サヤカ「…さあ?

   あ、ちなみに管理者の私は、ママ自身の知識のほかに任天堂の知識を
   あれこれ色々と持ってるよ。えっへん!頼りにしてね!」

ロゼッタ「よくわかりませんし今はどうでもいいです」

サヤカ「ひどい!」ウガー

185Mii:2021/06/20(日) 17:10:32 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…つまり、ともかく、精神の死の間際に…懺悔でも尽くしておけ。
    そういうことでしょうか」



そう、ですか。
私、死んじゃう、んですか。



サヤカ「繰り返すけど、精神的な死だから、肉体は死なないけどね。
   石化自体は、MOTHERチームによって程なく解除される。
   でも、精神が二度と再起しないんだ。これはパルテナさんの奇跡でも無理ー。

   ずっと、ずぅっと、自我のない、からっぽの精神のまま。
   周りの人、みんな悲しませつつ、いつまでも、いつまでも…

   やっぱり、怖い?」



ロゼッタ「怖いに…………決まって、いる、でしょう…!!!」ポロポロ



座り込んで、やるせなくて。

ただただ、悲しい。いくらでも涙が溢れ出る。

精神体だから涙に際限がないのか、ほんとうにただひたすら泣いているのか…。

186Mii:2021/06/20(日) 17:18:43 ID:D5kkqxG.
サヤカ「不幸中の幸いといえば、とりあえず。
   タブーとの、この勝負自体は、大局的には『こちら』の勝ちだよ。

   タブーはやぶれかぶれながらに悦に浸っているけれど…
   ママの犠牲を除けば、あとは可逆的――――
   手を尽くせば回復、修復できるような被害のみ残して、無事に終結する。

   ママの頑張りもあって、キノコ王国の危機は、とりあえず去ったんだ。
   ちょっと禍根は残すことになったけれど」

ロゼッタ「…………」




サヤカ「…………さて。キノコ王国の無事は伝えたところで。そちらはちょっと置いといて。

   そんなママを、助けてあげられる手段があるって言ったら、どうする?」

ロゼッタ「…え?」



泣き腫らした顔で、サヤカを見上げる。

ロゼッタ「そ、んな手段が、あるのですか!?」ガバッ

サヤカ「いわゆる管理者権限の裏技ってやつでね――――」

こほん、とわざとらしく咳込んで見せたあと。サヤカは、度肝を抜く提案を繰り出しました。

187Mii:2021/06/20(日) 17:21:36 ID:D5kkqxG.
サヤカ「ねえ、ママ。









   わたしと一緒に、ここに…ずっと、いよう?」








ロゼッタ「…え?」

サヤカ「簡単な話でさ。
   元の世界に戻るのは、予定通りの時間でもいいし、少し早めてもいいし…

   いっそのこと、すっぽかして、ここに居座ってもいいんだよ。
   私が自信を持って、うまいこと調整してあげる」



ロゼッタ「…………!?」

188Mii:2021/06/20(日) 17:24:54 ID:D5kkqxG.
サヤカ「一度すっぽかすと、二度と元の世界には戻れない。
   でもそれって、精神が死んででも戻るのに比べて、悪いことかな?

   むしろ、こっちを喜んで受け入れるべきじゃない?」

ロゼッタ「受け入れ、る」

サヤカ「ねえ、知ってる?この空間だと、私って――――なんでもできるんだ。
   さっき、スクリーンや風船をパっと出したでしょ?あんなの序の口。

   そして、ママなら…私以上に、なんでもできるんだよ。神さまになれるんだ」



サヤカが指をパチンと鳴らす。
突然、机一式と原稿用紙が現れました。

サヤカ「中々読ませるのは恥ずかしい物書きを、
   黙々と気の済むまで続けることができる」



サヤカが、腕を振りかぶる。
土煙と共に、何もなかったような地面が立派な舗装道路となり、
視界の先の先まで、無数の建物がにょきにょきと出現しました…!

サヤカ「この空間はママが想像する以上に許容量があるからね。
   街ひとつ、いや国ひとつ、なんなら世界ひとつ作ることだってできる」

……まさに、神の領域。

189Mii:2021/06/20(日) 17:27:41 ID:D5kkqxG.
サヤカは両手を大きく掲げつつ、ここに残ることの素晴らしさを語ります。



サヤカ「絶対安全な環境で、好きな物を食べ、好きな物を飲み、
   好きな趣味に興じることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ほどよい緊迫した環境を生み出して冒険者として名を馳せたり、
   勧善懲悪が浸透し切った素晴らしい世の中を作ったりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「女王として贅を尽くしつつも崇拝されたり、
   数多の男性を侍らせて持て囃されたりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ありとあらゆる空想、妄想が、ママの思惑ひとつで
   あっさりと具現化し実現する、それがここなんだよ。

   なんだったらいっそのこと、マリオ達をそっくりそのまま『構成』して…
   登場させて、交流を深めれば…現実世界に戻る以上の成果でしょ?

   みんなみんな相変わらず頼もしくて――――
   みんなみんな、ママの思う通りに動いてくれるんだ」

ロゼッタ「…………」

190Mii:2021/06/20(日) 17:30:21 ID:D5kkqxG.
サヤカ「そんな世界は、きっと、そう――――
   ストレスとは無縁で、とっても楽しくて、素晴らしいと思わない?」クルッ

















ロゼッタ「――――遺言執行者には、ピーチ姫を指定させて頂きます。

    皆様と一緒に過ごせた日々は、とてもとても幸せでした。
    本当にありがとうございました。星々の加護が有らんことを。

    差し出がましいとは存じ上げていますが、チコたちとほうき星のことを
    どうか守ってあげてください。よろしくお願いいたします――――」カキカキ

サヤカ「スルーして遺言書を書き上げてるぅ!?」

ロゼッタ「ちょうどいい所に紙とペンがあったので…」

191Mii:2021/06/20(日) 17:33:52 ID:D5kkqxG.
サヤカ「なんで!なんで真面目に聴いてくれないの!?」

ロゼッタ「え?あまりにも興味がない提案だったので…
    仮初の理想の世界とか、無味乾燥もいいところでしょうに。
    あ、でもおかげで少し心が落ち着きました」カキカキ

サヤカ「…………信じらんない!普通さあ、せめてもう少し気持ちが揺れ動いて、
   危うく甘い罠に引っ掛かろうとしたところで仲間たちの絆を思い出して
   考え直す…とかの過程があるでしょ!様式美、お約束ってやつ!」

ロゼッタ「…要するに、貴方も本心では、なびくとは思ってなかったのでしょう?
    『貴方』は『私』らしいので」カキカキ

サヤカ「…それは、まあ」

ばつが悪そうに、頭をポリポリと書いています。やれやれ。

ロゼッタ「そういうわけで、私は遺書でも書いて…気分だけでも僅かながら晴らしておきますよ。
    どうせ、この気持ちを伝えることなど出来はしないのですが」カキカキ



サヤカ「ん?できるよ?ママくらいの魔法レベルなら。だから遺書を書くのは確かに有効だね」



書き上げていたペンが、ぴたりと止まります。

ロゼッタ「…………あれ?どうして?戻った瞬間に正気を失うのですよね?
    魔法を編むことも、感謝の言葉を手短に叫ぶこともできなさそうなのですが」

192Mii:2021/06/20(日) 17:38:53 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…あ、言ってなかった、ごめんなさい。10秒後に精神的な死が待つとは言っても、正しくは…

   100メートル先から駆け寄ろうとしているニンテンさんとアナさんによって
   石化が解けるのが現実世界で8秒後、こっちでいう8万秒後。
   そこから精神が死ぬのに、更に現実世界で2秒掛かるんだ。

   だから…8万秒、ほぼ丸一日掛けて精一杯遺言を考えて、
   石化解除のタイミングで現実世界に戻れば…………
   『何らかの形で遺言を編み込んだ魔法陣を発動させるための』2秒が、残ってる」

ロゼッタ「なっ………!?」



サヤカの説明ですと、こうです。

もともと、OFF波動の効果が「恐怖・絶望の誘起」と「石化」であることは周知のとおり。
ただ、実の所、2つの効果はそれぞれ独立に作用していて、必ずしも人体への影響が
完全同期しているわけではないらしいのです。

そして今回。タブーによって、制御は二の次で、出せるだけの出力で放たれたOFF波動。
2つの効果の補正倍率が一致しなかった結果…………
「恐怖・絶望の誘起」で精神が完全に閉ざされる”前”に、石化が完了。
石化が完了した段階で、精神ダメージの進行まで凍結。ただしフラグは立ったまま。

2秒分のロスタイムができました。おわり。

サヤカ「わかった?」

ロゼッタ「…な、なんとか」

193Mii:2021/06/20(日) 17:42:19 ID:D5kkqxG.
たしかに、2秒あれば…………なんとかふんばれば。
光の文字として遺言を浮かび上がらせるような魔法陣、
あるいは地面に遺言を削り書きするような魔法陣、ぎりぎり発動できる、かも。
その文面を構築すること、魔法陣のシミュレーションをしておくことには意味がある、と。



ロゼッタ「精神の回復手段も無いですし、後ろ向きな発想ですが仕方ありませんよね…」

サヤカ「今回の件で更にピーチ姫が対策を強化することになるおかげで、
   10年後くらいのキノコ王国になら回復手段あるんだけどね」

ロゼッタ「10年後にあっても…」



ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「はっ!?ということは!いっそのこと!
    石化を解かないまま10年、精神の崩壊を凍結したままであり続けて!
    満を持して石化を解いてもらえば助かるのでは!?苦肉の策でっ!」

サヤカ「そうだね。
    私とママしか知らないその事実を、現実世界の皆に伝える手段があったらね」

ロゼッタ「……………………」

194Mii:2021/06/20(日) 17:45:38 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「別の案で行きましょう…あ!そうです!

    精神的な死が確定、というのは、あくまで――――
    『その時点の精神の強さを前提とした判断』ですよね!?

    今のうちに精神を鍛えて、さらには基礎体力レベルを上げて!
    石化解除したての2秒でどうにかこうにか絶望に抗えば!
    助かる可能性が出てくるのではないのですか!?」

サヤカ「おっ!いいところに気が付いたね、ママ!
   それは確かに正しいよ!ここにいる間にグンと強くなれば、
   復活する確率をゼロから0.1%くらいにはできるかもしれない!」

ロゼッタ「やった!ならばさっそく精神修業を始めましょう!
    1日弱あれば、なんとかなる…かも、しれません!
    僅かな希望にも縋るのです!」





サヤカ「ただし、時間の流れ方がずれている『幽玄の間』では、
   入る経験値も現実世界の1万分の1だけどね。だから結局……
   『現実世界の8秒間で得られる経験値でどうにかなりますか』って話になるけど。
   …や、やってみる?」

ロゼッタ「詰んでるじゃないですかっ!?」
    
サヤカ「そりゃあ、基本どうにもならない状況に陥ったから飛ばされた訳だし…」

195Mii:2021/06/20(日) 17:50:16 ID:D5kkqxG.
〜1時間後 (現実世界0.36秒経過  残り猶予76400秒)〜





ロゼッタ「…………推敲、おわり」





泣き腫らしつつ、遺書を何度も何度も読み返して、確認して。
とりあえず、思いの丈はすべて述べられたと思います。あとは覚えるだけ。

ロゼッタ「……次は、魔法陣、ですか」



本番にて超高速展開するために、何度も試す。
…所詮は文字の連なりをパッと表示する程度、10回試して10回成功しました。
速度の方も、私の実力があれば十分。迫り来る恐怖に抗いながらというのが気懸りですが。

サヤカ「まあ、『試行錯誤で経験値を蓄積する』ってことが出来ない現状、
    今失敗しているようじゃ絶対本番でもできなかったんだけどね。
    表現の仕方なんかを色々吟味することなら可能だよ。記憶は持ってけるから」



ロゼッタ「…………」

196Mii:2021/06/20(日) 17:53:32 ID:D5kkqxG.
〜2時間後 (現実世界0.72秒経過  残り猶予72800秒)〜





ロゼッタ「…動いて、いますね」





――スクリーンに映り続けている、みなさんが。
――私を何とかしようと。石化を解こうと。

――その行動自体が、私の余命を削っていくというのは皮肉なものです。
――もちろん、皆さんが悪いということは絶対有り得ないのですが。



サヤカ「そろそろ、ニンテンさんとアナさんも…
   スクリーンの端っこに映り出すんじゃないかなー」



ロゼッタ「…………」プイッ

先ほどから、体が震え出したり、止まったり、忙しい。
今さらながら、これから起こることを自覚して…精神が不安定になってきたのでしょうか。

197Mii:2021/06/20(日) 17:56:05 ID:D5kkqxG.
〜3時間後 (現実世界1.08秒経過  残り猶予69200秒)〜

サヤカ「現実世界で1秒経ったってところかー」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

どこが空間の隅にあたるのかも分からず、
三角座りで縮こまって、膝の匂いを嗅いで…ただただ時間が過ぎていく。

サヤカ「……もしもーし?」ブンブン

ロゼッタ「…………」

サヤカ「こうなったら、残りの時間、何か好きな事しようよ。
   それか、私とおしゃべりでもしようよー!時間が勿体ないよ!
   何のために私がここにいると思ってるのー?」

ロゼッタ「…………」

パタパタと近づいてくるサヤカを、無表情でぶっきらぼうに押しのける。

サヤカ「…………もうっ」



……ただただ、時間が、過ぎていく。

198Mii:2021/06/20(日) 17:58:08 ID:D5kkqxG.
〜4時間後 (現実世界1.44秒経過  残り猶予65600秒)〜

サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカも諦めたのか、5メートルくらい離れたところにうつ伏せに寝そべって、
私の方をジト目で見やって過ごしています。無情に時が過ぎて行きます。





ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「…………」ピクッ





ロゼッタ「一つ、質問しても、いいですか?」





サヤカ「……!なになに!何でも答えるよっ!知ってることなら!」

199Mii:2021/06/20(日) 18:00:35 ID:D5kkqxG.
久しぶりのコミュニケーションに、がばっと身を起こし、ぱあっと表情を輝かせる、サヤカ。
その表情に、すこし怖気付きつつも…ひとつ、だけ。



ロゼッタ「経験値、という言葉で思い出したのですが。
    現実世界で私に経験値が入らなかった不可解な状態について、
    何か知っていたりしますか?」

サヤカ「んー、知らなーい」

ロゼッタ「そうですか……………………」



サヤカは、あっさりと言ってのけ…会話が終わってしまいました。





ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「………………………ねえ、サヤカ」

サヤカ「なぁに?」

おかげでひとつ、わかったことがあります。

200Mii:2021/06/20(日) 18:02:38 ID:D5kkqxG.
――先ほどの返答。










――私の内面、にしては。反応が5秒は早い。

――早すぎる。











ロゼッタ「…………何を、隠しているのですか?」

サヤカ「えっ…!?」ビクッ

201Mii:2021/06/20(日) 18:05:28 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「あれだけ会話を期待しておいて、あまりにもたやすく切って捨てる回答。
    『私』の内面にしては、あまりにも不自然…………何か、知っているのですね?」

サヤカ「…ちょ、ちょっと。深読みしすぎだよ、ママ!知らない知らないっ!」





深読み、なんかじゃない。





ロゼッタ「有り余る、今の時間を費やして、何度、開発時の記憶を探っても――
    私の『実分身』…経験値漏れが起きるとは思い難い。
    そこで、こういう解釈に至りました。



    ――――ひょっとしたら。
    私の内面が無意識に、経験値の還元をホールドしているんじゃないかって。
    …………貴方の、せいですか?」

サヤカ「…………っ!!」ブルッ



――――図星、のようです。

202Mii:2021/06/20(日) 18:08:08 ID:D5kkqxG.
何故隠していたか知りませんが――思わぬ光明!
サヤカの両肩をババッと掴み、一気に捲し立てます!

ロゼッタ「いますぐっ!その経験値、私に返してください!
    それなりに蓄積しているはず、無駄にはなりません!
    もしかしたら打開の道筋が立てられるかも!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「やっぱり知っているのですね!
    どうしてですか!私が助かってほしくないのですか!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「だから、どうし――――」







サヤカ「絶対に、ダメ」

サヤカの、目の色が。尋常ではないほど、濁り出していました。

203Mii:2021/06/20(日) 18:10:36 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…ねえ、ママ。
   今、自分が何を言ったか、分かってる?」

ロゼッタ「…サ、ヤカ?」



子供とは思えない冷え切った眼光に、思わず竦んでしまいます。



サヤカ「…あのさ。つかぬことを聞くけれど。ママって基本、優しいよね?」

ロゼッタ「…はい?」

突拍子なことを言われました。

サヤカ「相当なことを悪者にされても、なんだかんだで許しちゃう。
   
   からかわれても『そんなこと自覚してますよ…』とため息つくだけだし、
   物を盗まれたりしても後で返してくれればプンプン怒りながらも水に流すし、
   わざとじゃなければ怪我させられても『不慮の事故ですから』で済ますよね」

ロゼッタ「そ、そんなにできた人間である自覚はまるで…」



サヤカ「それこそ、催眠術で操られて、術者の言いなりになって服を脱ぎ始めて――」

ロゼッタ「ははは破廉恥なのは絶対ダメ!ゼッタイ!!」カアアア

204Mii:2021/06/20(日) 18:13:44 ID:D5kkqxG.



サヤカ「唐突に魔法少女のコスプレをして、笑顔でダブルピース姿を自撮りして、
   直筆サインまで書いて、『私が書いた最高傑作です!』という一文を添えて、
   プロマイド付きの自作小説全編を全世界の編集部に片っ端から
   メール爆撃で一斉送信させられることになったとしても許しちゃうよね」

ロゼッタ「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」ガンッ ガンッ



ロゼッタ「」チーン

サヤカ「」

サヤカ「……まさか気絶するとは思わなかった。…おーい、起きて―」





ロゼッタ「…………悪魔の所業をいきなり想像させないでくださいよ…」ヨロッ

サヤカ「……コホン。まあ。ともかく。そこまでされても。
   ちょっとは凹むかもだけど。1週間…余裕を持って2週間もあれば、
   平常運転で日常生活を送ることができるようになるはずだよねー」

ロゼッタ「とてもとても、そうは思えないのですが…っ!」ヒキッ

205Mii:2021/06/20(日) 18:17:03 ID:D5kkqxG.
目が濁ったままのサヤカが、淡々と続けます。

私のちょっとした気絶で手間を取らせている間にも、濁りは解消されていない。



サヤカ「どうどう。…そんな、基本的に、なんでも許しがちなママですが。

   自分が貧乏くじ引くことについてなら、まあ立ち直れないこともないママですが。

   唯一つ、耐え難い、許し難い仕打ちを挙げるなら…それは。







   致命的な被害が…自身にではなく、罪なき善人に、一般の人たちに及ぶような。
   そんな行動を、意図せず取らされた場合なんだろうね」

ロゼッタ「…………!!」



――それって、つまり。

206Mii:2021/06/20(日) 18:21:52 ID:D5kkqxG.
サヤカ「いい?ママのいう通り、私の独断で。経験値の還元を、ストップさせてる。でもこれ、必要なことだから。

   ここに積もり積もってきた経験値にはね、ママの偽者、何十人分の…
   見てきたもの、やってきたこと、いろんな知識が紐づけされてる。

   そして。そう。もうわかった、よね。

   タブーと同調することによる悪意、憎しみ、殺意、嘲り。
   一切合財の『ママとは相性が悪すぎる』感情が、地獄の釜のように詰まってる」

   わかる?自分がどれだけ『ワルモノ』になるか。『ヒトデナシ』になるか。

   誰々を消し去りたい、何々を破壊し尽くしたい、こうすれば平和など掻き消せる。
   …そぉんな、小説の中ですら妄想してこなかった、逸脱したどす黒い感情。
   ママの心なんて、一瞬にして染め上げちゃうよ?

   精神負荷から逃れるため、開き直って悪人として生きていけるならまだいい。
   そんなことできっこないママは…そう、『ロゼッタ』っていう人物は。
   これまでママなりに築き上げてきた自分ってものを真っ向から否定されて、

   …………拠り所、なくなっちゃうよ?」

ロゼッタ「…そ、それでも!それらを纏めて獲得できるのなら!
    絶対に無駄にならない!役に立つこと請け合いです!
    尚更引くわけにいかなくなりました!返してくださいよ!

    大丈夫、現実世界の惨状は散々見せつけられて…耐性はできていますから!」

その経験値が、知識が、どれだけ持ち出す価値があることか。
最悪、それだけでも後世に伝えられればキノコ王国の為になるはず!

207Mii:2021/06/20(日) 18:25:14 ID:D5kkqxG.
サヤカ「……分かってない。分かってないよ」ハァ



――――サヤカが、私をまるで相手にしてくれない。



サヤカ「耐性が付いたなんていうけれど、それは所詮、見たこと、聞いたことだよー。

   自分に『完全同期』して降り掛かる感情爆発は、そんなチンケなものじゃない。
   …この精神世界で、精神分裂、精神崩壊するよ?ぐっちゃぐちゃに。
   もはや私でも匙を投げる事態になっちゃうよ。

   そうなったら、人生最期を穏やかに過ごすという目的、まるで無視だね。
   だぁれも救われない。現実世界のみんなも。ママも。…………もちろん、私も」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「はいっ!やめやめ!このお話はオシマイ!」パンッ



ひとしきり話し切って、ようやくサヤカの眼に光が戻ってきました。
もう疲れちゃったあ、と独り言。

サヤカ「んもう、この『サヤカ』のキャラじゃないよ、こんな陰気なお話…
   もっと愉快で楽しくて夢のあるお話をしようよ、ねっ!」

そう微笑んで、もじもじと腕を後ろに組んで…私の顔を伺います。

208Mii:2021/06/20(日) 18:28:10 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…………………………仕方、ありませんね」スゥ・・・

サヤカ「ううん、わかってくれたなら別にいいの!
   私はただ、ママに悔いを残してほしくないだけだから――――」








ロゼッタ「――――――――――――――――サヤカ。

    命令します。私の経験値、返しなさい」ガッ

サヤカ「…がふっ!?」








最終手段。こんなことはしたくありませんでしたが…

いたいけな少女を、首根っこ掴んで――――そのまま地面に押し倒しました…!

209Mii:2021/06/20(日) 18:31:00 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…え?ええ!?ちょ、や、やめてよ!?何の真似!?怖いよママっ!」ジタバタ



絵面的にはなんとも美しくない光景。それでも背に腹は代えられない。



ロゼッタ「先ほど自分で言いましたよね。
    この空間の管理者の貴方は…私至上主義だと。
    それは感情論とかではなく、おそらくはこの空間における…絶対的なルール。

    究極的には…私の本心からの命令には絶対服従、ということですよね?」パアアアアア

サヤカ「し、知らない!は、離して!」ジタバタ



あえて非情になり、押し付ける力を強めて行きます。



ロゼッタ「返しなさい」パアアアア

サヤカ「ぐ……………がが」ブルブル

ロゼッタ「返しなさい!」パアアアア

サヤカ「…や……………………め、て…………」ブルブル

210Mii:2021/06/20(日) 18:33:28 ID:D5kkqxG.
何かを感じる。サヤカの体から、何かが抜け出てくる。
見つめ合う私とサヤカの中ほどに現れた、1cmにも満たない、小さな小さな輝き。
ブゥーンと高周波音を微かに放つそれは、きっと――――思い描いている通りの物。



サヤカ「ぜ…ぜった、い、こうかい、す、るか、ら――――」ポロポロ

ロゼッタ「少しくらい信用してくれても、バチは当たりませんよ」

サヤカ「ママ、が、ママじゃ、なく、なることを、しんじざるを、えない、のぉっ!」ポロオポロ



――――それでも、やらなければならないことは、あると思います。
――――多少のリスクは、背負っても!



サヤカの制止を少しは気に留めつつも。後ろ向きにはならず。
一呼吸おいて、気合い入れ直して。

突如現れたその輝きを、そっと、労わるように、慈しむように。





両手でふわりと、包み込みました。
たちまち、輝きが強くなって――――――――――――

211Mii:2021/06/26(土) 19:48:11 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



――――ごとり。

『…このあたりに仕掛けておきますか』

周りに、後頭部を打たれ失神した、出血甚だしい酔いどれ客たち。

『任務中にノコノコ近付いてきた、貴方がたが悪いなんですよ?』

まるで気にもせず、むしろ足蹴にし、不可視の爆弾を目ぼしい場所に仕掛けていく。

『ふむ…どのみち後で死ぬことになるのですから、むしろ今は…
下手に戒厳令出されないためにも、酔っ払い同士のちょっとした殴り合い、程度に
見せかけておきますか』

慈悲の心なんてなしに、単に作戦上有用だからと、気持ち程度回復させる。
そのあたりに転がっていた拳大のレンガの破片を、
あるいは適当に近くのゴミ捨て場から拝借した金属棒を。
空間魔法でふわりと動かし、転がる大怪我人の拳に滑り込ませる。

指紋なんて一切残さない、完全犯罪の達成。

『じきに、誰かが見つけてくれるでしょう。…運がよければ、ね』



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212Mii:2021/06/26(土) 19:50:40 ID:NzWQi0XQ
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――――ぽた、ぽた、ぽた。



『…………ふふ』

――――タブー様から、潤沢に無尽蔵に与えられるFPを。
――――少し細工して、タブー様の闇の力も練り込んで。

――――城下のあらゆる生活圏に、特に市民の生活の糧となる賑やかな市場の各地に。
――――ニコニコと歩きながらも、僅かに漂う瘴気として、ばら撒いて、ばら撒いて。



――――古来より、都市陥落の第一歩といえば、遅効性の毒を徐々に拡散させること。
――――何気ない仕草に違和感を感じ、やがて動きが鈍り、眩暈、吐き気、痺れを訴える。
――――いよいよ人々が病院に殺到することには……全て、手遅れ。



『まあ、キノコ王国の浄化性能とやら、せいぜいお手並み拝見といったところですかねぇ』

213Mii:2021/06/26(土) 19:52:31 ID:NzWQi0XQ
はしゃいで走り回っていた子供が、周りをよく見ていなかったのかぶつかってくる。

『いったぁ……っ!……あ!ご、ごめんなさいっ!』

『…あらあら、私は大丈夫ですよ。次からは気を付けましょうね』

子供の方も転んでしまっていたので、とりあえず手を差し伸べて引っ張り――――



『…!?い、痛いっ!』

…おや、思わず憎しみで強く握り過ぎましたか。ひとまず手を緩めます。

『あ、ごめんなさい。痛かったですか?』ニコッ

ちょっと涙目の子供が、掴まれて赤みを帯びた自分の腕と、私の顔を交互に見やり…

『…………だ、だい、じょうぶ、です。あ、ありがとう、ございまし、たっ!』

こわばった子供が、焦りつつもぺこりと頭を下げ、去っていく。
…すこし失敗しましたね、思わぬ『攻撃』に――――――――



『ロゼッタ』らしからぬ、睨み方をしてしまったかもしれません。



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214Mii:2021/06/26(土) 19:55:14 ID:NzWQi0XQ
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『ええい!もう情報は回ってきてる!ネタバレは済んでるぞ!
アンタ、本物のロゼッタさんじゃないなっ!失礼過ぎるぞ、この屑ヤロー!』

『ちょっと待ってください!私、ロゼッタ本人ですよ!何処からどう見ても!』

『騙されるか!目つきからして全然違うだろ!
本物はそんな昏い眼差しはぶつけてこないはずだ!根っからのお人よしらしいからな!』



『……ああ、そうですか。それならば、仕方ありませんね。
…………どうしてばれてしまったのでしょうか、嫌ですねえ』



『…………っ!やっぱりそうじゃないか!
じきに正義のファイターたちがアンタなんか懲らしめに――――』

相手は、ごく普通の一般人。
こちらは、最弱クラスのファイター。

…力の差は、歴然。

杖を一振りしてみれば、咄嗟に割り込ませた両腕ごと、胴体の一部が吹き飛ぶ。
ディメーンの真似っこです。空間切断って便利ですね。癖になりそう。

215Mii:2021/06/26(土) 19:58:00 ID:NzWQi0XQ
『――――――――ああああああああ!?』ドクドク

一瞬、状況把握ができず、零れ落ちた部位を呆然と見やって、その後は絶叫。
血だまりの中で悶え苦しむしかできない愚鈍な相手。
傍で震えていた、奥様でしょうか。同じく絶叫して、荷物あらかたひっくり返して、
ボロボロと無様に泣いて、死を待つ夫に縋りつき始める。

『――――つまり、演技をする必要もないということですね。色々と面倒なので――――

――――――――――――――――ここで死んでください』

『この人が何をしたっていうのっ!!誰かっ!誰かぁっ!!』ポロポロ

そんな非難には耳を傾ける余地もなし。ニタリと嘲り笑い、もう一度杖を振りかぶって魔法の構え。
夫婦まとめてあの世行きにしてやりましょう。私って優しいですね。



『やめろおおおおぉぉぉぉ――――!!』

『ロゼッタさんの名誉のためにも、そんなことさせないぞー!
青キノピオ隊、不届きな偽者に決死の突撃ぃー!!』

『『『『おおおおーーーー!!!!』』』』

――――チッ、邪魔が入りましたか。



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216Mii:2021/06/26(土) 20:00:18 ID:NzWQi0XQ
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『――――――――おお』

なんて、壮観。

『――――――――素晴らしい』

あたり一面、石化したままの住人が何百人といる区画。

実質、命を失ったも同然。
タブー様の作戦が、紆余曲折あれど順調に功を奏していく…!
これに感動せずして、何が生き甲斐というのでしょう。

『――――はは、はははははははははは……………♪』

ちょこまかと抵抗はされていますが、この程度。
キノコ王国の転覆は、間もなくです。本当に、あっけない。





『本物の私は、一体、どういう反応をしてくれるでしょうかねぇ』



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217Mii:2021/06/26(土) 20:02:28 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



みんなみんな、邪魔。

ここにあるもの全て、タブー様にとって目障りな物。
タブー様の手によって、完膚なきまでに破壊し尽くされればいい。逆らったことを後悔するといい。



希望は全て、絶望へ。

輝いて見える夢は全て、耐え難い現実へ。

喜びは全て、悲しみへ。

笑い声は全て、慟哭へ。





『みんなみんな、死んでしまえばいいのに』

その先に、求める物があるのだから。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

218Mii:2021/06/26(土) 20:05:18 ID:NzWQi0XQ

サヤカ「ママ譲り、のぉ――――――――――――――――――――――――――――
   
    ――――――――Starlit Wish《星に願いを》――――ッ!!」パアアアァァァァ!!!



ママ譲りの大回復魔法を、惜しげもなくママ1人に使用する。
FPが勿体ない?そんなこと、今は議論する価値もないよっ!





サヤカ「あのさあっ!!どうしてっ!どうしてそこまで安請け合いしておいてっ!!



   かんったんっに!舌を噛み切ろうとするかなあ――――――――っ!!」



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



ママが――――受け身も取らず、前にドタンと倒れ伏したまま。ピクリとも動かない。
よりにもよって、あらぬ行為に踏み出す余力だけは残っているみたいだけれど…!

219Mii:2021/06/26(土) 20:08:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「じょーだんじゃないよっ!後悔するって言ったよね!
   『万が一』のことを考えて、すぐさま切り替えて魔法の準備をしておいて、
   本当に…………ほんっっっとうっに、良かったっ!!やめてよね、もう…!」



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



ロゼッタ「――――」ゴボッ

サヤカ「――――――――て ん ど ん っ!?」パアアアアアァァァァ!!

……ああもうっ!休む暇なんかない!Starlit Wish《星に願いを》、もう一回っ!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



サヤカ「やめてって言ってるでしょ!足掻いてよっ!
   大博打をやったからには勝率ほぼ0%でも頑張ってよ!私も無理だと思うけどっ!
   ママが諦めるっていうんなら私が諦めず頑張るよっ!
   ……あれ?何言ってるのかな、わたしっ!?訳わかんない!」

220Mii:2021/06/26(土) 20:11:16 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

サヤカ「…落ち着いた、か、なあ………?」





ザンッ・・・・・・・・




サヤカ「…………あれ?」



サヤカ「どうして、お腹から、そんなに、ドクドクと血を流してる、の?」マッサオ



サヤカ「――――――――――――――――――――――――」ゾワッ



ロゼ ッタ「――――」

サヤカ「きゃあああっ!!空間切断で自傷した――――――――っ!?」パアアアアァァァァ!!

221Mii:2021/06/26(土) 20:13:18 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドク

サヤカ「…こんのぉ…!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!

ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドク

サヤカ「…しつこいのぉっ!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドクドク

222Mii:2021/06/26(土) 20:15:20 ID:NzWQi0XQ
…駄目っ!これじゃあ、いつか頭部にでも致命傷食らって取り返しが付かなくなるっ!!
体ズタズタになってから後手の回復じゃ、話にならないっ!

サヤカ「集中力の差を利用して――術式インターセプト、連発ぅ…!
   持ってよね、私の魔法回路…!!せーのぉっ!!」パアアアアアアアアアァァァ!!!





――――あまりにも空しくて、不毛な駆け引きが始まった。





倒れ込んだまま一切動こうとせず、四肢は沈黙し、痙攣し、顔は地面とごっつんこ。
顔色が全く伺えない、ママ。一言も発しない、人形のような状態になった、ママ。
ただ、ひとついえるのは…………

とにかく、いますぐにでも、命を絶ちたい、らしい。



サヤカ「…………っ!」パアアアアァァァァ!!

言わんこっちゃない。
でも……そんなこと、この私が、許すと思う?

223Mii:2021/06/26(土) 20:17:36 ID:NzWQi0XQ
集中力が乱れに乱れているママに対してだからこそ、なんとか術式妨害が間に合う。
あろうことか、気が触れたのか…気が触れているのか、うん。
自身に向けて放とうとする空間魔法を、発動前に横槍、ことごとく無効化…っ!



…ごめん、嘘。10回に1回は間に合ってない。

そのたびに、空間魔法が発動し、ママの体のどこかを、ゴッソリバッサリ消し飛ばす。
痛ましさに目を背け、そのたびに、急ぎStarlit Wish《星に願いを》で強引に回復処理。



何この、不毛すぎるイタチごっこ。



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

血が流れていようといまいと、うめき声一つ上げない状態なのが逆に恐ろしい。





サヤカ「…………精神、壊れ、ちゃった…?」

というより、壊れたと、私でも思う。前々から当たり前のように思ってた。

224Mii:2021/06/26(土) 20:20:02 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



サヤカ「結局は娘の私に投げっぱなしっ!?
   …むう。いいよ、それで。それが娘としての役割らしいからっ!
   私、諦めないっ!ぜったいに、諦めないからっ!!

   私、こんな姿形だけど…小さな女の子だけど…
   おあいにく様!任天堂の知識のおかげで、CERO:Zまでの耐性あるもんねー!
   流血表現なんて捨てて、掛かってこーい!」パアアアアァァァ!!





傷ついて、回復して、また傷ついて、回復して。

血だまり広げつつ、2人の体力をガリガリと削りつつ、



空しすぎる、無意味な作業が延々と続いていく――――――――――――

225Mii:2021/06/26(土) 20:22:12 ID:NzWQi0XQ
〜8時間後 (現実世界2.88秒経過  残り猶予51200秒)〜



ロゼッタ「――――」



何時間も経った、けれど。ママは、ピクリとも動かない。
魔法を行使し続けてきた以上、ホントに気絶しているわけじゃないけれど。
まだ気絶していてくれた方がずっとずっとマシだった。



サヤカ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…うぷっ…………
   と、り、あえず、こんど、こそ、おちつい、た、かなあ、はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――ぅして」

サヤカ「――――――――!!」ピクッ

ロゼッタ「――――――――――――――――どう、して?」

サヤカ「ママ…!なんとかなったん――――――――」

226Mii:2021/06/26(土) 20:24:46 ID:NzWQi0XQ

ロゼッタ「――――――――どう、して。どうして、こんなことになったの?

     ―――――――――――ねえ、どうして?」



くぐもった涙声。



サヤカ「…………!?」

ロゼッタ「そんなに、いい子じゃ、なかった、かも、しれない。
    陰で、誰かを、迷惑がらせる行動を、していた、かも、しれない」ポロポロ

サヤカ「あ、あのっ!」

ロゼッタ「でも…こんな目に遭うまで、私、碌でもない人間、だった…?」ポロポロ

サヤカ「そんなわけないよ!悪いのはあくまで悪の親玉っ!
   ママはこれっぽっちも罪悪感感じなくていいからさ!」

ロゼッタ「――――あくの、おや、だま」

サヤカ「そうそう!全てはタブーが悪い!満場一致で!」

ロゼッタ「…………タブー」

サヤカ「そう、タブー!あの気味が悪い生命体の!」

227Mii:2021/06/26(土) 20:31:09 ID:NzWQi0XQ




ロゼッタ「――――――――タブー、消さなきゃ」

サヤカ「…ほへ?」



ロゼッタ「タブー、消す。消さなきゃ。消シテヤル」ユラァ

サヤカ「…あの、ちょっと?」

のそっと、ママが、起き上がる。
それ自体は喜ばしいことだけれど、ちょっと…いやとんでもなく、様子がヘン。





ロゼッタ「タブーガ憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。
    殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。
    引キ裂イテ 八ツ裂キニシテ 消シ炭ニシテ 完膚無キマデニ滅シテヤル――――」ブツブツ

サヤカ「」



――――不気味な靄を纏って…………ママが、狂った。

228Mii:2021/06/26(土) 20:35:01 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ちょちょちょ、ちょっと!…って、なにごとっ!?」



ママのまわりに、おぞましい赤い、膨大なFP渦が。

いわゆる魔力開放…いやFP解放――!
確かに、ママは大量のFPを獲得した時…一時的にFP解放して、
実体化して溢れだすFPに幾重にも包まれることがある。
…でも、それは――――青色。自称「おたすけウィッチ」状態。
体質が最高に「空間魔法向き」になっている、能動的な状態。

…今目の前に広がる景色は、真っ赤な真っ赤な、凄まじい量のFP。
ごうごうと、激しい音を伴って、ぐるんぐるんと渦を巻く。まるで竜巻、いや台風…!



ロゼッタ「――――グゥ――――ガガ――――――――」



のたうち回りながらも歩き出し、獰猛な獣のような、唸り声。
煽られ舞い上がる、頭髪。それすら鬱陶しそうに、雑に頭を掻き毟る。



焦点が合っていない、その「両目」。
特に「右目」が、昏い赤色に染まってFP暴走を引き起こす動力に…!?
なまじ魔法レベルが高いばっかりに、とんでもない現象を引き起こしてる…っ!

229Mii:2021/06/26(土) 20:38:10 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………なに、これ。…ええっと。検索、検索。

    任天堂の知識を、ちょっとばかり引っ張ってくるとするなら…
    九尾が暴走した人柱力状態、かなあ、HAHAHA」





サヤカ「…………笑ってる場合じゃないっ!?えらいこっちゃ!」

直感。急いで止めてあげないと、ママが大変なことになるっ!!

声を掛ける。必死に掛ける。
…全く聞こえてない。あるいは取り合ってもらえない。

余りのFPの集積、奔流に…ママの足元の地面まで耐えきれなくなって、
ぴしりぴしりとあちこちに亀裂が走っていく始末…………うわぁっ!?

ある程度の距離にも関わらず、私まで、かなりの圧を受けるけれど、
なんとかしてFP暴走の源を――おそらく憎しみを――絶ってあげないと…!!
ひとまず駄目元で、もう一度Starlit Wish《星に願いを》をドーンと…………!





その魔法行使の予備動作が、どうやら、敵性認識されたみたいで。
殺意とともに、空間魔法、とんできて。え、うそ…!

230Mii:2021/06/26(土) 20:40:28 ID:NzWQi0XQ



サヤカ「び、がががが―――!」ドクンッ



脳天に、あ、たった。

食らっちゃいけない、類の、威力…ぅ。



しょ、せん、わたしは、情報生命体。

でも、ごっそり、とてつもない生命エネルギーを、持ってかれる。

血はながれないけれど、重要な構成情報、いくばくか抜けていく。





サヤカ「――――――――――――――――」





意識が、ぼやける。

231Mii:2021/06/26(土) 20:44:27 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ピ――――――――――――――――――!
   フセイナ ソウサヲ 行ナッタタメ ぷろぐらむヲ サイキドウシマス



   ……しすてむでーたガ 見ツカリマセン
   でぃすくノ B面ヲ せっとシテクダサイ

   でぃすくガ 見ツカリマセン
   どらいぶノ フタガ ヒライテイナイカ
   カクニンシテクダサイ



   あくせすえらー!
   サイテキナ ぷろぐらむヲ サガシテイマス
   めもりーかーどヲ ヌキサシシテ クダサイ

   ぷろぐらむカラ オウトウガ アリマセン
   しすてむガ びじージョウタイカ
   あるてぃめっとでいじーニ ナッテイマス



   あぷりけーしょんえらーガ 発生シマシタ
   しすてむヲ サイキドウシマス

   ふぁいるノ せーぶニ シッパイシマシタ
   でーたガ ウシナワレタ カノウセイガ アリマス」

232Mii:2021/06/26(土) 20:46:38 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…こーでっくヲ ケンサク シテイマス
    
    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    …………でふこん1 発動
    ソウイン スミヤカニ タイヒシテクダサイ」



サヤカ「――――」ドサッ

わたしは ちからつきた。



ロゼッタ「――――」

紅い台風を纏って、夢遊病のようにヨタヨタと歩く、ママ。



サヤカ「――――」

サヤカ「――――」



サヤカ「――――――――――――――――アキラメタク、ナイ」ボソッ

233Mii:2021/06/26(土) 20:50:17 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ ケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「…………」




サヤカ「ママノ…『ロゼッタ』ノ めもりーヲ 深層スキャン シテイマス」

234Mii:2021/06/26(土) 20:52:29 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイサイケンサク シテイマス





















    ケンサクノ ケッカ
    『でいじーめそっど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    成功リツ スイテイ 20パーセント
    タダチニ たすくふらぐヲ オンニシテ
    ジッコウニ ウツリマス――」

235Mii:2021/06/26(土) 20:56:41 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――ううっ」



何時の間にか、気絶していました。
さきほどまで、何を、していたのでしょうか。記憶が混濁しています。



両腕に、温かい、感覚。…そっと、握られている感じ。



「あア、まマ、気ガつイた?」

ロゼッタ「は、はい…………っ!?」




ほっぺたやら、手首やら。胴部やら。
体のあちこち、見るも無残な、抉られた跡。

傷跡から、血は、流れない。かわりに、0と1の、電子情報のカケラ…といったらいいのか。
サラサラと光の粒と共にナニカが散っていく…そんな様相。
ノイズが走り、姿が小刻みにブレて、明らかに――異常事態っ!

236Mii:2021/06/26(土) 20:59:29 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「な、いったい、なに、がっ!?」

サヤカ「まマは、悪ク、なイよ。
   暴走状態ノまマに、なンとシてモ、助カっテ、欲シくテさ。
   可能性ヲ探ッた挙句、『でいじーめそっど』ニ行キつイて」



デイジー、メソッド。サヤカは確かにそう言った。
一体、何のことを指しているので――――



握られていた、両腕。
先ほどまで、そう、とんでもない失意と絶望のどん底にいた、
それがどうしたことか、今は…思わず口を手で押さえて――――
止め処ない悲しみと、激しい頭痛と、猛烈な嘔吐感「だけ」で済んでいる。
そんな私の事情、考えれば――――






サヤカ「暴走スるマまに、ぎューッて 抱キ着イて。
   ソのマま、身ヲ焼カれツつモ 腕掴ンで――――

   まマの 抱エ込ンでタ 真ッ黒ナ もヤもヤ、半分コに しテみタ、だケだカら」

ロゼッタ「――――――――っ!?」

237Mii:2021/06/26(土) 21:24:16 ID:NzWQi0XQ
半分、なんてものでは、ないっ!?
デイジー姫の「FP制御法」を参考にしたみたいなことを言ってくれていますが…



サヤカ「FPゴと、私ノ体ヲ媒体ニしテ、憎シみ、濾シ取ッて……ネ」



あれほど取り乱して生きることを拒絶していた私が。
――――ここまでケロッとしている、その意味。

ほとんど、サヤカが――――自己犠牲で、貰い受けて、引き受けて、くれた…!?



サヤカ「…ごホっ、ごホっ、ごホっ!」

激しい咳とともに、胃液、ではなく…またもや、情報、抜けていく…?
サヤカの、存在が、心なしか、おぼろげになっていく…!?

サヤカ「…………でモ、ごメん、まマ。私、謝ラなキゃ。
   私自身モ気ガ触レたラ駄目ダかラ、汚染サれタ構成要素、
   …………どンどン放棄スる事ニなッてサ。

   ちョっト、捨テ過ギた、かナぁト、思ッてタり」

ロゼッタ「―――――――――」

しゃべるのも億劫なほど、サヤカが、疲弊の色を強めている。

238Mii:2021/06/26(土) 21:26:08 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「……………………………管理者トしテの最低限ノ力、足リなクなッちャっタ。

   先ホど公言シてタ、8万秒ハ…ごホっ…持タせテ、見セるケど。
 
   そッかラ先ハ、無理ッぽイ。……………………………御免ナさイ。

   最後ノ『すッぽカしテ此処ニ留マる作戦』ハ…今更頼ミ込マれテも…使エなイや」



みるみるうちに、涙、溢れてくる。
フラフラとしているサヤカを抱きしめて、子供のように――――泣きじゃくりました。





ロゼッタ「サヤカぁ…ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!私の…せいで――――っ!」









――――じきに、この空間は、なくなります。

239Mii:2021/06/26(土) 21:28:29 ID:NzWQi0XQ
一体、どれだけ、泣いていたのでしょうか。
なんて醜い姿を見せてしまったのでしょうか。…消えてしまいたい、くらい。

――だと、いうのに。
サヤカが、突然わたしに対して儚く笑いかけて、なけなしの空元気。



サヤカ「ねエ、まマ」

ロゼッタ「…………………………は、い」

サヤカ「そンな顔、しナいで。心配シてクれテ、本当ニ、嬉シい。
   だカら、最後ノ最後ノ、恩返シ」

ロゼッタ「…………お、んがえし…?」
   
サヤカ「一ツ、閃イた、最終手段。
   取得経験値ハ1万分ノ1デも。凄イ、凄イ、効果覿面ナ近道ルーとガ、
   『万ガ一』…うウん、『億ガ一』ニでモ、見ツかレば…!もシかシたラ…!!
   どウか、私ヲ信ジて――――私ニ命運委ネて――――



   『一発逆転』、狙ッて、みナい?」



実際のサヤカの様子は、居た堪れないほど悲惨な物、なのに。
なんだか、何故だか、不思議なほどの意気込みと希望を、感じることができました。

240Mii:2021/06/26(土) 21:31:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「……………………」スッ・・



サヤカに言われるがまま、正座して、目を瞑る。
なんだか懐かしい、この感じ。
いつぞやも、行き詰った時…こんなことをやってみましたっけ。

まだまだ吐き気は続くけれど。サヤカの苦痛に比べれば…いいえ。
比べることすら烏滸がましい。物理的にも精神的にも飲みこみます。



ロゼッタ「……………………」



サヤカ「はーイ。そレじャ、始メるネー。

   私ノ言葉ニ素直ニ従ッて行動シてネぇ。そウ!まイんドこンとローる!
   …何ダか犯罪臭ガすルけド、あル意味『自己暗示』ッて事デ、気ニしナい!
   
   私ガ手ヲ規則的ニ叩クたビに、心ヲどンどン鎮メて行ッてネ!さンはイ!」



――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。決して穏やかとはいえない荒れた心を、ワンステップ、深層へ鎮める。
なぜこんなことを?なんて考える必要なんてない。サヤカが求めるのなら、従う、ただそれだけ。

241Mii:2021/06/26(土) 21:34:13 ID:NzWQi0XQ
――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。更にワンステップ、心を深層へ。
イメージするのは、水面に水滴ひとつ垂らして、波紋が拡がっては弱まり消えていく…
そんな情景。格好付けて言えば…明鏡止水。



――ぱちん。

――ぱちん。

――ぱちん。



サヤカの手拍子は止まらない。どんどん、心が鎮まっていく。静まっていく。
気持ちの悪さ、不安、焦りは棚上げにして、ひとまず苦痛から解放されていく。
…でも、所詮は棚上げ。この儀式が終われば、また――――

サヤカの手拍子が、ひたすら、ただひたすらに続き。
もう、回数も分からなくなってきたところで――――――――



サヤカ「――――――――心、底ノ底マで、鎮マり切ッたネ?そレじャあ―――――――――――――」

目を瞑っていても、わかる。サヤカが、すぅっと深呼吸して――――
何かを発しようと準備していることが。

242Mii:2021/06/26(土) 21:37:40 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「―――――――――――――――――――――――――――――
   まマの身ニ起キた…全テのッ!あラゆルっ!
   障害ニっ!不条理ニっ!理不尽ニっ!災イにッ!不幸ニっ!悲シみニっ!因縁ニっ!横暴ニっ!

   りミっターなシに、感情、爆発サせチゃッて――――!!!」



ロゼッタ「――――――――がぁっ―――――――――――」

どす黒い物に突き動かされ、染み入るように。体が動く。
サヤカの言葉が浸透するままに、リミッターなんてぶっ壊して、
本能から、本心から、沸々と湧き上がるソレを――――――――――――



――――        大   爆   発 っ !!!!!!!!!!



ロゼッタ「がああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

どうして、私が、こんな目にっ!
運命を、恨むっ!恨んでやるっ!!
もう何も、信じられないっ!!

ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッ!!

荒れ狂う、FPの嵐。さっきもあったことの、二の、舞――――――――
再びどす黒い物が、どこからともなく私の心を染め上げて――――

243Mii:2021/06/26(土) 21:40:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そコで、すトおオおオおオぉォぉォ――――――っプ!!!」ビシィッ!

ロゼッタ「―――――――――ぎぃいいぃぃっ!!」グググッ・・・

――――私は、なにを、考えていた…!?
サヤカが声掛けしてくれた、おかげ、で。間一髪、踏みとどまったっ!
噛み過ぎた口端が切れて血を滲ませますが、安い物っ!!
サヤカに従い、再び心を落ち着けてFPを収めて――――



サヤカ「違ウ、違ウっ!!落チ着イちャ絶対駄目ッ!!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――ぎっ!?」ドクンッ

サヤカ「収メるンじャなクて、『留メる』ノっ!!そシて、そノまマ――――――尖ラせテっ!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――っ!?」

い、き、なり、何、を……!!



サヤカ「今ノ、まマに、必要ナ、こト。そレは、言ウまデもナい、ちカら…!
   唯ノ癇癪、地団駄、駄々捏ネ…そンな状態デ暴レ回ル狂気ノえネるギーを…
   絶望ニ打チ勝ツ為ノ、『闘争心』ニ、変換シてシまウ、こト!

   お願イ、まマ! 全力デ―――――  怒(いか)レ!!」

ロゼッタ「――――――――――――!!」

244Mii:2021/06/26(土) 21:42:33 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「さッきノ、まマの暴走見テ、わカっタノッ!!
   引ッ込ミ思案ナまマニも…燃エたギる熱イ心ハ、しッかリ根付イてル!
   そレを、たダ、正シい方向ニ切レ味鋭ク尖ラせテ、解キ放ッてアげレば、いイのッ!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



サヤカ「『こコまデやッたラ上出来』トまリお達ニ引キ継イで貰ッて満足スるンじャなクて、
   『こイつハ私自ラ、責任もッて、ぶッ潰ス』ト奮起スる、勇気ッ!

   『私ノ仇ヲ、誰カ、どウか取ッて下サい』ト託スよリも先ニ、
   『こンな輩ニ負ケを認メる訳ニ行クもノか馬鹿』ト殴リ掛カれル、度胸ッ!

   悪ヲ挫クのニ、遠慮ハ要ラなイかラっ!全力デ、怒レっ!!!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



言うは易し、行い難し。
いきなり、そんなこと、言われ、てもっ……………!!

理屈はっ!理屈はっ!飲みこめて、いるというのにっ!!

245Mii:2021/06/26(土) 21:44:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ!今マで、何ヲ、見テ来タの!?幸セ者ノ、貴方ニは…………



   打ッてツけノ、参考トなル、人物ガ、いル、でシょウっ!!」



――――あ。



――――脳裏に浮かぶは…………
    
――――いざとなったら、怒髪天になったら、
――――たちまち道理を捻じ伏せる、いつもは気ままな…お嬢様。





――――デイジー姫。その勇姿、少しばかり――――お借りしますっ!





怒(いか)る。あるいは、キレる、という表現の方が得てして分かりやすいでしょうか。
単に、周りに喚き散らすんじゃない。八つ当たりを繰り返すんじゃない。
明確な対象を設定し、敵愾心を育て、溢れる全エネルギーを注ぎ込む――――

246Mii:2021/06/26(土) 21:46:26 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ、馬鹿ッ!まタFPガ暴走シかケてル!
   最初ッかラやリ直シっ!!」

サヤカ「違ウっ!そレは何モ考エてイなイだケ!
   心ノ暴走カら逃ゲてルだケ、全然違ウっ!!」

サヤカ「怒ルこトは恥デも下品デもナいヨっ!
   躊躇スる事コそガ、そノ昂リに対スる最大級ノ…侮辱ッ!
   溜メに溜メて、うンざリすル位ニ溜メまクっテ、
   あリっタけノ想イと共ニ、敵ニ…がツんト、ぶツけチゃエっ!!」



何度も、何度も、何度だって。
サヤカにダメ出しを食らって、やり直して、やり直して、やり直して。

ロゼッタ「うぷっ…」ウズクマリ

喉元まで幾度となく襲い来るのは、胃液か、嘔吐物か、はたまた血塊か。
…汚らしい想像はやめましょう。…無心に、なれっ!それでいて、強欲に、なれ!

私の精神は、ただひたすらに急上昇と急降下を繰り返す。
辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。
悶絶躄地。艱難辛苦。窮途末路。七転八倒。

私も、あおりを受けたサヤカも、どんどん傷跡増していく。



――それでも。

247Mii:2021/06/26(土) 21:48:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そノ調子ッ!今、ちョっト制御ガ効イた気ガすルっ!」



サヤカ「いイ感ジっ!総量ソのマま、踏ミとドまッて!こコが正念場ッ!!」



サヤカ「自分ノ心ニ飲ミ込マれナいデっ!逆ニばッちリ操ッて、物ニしチゃエ!



   ――――――――そレが、まマの、頼モしスぎル、武器ニなルかラっ!!」



ロゼッタ「――ガ、ガ――――こ、んな、も、の――――――――――
    はああああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!!!」



視界も意識もチカチカするなか、一心不乱に。
私が持っているという、怒りのチカラというものを――――いざ――――!



・・・・
・・・・
・・・・
・・・・

248Mii:2021/06/26(土) 21:50:33 ID:NzWQi0XQ
〜20時間後 (現実世界7.20秒経過  残り猶予8000秒)〜



ロゼッタ「―――――――っ、がはっ…は、はぁっ――――――――」

肩で息をする、なんてものではない。
這いつくばって、ただ空気求めて荒く荒く息を吸って、吐く。
見栄えなんて、行儀なんて知ったことことではありません。

散漫な視線を、サヤカに向ける。

不思議と、いつの間にか、嘔吐感は立ち消えている。

残った物は、凄まじい量の疲労と、汗と。





ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・・・・・・

サヤカ「――――ごー!!」バッ

ロゼッタ「―――――――――――――」ザッ!

紅い奔流を纏いつつ、精神、穏やか。

これで最後とばかりに歯を食いしばって立ち上がり、
両腕拡げて、向かい入れる態勢、取ってみれば――――

249Mii:2021/06/26(土) 21:53:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――お願いっ…!!」



それらを体が拒否するのではなく、「受け入れて」。
どんどん、どんどん、吸い込んでいって!





ロゼッタ「――――――――ハッ!!」





全て、無事に、収めきったっ!!



5秒、10秒、20秒…30秒。
爆発を、暴走を危惧すれど…………取り越し苦労。



負の感情を ついに 制御し切った!
ロゼッタの 精神力が ぐぐーんと 上がった!▼

サヤカ「――――――――――――――――やッた――――ァ!!」

250Mii:2021/06/26(土) 21:55:58 ID:NzWQi0XQ
思わず泣いて、拳を振り上げるサヤカ。
私は、今更ながら、まじまじと、両手の…手の掌を見やる。



――――体が、ちりちり、火照っている。
――――むずむず、うずうず、している。



乱暴な言い方をするなら、喧嘩腰。
言葉をちゃんと選ぶなら――そう。燃え滾る闘志、勝ち気。

なんでも、自分で解決できそう…いえ。解決しなくっちゃ!という、
強い想いが――――体中を駆け回っていますっ!!

ロゼッタ「――――こ、これが…私、ですか?」

俄かには、信じられない。この、逆境に対する、言いようのない高揚感。

サヤカ「新生ロぜッた、誕生、だネ!! 」ニヘラ

ロゼッタ「……っ!サヤカ―――――!!」

胸に飛び込んでくる我が娘が、本当に愛おしく思えました。



これで―――――
これで、現実世界に戻ってから、精神攻撃に――――耐えきれる、かも、しれない。

251Mii:2021/06/26(土) 22:01:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「…………」ソワソワ

ロゼッタ「…………」ソワソワ



サヤカ「…あ、うン。気持チが昂リ過ギてルのハわカるケど。落チ着イて。
    さア、作戦終了…うウん、作戦完遂ニ向ケた、最終準備ヲ!
    もウ、遺言ヲ考エる時間ナんテ、要ラなイね!」

ロゼッタ「…!!はいっ!…とは言いましても。何をすれば、いいのですかね。

    ……あ、あれ!?そういえばっ!?
    ここでの経験効率って現実世界の1万分の1なんですよね!?
    現実世界に送り返された私って、しっかり絶望に抗えるんですか!?」

サヤカ「さア?」

ロゼッタ「『さあ?』…って、駄目じゃないですかっ!?」

サヤカ「冗談、冗談。さッき言ッた通リ、『無茶苦茶習得シにクい』ッて意味ダかラ…
   習得シちャっタ物ヲ、ぽカんと忘レるコとハ、無イよ」

ロゼッタ「良かったあ…!」

サヤカ「やッた成果ガ無駄ニなラなイだケで…
   そモそモ絶望ニ耐エるニは足リてナいッて可能性ハ無茶苦茶有ルんダよ、
   そコんトこロは、分カっテる?」

252Mii:2021/06/26(土) 22:04:12 ID:NzWQi0XQ
ジーンと、感動。そのあと、静寂。

ロゼッタ「…これでも、まだ、分の悪すぎる賭けであることには、変わりないんですよね」

サヤカがコクリと頷きます。
…そう、精々勝率を0.1%にできたくらい。
できれば、もう一声。1%くらいはくれないでしょうか…?

サヤカ「…まアでモ、きッと、大丈夫!!もウ、まマは、負ケなイよ!」

ロゼッタ「――――その、心は?」

サヤカ「唯ノ勘、ダけド」

ロゼッタ「――――最高の信頼要素ですね、ふふ」

疲れ果てながら、2人で小さく笑い合いました。





サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「…泣イてモ、笑ッてモ、後、2時間位ダよ。やリ残シた事、何カ無イ?今ノ内ニ…」

ロゼッタ「…………やり残した事――――――――」

253Mii:2021/06/26(土) 22:07:15 ID:NzWQi0XQ



…………そうだ。



ロゼッタ「…あります。最後の機会かもしれませんし――
    自己を奮い立たせるために、やれることはやっておきたい。
    サヤカなら、分かってくれるでしょう?」

まだ汗だくですが、疲れを吹っ飛ばす気持ちで、軽くウインク。



サヤカ「…………………………ま、マさカ!?あレを!?
   い、いイの!?増々自分ヲ追イ込ム事ニ、なルんダよ!?」

ロゼッタ「…………切羽詰まった時に、何をやっているのかと、自分でも思いますが。
    ――――覚悟は、できています。試したいんです」

サヤカ「……そッかァ。…うン、なラ、私ハ――何モ、言ウこトは、なイよ。せメて、手伝ワせテ、くレる?」

嬉しい、申し出。断る道理など、これっぽっちもありません。

ロゼッタ「それでは、短い時間ですが、やっていきましょうか――!!」バッ

サヤカ「おーーー!!」パアアアアア

さっそく、魔法を繰り出すべく、新たな自分の体中に、力を籠めて――――!!

254Mii:2021/06/26(土) 22:13:03 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――――――――――――――」ピタッ



サヤカ「えイ、えイ、そレー!!…まマ、こノ位ノ濃サで、いイかナ!!!」パアアアアア!!

ロゼッタ「…あの。さっきから、私になんの魔法を掛けているのですか?」

サヤカ「何ッて……もザいク?」

ロゼッタ「…………?」



サヤカ「流石ニ『CERO:D』的ナあラれモなイ映像ヲそノまマ流スのハ……ちョっト…怒ラれルし」

ロゼッタ「!?!?!?!?」

サヤカ「にンげン、死ノ間際ニ性欲ガ刺激サれルっテ言ウし!
   折角清ラかナまマの晩節ヲ汚スかモと否定的ニなッたケど、乙女ノ自由ダもンね!

   …あ、私空気読メてナかッたネ。『実分身』ヲ応用シた『逆ハーれムの術』デ
   任天堂選リすグりの美形男性陣ヲかキ集メて――――――――



   ……ぐハっ…痛ァ――――――――っ!!
   今殴ッた!娘ヲ、ふルすイんグで殴ッたネ!?暴力大反対ッ!!」

ロゼッタ「キノピオでも助走してピーチ姫に殴り掛かるレベル!」カアアァァ

255Mii:2021/06/26(土) 22:19:07 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…そ、そんなふしだらな娘に育てた覚えはありません!!」

サヤカ「…こンな姿デも、任天堂ノせイで、まマよリ耳年増ナんだヨね…
   もシかシて、私ノ、ちョっトしタ勘違イ?」

ロゼッタ「180度ずれたあとで虚数空間にぶっ飛んで行きましたよ、もうっ!!
    そうではなくてですねぇっ!!」

かわいく「てへっ」っと笑っても、あんまり見逃してあげませんからね!



ぜぇ、はぁ。爆弾発言に顔が真っ赤!こればかりは耐性がないし耐性付きたくもないっ!
こうなったら、無理やりにでも!サヤカなりの緊張ほぐし作戦と解釈しますからっ!
うわあサヤカったらここまで自分を投げ打ってくれるだなんて!嬉しいなぁ!ふふふ!



ロゼッタ「…最後に。考案中の『魔法応用』について!
    洗いざらい、試し撃ち、しておいたいんですよ!ぜひとも!」

サヤカ「…流石ニ今カら新シい応用ヲ閃クのハ無理ジゃナいカな…?」



ロゼッタ「…それでも。
    撃てるかどうか把握しておくことは、大事でしょう?
    心構えが、結構変わってくると思うのですよ」

サヤカ「…………あア!そウいウ事ネ!!」ポンッ!

256Mii:2021/06/26(土) 22:23:03 ID:NzWQi0XQ
〜22時間後 (現実世界7.92秒経過  残り猶予800秒)〜

サヤカがどうしてもと言うので。
サヤカが最後の生命力を振り絞って、一瞬だけ…見かけ上は、もとの体調を取り戻す。

サヤカ「……ふう。体ガタガタっていうのは辛いね。やっぱり健康が一番!

   …残された時間は、もうちょっとだけ。
   …ほんとのほんとに、やり残したことは、ない?」

ロゼッタ「…………最後に、ぎゅって、抱きしめさせてください」

サヤカ「ふふ、お安い御用かな」



ぎゅーっと。
無理をしているためか、ますます苦しさをやせ我慢中のサヤカを抱きしめる。



ロゼッタ「…………もう、大丈夫」

大事な物、たくさんもらいました。大勝負に勝っても負けても、後悔は、ない。
もちろん、勝って終わりたい所では、あるけれど。

サヤカ「大丈夫?伝えそびれた事、質問しそびれた事もない?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ、そんなものはもはや何も残って――――」

257Mii:2021/06/26(土) 22:25:34 ID:NzWQi0XQ



ロゼッタ「…………………」



ロゼッタ「…………あれ?そういえば…………」

ふらりと、自分の体をみやる。

…うん、確かに。精神面で、何回りも強くなった感じ。それは率直に嬉しい。
でも、ひょっとすると…………。この感じは…!





ロゼッタ「…………経験値、結局返ってきてないっ!?い、いやでも…!?」





あれ?あれれ!?
偽者の私たちの記憶は戻った、知り得ないはずの情報が頭に叩き込まれた。

…だとしたら、経験値はやっぱり取得している?どういうこと!?
そのわりに、身体面の変化が――――!

258Mii:2021/06/26(土) 22:27:56 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「こんなに経験値を還元したのに、なんだか――やっぱり、強くなっていない…!?」

サヤカ「あせっちゃだめだよー」

ロゼッタ「で、でもサヤカ…」

そうは言っても、これでは、苦労した意義の一部が無駄に…っ!
もちろん贅沢を言い過ぎたりはしたくありませんが…!



サヤカ「むむむ?」ビビッ



そのとき。
サヤカが、変な電波(?)を、受信してしまいました。



サヤカ「…………うっげー…ああ、そっかー。そういうこと、ね。
   オールスターのお祭り大会の上に、転生の扉なんてもので空間同士の繋がりが
   しっちゃかめっちゃかになって、へんな化学反応起こしたのかぁ…
   任天堂さん、しっかりしてよ…」ボソッ

ロゼッタ「…………?」



サヤカが呆れたようにため息吐いて、改まって私の方を振り向いて――――

259Mii:2021/06/26(土) 22:30:56 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ママ、まさか――――――――――――――――

   経験値を能力にかえてないんじゃないの?」

ロゼッタ「えっ?」

サヤカ「このゲームでは、練習するだけじゃ能力は上がらないの」

ロゼッタ「…この『ゲーム』?」



…というより、練習って何ですか?



サヤカ「『練習』などのコマンドに並んで『能力を上げる』という名前のコマンドがあるよ。
   それを選んで、経験値を使って能力を上げるの」



…………サヤカは何を言っているのですか?



サヤカ「あ、それとは別の話だけど、Yボタンを押すと、少し前の文章も見られるよ!
   そしてその後十字ボタンの上を押すともっと前の文章も見られるの!」

ロゼッタ「落ち着いて!お願いだから落ち着いてサヤカっ!?何がゲームだと言うのですか!」ユサユサ

260Mii:2021/06/26(土) 22:36:25 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「上見て、上」チョイチョイ

ロゼッタ「上、って…」チラッ











    『ロゼッタ 両投右打 オーバースロー
    球速 280km  コントロール A255  スタミナ C 88
    オリジナル変化球 ジャイロファイア 【スピード+30% 炎属性】

    経験点:999(MAX)
    球速      280 ⇒ 281 必要経験点900
    コントロール    取得済
    スタミナ      88 ⇒ 89   必要経験点 10            』





サヤカ「なるほど、むしろ表サクセスというよりは俺ペナ仕様かあ。うわ、経験点頭打ちだ。勿体ない」

ロゼッタ「ななな何ですかこれぇ――――――――!?」ビクゥッ!!

261Mii:2021/06/26(土) 22:42:24 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何かの手違いで、偽ママたちの経験値だけ…別系統の処理になってたみたい。
   よーし、さっさと経験値…いや経験点を能力に変換しよう!時間がないよ急いで!
   このまま選手登録する気!?」

ロゼッタ「ちょっと待って処理が全然追いつかない!」

え?え?ええ?球速?コントロール?スタミナ?
まるで野球ゲームではないですか。



サヤカ「…………ああ、もう!時間切れぇー!!
   これ以上延ばされると、現実世界に上手く戻れなくなるよっ!

   …………と!いうわけでっ!独断と偏見でっ!
   私が勝手に、役に立ちそうなのをっ!選んじゃいますぅっ!
   異論は認めませーん!」バタバタ

ロゼッタ「!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■■を 手に入れた!▼



サヤカ「あ、炎属性のボールを投げるんだし…せっかくだから、とっておきのも!
   原作仕様、原作仕様!そぉれ!……よおぉーし、大成功っ!」

ロゼッタ「原作って何!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■を 手に入れた!▼

262Mii:2021/06/26(土) 22:45:32 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「だから、お願いだから説明をしてくれませんか…って。
    ほ、本当に残り時間が…1分切ってる!?考え込み過ぎました!!」



ああもう!この際、経験値うんぬんは諦めましょう!当てにしないっ!



サヤカ「ママ、頑張って。
   …タブーの精神攻撃なんかに、絶対っ!ぜーーーーったい!!
   負けちゃ、駄目なんだからねっ!!」グズッ

ロゼッタ「もはや遺言も忘れてしまいましたからねっ!
    負けるわけには行かなくなりました!残念ながら!
    勝ってきますよ、こうなったら!」

サヤカ「…それ、じゃあ。送り届けるよ――」パアアアアアア!!

ロゼッタ「…………ええ」

サヤカ「――――――――またね!結果はいつか、聴かせて!
   …そう、夢の中ででもっ!!」

――――ええ、「またね」。
――――涙腺緩みながらも、「さよなら」だなんて嫌だから――!



景色がおぼろげになり、涙目で笑うサヤカの顔が、どんどん遠くに――――

263Mii:2021/06/26(土) 22:47:28 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ほっ」ヘタリ



ママを送り届けて、私は力尽きた。

体力の限界が来たということもあるし、そもそも管理者の役割が終わったわけだし。



サヤカ「…あー、世界が、くずれて、きた、なあ」



サヤカ「…………まあ、『私』は『貴方』だから、悲しくなんてないよ、うん」





サヤカ「最後のプレゼント、喜んでくれるといいなあ。
   うふふ。…きっと、今のママなら…使いこなしてくれる、だろう、から――」サラサラ・・・



サヤカ「――――――――――――――――」・・・・・・



シュン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

264Mii:2021/06/30(水) 05:49:00 ID:bzZ4v6Ks
〜スマブラ試合会場〜



ニンテン「そりゃあああ!石化なんてどうってことないぜ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「……で、でもなんだか、他の人と様子が違うようなっ!
  気、気のせい!?無駄に頑丈に固まってる!ちょっと慎重に解いた方がいいかも!」パアアアアアァァァ!!

ニンテン「そーゆーことは後で考えるっ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「それじゃ意味ないでしょ!」パアアアアァァ!



マリオ「ロゼッタッ!」

ルイージ「ロゼッタッ!」

デイジー「ロゼッタァ!!」

リンク「ロゼッタッ!」



パリイィィィ―――――――ン!



ロゼッタの 石化が 解かれた!▼

265Mii:2021/06/30(水) 05:51:27 ID:bzZ4v6Ks
…………現実世界に舞い戻った途端、闇の衝撃に脳を揺さぶられる。



ロゼッタ「――――――――」



なすすべもなく。



ロゼッタ「――――――うぁ――――」



もとより、魔法陣を繰り出すことすら、無理――――だった。
2秒あれば十分だとか、笑わせてくれる。



恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
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266Mii:2021/06/30(水) 05:52:50 ID:bzZ4v6Ks
涙こぼれ、口を開けたまま、瞳孔開いたまま、微動だに出来ぬまま。



そのまま前に倒れ込み――――



20cm、

10cm、

 5cm、

 1cm、







ロゼッタ「――――――――――――――――」ガシィッ!!





――――でも。今なら、どうかは、わからない。

267Mii:2021/06/30(水) 05:55:28 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「――――――――」

俯いた表情のまま、間一髪手を突いて顔面衝突は免れる。
…なんだか、「幽玄の間」に飛ばされたときと、似ている。
誰にもばれないよう、小さく息を吸って、吐いて。



ロゼッタ「――――――――」



心、真っ黒に塗り潰されてしまったか?
何も考えられなくなってしまったか?
生きることを諦めてしまったか?



全て、終わってしまったか?



――否。まだ、抵抗の想い、胸の奥にハッキリと秘めている。
キリキリ締め付けようとする圧力を、押しのけ跳ね返すだけの、熱い心が。
黒い闇、まとわりつくのを、気合い一発、取っ払って。

ロゼッタ「――――――――」

脚に力を加える。周囲が見つめ見守る中、私は――――
確かに、しゃんと、立ち上がる。

268Mii:2021/06/30(水) 05:57:43 ID:bzZ4v6Ks
目線の先は、騒動に乗じてまんまと距離を取ってほくそ笑んでいたものの――
私の、心が、ぺしゃんこにならなかったことに驚愕している、タブー。



――――――――ば、馬鹿な!耐えられるはずが、ない!



ああ、いま私、顔を上げた。

タブーを見ているうち、どす黒かった――――いえ、今は違う。
真っ赤な、真っ赤な。暴走しているわけでもない、強い、強い――



――――――――怒りの、感情っ!!!



ロゼッタ「――――――はあああああああああああああぁぁぁぁっ!!」カッ!



咆哮して。声滾らせて。
FPとともに、思う存分、解き放て!

リンク「ういっ!?」

デイジー「…ロ、ロゼッタ!?」


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