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ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか、今度こそ」

1Mii:2020/12/13(日) 04:46:59 ID:9GX1QhWw
このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」 【前々スレ】

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」【前スレ】

に引き続く続編となります。前々スレ、前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。
過去作を読まれていないと把握困難な設定、独自解釈が多々あります。

遅い進行のうえに寄り道万歳のスレですが、引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

ラナ「たったーん♪たかたかた〜ん♪
  そのほか、いくつか注意点をお知らせするよー。

     ・スレ主の、基礎体力面での戦闘能力解釈は、ざっくり言うと…
      キャラとしての登場時期の早さと、登場回数の多さで大方決まるからね!

      マリオ、クッパ、リンクを『3強』と表現してるけど、たとえばクッパVSガノンドロフだと、
      クッパが欠伸しながらパンチを繰り出すだけでガノンドロフを一撃粉砕できるくらいの力量差があるよ!
      パーティゲームに参加しないから仕方ないってことで、うん。敵があっさりやられても嘆かないで…。
      リンクとの差が付いた理由は、前々スレを読めばわかる、のかなあ…?

     ・前々スレ・前スレ同様、いろんなパロディ、メタ発言が散りばめられてるよ!
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義が白けるなら
      急がず慌てず別のスレに移って、このスレのことは忘れよう!
      
     ・ようやくスマブラ編が完結して…マリオカート編にちょっとずつ戻っていくんだって!よかったよかった!」

シア(…………ちょっとずつ?)

2Mii:2021/01/31(日) 13:37:41 ID:2O82Dg8o
〜第34区〜

リンク「…………まずいぞ。敵、深追いし過ぎた」

区をいくつか移動してまで、連戦、激戦、大激戦。
ありったけのレベルの暴力で押して、伸して、斬りまくって。
余りにも血生臭いときは、ファイアロッドで消毒した気になったり。
…うーむ、効果あるんだろうか。

ともかく、俺が頑張れば頑張るだけ他がきっと楽になる…そんな思いで。
機動力命で、四方八方、どこへでも。



…その結果。

敵は敵で、最大脅威のひとつとみなし、俺にこぞって集まってきた。
速度を落とすまいと突っ込めば、ますます敵の密度は高くなる。

飛んでくる矢が、6本。
1本目を俊足で避け、2本目を屈んでやり過ごし、
3本目と4本目は剣で払って、5本目と6本目は…咄嗟に盾を構えて。



――――やりにくいっ!

正直、威力のない矢だ。素手でぱしっと掴めるくらいの。刺さっても痛くないくらいの。
絶え間なく、休む間もなく迫り来るが、自分の強さはよーく分かってる。

3Mii:2021/01/31(日) 13:41:37 ID:2O82Dg8o
問題は、庇うべきみんなの耐久。

俺が背負うは、石化したままのルキナ、ルフレ。
傍には石化したパルテナに、彼女を背負った状態でますます疲労の度合いを強めるピット。

ピットには悪いが、敵の掃討の9割9分は俺の役目になっている。
飛翔の奇跡があることによる俺の機動力の向上と、ピットを庇う労力との天秤は…
正直言って、トントンか、あるいは…。

万が一、ピットや石化した奴に当たったら、無傷で済む保証がない。
まさか試すわけにもいかない。おかげで大げさに、かつ慎重に動かざるを得ない。

まさに先ほど…魔力開放で調子こいてたら、ピットのカバーをし損ねた。
ピットが躱せず…もとい、パルテナに当たろうとするビームを身を挺して食らって、
悶絶すること、10秒あまり。

…俺には、てんで威力のないようにみえたビーム。
常日頃のピットなら、易々と受け流せるビーム。それなのに…だ。

また、攻撃が、飛んできた。
今度は炎に、電気に、よくわからない空気の渦みたいなものに…いろいろと。

リンク「やべっ!!…困った時の大回転斬りぃ――――!!」ズバアアアァァァ!!



冗談ではなく、疲労が祟ってきた。

4Mii:2021/01/31(日) 13:44:35 ID:2O82Dg8o
毎回というわけではないが――――
逃げ遅れ、石化したまま動きを止めた住人が、たまに脇道にいたりする。
顔をちらっと伺えば、住んで長いおかげで…知ってる顔が大半。唇をきつく噛む。

敵の攻撃ライン上に1人でもいたならば、俺にとって「回避」の選択肢はない。
最善は、攻撃発動前に敵をぶっ叩いて終わらせる。
最低でも、間に入って留まって、攻撃を消し去るべく活動する。



…だいたいは最善行動を繰り返せているが――――

リンク「1回ミスると俺にとっての敗北扱い、なんだよ、なあっ…!」



俺がいる。敵がぞろぞろと現れる。
俺、なぎ倒す。範囲攻撃に乏しくて、ときたま撃ち漏らす。
倒し損ねた敵が…大声で叫んで、咆哮して味方を集める。敵がぞろぞろと現れる。
…そんなことを繰り返すうち、移動する敵が一般人と出くわす。仕留める動作に入る。
俺、ブースト掛けてなんとか瞬殺。流石にオーバーワークで体力を削られる。
敵がぞろぞろと現れる…………。

――背負ったルキナたちを繋ぎとめている紐が緩んで、冷や汗かいて結び直す。

――すこし離れたところに飛竜が旋回しているのを見て、まさかあちらにも危険が…!と、
――分不相応に救いの手、殲滅のエリアを伸ばす。

…………いくらなんでも、分かる。こりゃ、ジリ貧だ。

5Mii:2021/01/31(日) 13:48:58 ID:2O82Dg8o
もちろん、ペース配分考えて…なんてやってたら、それこそ見殺しにする可能性は高い。
俺の行動指針は多分間違っちゃいないし、司令部も期待している通りの行動だろう。
…だが。いくらなんでも、1人で背負い込みすぎた、ということにようやく気づいた。

リンク「…………こんなヤツら相手に、なっさけねえ…!」



突然、冷気が顔面に襲い来る。

リンク「冷たっ!?油断するなよ、俺っ!
   幾らダメージを受けないからって――――ゴホッ!ゴホッ!

   ………………マジ、かよ」



攻撃が当たったことはこの際どうでもいいが。
割と激しくせき込むほど、口内や肺に入った冷気によってダメージを受けた…!?
おいおい、俺の耐久…いや、ステータス全般…案外下がってきてるのか!?



リンクの 全ステータスが 少し 下がった!▼

リンク「ぐっ――――だあぁ、一杯食わされたっ!」



地団駄踏んでる暇じゃない!精神動揺は敵の思うツボだっつーに!

6Mii:2021/01/31(日) 13:52:43 ID:2O82Dg8o
…そもそも、ぶっ通しで戦い続けて、一体何時間過ぎたのか。
スタミナが知らず知らずのうちに結構減ったのは当たり前だ。

とりあえず、とりあえず…何をする?
休むか?その間に誰かが被害を受けたらどうする?

リンク「――――っとお!!」バシッ!

ハッと気付いて横っ飛び。
好奇心か弑逆心かは知らないが、石化した人に向けて、もろに斧を振り上げている屍兵。
汗をドバッと噴き出させて、なんとかガキィンと打ち負かす。

リンク「クソッ…やっぱり休むなんてできないじゃねーか!」

さきほど、トゥーンゼルダが少し持ち直した感がある。
せっかく、司令部が再スタートを切ろうとしているのに――



リンク「今更援軍を要請して水を差すなんて野暮だしなあ――――」



…と、そこへ。



リュカ「どの口がそんなこと言ってるのさっ!」バッ!

ピット「うわっ!突然だなあ、敵かと思ったっ!心臓に、悪いよー!…はぁ、はぁ…」ビクッ

7Mii:2021/01/31(日) 13:56:37 ID:2O82Dg8o
リンク「うおっ!?リュカじゃないか!わざわざこのあたりで戦ってたのかよ。
   巻き添え食うからやめとけって!ピットを気に掛けるので精一杯だぞ、俺!」


…ピットが小声で、「あ、はい。気に掛けられているピットです」と呟いて
情けなさそうな面持ちをしていたが、あえて聞こえなかったことにする。



リュカ「そんなわけないじゃないか!聞こえてくる戦闘音から察するに、
   リンクの調子があまりにもあんまりだったもんで、わざわざ『寄り道して駆けつけた』の!もー!」

リンク「…へ?戦闘音?…いや、いやいや!
   傲慢に聞こえたらすまないが、お前には俺の救援は荷が重いと思うぞ!
   リュカクラスだと、相当に戦闘能力が下がってるだろ!
   ピットがマシに見えるほどの低下が起きてるはずだ!」

レベルが低いほど、OFF波動の影響を受けやすく…
元々低かったステータスが、更にとんでもなく下がる。ホント厄介な魔法だよ。





だが、知ったことかとリュカは息まく。
…いや、すぐに落ち着いた感じになって、ため息ひとつ。

8Mii:2021/01/31(日) 14:02:14 ID:2O82Dg8o
リュカ「…ねえ、ピーチのご高説はあんまり頭に残ってないけどさ。
   OFF波動って、絶望や諦めの感情をひたすら押し付けてくる…魔法、なんだよね?」

リンク「そうらしいな?…おっと!くっちゃべってる暇も与えてくれなさそうだっ!アイスロッド!」ダッ!!

リュカとの会話をぶった切り、新たに出現した敵をカチコチに。
…ぬ、後続もぞろぞろと…!ええい、このまま冷気を放出、放出っ!!
まとめて氷の塊になっちまえ!…魔力切れには注意しないとな…!

放つ冷気とは裏腹に、体は汗だく。心拍数も上がり調子。とりあえず、リュカを安全な所に連れて行く策を…!

リュカ「……………………そっかー、通りで」ペタペタ

ピット「……通りで…なに?」

リュカが、達観した様子で――自分の心臓やお腹のあたりを軽くさすっている。



リュカ「前回大会だと若干のトラウマ再発で割と慌てちゃってたけどさ。
   冷静になって、深呼吸して。目に入るもの、耳にするもの、噛みしめてみると。

   こんな絶望なら、前から何度か、見てきたから――――」



リュカの 全ステータスは ほとんど 下がっていない!▼

リュカ「――――僕に関しては、戦闘力の低下は。選手カード持ちじゃない事考慮しても、
   それほど気にしないでいいんじゃないかな。まあ、元々の戦闘力が当然ひっくいけどね」フッ

9Mii:2021/01/31(日) 14:06:08 ID:2O82Dg8o
リンク「――」

ピット「――え」

リュカ「――――あ、ごめん!変に気を遣わせるつもりはなかったんだけど!」

リンク「遣うわ!」

リュカ「…こほん。僕が言いたかったのはね、ともかくね――――」

――――リュカが口をモゴモゴさせていたら、またしてもっ!
――――足音に気付けたのは僥倖、ガバッと踵を返して、迫り来る後ろの狂戦士へ!
――――狂ったところで、所詮俺の敵なんかじゃないぞっ!



ぐらり。

咄嗟の動き方をしたのが災いして、紐がまたもや緩んでいたのも手伝って、

背負っていた石像2人が、バランスを崩して背から離れた。

ハイスピードの俺から多大な速度を受け取って、慣性に従い宙に舞う。



――――はあああああっ!?

最優先事項、地面への衝突の回避と衝撃吸収――――っ!!
自らの体をクッションに挟む感じで、地面に必死の思いで滑り込む――――!

10Mii:2021/01/31(日) 14:10:04 ID:2O82Dg8o
間に合う。
ああ、間に合ったとも。
敵を「そっちのけ」にして一目散に駆けた甲斐があったものだ。





それで。

俺を目標にして飛翔させたと思われる、
石化ルフレの眼前に迫る、ボムのような爆発物は如何とするか。



やばい。

やばいやばい!

やばいぞ、これはっ!!?



そりゃ、それほどの威力は持ち合わせていないかもしれないが――――
そんな淡い期待で放置して、最悪なことになったらどうする!?
目を見開いたまま、世界がスローモーションに過ぎていく。

11Mii:2021/01/31(日) 14:14:17 ID:2O82Dg8o



リュカ「敵の真似っこっ!!『ディフェアップΩ』に『シールドΩ』―――!!」パアアアアァァァ!!



味方の 防御力が 上がった!
敵の 物理攻撃を 軽減!▼



九死に一生。
ぽすっという小爆発の余韻を残し、俺たちは守られた。



リンク「さ…サンキューな、リュカっ!」

ピット「そっか…!超能力作用だから空間魔法制限に引っ掛からないのか!
   思いっきり空間にクッションを作ってるように見えるけど!」





リュカ「…この、大馬鹿者がー!!」

リンク「!?」

12Mii:2021/01/31(日) 14:17:08 ID:2O82Dg8o
リュカ「酷いよ!見てられないよっ!
   結局『僕なんかに』助けてもらってるじゃん!3強のくせに!
   何勝手に調子を崩してるのさ!

   僕が言いたかったこと、戦闘において大事なことは――――
   そう、リズムを崩さないこと!」

リンク「…リズ、ム?」

リュカ「苦境でも逆境でも、自分のペースを、行動スタイルを維持する!
   焦らない、心を揺らされない、惑わされない!
   
   ――――よーく見ててよ!それっ!」

リュカが、颯爽と新たな敵に向かっていく。
その速度は、決して速くない。なんとも、ノロい。



リュカ「ほりゃっ!こっちだよー!」

だが。ステップを踏んで、最小限の動きで敵を避けて。

リュカ「えい!やー!とー!それ!」

――1HIT! ――2HIT!  ――3HIT!  ――4HIT!



小刻みに、確実に、攻撃を重ねていく。

13Mii:2021/01/31(日) 14:19:45 ID:2O82Dg8o
リュカ「腕が伸びてきたら引く!引かれたら突っ込む!
   飛び道具は最小限の動きで避ける!身を翻して裏をかく!
   そんでもって、確実に攻撃を当ててリズムをつかむ!」

――5HIT!  ――6HIT!  ――7HIT!  ――8HIT!

声を張り上げながら、リュカの怒涛の攻撃は止まらない。

リュカ「力の差は、しっかりとあるんだから!
   のらりくらりとかわせないはずが、いなせないはずが、ないんだよ!
   リズムにさえ乗れば、勢いも付くし余裕だってできるんだ!」

――9HIT!  ――10HIT!  ――11HIT!  ――12HIT!

リュカ「そりゃ、リンクほどになれば『とっさの判断』で対処できないこともないけどさ!
   とっさの判断そのものが要らない身のこなしを心がけた方がいいに決まってる!
   僕なんか、日ごろから『どうやったらコンボが繋がってくれるか』ばっかり考えてるよ!

   有利をちょこっとずつ確実に拡大、これが弱っちい僕の戦う知恵!」

――13HIT!  ――14HIT!  ――15HIT!  ――16HIT!

――FULL COMBO!

リンク「――――!!」

14Mii:2021/01/31(日) 14:22:21 ID:2O82Dg8o
リュカ「リズムにノると、テンションもモチベーションも保ちやすいよ!
   さあさあ、リンクもやってみて!リズムにノって攻撃と防御だ!」

リンク「うえっ!?か、簡単に言ってくれるな…!
    え、リズム?リズムねえ…?」

リュカ「面倒だなあ、なんなら僕がビートを刻んであげようか?
    ハイ、ハイ、ハイ、ハイッ!」タンッ タンッ タンッ タンッ

リンク「子供か!そんな勝手に作られたふざけたリズムで動けるわけ――――」

リュカ「タッ、ター、ンッ、タラタラ、ター、ンッ!」

リンク「だからいきなりすぎる…え、ちょ、ほいっ!てりゃあ!こうか!?」



翼竜「GYAAAA!?」バサッ

屍兵「のわあぁぁ――!?」ザクッ

ボコブリン「ハァッ!?グァ――」グフッ



ヒット&アウェイ!
突進してくる敵たちを 引き寄せて
回転切りで 一網打尽にした!▼

リンク「……素っ頓狂すぎるだろぉ……あり?」ザッ! ザッ!

15Mii:2021/01/31(日) 14:24:07 ID:2O82Dg8o
リュカ「次、来るよっ!
    ターッ、タタタ、タッ、タラー、タタタ、タッ、タラー!」

リンク「…引いて、割り込んで、盾、ほいさ!」



EXCELLENT!
ベストタイミングで盾カウンター!
魔力弾を完全反射して返り討ち!▼



リンク「――――――――」トン トン トン トン

リンク(斬る、引く、寄る、斬る、盾、引く、引く、盾、斬る、
   寄る、斬る、撃つ、寄る、斬る、盾、盾、引く、斬る――――)



ナイス!
――グッド!!
――――グレート!!!
――――――ワンダフル!!!!
――――――――エクセレント!!!!!



リンク「……なんか知らないが、本当に戦い方が改善されてるぞ!?
   マジで!?リズムってすげえ!」

16Mii:2021/01/31(日) 14:27:30 ID:2O82Dg8o
リュカ「その感覚忘れないで!
    どうしても慣れないっていうんなら、ビートモードを解除してもいいけど…」

リンク「…ビートモードって何さ…コホン。
   もうちょっと騙されたと思ってやってみるよ。

   ――――なるほど、こんな感じか!
   なんとなくコツがつかめてきたぞ!恩に着る、リュカ!」

リュカ「へへ、どういたしまして。
    ――さってと、じゃあ僕も急ぎの用事があるんで…任せたよっ!」ダッ

リンク「ああ!忙しいとこ、悪かったな!ピット、もうちょい頑張るぞ!」

ピット「押忍!」





リュカ「全くもう、世話が焼けるんだから」タタタ

17Mii:2021/01/31(日) 14:31:17 ID:2O82Dg8o
リュカ「おーーーーーい!!! 寄り道しててはぐれてごめ……」タタタタ





クマトラ「このアホが――!!」ボカッ

リュカ「」バタッ





クマトラ「大事な使命抱えてるときに急にいなくなるな!
     このアホ!救えないアホ!ダスターよりアホだぞお前!」

ダスター「なんか飛び火してきたぞ、おい」

リュカ「…痛いじゃないかっ!だからっていきなり殴る、普通!?
   誰かさんの口癖が移ってる移ってる!
   それに離脱するってちゃんと伝えたよ!」ムクッ

クマトラ「『ちょっとあっち行ってくる。すぐ追いかけるから…』
     これのどこが ちゃんと伝えた だよ!ふざけるな!」

リュカ「…………あー、うん。言われてみれば、それはそうかも」テヘ

18Mii:2021/01/31(日) 14:33:49 ID:2O82Dg8o
クマトラ「いいか皆!オレたちの『役割』を、もう一回この場で言ってみろ!」ダッ!
    
テディ「……迫り来る雑魚敵を、俺がビシバシ伸せばいいんだろ?」ダダダ
   
ダスター「しつこい敵は、カベホチで張り付けて戦闘時間を節約してだな」タタタ

ジェフ「僕たちにはっ、荷がっ、重すぎる強敵はっ、
   弾数制限がある最新式『ペンシルロケット200』で対処してですねっ」タタタ

リュカ「そして、僕とクマトラのPSIで色々と攻守カバーしつつ…
   ポーラをしっかり護衛して目的地まで送り届けるのが『役割』、でしょ?
   プーがネスを見つけ出すのが遅くならないといいんだけど…」ダッ!

ポーラ「…お手数をお掛けします。さあ、急ぎましょう」ペコリ



クマトラ「…………」

クマトラ「……………………」

クマトラ「――――ちっがああああぁぁう!!」ウガー!

リュカ「いや合ってるよね!?完全解答だよね!?
   それがピーチ姫に前々から託されてた計画でしょ!?」

19Mii:2021/01/31(日) 14:37:35 ID:2O82Dg8o
クマトラ「オレはっ!オレはっ!

    ――――役割に囚われるとか、

    ――――運命に縛られるとか、

    ――――エンディング投げっぱなしとか、

    そういう生き方は大ッ嫌いだあああああああぁぁぁ――――!!」

テディ「」

ジェフ「」

ポーラ「」

リュカ「さっきの質問した意味は!?」

ダスター「あと、その批判はこの場ではやめとこう。1〜3、全部名作。
     エンディング完璧ならもっと名作だったのにとか言わない」

クマトラ「ともかくっ!固定概念に囚われず行動しようぜ!
    オレは鳥かごの中の鳥ではない、自由奔放な生き方を猛烈に欲している!

    あの、憧れの、デイジー姫のように!」

ポーラ「えぇと、それはちょっと…止めた方が、いいんじゃないでしょうか…
    ピーチ姫曰く、劇薬っぽいから…」

リュカ「どこをどう間違えてここまで吹っ切れちゃったんだろうね、クマトラ…」

20Mii:2021/01/31(日) 14:40:26 ID:2O82Dg8o
ジェフ「あのですね、クマトラさん。
    集団にとって最大限の益や幸福を得るために、
    行動に無駄のない役割分担や分業を行うのは
    効率を考えても決して悪いことではないと思うので――」

クマトラ「つべこべ言わない!」

ジェフ「あ、はい。御免なさい」ビクッ

ポーラ「簡単に引き下がらないでよ!」



――――ウオオオオオオオオオオォォォ!!!!



リュカ「…駄弁ってる間に、そら来た!敵さんのお出ましだ!
   役割分担、大事だよ!ただでさえ僕たち弱いんだから!
   陣形ど真ん中のポーラをしっかり守りながら、テキパキきっちり処理!

   リーダー気取ってたんだから、PSIの準備はいいよね、クマトラっ!」パアアア

クマトラ「…………まぁな!任せとけ!」パアアア

21Mii:2021/01/31(日) 14:43:54 ID:2O82Dg8o
〜第29区〜

喜び、涙を流し、抱き合う…住民、観光客たち。
再び石化の時限が迫り始めてはいる。悲しいことですが、まさに時間稼ぎには、なる。

石化が瞬く間に解かれた彼らを一瞥して。デイジー姫が、しっかり握り拳を作ります。

デイジー「よっしゃ!上手くいくみたいだね!
     じゃあ私は、この子たちを両脇に引っ提げて…
     各避難場所を巡回してくるよっ!それが私の役目だよね!」

ニンテン「わかってるじゃん。あとで『いちごとうふ』をあげよう」

デイジー「ナニソレまずそう…いらない…
     そういや、2人で担当箇所分担したほうが効率よくないの?」

アナ「それをして、PPが尽きた側自身が石化し始めると大変なので…
  そもそもPPがデイジー姫ありきの量ですから、あんまり意味がないです」

デイジー「なるほど。よし、さっそく行動開始だぁー!!」ダダダッ!!

ロイド「よろしく、頼みましたー!」



たちまちデイジー姫が、土煙と共に去っていきました。

22Mii:2021/01/31(日) 14:45:47 ID:2O82Dg8o
ロゼッタ「――――」



今の私に、できる、こと。



ルカリオ「…はぁ。多少は肩の荷が下りたというところか」



今の私に、できる、こと。



とりあえず、早く中央に戻る。

デイジー姫のFP枯渇を見越して、FP回復アイテムを調達しておく。



――空間魔法が使えないからといって、無計画でいるのはよろしくありません!



頼もしすぎるファイター達によって、じきに、空間魔法が使えるようになる、はず。
そのときに何ができるか。ほんの少し落ち着いた頭で、考えておく。
それが、せめてもの償いと、いうものではないでしょうか。

23Mii:2021/01/31(日) 14:47:20 ID:2O82Dg8o
ルカリオ「おい、ロゼッタ。そろそろ――――」

ロゼッタ「――――はい。では、参りましょうか。ご迷惑を、お掛けしました」



涙の跡をサッと拭って。
空元気でもなんでもいいので、再び駆け出します。



住民「ロゼッタさん、本当にありがとうございました!」

観光客「ありがとう!おかげで助かりました」



手を振る、みなさん。

その感謝は、拍手は、どうぞデイジー姫たちに。

私は何もできていない。







…まだ、何も。

24Mii:2021/01/31(日) 14:51:37 ID:2O82Dg8o
〜第51区〜

ネス「…………」ムスッ

プー「……いつまでヘソを曲げてるんだ。敵に気を付けつつ急ぐぞ」タタタ

ネス「いや、曲げたくもなるよ。ここで曲げずにいつ曲げるんだよ。

   何なのさ?僕が知らない間に、僕だけ仲間外れにして、
   数年間も、キノコ王国で極秘ミッション与えられてたの?
   僕たち友達でしょ?教えてくれたっていいじゃないか」タタタ

プー「それを言われると返す言葉がないが…
  間違いなく大会参加することになる、ネスの気を散らせたくなかったんだ。
  必ずしも事件が発生すると決まっていた訳じゃないからな。裏方が引き受けただけだ。

  それに猛特訓といっても、ピーチ姫の指示のもと、ただひたすらに作戦会議と…
  ニンテンとアナのヒーリングγの性能向上を試行錯誤で目指しただけで、
  戦闘力急上昇とかとは無縁だぞ?ネスが戦闘力トップなのは変わらないからさ」

ネス「別にそんなやっかみとかはないよ…でも疎外感だよ…。
  余計な気配り、お節介だよ…。結局今更教えられても、時間を損してるし…。
  慌ただしいからもう水に流すけど、次からはちゃんと教えてよ?」

プー「あ、ああ、すまない」

25Mii:2021/01/31(日) 14:54:05 ID:2O82Dg8o
ネス「それで?2人によって石化のタイムリミット問題はある程度解決したとして。
   次の段階はなんなのさ?石化対策のヒーリングγの強化だけがノルマなら、
   プーたちまで駆り出される意味はあんまりないよね?…いやあるのか?あれ?

   今から僕を、どこに、何のために連れて行くの?」

プー「…………なあ、ネス。
  とりあえずネスの戦闘能力があれば、向かう先で仕事は果たせるはずだが。
  プラスアルファとして、一つ確認していいか?」

ネス「んー?」



プー「ネスって、歌うことは相変わらず好きか?」

ネス「…唐突な質問にびっくりだけど、もちろん好きだよー?上手いかどうかは別にして。
  いつぞやの冒険のときも、しょっちゅうメロディを口ずさんでたなぁ。
  なんだろう、元気のない時でも、不思議と力が湧いてくるんだよね」

プー「ならばよし」

ネス「…………」



プー「…………次はここを左に曲がって――――」

ネス「ちょっと待って。中途半端に質問投げて終わりにしないでよ。
  意図を!意図を教えてください!」

26Mii:2021/05/04(火) 09:13:05 ID:nruCllbs
ロゼッタ「…………石化した人たちが、いなくなってます」タタタ

ルカリオ「ああ。既にデイジーらが助けたか、キノピオたちに運ばれたか、
     したんだろうな。――そうに決まっている」タタタタ



どこに、どんな人がいたのか、脳裏に深く刻まれていたがゆえに。
居た人がいなくなっていることを、さも当然のように気付くことができる。
居なくなっているからといって…何か砕けた跡、みたいな――最悪の顛末には、
いまのところ、遭遇していないのが救い。



ロゼッタ「…そう、ですね。     ――――あっ!ゼルダ姫!」

ゼルダ「――フッ! ――ハッ!
    あら、ロゼッタではないですか。そちらは如何…

    …ハッ、都合よく見せかけて――差し向けられた偽者っ!
    顎の骨を砕いてさしあげましょうっ!御免あそばせっ!」

ロゼッタ「ひゃっ!?本物です本物です!一緒に三途の川を渡り続けた本人です!」

咄嗟に頭を庇いつつしゃがんで、ストレートパンチを間一髪躱しますっ!

ゼルダ「…………冗談ですよ。あと、その言い方はおやめなさい」ピタッ

ロゼッタ「じょ、冗談にしては殺気が篭っていたのですが!?」

27Mii:2021/05/04(火) 09:16:34 ID:nruCllbs
ゼルダ「本物なら躱せる程度にはセーブしてありますから」

ロゼッタ「『殴られるようなら偽者だ』的発想はやめてください…
     合理的ではありますけど――むっ!」

不要だったかもしれませんが、ちょっと助太刀。
彼女の後方から姑息にも迫り来ようとしていたデビルっぽい異形にパパッと接近し――
その尻尾の先端をとっ捕まえて、ぶん、ぶん、ぶんっと!



ロゼッタ「いち、にの……さん!」バッ!

綿毛のように、すごーく軽い!



スピン加速しつつジャイアントスイングし切って、明後日の方向へ…もとい石壁の方向へぶん投げます。
砲丸投げのごとく、狙い通りにヒュゴゥと飛んで行った敵が…
断末魔を上げる間もなく叩きつけられ、メキョっとひしゃげて動かなくなるのを見て、ほっと一息。





テーレッテレー!
ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.44に 上がった!▼

28Mii:2021/05/04(火) 09:21:04 ID:nruCllbs
ルカリオ「おっ、今の動きは中々冴えていたぞ。いい判断だ」

ロゼッタ「ありがとうございます!まだまだ未熟ではありますが…
     って、なんだか手がチクチクします!尻尾に、ど、毒!?あわわわ、浄化浄化っ!」パアア

ゼルダ「…いまひとつ締まりませんね」

ロゼッタ「放っておいてください!
     それで、ゼルダ姫。このあたりを拠点として暴れていらっしゃるので?
     お一人で大丈夫でしょうか、万が一のことがあったりしたら――」

ゼルダ「まあ、ハイラルの姫君を侮るな、とだけ言っておきましょうか。
    あの死に物狂いの特訓のおかげで、多少は魔法の腕が上がったことにも
    結構救われていますよ。敵にこの体、触れさせもしません。
    もっとも、暴れる、という言われ方は優雅さの欠片も無くて承服しかねますが…コホン。

    投入戦力がどうにも足りていない所を転々と埋め合わせしている、
    といったところですよ。とくに決まった場所があるわけではありません。
    …会場に向かっていたのですか、ロゼッタ達は?」

そう軽く返事しつつ、すぐさま周囲に気を配り臨戦態勢。
返り血ひとつ浴びていないというのは、流石といったところでしょう。
とても凛々しく頼もしい、その横顔。

29Mii:2021/05/04(火) 09:24:30 ID:nruCllbs
ロゼッタ「はい!…拡散術式の尻拭いも、やらなければならないので。
     移動距離がどんどん増えて辛いですが…ではまたっ!」

ゼルダ姫はこのままでもなんとかなるはず。お言葉を信じましょう。
そう言っている間にも、輝きを纏った光の弓矢が、みるみるうちに充填されていくのですから。

下手な鉄砲ですら数撃ちゃ当たる。
ましてやゼルダ姫の最強の弓矢が連発されれば、場を制圧できないはずがありません。

ゼルダ「ロゼッタっ!貴方の心境はある程度察しますが…とにかく焦るのはやめなさい!
    ――それと…これを!」

駆け出そうとしたところでゼルダ姫の声に慌てて振り返ると、何かを放り投げられました。
咄嗟に手を出して、辛うじてキャッチに成功。ふう。…金銭袋?
紐をほどいてちらっと中を覗き見ると――この形…たしか、ハイラル通貨でしたよね?
ルピー、とかいう。でも、私が知っているのは緑色だけだったような…。
何故か、色とりどりのルピーがざくざくと詰まっています。

ゼルダ「はした金ですが…好きに使いなさい、遠慮はいりません!
    さあ、ここは私に任せて、ルカリオと共にお行きなさい!
    どうせロゼッタのことですから、これがないと何もできないのでしょう!」

ロゼッタ「は、はい!わかり…ました?」

生返事になってしまう程度には、ゼルダ姫の意図を掴みかねているのですが…
何か大きな意味があるのでしょうか?つい流れで、そのまま懐にしまう羽目に。
…あ、重くはないですが割と嵩張る。空間魔法が使えたら別空間に収納できたのに。

まだまだ喧騒と爆撃醒め止まぬ中、ゼルダ姫と別れ、再び私たちは走り出します――

30Mii:2021/05/04(火) 09:28:17 ID:nruCllbs
〜キノコ城北 第2区〜

ポーラ「もうちょっと!あとちょっと!みんな、お願い!頑張って!
    あたりの石化ペースの膠着状況からして――
    ニンテンとアナもフルパワーで頑張ってくれてる!だから急いでください!」タタタ

リュカ「――ディフェアップΩ!――ライフアップΩ!――サイコカウンターΩ!!

    頑張ってるよお、なけなしの勇気と根性と空元気でっ!…わっとと!
    さっすが戦況ど真ん中、敵の密度が濃いのなんの!
    ぜつぼーてきにPPが足りないっ!サイマグネットフル稼働だよ!
    カバーした傍から、僕自身含めてダメージをボカスカ蓄積するから仕方ないね!

    そして僕は一体全体、どういった経緯で、
    いつの間にかPKサンダーやサイマグネットを使えるようになったのか!
    改めて考えるとそこがよくわからない!」

クマトラ「教えただろ!」

リュカ「記憶に御座いません」

ダスター「アホなこと言ってないで動け!」

リュカ「はぁい!」

31Mii:2021/05/04(火) 09:32:32 ID:nruCllbs
嫌になるくらい、血だらけ荷だらけ泥だらけ。
戦闘力のあまりない、あるいは温存中の人たちの護衛をしつつ、
実力不相応に強行突破しつづけようと突っ込んでるからさもありなん。

強者にのみ許されるチート能力でも貰えないかな、矢除けの加護とか。
超能力だけじゃキビシイんだよねー!
…いやむしろ、なまじ超能力で色々できるばっかりに
能力補強に駆り出されまくりで首を絞めている気がする!

ジェフ「はい、次の交差点を右、その次を斜め左です!」

テディ「おうよ!地図を見間違えるんじゃねぇぞ!」

ジェフ「馬鹿にしないでください!
   そもそも、予行演習でさんざん行った場所でしょうが!」

やや高台っぽい「目的地」に向かうなだらかな坂道を、駆ける、駆ける、駆け上がる。

死角から飛び出る悪いヤツらを出会い頭にぶっ倒し、

僕たちにとって第一の護衛対象であるポーラにレーザーでも迫れば慌てて身を挺して受け流し、

味方の誰かが傷つき、倒れ、蹲れば…どうにかこうにかPPをやりくりして治療する。





…あ、なんだかちょっと、立ち眩み。

32Mii:2021/05/04(火) 09:35:24 ID:nruCllbs
リュカ「げっ……!」フラッ



間の悪いことに、視界の端から、石っころ…いや岩っころが猛スピードで飛んできた。
なんだよその攻撃、手抜きか。誰の仕業だ、おかげさまでピンチだよ。

僕が避けるとみんながやばい。まあ避けられないんだけど。…ええい!
せめてもと顔を両腕で遮って、上げた防御力でやせ我慢!かなりの痛みを覚悟して……!



ザンッ――――――ズバアアアアァァッ!

リュカ「…ふえっ?」



…閃光一貫。突然、岩の塊が――紙きれのように、木っ端みじんに千切れ飛んだ。
それも、都合よく破片がこちらに飛ばないような吹っ飛び方で。
どうやったのか知らないけれど、クマトラ、グッジョブ!

クマトラ「うおっ!やるじゃないかリュカ!今の、どうやったんだ!?
     いっきなり、でっかい礫が爆散しやがったぞ!?
     火事場の馬鹿力ってやつか!チクショー、オレも真似してみたいっ!」

リュカ「…………は?今の、クマトラがやってくれたんでしょ?えっ?」

クマトラ「んな訳あるか。ボケたか?」

33Mii:2021/05/04(火) 09:38:32 ID:nruCllbs
吹っ飛んだ岩の残骸と、クマトラの驚愕の顔を交互に見やる。
破片の散らばり具合、やっぱり凄い。当たっていたらとゾッとする。
…いやいや、僕なんにもやってないよ!



「大丈夫ですか?御怪我はありませんか?」

リュカ「……………うわああっ!?…あの?ええっ…と?
    き、きみが助けてくれたの?ありがとう!強いんだね!」



突然、「目の前」に、やってくる顔。…う、浮いてる?
ビックリ仰天したけれど、よく見れば穏やかで怖がりようのない顔だ。
表情が豊かというわけではないけれど、微かに笑みを浮かべている。

「いえ、お気になさらず。幸い、私の体の方が丈夫だっただけですから。
ここに急行して窮地を救うように……誰かに懇願された、気がするのです。
不思議な感覚だったのですが…いえ、気の迷いですね、忘れてください」

リュカ「…………?」

 「…大変申し訳ございません、私も急いでおりますので――――これにて失礼いたします」

リュカ「あ、うん、その感じだと、大事な用が待ってるんだよね!
   それじゃあバイバイ!きっとまた会えるよ!お互い、この戦いを生き抜こう!」ダダッ

34Mii:2021/05/04(火) 09:40:50 ID:nruCllbs













ファイ「…………はい、そうなることを願っています。
    さあ、急ぎマスターの元へ馳せ参じなければ――――!!」フワッ

――――――――ファイ、参戦!!







戦況が再び、動き始める――――

35Mii:2021/05/04(火) 09:41:54 ID:nruCllbs
リュカ「さあ、体の具合は、なんとも、ない、かな?」ウーン



――――さあ、早く向かいなさい。
――――大事な役目が、あるのでしょう?



リュカ「…クマトラ、今、何か言った?」

クマトラ「いや、何も?…どうかしてるぞ?」

リュカ「あ、いや、えと。ううん、なんでもないなんでもない。
    ――――じゃあ、急ごうか!」ダダッ!









――――――――――頑張って。

36Mii:2021/05/04(火) 09:44:39 ID:nruCllbs
〜司令スペース〜

ラナ『いいよいいよ、ちょっとずつ戦線が拮抗してきた!
   最初からこうしておけばよかったのね…!

  ――うっふふ!もっとやっちゃえ! やっちゃえ!』パアアアアア

シア『ラナ、それ本物ちゃう。偽者の台詞や。
   …まあ目が逝ってる現状、まさしくそんな雰囲気を醸し出してはいるけど』

ラナ『……生命力を墓地に垂れ流しにしてるからねぇ。ごほっ…。

   えーと、次のご神託は…っと。

   

   《第3勢力およびネス、第2区に向かって急接近中!》…だって。

   だい…3、勢力か、また。これって…』ウツロ

トゥーンゼルダ「いい加減、第3勢力とやらが何者か知りたいな――」



ネス『ごっめん!ホントごめん!今の今まで頭の中で状況整理できてませんでしたっ!
  聞く感じ、おそらく第3勢力って僕の仲間たち…MOTHERチームのことだと思う!
  いやあ、通信環境が復活してくれて助かったよ!』

トゥーンゼルダ「…!ネスか!それは真か!」ガバッ

37Mii:2021/05/04(火) 09:48:00 ID:nruCllbs
ネス『でっ!伝わったついでに、もうひとつ!現状の僕たち、とある施設に向かってるんだけどさっ!
   この情報、僕自身もつい先ほど知ったばっかで戸惑ったんだけどさっ!

   司令部の方から、その『とある施設』の担当者に事前連絡して
   受入態勢を整えておいてもらえないでしょーか!
   不審者と思われて突っぱねられるのも時間の無駄っぽいし!』

トゥーンゼルダ「よ、よし。どの施設だ!?」

ネス『それは………察して!ピーチが重要視しそうな施設、以上っ!』

トゥーンゼルダ(…そうか、情報の取捨選択こそできるようになったとはいえ、
         まだ敵側に傍受はされ続けている…!迂闊に施設を名指ししない方がよいのか…!)

トゥーンゼルダ「おいキノピオ、第2区の主要な施設には何が有る?」ヒソヒソ

キノピオ「…え、だ、第2区、ですか?うぅんと、えっと、あのぉ…!
     …あ!そういえばっ!」ヒソヒソ

トゥーンゼルダ「片っ端から言ってみろ!」ヒソヒソ

キノピオ「行列のできる美味しいクレープ屋と食べ放題のカレーショップと
     マニアが集うガラクタパーツ取り扱い店と、ついでに王国自然博物館と…」

ヒルダ「」

トゥーンゼルダ「王国の博物館が つ い で だと?」

ヒルダ「ツッコむところ、そっちですか!?」

38Mii:2021/05/04(火) 09:49:29 ID:nruCllbs
キノピオ「じょじょじょ冗談ですアハハハハ」ダラダラ





キノピオ「……………………あ。

そういえば、あの区画には――――――――」





意図的かどうか知らないが、フザケた回答を述べてくれたキノピオを一睨みしてみれば。
竦み上がったあと、真顔に戻って。

ある施設の名前と、その隠れた役割を口にする。



ハッと、した。

私は、MOTHERチームの能力や技能、持ち得る作戦について無知もいいところだが。
おおよそ、やりたいこと…やろうとしていることが分かった気がした。
あとは、その背中を少しでも――押してやることと、しよう。

39Mii:2021/05/04(火) 09:55:32 ID:nruCllbs
〜第2区、「ある施設」〜

ポーラ「…………着いたぁー!!」

ポーラが、多少はしたなくも、片腕を天に向かって勇ましく突き上げる。
目の前には、間違っても異形を侵入させまいと、鉄壁ガードを張り巡らせたエントランス。
レーザーカッターにボムキャノンに突風装置に抗エネルギープレートに…。

何も知らない人が、ダミーのしょぼいバリケードに油断して突っ込むと、
一瞬であの世行きになりかねないトラップ群たち。もちろん関係者以外立ち入り禁止。
…相変わらず、すごい警備だよね。不審者、襲撃者対策がてんこ盛り。

まあ、敵がファイタークラスにもなると、流石に一切合財、吹き飛んじゃうんだけどさ。
無限お代わりでいつまでも持つような設備でもない。弾切れすれば置物だ。
あくまで雑魚敵対策としての一般人の抵抗、止まりだもんね。
敵側に重要視されていなくて、よかったよかった。

そして、僕たちが無事に辿り着いたとみるや、
扉のロックは示し合わせたように解放される――――

担当者「お待ちしておりました、さあ、急ぎ放送室へ!一同スタンバイしております!」

リュカ「お邪魔しまーす!…みんな!まだ敵の攻撃は続くだろうから気を抜かないで!
   ここの人たちを守り切ることもお忘れなく!クマトラ!しんがりは任せたよ!」

エレベーターなんて使うのはかったるいと、
階段を踏み砕く勢いで、皆で一斉に駆け上がる――――!

担当者「既に何度か来訪されていることは百も承知ですが…あらためまして、ようこそ!
    我が王国が誇る最先端施設のひとつ、『王国第一ラジオ塔』へ!」

40Mii:2021/05/04(火) 10:00:50 ID:nruCllbs
ネス「…王国第一ラジオ塔?何、それ?聞いたことないよ」タタタタタッ

プー「心配するな、もともと世間には公表されていない施設だからな。
   知らなくて普通だ、ネスが勉強不足という訳じゃない」

ネス「ふぅん?」

プー「いいか、ネス。キノコ王国には、城下に備わる放送機器を通じて…
  緊急音声放送を城下全体にくまなく流せる施設がいくつか存在する。
  身に染みて分かっている真っ最中だろ?緊急時の情報処理は最重要だ。
   
  代表的なのが、キノコ城が所有する内部施設。まあ、当たり前だな。
  いざとなったら、ピーチ姫が直々かつ速やかに、ああしろこうしろと指示を出せる訳だ。

   だが、こいつはキノコ城そのものが占拠や争乱に巻き込まれたときには
   中々役に立ってくれないし、察知されてからの襲撃までの時間を稼げない。
   下手をすれば敵に好き勝手悪用までされてしまう」タタタタタッ

ネス「…となると、別の位置から発信できる施設もあった方がいいってことだね」

プー「その通り。ある程度キノコ城から離れたところに、それも目立たないように、
   同程度以上の発信機能を持つ…隠し施設を保険でいくつか用意しているというわけだ。
   備えあれば憂いなし、だな。今はそのうちの一つに向かっている」

41Mii:2021/05/04(火) 10:11:07 ID:nruCllbs
ネス「なるほど、施設の役割は理解したよ。
   …でも、なんで僕たちが?演説でもするの?何のために?
   いや、さっきの質問的に歌うことになるのかな?
   恥ずかしいとかは別に言うつもりはないけれど、やっぱり意図が見えない」

プー「なあに、簡単なことだ。
   キノコ王国の、一種の様式美という奴らしくてな」

ネス「様式美…?」

プー「…ああ。要するに――――



  王国じゅうの住民…いや今回は城下の住民に限るけれども。
  みんなの願い、ガバッと集めて――――――

  ――――――――ヒーローに託してズバッと解決、っていうお約束だ」

ネス「――――ああ!なんとなくわかった気がする!
   そういうことなら、確かに!僕たちが適任かもしれない!

   …それで、どっち?」

プー「ニンテンたちから教わった方だ」

ネス「オッケーわかった!任せといてよ!」

42Mii:2021/05/04(火) 10:13:06 ID:nruCllbs
ポーラ「――――――――よし」

ポーラ「じゃあ、始めます」

ダスター「おう、やっちまえ。放送に集中しろよー」

ポーラ「もちろん」フフッ



肩の力を抜いて。
堅苦しい言葉じゃなくて、子供っぽく、いたいけな女の子っぽく。
さあ――頑張れ、私。



ポーラ「――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
    これより、緊急放送を始めます。

    きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?」

テディ「オイオイ」



――――全域に、少女の朗らかな音声が、響き渡る――――

43Mii:2021/05/04(火) 10:15:58 ID:nruCllbs
『――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
 これより、緊急放送を始めます。

 きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?』





一人の、避難民がいた。

既に一度、石になっている。今は、石には、なっていない。
そして、また時間差で、石になろうとしている。

声の鳴る方向を慌てて見れば、10メートルほど頭上に設置された城内放送器。

…いや、自分の頭上、だけではない。
避難所のあちらこちらから。

…いや、自分の避難所、だけではない。
音が若干反響しているので正確なことはなんとも分からないが、
それこそ、避難所周囲の遥か先から、あちこちの方向から――
至る所から、大なり小なりの同じ声が響いてくる。

何事かと思うのは自分だけではないらしく、不安そうにあたりを見渡す人々。

44Mii:2021/05/04(火) 10:17:47 ID:nruCllbs
『私、ポーラっていいます。よろしくお願いします。
実はピーチ姫の生まれ変わりとか影武者とかだったりするの…なんてね。
そんなことを言っている暇じゃないですね。

あんまり畏まったしゃべり方ができなくてごめんなさい。
怒りたくなるかもだけど、私も緊張してるので、大目に見てくれると嬉しいです。
リラックスしてくれるなら、なおの事嬉しいな』

少女は簡単に言ってくれるが、それは無茶な願いだ。
こんな放送ひとつでリラックスできる図太さがあるなら、
最初から不安に駆られてなどいない。

無責任だ、そんな暇があるなら助けてくれ、そう言い返したくなる。
それでも、放送は続く。

『みんなも知っての通り、マリオにクッパにリンクに…
とにかく、たっくさんのファイターたちが、結構強大な敵と戦っています。

戦ってる敵は、みんなが想像する通り、やばい奴。
そいつの能力で、城下じゅうの人たちが石にされようとしています。
ふざけるなって感じですよね、本当に…信じられない!

…辛いことを言わせてもらうと、既に石になちゃった人もいると思う。
その時の絶望、悲しさは計り知れなかったんじゃないかな。
私なんかじゃ、その1%も『分かってあげられる』なんて傲慢なことは言えない。
でも、とにかく辛かったんだよね、今もなお苦しんでいるんだよね』

子供っぽくプンプンと怒り、それでいて自分たちと一緒に苦しみ――――
自分たちに誠心誠意謝っている表情が目に浮かぶようだ。
こんなときに何を間の抜けたことを、なんて発想は蠢いたりはしなかった。

45Mii:2021/05/04(火) 10:20:07 ID:nruCllbs
『とりあえず、みんなに伝えたいこと、簡単に言わせてもらいます。
敵の方は、彼らが…我らがヒーローたちが、絶対何とかしてくれる。
我ながら他人任せというのは歯痒いけれど。

そのことを踏まえて、お願いしたいことがあります。
別に、ヒーローたちに助太刀して戦ってやろうとか、
せめてアイテム運搬でもやってみようかとか、
無茶振りをするつもりはないの。ただ――――

ヒーローたちが勝つことを、願ってほしいんだ』



避難民「願う…………?」

願って、何が変わるのか。



『言いたいことはわかります。願うことが何に繋がるんだーって気持ち。
そんな精神論どうでもいいだろ、他にやることがあるだろーっていう気持ち。

でも、願うことって、中々馬鹿にできないの。
ただ悲嘆に暮れて闇雲に恨み辛みをこぼすんじゃなくて、
ファイター達を明確に思い浮かべて、勝ってほしいって前向きに…願って。

願った方は活躍の先を期待することで、頑張り、やる気がちょっとずつ湧いてくる。
願われた方はもうひと頑張りしてみるかって気力が満ちてくる。
これって、すごいことだと思いませんか?』

46Mii:2021/05/04(火) 10:22:25 ID:nruCllbs
避難民「……………………」



言葉でいうのは、さぞや簡単な事だろう。
涙が出てくる。本当に簡単なことだ。しかし――――





『…と、まあ。無責任に頼み込むのも、無茶振りってものですよね。
 だから、ささやかなお手伝いではあるけれど――――

 その下地を、私で、私たちで、用意させてもらうことにしました』





避難民「…………下地?」グズッ



10秒、あるいは20秒ほどか。少女が途端に黙り込む。
代わりに微かにマイクが拾ってきたのは、ガタゴトガタゴト、引き摺り、ぶつかり、歩き回る音。
機材の配置か、ゲストの移動か。ともかく、なにか準備をしているようだ。

47Mii:2021/05/04(火) 10:23:48 ID:nruCllbs
『うう…今回はホントに音量ONなんだよな…記録に残るかも、なんだよな…
リハーサルの時とは緊張感とプレッシャーがハンパないぜ…!』

『今更ビビるとか口パクとか、そいつは無しですからねクマトラさん』

『う…うん』

『うっふん?』

『殴るぞリュカ!』ボカッ

『ちょっと静かにしてください!思いっきり声を拾われてますよ!
恥じらいという物を少しは持ってください!』

『俺みたいにドーンと構えとけよ、落ち着きがねぇな』

『さすが年長者!あとはもうちょっと歌に相応しい服装だったら良かったのにな―』

『殴られたいのかお前!』ドゴッ!

『痛っ!?暴力反対っ!』

『はあ…やれやれ…お、入口にプーとネスが見えた!合流も間もなくだな!』

『まあでも、2人を待たず、さっさと始めてしまいますからね!』

『いやいや、せっかくだから待ってあげようよ』

『そ、それは悠長なんじゃ…まったく。しょうがないですね』

48Mii:2021/05/04(火) 10:26:14 ID:nruCllbs
――――そして。

『よし、到着!…あれ?ニンテンとアナとロイドはいないの?…ああ、別件か。
本来ぜひとも居るべき人物がこぞって居ないのか…』

『つべこべ言わない、託されたからには僕たちでやるしかないだろ!』

『わかってるって、再確認しただけ!…さあてと!準備完了したよ!
 始めちゃおうよ、善は急げ!』

『それじゃあ、行きます――――』





やってきた、静穏。
しばし漂う、無音。





脈略もなく。しかし、確かに。
荘厳な音楽が、熱唱とともに猛烈に、強烈に流れて来て――――



『エンディングまで、泣くんじゃない!』

49Mii:2021/05/04(火) 10:32:44 ID:nruCllbs
〜キノコ城城下南 第40区〜

ギムレー「ちっ、折角の興が削がれてしまったな。
     もう少しで、こんな王国など壊滅同然にまで追い込めたものを」タタタッ

ロゼッタ(偽)「まあ、よいではないですか。まだまだ我らが優位、
       いくらでもやりようはあるというもの。
       次は如何致しますか?なんなりとお申し付けください。
       攪乱、援護、索敵、ばっちりこなして見せましょう」タタタッ

ギムレー「様」の怒りを少しでも和らげようと、私も気遣いを尽くします。
ちらりとこちらを見やって、にやりと笑って。たちまち近づいて来られました。
息遣いがはっきりとわかります。

ギムレー「…………ふっ、面白い女だ。ますます気に入った。
     どうだ、この争乱のカタが付いたら、共に故郷に向かい、
     我が妃の立場に収まる積もりはあるか?ああそうさ、我にこそ相応しい。

     我の本質は変わらない、『本体』も気に入ることだろう。
     その類まれなるチカラ、あちらでもさぞや重宝する」

ロゼッタ(偽)「あらまあ、口説かれていますか?それも中々魅力的な案ですね…!
       貴方ほどの殿方の右腕となれるのは光栄な限りです…!

       ですが、困ってしまいました。これでも私、キノコ王国民なので…
       なかなか無断では他の国には渡れないのですよ。

       そうですね…貴方がキノコ王国を明確に捻じ伏せ、乗っ取るのならば
       そういった未来も吝かではないのですが…ね?」ウットリ

50Mii:2021/05/04(火) 10:35:17 ID:nruCllbs
ギムレー「くくく……よかろう」ピタッ



ギムレー「我、ギムレーが、『ギムレー本人』の立場として無慈悲の鉄槌を下そう。

     愚昧なるキノコ王国に対して、我がペレジア王国は――――
     傘下のイーリス、フェリア、ヴァルムとともに――ここに宣戦布告する!
     全てを破壊し尽くし、滅ぼしつくし、奪い尽くして見せよう!」



指を高らかに掲げ、広場のど真ん中で派手な宣言。
その横顔は、怖い物など一つもないと言わんばかりの自信に溢れた顔。
格好の良さに、思わず顔が火照ります。



ロゼッタ(偽)「素晴らしい宣言です…!今後とも、是非よろしくお願い致します!」

タブー様のお許しさえ出れば、すぐにでも付いていきたいくらいの貫禄です。

     

ギムレー「…おっと。見染めるのは好きにすればいいが、今現在の目的を……
     よもや忘れてはいまいな?あとどのくらいでたどり着く?」

ロゼッタ(偽)「お任せください…ふむ。南西へ750メートル程度といったところです。
       いよいよ、ギムレー様の目的の一つが、ここに完遂されるのですね…!」

51Mii:2021/05/04(火) 10:37:20 ID:nruCllbs
――――と、その時。





『――――――――ぴんぽんぱんぽーん。
 これより、緊急放送を始めます。

 きこえたかい?…じゃなかった。みなさん、聞こえていますか?』





ギムレー「…はあ?何だ、この放送は。どこから放たれている?」

一瞬スピードを落とし、忌々しそうに周囲を観察し、
手早く発信源のスピーカーを破壊したギムレー様。
しかし、発信源は無尽蔵にあるらしく、一向に止む気配がありません。
知らぬ少女の語りが、無駄に長ったらしく続きます。

ギムレー「耳障りだな、何のあがきのつもりだ…」



脈略もなく。しかし、確かに。
ただただ癪に障る音楽が、下らない声色とともに流れて来て――――

52Mii:2021/05/04(火) 10:39:50 ID:nruCllbs



――――La La La La La…La La La La La…

――――La La La La La…La La La La…

――――La La La La… La La La La La La La La…

――――La La La La La…La La…La La……



ギムレー「……なんだ?」

ロゼッタ(偽)「さあ…………?」



訳の分からない、歌い声。
妙に不安と胸騒ぎがするのですが、どうしたことでしょうか。

53Mii:2021/05/04(火) 10:42:39 ID:nruCllbs
――――Take a melody

――――Simple as can be

――――Give it some words and

――――Sweet harmony


――――Raise your voices

――――All day long now

――――Love grows strong now

――――Sing a melody of love, oh love…



ロゼッタ(偽)「…………………………?」

その歌と音楽は、繰り返し、繰り返し、ただひたすらに流れ続ける。
争乱による爆裂音を塗り潰す勢いで。

ギムレー「……………………ハハハッ!この期に及んで、歌!歌だと!
    歌や音楽ごときで戦意喪失が、戦況的不利が改善されるとでも?
    なんという幼稚でバカバカしい発想だ!」

54Mii:2021/05/04(火) 10:45:51 ID:nruCllbs
ロゼッタ(偽)「…まさか、ただの歌ではなく、何かしら魔術的要素が……」

もしもそうだったら、流石に見過ごしてはおけません。



ギムレー「だったらロゼッタ、すこし魔法感知で調べてみるとよい。
     そもそもお前のチカラのおかげで、あやつらは空間魔法を使えないのだろう?」

ロゼッタ(偽)「はい、只今。

       …………正真正銘、何の変哲もない…ただの歌ですね。
       まったくつまらない。心配して損をしました」

ギムレー「能天気なヤツらだ。能天気過ぎて反吐が出る。
     さあ、とっとと目的を―――――――

     ルキナをこの世から消し去ってしまうとしよう」

ロゼッタ(偽)「二度あることは三度ある…
       あらためて絶望を感じさせながら、ですね?」

ギムレー「素晴らしいぞ、ロゼッタ。さすが我が認めた女だ」



こんな雑音を気にしてなどいられません。
やるべきことをやってしまいましょう。

55Mii:2021/05/04(火) 10:49:11 ID:nruCllbs
デイジー「……………………」ダダダダダダッ!

ニンテン「おらぁー!『Eight Meodies』、キノコ王国中に響け!

     広場だろうと避難所だろうと地下室だろうと問わずっ!

     老若男女問わずっ!

     頑張っている人だろうとそうでない人だろうと、
     喜んでる人だろうと悲しんでる人だろうと、
     とにかく全員に届け、届け、届けぇ――――!!」ガオー!

アナ「そして私たちの体はデイジーさんによって
   あちらこちらに届けられ…っと。ま、しょうがないわね。
   …デイジーさん、目が潤んでるけど、大丈夫?」

デイジー「な、なんで、なんだろーね。さっきからおかしいの。
    でも別に、悲しく、ないんだ。いや、むしろ――――

    何が何でも悪いこと全部ひっくるめて終わりにしてやるっていう気概が、根性が…
    満ち溢れてくるというか、心に火がともったというか…なんなの、これ…?」

ニンテン「言ってみりゃ、敵の『OFF波動』のウラガエシだよ。
     実の所、この歌声自体には魔法効果なんて全くない。
     逆に言うと、敵に絡繰りもばれにくい!

     ただ、俺たちがずっと心を動かされてきた名曲で、
     聴いている人の心を動かしてしまうのも当然の予定調和で――――
     ポーラが本格的に頑張り出したら、もっとすごいぞ!」

56Mii:2021/05/04(火) 10:51:21 ID:nruCllbs
〜第2区 王国第一ラジオ塔〜



ポーラは こころをこめて いのった!▼

ポーラ(…わたしたちに ちからを
    ちからを かしてください。)



『お願い、勝ってください!』

『頑張って!負けるな!』

『信じてるから!』

『くたばってたら承知しないぞ!』

『誰一人死なさないでね!』

『これ、あれでしょ。星の精とかコバルトスター経由で
 ちょっとずつパワーを集める儀式だよね!知ってる知ってる!』



城下の人たちは 未だかつてない 気持ちの高ぶりを 感じて
ファイターたちの 無事を 強く祈った!▼

57Mii:2021/05/04(火) 10:52:45 ID:nruCllbs
ポーラ(来た、来た、来ましたっ!

    感じる!みんなの願いが!みんなの祈りが!…一部変なのがいるけど!
    絶望し切っている人なんて、そうそういないんだから!
    僅かな希望を、大きな希望に!大きな勇気に変えていけ!

    あとは――――私のお仕事ですね!)

ポーラ「1回目、そろそろ行きます!」

私の体は、眩いばかりの光に包まれる。バチバチバチバチ、音がする。
集中して、掲げた腕の手のひらの先に集めて、集めて、集め切って――――!

テディ「歌いながら祈るとかメチャ大変そうだが…任せたぜ!」





ポーラ「みんなの想い――――ファイター達に、届けぇーーーー!!」パアアアアア





ラジオ塔が、強烈な光を全方位に降り注がせた。

58Mii:2021/05/04(火) 10:54:30 ID:nruCllbs
デイジー「…!?」ゾワッ

デイジー「……おお、おおお!?
     なんかすごい!なんかやばい!なにこれ!体がシャキッとした!
     ポーラったらやるじゃない!会ったことないけど!」グーン!

デイジーの 全ステータスが すこし上がった!
さらに やる気が すこし上がった!▼

ニンテン「振り回すのやめて!吐くっ!吐くからっ!!」

デイジー「…でも、OFF波動の影響を完全に打ち消すほどじゃないか。
    まあ、贅沢はいってられないね」



アナ「ふふん、贅沢言ってもよかったりするんですよ」

デイジー「と、言いますと?」

アナ「ポーラの『祈り』の回数は、1回こっきりじゃないですから!
  人々の願いが、祈りが続く限り、続けてどんどん重ね掛け!」

デイジー「まじでか!」

59Mii:2021/05/04(火) 11:02:36 ID:nruCllbs
ポーラ(どうぞ わたしたちに ちからを かしてください!)

ポーラ「…………2回目、行きます!」パアアアアアアアアア



クッパ「うおおおお!!無性に力が湧いてくるのだぁ!
    皆の者!こんなヤツら、とっとと倒して次に向かうぞ!ワガハイに恥をかかすなよ!

    ボコスカ、突撃ぃーーーーーー!!」

クッパ軍団「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」



クッパ「逃げ延びた敵は、称賛の意を込めて――
    ワガハイが直々にブレスで完全燃焼させてくれるのだ!」

異形「「「「「「「「」」」」」」」」ガクガクブルブル

クッパ「なにぃ?この期に及んで燃やされるのは嫌だと?」

異形「「「「「「「「」」」」」」」」コクコクコクコク

クッパ「ならば仕方がない。
    かわりにワンワンにでも潰されろ。それ、行くぞ」ポイッ

ワンワン(直径10m)「バウッ!」グシャッ

異形「「「「「「「「」」」」」」」」チーン

60Mii:2021/05/04(火) 11:05:03 ID:nruCllbs
――――ドッゴオオオオオオオン!!!

ネス「La La La La La… うわあっ!?やばい!敵に場所がばれたっぽい!
  敵の探知も中々早いぞ、案外優秀だな!20分くらいしか稼げなかった!
  敵が集まり出したぞ!…リュカ、クマトラ!ノッてる所悪いけど歌うの中断!
  僕たちだけでも防衛に回るよ!」

リュカ「う、うん!…うげ、奥からも続々とやってきてるような…!
   これ、あと10分もしないうちに羽ばたく魑魅魍魎でお腹いっぱいになるよ!
   …蛍光灯に集まる蛾かな?」

クマトラ「割とオレのPPも尽きかけてはいるんだが…
    モロにこの建物に照準合わせてるな、どうする?ヤバくないか?」

ネス「とにかく急いで準備!ポーラたちを歌に集中させてあげるんだ!
   僕が北と西、ついでに真下に見える入口の防衛を受け持つから、
   リュカは南を、クマトラは東をお願い!

   近づく敵からどんどん撃ち落とすか排除しちゃって!もちろん飛び道具なんて通さないでよ!」

リュカ「や、やってみる!なんなら3方角受け持ってもらってもいいよ?」パアアア

ネス「そこまで甘えないでほしいんだけど!」パアアア!!

クマトラ「キツイこと言ってくれるぜ…!」パアアア

ネス(ポーラのHPやPPも無尽蔵じゃないんだ、極力節約させないと――――!)

61Mii:2021/05/04(火) 11:09:33 ID:nruCllbs
ポーラ(このいのりを どうぞ せかいじゅうに とどけてください!)

ポーラ「はあっ、はあっ…………4回目、行き、ます!」パアアアアアアアアア



マリオ「YAHOOOOOOOO!!懐かしいというか毎度おなじみのこの感じ!
    ラストスパートにもってこいって感じだな!

    ハンマー…………ナゲェ――――ル!!」ゴウッ!



ハンマーが、マッハの速度で飛んでいく。



異形「「「「「「「「「「GYAAAAAAAAAAA!?」」」」」」」」」」チュドーン!!

異形「「「「「「「「「「」」」」」」」」」」チーン

ルイージ「…うっわあ。一石二鳥ならぬ一槌十鳥になってる。原型留めてないよ。
     兄さんのパワーが上がり過ぎて、僕要らない子だなあ。
     …まあ、僕なりに頑張ってはみるけどね!
     
     でも、兄さんほどパワーが上がっていないのはなんでだろう?」

マリオ「ルイージはヒーロー慣れしてないからなあ…」

ルイージ「わけがわからないよ!」

62Mii:2021/05/04(火) 11:13:42 ID:nruCllbs
バキバキバキバキッ!!ゴオオオオォォォォォォ!!

ネス「落とせ!落とせ!落―とーせー!!
   こ、攻撃がどんどんキツくなってきてるな…!同時に来る飛び道具とかも
   対処の限界があるし…うわあっ!?壁もヒビが入って崩れ出した!本当にやばい!

   …リュカ、クマトラ!そっちは大丈夫!?厳しそうだったら素直に言ってね!」



ネス「…リュカ?クマトラ?」クルッ

リュカ「…あ、御免。しくじった、みた、い。
   限界、の所に…不意打ち、食らっ、た…」ドクドク

クマトラ「もう…むり…」バタンキュー

ネス「へんじがない。だいたいしかばねのようだ…って、
   うおおおおぉぉい!!?声掛けが遅かった!」

リュカ「ネス…僕はもう…疲れたよ…」バタリ

ネス「リュカ!……うう、気絶しちゃった。命に別状は…ない、みたいだけど…
   …って、クマトラまで倒れちゃってるし。PP の欠乏症状か。
   …ちょっと負担を駆け過ぎたかなあ、仕方なかったけど…」

あちらこちらで、崩れる壁、物、機材。最低限の放送機材は身を挺して守り切る。

もともと管理していた人たちは地下の防空壕的なところで待機してもらっているけれど、
僕たちも身をどうにかしないと命に関わり出すかもしれない。

63Mii:2021/05/04(火) 11:15:48 ID:nruCllbs
ネス「とりあえず、みんな!みんなも地下に避難して!よくやってくれたよ!
   これだけの大合唱で、相当な祈りパワーを届けられたはずさ!
   だからもう休んでいいよ!このままだと危険だ!さあ!」

ポーラ(だれか わたしたちに ちからを かして!)

ネス「ポーラ!もう祈りはしなくていいから!自分の命を優先して!」



ガツンッ!



ネス「……ポーラ!」

割れた窓から、刺さる一撃。目を閉じて集中していた彼女に、避けられるわけがない。
目の前のポーラが、飛来するのを確認することすらできないまま…
額に火炎弾を受けて、室内をもんどりうって転げていく。

ポーラ「……………………い、たい」ドクドク

夥しい量の出血。慌てて駆け寄ったはいいけれど、僕はあわあわと混乱するばかり。

ポーラ「私が、もっと、がんばら、ないと……!
    自慢じゃ、ない、けど。私が、いない、と。
    この歌、まとまりも、歌唱力も、なくなっちゃう、し――――」

ネス「そ、そうかもしれないけど。一人だけ段違いの歌唱力だしね、うん!
  でも大丈夫!あとは僕たちに任せてくれたらそれでいいから!」

64Mii:2021/05/04(火) 11:19:48 ID:nruCllbs
満身創痍すぎる彼女に、これ以上負担をかけさせるわけにはいかない!本当に死んじゃうよ!



「そうだ。そこまでにしておきなさい」

ポーラ「――――え」



突如として、一人の「男性」が声を掛けてきた。
すわ敵の侵入を許したか、と今更ながら交戦の構えを一瞬とって、
手に取る武器や足元をみて、むしろ蹴散らしてきてくれたのか、と判断して。
よく見れば、知っている顔で。

ポーラを優しくなでる彼。安心したのか、緊張の糸が切れて、たちまち寝息を立て始める。

そうか、つまり――――



シーク「別に、曲を変えてしまってもいいのだろう?音響の停止は任せた。
    祈りを力に変換する…か。少しは齧ったことがある。やってみよう」

ネス「ダレダ姫!来てくれたんだ!」

シーク「シークだ!!」

助かったんだなあ、と思った。

65Mii:2021/05/04(火) 11:22:30 ID:nruCllbs
〜キノコ城城下南、第41区〜

リンク「…な、なあ!ピット!テンションが上がってきた俺の勘違いかもしれないが!
    ルフレとルキナ、ほんのちょっとだけ表情が動いているように見えないか!?」

さすがにこれは心弾まずにはいられないぜ!

ルフレの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!
ルキナの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!▼

ピット「ほ、ほんとだ…!MOTHERチームが上手いことやってくれたのか…ああっ!
    み、見てよリンクっ!パルテナ様も、パルテナ様もっ!」

パルテナの 全ステータス降下が 解消し切ろうとしている!▼

リンク「おおおお!あと一押しってところだな!!こりゃあいいや!
    頑張ってきた甲斐があったってもんよ!どんどん集まれ、勇気パワー!
    …………ん?誰か、こっちに近づいてくるぞ」

ピット「え、新しい敵?勢い削ぐ、なあ…!そんなにあからさまにわかる?」

リンク「なんというか、やたら邪悪な感じがするというか…まさか」

ピット「そ、それって――――い、いや、今の僕たちなら――――」

66Mii:2021/05/04(火) 11:30:41 ID:nruCllbs
突然 流れていた熱唱が 止まった!▼



ピット「あっ…人数減らしながらも歌い続けてたEight melodiesが…」

リンク「…あり?ネスたちに何かあったのか?ちくしょー、大丈夫かな…」

何が起こっているのか定かじゃないが、きっと悪いことなんだろうな。
なかなかいい事ばっかりは続かないぜ。
だが、彼らの身を案じている余裕は流石にない。
なんとか己の力だけで対処してくれ!きっとできる!



ピット「ま、待って!代わりに…何か、聴こえてくるよっ!」

リンク「なんだと…………?」

どうやら、放送の役目がすべて終了というわけじゃないらしい。

耳をそばだててみれば。
今度は歌詞は無しらしいが、澄んだ音色が――――



〜〜〜♪♪♪

美しいハープの音色とともに 「ゼルダの子守唄」が 響き渡る!▼

67Mii:2021/05/04(火) 11:33:12 ID:nruCllbs
リンク「――――――――」

リンク「――――――――――――――――」シュウウウウゥゥゥ――――

リンク「――――――――――――――――うおおおおおおおおおお!?
   気が高まる、溢れるぞおおおぉぉ!!なあ、ピット!!
   あ、一人はっちゃけてスマン、お前には分からない話だったか――――」

リンクの 全ステータスが 上がった!▼



ピット「こんなの、Eight melodiesとの相乗効果で音楽パワー限界突破じゃないですかー!
   ひゃっほー!!これは勝ち申した!!」

ピットの 全ステータスが ぐーんと 上がった!▼



パルテナ「勝利BGMキタコレ―――――!!」パリイイィイン!!

パルテナの 石化が 解けた!
パルテナの 全ステータスが ぐーんと 上がった!▼

リンク「」

68Mii:2021/05/04(火) 11:36:03 ID:nruCllbs
パルテナ「…………はっ!ピット、降ろしてください降ろしてください。

     あ、り、リンクサン!
     ルフレとルキナも石化が解けようとしていますよ!
     よ、ヨカッタデスネエ」

リンク「」



ルフレの 石化が 解けた!
ルキナの 石化が 解けた!

別に 全ステータスは ほとんど 上がっていない…▼



ルフレ「――――ごほっ!ごほっ!…こ、ここ、は…
    あ、あれ!?背負われてる!また迷惑を掛けてしまったみたいで!」

ルキナ「――――――――!?!?どどどどうしてルフレさんに…
    いえリンクさんにおんぶされているのですか私っ!?おおお降ろしてください!!」カアアアァ

リンク「…あ、はい。普通そうだよな。おかしいのはそこの変人どもだけだ」

ピット「その言い方はあんまりだ!」

69Mii:2021/05/04(火) 11:42:17 ID:nruCllbs
――――と、そこに!



待ちかねていた剣の妖精が、ようやく姿を現した。



リンク「満を持して来てくれたな――――ファイ!」

ファイ「只今参上しました、マスター!!」



やっぱりファイが居ないと始まらないね!
とうとう本領発揮の舞台が整ったってところだな!

リンク「今の今までどこに行ってたんだと問い詰めたいが…
   まあ、現状のキノコ王国の混乱を治めるのが先だ。後にしよう」

ファイ「申し訳ございません。必ずや――」



ファイの 全ステータスが 上がった!
「ゼルダの子守唄」と サウンドシンクロ中!▼



リンク「…………来るぞ」

70Mii:2021/05/04(火) 11:46:22 ID:nruCllbs
ギムレー「これはこれは、みなさんお揃いでお出迎えとは。
      ご苦労様、我のためにわざわざありがとうと言っておこうか」

リンク「いよいよ中ボスのお出ましってか――――
   そして何故かいる偽ロゼッタ。先に倒しておこっかな…」

ロゼッタ(偽)「ふふふ……」



ザッ、ザッ、ザッ。

逃げるでもなく、慌てるでもなく。

偽者のロゼッタと共に、現れた首謀者その2…いやその3、かな。
ガノンドロフやられちまったし。

本当に、ルキナとルフレにとってはトラウマものらしく…
ふたたび、体をガクガク震わせている。
…そこまで恐れ戦くことはないと思うんだけどなあ。

まあ、不意打ちというのも、なんだ。
向こうに会話する気があるというのなら、グッとこらえて…
情報集めでもやってみるか。

71Mii:2021/05/05(水) 10:39:51 ID:BW/v7Sfs
リンク「さてさて、ギムレー氏。
   しょっぱなに『興味本位で争乱に加担した』とか言ってたけど、
   あれはどこまでが建前でどこまでが本音なんだ?
   物わかりの悪い俺に教えてくれると助かるんだけど」

ギムレー「言葉を慎め。お前に教える義理などあるか?」



小馬鹿にする態度。今のうちに精々俺のことを馬鹿にしておくがいい。



リンク「そこをなんとか!頼むよギムレー様!ハンデだと思ってさ!」

パチッと両手を合わせて懇切丁寧に懇願する。
いやあギムレー様、ちょちょいと口を滑らせてくれませんかねえ。
よっ、大将!大統領!地獄の龍王様!

ルキナ「り、リンクさん…や、やはりリンクさんでも真っ向勝負は難しいということですか…」ボソッ

ルフレ「それはそうだろうルキナ、なんといっても極悪非道の権化、
    僕たちも知っての通り…途轍もない実力があるのは確かなのだから…!」

リンク(…………なんだかFE組の視線がすっごく不本意だ)

もしかして、タブーに与えられた戦闘力上昇効果で増長してる?こやつめ。
その、ビミョーに体を覆うオーラっぽい奴、そうだろう?
それ含めても倒すのは割と簡単なんだけどね!本人はさっぱり分かってないみたいだけど!
ルフレルキナの安全を確保しつつ、できるだけ暴露させたいわけよ!

72Mii:2021/05/05(水) 10:43:26 ID:BW/v7Sfs
ギムレー「……強いて他の理由を挙げるなら、分かりきっていることじゃないか?
     ほら、そこにいる」



ルキナ「ひっ…………!?」ビクッ



ルキナがますます蒼白になる。
両脚が小鹿のように震え、剣まで手から取り落とす終い。慌てて拾いに行くも、緩慢だ。
おいおい、鍛錬が足りないぞルキナ。こりゃあ特訓し直しだな。
そしてギムレーよ、執拗にルキナ狙いか、別の王国まで来てストーカーか。気持ちわるー。

リンク「分からないなあ、そこまでしてルキナを亡き者にしてなんになるんだ?
    頭に来るが、もうお前はすっかり地盤を盤石にしてふんぞり返ってるんだろ?
    ルキナなんて敵じゃないっていうんなら放っておいてくれよ。

    『調子に乗っちゃった、ごめんなさい』って謝って回れ右する気とか、ない?」

パルテナ「全くですね、このありさま…御覧なさいな。
     施政者として、この惨状は酷すぎますよ。私だったら泣きます。大泣きですよ。
     ピーチ姫ならぐっと耐え忍べることでしょうが」

ギムレーはフン、と嘲り笑って、おしまい。良心の欠片くらい、あっても損はないぜ?
腹が立つ、ああ腹が立つ、腹が立つ。

73Mii:2021/05/05(水) 10:48:37 ID:BW/v7Sfs
ギムレー「その女は、大した力も知恵もない弱者の癖に…周囲をいたずらに扇動し、
     希望だとか正義だとか下らない物を謳って、最後の最後まで我に歯向かい、
     小さくない被害を我が陣営に与えた。
     その結果、我に余計な手間と出費を押し付け、その態度が我の不興を買った。

     その大罪は死をもって償ってもらわなければならない。
     理由としては十分すぎると思うが、どうか?」

リンク「それ自体にも異議をぶっつけたいところなのはさておき…。
   つーかさ。万が一、仮にルキナが征伐されるべき極悪人だったとしてもだ。
   ギムレー、アンタのやったことはやりすぎ、周りを巻き込み過ぎにも程がある。
   
   パルテナも言ったけど、キノコ王国のこの惨状、どうしてくれんの?
   アンタ負かしたら責任取ってくれるの?
   まさか、そっくりそのままFE勢に責任丸投げするつもりなのか?
   無責任すぎやしませんかね、ガノンドロフの分はゼルダ姫が責任とるとしても」









シーク「クシュン!!」

74Mii:2021/05/05(水) 10:51:39 ID:BW/v7Sfs
ギムレー「…お前も希望だとか正義だとかを信じる口か。
     だが、腐っても一角の剣士のようだな。勇者などという肩書は下らないが。
     ルキナを引き渡すというのなら、配下に加えてやってもよいぞ。
     中々活躍してくれそうでな、我も強者不足には頭を悩ませているところだ」

リンク「そういうスカウトは100億ルピー積まれようとお断りですねー。
   …ほんとのほんとに、『好奇心』と『ルキナ抹殺』だけが動機?
   裏で密約が交わされてるとか、何かこの土地で奪いたい物があるとか、
   まさか誰かに脅されてるとか、そういうことはないか?」

ロゼッタ(偽)「くどいですよ、忌々しい。
       ギムレー様の手を煩わせないでくださいな」

忌々しいのはそっちだよ。
というより、ロゼッタ本人の名誉のためにも、マジでとっとと倒した方がいいな。
思いっきり警戒されているから今すぐには難しそうだけれど。テレポートずるい。
…あ、ギムレーと一緒に居た個体なら、情報沢山持ってるかも。気絶させて捕えとくか。
ギムレーを倒したときとかの隙を見計らって力加減して…3秒ありゃ十分かな?



…ん?そういや偽者ロゼッタなら、まだギムレーよりは…
俺の強さ分かってるんじゃないの?ギムレーにそれとなく伝えてないんだろうか。
警戒レベルを引き上げられたと思うんだが。

――――そうか。これがマリオの言っていた「うっかり体質」か。
――――そのままの君でいてほしい。

75Mii:2021/05/05(水) 10:54:54 ID:BW/v7Sfs
リンク「へいへい。それじゃあ、始めますか」

そろそろ得られる情報もなくなってきたので。いざ、戦うか。
そういうつもりで、とりあえず…ギムレーに初めて、剣を向けた。






ピット「…………どしたの、リンク?」

パルテナ「…………どこか痛めたのですか?」



…………あれ、おかしいな。妙に剣がぐらつくぞ?



ファイ「…マスター?どうされましたか?」

リンク「あ、あれ?おっかしいな?そんなに怯えるような敵じゃ――」ブルブル

ギムレー「ああ、そういうことか。…ロゼッタ、やれ!」

ロゼッタ(偽)「仰せのままに――――!」パアアアアア

偽ロゼッタの魔法で、ギムレーが空間転移。一瞬にして俺の背後に忍び寄るっ!
もちろん、そのくらいの対処なら、決して難しくは――――!

76Mii:2021/05/05(水) 10:57:23 ID:BW/v7Sfs



ギムレー「リンクさんっ!!」



リンク「ういっ!?――――がっ!」ビクッ!

跳ね除けようとしたところで、意表を突いた「ルフレの物真似」!
硬直してしまったところで、鋭い刃を首筋に押し当てられた――――!
いい加減、キレて反撃すればいいものを。味方を庇いつつ一歩引くのに甘んじる俺。
…せめて、ゼロ距離にいたギムレーに拳の一つでも当てとけよ!

リンク「…………うげ、血が出てるし」

ギムレー「ほう、今のでその程度の擦り傷で済んだとは。
     凄まじく身を引いた方向運が良かったな、呆れる。
     しかし――くはは、我の想像していた通りだな」

苛つく笑いを止めもせず――――ギムレーは、俺の弱点を見破った。



ギムレー「情が仇になったな、リンクとやら。
     …ルフレと被って、我を斬ろうとすることもできないか」

ルフレ「…え、ええ?」

――――剣士としては、致命傷。

77Mii:2021/05/05(水) 11:01:18 ID:BW/v7Sfs
ルフレが、俺の優柔不断さに驚いている。

確かに俺はピットに言った。人を殺すときに割り切りありきって。
その理屈なら、姿だけ一緒の悪人を切り伏せることなんて、楽勝のはずなんだが。

いざ相対してみると…本気の殺気をぶつけるのに、酷く躊躇してしまう。



え、何?さっきの情報集めってのも、
無意識に戦うのを躊躇したがゆえの逃げの思考回路だったっていうのか!?



なんだかんだ言って、3か月近く、一緒に特訓してきた…師として教えてきた仲だ。
そう簡単に割り切れるものじゃない…幾ら俺が強くなってもな。
偽ロゼッタに斬りかかることは容易だったのに。付き合いがまだ浅いからか。

リンク「…………うるさいな。そんな訳ないだろ?つかの間の温情ってやつ――」

ギムレー「酷い!所詮、僕との友情だなんてその程度の物だったんですね!」

リンク「…………!!」ギリッ!

ピット「趣味の悪い作戦を…!」



脆い、脆いぞ俺の意志。
尻込みする方向に、意識が動く。自分が自分じゃないみたいだ…!

78Mii:2021/05/05(水) 11:08:32 ID:BW/v7Sfs
ギムレー「プッ、本当に情けない男だな、女々しいことだ。
    我はそう堕落してはいないぞ、殺すべき時は問答無用で殺しに掛かるものだ。
    それがこのギムレーたる所以であり矜持であるからな。それ、それ!」

弄ぶかのように繰り出される魔法。
ぴしゃりぴしゃりと、硬直するままの俺の頬を撃ち、鮮血を滴らせる。
ただ、俺が体を張っているおかげでルフレやルキナに攻撃など届かせない。

若干、ギムレーが首をかしげている。どうにも魔法の効きが悪いらしい。
…そりゃ、お前の魔法の威力に対して俺のHPが馬鹿高いだけだ。
よし、ひとまず盾役になれているから無意味じゃないぞ、たぶん。…んなわけあるか。
激昂しろよ俺。どうして怖気づくんだ、気持ちが萎えるんだ。

しっかりしろよ、俺の体。今更こんなことで悩んでどうする。
コイツの相手は、今の弱ったピットやパルテナには…
ましてやルフレやルキナに任せる訳には絶対に行かないんだぞ!
そう言い聞かせても、中々応えてくれないのがもどかしい。

…くそ。考えがまとまらない。
こういうときに変な判断で突っ込むと、問題なしなようにみえて…
悪いことが起きるってのは、残念ながら身に染みてよくわかってるんだ。

ルフレやルキナの裏切りになりかねないが、ここだけは…他の奴に代行願おう。
どうしても、倒す気に…なれない。戦意喪失を罵倒してくれていい。

79Mii:2021/05/05(水) 11:15:27 ID:BW/v7Sfs
ファイ「…マスター。深い事情は存じ上げませんが――
    心苦しい理由があるようでしたら、一旦退散して立て直す、
    あるいは他のファイター達に委ねてしまうのも一つの手かと」

見かねたファイが、救いの手を差し伸べてくれる。
頼りのないマスターで本当にすまない。

ルフレ「リンク、さん…!僕のこと、そこまで――――」ウルッ

ルフレが感極まっているが、そんなに立派な選択じゃないんだ。
むしろ敗残兵の気分だぞ、今は。

リンク「ファイ…気遣いありがと、な。

   ――――ルフレ、すまない。俺、甘かったみたいだ。
   ここは本当に申し訳ないんだが、雪辱を晴らしたいと思っているだろうが…
   こいつを倒すのは一旦保留にして一時撤退――――」

ギムレー「おお、そうか。その悪趣味能面女に諭されてようやく自覚したのかい。
     そこのルキナを置いていくというのなら、別に逃げようとも追わないでやろう。
     涙を流し我に感謝するがよい」

ファイ「え……」





リンク「…………」

80Mii:2021/05/05(水) 11:18:06 ID:BW/v7Sfs
リンク「……………………」



リンク「…………………………………………」



リンク「……………………………………………………………………………………」



リンク「――――ルフレ、すまない。俺、甘かったみたいだ。
    ここは本当に申し訳ないんだが、雪辱を晴らしたいと思っているだろうが…
    
    

    こいつ、尊厳を破壊し尽くして完膚なきまでに粉々に吹っ飛ばしていいか?」

ルキナ「」

ピット「」

パルテナ「」

ルフレ「さっき言おうとしたことと真逆になってませんか!?」

81Mii:2021/05/05(水) 11:20:47 ID:BW/v7Sfs
リンク「あーあ、なんだか冷めたわー。
   せっかく見逃してやろうって気持ちも微かに有ったのに、かんっぜんに冷めたわー。
   でも開き直れたから、けちょんけちょんにしてやりたいわー」ハー

ギムレー「お前に、この我を、そんなふうにできるとでも?」

リンク「うっわ、余裕っすねー。さっすが邪竜様、すんばらしい。
    だが一言、出会った時からずっとずっと思っていたことを言わせてくれ。








      ――――――――お前、バカだろう?」



ギムレー「――――は?」



ルキナ達含め、ファイ以外の皆が呆気にとられる。
むしろその様子に、俺が呆気にとられるんですが。

82Mii:2021/05/05(水) 11:23:09 ID:BW/v7Sfs
リンク「素体があの、名高い軍師のルフレだぞ?
   それでいてこの体たらく、こりゃ精神部分のお前は大バカだろう。
   俺も賢い方じゃないが、はっきり言える。お前は歴史に名を残す大バカだ。
   何年か後のキノコ王国の歴史書に倒されっぷりが載るかもだぞ」

ギムレー「――――理由を聞こうか、ありもしない理由を」イライラ

リンク「しょうがないから…よしよし、分からず屋のお前に教えて進ぜよう。

    せっかく安全を確保されたポジションにいたのに、
    わざわざ地の利を捨てて、呑気に戦場に現れたこととか…

    ルキナを苦しめよう、虐げよう、殺そうという一心で
    碌に準備も対策もせず盾役も用意せず接敵したこととか…

    細かいことを指摘すると、まあ色々あるけどさあ。
    一番の大失態は、これだ。





    よりにもよって、どーしてお前は…
    一番の天敵がいるグループに、のこのこ足を踏み込んで喧嘩を売ったのさ」

83Mii:2021/05/05(水) 11:25:36 ID:BW/v7Sfs
そう呆れて投げ掛けると、虚を突かれたような顔をしたあと、
不敵な笑いを浮かべるギムレー。あれ、まだ伝わってない?

ギムレー「大した自信だな、そこまで実力を自負しているか」

ルフレ「おい、ギムレー!お前…!
    リンクさんの戦闘力を馬鹿にしていると、たちまちその命潰えるぞ!」

ルキナ「そ、そうです!リンクさんにかかれば、あなただってきっと
   そう簡単には勝てはしません!」





リンク「みんなして、何言ってるんすか?」

ギムレー「…ん?」

ルフレ「…?」

ルキナ「え、だって…」

リンク「どうせ倒されるんだし、言っておくけれど――――
   今の状況で、お前に対して最大打点があるのは、こっち(俺)じゃなくて――――」

84Mii:2021/05/05(水) 11:27:39 ID:BW/v7Sfs





リンク「まさしくお前がたった今馬鹿にした、あっち」

ファイ「…………………」フヨフヨ





ギムレー「…いきなり何をいって―――」

リンク「お前が防御に徹したと仮定して。
    俺がやると、お前を滅するのに5秒はかかる。

    でも、ファイなら1秒かからない」



ピット「…………ほんまや!」

パルテナ「…………確かに!」ポンッ!

ピットとパルテナはようやく合点がいったらしい。
ルフレとルキナはまだわかっていないみたいだけど、まあいいや。
とっとと倒す準備をしよう。

85Mii:2021/05/05(水) 11:31:43 ID:BW/v7Sfs
リンク「よしファイ、あいつの攻撃を受けたら即座に反撃で終わらせろ。
   声を出す準備をしておけよ。

   おーい邪竜ギムレー、せめてもの情けだ。1発、先に攻撃を仕掛けさせてやるぞ」

ブチブチブチ、と血管が切れまくっているような錯覚。
ギムレーさんは大層お怒りのようだ。おお怖い。…あ、やっぱり怖くない。

ギムレー「ふざけてくれる……!そこまで言うのなら、我が力に平伏すがよい…!」

ロゼッタ(偽)「ぎ、ギムレー様!どうにも怪しいです!
       何か裏工作を働きかけているのではっ!それを見極めてからでも…!」

ギムレー「構うものか!」

そこは構えよ。折角のナイスアシストなのに。
あ、心配しなくても裏工作は特にやってないぞ。

ピット「ま、待った方がいいんじゃないですかね、邪竜ギムレー!」

パルテナ「そうですよ!考え直しましょう、邪竜ギムレー!」

リンク「お前らどっちの味方だ――――」



俺が呟き切るよりも先に、怒涛の勢いでギムレーが迫るっ!
直進上にはファイが。どてっぱらに一発かまそうという算段だ!
どす黒いオーラと、紫電の揺らめきを身に纏い、怒涛の速度で突っ込んでくる!

86Mii:2021/05/05(水) 11:34:39 ID:BW/v7Sfs
ギムレー「全てを統べる邪竜のチカラ、とくと味わえ――――っ!」クワッ

ファイ「――――っ!!」スッ!



ゴオオオオオオオオォォォォ―――ッ!!

ギムレーの 邪竜のブレス!▼
















ファイ(鋼フェアリー)「――――」キンッ!

ファイには 効果が ないみたいだ…▼

ギムレー「ちょ」

87Mii:2021/05/05(水) 11:37:18 ID:BW/v7Sfs
リンク「 女 神 の 詩ィ(フェアリー版いにしえの唄)――――!!!!」ビシィッ

ファイ(魔法レベル Lv.70)「〜〜〜〜♪」パアアアアア


タイプ一致! 威力1.5倍!▼

相性抜群! 悪、竜に対してそれぞれ2倍、計4倍!▼

聖剣特効! 魔に対して威力3倍!▼

サウンドシンクロ!「ゼルダの子守唄」が流れているので「女神の詩」の威力2倍!▼

ステータス補正! 威力2倍!▼

ネオ・マスターソード合成補正! 威力5倍!▼

ギムレー(基礎体力レベル Lv.40)「gy」パァン

ギムレーは 光に なりました。
邪竜ギムレーを 倒した!▼


リンク「ドンッ!…と。偽ロゼッタを気絶させて…よし次に行こう」ダンッ! タタタタ

ファイ「私が運ばせて頂きます」フワッ

ルフレ「」

ルキナ「」

88Mii:2021/05/05(水) 11:50:16 ID:BW/v7Sfs
リンク「おーい、どうしたルフレにルキナ、置いてくぞー」

ファイ「如何なさいましたか?」セオイ

ロゼッタ(偽)「」セオワレ



ルフレ「…さ、さぁてと。続けて第二形態ですね、気を引き締めないと!
    それともどこかに潜伏して隙を伺っているのかな?かな?」チラッ チラッ

ルキナ「そそそ、そうですよね!まさかあんなにあっさりギムレーが倒されるわけ――」

リンク「…いや?普通に倒したけど?灰すら残らないほど完膚なきまでに。復活もしないと思うぞ」

ルフレ「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ!?リンクさん!?
    一応…僕たちの王国を荒らしに荒らしまくったラスボスなんですけど!?
    なんで2レス…いや実質1レスでやられるんですか!?おかしいでしょう!?」

リンク「…………弱いからじゃないか?」

ピット「メタ返しすると、相性の利もあって、このSS内だと僕1人でも全快状態からなら勝てるから…」

ルフレ「」

ルキナ「あは、あはは…」ヘタリ

リンク「あれ?ルキナの様子が変だ!くっ、まさか魔術師の仕業か!」ユサユサ

《ファイ、ギムレーを撃破!FEの異形や敵兵、大幅にやる気低下!》

89Mii:2021/05/16(日) 09:52:15 ID:fQZRWATo
トゥーンゼルダ『皆、喜べ!
        リンクのお供のファイが――参戦ついでに、
        邪竜ギムレーをあっさりと打倒してくれたぞ!

        敵方の戦意喪失計り知れず!
        今だ!一気呵成で攻めて攻めて攻め立てろ!

        マリオ、クッパ、大きいリンクのところのグループは、
        一気に転回して中央に戻ってこい!大元をぶっ叩く!
        その他の者は、引き続き犠牲者を出さないよう――――
        無理しない範囲で無理をしろ!』

トゥーンリンク『ははは、なにそれ〜!』



ロゼッタ「――――やった!」タタタ

ルカリオ「敵の司令塔がまた1つ消え去ったのはでかいな!
     あとの主力はタブーただ1人だ!このまま突っ走るぞ!」タタタ

ロゼッタ「はいっ!」

中央会場に向かいながら、通りすがりに悪者蹴散らしながら。
浄化にFPを無駄遣いするのも惜しくなってきたせいで、
せっかくのドレスの方は青色をすっかり失い、赤や緑に染まり出したけれど。



ふわりと、気持ちが軽くなる。

90Mii:2021/05/16(日) 09:57:10 ID:fQZRWATo
ほんのちょっとずつ、ちょっとずつ、戦線が…好転。

今の所、亡くなった人の情報は、放送でも視界の中でも…飛び込んでは、来ていません。
これは奇跡と言っていいかもしれません。



色々な人たちの、味方たちの尻拭いのおかげで、私は…まだ「私」でいられます。



ロゼッタ「とは言っても、流石に少し休みたく、なって、きましたねっ…」

ルカリオ「まあ、その気持ちは分からないでも、ない」

そんな折に、奇しくも。
見えてきた建物がありました。…あの看板はっ!

ロゼッタ「あ、ちょっとストップしてください!僥倖です、アイテムショップがありました!
    何か役に立つものがあるかもしれません!」

私の声につられて、キキィッとブレーキを掛けるルカリオ。
この血濡れの格好はビックリされてしまうかもしれませんが、背に腹は代えられません!

91Mii:2021/05/16(日) 09:58:55 ID:fQZRWATo
ロゼッタ「ごめんくださ――――」





扉「CLOSED」ガチャリ



ロゼッタ「あ」

ルカリオ「…そりゃそうだろうな、基本的に全員避難しているはずだし」

ロゼッタ「そんな…!うう、せっかくのチャンスだと思ったのに――――
     仕方がありません、先を急ぎましょう」

せっかくのナイスな判断だと思ったのに、ガッカリ。
…店主さんに罪はまったくないので、どうしようもありませんが。



愛想よく近寄ってきて、おすすめ商品をアピールしてくる店主の姿が
脳裏をかすめて消えて行き――――

92Mii:2021/05/16(日) 10:01:35 ID:fQZRWATo
ルカリオ「――――待て、ロゼッタ!
     さっきゼルダから貰ったものを思い出せ!」



一瞬きょとんとして――――――――



ロゼッタ「―――――そういう、事ですかっ!」

反転しかけた己の体を、また反転。
ルカリオがギョッとするのを気にも留めず、勢いそのまま――――



ロゼッタ「――――はああぁっ!!」



叫びながら、促成栽培で仕上がってきた拳をしかと振り抜いて。
すでに私にとって、障害とならない木製の扉を、錠前もろとも盛大に大破させます!
粉々になった扉は意味をなさなくなり、遮るものがなくなって。
がらんとした店内が露わになりました!手首の痛みなど、軽微、軽微!

ルカリオ「……助言しておいてなんだが、躊躇わなかったな…」

ロゼッタ「褒め言葉と受け取っておきます!」

93Mii:2021/05/16(日) 10:06:04 ID:fQZRWATo
――――器物破損。不法侵入。窃盗。
――――心苦しいことこのうえないですが、この際、罪も犯しましょう!



ロゼッタ「いらっしゃらないこと承知で、ごめんなさい!
     ここにある物、勝手ながら貰っていきます!
     売買契約うんぬんは、その…これで勘弁してください!」ドサッ

使い古されたカウンターに、どっさりと…
ゼルダ姫から頂いたお金、全額積み上げておきました。
多分これで…店の修理費用含めても足りる、はず!

…本来なら、緊急事態ということで無一文でもやるべき行動だったのかも。
私の物怖じを予見してくれていたゼルダ姫に感謝です。



しつこいほど起きていた爆撃や地響きの余波で物が散乱している…
それを考慮しても、少々アイテムの陳列数が少なすぎます。
…毒を食らわば皿まで。心苦しいですが、奥の貯蔵庫までテクテクと歩いていき、
泥棒になった気分で入口を叩き壊します。開き直るしかありませんね。

…やっぱり、大量にありました。所狭しと木箱に詰められた、アイテムたち。
向きが統一せず、乱雑に置かれていることからして、慌てて押し込めた感が満載。
ある程度は避難所に持ち出し、残りは悪用されにくいように片付けておいたのですね。

まあ、今から私たちが使おうとしているのですが。悪用ではないので許してください。

94Mii:2021/05/16(日) 10:11:23 ID:fQZRWATo
あとは、どれをどのくらい持って行くか、ですが――――
アイテム知識に乏しく使い方にも疎い以上、闇雲に持って行っても意味がない。
今は空間魔法で収納、なんてこともできません。
変に欲張って色々持って行こうとしたら、かえって邪魔になってしまいます。

ルカリオにいくつか尋ねてみましたが、首を振り肩をすくめることのほうが
遥かに多くて、あまり参考にはなりませんでした。
まあ、頻繁にキノコ王国に訪れる私の方が知っておくべきでしたよね、失礼いたしました。

ロゼッタ「とりあえず、体力を回復するのが先決ですね―――」パクッ

ルカリオ「それは尤もだな――――」パクッ



スーパーキノコを 使った!
ロゼッタの HPが 回復した!
ルカリオの HPが 回復した!▼



体が楽になるのを確認できたら、全快になるまでありったけ食べて行きます。
…そういえばお腹もすいていたんでした。最後に食事してから半日以上。

決めました。全て片付いたら、お腹いっぱいピーチ姫の料理を味わって舌鼓を打ちましょう。

95Mii:2021/05/16(日) 10:14:53 ID:fQZRWATo
ロゼッタ「……あと、こっちも」ゴクゴク

メイプルシロップを 使った!
ロゼッタの FPが 回復した!▼

ロゼッタ「…甘ったるい…のど越しは形容しがたいものがあります…
     よくデイジー姫は平然と一気飲みできますね…うぷっ」

ルカリオ「ちなみにFP≒魔力≒PP(MOTHER)≠PP(ポケモン)扱いだから
    私がそれを飲んでも効果はないぞ。この王国内での回復手段は基本、就寝のみだ」

ロゼッタ「いきなり変なことを言い出さないでください…」

苦いとか不味いとかよりはよほどいいですが、
シロップ単品をただひたすらに大量に飲み切るのは…かなり、きつい。
背に腹は代えられないので、気分が悪くなろうと飲むんですが。
シロップの入った瓶を、無理やり空にしていきます。これで回復できている、はず!
ちょっと気が急いていて、口の端からポタポタとこぼれるのは見逃してください。



ルカリオ「価格札を見るに、多分こっちの方が回復効率よくないか?ほら、ローヤルゼリー」

ロゼッタ「先に言ってくださいよ!?FP回復量なんてまるで分かっていないんです!」

ひったくるようにそちらも頂いて、さっそく頂きます。
…いえ、待ってください。高級なだけに在庫数が少ないじゃないですか。
だったら持ち出し用に温存しておいたほうが、いい?
ああもう、結局、今の所の回復はメイプルシロップ頼りにすべきってことですね。
…ああ、カロリーが。

96Mii:2021/05/16(日) 10:18:25 ID:fQZRWATo
ロゼッタ「…きもち、わるい……口直しがほしいです…」

ルカリオ「知らないな、またスーパーキノコでも食べて我慢しておくことだ。
     …さて、では何を持ち出していく?お互い、数は限られそうだが。
     いっそのこと、使い道を熟知しているキノコとシロップだけ持って行くか?」



言われて、周りの木箱をガサゴソ、ガサゴソ。

1UPキノコ…どこにもない。そうか、マリオ達が先んじて集めちゃったのかも。
あ、でも似たような色のキノコがありますね。掲示名は…ウルトラキノコ?
なんとなく、最上位に近い回復キノコと感じます。持って行きましょう。



補助用アイテムは…
ねむれよいこよ…敵を眠らせる、のでしょうか。
あっちいけシッシ…敵を強制離脱させる?
グルグルめまわし…敵を混乱させる、とか。

使いこなせれば、どれもなにかと強そうですが。敵の耐性にもよりますね。
なんでもマリオ曰く「補助効果はボスクラスには効かないお約束だぞ」らしいので、
タブーに使っても効果が見込めないかもしれません。うーむ。

97Mii:2021/05/16(日) 10:22:27 ID:fQZRWATo
ちょっと保留して、攻撃用アイテムは…
ユキやこんこん…氷属性の攻撃、ですか。
かみなりドッカン…これは知っています。雷属性の全体攻撃ですよね。
ぼろぼろハンマー…え、壊れかけっぽいですけれど…一応、攻撃アイテム?

キラキラおとし…あ、これもわかります!
基本威力は一番高そうですね、持って行くとしたらこれにしましょう!



ルカリオ「どうだ、決まったか?」

ロゼッタ「…………そう、ですね。決めました!
    『ウルトラキノコ』と『ローヤルゼリー』と『キラキラおとし』…
    
    あ!あと『緊急キノコ』を、背負えるような適当な袋を頂戴して…在庫の限り、持てるだけ!
    あとは『あっちいけシッシ』を1個だけ忍ばせておきましょう」

ルカリオ「よしきた。お前の判断通りに運ぶとしよう。
     ロゼッタ、大袋1つと最後の1個のアイテムだけ運搬を担当しろ。
     残りの大袋3つは私が運ぶくらいでちょうどいいバランスだろう」

ロゼッタ「かたじけないです!…それと!保険として、お互い1個ずつ『緊急キノコ』を最初から懐に!」

ルカリオ「わかった!」

最後に、目に飛び込んできてくれて助かりました。
緊急キノコがあるとないとではかなり余裕に差ができそうです。これ、経験則。
ルカリオが凄まじい勢いでアイテムを袋に詰めていくのを尻目に、
私は『緊急キノコ』の大袋を準備し、続けて『あっちいけシッシ』をポケットに――

98Mii:2021/05/16(日) 10:25:04 ID:fQZRWATo
ロゼッタ「あ」







ファイアフラワー「敵全体対象 威力3です」チョコン







ロゼッタ「なんだかいつもと外見が違いますが…!
     これでパイロキネシスなしでもファイアボールが撃てます!」

ファイアフラワー「撃てないよ」

ロゼッタ「さっそく今から使用して…いえ、ダメージを受けて解除されるのは
   ちょっともったいないですね。忍ばせておいてここぞというときで使わないと」

ルカリオ「今使ったうえで改めて1個忍ばせておけばいいんじゃないか?」

ロゼッタ「その手がありました!」

ファイアフラワー「撃てないってば」

99Mii:2021/05/16(日) 10:28:28 ID:fQZRWATo
ロゼッタ「それっ!!」ガシッ

ファイアフラワー「だから火の玉を一度広範囲に発生させるだけで――――」







なんだか、いつものファイアフラワーと感触が違う。
体中を炎の躍動が駆け巡る、という感覚が湧いてきません。



…………いえ、それは私の怠慢、責任のなすり付け。多少のアイテムの仕様差で躓いて、どうしますか。



炎のチカラ自体は明確にこのアイテムから感じ取れるのですから。
不慮の事故で魔法レベルが下がっていようと、この程度でくじけていては――――

魔法使いとしての名が廃る。





燃えるような赤い花を胸に抱いて、そのチカラを包み込み、
自分の体に浸透、循環させてみれば――――――――

100Mii:2021/05/16(日) 10:30:27 ID:fQZRWATo
――――ポンッ!!

ルカリオ「おお――――――――」



途端に姿が変わってみれば、ルカリオが感嘆、驚愕。
でも、これで、いわゆる――――フルパワーといったところ!
















ファイアロゼッタ「――――さあ、参りましょう!」POWER UP!

ファイアフラワー「」

101Mii:2021/05/17(月) 23:00:01 ID:eUg3dBcA
〜司令スペース〜

リンク『ファイ、偽ロゼッタ運搬&露払い&ナビゲーションで先導!
   俺、しんがり受け持って不意打ち排除!

   さっそくタブーを征伐しに出かける!ファイの後に、続け―!!』ダダダダダダダダ

パルテナ『ひぃぃぃぃ……!脚が、脚がぁ…石化解除したての体には堪えますぅ…!!』ガクガク

ピット『…ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!!ぐぅっ!リンクさん、ファイさん!?手加減たのみます!
   この移動速度は、維持して付いてくのチョーきつい!!』

リンク『なっさけないぞピット!ルキナですらなんとか追い縋ってるぞ?』

ルキナ『…………この、てい、どぉっ!!』ダダダダ

ピット『…あり?』

ルフレ『はぁ、はぁ……あったりまえでしょう!
   さっきは呆気にとられましたが、あのギムレーを瞬殺できたんです!
   僕ですら、今更ながらようやく実感してテンションが爆上がりしてきたのに、
   散々辛酸舐めてきた…あのルキナが奮い立たない訳、ないでしょうが!
   
   見てください、ルキナの顔! 息は荒くとも――――今までで一番、輝いているでしょう!
   僕もうれしくなってきますよっ!はあああぁぁぁっ!!』

トゥーンゼルダ「その意気だ、ルフレ!大きいリンクも、皆をしっかり支えて安全確実に連れてこい!」

リンク『りょーかい!』

102Mii:2021/05/17(月) 23:04:30 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「マリオにルイージ、今の状況は!報告を頼む!」

マリオ『体力がヤバそうな人たちを見かけてはちょこちょこアイテムで回復させつつ
   会場には近づいているぞ!あと、30分くらいで多分辿り着く!』

ルイージ『1UPキノコが尽きそうなのが気懸りだよぉ、
    嫌というほど確保したつもりだったけど足りなかったらどうしよう…』

ピーチ『万が一の時は私に任せて!
   みんなげんきになあれ と おねがいカムバック で回復してみせるから!』

マリオ『…そうかピーチ、助かる!ちなみに今どこにいる!?』

ピーチ『そうね、担当箇所の分担はしておくべきよね。
    今ちょうど第58区に…………』



トゥーンゼルダ「緊急連絡、緊急連絡。
         第58区に偽ピーチ出現、誰でもいいからさっさと潰せ。
         以上、連絡おわり」

クッパ『ワガハイが居る所から目と鼻の先ではないか。
   通りすがりにプチッと潰しておいてやるのだ!』

ピーチ(偽)『どうして!?』

トゥーンゼルダ「わからいでか」

103Mii:2021/05/17(月) 23:09:06 ID:eUg3dBcA
ルカリオ『おい、私と本物のロゼッタも…あと10分程度でたどり着くぞ!
    ロゼッタがしきりに会場の様子を気にしているみたいだが、
    何か安心させてやれる情報はないのか!』

トゥーンゼルダ「安心させてやれる情報、か。
         こちらは相変わらずの膠着状況。ただまあ、それだけでも大進歩だ。

         不定期にタブーの奴がOFF波動を重ね掛けしてくるのに対して、
         MOTHERチーム…今は大きい方のゼル…こほん、シーク、か。
         願いの力を皆に分け与えていることで、なんとか拮抗している感じだよ。

         ただ、どうもシークの疲労がたまってきている。魔法効果が薄れ出した。 
         向こうも分身体ロゼッタを食いつぶしつつ威力を維持しているし、
         これは体力勝負だな。いつまた均衡が破れるかはわからない…」

シーク『失礼なことを言うな。ここが正念場だろう!
   慣れていない魔法行使ではあるが……まだまだ持たせて見せる!

   …ただ、ラジオ塔そのものはなんだかんだと遠隔攻撃を受け続けているな。
   ある程度は選別して排除しているが、流石に機材がやられたらそこで終了だ。
   その時は潔く会場へ向かおう』

トゥーンゼルダ「いろいろと無理を通しているってことだろう、
        ぎりぎりになって途端にやめられても困ってしまうから
        早めに連絡してほしい。頼んだ…いえ、お願いします」

シーク『任せておけ』フッ


――――「ゼルダ」同士だから、通じるものも、きっとある。

104Mii:2021/05/17(月) 23:11:50 ID:eUg3dBcA
ファイアロゼッタ『やっぱり、展開されているスカイガーデンを私がどうにかしないと
         根本的解決が果たされませんね…!
         次に張り直すタイミングで、なんとか張り返さないと…!
         分身体たちの動向をもっと詳しく教えてくださいっ!』

トゥーンゼルダ「うわっ!…ああ、本物のロゼッタか、びっくりした。

        あ、ちょっと待て。ラナからのご神託で本人確認ができるまで、
        今の質問に対しては回答を保留する。
        というより今の連絡を聞かなかったことにする。
        ただの雑音が紛れ込んだ、そういうことにしておこう」

ファイアロゼッタ『薄々予想はしていましたが扱いが酷いっ!?』

マリオ『この、扱われ方に思わずツッコむ反応は本人っぽいけど』

ルイージ『わかるわかる、おっちょこちょいな感じも声だけで伝わってくる』

ファイアロゼッタ『マリオにルイージ、私のこと嫌いですか!?拗ねますよ!』

マリオ『んなわけあるかい。ロゼッタは立派に愛されキャラでいじられキャラだぞ』

ファイアロゼッタ『あ、あのー。納得しがたい返答なのですが…まったくもう。

         今現在、主に回復アイテムを入手して、ルカリオと共に運んでいます。
         入用の方々はおっしゃってくださいね!』

トゥーンゼルダ「おお、助かる!…おっと空耳空耳」

ファイアロゼッタ『一言余計です!』

105Mii:2021/05/17(月) 23:17:04 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「さあ、これで…」ギッ

トゥーンリンク「もうひと踏ん張りだ!」

ヒルダ「ええ!」



会場のど真ん中、
フィールドに不気味に佇む要塞。

幾つもの、数えるのも馬鹿らしい大量の隔壁に囲まれた…
おどろおどろしい魔人。




戦況の変化に、一体何を思っていることやら。
ただ…そう簡単には負けを認めてくれは、しないだろう。
再び口をへの字にして、頬を自分でひっぱたいて…気合いをドンと入れ直した。

106Mii:2021/05/17(月) 23:22:48 ID:eUg3dBcA
〜中央会場〜

着きましたよ、会場に。やっぱり回復したのは大きかったです。
足取りはだいぶ楽になってきました。

フィールドをいち早く確認。うん、穴ぼこだらけ。修復大変そう…。
観客、大興奮はしていても怯えらしきもの、それほどなし。
…いや、ほんとうに凄い胆力ですね。…順バイアスってやつでしょうか?

集まり合流するファイター達を観察し、弱っていたり疲れていたりするならば、
手早くアイテムを渡していきます。返ってくる笑顔、1つ1つに救われる。

いい加減、偽者たちを一網打尽にしたいです。
そして、タブーを倒し切る手がかりを!

トゥーンゼルダ「おお、戻ってきたかロゼッタ――――
        そして何故かドレスが紅い!いつの間にかポニーテール!
        よく分からないが、偽者と明確に区別できていいな!」

ファイアロゼッタ「それは私もすこし思いました」

そう言って余裕ぶっていると、分身体までファイア状態になるフラグが立ちそうです。
気を、気を引き締めて掛かりましょう。



私の偽者たちは、会場にいる分には、ざっと残り20人そこら。
よし、だいぶ減りました。これで――――

107Mii:2021/05/17(月) 23:27:01 ID:eUg3dBcA





――――戻って、来たか。





タブーの姿を目に入れ、さあ何かやってみよう、と意気込んだばかりというのに。
何か、危険な起動スイッチを踏み抜いてしまったのか――――



ドッゴオオオオオォォォォン!!



ファイアロゼッタ「……え?」

後ろを、振り向く。



ファイアロゼッタ「…な!?」

あちらこちらで、新たに上がる爆炎…!?
な、なんですかこれは!?もうもうと、空高く…白煙が昇っていきます――――!

108Mii:2021/05/17(月) 23:31:46 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「…な、なんだこのありさまはっ!?何が起きている!?
        おい、爆発付近にいる者!急ぎ状況確認をっ!」

トゥーンゼルダの切羽詰まった叫び声が、通信機へ吸い込まれて行きます。
まだまだ、安心できるにはほど遠い…!
しばし待てど、ファイターの皆さんからの回答は得られません。

――――少し先には、私を捉えた、ニヤリと口を歪ませたタブーの姿。
――――わたしの、せい?

――――これが、タブーの、奥の手?



ファイアロゼッタ「あ、あのっ!
         なんだか、『私の到着を確認したうえで起動された何か』だと
         直感が働いているのですが…!」

私のそのセリフが突破口になったのか、ようやく回答が返ってきました!

マリオ『空間魔法からみ…そうか、なんとなく察しがついちまったぞ!
   事前に偽ロゼッタ達がばら撒き続けたステルス爆弾を
   このタイミングで次々と爆発させてるんだ!意識からすっぽ抜けていた!』

ファイアロゼッタ『ば、爆弾!?そんなものが!?』



――――まだ。まだだ。
――――形勢は、まだ私の…このタブーの掌の方に、いくらでも傾けられる!

109Mii:2021/05/17(月) 23:36:59 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「…ちっ、空間魔法に秀でたロゼッタが戻ってくるのを見計らって
        魔法陣を起動されたのか…予兆を悟られないために…!

        こらロゼッタ!お前はもう飛び出すな、今から探しに行っても無駄だ!
        あちらのことはその場のファイター達にまかせて、ここのトラブルを全力で解決しろ!」

ファイアロゼッタ「…………っ、はい」



ヒルダ「きゃあ!?」

ポケモントレーナー「…………!!」ギュウウ

唇を噛んでいたところ、ヒルダ姫の叫びに何事かと思って振り向けば、
ポケモントレーナーさんが真顔で…いえ、内心焦っている感じで、
ゼニガメやフシギソウたちと協力して、自分のリュックを押さえつけています。

リュックの様子がおかしい。パンパンに膨れ上がって、まるで爆発寸前のような――――!
隙間からは時折、真っ赤な炎まで飛び出して、みるからに大変危険な状況です。
顔や両手を炙られ、火傷の跡を重ねつつ、必死にこらえていますが、もう持ちません!

ポケモントレーナー「…………!!!!」グググ

ニャース「仕舞って無効化したはずの爆弾たちが暴発しかかっている、どうしてだ!
    …と言ってるニャ!」

――――そのような小細工を。通りで数が足らなかった。
――――だが、起爆者が私であることを忘れるな。
――――少し本気を出せば、圧縮空間との境界を飛び越えて干渉することなど容易な事。

110Mii:2021/05/17(月) 23:43:35 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「ポケトレ!もういい!遠くに投げ飛ばして離れ――――」

ヨッシー「処理しますね!」シュバババ

駆け寄ってきたヨッシーが、大きく口を開け、長い長い舌を伸ばしまして。
承諾もそっちのけでリュックをペロリンと飲み込みました、まる。

ヨッシー「…………ふんっ!」ポコッ

ポケモントレーナー「…………」

ヨッシー「…あち、あちちちち!
    うわ、タマゴの中ですら炎が溢れかえろうとしてますか。
    ……それっ!!」ブンッ!

ヨッシーが、空の彼方までタマゴをビューンと投げ飛ばしました。
遠くで花火の音が聞こえます。

トゥーンゼルダ「でかしたぞヨッシー!」



ポケモントレーナー「…………………………………………りゅっく」ショボン



――――――――ちっ…!

タブーがちょっと悔しそう。こうしてみると、意外と表情豊かだったり。
…なんて、どうでもいいことですね。

111Mii:2021/05/17(月) 23:47:06 ID:eUg3dBcA
――――だが、まだまだ楽しみは、残っている!



ズガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!



ファイアロゼッタ「……ひっ!今度はなんですか!」

耳を劈くような、連鎖的に響く爆裂音。
火の手が、収まるどころかさらに勢力を拡大して、いる?
それほどまで大量に爆弾を仕掛けられたのですか!?

クッパ『おい、生意気な小娘よ!』

トゥーンゼルダ「なんだ!」

クッパ『爆発の様子をいくつかのポイントで確認した!
   どうにかこうにか逃げ遅れた市民どもを誘導したり、建物の残骸処理を行ったり、
   ついでに偽ピーチをボコったりしているが、妙なことがわかったぞ!

   先ほどから、何もない空間から突如として爆風や灼熱のエネルギーが噴き出す、
   百万歩譲って…これはまあいい!

   問題は、爆発が終わったように見えて、繰り返し…
   威力まで増しながら尽きることなく爆発が起こっていることだ!

   忌々しいが、視えない爆弾を回収する芸当はワガハイたちは専門外なのだ!
   ロゼッタかポケトレでもなければ爆発を止めることは難しいぞ!』

112Mii:2021/05/17(月) 23:50:57 ID:eUg3dBcA
トゥーンゼルダ「……………………ま、さか。



        ロゼッタッ!なんとしてでも敵の空間魔法を抑えつけるんだ!
        こいつは、このステルス爆弾とやらは――――

        爆弾と銘打っておいて、おそらく実のところは、
        タブーが無尽蔵に送り込むFPを糧とした砲台のようなもの!

        空間を支配されているかぎり延々と各所で爆撃を食らってしまう!
        処理が一切追いつかず、ゆくゆくは城下が壊滅するぞ!」

ファイアロゼッタ「…何ですって」サァッ



血の気が引く。
何重にもトラップを仕掛けられていて、悔しくなります。
一部を除いて疲労の度合いが強まっているファイターたち、
今さら再度勢いを削がれたら…とてもとても耐えきれません!

タブーを直接倒せればそれが一番手っ取り早いですが、
相変わらず唖然とする量の隔壁の絶対防御!
ちょっとやそっとじゃ近づけない…悠然と居座るだけのことはあります。
この隔壁たちを無効化する意味でも、やはりなんとしてでも……!

113Mii:2021/05/17(月) 23:55:10 ID:eUg3dBcA
ロゼッタ(偽)「…………うっ」フラッ

ロゼッタ(偽)「…………まだまだ、かわりは、いる、もの」シュゥ・・・

ロゼッタ(偽)「終幕も、もうすぐ…」シュゥ・・・



スカイガーデンを管理していた ロゼッタ(偽)たちが
HP限界で 次々と 消滅した!
敵のスカイガーデンは きれいさっぱり 消え去った!▼



ファイアロゼッタ「――――――――今っ!」

空中庭園が解除されました、千載一遇の待ちに待ったチャンスです!
このチャンスを逃してはいられません!!

HPもFPも十分、魔法レベルだけは不十分!
それでもやるしかない!

本来必要な魔法レベルからかけ離れているなんて弱音は吐けない。
激痛は覚悟しつつ、仁王立ちして、魔法陣を浮かばせて――――!!



ロゼッタ「――――――――空中庭園《スカイガーデン》っ!!!」パアアアアアアア

この空間を、いえ。城下全域を、私たちのテリトリーに――――!

114Mii:2021/05/17(月) 23:57:50 ID:eUg3dBcA



――――――――させるか!



タブーの目が光り、激しい殺気の一睨み。



ロゼッタ(偽)「…………そんなこと」

ロゼッタ(偽)「…………私たちが」

ロゼッタ(偽)「…………黙って見過ごすと、お思いで?」

空中を漂う彼女ら。まさか私の行動を予期しなかったわけがなく。
予定調和とばかりに、たちまち歯向かってくる構えです
魔法陣の数、当然ながらぼろ負け。FPの供給力でもぼろ負け。
ああ、ひょっとして、ひょっとすると、ひょっとしなくても…。





ロゼッタ(偽)「「「「「「「「――――空中庭園《スカイガーデン》、リテイク――っ!!」」」」」」」」パアアアアアアアアア

ファイアロゼッタ「ですよねぇぇ――――っ!!」パアアアアア

115Mii:2021/05/18(火) 00:01:21 ID:WrsMubP.
魔法陣から放出される光と光のぶつかり合い、第2試合!?
ルールはいっしょ、相手の光を霧散させ、魔法陣ごと打ち砕いた方の勝利。



びり、びり、びりり。

開始して2秒、対抗されて1秒で、あっという間に術式が押し込められる!
だから、何度も言っていますが!数の暴力、反対っ!これ無理!無理難題ですっ!!



みし、みし、みしり。

ま、まずい。なんだかさっきから、不吉な痛みと音が。



私の錯覚でなければ、右目がオーバーワークを激しく主張している模様。
すでに、デイジー姫たちとの地獄の特訓中に不穏なヒビが入ってからは
怖くて観察確認すらしたくない状態の右目ですが、
今現在、必死に術式制御を手掛けてくれています。

…でも、大人数頼みで抑え込みに図る偽者たちの術式を、超えること、全く叶わず。
余裕の表情を崩すことすらできかねます。

116Mii:2021/05/18(火) 00:06:50 ID:WrsMubP.
ロゼッタ(偽)「見苦しい哀れな姿ですね、諦めなさい」パアアアアア

ファイアロゼッタ「…………だ…だれ、が、ぁ――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「疲れ果てて無駄なFPを消費するだけですよ」パアアアア

ファイアロゼッタ「う……る、さい、で、すね…!!!」パアアアア



両手を必死に相手方に向け、魔法陣にFPを送り、
おしとやかさなど知ったことかと歯茎を露わにして歯を食いしばって堪えますが、
無理なものは、やっぱり、無理ですっ!今ですら弄ばれている感っ!



マリオ「到着したぞ、はい把握!…ロゼッタの援護だ、偽者の人数を削れ!」サッ!

ルイージ「む、無理だよ兄さん!その前にロゼッタが魔法の打ち合いで負けちゃうよ!…あ、リンクたちも来たみたい!」

リンク「それでもやるしかないだろ!3強の名が廃るし、俺はやるぜ!
    よし皆、ファイ以外は一旦休んどけ。回復したらすぐ戦線復帰しろよ!」

ピット「ゲホッ…ゲホッ…ガハッ…ぐおおおぉぅ、天使遣いが荒いな勇者様!」

パルテナ「…………もう、駄目…」バタリ

リンク「パルテナァ!5分経ったら起きてしゃかりき働けよぉ!!」

ピット「加えて女神遣いも荒いぞ勇者様!」

117Mii:2021/05/18(火) 00:12:48 ID:WrsMubP.
ヒルダ「ロゼッタ、しっかりっ!私たちも付いています!
    いますぐ、Double Slot《相互演算》)を私と!」

お言葉に甘えます、ヒルダ姫!
片手を下げ、彼女の手をしかと握り締めて!



ファイアロゼッタ「――――Double Slot《相互演算》!!」パアアア

相互演算の 効果で 魔法回路が 接続されている!
ヒルダは 術式演算の 一部を 肩代わりした!
ファイアロゼッタの 術式ランクの 限界が すこし高まった!▼



…それでもっ!ヒルダ姫には、大変申し訳、ない、のです、がっ!!

ヒルダ「ぐ、ぐ、ぎっ…………わかって、は、いました、が…私、だとっ、
    助太刀となるには、よわ、すぎ、ますっ!!」プルプル

ヒルダ姫に限界いっぱいの負荷を押し付けても…
まだまだ、ぜんぜん、これっぽっちも足りません!

デイジー「ならば私ならどうかなっ!
     一通りの役目を終えて、デイジー様、華麗に見参!」ズサァッ!

ファイアロゼッタ「接続は自分含めて2人までなのでっ!デイジー姫の魔法回路だとますます駄目です!」

デイジー「切羽詰まるあまり軽やかに慈悲のない門前払いを食らったぁ!?」ガーン

118Mii:2021/05/18(火) 00:19:42 ID:WrsMubP.
トゥーンリンク「頑張れ、ロゼッタ!」

ファイアロゼッタ「がんばって…ます、よぉ…!!!」

ヒルダ姫と手を握り、握り返され。颯爽と登場したデイジー姫に、2人まとめて背中から支えられ。
ふらつく体と頭を、堪えて堪えて、堪えて――――耐えて耐えて、耐えて――――



―――――――――プツッ。



たらり。何かが、頬に、垂れて、来ました。
まあ、半泣き状態ですからこのくらいは想定内…………

デイジー「ちょ、ちょっとお、ロゼッタ、大丈夫!?」

ヒルダ「ひぃ…!」

ファイアロゼッタ(……これ涙じゃない!?一層の激痛と共に右目から出血し出しましたぁ!?
          危険信号がバリバリ出ているじゃないですか、ホントのホントにもう無理、無理ぃ――――!?
          このまま続けると、そう遠くない未来に制御停止+完全失明が待ってますっ!
          誰か助けてぇ!お願いします!何でもしますからぁ!!)

ヒルダ「こんな、しょう、ぶ!いつものロゼッタなら、十分に対抗できるはず、なのに!」

デイジー「目の神秘性を失ったあの事件、ほんま、恨むでぇ……!
     私にも原因があるし、ああもう…!ロゼッタ、ここは諦めて別の策を――――」

119Mii:2021/05/18(火) 00:24:16 ID:WrsMubP.










ピット「……………………おい。今、なんつった?」

ヒルダ「です、からっ!いつものロゼッタなら、このくらいの相手の数なら、
    十分に対抗できるだけの能力が――――」

ピット「いや、その後。お転婆お姫様の台詞の方」

デイジー「ふざけてないで行動してよ…!
     ロゼッタは、魔法制御の要である右目の神秘性を不慮の事故で大幅に失ってだね、
     あらゆるところで弊害が出てるんじゃないかあ…!!」

ピット「…………そうなの!?」

デイジー「そうだよ!!」

ピット「……………………」プルプルプルプル

ピット「早くそれを言って欲しかった!!」ダッ!!

デイジー「……!?なにさ急に怒りだして――――」ビクゥッ

120Mii:2021/05/18(火) 00:30:24 ID:WrsMubP.
パルテナ「――――」

パルテナ「――――」

パルテナ「…………んあ?」ピクッ



ピット「――――――――パルテナ様ぁ!起きて、起きてください!」ガシッ!

パルテナ「――――きゃ、きゃあ、ピット!?
     どどどどうしたのですかいきなり顔を覗き込んで!?ビックリしました!
     たたた立ちますよ立ちますよ、離れてくださいっ!!!」スクッ

ピット「初志貫徹、原点回帰。適材適所、一発逆転。
   僕たちの大事な役割を、ここにきてひとつ、思い出しました!」

パルテナ「や、やくわり?一体なにを…?」

ピット「パルテナ様!…いえ、パルテナさん!このスマブラ編、最後のお願いです!」

パルテナ「な、なんですか一体…!」ドキドキ







ファイアロゼッタ「も……も……もうダメです…………」フラッ

121Mii:2021/05/18(火) 00:34:56 ID:WrsMubP.
ピット「パルテナさん!!

   い いま 試合会場で魔人タブーと戦っている、
   ロゼッタって人の右目の神秘性を――――――――――――――――



   もとにもどしてあげることって できる!?」
   









パルテナ「その者の右目の神秘性を 通常に もどすだけなら 可能だ」

ピット「よかった す すぐに お願いします!!」

パルテナ「神秘性だなんて、私にとって十八番案件じゃないですか!
     安直ですが、さんはい!



     ――――――――――神秘の奇跡ぃぃぃぃ――――っ!!」キラッ!

デイジー「」

122Mii:2021/05/18(火) 00:41:02 ID:WrsMubP.
――――奇跡が、私に、舞い降りた。

ファイアロゼッタ「!?」ピロリーン



ピット「ロゼッタさんっ!!
   パルテナ様の奇跡で ロゼッタさんの魔法レベルが もとにもどったでしょ!?」

ファイアロゼッタ「…………」



ファイアロゼッタの 右目の状態が   完 全 回 復   した!

ファイアロゼッタの魔法レベルが Lv.50から――――



      Lv.  1  3  0   に 戻った!▼



無言で、右目にかかる髪を、ひと掬い。

ファイアロゼッタ「……………………」ペタ ペタ



新たな産声を上げ、活躍したいと奮い立つ目が、確かにそこに…ありました。

123Mii:2021/05/18(火) 00:53:44 ID:WrsMubP.
ファイアロゼッタ「……………………………………………は、はは」

笑っている。この私が、今日初めて、震える心と共に――――笑って、いる。



ロゼッタ(偽)「とうとう気が触れましたか。いい加減に――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「ただの時間の浪費は――――」パアアアア

ロゼッタ(偽)「おやめなさ――――」パアアアア





ファイアロゼッタ「最大出力、全力全開ぃぃぃ――――っ!!」ボンッ!



――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ!
――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ! ――シュンッ!

ファイアロゼッタの 背後に
魔法陣(特大)が 10個 ログインしました。
1個で ロゼッタ(偽)の魔法陣10個を 蹴散らす 術式動力があります。▼

ヒルダ「」ブフッ

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「」」」」」」」」

124Mii:2021/05/18(火) 00:57:38 ID:WrsMubP.
ファイアロゼッタ「これが…本気の――――正真正銘本物の――――
         空中庭園《スカイガーデン》、でーーーす!!」カッ!!

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「」」」」」」」」ブチィ



ファイアロゼッタの スカイガーデンが 競り勝った!▼

キノコ王国に 味方のスカイガーデンが 展開されている!
敵の 空間魔法は 全て無効化され 再展開もできない!▼

キノコ城城下に散らばる ステルス爆弾は きれいさっぱり なくなった!
キノコ城城下に設置された 転生の扉は きれいさっぱり なくなった!
ロゼッタ(偽)たちと タブーが まとう隔壁は 存在を許されなくなった!▼

ロゼッタ(偽)たちが 作り出していた異空間が 崩壊した!
中にいたピーチと ロゼッタ(偽)たちが 急に出現して 放りだされた!▼



ピーチ「ぶっ!?…いったぁ…あれ、元の世界に戻って来られた?」サスリ

ロゼッタ(偽)「「「「「「」」」」」」ドサドサドサッ

ファイアロゼッタ「……わぁい!!」バンザーイ



―――――――――――――――・・・。

125Mii:2021/05/18(火) 01:00:42 ID:WrsMubP.
ファイアロゼッタ「タブーも余りの驚愕でカチコチ固まったところで…
          いざっ!反撃開始ですっ!!

          ようやく使える…………   実 分 身っ!!」シュバッ!



――ボカン! ――ボカン! ――ボカン!



ファイアロゼッタ「……全員、にっくき偽者たちに…突撃っ!
         オリジナルの私にトドメを刺させてくださいね!経験値はしっかり分捕りましょう!
         1人あたり敵2,3人…簡単カンタンッ!」

ファイアロゼッタ(分身)×11「「「「「「「「「「「おーーー!!」」」」」」」」」」」
(基礎体力レベル:Lv.44)

ロゼッタ(偽)×30「「「「「「「「」」」」」」」」
(基礎体力レベル:Lv.20  空間魔法使用不可)

ピーチ「え、あ、どうなってるの、これ?」キョロキョロ



マリオ「あ、これ終わったわ」シロメ

ルイージ「終わったね」シロメ

デイジー「そだねー」シロメ

126Mii:2021/05/18(火) 01:07:19 ID:WrsMubP.
ファイアロゼッタ(分身)「唸る拳、食らいなさいっ!…二撃目は――要りません!!」ゴウッ

ロゼッタ(偽)「に゙ゃっ」ガフッ



ファイアロゼッタ(分身)「お願いチコ、チカラを貸して!――『キラキラ落とし』っ!」パアアア

チコ「ママのこと裏切った、恨み―!フィールドの下の下まで叩きつけちゃうよー!!」ゴォォォォッ!

ロゼッタ(偽)「」ゴチィン



ファイアロゼッタ(分身)「威力増し増しの――――ジャイロ、ファイアァ――――っ!!」

ゴオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!

ロゼッタ(偽)「あ゙」ボタッ

ファイアロゼッタ(分身)「…時速364kmってところですか、いい感じですね!
              …風穴空いたのは…よくあることです、気にしない気にしない」グッ

ピーチ「ロゼッタったら、一体だれの影響であんなサバサバとした性格に…」

デイジー「まったく、誰の影響なんだろうね、あっはっは」

ピーチ「…………」グリグリグリグリ

デイジー「イダイイダイイダイ!!」

127Mii:2021/05/18(火) 01:11:41 ID:WrsMubP.
ファイアロゼッタ「オリジナルの私は、せっせと経験値を回収しまーす。

         …?? なんだか変ですね、やっぱり経験値があんまり…まあ、いいか」タタタ



マリオ「がんばれー」ヒラヒラ

ルイージ「わーすごーい」パチパチ

デイジー「ながくくるしいたたかいだった」フッ

ピーチ「というより、ちょっとは手伝ってあげなさいよ!私は行くわよ!」

リンク「…いや、これでいいんじゃね?
   ロゼッタ自身でけりをつけたほうが溜飲も下がるし、
   俺たちは俺たちで…こうしてタブーの破れかぶれ行動を警戒できるわけだし。
   なにより全員が全員必死こいてるより、観客を安心させやすいじゃん。

   そもそも、あと1分くらいでカタが着きそうだし」チャキッ

ピーチ「ええぇ…」ピタッ

ルキナ「うわぁ…ロゼッタさんが、たくさん…」

ルフレ「『赤』対『青』、あまりにも一方的なチーム戦ですねぇ。『青』も割と赤く染まってますが…」

128Mii:2021/05/29(土) 16:20:12 ID:rMXtY5n2
紆余曲折あって、ようやく――――



私たちの勝利という形での、最高ではないけれども最低限の終幕が――――
近付いてきました。

そっと、ほっと、息を吐く。



ラナ『転生の扉が消滅したことにより、各地区のタブー軍…急速に鎮圧され、収束を開始!!
  いいよいいよ、みんなサイコー!!勝利は近いよ、あと一息!!』

トゥーンゼルダ「わかっているとも!
     
       皆、本当に…本当にっ!よくやってくれた!
       ここまで来たら、最後までしっかり勝ち切るぞ!!」



ファイター達『『『『『『『『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ――――――――!!』』』』』』』』

129Mii:2021/05/29(土) 16:23:17 ID:rMXtY5n2
――――これで、すべて、終わりました。

偽者の分身体たちを消し去った後、諸悪の根源を睨みつける私。

一方で「私」の分身体たちはというと………
少し思う所があって、集合を呼び掛けて、消滅してもらいます。
私に軽く触れられて、ぽすん、ぽすんと1人ずつ消えていく。

デイジー「あれ?もう用済みにしちゃうの?もったいないよ?」

ファイアロゼッタ(分身)「…………あとはよろしく頼みました!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ(分身)「それにしても、これだけ分身の数も増えましたか。
              成長の証ですね、凄いことです!では!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ(分身)「ここから逆転負けとか止めてくださいよっ!」シュゥ・・・

ファイアロゼッタ「…………」



――――本当に、変ですね。







――――――――経験値が、入っていない。

130Mii:2021/05/29(土) 16:24:53 ID:rMXtY5n2
もしかしたら、分身体を経由して…「偽者たちの」得てきた経験値を吸い取れるかも、
と駄目元でやってみたのですが。やっぱり駄目でしたか。

今日は、自らの手で倒したり、分身体にたった今倒させたりと
何十人かの偽者の私を倒しました。本来ならば、それなりに経験値が蓄積されるはず。

ところが、どういうことでしょう。
体の中に、戦いの記録が、戦いの記憶が…そういった経験値が…
偽者の私を倒しても倒しても…どうにも、注ぎ込まれた感覚や形跡がありません。
たぶん、序盤は錯覚していただけで…今日の戦いについては最初から、そう。
異形を倒し続けた分の経験値しか入っていません。

この「実分身《リアルアバター》」の術式仕様の都合上、有り得ないはずなのですが…。



一体全体、彼女たちの経験値、どこに消えて行ったのでしょう?行方不明状態です。
これまでの何十人分の経験値……全部をごそっと集めれば、
基礎体力レベルが1つか2つくらい上がるかもしれないのに。

案外、扱い切れていない、欠陥や綻びのある魔法なのかもしれません。
事態が落ち着いたら、ちゃんと修正を掛けないと。恥ずかしいことこの上ありませんし。

131Mii:2021/05/29(土) 16:27:31 ID:rMXtY5n2
さてと、タブー。私の身の上話は一旦、棚にでも置いといて。
さんざん、ありとあらゆることをやってくれましたね。
私、控えめに言って…カンカンです。即刻マリオたちに成敗してもらいましょう。

散りばめられた策も、奥の手も、これで完全に潰えたはず。
頼みの綱の防御も掻き消えて、もはやタブーは風前の灯です。
今の今まで調子に乗っていた彼も…さすがに、どうしようもないでしょう。

その事実を肯定するがごとく、タブーの呼吸は荒く、激しい物に。

その巨体は、触手のような何か――もう触手ってことにしましょう―――闇の色の触手を彷徨わせ、
身をブルブルと震わせられることでますます大きく映ります。

たいそう不機嫌にぐるぐるとぶん回された触手が、私たちのすぐそばまで届こうとしては
制御ミスをして霧散し、不気味な音と焦げ臭い臭いだけを空間に残します。

冷静沈着なファイター達に逆上のさまを冷えた目で眺められて、
ますます我慢ならなくなったのか、愚痴に激怒に八つ当たり。



―――――――有り得ない!このようなこと、起こり得ていいはずがない!
―――――――長年、練りに練った非の打ちどころのない計画を立てた!



浮いたまま地団駄を踏み…当然むなしく空を蹴る。
ここに来てみっともなく現実逃避を始めました。
これが演技だったら凄いかも。

132Mii:2021/05/29(土) 16:32:36 ID:rMXtY5n2
―――――――お前たちに仕返し、復讐し、絶望に浸らせる算段があった!
―――――――ただの一日たりとも、無念と怒りを忘れることはなく一筋だった!
―――――――このチンケな王国など、一瞬にして潰し、叩き壊すことを夢見ていた!
―――――――ありとあらゆる事態に対処し、裏の裏をかくシナリオは完璧だった!
―――――――このようなことが許されるはずが、ない!全て間違っている!

マリオ「一言言おう。  知 ら ん が な。
    そもそも、開始早々、ロゼッタの力に思いっきり浮気して頼り出したじゃないか。
    なーにが練りに練った計画だって?聞いて呆れるな。お前のそれはただの行き当たりばったりだ」



――――――――っ!!



射落とすような鋭い怨念をマリオにぶつけてみたはいいものの、
さすがマリオ、格が違うとはこのことです。タブーに全く怯む様子はありません。

むらびと「…………ロゼッタお姉ちゃん、タブーの浮気相手?」

ファイアロゼッタ「身の毛もよだつようなおぞましいこと言わないでください!」



――――お前、たち!
――――だいいち、大勢で寄ってたかって、卑怯ではないか!
――――やれ、正義だ? やれ、勧善懲悪だ?
――――1対1で正々堂々戦わずして、なにが英雄だ!
――――結局は、烏合の衆!集まらなければ何もできない腰抜けだ!

133Mii:2021/05/29(土) 16:34:39 ID:rMXtY5n2
唾…のような何か不気味な液体を卑しくまき散らしつつ、
開き直りというか責任転嫁というか、都合のよい話というか。
自分がしでかしてきたことは棚に上げ、こちらを責める風な態度に変貌。
喚き立て、がなり立て、捲し立てる。

…あ。病気や呪いにでもかかったら大変なので。
その汚らわしい唾吐きは隔壁でシャットアウトしておきますね…っと。
ああ、空間魔法が使えるって、やっぱり気持ちがいいですね!



デイジー「うわー、うっざ」イラッ

ピーチ「同感だけど…もうちょっとおしとやかな言葉選びなさいよ」ヒソヒソ

ルイージ「どう考えても、数の暴力を仕掛けて高笑いしてたの、そっちじゃん…」

デイジー姫のような直情表現は私には合いませんが。
デイジー姫の苛つきもごもっとも。今更何を言っているのやら。
赤子の…いえ、赤子未満の幼稚な議論の仕方です。



そんなことを、のほほんと、考えてしまっていたら。



マリオが、そして、リンクが。
真顔で、ヌッと踏み出しました。

134Mii:2021/05/29(土) 16:37:41 ID:rMXtY5n2
リンク「おい」

マリオ「なあ」





2人「「誰が     卑 怯     だって?」」





ピーチ「一体、どうしたのよ2人とも。
   突っ込むとこ、そんなとこじゃないでしょ…………

   ……あの?あれ?2人とも?本当に、どうしたの?」

味方陣営にまで、金縛りにあったかのような緊張が走ります。
な、なんですか、この重苦しさは…。



マリオ「聞いたか、リンク。よりにもよって俺たちを卑怯呼ばわりだと」

リンク「聞きましたよマリオさん。よりにもよって俺たちが卑怯呼ばわりかあ」

――――――――――――――――…………。

135Mii:2021/05/29(土) 16:45:20 ID:rMXtY5n2
マリオ「もともと義務でもないのに冒険に身を乗り出して、
   味方の誰かを盾にして進むでもなく潤沢な軍資金があるわけでもなく、
   死に物狂いどころか死に続けて強敵たちから人々を助け出し、
   大した給料も地位も貰わずに、自由気ままに生きられれば良しとし、
   実力や権力を振り翳して世を牛耳るような馬鹿もしない。

   悪さをするまでは『疑わしきは罰せず』で見逃してやり、
   悪人悪役が人質をとって脅しに来れば素直に従い、
   それでいて多少の反省でも見せてくれるなら悪役にトドメは刺さず、
   なんなら親睦を深めようとエンターテインメントに誘い込み、なるたけできるだけ和平の道を探る。
   色んな仕事に駆り出されつつ、日々精進しつつ、あれこれ考えてるんだけど。
   そんな生き方が、卑怯だと。ほーん?」

リンク「理解者もロクにいない一人ぼっちの状態で伝説の勇者として投げ出されて、
   お姫様に促されるまま半強制的に冒険に繰り出す羽目になって、
   自分だけ執拗に追い回す殺戮ニワトリに怯える毎日を送り、
   もっと最初からゴロン族と仲良くしとけよといつの時代でもため息ばかりつき、
   重要な装備は、まともに渡す気ないだろうという辺境まで取りに行かされる。

   明かりの位置が左右対称になるようにたいまつで火を灯せとか、規則性を見破って見えない床を進めとか、
    『理屈じゃない、感じるんだ』的なアクションを言いなりのままやらされて、
   あえておぼろげに目標を定めようとしたら 『ここに注目しようZ!』って謎の悪魔の囁きが飛んできて、
   それを無視して自由度の高い動きをマスターするまでに時間を食わされて。

   別に国ひとつ救うのは吝かじゃないけど、救ったそばから次の冒険に駆り出され、
   平和な世界を享受できず、それでも割り切って縁の下の力持ちとして暗躍し、
   アフターケアとしてパトロール活動に勤しみ、各伝説の守護神のごとく振る舞う。
   そんな生き方が、卑怯だと。へえぇ?」

ピーチ「変なスイッチ入っちゃってる!?」

136Mii:2021/05/29(土) 16:53:27 ID:rMXtY5n2
マリオ「俺たちはなあ!理不尽なこと、納得いかないことも飲みこんで
   一方で自分たちは姑息な手で迫ろうとはせずに敵を倒し続けてるんだぞ!
   俺たちの境遇も知らずに卑怯とはよく言えたもんだな!」   

リンク「そうだそうだ!寝言は寝ていえコンチクショーめ!
   ふざけんなよタブー!その物言い、キレたわ!マジギレだわ!
   今でこそ楽しみながらっていう余裕ができてきたとはいえ、
   昔も今も貧乏くじを引き続けているのは変わらないの、分かってるか!ええ?何とか言ってみろや!」

――――――――――――――――…!?

ファイアロゼッタ「」

ピーチ「なんだか私にも流れ弾で言葉の刃が突き刺さるっ!?」

リンク「おいクッパ!お前も3強の立場として何かガツンと言ってやれ!」

クッパ「…え、あの。いやー。ワガハイがその場に立つのは…なんだ。
   昔のことを思い出すと、ちょーっと肩身が狭いというか、もれなくブーメランが刺さるというか…」

マリオ「今が変われてるなら別にいいじゃん」

クッパ「む、むう。そうか?ならば……おいタブー!
   先ほどの妄言、聞き捨てならん!観念するがよい、この虚け者め!」

マリオ「よし、とっとと潰すぞ2人とも!」ダダダダッ!

リンク「おうよ!」ダダダダッ!

クッパ「同感だ!これ以上死に逃れさせてもろくなことにならんからな!」ドドドドッ!!

137Mii:2021/05/29(土) 16:56:42 ID:rMXtY5n2
……3強の皆さんが、一斉に、駆けたっ!



デイジー「いっけー!最終決戦の始まりだああぁ――――!!」





――――――――何を、小癪なァ――――!!



リンク「ここでぇ!本日2度目の……『お前、バカだろう?』」ダダダダッ!



マリオ「認めてやる。確かに、お前さんの不意打ちスタート、搦め手や嵌め手…
    色々な作戦が決まりまくって、中々に手強かった。
    それこそ、危うく負けかけるくらいにはっ!」ダダダダッ!



クッパ「だが、肝心な基礎の基礎の事実について、おつむが弱かったようだな!」ドドドドッ!!



彼らは、超速で移動しながらも、言葉をつらつらと並べ立てて行き…!

138Mii:2021/05/29(土) 16:59:47 ID:rMXtY5n2
マリオ「俺たちはっ!断じてっ!!」

グワッシャアアアアアアアアア!!

―――――――――――――――――――「」  \204.8%/


リンク「お前の戦闘力自体を、脅威に思ったことなんてないぞぉ――――!!」

シャキイイイイイイイイイイン!!

―――――――――――――――――――「」  \398.1%/


クッパ「そのまま燃え尽きて地獄へ落ちろぉ―――――――!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!

―――――――――――――――――――「」  \TOTAL 999.9%/



防御壁も何もなくなったのが運のツキ。
タブー、下へ下へ参りまーす。

3人「「「いえーい」」」ハイタッチ

ファイアロゼッタ「…ええええええええええええ――――!?」ズルッ

デイジー「奈落の底へぶっ飛ばして5秒で最終決戦終わったあ――――!?」

139Mii:2021/05/29(土) 17:05:05 ID:rMXtY5n2
むらびと「わーいわーい、勝った勝ったあ!!
    あとは街中を制圧すれば万事解決だね!」ピョン

ファルコ「そ、そうだな。遅めの昼飯でも食ってていいかもしれないぜ!」

フォックス「そうと決まれば、皆でソーメンでも食べるか!
     ファルコの分だけ大盛りにするように頼んでおくぞ!」

ファルコ「無理にネタを拾おうとするんじゃねぇよフォックス!?」

ルイージ「…終わったんだね、よかったあ。さっすが兄さんたちだね!」

マリオ「ここで油断するから駄目なんだぞ、ルイージ。
   まだ犠牲者0ってのは未確定なんだからな!全部片付いてから一休み、だ!」

ルイージ「もちろんだよ、頑張ろうね!」

ピーチ「やっと、騒動が終わるのね…ふう、しんどかった…」

ルフレ「…………はは、今更ながら、体が震えてきたよ。
    何かを成し遂げたって気持ち、久方ぶりだな。ルキナはどう?」

ルキナ「…ルフレ、さん。
    こんな達成感、初めてかも、しれません。ただただ、嬉しいっ……!
    私も、いつか、こんなことを主体的に成し遂げられる立派な剣士になりたい…!」

140Mii:2021/05/29(土) 17:06:53 ID:rMXtY5n2
やった。やりました!
誰もが胸をなで下ろし、黒幕の完全消滅を喜び叫ぶ。



ピット「やりましたよパルテナ様!」

パルテナ「おめでとう!そしてありがとう。つらい思いをさせてしまいましたね」

ピット「これで平和がもどりましたね。ああ、太陽の光があったかいなぁ」

パルテナ「まぁ、ピットったら」

ピット「これにて!スマブラ編、無事にしゅーりょー!めでたしめでたし!」バッ

パルテナ「覚えている方は絶滅危惧種でしょうが…
     2年以上前、2つ前のスレから切り処を失ったまま長々と続いていた…
     第3章、完!ですね!」

2人「「あははははは」」

ブラックピット「速攻でフラグ立てるなぁ――――っ!!」





物語を紡ぎ終え、スタッフロールの余韻に浸っているような面持ちで、
ピットさんとパルテナさんが曇りない表情で朗らかに笑い出して…。

141Mii:2021/05/29(土) 17:09:41 ID:rMXtY5n2

ファイアロゼッタ「…?気のせいでしょうか」

妙な胸騒ぎが…………。



ふと、夕日が沈まんとするフィールドで、
おそるおそる頭上を見上げて――――





マリオ「…なんだと!?」

リンク「…なにぃ!?」

クッパ「そんな、馬鹿な…っ!」





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・!

――――――――奥の手の、その先の奥の手、ここに成れり――――

142Mii:2021/05/29(土) 17:11:18 ID:rMXtY5n2
確かに、倒したはずのタブー。

瞬殺され、なすすべなく奈落の底に落とされて行ったはずの、タブー。





その、タブーが。





――――――――グオオオオオオオオ・・・・・・!!

――――――――もう、手加減、無用。
――――――――全てのファイター達よ。全ての愚物どもよ。
――――――――私を怒らせたことを、思う存分、後悔するがよい――――!







上空が、一瞬キラッと光ったかと思うと。

殺意むき出しにして、フィールドに舞い降りてきたのです――――!

143以下、名無しが深夜にお送りします:2021/05/31(月) 23:27:09 ID:kp475iEo
ピーチ「……………………」

ピーチ「……………………ありえない」アゼン

ピーチ「そんな、そんなこと、あるわけ…!」プルプル

ピーチ「…はっ!まさか、ディメーンの時みたいに――――
   複製体のストックがどうのこうのって話なのかしら!?

   ロゼッタッ!急ぎ、このあたりの空間をよーく調査してもらえる!?
   どんな小さな痕跡も、絶対に見逃さないで!」

ファイアロゼッタ「は、はいっ!さっそく!」パアアアアアアア!!



全て片付いたと安心しておいての、この仕打ち。
汗がまたぶり返して、それでも自信を落ち着かせつつ魔法を行使。
魔法陣を大量に出現させ、ありったけのFPを注ぎ込んで調査、調査!
出し惜しみなどできようはずがありません!







…なにも、見当たらない。

――――――――そんな、馬鹿な。

144Mii:2021/05/31(月) 23:31:26 ID:kp475iEo
マリオ「考え込むのは後回しだ、後手を引くと何をされるかわからん!
   とりあえず、もう一回倒すぜ!行くぞ!」

リンク「おう!任せとけ!」



素早く頭を切り替えて、マリオとリンクが再び――――タブーに向かって飛び掛かります。
その速さ、とんでもない。



――――――――――――――――ぐがっ…!



幸い、再出現したからといって強さが変わっているわけではない模様。
2人の敵では、さらさらありません。

触手とプラズマ攻撃をいともあっさり掻い潜り…
マリオが盛大に蹴とばして、吹っ飛んだ先に待ち構えていたリンクによって…!



リンク「でやあああああああああ!!」ブンッ!



スパァッと。豆腐でも切っているかのようにあっさりと斬って捨てられる。

145Mii:2021/05/31(月) 23:35:47 ID:kp475iEo
リンク「まだまだっ!ここから、連撃だぜっ!!――――ファイ!俺に力を貸してくれ!」

ファイ「仰せのままに――――!!」

ふわりと浮き上がり――吸い込まれるように、剣に宿る女性。
リンクの構える聖剣が、一層際立った輝きを煌々と放ちます!

まるで空中舞踊。地に降り立つまでに、
何振りも、何十振りも繰り出された聖剣の軌跡が、タブーを襲う。
切り裂かれて、切り裂かれて、たちまち細切れになる怒涛の攻め。
私などでは、その光のような速さを目で追うことすらできません。



――――――――――――――――「」



リンク「これで、終いだああぁっ!」

斬れるだけ思う存分斬りまくって。どこからともなく取り出された――――
リンクの繰り出す巨大なハンマーによって、それらの細切れは…
全部まとめて、フィールドにぐしゃりと叩きつけられます。
もう、これで生きていると思う方が無理でしょう。

ハンマーの隙間から零れ出す不気味な色の液体が、ジュウ…と不気味な音を立てて煙と化し、
ある程度の所まで立ち上って…ほどなく、消えて行きました。

リンク「ったく、絡繰りはさっぱりだが…やれやれ、しつこかったな…」

146Mii:2021/05/31(月) 23:39:21 ID:kp475iEo
クッパ「……!? おいリンク!まただぞ!」

リンク「ぎえっ!?」



――――――――お、のれ……………!
――――――――むだ、だ、と、言ったはずだ…!!



マリオ「また!?またなのか!?どうなってる!?」

ピーチ「ちょっとロゼッタ!今の瞬間、勿論調べてたわよね!?
    発動の瞬間くらい、さすがにネタに気付いたでしょ!
    空間にどんな作用を働きかけてるの!はやく教えてちょうだい!
    このままだと何をしでかされるか――――」

またまた、頭上に現れたタブーを呆然と見上げながら――――私は――――



ファイアロゼッタ「………………………………………………


          
          …………………………わか、りません」

マリオ「嘘だろ!?」

147Mii:2021/05/31(月) 23:43:18 ID:kp475iEo
ファイアロゼッタ「ほんとのほんとに、正体が掴めません。
         タブーが使ったと思わしき空間魔法の形跡なんてどこにもないですし、
         なによりスカイガーデンは今も問題なく城下に展開・発動中です。
         破られた様子なんて一切ないんです。

         ――すなわち。空間魔法なんて、そもそも、使われていない」

ピーチ「空間魔法が、使われて、いない…………?
    なんなのよ、もう。なんなのよ…いい加減にしてよ…」

解決したと思っていたところに、足止め食らって。
ピーチ姫が、これまでの疲労が祟ったのか、蹲ってしまいます。
顔色、最悪。頭の中、ぐちゃぐちゃになってしまっているのかもしれません。



デイジー「…………?」

デイジー「…………うーん」

デイジー「――――――――でもアイツ、なんだか苦しそうでもあるよ?
    この表情、どこかで見覚えがあるような――――――――それも、つい最近…」

ピーチ「…苦しそう?」



ファイアロゼッタ「…苦しそう?」

148Mii:2021/05/31(月) 23:47:54 ID:kp475iEo
見覚えのある、苦しそうな表情。
そうデイジー姫が言うのを聞いて。

ファイアロゼッタ「…あ」

ヒルダ「…………あああっ!!」

ひときわ大きな声を出し、合点がいったらしいヒルダ姫と、思わず顔を見合わせます。
ここまでのヒントが有ったら、さすがにすぐに気付きました。
きっと、ゼルダ姫も、たやすく気付けるのだと、思います。



これは、まるで――――――――



ヒルダ姫と頷き合って、それからそれから…!
急ぎ、タブーに悟られないようにピーチ姫に近づき、耳打ち!

ピーチ「…ど、どうしたのロゼッタぁ…」

ファイアロゼッタ「精神が摩耗しているところ、申し訳ありません…!あ、あの、ピーチ姫…!
          あのタブーの再出現の様子…不死身になったとか、新しい個体がお出まししたとかではなく…



          単純に『残機復活した』感じに近くないでしょうか!?」ヒソヒソ

ピーチ「……!?」ハッ!?

149Mii:2021/05/31(月) 23:54:29 ID:kp475iEo
ヒルダ「あの苦悶の表情、倒されたときの経験を引き継いでいるとしか思えません!
   決まって同じ場所から再出現するというのも、まさしく…!」ヒソヒソ

ファイアロゼッタ「もしかしたら、長年フィールドに潜伏されているうちに…
         データベースにハッキングして、まんまと寄生して……
         勝手に残機制度を利用されてしまっているのかも…!」

もちろん、これだって仮説にすぎません。
根拠も何もありません。

でも、タブーならやりかねない、そのくらいのことは考えるだろう、とも思えます。
過去に、マリオ達の実力を少しは味わったはずなのですから。
ファイターたちの戦いを、盗み見てきたはずなのですから。



そう言うや否や、ピーチ姫はたちまち思考モード。



ピーチ「ハッキング…………!?そうか、それなら…
   アイツが、出現時から今の今まで部下や異形に指示を出すのみで、
   フィールドから一切離れようとしなかったことにも説明がつく…!

   こちらが残機システムを作動させた段階で、塩を送ってしまっていたのね…!
   アイツは自分の強さを自覚して最後の保険を掛けていたってこと…!

   気付かないままだったら、延々と時間稼ぎおよび無駄な疲弊をさせられていたわ!
   ありがとう、ロゼッタ!ヒルダ!」

150Mii:2021/06/01(火) 00:01:27 ID:ykdUu4jg
ここの、タブーとの直接対決に関して言うならば劣勢から優勢に転じたとは思えますが。
会場の外の、城下に関しては、実はまだまだ油断ならない局面が続きます。

空間魔法を禁ずる、スカイガーデン。
ただし、既に相手方に仕掛けられた「拡散術式」は例外で、
タブーが倒れない限り効力を失ってくれません。

そして、タブーの繰り出すOFF波動は空間魔法ではなく…
今でも、城下の皆さんを苦しめ続けている。
これらのことを総合的に考えると、スリップダメージは一向に止まない以上…
時間を掛けてしまう訳にはいかないのです。

ファイアロゼッタ「それで、対策はあるのですか?」

ピーチ「ハッキングされたのなら、その内容を捉えて処断するのがベストだけど。
   今はそこまでする余裕は全然ない。データベースのコード書換だなんて、
   私でも何時間かかることやら。だから、確実な方法をとる。
   
   ――――制御室から…残機システムを。
   せっかくONにしておいてなんだけど、大元から再び…OFFにしてしまうわ!」

ああ、それができるのならば、それが一番分かりやすい!
残機がなくなれば復活しない。単純明快な方法です!

フラフラとしながらも、ピーチ姫がフィールド外へ。
リンクによって、もう面倒だとばかりにただの肘鉄で頭蓋を砕かれ、
3回目に倒されたタブーが、目を逸らした隙を衝きました。

控えていたキノピオに、ささっと耳打ち。ハッとした表情のキノピオ。
そのままキノピオを引き連れ、一目散に制御室に向かっていきます。

151Mii:2021/06/01(火) 00:05:02 ID:ykdUu4jg
ファイアロゼッタ「よし、あとは…!」



相変わらずまたもや復活してきますが、最後のカウントダウンが始まろうとしています。

ピーチ姫がシステムを操作するのを待って…
残機が切れたことも気付かないタブーを倒す局面を作りだせば終わりですね!
奥の手の、そのまた奥の手とやらも、これにて封じてしまいましょう!



4回目。今度はクッパが重戦車のごとくタックルを仕掛けて、
細胞もろとも砕く感じで水平方向へブロー。



5回目。マリオがジャンプパンチで高く高く打ち上げて、そのまま行き先、空の果て。



すがすがしいほどテンポよく、休ませることも一切せず、
3強の面子がいとも簡単に、復活した傍からタブーを蹂躙していきます。

タブーが口から何かを吐いていますが…うん。
酸を吐き出す特殊攻撃、というよりは単純に嘔吐しているだけでしょう。
飛び散った地面を黒く変色させ、触るとどうにかなりそうなので、
警戒するに越したことはありませんが。ブクブクと変な発泡音と臭いまで発しています。
…気色悪くて嫌ですね。近くを通ることすら拒否したいくらい。

152Mii:2021/06/01(火) 00:10:11 ID:ykdUu4jg
タブーも、威勢よく反撃宣言をしておきながらただ死に続けてなるものかと、
数多くの触手をコントロールして、ファイター達に向けて走らせて来ます。
数だけは確かに多い…それでも。



マルス「フンッ!…そんな貧弱なもの、1本たりとも通さないよ。
    この程度の処理なら、僕たちに任せてくれ、リンクたち!」ザンッ!

デデデ「ほっ!よっ!なんの!
   全部モグラたたきみたいに潰してやるぞい!」ドゴォッ! ドゴォッ!

ワリオ「みんな纏めて轢いちまうぜぇ!ガハハハハ!」ブロロロロロ



皆さん、華麗に掻い潜って、反撃、猛撃、総攻撃。
今となっては、タブーを中央においてほぼ360度、
ぐるりと強者たちが取り囲むくらいの層の厚さになっています。

…行ける!攻撃面も防御面も盤石です!

153Mii:2021/06/01(火) 00:14:41 ID:ykdUu4jg
〜制御室〜

ピーチ「…………くっ、はぁ、はぁ。
   着いたっと、早速私の手で残機システムをOFFに――――――――」カタカタッ

キノピオ「…はやく、早くやってしまいましょう、姫様!勝利は目の前です!」

ピーチ「……分かってるわよ。これがこうなって、こう操作して…ええと?
    …………うぅ、こんな単純な立ち下げ処理にも結構まごつくなんて、
    やっぱり私、相当に精神参ってるわね…あ、こっちか。よし――」カタカタカタカタッ

若干眩暈もするけれど、こんなとこで、誤作動なんてさせてられないわ。
皆の期待、一身に背負っているのだから。



キノピオ「だ、大丈夫でしょうか?」

ピーチ「…うん、OK。抜かりはない、なんとかなったわ、私が幻覚を見ているのでもなければ」

スクリーン画面中央にでかでかと。
危機感を感じさせる真っ赤なアラートと共に、パッと現れる選択肢。





「残機システムを強制的に無効化してもよろしいですか?  OK / CANCEL 」

154Mii:2021/06/01(火) 00:17:38 ID:ykdUu4jg
あとは、クリックひとつで…5秒程度のタイムラグをもって、
全フィールドの残機制度が働かなくなる。

システムON/OFF切り替えは誤作動でも起きたら一大事だから、
通常時は一度ONになったら、OFFにしようと働きかけても…
警告を出しながら徐々にOFFになるように。

一度OFFになったら、ONにしようとあれこれいじくっても…
警告を出しながら徐々にONになるように。

非常電源交えた何重もの並列サーキットで保全しているスグレモノ。
緊急動作で即時切替ができるのはこの王国中で私だけの特権よ。



ピーチ「…でもその前に、一個だけ準備がいるわ」ピタッ・・・



一瞬、先走って指を最後の1cm走らせようとしたけれど。
このままだと、「万が一」ということもありえる。
危険な芽は、今のうちに摘み取っておかなくちゃ。

キノピオ「準備…?それは一体?」

ピーチ「焦っちゃダメよ私。深呼吸、深呼吸…ふう。
    大会参加者の名簿をしっかり全部指差し確認して…っと」

前々から備え付けてあった、全員の顔写真と名前表記、紹介文を今一度確認して。
怖いので、3巡ぐらい見返して。…よし、万全!

155Mii:2021/06/01(火) 00:20:51 ID:ykdUu4jg
ピーチ「……………………全体放送、ONにして…!!





   『ゲッコウガ!ルフレ!ルキナ!パルテナ!シュルク!
   今呼ばれた者たちは、直ちにフィールドから離脱しなさい!

   繰り返す!
   ゲッコウガ!ルフレ!ルキナ!パルテナ!シュルク!
   今呼ばれた者たちは、直ちにフィールドから離脱しなさい!』」

キノピオ「…!?」



もはや脅威はタブーだけ…その想いから、
ファイターの多くがフィールドに集まってきている。
それを、裏目にするわけには…いかない!



ええ。私はまだまだ…冴えている!

156Mii:2021/06/01(火) 00:25:17 ID:ykdUu4jg
〜フィールド〜

シュルク「…うわ、名指しされました?どういうことだろう…?
    と、とにかく言われた通り動こうっと!」バッ

ゲッコウガ「…………」散ッ!

ルフレ「え、突拍子もない指示が…一体これは?」

ルキナ「何か、私たちでは考えも及ばない策があるのでしょう、
    これまで十分に、ピーチ姫の才覚は目の当たりにしてきました。
    従っておきましょうルフレさん!」ダダッ

ルフレ「そ、そうだね!」ダダッ

パルテナ「…………ははーん、そういうことですか」

ピット「パルテナ様?お心あたりが?」

パルテナ「お恥ずかしい話ですが。
    このSS的に、基礎体力レベルがとりわけ低いグループが警告を受けた、
    といったところですね。…とどのつまりですね、今から何か、
    私たちがフィールドに残っているとリスクがある作戦を採るのでしょう」ヒソヒソ

ピット「Forの新たなる挑戦者枠で、登場作品も経過年月も決して多くない…
   なるほど、そういうことか。でも、パルテナ様は経過年月なら決して…」ヒソヒソ

パルテナ「作品数がねえ」

ピット「まあ作品数が、ですねえ」ガクッ

157Mii:2021/06/01(火) 00:29:02 ID:ykdUu4jg
〜制御室〜

ピーチ「…よし!不意打ちで万が一にも死にかねないファイターは…
   会場から遠ざけられたわね!あとは…!これで、おしまい!!」

キノピオ「そういうことだったんですね!さすがは姫様!
    残機システムを切る影響は味方にも及んでしまいますからね!
    御見それいたしました!」

限界ぎりぎり、もうタブーにネタバレしていいところで、ファイター皆に、種明かし!
今さら慌てても、もう遅いわよ、タブー!







〜タブー、そしてファイター達が集うフィールド〜

ピーチ『皆、よく聞いてっ!この放送を終えて、5秒後…
   残機復活が停止するわ!みんなも…そして、にっくきタブーもっ!
   安全には十二分にマージンをとりつつ、畳みかけてちょうだい!

   残機復活システム停止、5秒前っ!!』



どよめくファイター達。
…語り掛けながらも、ピーチ姫の策が成ったようです!!

158Mii:2021/06/01(火) 00:32:58 ID:ykdUu4jg



…………そして。









――――――――――――オオオオオオオオアアアアアアア!?









唖然とし、理解不能な雄叫びを上げるタブー。
一瞬冗談かと思ったのかもしれないですが、謎の力か何かを使って、
残機システムとのアクセス異変でも感じ取ったのでしょうか。

とにもかくにも、最後の拠り所を…失った!
残すところは、あと、たったの5秒です!

159Mii:2021/06/01(火) 00:36:10 ID:ykdUu4jg

――――――4秒前!

理解が追いつかず、動き出せないタブーが、1秒無駄にしてくれました。
儲けものといったところでしょう。



――――――3秒前!

今日の、短くて本当に長かった…戦いの中で。
これまでで、最も厳つく憤怒冷めぬ顔立ちとなったところで、次の1秒が過ぎました。



――――――2秒前!

不敵に笑ったデイジー姫。挑発っぽくVサインを見せ付けて、
タブーに対して勝利宣言。





――――――1秒前!

万事休すで、どうしても策が浮かばなかったのか。
今さら、しおらしくすれば許してもらえるとか、甘い考えを抱いたのか。
理由はよくわかりませんし分かりたくもありませんが…
数多の触手を縮め込ませて、タブーがじりっと後ずさり――――

160Mii:2021/06/01(火) 00:38:42 ID:ykdUu4jg









―――― 零 !









キイイイィィィィィィ――――――――――――ン…!



ピーチ『いっけえええええええぇぇ!!』



フィールドに 働いていた 残機システムが 停止した!
ファイターたちは 残機システムの 保護から 放り出された!
タブーは 残機制度の 保護から 放り出された!▼

161Mii:2021/06/01(火) 00:41:31 ID:ykdUu4jg
――――ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!

――――私の、永遠の、命を……………………

――――カエセエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェ!!





カウントダウンが、終わった、とたん。

おぞましい闇の雰囲気が、大波津波となって伝播してくる感覚。
タブーが、全てを投げ打ち、己の肢体の崩壊も厭わず…!断裂の音を響かせながら…!
ありったけの触手を、もはやコントロールすら無視して、一斉に解き放ちました!

ちりぢりばらばらの触手は、留められていた根元の拘束を失い。

あるものは豪速で矢のように鋭く!
あるものは空気抵抗に耐え切れず、塊状、球体状に分裂しながら、それでも前へ!
執念深さにもほどがあります。…………でもっ!

――――マリオが弾き。

――――リンクが斬り落とし。

――――クッパが焼き尽くし。

そうやすやすとは、この包囲網は突破できませんよ!
その触手全て、無力化してしまえばタブーに最早打つ手なし、こちらの勝ちは確定です!

162Mii:2021/06/01(火) 00:46:45 ID:ykdUu4jg
…あ。そう言ったそばから、たった一筋、一条だけ。

あまりにも細く、速すぎて、マリオ達でも咄嗟に捉えきれなかった触手が。



でもでも、そもそも威力がないんですから。

並のファイターなら、せいぜい運が悪くて骨折程度。私ですら、即死するほどではない。

ちょっと出血するくらいで、特段なんてことは――――――――







そう思い、飛来先をなんとなく目で追ったところで――――








からん、と杖を滑り落とす音が聴こえました。

163Mii:2021/06/01(火) 00:54:29 ID:ykdUu4jg
――――きっと、魔人さんに、盾となってもらうべく、
――――杖を振るおうとしていたのだと、思います。



ピーチ『ああああっ!?私の馬鹿!名簿が古いじゃないっ!!!?』



――――とっさのことに、気が動転して、手汗なんかも災いして、
――――杖を握り損ねたのだと、思います。



――――そして、そのまま、拾おうとして、最悪な状況に気付いて、
――――固まって、しまったのだと、思います。






ヒルダ「…………あ、え?」



唯一、食らってはいけない人が……逃げそびれて、いたのです。
狙ってもいないあてずっぽうの攻撃が、よりにもよって――――!

164Mii:2021/06/01(火) 01:05:03 ID:ykdUu4jg



ファイアロゼッタ「間に、合えぇ―――――――――っ!!!」



――――無理な体勢、気にしてられない。捨て身で、横っ飛びっ!!
――――間一髪、我が身を挺して…我が腕を差し出して、触手の方向を逸らしますっ!!



バチイイイイイィィィィッ!!



激しい衝撃、吹き飛ぶ体。…削り落とされる、感覚。
それでも、間に合った。間に合った!

あとは、自分の問題。ゴロゴロと転がりながら、なんとかスピードを殺します!



ファイアロゼッタ「――――――――うっ」

ロゼッタ「――――――――」ティウン ティウン ティウン


大きなダメージを受け、とうとうファイア状態、解除。戻ってきた青いドレス。
それでも、ぐっとこらえて膝を立てて、ゆっくりと起き上がり――――

165Mii:2021/06/01(火) 01:10:01 ID:ykdUu4jg
眺めたところの代償は――――



「青くなった瞬間からまた赤くなった」血濡れの右手に、右手の小指、1本。



ヒルダ「――――ロゼッタ!?あ、ありがとうございます!
    わ、私、唖然として動転して、何もできなくて――――」

デイジー「グゥレイトォー!イケてる!神懸かった判断だよロゼッタ!
     そんなケガ、すぐ治せる、すぐ治せるっ!よぉし、あとはタブーを倒すだけ!」

ロゼッタ「――――――――」







みぎてを まじまじと みました。
こゆびが かけていて おまけに まっかに そまっています。





マリオ「やるじゃないかロゼッタ!あとはゆっくりやす……め?」

166Mii:2021/06/01(火) 01:12:15 ID:ykdUu4jg










わたしを、きづかって。
ちかよってきたマリオに…………………………わたしは。
















おもいっきり、だきつきました。

167Mii:2021/06/01(火) 01:14:02 ID:ykdUu4jg
マリオ「」モガッ

クッパ「」

リンク「」

ルイージ「」

デイジー「」

ヒルダ「」

マルス「……えーっと?」

ルフレ「」

ルキナ「」

ピット「」

パルテナ「いやぁん、ロゼッタったら大胆ですねー!」

マリオ「―――――――」ジタバタジタバタ

ロゼッタ「――――――――」ギュッ



――――会場が、静まり返る。

168Mii:2021/06/01(火) 01:18:13 ID:ykdUu4jg
ピーチ『ぐぉらああああああああああ!

    ロゼッタぁ!?気でも触れたかしらぁ!?
    ふざけてると、痛い目にあわすわよ!?いや、アワス!ギッタンギッタンよ!
    とっとと離れなさい!離レロ!オイ、聞けコラァ! 』

パルテナ「こんな公然の場で、修羅場!修羅場ですねこれ!!キャー!わくわく!」

ピット「パルテナ様すっごく不謹慎!」



マリオ「…ま…まて…!」ブルブル

ピーチ『マリオも、とっとと離れなさいよ!
    こんな切羽詰まった状況で胸の感触を堪能してますってこと!?
    
    ふざけんじゃないわよ!普通に引きはがせるでしょーが!
    ロゼッタと同罪よ同罪っ!!いい加減に――――』

マリオ「そうじゃないっ!いいからちょっと待て!






      ――――――――ロゼッタの、様子がおかしい!」

ピーチ『………………………………え?』

169Mii:2021/06/01(火) 01:21:37 ID:ykdUu4jg
からだが、いうことを、きかない。
ぶるぶる、がたがた、ふるえにふるえて、とまらない。
さっきまで、へいきなように、みえたのに。

ど、うして?
からだが、いたい。
てきが、こわい。
しぬのが、こわい。

マリオに、すがり、つきながら。
そのまま、ずるりと、へたりこむ。



ロゼッタ「しにたくないしにたくないしにたくないしにたくないぃ………!!
    たす、けて、マリオ…!おねがい、でず、がらぁ!!」ガタガタガタガタガタガタ



ただただ、マリオに、すがりついて、なくばかり。

まわりの、ひとたちが。
わたしの なさけない すがたに あぜんと しています。

デイジー「ロ、ロゼッタ!?い、今さら、どうしちゃったの!?
     まるで別人だよ!?何が起こったの!?」

ヒルダ「そ、そんな!あんなにロゼッタったら、心が強かったじゃないですかっ!!
    これじゃ、最初の頃の私…いいえ、それ以上に怯えてしまって――!?」

170Mii:2021/06/01(火) 01:28:41 ID:ykdUu4jg
マリオ「そ、そうだぞロゼッタ!まさか、残機が無くなったことで怖くなったのか?
   大丈夫だ、これ以上の深手は絶対に負わせやしない…………

   ――――――――残機が、無くなった?」

デイジー「何か気付いたのマリオ!?」

マリオ「…………おいデイジー!ロゼッタは、デイジーに鍛えられてる間、どんな精神状態だった!?
   あと、何回くらいロゼッタの残機を奪った!?」

デイジー「…えっと、すっごく精神は安定してたよ!?こんな姿が想像もできないくらい!
    残機を奪った回数は…3000は超えてたと思う、けど」

マリオ「――――3000だって!?多すぎるだろ!?
   基礎体力レベルが50行かない奴が、数か月で消費していい回数じゃないぞ!?
   そんでもって、ロゼッタの主観だとそれほど非常識な状況じゃなかったんだな!?
   ってことは……………………まさか、ロゼッタ、お前…………!

   残機が無い現実空間での命懸けの特訓や修行、碌にやってこなかったんじゃ…?
   残機制度は確かにすごく便利だが、それに依存し過ぎていたとしたら、
   さっきので一気に反動が…!?ってことは―――――――――まずいっ!?」





ロゼッタ「――――――――たす、け、てぇ……!!」ポロポロポロポロ

致死寛容レベル:Lv.51 残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 50%鈍感化!
恐慌耐性レベル:Lv. 3 残機がない状態での 精神負担は 2%しか 軽減できません!

171Mii:2021/06/01(火) 01:31:36 ID:ykdUu4jg
マリオ「おいロゼッタ!思い起こせ!
   そもそも、マリオカートWiiのときだって割と死に掛けつづけただろ!
   今感じている恐怖は唯の錯覚だ!思い込みだ!

   残機による死に慣れからの落差が大きすぎて、
   そんなでもないのに、とんでもない窮地と誤解してるだけだ!
   目を醒ますんだロゼッタ!おいっ!」ユサユサ



わたしの まわりで おおさわぎ。
なんだか よく わからないけれど みんながみんな スキだらけ。
わたしじしんも あたまが どうにかなりそうで なにもかんがえられない。



あ。
タブーが しゃにむに タックルを しかけてきました。
これまでで いちばんつよそうな 「はどう」を なんじゅうにも ともなって。
せなかを むけていたせいで きづくのが おくれすぎました。

タブーは いっしゅん ヒルダひめに ねらいをさだめたように みせかけて
サッとねらいなおして わたしのもとへ。

なんと マリオまでもが フェイントに ひっかかって。
ヒルダひめを まもろうと とっさに うごきだしてしまい。

さいごのさいごで フリーになった わたしに タブーがせまる。
フラリとちゅうとはんぱに ふりかえったわたしの おなかめがけて
ニヤリとわらう タブーの てのひらが あてられて。

172Mii:2021/06/01(火) 01:34:08 ID:ykdUu4jg









――――ゼロきょり、さいだいパワーの、OFFはどう。









ロゼッタ「――――――――」

ロゼッタ「――――――――」



い  いや   た     す        け―――――――――――――



ロゼッタは 一瞬で 石になっ―――――――――――――――――▼

173Mii:2021/06/01(火) 01:35:41 ID:ykdUu4jg
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――はっ!?」



ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…し、死ぬかと、おもい、ましたぁ!
    と、とんでもない目に遭いました!こ、怖かった…!」

174Mii:2021/06/01(火) 01:37:40 ID:ykdUu4jg
思わず、前にどてっと倒れ込む。

なんとか手を付いて、顔面を打つのは免れます。

冷や汗、ダラダラ。一生分かいたかもしれません。
ありとあらゆるこの世の恐怖を凝縮して、一身に注ぎ込まれたような感じ…!
幸い、こうして動けているということは、克服したようですが…!



ロゼッタ「さて、と」










なんだか見覚えのない色をした地面に付いた、両手を見ます。
うん、「なんともありません」。

175Mii:2021/06/01(火) 01:42:10 ID:ykdUu4jg
ロゼッタ「…………ええ、と」

周りをぐるりと見渡します。一応、冷静になるために、深呼吸して、それから。

もう一回、両手を、見ます。
…おっかしいですねえ、右手の怪我が治っているような。

…更に妙なことに…なんだか地面が透けて見えるのですが。



ロゼッタ「…………んー?」



あまり思考がまとまらずに、ふわふわと周囲を見渡して――――――――
とりあえず、まず最初に、少し叫ぼうと思います。










ロゼッタ「ここ、どこですかぁ――――!?」

周りに、誰も、いませんでした。

176<削除>:<削除>
<削除>

177Mii:2021/06/20(日) 16:44:45 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「いや本当に、どこですか、ここ…」



空間把握、失敗。「存在しないエリアです」とか言われそうな探索結果。

もう、元の空間だとか閉ざされた空間だとか、そういう話では収まりそうにありません。
まだ、夢の世界とか妄想の世界とかの方がしっくり来ます。
空間魔法ですらたどり着けないような場所に来てしまったみたいです。…誰の仕業?



ロゼッタ「まさか、死後の世界だとか…ふふふ」



小さく笑ったら、たちまち身震い。

ロゼッタ「…………笑えないです!」



「でも、割といい線ついていると思いますよー」

ロゼッタ「え、嘘!?そんなの嫌ですよ冗談はやめてください!」



おもわず蒼白になります。思わずブルッと震えて、我が身をギュッと抱き締めて。
やり残したことが多すぎて、後悔しても、し切れない!

178Mii:2021/06/20(日) 16:47:10 ID:D5kkqxG.
「人生、諦めが肝心ではないでしょうか」

ロゼッタ「ふざけないでください!最後まであきらめません!
     …………って、さっきから誰ですか一体!」クルッ



思わぬところに先客が。
そしてその先客は、まったく、これっぽっちも、予想だにしていない人でした。











サヤカ「それでも一応、言わせてください。


   
    ――――ロゼッタさん、ようこそ『幽玄の間』へ!!」ニコッ

ロゼッタ「―――――――――――――サ、サヤカァ!?」

あまりにも懐かしい、でもどこか口調の異なる、娘のような女の子。
普通の流れで、普通とは真逆の出来事が、起きようとしていました。

179Mii:2021/06/20(日) 16:50:10 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「どう、して、サヤカが、こんなところに?」



彼女は、サヤカ。
かつて、星々の降りしきるお祭りの間だけ、絆を育んだ、大事な娘のような…
いえ、娘と断言してもいいくらいの大切な存在の女の子。



素朴で、当然すぎる疑問を投げかけます。
会えたことは嬉しいのですが。時間も距離もまるで噛み合いません。
すると彼女は、のほほんと思案顔。

サヤカ「うーん、ちょっと勘違いされてますね。
   私は『サヤカ』って人の姿はしていても、『サヤカ』本人ではありません。
   …まあ、雰囲気出すために性格を同期するくらいはできますけど。
   ちょっと待っててくださいね。あなたの記憶をもとに再構成しますから。
 
   ――――メモリーを 検索しています…
   ――――データベースに 1件の該当人物あり…
   ――――ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう、ダウンロードちゅう…」

ロゼッタ「!?」



サヤカが眉間に人差し指を当てて神妙に目をつぶったと思ったら…
ぐるんぐるんと、妙な、奇天烈な、電子音が聴こえてきます!
何が起こっているのですか!?

180Mii:2021/06/20(日) 16:53:16 ID:D5kkqxG.
サヤカ「――――ダウンロード、無事に終了しました。再起動します…
    
   これでどうかな、ママ!ママの記憶通りの『サヤカ』になりきれてる?
   えへへー!どう?どう?お久しぶり!私も会えて嬉しい!」

ロゼッタ「」

たちまち、私の知る「サヤカ」になって、ピョンピョンと可愛く跳ねる彼女。
その笑い方、振る舞い方、サヤカそのものですが。訳がまったくわかりません。

ロゼッタ「貴方は『サヤカ』であって『サヤカ』でない!?何が何やらさっぱりです!
    復活そうそう、頭がまた混乱してきました!」

対話も、サヤカに対する、娘に対する砕け調にはなかなかできず。
どうしても、初対面の人に対してのものに引き摺られてしまいます。

サヤカ「しょうがないなあ、私がママに一から説明してあげるよー。
   ホントの私は名も無き存在、■■■■■…あ、言語認識できないか。
   とりあえず、サヤカって呼んでくれていいよ。私も引き続きママって呼ぶから。

   この空間、『幽玄の間』の管理者にして、ママの内面のウツシミ!
   
   『幽玄の間』にやってきた人の記憶を素早く読み取って、
   『一定期間以上会ってなくて、それでいて十分な絆で繋がってる人』を
   探し出して、成りきるの!今、『サヤカ』になってるみたいに!
   きっと『サヤカ』本人も光栄なことだと喜んでくれると思うな!

   そんな親しい人になって、やってきた人と対話して――――
   最期の悔いを、思う存分吐き出させるのが役割なんだよ!
   この塩梅の人選が、いちばん心穏やかになると評判なんだって!」

181Mii:2021/06/20(日) 16:56:36 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「最期の悔い…!?さっきから言っている、『幽玄の間』とは…?」

サヤカ「肉体的に死ぬことが確定した人が、冥土に向かうときに訪れるのが『三途の川』。
   一方でね、精神的に死ぬことが確定した人が、精神崩壊間際に訪れるのが――――



   この精神世界… 『幽玄の間』 なんだー」





ドクン。
動悸が、突如として襲い掛かる。





ロゼッタ「精神的に…死ぬ?――――わた…しが?」

サヤカ「うん」



サヤカは、こちらの気も知らずに、心拍数が上がり続けるのも気に留めずに。
あっけらかんと言ってのける。

――まるで、今日の晩御飯はカレーだよ、程度の気軽さで。

182Mii:2021/06/20(日) 16:59:40 ID:D5kkqxG.
サヤカ「人の心ってさ、風船みたいなものなんだ」

突如として、目の前に可愛らしい風船が現れました。
サヤカが紐の一端を持っているそれは、ふわふわのんびり浮かんでいます。

サヤカ「ストレスが掛かると、中にガスを送られて膨らんでいくわけ。
   限界超えて膨らみ過ぎるとパーンと割れて、二度と元には戻らない。
   だから割れ過ぎないように、定期的にガス抜きをする必要があるよ。
   あるいは、何か丈夫な素材で外周を補強してあげるのもいいかもね。

   ママは今の今まで…いっぱいいっぱいストレスを受けながらも、
   急成長しながらのらりくらりと、風船が割れるのを防いでいたんだけど」



風船が、膨らんで限界に近づいていく。



サヤカ「このたび、精神的にもとから致命傷を受けていたところに――
   最大級のOFF波動を、モロにゼロ距離で一点集中で食らっちゃって」



サヤカ「それはそれはもう、盛大に風船が割れてしまいましたとさ。
   ざんねん!!ロゼッタの ぼうけんは これで おわってしまった!!」



冗談を言われる傍らで――――破裂音が、ひとつ響いて、消えて行きました。

183Mii:2021/06/20(日) 17:03:36 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「……………………」

自分が精神的に死んだだなんて、とても信じられない。信じたくない。

ロゼッタ「私は…っ!本当の私はどうなっているのですか!
    そして、今の私の状況は!もっと詳しく!一体だれの目論見ですか!?」

サヤカ「一度にいっぱい尋ねるなあ…いいよ、答えていくね。
   この空間では、管理者の私はママ至上主義で行動するからねー。
   本当のママ…というか、現実空間の状況は、こんな感じ」

ぽいっという投げやりな動作で、パッと出現、イベント会場にあるような特大スクリーン。
こんな魔法、見たこともない。未知にもほどがあります。

映し出されるは、私の…おぼろげな記憶の、続き。



中心にいるのは私。
どこからどう見ても、怯え切った表情で、完全に石になって佇んでいます。

目を見開いて絶叫したデイジー姫が、手を投げ出して駆けよる態勢。
マリオが、ヒルダ姫を庇った状態で…激しく後悔しているような表情で振り返っている。
リンクが、何かを叫んでいるものの、判別つかず。
クッパが怒りに燃え、距離を取ろうとするタブーを鬼の形相で睨みつけ――――



そんな、静止画。

184Mii:2021/06/20(日) 17:07:07 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…………静止画?」

サヤカ「現実世界と『幽玄の間』とじゃ、時間の流れ方がざっと10000倍違うんだよ。
   だから正しくは『超スローで動いている映像』だね。

   ここで目覚めるまでにちょっと時間が掛かったけど、
   それでも現実世界…あっちだと、石化してから0.1秒すら経ってないよ」

ロゼッタ「0.1秒!?」

話についていくのがきついです!



サヤカ「で、精神的に死ぬことが確定したママは、その死の10秒前に精神体として
    『幽玄の間』に飛ばされた。今も猶予をちゃくちゃくと消費中。

   ちなみにこれ、任天堂の計らいね。極悪人じゃなけりゃ大体は飛ばされるよ。
   そんでもって、時間が来たら、ママの精神体は元の体に戻っていくの」

ロゼッタ「…前から思っていましたが、任天堂って何者ですか?」

サヤカ「…さあ?

   あ、ちなみに管理者の私は、ママ自身の知識のほかに任天堂の知識を
   あれこれ色々と持ってるよ。えっへん!頼りにしてね!」

ロゼッタ「よくわかりませんし今はどうでもいいです」

サヤカ「ひどい!」ウガー

185Mii:2021/06/20(日) 17:10:32 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…つまり、ともかく、精神の死の間際に…懺悔でも尽くしておけ。
    そういうことでしょうか」



そう、ですか。
私、死んじゃう、んですか。



サヤカ「繰り返すけど、精神的な死だから、肉体は死なないけどね。
   石化自体は、MOTHERチームによって程なく解除される。
   でも、精神が二度と再起しないんだ。これはパルテナさんの奇跡でも無理ー。

   ずっと、ずぅっと、自我のない、からっぽの精神のまま。
   周りの人、みんな悲しませつつ、いつまでも、いつまでも…

   やっぱり、怖い?」



ロゼッタ「怖いに…………決まって、いる、でしょう…!!!」ポロポロ



座り込んで、やるせなくて。

ただただ、悲しい。いくらでも涙が溢れ出る。

精神体だから涙に際限がないのか、ほんとうにただひたすら泣いているのか…。

186Mii:2021/06/20(日) 17:18:43 ID:D5kkqxG.
サヤカ「不幸中の幸いといえば、とりあえず。
   タブーとの、この勝負自体は、大局的には『こちら』の勝ちだよ。

   タブーはやぶれかぶれながらに悦に浸っているけれど…
   ママの犠牲を除けば、あとは可逆的――――
   手を尽くせば回復、修復できるような被害のみ残して、無事に終結する。

   ママの頑張りもあって、キノコ王国の危機は、とりあえず去ったんだ。
   ちょっと禍根は残すことになったけれど」

ロゼッタ「…………」




サヤカ「…………さて。キノコ王国の無事は伝えたところで。そちらはちょっと置いといて。

   そんなママを、助けてあげられる手段があるって言ったら、どうする?」

ロゼッタ「…え?」



泣き腫らした顔で、サヤカを見上げる。

ロゼッタ「そ、んな手段が、あるのですか!?」ガバッ

サヤカ「いわゆる管理者権限の裏技ってやつでね――――」

こほん、とわざとらしく咳込んで見せたあと。サヤカは、度肝を抜く提案を繰り出しました。

187Mii:2021/06/20(日) 17:21:36 ID:D5kkqxG.
サヤカ「ねえ、ママ。









   わたしと一緒に、ここに…ずっと、いよう?」








ロゼッタ「…え?」

サヤカ「簡単な話でさ。
   元の世界に戻るのは、予定通りの時間でもいいし、少し早めてもいいし…

   いっそのこと、すっぽかして、ここに居座ってもいいんだよ。
   私が自信を持って、うまいこと調整してあげる」



ロゼッタ「…………!?」

188Mii:2021/06/20(日) 17:24:54 ID:D5kkqxG.
サヤカ「一度すっぽかすと、二度と元の世界には戻れない。
   でもそれって、精神が死んででも戻るのに比べて、悪いことかな?

   むしろ、こっちを喜んで受け入れるべきじゃない?」

ロゼッタ「受け入れ、る」

サヤカ「ねえ、知ってる?この空間だと、私って――――なんでもできるんだ。
   さっき、スクリーンや風船をパっと出したでしょ?あんなの序の口。

   そして、ママなら…私以上に、なんでもできるんだよ。神さまになれるんだ」



サヤカが指をパチンと鳴らす。
突然、机一式と原稿用紙が現れました。

サヤカ「中々読ませるのは恥ずかしい物書きを、
   黙々と気の済むまで続けることができる」



サヤカが、腕を振りかぶる。
土煙と共に、何もなかったような地面が立派な舗装道路となり、
視界の先の先まで、無数の建物がにょきにょきと出現しました…!

サヤカ「この空間はママが想像する以上に許容量があるからね。
   街ひとつ、いや国ひとつ、なんなら世界ひとつ作ることだってできる」

……まさに、神の領域。

189Mii:2021/06/20(日) 17:27:41 ID:D5kkqxG.
サヤカは両手を大きく掲げつつ、ここに残ることの素晴らしさを語ります。



サヤカ「絶対安全な環境で、好きな物を食べ、好きな物を飲み、
   好きな趣味に興じることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ほどよい緊迫した環境を生み出して冒険者として名を馳せたり、
   勧善懲悪が浸透し切った素晴らしい世の中を作ったりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「女王として贅を尽くしつつも崇拝されたり、
   数多の男性を侍らせて持て囃されたりすることができる」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「ありとあらゆる空想、妄想が、ママの思惑ひとつで
   あっさりと具現化し実現する、それがここなんだよ。

   なんだったらいっそのこと、マリオ達をそっくりそのまま『構成』して…
   登場させて、交流を深めれば…現実世界に戻る以上の成果でしょ?

   みんなみんな相変わらず頼もしくて――――
   みんなみんな、ママの思う通りに動いてくれるんだ」

ロゼッタ「…………」

190Mii:2021/06/20(日) 17:30:21 ID:D5kkqxG.
サヤカ「そんな世界は、きっと、そう――――
   ストレスとは無縁で、とっても楽しくて、素晴らしいと思わない?」クルッ

















ロゼッタ「――――遺言執行者には、ピーチ姫を指定させて頂きます。

    皆様と一緒に過ごせた日々は、とてもとても幸せでした。
    本当にありがとうございました。星々の加護が有らんことを。

    差し出がましいとは存じ上げていますが、チコたちとほうき星のことを
    どうか守ってあげてください。よろしくお願いいたします――――」カキカキ

サヤカ「スルーして遺言書を書き上げてるぅ!?」

ロゼッタ「ちょうどいい所に紙とペンがあったので…」

191Mii:2021/06/20(日) 17:33:52 ID:D5kkqxG.
サヤカ「なんで!なんで真面目に聴いてくれないの!?」

ロゼッタ「え?あまりにも興味がない提案だったので…
    仮初の理想の世界とか、無味乾燥もいいところでしょうに。
    あ、でもおかげで少し心が落ち着きました」カキカキ

サヤカ「…………信じらんない!普通さあ、せめてもう少し気持ちが揺れ動いて、
   危うく甘い罠に引っ掛かろうとしたところで仲間たちの絆を思い出して
   考え直す…とかの過程があるでしょ!様式美、お約束ってやつ!」

ロゼッタ「…要するに、貴方も本心では、なびくとは思ってなかったのでしょう?
    『貴方』は『私』らしいので」カキカキ

サヤカ「…それは、まあ」

ばつが悪そうに、頭をポリポリと書いています。やれやれ。

ロゼッタ「そういうわけで、私は遺書でも書いて…気分だけでも僅かながら晴らしておきますよ。
    どうせ、この気持ちを伝えることなど出来はしないのですが」カキカキ



サヤカ「ん?できるよ?ママくらいの魔法レベルなら。だから遺書を書くのは確かに有効だね」



書き上げていたペンが、ぴたりと止まります。

ロゼッタ「…………あれ?どうして?戻った瞬間に正気を失うのですよね?
    魔法を編むことも、感謝の言葉を手短に叫ぶこともできなさそうなのですが」

192Mii:2021/06/20(日) 17:38:53 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…あ、言ってなかった、ごめんなさい。10秒後に精神的な死が待つとは言っても、正しくは…

   100メートル先から駆け寄ろうとしているニンテンさんとアナさんによって
   石化が解けるのが現実世界で8秒後、こっちでいう8万秒後。
   そこから精神が死ぬのに、更に現実世界で2秒掛かるんだ。

   だから…8万秒、ほぼ丸一日掛けて精一杯遺言を考えて、
   石化解除のタイミングで現実世界に戻れば…………
   『何らかの形で遺言を編み込んだ魔法陣を発動させるための』2秒が、残ってる」

ロゼッタ「なっ………!?」



サヤカの説明ですと、こうです。

もともと、OFF波動の効果が「恐怖・絶望の誘起」と「石化」であることは周知のとおり。
ただ、実の所、2つの効果はそれぞれ独立に作用していて、必ずしも人体への影響が
完全同期しているわけではないらしいのです。

そして今回。タブーによって、制御は二の次で、出せるだけの出力で放たれたOFF波動。
2つの効果の補正倍率が一致しなかった結果…………
「恐怖・絶望の誘起」で精神が完全に閉ざされる”前”に、石化が完了。
石化が完了した段階で、精神ダメージの進行まで凍結。ただしフラグは立ったまま。

2秒分のロスタイムができました。おわり。

サヤカ「わかった?」

ロゼッタ「…な、なんとか」

193Mii:2021/06/20(日) 17:42:19 ID:D5kkqxG.
たしかに、2秒あれば…………なんとかふんばれば。
光の文字として遺言を浮かび上がらせるような魔法陣、
あるいは地面に遺言を削り書きするような魔法陣、ぎりぎり発動できる、かも。
その文面を構築すること、魔法陣のシミュレーションをしておくことには意味がある、と。



ロゼッタ「精神の回復手段も無いですし、後ろ向きな発想ですが仕方ありませんよね…」

サヤカ「今回の件で更にピーチ姫が対策を強化することになるおかげで、
   10年後くらいのキノコ王国になら回復手段あるんだけどね」

ロゼッタ「10年後にあっても…」



ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「はっ!?ということは!いっそのこと!
    石化を解かないまま10年、精神の崩壊を凍結したままであり続けて!
    満を持して石化を解いてもらえば助かるのでは!?苦肉の策でっ!」

サヤカ「そうだね。
    私とママしか知らないその事実を、現実世界の皆に伝える手段があったらね」

ロゼッタ「……………………」

194Mii:2021/06/20(日) 17:45:38 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「別の案で行きましょう…あ!そうです!

    精神的な死が確定、というのは、あくまで――――
    『その時点の精神の強さを前提とした判断』ですよね!?

    今のうちに精神を鍛えて、さらには基礎体力レベルを上げて!
    石化解除したての2秒でどうにかこうにか絶望に抗えば!
    助かる可能性が出てくるのではないのですか!?」

サヤカ「おっ!いいところに気が付いたね、ママ!
   それは確かに正しいよ!ここにいる間にグンと強くなれば、
   復活する確率をゼロから0.1%くらいにはできるかもしれない!」

ロゼッタ「やった!ならばさっそく精神修業を始めましょう!
    1日弱あれば、なんとかなる…かも、しれません!
    僅かな希望にも縋るのです!」





サヤカ「ただし、時間の流れ方がずれている『幽玄の間』では、
   入る経験値も現実世界の1万分の1だけどね。だから結局……
   『現実世界の8秒間で得られる経験値でどうにかなりますか』って話になるけど。
   …や、やってみる?」

ロゼッタ「詰んでるじゃないですかっ!?」
    
サヤカ「そりゃあ、基本どうにもならない状況に陥ったから飛ばされた訳だし…」

195Mii:2021/06/20(日) 17:50:16 ID:D5kkqxG.
〜1時間後 (現実世界0.36秒経過  残り猶予76400秒)〜





ロゼッタ「…………推敲、おわり」





泣き腫らしつつ、遺書を何度も何度も読み返して、確認して。
とりあえず、思いの丈はすべて述べられたと思います。あとは覚えるだけ。

ロゼッタ「……次は、魔法陣、ですか」



本番にて超高速展開するために、何度も試す。
…所詮は文字の連なりをパッと表示する程度、10回試して10回成功しました。
速度の方も、私の実力があれば十分。迫り来る恐怖に抗いながらというのが気懸りですが。

サヤカ「まあ、『試行錯誤で経験値を蓄積する』ってことが出来ない現状、
    今失敗しているようじゃ絶対本番でもできなかったんだけどね。
    表現の仕方なんかを色々吟味することなら可能だよ。記憶は持ってけるから」



ロゼッタ「…………」

196Mii:2021/06/20(日) 17:53:32 ID:D5kkqxG.
〜2時間後 (現実世界0.72秒経過  残り猶予72800秒)〜





ロゼッタ「…動いて、いますね」





――スクリーンに映り続けている、みなさんが。
――私を何とかしようと。石化を解こうと。

――その行動自体が、私の余命を削っていくというのは皮肉なものです。
――もちろん、皆さんが悪いということは絶対有り得ないのですが。



サヤカ「そろそろ、ニンテンさんとアナさんも…
   スクリーンの端っこに映り出すんじゃないかなー」



ロゼッタ「…………」プイッ

先ほどから、体が震え出したり、止まったり、忙しい。
今さらながら、これから起こることを自覚して…精神が不安定になってきたのでしょうか。

197Mii:2021/06/20(日) 17:56:05 ID:D5kkqxG.
〜3時間後 (現実世界1.08秒経過  残り猶予69200秒)〜

サヤカ「現実世界で1秒経ったってところかー」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

どこが空間の隅にあたるのかも分からず、
三角座りで縮こまって、膝の匂いを嗅いで…ただただ時間が過ぎていく。

サヤカ「……もしもーし?」ブンブン

ロゼッタ「…………」

サヤカ「こうなったら、残りの時間、何か好きな事しようよ。
   それか、私とおしゃべりでもしようよー!時間が勿体ないよ!
   何のために私がここにいると思ってるのー?」

ロゼッタ「…………」

パタパタと近づいてくるサヤカを、無表情でぶっきらぼうに押しのける。

サヤカ「…………もうっ」



……ただただ、時間が、過ぎていく。

198Mii:2021/06/20(日) 17:58:08 ID:D5kkqxG.
〜4時間後 (現実世界1.44秒経過  残り猶予65600秒)〜

サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカも諦めたのか、5メートルくらい離れたところにうつ伏せに寝そべって、
私の方をジト目で見やって過ごしています。無情に時が過ぎて行きます。





ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「…………」ピクッ





ロゼッタ「一つ、質問しても、いいですか?」





サヤカ「……!なになに!何でも答えるよっ!知ってることなら!」

199Mii:2021/06/20(日) 18:00:35 ID:D5kkqxG.
久しぶりのコミュニケーションに、がばっと身を起こし、ぱあっと表情を輝かせる、サヤカ。
その表情に、すこし怖気付きつつも…ひとつ、だけ。



ロゼッタ「経験値、という言葉で思い出したのですが。
    現実世界で私に経験値が入らなかった不可解な状態について、
    何か知っていたりしますか?」

サヤカ「んー、知らなーい」

ロゼッタ「そうですか……………………」



サヤカは、あっさりと言ってのけ…会話が終わってしまいました。





ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「………………………ねえ、サヤカ」

サヤカ「なぁに?」

おかげでひとつ、わかったことがあります。

200Mii:2021/06/20(日) 18:02:38 ID:D5kkqxG.
――先ほどの返答。










――私の内面、にしては。反応が5秒は早い。

――早すぎる。











ロゼッタ「…………何を、隠しているのですか?」

サヤカ「えっ…!?」ビクッ

201Mii:2021/06/20(日) 18:05:28 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「あれだけ会話を期待しておいて、あまりにもたやすく切って捨てる回答。
    『私』の内面にしては、あまりにも不自然…………何か、知っているのですね?」

サヤカ「…ちょ、ちょっと。深読みしすぎだよ、ママ!知らない知らないっ!」





深読み、なんかじゃない。





ロゼッタ「有り余る、今の時間を費やして、何度、開発時の記憶を探っても――
    私の『実分身』…経験値漏れが起きるとは思い難い。
    そこで、こういう解釈に至りました。



    ――――ひょっとしたら。
    私の内面が無意識に、経験値の還元をホールドしているんじゃないかって。
    …………貴方の、せいですか?」

サヤカ「…………っ!!」ブルッ



――――図星、のようです。

202Mii:2021/06/20(日) 18:08:08 ID:D5kkqxG.
何故隠していたか知りませんが――思わぬ光明!
サヤカの両肩をババッと掴み、一気に捲し立てます!

ロゼッタ「いますぐっ!その経験値、私に返してください!
    それなりに蓄積しているはず、無駄にはなりません!
    もしかしたら打開の道筋が立てられるかも!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「やっぱり知っているのですね!
    どうしてですか!私が助かってほしくないのですか!」



サヤカ「――――ダメ」

ロゼッタ「だから、どうし――――」







サヤカ「絶対に、ダメ」

サヤカの、目の色が。尋常ではないほど、濁り出していました。

203Mii:2021/06/20(日) 18:10:36 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…ねえ、ママ。
   今、自分が何を言ったか、分かってる?」

ロゼッタ「…サ、ヤカ?」



子供とは思えない冷え切った眼光に、思わず竦んでしまいます。



サヤカ「…あのさ。つかぬことを聞くけれど。ママって基本、優しいよね?」

ロゼッタ「…はい?」

突拍子なことを言われました。

サヤカ「相当なことを悪者にされても、なんだかんだで許しちゃう。
   
   からかわれても『そんなこと自覚してますよ…』とため息つくだけだし、
   物を盗まれたりしても後で返してくれればプンプン怒りながらも水に流すし、
   わざとじゃなければ怪我させられても『不慮の事故ですから』で済ますよね」

ロゼッタ「そ、そんなにできた人間である自覚はまるで…」



サヤカ「それこそ、催眠術で操られて、術者の言いなりになって服を脱ぎ始めて――」

ロゼッタ「ははは破廉恥なのは絶対ダメ!ゼッタイ!!」カアアア

204Mii:2021/06/20(日) 18:13:44 ID:D5kkqxG.



サヤカ「唐突に魔法少女のコスプレをして、笑顔でダブルピース姿を自撮りして、
   直筆サインまで書いて、『私が書いた最高傑作です!』という一文を添えて、
   プロマイド付きの自作小説全編を全世界の編集部に片っ端から
   メール爆撃で一斉送信させられることになったとしても許しちゃうよね」

ロゼッタ「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」ガンッ ガンッ



ロゼッタ「」チーン

サヤカ「」

サヤカ「……まさか気絶するとは思わなかった。…おーい、起きて―」





ロゼッタ「…………悪魔の所業をいきなり想像させないでくださいよ…」ヨロッ

サヤカ「……コホン。まあ。ともかく。そこまでされても。
   ちょっとは凹むかもだけど。1週間…余裕を持って2週間もあれば、
   平常運転で日常生活を送ることができるようになるはずだよねー」

ロゼッタ「とてもとても、そうは思えないのですが…っ!」ヒキッ

205Mii:2021/06/20(日) 18:17:03 ID:D5kkqxG.
目が濁ったままのサヤカが、淡々と続けます。

私のちょっとした気絶で手間を取らせている間にも、濁りは解消されていない。



サヤカ「どうどう。…そんな、基本的に、なんでも許しがちなママですが。

   自分が貧乏くじ引くことについてなら、まあ立ち直れないこともないママですが。

   唯一つ、耐え難い、許し難い仕打ちを挙げるなら…それは。







   致命的な被害が…自身にではなく、罪なき善人に、一般の人たちに及ぶような。
   そんな行動を、意図せず取らされた場合なんだろうね」

ロゼッタ「…………!!」



――それって、つまり。

206Mii:2021/06/20(日) 18:21:52 ID:D5kkqxG.
サヤカ「いい?ママのいう通り、私の独断で。経験値の還元を、ストップさせてる。でもこれ、必要なことだから。

   ここに積もり積もってきた経験値にはね、ママの偽者、何十人分の…
   見てきたもの、やってきたこと、いろんな知識が紐づけされてる。

   そして。そう。もうわかった、よね。

   タブーと同調することによる悪意、憎しみ、殺意、嘲り。
   一切合財の『ママとは相性が悪すぎる』感情が、地獄の釜のように詰まってる」

   わかる?自分がどれだけ『ワルモノ』になるか。『ヒトデナシ』になるか。

   誰々を消し去りたい、何々を破壊し尽くしたい、こうすれば平和など掻き消せる。
   …そぉんな、小説の中ですら妄想してこなかった、逸脱したどす黒い感情。
   ママの心なんて、一瞬にして染め上げちゃうよ?

   精神負荷から逃れるため、開き直って悪人として生きていけるならまだいい。
   そんなことできっこないママは…そう、『ロゼッタ』っていう人物は。
   これまでママなりに築き上げてきた自分ってものを真っ向から否定されて、

   …………拠り所、なくなっちゃうよ?」

ロゼッタ「…そ、それでも!それらを纏めて獲得できるのなら!
    絶対に無駄にならない!役に立つこと請け合いです!
    尚更引くわけにいかなくなりました!返してくださいよ!

    大丈夫、現実世界の惨状は散々見せつけられて…耐性はできていますから!」

その経験値が、知識が、どれだけ持ち出す価値があることか。
最悪、それだけでも後世に伝えられればキノコ王国の為になるはず!

207Mii:2021/06/20(日) 18:25:14 ID:D5kkqxG.
サヤカ「……分かってない。分かってないよ」ハァ



――――サヤカが、私をまるで相手にしてくれない。



サヤカ「耐性が付いたなんていうけれど、それは所詮、見たこと、聞いたことだよー。

   自分に『完全同期』して降り掛かる感情爆発は、そんなチンケなものじゃない。
   …この精神世界で、精神分裂、精神崩壊するよ?ぐっちゃぐちゃに。
   もはや私でも匙を投げる事態になっちゃうよ。

   そうなったら、人生最期を穏やかに過ごすという目的、まるで無視だね。
   だぁれも救われない。現実世界のみんなも。ママも。…………もちろん、私も」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「はいっ!やめやめ!このお話はオシマイ!」パンッ



ひとしきり話し切って、ようやくサヤカの眼に光が戻ってきました。
もう疲れちゃったあ、と独り言。

サヤカ「んもう、この『サヤカ』のキャラじゃないよ、こんな陰気なお話…
   もっと愉快で楽しくて夢のあるお話をしようよ、ねっ!」

そう微笑んで、もじもじと腕を後ろに組んで…私の顔を伺います。

208Mii:2021/06/20(日) 18:28:10 ID:D5kkqxG.
ロゼッタ「…………………………仕方、ありませんね」スゥ・・・

サヤカ「ううん、わかってくれたなら別にいいの!
   私はただ、ママに悔いを残してほしくないだけだから――――」








ロゼッタ「――――――――――――――――サヤカ。

    命令します。私の経験値、返しなさい」ガッ

サヤカ「…がふっ!?」








最終手段。こんなことはしたくありませんでしたが…

いたいけな少女を、首根っこ掴んで――――そのまま地面に押し倒しました…!

209Mii:2021/06/20(日) 18:31:00 ID:D5kkqxG.
サヤカ「…え?ええ!?ちょ、や、やめてよ!?何の真似!?怖いよママっ!」ジタバタ



絵面的にはなんとも美しくない光景。それでも背に腹は代えられない。



ロゼッタ「先ほど自分で言いましたよね。
    この空間の管理者の貴方は…私至上主義だと。
    それは感情論とかではなく、おそらくはこの空間における…絶対的なルール。

    究極的には…私の本心からの命令には絶対服従、ということですよね?」パアアアアア

サヤカ「し、知らない!は、離して!」ジタバタ



あえて非情になり、押し付ける力を強めて行きます。



ロゼッタ「返しなさい」パアアアア

サヤカ「ぐ……………がが」ブルブル

ロゼッタ「返しなさい!」パアアアア

サヤカ「…や……………………め、て…………」ブルブル

210Mii:2021/06/20(日) 18:33:28 ID:D5kkqxG.
何かを感じる。サヤカの体から、何かが抜け出てくる。
見つめ合う私とサヤカの中ほどに現れた、1cmにも満たない、小さな小さな輝き。
ブゥーンと高周波音を微かに放つそれは、きっと――――思い描いている通りの物。



サヤカ「ぜ…ぜった、い、こうかい、す、るか、ら――――」ポロポロ

ロゼッタ「少しくらい信用してくれても、バチは当たりませんよ」

サヤカ「ママ、が、ママじゃ、なく、なることを、しんじざるを、えない、のぉっ!」ポロオポロ



――――それでも、やらなければならないことは、あると思います。
――――多少のリスクは、背負っても!



サヤカの制止を少しは気に留めつつも。後ろ向きにはならず。
一呼吸おいて、気合い入れ直して。

突如現れたその輝きを、そっと、労わるように、慈しむように。





両手でふわりと、包み込みました。
たちまち、輝きが強くなって――――――――――――

211Mii:2021/06/26(土) 19:48:11 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



――――ごとり。

『…このあたりに仕掛けておきますか』

周りに、後頭部を打たれ失神した、出血甚だしい酔いどれ客たち。

『任務中にノコノコ近付いてきた、貴方がたが悪いなんですよ?』

まるで気にもせず、むしろ足蹴にし、不可視の爆弾を目ぼしい場所に仕掛けていく。

『ふむ…どのみち後で死ぬことになるのですから、むしろ今は…
下手に戒厳令出されないためにも、酔っ払い同士のちょっとした殴り合い、程度に
見せかけておきますか』

慈悲の心なんてなしに、単に作戦上有用だからと、気持ち程度回復させる。
そのあたりに転がっていた拳大のレンガの破片を、
あるいは適当に近くのゴミ捨て場から拝借した金属棒を。
空間魔法でふわりと動かし、転がる大怪我人の拳に滑り込ませる。

指紋なんて一切残さない、完全犯罪の達成。

『じきに、誰かが見つけてくれるでしょう。…運がよければ、ね』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

212Mii:2021/06/26(土) 19:50:40 ID:NzWQi0XQ
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――――ぽた、ぽた、ぽた。



『…………ふふ』

――――タブー様から、潤沢に無尽蔵に与えられるFPを。
――――少し細工して、タブー様の闇の力も練り込んで。

――――城下のあらゆる生活圏に、特に市民の生活の糧となる賑やかな市場の各地に。
――――ニコニコと歩きながらも、僅かに漂う瘴気として、ばら撒いて、ばら撒いて。



――――古来より、都市陥落の第一歩といえば、遅効性の毒を徐々に拡散させること。
――――何気ない仕草に違和感を感じ、やがて動きが鈍り、眩暈、吐き気、痺れを訴える。
――――いよいよ人々が病院に殺到することには……全て、手遅れ。



『まあ、キノコ王国の浄化性能とやら、せいぜいお手並み拝見といったところですかねぇ』

213Mii:2021/06/26(土) 19:52:31 ID:NzWQi0XQ
はしゃいで走り回っていた子供が、周りをよく見ていなかったのかぶつかってくる。

『いったぁ……っ!……あ!ご、ごめんなさいっ!』

『…あらあら、私は大丈夫ですよ。次からは気を付けましょうね』

子供の方も転んでしまっていたので、とりあえず手を差し伸べて引っ張り――――



『…!?い、痛いっ!』

…おや、思わず憎しみで強く握り過ぎましたか。ひとまず手を緩めます。

『あ、ごめんなさい。痛かったですか?』ニコッ

ちょっと涙目の子供が、掴まれて赤みを帯びた自分の腕と、私の顔を交互に見やり…

『…………だ、だい、じょうぶ、です。あ、ありがとう、ございまし、たっ!』

こわばった子供が、焦りつつもぺこりと頭を下げ、去っていく。
…すこし失敗しましたね、思わぬ『攻撃』に――――――――



『ロゼッタ』らしからぬ、睨み方をしてしまったかもしれません。



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214Mii:2021/06/26(土) 19:55:14 ID:NzWQi0XQ
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『ええい!もう情報は回ってきてる!ネタバレは済んでるぞ!
アンタ、本物のロゼッタさんじゃないなっ!失礼過ぎるぞ、この屑ヤロー!』

『ちょっと待ってください!私、ロゼッタ本人ですよ!何処からどう見ても!』

『騙されるか!目つきからして全然違うだろ!
本物はそんな昏い眼差しはぶつけてこないはずだ!根っからのお人よしらしいからな!』



『……ああ、そうですか。それならば、仕方ありませんね。
…………どうしてばれてしまったのでしょうか、嫌ですねえ』



『…………っ!やっぱりそうじゃないか!
じきに正義のファイターたちがアンタなんか懲らしめに――――』

相手は、ごく普通の一般人。
こちらは、最弱クラスのファイター。

…力の差は、歴然。

杖を一振りしてみれば、咄嗟に割り込ませた両腕ごと、胴体の一部が吹き飛ぶ。
ディメーンの真似っこです。空間切断って便利ですね。癖になりそう。

215Mii:2021/06/26(土) 19:58:00 ID:NzWQi0XQ
『――――――――ああああああああ!?』ドクドク

一瞬、状況把握ができず、零れ落ちた部位を呆然と見やって、その後は絶叫。
血だまりの中で悶え苦しむしかできない愚鈍な相手。
傍で震えていた、奥様でしょうか。同じく絶叫して、荷物あらかたひっくり返して、
ボロボロと無様に泣いて、死を待つ夫に縋りつき始める。

『――――つまり、演技をする必要もないということですね。色々と面倒なので――――

――――――――――――――――ここで死んでください』

『この人が何をしたっていうのっ!!誰かっ!誰かぁっ!!』ポロポロ

そんな非難には耳を傾ける余地もなし。ニタリと嘲り笑い、もう一度杖を振りかぶって魔法の構え。
夫婦まとめてあの世行きにしてやりましょう。私って優しいですね。



『やめろおおおおぉぉぉぉ――――!!』

『ロゼッタさんの名誉のためにも、そんなことさせないぞー!
青キノピオ隊、不届きな偽者に決死の突撃ぃー!!』

『『『『おおおおーーーー!!!!』』』』

――――チッ、邪魔が入りましたか。



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216Mii:2021/06/26(土) 20:00:18 ID:NzWQi0XQ
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『――――――――おお』

なんて、壮観。

『――――――――素晴らしい』

あたり一面、石化したままの住人が何百人といる区画。

実質、命を失ったも同然。
タブー様の作戦が、紆余曲折あれど順調に功を奏していく…!
これに感動せずして、何が生き甲斐というのでしょう。

『――――はは、はははははははははは……………♪』

ちょこまかと抵抗はされていますが、この程度。
キノコ王国の転覆は、間もなくです。本当に、あっけない。





『本物の私は、一体、どういう反応をしてくれるでしょうかねぇ』



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

217Mii:2021/06/26(土) 20:02:28 ID:NzWQi0XQ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



みんなみんな、邪魔。

ここにあるもの全て、タブー様にとって目障りな物。
タブー様の手によって、完膚なきまでに破壊し尽くされればいい。逆らったことを後悔するといい。



希望は全て、絶望へ。

輝いて見える夢は全て、耐え難い現実へ。

喜びは全て、悲しみへ。

笑い声は全て、慟哭へ。





『みんなみんな、死んでしまえばいいのに』

その先に、求める物があるのだから。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

218Mii:2021/06/26(土) 20:05:18 ID:NzWQi0XQ

サヤカ「ママ譲り、のぉ――――――――――――――――――――――――――――
   
    ――――――――Starlit Wish《星に願いを》――――ッ!!」パアアアァァァァ!!!



ママ譲りの大回復魔法を、惜しげもなくママ1人に使用する。
FPが勿体ない?そんなこと、今は議論する価値もないよっ!





サヤカ「あのさあっ!!どうしてっ!どうしてそこまで安請け合いしておいてっ!!



   かんったんっに!舌を噛み切ろうとするかなあ――――――――っ!!」



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



ママが――――受け身も取らず、前にドタンと倒れ伏したまま。ピクリとも動かない。
よりにもよって、あらぬ行為に踏み出す余力だけは残っているみたいだけれど…!

219Mii:2021/06/26(土) 20:08:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「じょーだんじゃないよっ!後悔するって言ったよね!
   『万が一』のことを考えて、すぐさま切り替えて魔法の準備をしておいて、
   本当に…………ほんっっっとうっに、良かったっ!!やめてよね、もう…!」



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



ロゼッタ「――――」ゴボッ

サヤカ「――――――――て ん ど ん っ!?」パアアアアアァァァァ!!

……ああもうっ!休む暇なんかない!Starlit Wish《星に願いを》、もう一回っ!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」



サヤカ「やめてって言ってるでしょ!足掻いてよっ!
   大博打をやったからには勝率ほぼ0%でも頑張ってよ!私も無理だと思うけどっ!
   ママが諦めるっていうんなら私が諦めず頑張るよっ!
   ……あれ?何言ってるのかな、わたしっ!?訳わかんない!」

220Mii:2021/06/26(土) 20:11:16 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

サヤカ「…落ち着いた、か、なあ………?」





ザンッ・・・・・・・・




サヤカ「…………あれ?」



サヤカ「どうして、お腹から、そんなに、ドクドクと血を流してる、の?」マッサオ



サヤカ「――――――――――――――――――――――――」ゾワッ



ロゼ ッタ「――――」

サヤカ「きゃあああっ!!空間切断で自傷した――――――――っ!?」パアアアアァァァァ!!

221Mii:2021/06/26(土) 20:13:18 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドク

サヤカ「…こんのぉ…!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!

ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドク

サヤカ「…しつこいのぉっ!!!」パアアアアアアアァァァァ!!!



ロゼッタ「――――」ピロリーン

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」ドクドクドクドク

222Mii:2021/06/26(土) 20:15:20 ID:NzWQi0XQ
…駄目っ!これじゃあ、いつか頭部にでも致命傷食らって取り返しが付かなくなるっ!!
体ズタズタになってから後手の回復じゃ、話にならないっ!

サヤカ「集中力の差を利用して――術式インターセプト、連発ぅ…!
   持ってよね、私の魔法回路…!!せーのぉっ!!」パアアアアアアアアアァァァ!!!





――――あまりにも空しくて、不毛な駆け引きが始まった。





倒れ込んだまま一切動こうとせず、四肢は沈黙し、痙攣し、顔は地面とごっつんこ。
顔色が全く伺えない、ママ。一言も発しない、人形のような状態になった、ママ。
ただ、ひとついえるのは…………

とにかく、いますぐにでも、命を絶ちたい、らしい。



サヤカ「…………っ!」パアアアアァァァァ!!

言わんこっちゃない。
でも……そんなこと、この私が、許すと思う?

223Mii:2021/06/26(土) 20:17:36 ID:NzWQi0XQ
集中力が乱れに乱れているママに対してだからこそ、なんとか術式妨害が間に合う。
あろうことか、気が触れたのか…気が触れているのか、うん。
自身に向けて放とうとする空間魔法を、発動前に横槍、ことごとく無効化…っ!



…ごめん、嘘。10回に1回は間に合ってない。

そのたびに、空間魔法が発動し、ママの体のどこかを、ゴッソリバッサリ消し飛ばす。
痛ましさに目を背け、そのたびに、急ぎStarlit Wish《星に願いを》で強引に回復処理。



何この、不毛すぎるイタチごっこ。



ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

血が流れていようといまいと、うめき声一つ上げない状態なのが逆に恐ろしい。





サヤカ「…………精神、壊れ、ちゃった…?」

というより、壊れたと、私でも思う。前々から当たり前のように思ってた。

224Mii:2021/06/26(土) 20:20:02 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」



サヤカ「結局は娘の私に投げっぱなしっ!?
   …むう。いいよ、それで。それが娘としての役割らしいからっ!
   私、諦めないっ!ぜったいに、諦めないからっ!!

   私、こんな姿形だけど…小さな女の子だけど…
   おあいにく様!任天堂の知識のおかげで、CERO:Zまでの耐性あるもんねー!
   流血表現なんて捨てて、掛かってこーい!」パアアアアァァァ!!





傷ついて、回復して、また傷ついて、回復して。

血だまり広げつつ、2人の体力をガリガリと削りつつ、



空しすぎる、無意味な作業が延々と続いていく――――――――――――

225Mii:2021/06/26(土) 20:22:12 ID:NzWQi0XQ
〜8時間後 (現実世界2.88秒経過  残り猶予51200秒)〜



ロゼッタ「――――」



何時間も経った、けれど。ママは、ピクリとも動かない。
魔法を行使し続けてきた以上、ホントに気絶しているわけじゃないけれど。
まだ気絶していてくれた方がずっとずっとマシだった。



サヤカ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…うぷっ…………
   と、り、あえず、こんど、こそ、おちつい、た、かなあ、はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――ぅして」

サヤカ「――――――――!!」ピクッ

ロゼッタ「――――――――――――――――どう、して?」

サヤカ「ママ…!なんとかなったん――――――――」

226Mii:2021/06/26(土) 20:24:46 ID:NzWQi0XQ

ロゼッタ「――――――――どう、して。どうして、こんなことになったの?

     ―――――――――――ねえ、どうして?」



くぐもった涙声。



サヤカ「…………!?」

ロゼッタ「そんなに、いい子じゃ、なかった、かも、しれない。
    陰で、誰かを、迷惑がらせる行動を、していた、かも、しれない」ポロポロ

サヤカ「あ、あのっ!」

ロゼッタ「でも…こんな目に遭うまで、私、碌でもない人間、だった…?」ポロポロ

サヤカ「そんなわけないよ!悪いのはあくまで悪の親玉っ!
   ママはこれっぽっちも罪悪感感じなくていいからさ!」

ロゼッタ「――――あくの、おや、だま」

サヤカ「そうそう!全てはタブーが悪い!満場一致で!」

ロゼッタ「…………タブー」

サヤカ「そう、タブー!あの気味が悪い生命体の!」

227Mii:2021/06/26(土) 20:31:09 ID:NzWQi0XQ




ロゼッタ「――――――――タブー、消さなきゃ」

サヤカ「…ほへ?」



ロゼッタ「タブー、消す。消さなきゃ。消シテヤル」ユラァ

サヤカ「…あの、ちょっと?」

のそっと、ママが、起き上がる。
それ自体は喜ばしいことだけれど、ちょっと…いやとんでもなく、様子がヘン。





ロゼッタ「タブーガ憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。憎イ。
    殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。殺ス。
    引キ裂イテ 八ツ裂キニシテ 消シ炭ニシテ 完膚無キマデニ滅シテヤル――――」ブツブツ

サヤカ「」



――――不気味な靄を纏って…………ママが、狂った。

228Mii:2021/06/26(土) 20:35:01 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ちょちょちょ、ちょっと!…って、なにごとっ!?」



ママのまわりに、おぞましい赤い、膨大なFP渦が。

いわゆる魔力開放…いやFP解放――!
確かに、ママは大量のFPを獲得した時…一時的にFP解放して、
実体化して溢れだすFPに幾重にも包まれることがある。
…でも、それは――――青色。自称「おたすけウィッチ」状態。
体質が最高に「空間魔法向き」になっている、能動的な状態。

…今目の前に広がる景色は、真っ赤な真っ赤な、凄まじい量のFP。
ごうごうと、激しい音を伴って、ぐるんぐるんと渦を巻く。まるで竜巻、いや台風…!



ロゼッタ「――――グゥ――――ガガ――――――――」



のたうち回りながらも歩き出し、獰猛な獣のような、唸り声。
煽られ舞い上がる、頭髪。それすら鬱陶しそうに、雑に頭を掻き毟る。



焦点が合っていない、その「両目」。
特に「右目」が、昏い赤色に染まってFP暴走を引き起こす動力に…!?
なまじ魔法レベルが高いばっかりに、とんでもない現象を引き起こしてる…っ!

229Mii:2021/06/26(土) 20:38:10 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………なに、これ。…ええっと。検索、検索。

    任天堂の知識を、ちょっとばかり引っ張ってくるとするなら…
    九尾が暴走した人柱力状態、かなあ、HAHAHA」





サヤカ「…………笑ってる場合じゃないっ!?えらいこっちゃ!」

直感。急いで止めてあげないと、ママが大変なことになるっ!!

声を掛ける。必死に掛ける。
…全く聞こえてない。あるいは取り合ってもらえない。

余りのFPの集積、奔流に…ママの足元の地面まで耐えきれなくなって、
ぴしりぴしりとあちこちに亀裂が走っていく始末…………うわぁっ!?

ある程度の距離にも関わらず、私まで、かなりの圧を受けるけれど、
なんとかしてFP暴走の源を――おそらく憎しみを――絶ってあげないと…!!
ひとまず駄目元で、もう一度Starlit Wish《星に願いを》をドーンと…………!





その魔法行使の予備動作が、どうやら、敵性認識されたみたいで。
殺意とともに、空間魔法、とんできて。え、うそ…!

230Mii:2021/06/26(土) 20:40:28 ID:NzWQi0XQ



サヤカ「び、がががが―――!」ドクンッ



脳天に、あ、たった。

食らっちゃいけない、類の、威力…ぅ。



しょ、せん、わたしは、情報生命体。

でも、ごっそり、とてつもない生命エネルギーを、持ってかれる。

血はながれないけれど、重要な構成情報、いくばくか抜けていく。





サヤカ「――――――――――――――――」





意識が、ぼやける。

231Mii:2021/06/26(土) 20:44:27 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ピ――――――――――――――――――!
   フセイナ ソウサヲ 行ナッタタメ ぷろぐらむヲ サイキドウシマス



   ……しすてむでーたガ 見ツカリマセン
   でぃすくノ B面ヲ せっとシテクダサイ

   でぃすくガ 見ツカリマセン
   どらいぶノ フタガ ヒライテイナイカ
   カクニンシテクダサイ



   あくせすえらー!
   サイテキナ ぷろぐらむヲ サガシテイマス
   めもりーかーどヲ ヌキサシシテ クダサイ

   ぷろぐらむカラ オウトウガ アリマセン
   しすてむガ びじージョウタイカ
   あるてぃめっとでいじーニ ナッテイマス



   あぷりけーしょんえらーガ 発生シマシタ
   しすてむヲ サイキドウシマス

   ふぁいるノ せーぶニ シッパイシマシタ
   でーたガ ウシナワレタ カノウセイガ アリマス」

232Mii:2021/06/26(土) 20:46:38 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…こーでっくヲ ケンサク シテイマス
    
    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    …………でふこん1 発動
    ソウイン スミヤカニ タイヒシテクダサイ」



サヤカ「――――」ドサッ

わたしは ちからつきた。



ロゼッタ「――――」

紅い台風を纏って、夢遊病のようにヨタヨタと歩く、ママ。



サヤカ「――――」

サヤカ「――――」



サヤカ「――――――――――――――――アキラメタク、ナイ」ボソッ

233Mii:2021/06/26(土) 20:50:17 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ ケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイケンサク シテイマス

    ケンサクノ ケッカ
    『404 ぺーじ のっと ふぁうんど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ」



サヤカ「…………」




サヤカ「ママノ…『ロゼッタ』ノ めもりーヲ 深層スキャン シテイマス」

234Mii:2021/06/26(土) 20:52:29 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「しるばーばれっとヲ サイサイサイケンサク シテイマス





















    ケンサクノ ケッカ
    『でいじーめそっど』ガ
    1ケン 見ツカリマシタ

    成功リツ スイテイ 20パーセント
    タダチニ たすくふらぐヲ オンニシテ
    ジッコウニ ウツリマス――」

235Mii:2021/06/26(土) 20:56:41 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――ううっ」



何時の間にか、気絶していました。
さきほどまで、何を、していたのでしょうか。記憶が混濁しています。



両腕に、温かい、感覚。…そっと、握られている感じ。



「あア、まマ、気ガつイた?」

ロゼッタ「は、はい…………っ!?」




ほっぺたやら、手首やら。胴部やら。
体のあちこち、見るも無残な、抉られた跡。

傷跡から、血は、流れない。かわりに、0と1の、電子情報のカケラ…といったらいいのか。
サラサラと光の粒と共にナニカが散っていく…そんな様相。
ノイズが走り、姿が小刻みにブレて、明らかに――異常事態っ!

236Mii:2021/06/26(土) 20:59:29 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「な、いったい、なに、がっ!?」

サヤカ「まマは、悪ク、なイよ。
   暴走状態ノまマに、なンとシてモ、助カっテ、欲シくテさ。
   可能性ヲ探ッた挙句、『でいじーめそっど』ニ行キつイて」



デイジー、メソッド。サヤカは確かにそう言った。
一体、何のことを指しているので――――



握られていた、両腕。
先ほどまで、そう、とんでもない失意と絶望のどん底にいた、
それがどうしたことか、今は…思わず口を手で押さえて――――
止め処ない悲しみと、激しい頭痛と、猛烈な嘔吐感「だけ」で済んでいる。
そんな私の事情、考えれば――――






サヤカ「暴走スるマまに、ぎューッて 抱キ着イて。
   ソのマま、身ヲ焼カれツつモ 腕掴ンで――――

   まマの 抱エ込ンでタ 真ッ黒ナ もヤもヤ、半分コに しテみタ、だケだカら」

ロゼッタ「――――――――っ!?」

237Mii:2021/06/26(土) 21:24:16 ID:NzWQi0XQ
半分、なんてものでは、ないっ!?
デイジー姫の「FP制御法」を参考にしたみたいなことを言ってくれていますが…



サヤカ「FPゴと、私ノ体ヲ媒体ニしテ、憎シみ、濾シ取ッて……ネ」



あれほど取り乱して生きることを拒絶していた私が。
――――ここまでケロッとしている、その意味。

ほとんど、サヤカが――――自己犠牲で、貰い受けて、引き受けて、くれた…!?



サヤカ「…ごホっ、ごホっ、ごホっ!」

激しい咳とともに、胃液、ではなく…またもや、情報、抜けていく…?
サヤカの、存在が、心なしか、おぼろげになっていく…!?

サヤカ「…………でモ、ごメん、まマ。私、謝ラなキゃ。
   私自身モ気ガ触レたラ駄目ダかラ、汚染サれタ構成要素、
   …………どンどン放棄スる事ニなッてサ。

   ちョっト、捨テ過ギた、かナぁト、思ッてタり」

ロゼッタ「―――――――――」

しゃべるのも億劫なほど、サヤカが、疲弊の色を強めている。

238Mii:2021/06/26(土) 21:26:08 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「……………………………管理者トしテの最低限ノ力、足リなクなッちャっタ。

   先ホど公言シてタ、8万秒ハ…ごホっ…持タせテ、見セるケど。
 
   そッかラ先ハ、無理ッぽイ。……………………………御免ナさイ。

   最後ノ『すッぽカしテ此処ニ留マる作戦』ハ…今更頼ミ込マれテも…使エなイや」



みるみるうちに、涙、溢れてくる。
フラフラとしているサヤカを抱きしめて、子供のように――――泣きじゃくりました。





ロゼッタ「サヤカぁ…ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!私の…せいで――――っ!」









――――じきに、この空間は、なくなります。

239Mii:2021/06/26(土) 21:28:29 ID:NzWQi0XQ
一体、どれだけ、泣いていたのでしょうか。
なんて醜い姿を見せてしまったのでしょうか。…消えてしまいたい、くらい。

――だと、いうのに。
サヤカが、突然わたしに対して儚く笑いかけて、なけなしの空元気。



サヤカ「ねエ、まマ」

ロゼッタ「…………………………は、い」

サヤカ「そンな顔、しナいで。心配シてクれテ、本当ニ、嬉シい。
   だカら、最後ノ最後ノ、恩返シ」

ロゼッタ「…………お、んがえし…?」
   
サヤカ「一ツ、閃イた、最終手段。
   取得経験値ハ1万分ノ1デも。凄イ、凄イ、効果覿面ナ近道ルーとガ、
   『万ガ一』…うウん、『億ガ一』ニでモ、見ツかレば…!もシかシたラ…!!
   どウか、私ヲ信ジて――――私ニ命運委ネて――――



   『一発逆転』、狙ッて、みナい?」



実際のサヤカの様子は、居た堪れないほど悲惨な物、なのに。
なんだか、何故だか、不思議なほどの意気込みと希望を、感じることができました。

240Mii:2021/06/26(土) 21:31:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「……………………」スッ・・



サヤカに言われるがまま、正座して、目を瞑る。
なんだか懐かしい、この感じ。
いつぞやも、行き詰った時…こんなことをやってみましたっけ。

まだまだ吐き気は続くけれど。サヤカの苦痛に比べれば…いいえ。
比べることすら烏滸がましい。物理的にも精神的にも飲みこみます。



ロゼッタ「……………………」



サヤカ「はーイ。そレじャ、始メるネー。

   私ノ言葉ニ素直ニ従ッて行動シてネぇ。そウ!まイんドこンとローる!
   …何ダか犯罪臭ガすルけド、あル意味『自己暗示』ッて事デ、気ニしナい!
   
   私ガ手ヲ規則的ニ叩クたビに、心ヲどンどン鎮メて行ッてネ!さンはイ!」



――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。決して穏やかとはいえない荒れた心を、ワンステップ、深層へ鎮める。
なぜこんなことを?なんて考える必要なんてない。サヤカが求めるのなら、従う、ただそれだけ。

241Mii:2021/06/26(土) 21:34:13 ID:NzWQi0XQ
――ぱちん。

サヤカが手をひとつ叩く。更にワンステップ、心を深層へ。
イメージするのは、水面に水滴ひとつ垂らして、波紋が拡がっては弱まり消えていく…
そんな情景。格好付けて言えば…明鏡止水。



――ぱちん。

――ぱちん。

――ぱちん。



サヤカの手拍子は止まらない。どんどん、心が鎮まっていく。静まっていく。
気持ちの悪さ、不安、焦りは棚上げにして、ひとまず苦痛から解放されていく。
…でも、所詮は棚上げ。この儀式が終われば、また――――

サヤカの手拍子が、ひたすら、ただひたすらに続き。
もう、回数も分からなくなってきたところで――――――――



サヤカ「――――――――心、底ノ底マで、鎮マり切ッたネ?そレじャあ―――――――――――――」

目を瞑っていても、わかる。サヤカが、すぅっと深呼吸して――――
何かを発しようと準備していることが。

242Mii:2021/06/26(土) 21:37:40 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「―――――――――――――――――――――――――――――
   まマの身ニ起キた…全テのッ!あラゆルっ!
   障害ニっ!不条理ニっ!理不尽ニっ!災イにッ!不幸ニっ!悲シみニっ!因縁ニっ!横暴ニっ!

   りミっターなシに、感情、爆発サせチゃッて――――!!!」



ロゼッタ「――――――――がぁっ―――――――――――」

どす黒い物に突き動かされ、染み入るように。体が動く。
サヤカの言葉が浸透するままに、リミッターなんてぶっ壊して、
本能から、本心から、沸々と湧き上がるソレを――――――――――――



――――        大   爆   発 っ !!!!!!!!!!



ロゼッタ「がああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

どうして、私が、こんな目にっ!
運命を、恨むっ!恨んでやるっ!!
もう何も、信じられないっ!!

ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッ!!

荒れ狂う、FPの嵐。さっきもあったことの、二の、舞――――――――
再びどす黒い物が、どこからともなく私の心を染め上げて――――

243Mii:2021/06/26(土) 21:40:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そコで、すトおオおオおオぉォぉォ――――――っプ!!!」ビシィッ!

ロゼッタ「―――――――――ぎぃいいぃぃっ!!」グググッ・・・

――――私は、なにを、考えていた…!?
サヤカが声掛けしてくれた、おかげ、で。間一髪、踏みとどまったっ!
噛み過ぎた口端が切れて血を滲ませますが、安い物っ!!
サヤカに従い、再び心を落ち着けてFPを収めて――――



サヤカ「違ウ、違ウっ!!落チ着イちャ絶対駄目ッ!!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――ぎっ!?」ドクンッ

サヤカ「収メるンじャなクて、『留メる』ノっ!!そシて、そノまマ――――――尖ラせテっ!!」

ロゼッタ「――――――――――――――――っ!?」

い、き、なり、何、を……!!



サヤカ「今ノ、まマに、必要ナ、こト。そレは、言ウまデもナい、ちカら…!
   唯ノ癇癪、地団駄、駄々捏ネ…そンな状態デ暴レ回ル狂気ノえネるギーを…
   絶望ニ打チ勝ツ為ノ、『闘争心』ニ、変換シてシまウ、こト!

   お願イ、まマ! 全力デ―――――  怒(いか)レ!!」

ロゼッタ「――――――――――――!!」

244Mii:2021/06/26(土) 21:42:33 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「さッきノ、まマの暴走見テ、わカっタノッ!!
   引ッ込ミ思案ナまマニも…燃エたギる熱イ心ハ、しッかリ根付イてル!
   そレを、たダ、正シい方向ニ切レ味鋭ク尖ラせテ、解キ放ッてアげレば、いイのッ!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



サヤカ「『こコまデやッたラ上出来』トまリお達ニ引キ継イで貰ッて満足スるンじャなクて、
   『こイつハ私自ラ、責任もッて、ぶッ潰ス』ト奮起スる、勇気ッ!

   『私ノ仇ヲ、誰カ、どウか取ッて下サい』ト託スよリも先ニ、
   『こンな輩ニ負ケを認メる訳ニ行クもノか馬鹿』ト殴リ掛カれル、度胸ッ!

   悪ヲ挫クのニ、遠慮ハ要ラなイかラっ!全力デ、怒レっ!!!」



ロゼッタ「――――――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――」



言うは易し、行い難し。
いきなり、そんなこと、言われ、てもっ……………!!

理屈はっ!理屈はっ!飲みこめて、いるというのにっ!!

245Mii:2021/06/26(土) 21:44:22 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ!今マで、何ヲ、見テ来タの!?幸セ者ノ、貴方ニは…………



   打ッてツけノ、参考トなル、人物ガ、いル、でシょウっ!!」



――――あ。



――――脳裏に浮かぶは…………
    
――――いざとなったら、怒髪天になったら、
――――たちまち道理を捻じ伏せる、いつもは気ままな…お嬢様。





――――デイジー姫。その勇姿、少しばかり――――お借りしますっ!





怒(いか)る。あるいは、キレる、という表現の方が得てして分かりやすいでしょうか。
単に、周りに喚き散らすんじゃない。八つ当たりを繰り返すんじゃない。
明確な対象を設定し、敵愾心を育て、溢れる全エネルギーを注ぎ込む――――

246Mii:2021/06/26(土) 21:46:26 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何ヤっテるノ、馬鹿ッ!まタFPガ暴走シかケてル!
   最初ッかラやリ直シっ!!」

サヤカ「違ウっ!そレは何モ考エてイなイだケ!
   心ノ暴走カら逃ゲてルだケ、全然違ウっ!!」

サヤカ「怒ルこトは恥デも下品デもナいヨっ!
   躊躇スる事コそガ、そノ昂リに対スる最大級ノ…侮辱ッ!
   溜メに溜メて、うンざリすル位ニ溜メまクっテ、
   あリっタけノ想イと共ニ、敵ニ…がツんト、ぶツけチゃエっ!!」



何度も、何度も、何度だって。
サヤカにダメ出しを食らって、やり直して、やり直して、やり直して。

ロゼッタ「うぷっ…」ウズクマリ

喉元まで幾度となく襲い来るのは、胃液か、嘔吐物か、はたまた血塊か。
…汚らしい想像はやめましょう。…無心に、なれっ!それでいて、強欲に、なれ!

私の精神は、ただひたすらに急上昇と急降下を繰り返す。
辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。辛い。
悶絶躄地。艱難辛苦。窮途末路。七転八倒。

私も、あおりを受けたサヤカも、どんどん傷跡増していく。



――それでも。

247Mii:2021/06/26(土) 21:48:16 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「そノ調子ッ!今、ちョっト制御ガ効イた気ガすルっ!」



サヤカ「いイ感ジっ!総量ソのマま、踏ミとドまッて!こコが正念場ッ!!」



サヤカ「自分ノ心ニ飲ミ込マれナいデっ!逆ニばッちリ操ッて、物ニしチゃエ!



   ――――――――そレが、まマの、頼モしスぎル、武器ニなルかラっ!!」



ロゼッタ「――ガ、ガ――――こ、んな、も、の――――――――――
    はああああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!!!」



視界も意識もチカチカするなか、一心不乱に。
私が持っているという、怒りのチカラというものを――――いざ――――!



・・・・
・・・・
・・・・
・・・・

248Mii:2021/06/26(土) 21:50:33 ID:NzWQi0XQ
〜20時間後 (現実世界7.20秒経過  残り猶予8000秒)〜



ロゼッタ「―――――――っ、がはっ…は、はぁっ――――――――」

肩で息をする、なんてものではない。
這いつくばって、ただ空気求めて荒く荒く息を吸って、吐く。
見栄えなんて、行儀なんて知ったことことではありません。

散漫な視線を、サヤカに向ける。

不思議と、いつの間にか、嘔吐感は立ち消えている。

残った物は、凄まじい量の疲労と、汗と。





ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・・・・・・・・

サヤカ「――――ごー!!」バッ

ロゼッタ「―――――――――――――」ザッ!

紅い奔流を纏いつつ、精神、穏やか。

これで最後とばかりに歯を食いしばって立ち上がり、
両腕拡げて、向かい入れる態勢、取ってみれば――――

249Mii:2021/06/26(土) 21:53:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――お願いっ…!!」



それらを体が拒否するのではなく、「受け入れて」。
どんどん、どんどん、吸い込んでいって!





ロゼッタ「――――――――ハッ!!」





全て、無事に、収めきったっ!!



5秒、10秒、20秒…30秒。
爆発を、暴走を危惧すれど…………取り越し苦労。



負の感情を ついに 制御し切った!
ロゼッタの 精神力が ぐぐーんと 上がった!▼

サヤカ「――――――――――――――――やッた――――ァ!!」

250Mii:2021/06/26(土) 21:55:58 ID:NzWQi0XQ
思わず泣いて、拳を振り上げるサヤカ。
私は、今更ながら、まじまじと、両手の…手の掌を見やる。



――――体が、ちりちり、火照っている。
――――むずむず、うずうず、している。



乱暴な言い方をするなら、喧嘩腰。
言葉をちゃんと選ぶなら――そう。燃え滾る闘志、勝ち気。

なんでも、自分で解決できそう…いえ。解決しなくっちゃ!という、
強い想いが――――体中を駆け回っていますっ!!

ロゼッタ「――――こ、これが…私、ですか?」

俄かには、信じられない。この、逆境に対する、言いようのない高揚感。

サヤカ「新生ロぜッた、誕生、だネ!! 」ニヘラ

ロゼッタ「……っ!サヤカ―――――!!」

胸に飛び込んでくる我が娘が、本当に愛おしく思えました。



これで―――――
これで、現実世界に戻ってから、精神攻撃に――――耐えきれる、かも、しれない。

251Mii:2021/06/26(土) 22:01:05 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「…………」ソワソワ

ロゼッタ「…………」ソワソワ



サヤカ「…あ、うン。気持チが昂リ過ギてルのハわカるケど。落チ着イて。
    さア、作戦終了…うウん、作戦完遂ニ向ケた、最終準備ヲ!
    もウ、遺言ヲ考エる時間ナんテ、要ラなイね!」

ロゼッタ「…!!はいっ!…とは言いましても。何をすれば、いいのですかね。

    ……あ、あれ!?そういえばっ!?
    ここでの経験効率って現実世界の1万分の1なんですよね!?
    現実世界に送り返された私って、しっかり絶望に抗えるんですか!?」

サヤカ「さア?」

ロゼッタ「『さあ?』…って、駄目じゃないですかっ!?」

サヤカ「冗談、冗談。さッき言ッた通リ、『無茶苦茶習得シにクい』ッて意味ダかラ…
   習得シちャっタ物ヲ、ぽカんと忘レるコとハ、無イよ」

ロゼッタ「良かったあ…!」

サヤカ「やッた成果ガ無駄ニなラなイだケで…
   そモそモ絶望ニ耐エるニは足リてナいッて可能性ハ無茶苦茶有ルんダよ、
   そコんトこロは、分カっテる?」

252Mii:2021/06/26(土) 22:04:12 ID:NzWQi0XQ
ジーンと、感動。そのあと、静寂。

ロゼッタ「…これでも、まだ、分の悪すぎる賭けであることには、変わりないんですよね」

サヤカがコクリと頷きます。
…そう、精々勝率を0.1%にできたくらい。
できれば、もう一声。1%くらいはくれないでしょうか…?

サヤカ「…まアでモ、きッと、大丈夫!!もウ、まマは、負ケなイよ!」

ロゼッタ「――――その、心は?」

サヤカ「唯ノ勘、ダけド」

ロゼッタ「――――最高の信頼要素ですね、ふふ」

疲れ果てながら、2人で小さく笑い合いました。





サヤカ「…………」

ロゼッタ「…………」

サヤカ「…泣イてモ、笑ッてモ、後、2時間位ダよ。やリ残シた事、何カ無イ?今ノ内ニ…」

ロゼッタ「…………やり残した事――――――――」

253Mii:2021/06/26(土) 22:07:15 ID:NzWQi0XQ



…………そうだ。



ロゼッタ「…あります。最後の機会かもしれませんし――
    自己を奮い立たせるために、やれることはやっておきたい。
    サヤカなら、分かってくれるでしょう?」

まだ汗だくですが、疲れを吹っ飛ばす気持ちで、軽くウインク。



サヤカ「…………………………ま、マさカ!?あレを!?
   い、いイの!?増々自分ヲ追イ込ム事ニ、なルんダよ!?」

ロゼッタ「…………切羽詰まった時に、何をやっているのかと、自分でも思いますが。
    ――――覚悟は、できています。試したいんです」

サヤカ「……そッかァ。…うン、なラ、私ハ――何モ、言ウこトは、なイよ。せメて、手伝ワせテ、くレる?」

嬉しい、申し出。断る道理など、これっぽっちもありません。

ロゼッタ「それでは、短い時間ですが、やっていきましょうか――!!」バッ

サヤカ「おーーー!!」パアアアアア

さっそく、魔法を繰り出すべく、新たな自分の体中に、力を籠めて――――!!

254Mii:2021/06/26(土) 22:13:03 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「――――――――――――――――」ピタッ



サヤカ「えイ、えイ、そレー!!…まマ、こノ位ノ濃サで、いイかナ!!!」パアアアアア!!

ロゼッタ「…あの。さっきから、私になんの魔法を掛けているのですか?」

サヤカ「何ッて……もザいク?」

ロゼッタ「…………?」



サヤカ「流石ニ『CERO:D』的ナあラれモなイ映像ヲそノまマ流スのハ……ちョっト…怒ラれルし」

ロゼッタ「!?!?!?!?」

サヤカ「にンげン、死ノ間際ニ性欲ガ刺激サれルっテ言ウし!
   折角清ラかナまマの晩節ヲ汚スかモと否定的ニなッたケど、乙女ノ自由ダもンね!

   …あ、私空気読メてナかッたネ。『実分身』ヲ応用シた『逆ハーれムの術』デ
   任天堂選リすグりの美形男性陣ヲかキ集メて――――――――



   ……ぐハっ…痛ァ――――――――っ!!
   今殴ッた!娘ヲ、ふルすイんグで殴ッたネ!?暴力大反対ッ!!」

ロゼッタ「キノピオでも助走してピーチ姫に殴り掛かるレベル!」カアアァァ

255Mii:2021/06/26(土) 22:19:07 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「はぁっ!はぁっ!…そ、そんなふしだらな娘に育てた覚えはありません!!」

サヤカ「…こンな姿デも、任天堂ノせイで、まマよリ耳年増ナんだヨね…
   もシかシて、私ノ、ちョっトしタ勘違イ?」

ロゼッタ「180度ずれたあとで虚数空間にぶっ飛んで行きましたよ、もうっ!!
    そうではなくてですねぇっ!!」

かわいく「てへっ」っと笑っても、あんまり見逃してあげませんからね!



ぜぇ、はぁ。爆弾発言に顔が真っ赤!こればかりは耐性がないし耐性付きたくもないっ!
こうなったら、無理やりにでも!サヤカなりの緊張ほぐし作戦と解釈しますからっ!
うわあサヤカったらここまで自分を投げ打ってくれるだなんて!嬉しいなぁ!ふふふ!



ロゼッタ「…最後に。考案中の『魔法応用』について!
    洗いざらい、試し撃ち、しておいたいんですよ!ぜひとも!」

サヤカ「…流石ニ今カら新シい応用ヲ閃クのハ無理ジゃナいカな…?」



ロゼッタ「…それでも。
    撃てるかどうか把握しておくことは、大事でしょう?
    心構えが、結構変わってくると思うのですよ」

サヤカ「…………あア!そウいウ事ネ!!」ポンッ!

256Mii:2021/06/26(土) 22:23:03 ID:NzWQi0XQ
〜22時間後 (現実世界7.92秒経過  残り猶予800秒)〜

サヤカがどうしてもと言うので。
サヤカが最後の生命力を振り絞って、一瞬だけ…見かけ上は、もとの体調を取り戻す。

サヤカ「……ふう。体ガタガタっていうのは辛いね。やっぱり健康が一番!

   …残された時間は、もうちょっとだけ。
   …ほんとのほんとに、やり残したことは、ない?」

ロゼッタ「…………最後に、ぎゅって、抱きしめさせてください」

サヤカ「ふふ、お安い御用かな」



ぎゅーっと。
無理をしているためか、ますます苦しさをやせ我慢中のサヤカを抱きしめる。



ロゼッタ「…………もう、大丈夫」

大事な物、たくさんもらいました。大勝負に勝っても負けても、後悔は、ない。
もちろん、勝って終わりたい所では、あるけれど。

サヤカ「大丈夫?伝えそびれた事、質問しそびれた事もない?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ、そんなものはもはや何も残って――――」

257Mii:2021/06/26(土) 22:25:34 ID:NzWQi0XQ



ロゼッタ「…………………」



ロゼッタ「…………あれ?そういえば…………」

ふらりと、自分の体をみやる。

…うん、確かに。精神面で、何回りも強くなった感じ。それは率直に嬉しい。
でも、ひょっとすると…………。この感じは…!





ロゼッタ「…………経験値、結局返ってきてないっ!?い、いやでも…!?」





あれ?あれれ!?
偽者の私たちの記憶は戻った、知り得ないはずの情報が頭に叩き込まれた。

…だとしたら、経験値はやっぱり取得している?どういうこと!?
そのわりに、身体面の変化が――――!

258Mii:2021/06/26(土) 22:27:56 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「こんなに経験値を還元したのに、なんだか――やっぱり、強くなっていない…!?」

サヤカ「あせっちゃだめだよー」

ロゼッタ「で、でもサヤカ…」

そうは言っても、これでは、苦労した意義の一部が無駄に…っ!
もちろん贅沢を言い過ぎたりはしたくありませんが…!



サヤカ「むむむ?」ビビッ



そのとき。
サヤカが、変な電波(?)を、受信してしまいました。



サヤカ「…………うっげー…ああ、そっかー。そういうこと、ね。
   オールスターのお祭り大会の上に、転生の扉なんてもので空間同士の繋がりが
   しっちゃかめっちゃかになって、へんな化学反応起こしたのかぁ…
   任天堂さん、しっかりしてよ…」ボソッ

ロゼッタ「…………?」



サヤカが呆れたようにため息吐いて、改まって私の方を振り向いて――――

259Mii:2021/06/26(土) 22:30:56 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「ママ、まさか――――――――――――――――

   経験値を能力にかえてないんじゃないの?」

ロゼッタ「えっ?」

サヤカ「このゲームでは、練習するだけじゃ能力は上がらないの」

ロゼッタ「…この『ゲーム』?」



…というより、練習って何ですか?



サヤカ「『練習』などのコマンドに並んで『能力を上げる』という名前のコマンドがあるよ。
   それを選んで、経験値を使って能力を上げるの」



…………サヤカは何を言っているのですか?



サヤカ「あ、それとは別の話だけど、Yボタンを押すと、少し前の文章も見られるよ!
   そしてその後十字ボタンの上を押すともっと前の文章も見られるの!」

ロゼッタ「落ち着いて!お願いだから落ち着いてサヤカっ!?何がゲームだと言うのですか!」ユサユサ

260Mii:2021/06/26(土) 22:36:25 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「上見て、上」チョイチョイ

ロゼッタ「上、って…」チラッ











    『ロゼッタ 両投右打 オーバースロー
    球速 280km  コントロール A255  スタミナ C 88
    オリジナル変化球 ジャイロファイア 【スピード+30% 炎属性】

    経験点:999(MAX)
    球速      280 ⇒ 281 必要経験点900
    コントロール    取得済
    スタミナ      88 ⇒ 89   必要経験点 10            』





サヤカ「なるほど、むしろ表サクセスというよりは俺ペナ仕様かあ。うわ、経験点頭打ちだ。勿体ない」

ロゼッタ「ななな何ですかこれぇ――――――――!?」ビクゥッ!!

261Mii:2021/06/26(土) 22:42:24 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「何かの手違いで、偽ママたちの経験値だけ…別系統の処理になってたみたい。
   よーし、さっさと経験値…いや経験点を能力に変換しよう!時間がないよ急いで!
   このまま選手登録する気!?」

ロゼッタ「ちょっと待って処理が全然追いつかない!」

え?え?ええ?球速?コントロール?スタミナ?
まるで野球ゲームではないですか。



サヤカ「…………ああ、もう!時間切れぇー!!
   これ以上延ばされると、現実世界に上手く戻れなくなるよっ!

   …………と!いうわけでっ!独断と偏見でっ!
   私が勝手に、役に立ちそうなのをっ!選んじゃいますぅっ!
   異論は認めませーん!」バタバタ

ロゼッタ「!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■■を 手に入れた!▼



サヤカ「あ、炎属性のボールを投げるんだし…せっかくだから、とっておきのも!
   原作仕様、原作仕様!そぉれ!……よおぉーし、大成功っ!」

ロゼッタ「原作って何!?」ピロリーン

ロゼッタは ■■を 手に入れた!▼

262Mii:2021/06/26(土) 22:45:32 ID:NzWQi0XQ
ロゼッタ「だから、お願いだから説明をしてくれませんか…って。
    ほ、本当に残り時間が…1分切ってる!?考え込み過ぎました!!」



ああもう!この際、経験値うんぬんは諦めましょう!当てにしないっ!



サヤカ「ママ、頑張って。
   …タブーの精神攻撃なんかに、絶対っ!ぜーーーーったい!!
   負けちゃ、駄目なんだからねっ!!」グズッ

ロゼッタ「もはや遺言も忘れてしまいましたからねっ!
    負けるわけには行かなくなりました!残念ながら!
    勝ってきますよ、こうなったら!」

サヤカ「…それ、じゃあ。送り届けるよ――」パアアアアアア!!

ロゼッタ「…………ええ」

サヤカ「――――――――またね!結果はいつか、聴かせて!
   …そう、夢の中ででもっ!!」

――――ええ、「またね」。
――――涙腺緩みながらも、「さよなら」だなんて嫌だから――!



景色がおぼろげになり、涙目で笑うサヤカの顔が、どんどん遠くに――――

263Mii:2021/06/26(土) 22:47:28 ID:NzWQi0XQ
サヤカ「…………ほっ」ヘタリ



ママを送り届けて、私は力尽きた。

体力の限界が来たということもあるし、そもそも管理者の役割が終わったわけだし。



サヤカ「…あー、世界が、くずれて、きた、なあ」



サヤカ「…………まあ、『私』は『貴方』だから、悲しくなんてないよ、うん」





サヤカ「最後のプレゼント、喜んでくれるといいなあ。
   うふふ。…きっと、今のママなら…使いこなしてくれる、だろう、から――」サラサラ・・・



サヤカ「――――――――――――――――」・・・・・・



シュン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

264Mii:2021/06/30(水) 05:49:00 ID:bzZ4v6Ks
〜スマブラ試合会場〜



ニンテン「そりゃあああ!石化なんてどうってことないぜ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「……で、でもなんだか、他の人と様子が違うようなっ!
  気、気のせい!?無駄に頑丈に固まってる!ちょっと慎重に解いた方がいいかも!」パアアアアアァァァ!!

ニンテン「そーゆーことは後で考えるっ!」パアアアアアァァァ!!

アナ「それじゃ意味ないでしょ!」パアアアアァァ!



マリオ「ロゼッタッ!」

ルイージ「ロゼッタッ!」

デイジー「ロゼッタァ!!」

リンク「ロゼッタッ!」



パリイィィィ―――――――ン!



ロゼッタの 石化が 解かれた!▼

265Mii:2021/06/30(水) 05:51:27 ID:bzZ4v6Ks
…………現実世界に舞い戻った途端、闇の衝撃に脳を揺さぶられる。



ロゼッタ「――――――――」



なすすべもなく。



ロゼッタ「――――――うぁ――――」



もとより、魔法陣を繰り出すことすら、無理――――だった。
2秒あれば十分だとか、笑わせてくれる。



恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望
恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖
絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望恐怖絶望

266Mii:2021/06/30(水) 05:52:50 ID:bzZ4v6Ks
涙こぼれ、口を開けたまま、瞳孔開いたまま、微動だに出来ぬまま。



そのまま前に倒れ込み――――



20cm、

10cm、

 5cm、

 1cm、







ロゼッタ「――――――――――――――――」ガシィッ!!





――――でも。今なら、どうかは、わからない。

267Mii:2021/06/30(水) 05:55:28 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「――――――――」

俯いた表情のまま、間一髪手を突いて顔面衝突は免れる。
…なんだか、「幽玄の間」に飛ばされたときと、似ている。
誰にもばれないよう、小さく息を吸って、吐いて。



ロゼッタ「――――――――」



心、真っ黒に塗り潰されてしまったか?
何も考えられなくなってしまったか?
生きることを諦めてしまったか?



全て、終わってしまったか?



――否。まだ、抵抗の想い、胸の奥にハッキリと秘めている。
キリキリ締め付けようとする圧力を、押しのけ跳ね返すだけの、熱い心が。
黒い闇、まとわりつくのを、気合い一発、取っ払って。

ロゼッタ「――――――――」

脚に力を加える。周囲が見つめ見守る中、私は――――
確かに、しゃんと、立ち上がる。

268Mii:2021/06/30(水) 05:57:43 ID:bzZ4v6Ks
目線の先は、騒動に乗じてまんまと距離を取ってほくそ笑んでいたものの――
私の、心が、ぺしゃんこにならなかったことに驚愕している、タブー。



――――――――ば、馬鹿な!耐えられるはずが、ない!



ああ、いま私、顔を上げた。

タブーを見ているうち、どす黒かった――――いえ、今は違う。
真っ赤な、真っ赤な。暴走しているわけでもない、強い、強い――



――――――――怒りの、感情っ!!!



ロゼッタ「――――――はあああああああああああああぁぁぁぁっ!!」カッ!



咆哮して。声滾らせて。
FPとともに、思う存分、解き放て!

リンク「ういっ!?」

デイジー「…ロ、ロゼッタ!?」

269Mii:2021/06/30(水) 06:01:52 ID:bzZ4v6Ks
私の突然の変わりように、驚かれるけれど、気にも留めない。
紅蓮の台風、身に纏い――――嘆き悲しむのではなく、使命感にただただ燃えて!



ロゼッタ「――――この、下郎が――――」グワッ

――――――――――――!?



今の私の眼光、タブーも思わず怯むほど。



実況「ロゼッタ選手っ!!――――相手を、威圧しています!」

特殊能力 「威圧感」が 発動した!
タブーの 攻撃力が 下がった!▼





ロゼッタ「――――――――覚悟しなさい。過ちを地獄で悔いなさい。
    私は、貴方を―――――――――決して、絶対に、許さないっ!!」ゴオオオオォォォッ!



周りの激しい奔流が、タブーを倒すべく、ますます唸りを上げ出した…!!

270Mii:2021/06/30(水) 06:04:29 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「なんかよくわからんが、ロゼッタが無事に復活して、よかった!本当によかった!
   よし!あとは俺たちに任せておけ!ゆっくり休んで―――」

ロゼッタ「…いえ。私が、この手で最後まで、けりをつけます。
    …行けるところまでは、せめて、どうか」

デイジー「ちょ、ちょっと!無理はしないで――――」

マリオ「……!そっか。よしわかった。最小限のサポートに留めておく。

    ――――ロゼッタ、やっちまえ」



マリオの言葉に甘え、ただ1人、前に出る。



デイジー「ななな、何言ってるのさマリオ!タブーを甘く見てない!?
    いくらなんでも、ロゼッタには受け流しが精一杯で、倒すのは荷が重いよ!
    おまけに全然本調子じゃないはずなのに!乗せられてないで――――」

マリオ「なぁに――――負けねぇよ、今のロゼッタは」



最早、訳の分からないまま、思い通りにならないことに逆上して、
タブーが最後のあがきを見せる――――

そんなタブーに引導を渡すために、私は空を駆けていく――――

271Mii:2021/06/30(水) 06:06:23 ID:bzZ4v6Ks
カービィ「ぽよ!!」ダッ

ヨッシー「怪し気な不意打ちの処理なら任せてください!」ダダッ

リトル・マック「よーし!目に物見せてやれ、ロゼッタ!」ダダッ

マルス「彼女にここまでの度胸があるとはね…僕の眼もまだまだ節穴だな」スッ

サムス「…ふふ。好敵手出現と言ったところ、だなっ!対戦が楽しみだ!」ダダッ

むらびと「いっけー!タブーをやっつけちゃえ!」タタタッ

ピット「いよいよ終わりの時が近付いてまいりました!…フラグとか言わないでね!」フワッ

ピカチュウ「ピッカァ!」ダダッ







マリオ「…そんじゃ、まあ。俺達も行きますか」ダダダッ

リンク「…おうっ!!」ダダダッ

272Mii:2021/06/30(水) 06:10:16 ID:bzZ4v6Ks
くるくるくるくる…シュタッ!






駆けつけるのも速い。撮るのも速い。天才写真家でーす。
思い出の写真を撮りますからねー。



さあ こっち向いて 撮りますよーっ チーズ サンドイッチ!
…って、流石にこっちは 向いてくれませんよね、皆様がた。



おー いい写真が撮れた。
この写真は きっと 最高の 思い出になりますよ。



ではまた、いつか――――






くるくるくるくる……………………。

273Mii:2021/06/30(水) 06:14:04 ID:bzZ4v6Ks
リンク「闇雲に走っちゃ駄目だ、ロゼッタ!お前の走力じゃ、敵の攻撃を避けきれないぞ!」

私が前面に出ているせいで、私に飛んでくる触手の対処までは、
結果的に…間に合わない。食らえば、大減速に大ダメージ、請け合い。
また心を汚染されないとも限らない。

私の移動能力の低さ。速度の足りなさ。それは、十分分かりきったつもり。
だから、少々小狡い手を…裏技を使います。



ぽんっ!!



ロゼッタ(分身)「行きますよ――――」パアアアアァァァァ

1人だけでいいので、分身体を作って。私の背中に、手を置いてもらって…処置開始。
背中の後は、その手は両脚の踵に向かう。…よし、OK。
終わった後は――――他の方のところに待機してもらって。



ロゼッタ(分身)「さあ、任せました――――」

ロゼッタ「ふっ――――――――」ダンッ!!



踵、そして背中に、小細工。あとは…疾駆するだけ!

274Mii:2021/06/30(水) 06:19:01 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…!?」

敵の触手をひとつ、またひとつと掻い潜り、
どんどん近づいて近付いて――――!!

デイジー「嘘っ!ロゼッタ、はやーい!?」

リンク「うおっ、ロゼッタの奴、なっかなか速いじゃんか!
   あれ、並の奴のLv.60くらいには相当するぞ!?」



絡繰りは、駆動箇所と背面に計3つ、発動させている、魔法陣!
その輝きが――――勝利へと誘う道しるべ!

速度が足らないなら、「隔壁ピストンを利用した加速」が有用。皆さんとの特訓の成果。
でも、戦いの最中、咄嗟にそんな制御をし続けるのは、あまりにも荷が重すぎる。

…………だったら!魔法陣で隔壁生成を自動化して!さらに体の各部に固定化してっ!
いつでもターボを…加速できる体制を整てておけばいい、それだけのことっ!!









ロゼッタ「――――――――加速円環《ダッシュリング》――――っ!!」

275Mii:2021/06/30(水) 06:24:21 ID:bzZ4v6Ks
意のままに――急加速!
意のままに――――大跳躍!!
意のままに――――――――切り返し、方向転換っ!!!

3つのリングが、私の体を自由自在に舞わせる!

それでも目の前に立ちはだかる触手たち。
避けてばかりではいられない、直接触れると闇の力に汚染されそう。

第2の策、「要塞法衣」の――――パンチンググローブ化っ!!
かつての12層には拘らない。部位を限定する代わりに……
百にも届かんとする、隔壁バリアを凝縮に凝縮を重ねた超多層構造!

余りにも重ね掛け過ぎて、硬化し金属質を帯びて、メタリックに輝く――――!
お灸を据えるべく、これでもかと振りかぶり――――



ロゼッタ「――――――――フンッ!」ドゴォッ!!!

襲い掛かってくる触手、数本纏めてやすやすと一撃粉砕っ!



ルカリオ「――――!お、おい!今の…!ロゼッタっ!そのパンチ!
    あと、もう少しだけ、拳の更なる鋼化と速度増、果たせるかっ!?」

後ろから、ルカリオの助言が聴こえる。――――そんなこと、造作もない。
速やかに、術式を追加、編集、再構築!

276Mii:2021/06/30(水) 06:29:25 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「ど、どうしたのっ!」

ルカリオ「今の一発で分かった!ロゼッタには――先制技の素質があるぞ!」

デイジー「なんだってー!…そ、そういや、ゲイルアタックとやらも――――!!」



更なる重ね掛けで強化をされた拳。相当な衝撃力を内包して。
ダッシュリングで体全体も弾けるように速度を高め、拳が風を纏い唸るっ!!
どんどん、触手がはじけ飛ぶ威力、増していく!



ルカリオ「予想した通りだ――――あれはまさしく!
   
    弾丸の一撃―――――『バレットパンチ』!
    
    やったな!パンチング特訓の集大成じゃないか!」

デイジー「うおおおぉぉ!マジで!?ルカリオが太鼓判押すなら確実だね!」





――――――――線で駄目なら、面ならばどうだっ!!

投擲網のように、傘状に暗黒物質を次々と放り投げられる。
最初の1回だけは思わず後退、でも、次は――――

277Mii:2021/06/30(水) 06:32:53 ID:bzZ4v6Ks
懐に手を指し込んで――――

ファイアロゼッタ「――――ファイアフラワー、使用っ!!」ポンッ!

そのまま、敵の魔の手を気にせず、真正面から突撃!!

クッパ「ロゼッタ!流石にそれは無茶だっ!引けっ!後戻りできなくなるぞっ!」

心配には、及ばない。

「ダッシュリング」と同じ考え。
ファイアボール装填に時間を食っていた、いままでの私。
だったら、そう。ファイアフラワーそのものの効力に、「パイロキネシス」の発動を乗せて。

燃え盛る火球をどんどん作ることを、パイロキネシスで。
大きな威力を付与して矢継ぎ早に投げることを、ファイアロゼッタとしての能力で。
効率よく、役割分担すればいい――――っ!!



ボンッ! ボンッ! ボンッ!

ファイアロゼッタ「――――――――Fire Satellite《火球衛星》!」

――――――――な、に!?



マリオカートで見かけた――――トリプル緑甲羅にトリプル赤甲羅。
甲羅にできることなら、どうしてファイアボールができない、なんてことがあろうか…!

278Mii:2021/06/30(水) 06:37:00 ID:bzZ4v6Ks
私を包み絡めとろうとする悪意を、己の周囲を巡らせる3つのファイアボールで!
…焼き切って、打ち消してみせる!ガーディアンのように、自動制御で動いてくれるから!
数度の飛弾は気にせず、そのまま体当たりしてタブーに肉薄!

攻撃を受けるたび、残念ながら消えていく火球も。
ありあまるFPを、燃え盛る怒りに載せてっ!即座に再充填!余念はない!

タブーの本体に――ついに、届いた、拳!!

ズンッ・・・・・・っと、鈍い音を立てて、正拳がタブーのどてっ腹にめりこみます!
たまらず、腹を抱えて苦しそうに蹲るタブーを尻目に、一旦距離を取り――――

燃え盛る炎を、力に、力に、集め切って――振りかぶって――
振りかぶる腕に膨大な「怒り」のFPが絡みつき、灼熱の炎となって。
いつもの何倍も大きい、50cmはあろうかという大火球を、一気呵成で――!



ファイアロゼッタ「ジャイロ、ファイアアアアアアアァァァァ――――――――!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!



超特殊能力 「鉄腕」が 発動しています!全球種、球速+3%!
ジャイロファイア補正!球速+30%!

最終球速 ――――372km/h!▼

――――――――ヌ、ガアアアアアアアァァ!!?

279Mii:2021/06/30(水) 06:40:52 ID:bzZ4v6Ks
申し訳程度に漂う触手、全部貫いて。
空中で身動き取れないタブーの、心臓部を。たちまちあっさり貫通して、勝負あり――!

所詮私のレベルでは即絶命とは行かないにしても…みるからに、演技の訳もなく。
最早タブーは、逃げることすらできないで苦しそうにもがいている!



ここにきて、少し…バーニング状態が途切れます。気持ちの昂ぶりがひと段落。
もう、溜飲は下げた。流石に、もう、他の方に任せてもよいのではないのか。
…そう、冷静になって、周りを見渡そうとした、まさにその時――――



リンク「よっしゃあロゼッタッ!フィナーレだ!


   ――――メテオでトドメをさせ!!」



私の身勝手な面子を優先させ、露払いに専念してくれていた、他の方々。
その中から、リンクが鶴の一声を。



ファイアロゼッタ「――――――――!!」ドクン

喉がゴクリと鳴って、緊張の瞬間。
自信までちょっとしぼんでいく。…まだ、OFF波動の悪影響は完全には解けて…いない。

280Mii:2021/06/30(水) 06:43:37 ID:bzZ4v6Ks
ファイアロゼッタ「…わ、私には、そんなこと、や、やったこと、なくて…
         おまけに疲れ切っていて…とても、できません!!」

リンク「頑張れ頑張れできるできる絶対できる!頑張れもっとやれるって!
   やれる!気持ちの問題だ頑張れ頑張れ!そこだ!そこだ諦めんな!
   絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張れ頑張れ!」



ファイアロゼッタ「――――!!」



リンク「諦めんなよ!諦めんなよお前!どうしてそこでやめるんだそこで!
   もう少し頑張ってみろよ!ダメダメダメダメ、諦めたら!
   周りのこと思えよ!応援してる人たちのこと思ってみろって!
   あともうちょっとのところなんだから!

   絶対やってみろ!必ず目標、達成できる!だからこそ――Never Give Up!! 」



ほろり、涙がこぼれる。

ファイアロゼッタ「――――ど、どうして、こんなことをしでかした私を、
         そこまで…信用して、くれるの、です、か…?」

その呟きは、決して大きい物ではなかったのに。
拾い上げてくれた人たちが、いた。

281Mii:2021/06/30(水) 06:46:06 ID:bzZ4v6Ks
ファルコ「…ああ、なんだ。ちょっと時間は遡るが。皮肉なことにな。
    偽者のお前に、マリオやピーチですら騙され続けた。それが理由ってやつかな」

ファイアロゼッタ「――――えっ」



ファルコ「…だから、だな。うまいこと騙されたこと自体は癪に障るが。
    要するに、お前の本質は、偽者たちが演じていた通りの――――
    気苦労絶えない、優しさの塊みたいな奴だってことには、間違いねぇんだろう?
    …ちっ、二度と言わせるんじゃねえぞ、柄じゃねえ」

むらびと「そういうこと、そういうこと。
    ファイター達も、観客たちも…ロゼッタさんの偽者を恨むことは有っても。
    ロゼッタさん本人を恨むことなんて、絶対にできないもん!
    こーんなに、優しいお姉さんなんだから!!
    きっと、本物のロゼッタさんが窃盗騒動のときにいたとして、
    あの時以上に僕のことを庇ってくれたんだろうなぁって心の底から思えるんだ!

    さあ、最後はガツンと大勢の観客の目の前で――――
    本物と偽者の違いをしっかり示して、冤罪なんかとはおさらばだよ!」

ファイアロゼッタ「――――――――あ――――――――う――――――――」



涙が、止まらない。

見捨てられても、おかしくないとばかり、悲観していたというのに。
…………嬉しい。嬉しい。戻って来られて、本当に、よかった。

282Mii:2021/06/30(水) 06:49:29 ID:bzZ4v6Ks
ファイアロゼッタ「――――わかり、ましたっ!」

――――やる気、全開。この命に代えても、最後の最後まで、私の意志で…………!!

思い切って、高く、高く、飛び上がります――――!!



ピーチ「…………はぁっ、はぁっ!や、やっと戻って来られた…!!
   制御室の位置、再考の余地があるわね…!非常時には不便だわ…!
   …って!ロゼッタ1人に任せて、何をやってるの!!」

マリオ「何って、最後のツメをロゼッタ本人にやって貰ってるところだ。
   大丈夫、もう危ない橋は何もない」

クッパ「そうとも!身体的にも精神的にもあれほど成長して…ワガハイは嬉しいぞ!」

リンク「あはははは、なんでクッパが偉そうにするのさー」

ピーチ「あんまり油断しないようにねっ!3強さんたちっ!」


ルイージ「…………それにしてもロゼッタ、妙にたかぁく飛び上がるなあ……
    というより、厳密には浮かび上がってるのか、魔法で。

    …あれ?両手を天に掲げた。何する気だろ」

ヨッシー「言われてみれば…」

デイジー「…………」

283Mii:2021/06/30(水) 06:52:56 ID:bzZ4v6Ks







デイジー「…………あっれぇ?







    ――――そもそも私、『メテオ』って単語の説明、ロゼッタにしたっけ…?

    ヒルダ、覚えてる?」クルッ

ヒルダ「Chiko Meteor《キラキラ落とし》は使っていました、けど。
   今はチコたちもいない、で、す、し――――――――」

デイジー「いや、そもそもメテオって別に流星系の技を意味する訳でもないし… 
    空中にいる状態の敵を奈落に叩き落とす攻撃のことでだね…

    …………ヒルダ?どうかしたの?急に呆然として」

ヒルダ「」

デイジー「ロゼッタがどうかし――――――――」

284Mii:2021/06/30(水) 06:56:21 ID:bzZ4v6Ks
…………本当は、最悪、太陽のヒトカケラでも、よかった。
その場合、投げ飛ばす威力が、ちょっと心もとなかった。
でも、おあつらえ向きなものを、奇跡的に、見つけられた。



一瞬で、FPが枯渇。



事を為したとき、激痛と共に、ナニカが終わった。



ロゼッタ「――――ひ、ふ――――――――」ビリッ



全身がマヒし、魔法回路が沸騰し、思考が止まってしまいそうな感覚。
HPと、FPと、もしかしたら生命力、と。沢山のものを、削り落とされた。

視界は急激に狭く。そして、喪失感。
右目が「あった」ところから、滝のような出血。
ああ、もう、頬を伝って…心地悪い、なあ。



全てを投げ打った代償で――――右目が、完全に、お役目を果たし終えました。
これは、もう。二度と、復活してくれないん、でしょう。
相変わらず激痛には慣れないけれど――――後悔は、ない。

285Mii:2021/06/30(水) 07:00:05 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…………元気玉?」

マリオ「…………デッカクドッカン?」

クッパ「…………大王星?」

リンク「…………月落とし?」



それは、遥か、遥か、遥か先を通りかかった、宇宙からの贈り物。
届け、届けと全てのFPを右目に注ぎ込み、見つけて、選んで、切り取った。



やや低空に浮かぶタブーを、FPの赤い衣をつい先ほどまで纏い、
血涙流しながら斜め上から見下ろす、私。





そして、天に掲げる私の掌、その少し上空に――――現れたるは。





突然の召喚に、外周の有機物や金属の化学反応が引き起こされたか、
地獄の業火のごとく激しく外周から火を噴く、大きな、大きな球体――――名付けて、そう。

286Mii:2021/06/30(水) 07:02:54 ID:bzZ4v6Ks



ファイアロゼッタ「――――――――――――――――――――――――









        ――――Trans-Meteor《 転 移 彗 星 》――――――――!!」パアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!





マリオ「」

クッパ「」

リンク「」

デイジー「モノホンの彗星繰り出しちゃったんですけどぉ――――!?」

287Mii:2021/06/30(水) 07:05:38 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「……あれ、ヤバくね?直径30…いや50メートルはあるんじゃね?」

クッパ「ま、まあ彗星にしては小さい方だろ、たぶん」

リンク「」

デイジー「って、ロゼッタったら右目から大量出血してるんだけど!?
    あれ、やばくない!?すっごく無茶苦茶やばくない!!?
    おまけになんか、禁断症状が出たみたいに不気味に笑ってるんだけど!

    リンク、アンタが簡単にそそのかすからこんなことにぃ――――!!?」

リンク「」

ピーチ「ま、まさかあれを、えいって投げ下ろす、つもり…………!?」



ファイアロゼッタ「…………」

ファイアロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………」ティウン ティウン ティウン

ロゼッタ「」フラァ



「「「「「「「「落ちたぁ――――――――!?」」」」」」」」

288Mii:2021/06/30(水) 07:09:04 ID:bzZ4v6Ks





デイジー「――――――――ロゼッタァ――――――――ッ!」ダダダダッ!





思わず、体が、動いてた。
周りのみんなが、マリオですら、ビックリするあまり咄嗟に動けずに。
リンクも、ショット系のアイテム、とっとと使ってくれたらよかったのに。

ドデカい彗星…いや隕石見て、全員既に、真下から避難済。
逆に言うと、ロゼッタを受け止められる人がいない。
このままじゃロゼッタが…奈落に、落ちる。

残機制度が、働いていない、まま。すなわち、死ぬ。

――――そんなの、絶対、駄目!!



…ただ失敗したのが、私が飛び出したタイミングも、ぶっちゃけ…遅すぎた。
ロゼッタを抱え込むようにして飛びついたまではよかったけれど、
残念、既にフィールドの最下層よりも下にいる。運動方向も下向き。

ぎゅっと抱きしめ、空を仰いだ。上空には、フィールド全体を覆わんとする、天体が、控えてる。

289Mii:2021/06/30(水) 07:11:16 ID:bzZ4v6Ks
…………仕方ない、か。



――――気絶している…ロゼッタだけでも、助けよう。
――――大事な、大事な、親友なんだもの。
――――思いっきり上に向かってぶん投げれば、大丈夫。
――――反動で、私は死んじゃうけど。…まあ、まだマシだよね。



――――さよなら。



デイジー「いっ、せー、のー…………」

もう悟りを開いて、投げようとしているときに。



ゼルダ「せい、やあああああああぁぁ――――――――っ!!」ブンッ!!

ゼルダが、私たちめがけて…何か、下に投げ下ろしてきたっ!?





…………いつぞやの、額縁っ!!

290Mii:2021/06/30(水) 07:14:58 ID:bzZ4v6Ks
勢いよく投げ出されたそれは、たちまち、落下する私たちを追い越して…!



ロゼッタ(分身)「まに、あいまし、たっ!!」ポンッ!!

デイジー「…………うぇっ――――」

ロゼッタ(分身)「デイジー姫。

        本体のこと、頼みましたよっ!!」

デイジー「…え、その腕、『T―ホールド』…ま、まさか――――!」



ロゼッタ(分身)「――――――――――――――――

         フロルの、風ぇ――――――――っ!!!!」パアアアアアアア!!

ブオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

デイジー「う、わぁ――――――――」ブワッ

覚悟を決めていた私ごと、ロゼッタ本人は、一転してグングン上昇し――――

デイジー「あぁっ――――――――」

分身体のロゼッタが、代わりに、奈落に吸い込まれて行った。

291Mii:2021/06/30(水) 07:18:40 ID:bzZ4v6Ks
悲しむ間もなく飛ばされた先は、フィールドの隅っこ。
受け身を取れなかったけれど、大した痛みじゃあない。
…あ。というより、誰も彼もファイターたちは中央から離脱してる。

中央に存在するのは、未だ満足に動き出せないタブー、
そして上空に浮いたままのでっかい彗星。

…彗星は、ロゼッタが魔法発動を失敗(?)して、それからどうこうするわけでもなく、
依然、同じ場所に留まり続けている。どうなってるんだろう。



ロゼッタ「――――――――で、い、じーひ、め」



顔をむくりと上げることもなく。単に、口を小さく動かすだけだけど。
片目は酷いありさま、もう片目も閉じたままだけど。
ロゼッタが、かすれる声で、生きている証を示してくれた。

デイジー「…ロ、ロゼッタ!大丈夫!?よくやったよ!
    すぐに病院に連れて行って…いや、ピーチに回復して――――」

ロゼッタ「――――――――た、ぶー、の。ま、わり、に。
    だ、れも。ふぁい、たー、いま、せん…………か?」

デイジー「…い、いない、けど?みんな、ロゼッタの最終兵器にビビッて
    離脱しちゃってるよ。そ、それがどうかした?」

ロゼッタ「……………………ありがとう、ござい、ます」フッ

292Mii:2021/06/30(水) 07:21:00 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「…………ちょ、そういう穏やかな笑みは不吉だからやめてほしいんだけどっ!切実にっ!
    お願いだからさぁっ――――――――死なないでよロゼッタ――」アセアセ

ロゼッタ「…………」スゥ・・・

























ロゼッタ「―――――――― り す た ー と 」ボソッ

293Mii:2021/06/30(水) 07:22:07 ID:bzZ4v6Ks
マリオ「え――――」

ドンキーコング「うほ――――」

リンク「な――――」

サムス「あ――――」

ヨッシー「へ――――」

カービィ「ぽ――――」

フォックス「は――――」

ピカチュウ「チュ――――」

ルイージ「う――――」

ファルコン「む――――」

ピーチ「や――――」

クッパ「げ――――」

ゼルダ「ひ――――」

マルス「ぐ――――」

メタナイト「ば――――」

294Mii:2021/06/30(水) 07:23:10 ID:bzZ4v6Ks
ピット「うぇ――――」

アイク「ぬ――――」

リザードン「グォ――――」

ディディーコング「キ――――」

デデデ「ぎ――――」

オリマー「ん――――」

ルカリオ「が――――」

トゥーンリンク「ひょ――――」

トゥーンゼルダ「ひゃ――――」

むらびと「にゃ――――」

Wii Fit トレーナー「と――――」

リトル・マック「ぶ――――」

ゲッコウガ「フ――――」

パルテナ「ふぇ――――」

ルフレ「わ――――」

295Mii:2021/06/30(水) 07:25:13 ID:bzZ4v6Ks
ルキナ「く――――」

シュルク「の――――」

ソニック「ぜ――――」

ロックマン「て――――」

パックマン「ざ――――」

ファルコ「ちょ――――」

ワリオ「び――――」

ブラックピット「で――――」

ロボット「W――――」

クッパJr.「り――――」

Mr.ゲーム&ウォッチ「ヲ――――」

ダックハント「ガル――――」

プリン「ぷ――――」




――――――――――――――カッ!!!!!!!!!!!!!!

296Mii:2021/06/30(水) 07:27:57 ID:bzZ4v6Ks

















――――K.O.!!!!!



《ロゼッタ、タブーを撃破! タブー完全消滅! タブー軍、著しくやる気低下!!》





ラナ「」

シア「」

297Mii:2021/06/30(水) 07:31:45 ID:bzZ4v6Ks
〜王国第一ラジオ塔〜

ネス「イテテテ…ダレダ姫に休んどけとは言われたけど。
  みんな中央に集まってるだろうに、自分たちだけ呑気に休んでるなんて。
  なんだかストレスたまるなあ…。

  …よしっ!やっぱり助太刀しに行こう!リュカたちは休ませておくけどね、とーぜん!
  1人でもファイターは多い方がいいでしょ!
  もう、終戦迎えているかもしれないけど、それはそれでいいことだし!よし行くぞー!!」



ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァ―――――――――ン!!!!



ネス「ひぃっ!ごめんなさいごめんなさい!調子こきました!!じっとしてますっ!
   …って、そうじゃなくて。何事だあ――――――――っ!?」

ネス「…………」キョロ キョロ





ネス「……………………あれ、中央会場の方、だよね」

ネス「…………」

ネス「試合会場らしき箇所にでっかい火柱立ってるぅ!?」

298Mii:2021/06/30(水) 07:35:17 ID:bzZ4v6Ks
ピーチ「…………」

ピーチ「…………うーん」パチッ



なにやら、大きく吹き飛ばされて、観客席にまで叩きつけられていた、みたい。
あら嫌だ、観客のみなさんに囲まれて。こんな気絶姿晒して、恥ずかしい。

…………あれ?
絶対に注目の的になると思ったのに、観客たちが見つめる先が、私じゃない。
フィールドを、こわばった表情で見つめている。
一体どうしたというのかしら。そ、そういえばタブーはどうなって――――
というか、なんだか無性に暑いんだけ、ど――――



ピーチ「」



炎、炎、炎。
一面、炎。太陽の表面を観察してるみたい。



ピーチ「」

――――フィールドが、影も形も無い!?
――――代わりに、灼熱のマグマで埋め尽くされてるっ!?

299Mii:2021/06/30(水) 07:38:46 ID:bzZ4v6Ks
キノピオ「ひひひひひひひひひひひひひひひひひひ姫様ぁっ!!
    タブーの消滅を残機記録よりおおよそ確実視できましたっ!
    でも、今はそんなことよりっ!

    フィールドからの火炎地獄だけで観客席のバリアが壊れ出していますっ!
    避難させようにも、大混乱させそうで二の足を踏んでおりまして…!
    我々だけではどうすることもっ!お願いします姫様、指揮を願いますっ!!」ダダダダッ!

ピーチ「わかった!わかったわよっ!もう!最後のひと踏ん張りねっ!!」



デイジー「ロゼッタッ!ロゼッタッ!目を覚ましてっ!」

ロゼッタ「――――は、い」パチッ

デイジー「ロゼッタァ・・・・・」ボロボロ

ロゼッタ「たぶー、は。たおすことが、でき、ました、か?」

デイジー「もちろん!さすがロゼッタ!凄かったよ!
    あんまり何が起きたか分かってないけどっ!目が覚めたら火の海だったからっ!」

ロゼッタ「ああ、よか―――った――――」ガクッ

デイジー「――――ロゼッタ?」

デイジー「――――ロゼッタ?ね、え。じょうだん、でしょ?」

デイジー「ロゼッタアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!!」

300Mii:2021/06/30(水) 07:40:28 ID:bzZ4v6Ks
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〜翌日 AM 5:00〜



Dr.マリオ「…………」

デイジー「…………たすかる、よね?もちろん、たすかった、よね?」

Dr.マリオ「…………」

デイジー「なんとか言ってよ、マリオ!」

Dr.マリオ「…………手は、尽くした」

デイジー「な、なら――――」

Dr.マリオ「…だが。医学でも、1UPキノコでも、回復魔法でも。
     限界と言うものは、あるんだ。わかってくれ」

デイジー「……………………っ!!!!」

Dr.マリオ「――――ロゼッタは、もう――――」

301Mii:2021/06/30(水) 07:43:06 ID:bzZ4v6Ks
デイジー「そんな、嘘!でたらめ!何とかしなさいよ!医者でしょ!」

ピーチ「デイジー…無茶を言わないで頂戴。
   マリオは、寝る間も惜しんで――――必死に、全力尽くして頑張ってくれたわ」ポンッ

デイジー「そん、な、あ――――」ボロボロボロボロ

ピーチ「そういうわけで――――残念だけど―――――――――

















   ロゼッタ、貴方は早めに義眼手術受けてね。手配しとくから」

ロゼッタ「はい…………」ションボリ

デイジー「生きとんのかああぁぁぁ―――――――――い!!!!」

302Mii:2021/06/30(水) 07:48:11 ID:bzZ4v6Ks
Dr.マリオ「当たり前だろ。医者なめんな」

ピーチ「ロゼッタほどじゃないけど、回復魔法なめないで」

ロゼッタ「おかげで右目以外はピンピンしてます…」



一応、ベッドの上で安静にはしていますが…。念のため、というやつで。



デイジー「ありがとうね2人とも!なんかムカつくけどっ!!」

パルテナ「まったくもう!酷使にもほどがありますっ!
    せっかく奇跡のチカラを授けてあげたのに、さっそく駄目にするなんて!」クドクド

パルテナさんが大層おかんむり。
それはそうでしょう、彼女の多大なるご厚意をふいにしてしまったのですから。
軽率な行動をとった私は怒られて然るべきです。

ロゼッタ「大変申し訳ございません…
    あ、あの。もう一度、奇跡を掛けてくれるわけには、いきませんか…?」

パルテナ「はぁ!?奇跡を舐めているのですか!奇跡というのはですね!
    2度は起こらないから奇跡と呼ぶのですよ!!

    残念ながら、あなたの右目の復活は、もはや私にも…不可能です!」

ピット(…初耳です)

303Mii:2021/06/30(水) 07:52:32 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「ひっ…ごめんなさいごめんなさい…!
    で、でも、このままでは…ほうき星に襲い来る隕石を防ぐことすら…!
    ほうき星の管理主として、どうにか、しないと…………!!
    
    あれ?そういえば、右目を失ったにしては、FP暴走が起きていない、ような」



前の時は、呼吸をするのも辛いというありさまだったのに。



パルテナ「ピーチ姫から、貴方の魔法使いとしての素質、重要性は散々説かれましたから。
    仕方がないので―――――――――







    代わりに別の奇跡で、左目を魔法回路の心臓部にしておきました」

ロゼッタ「わぁい!」



デイジー「ご都合主義バンザイ」

ピット「まるで奇跡のバーゲンセール」

304Mii:2021/06/30(水) 07:55:35 ID:bzZ4v6Ks
パルテナさんから、魔法回路の心臓部が切り替わったことによる弊害――――

適応まである程度の期間を要すること、
日常生活を義眼でこなす気がないのならば左目の負担が大きくなってしまうこと、
義眼と魔眼とのバランスは少々取りにくいことなどを懇切丁寧に説明されました。

…これから大変そうですが、そのくらいの困難、へっちゃらです!



ピーチ「落ち着いたところで、念のため聞いておくけど。
   …ロゼッタ、結局あなたはタブーをどうやって倒したの?
   時間差であの彗星がタブーに飛んで行くように術式を仕込んでいたのかしら?」

デイジー「すっごい魔法だったよね。
    タブーを倒すところ、全く見えなかったもん。
    どれだけ魔法を重ね掛けしてたのさ」







ロゼッタ「…え?」

ピーチ「…え?」

デイジー「…え?」

305Mii:2021/06/30(水) 08:01:11 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「…えっと。勘違いされているようですが。
    私、最後の最後で、魔法を発動させたわけじゃありませんよ?

    最後の最後で『魔法を破棄した』んです」



…なるほど。傍から見ると、確かに。
魔法を使って一気に彗星を動かして、どうにかしたように見えた訳ですね。



デイジー「魔法を…破棄した?」

ロゼッタ「はい。まわりに誰もいなくなったタイミングを見計らって。

    別にあれは、彗星を具現化する魔法ではありません。
    もちろん、彗星を勢いよく放出する魔法でもありません。
    単に、離れたところの彗星を持ってくるだけの魔法です。

    すごーく遠くの彗星を持ってくるためだけに、ほぼ全ての、大量のFPが消費されました」

ピーチ「…………じゃ、じゃあ。彗星は、単に魔法の束縛から解かれて自由落下しただけってこと?
   それにしては、方向もまるで違うし、威力がとんでもなかったような――」

ロゼッタ「私からタブーへの向きに、進行方向が被る彗星がちょうど見つかったもので」



ピーチ「…進行方向?」

306Mii:2021/06/30(水) 08:05:02 ID:bzZ4v6Ks
ロゼッタ「はい。そんなわけで、あの彗星――――――――





     地球から見た相対速度で、秒速50〜100kmほど出ていたと思います」

Dr.マリオ「」

ピーチ「」

パルテナ「」

ピット「」

ロゼッタ「タブーを叩き潰しつつ、残機を失う『特異面』に衝突した時、大爆発して…
    それはそれは膨大なエネルギーを放出したかと」

デイジー「ソレデ フィールドゴト ブットンダノカー」

ピーチ「…………頭いたい」フラッ

ロゼッタ「え?だ、大丈夫ですか?」

ピーチ「貴方のせいよ!!」

お見舞いの(用意が早い)フルーツ籠をポイッと投げつけられました。
おっとと、我ながらナイスキャッチ。
病人(ということになっている)に対して酷いですよ、まったく。

307Mii:2021/06/30(水) 08:10:28 ID:bzZ4v6Ks
あれから、どうなったのかというと。ピーチ姫談。



タブーを倒し切り、正直な所、消化試合になったそうで。
ファイターたちは取って返して城下の完全制圧に向かいました。
統率が乱れに乱れた敵さんたちは、簡単に撃破され、
ものの2時間程度で1体たりとも生き延びなかったそうです。

そのあたりでようやく、試合会場観客席の情報統制解除。
危険と隣り合わせであったことに愚痴をこぼす声、罵る声が皆無とはいいませんが、
大多数の方は嘘も方便と賛同してくれたとのことで。皆さんおおらかです。



…ただ、とにかく。物的被害は甚大。
城下の8割が、何らかの被害を被ったとまで推測されるとか。
人的被害も凄まじく、各病院はひっきりなしの対応に追われました。
骨折くらいなら軽いほうで、生死を彷徨った方や、石化の後遺症が残り掛けた方。

とにかくピーチ姫が深夜病棟の数々を巡り、孤軍奮闘して、
疲労のあまり失神したほどの状況だったとのこと。
今もなお無理をしている真っ最中だったりします。目にクマができています。

それでも、命を失った者がゼロであったことは不幸中の幸いです。
…私も。不謹慎ながら、肩の荷が下りました。

誰か一人でも亡くなっていたら…と思うと。
やっぱり立ち直れなかった気がします。
…こんなことを考えるなんて心が狭いですね、私…。

308Mii:2021/06/30(水) 08:15:11 ID:bzZ4v6Ks
驚愕したのが、「残り2日のスマブラ大会日程、しっかり行う」との
お触れを出したということ。…え、正気…ですか?

国庫から緊急で予算を吐き出させ、警備面を一層強化。
更に、治療費・滞在費・交易費・観光費…あらゆるお金の流れに湯水のごとく補助を付け、
「一部贅沢品以外は満喫し放題」状態に持って行ってしまいました…!
このくらいでキノコ王国の財政はびくともしないとのことです。

これを、街の修復と同時並行で指示しているというのだから凄まじい。
…もちろん、完全修復には、大会閉幕までではとても間に合いません。
それでも、キノコ王国がタブーに屈していないことを少しでも示すため、あえて修復現場を公開。
なんでも、遅い時間帯にもかかわらず人気が出ているそうです。
キノピオたちが、物量作戦で、可能な限りの勢いで建物をリフォーム中。



ピーチ「なかば、やけっぱちだけどね。
   『スマブラ大会に行って損をした、行くんじゃなかった』だなんて
   感想で締めくくられるのは癪なのよ。タブーに負けたも同然なのよ。

   『なんだかんだ楽しかったな』って思ってもらわないと…
   キノコ王国の名折れ。絶対に皆さんに満足してもらうんだからっ!!」



「120時間働けます!」と書かれた栄養剤片手に、
クマを作ったピーチ姫が叫んでいたのが凄く印象的でした。…はい。
寿命が1年は縮んでいそうです。

…マリオいわく、任天堂があるかぎり寿命は尽きないそうです。私含めて。考えるのはやめましょう。

309Mii:2021/07/02(金) 23:39:26 ID:/0g3pETI
コンコン!



ロゼッタ「…あ、誰かお見舞いに来てくれたみたいですね。
    ――――どうぞ、お入り下さいませ」



ガチャッ!!



リンク(半裸)「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」ジャンピング ドゲザ

ロゼッタ「きゃああああああああああああぁぁぁぁ――――!?」



リンク「ホントごめん!マジでごめん!
   俺が迂闊なこと言ったばっかりに、ロゼッタにとんでもないケガをさせて!
   取り返しがつかないことになっちゃって…すいませんでした!

   自分への罰として、次の伝説に飛ばされることがあったら
   俺、半裸縛りで冒険するよ!!」ドゲザ

ロゼッタ「服をっ!服を着て来てくたさいっ!!!」

ピーチ「まさかリンクが大会最中に露出狂としてお縄に付くなんて…」

310Mii:2021/07/02(金) 23:42:39 ID:/0g3pETI
ラナ「まあまあ、ロゼッタさん。リンクも精一杯の反省を示したいんだよ。
  ここはひとつ、真面目に応対してあげるってのはどう?

  …お初にお目に掛かります、魔女のラナでーす!魔女繋がりで仲良くしようよ!」ヒョコッ

シア「…この律義さ、不器用ながらの誠意の見せ方もリンクの長所なの。
  貴方にも、そのあたり分かるでしょう?

  …初めまして、シアよ。覚えたければ好きにするといいわ」ヒョコッ

ロゼッタ「た、確かに、そうですね…………









    ――――と、すんなり頷いていたところですよ。
    シアさんがカメラを構えてさえいなければ…………」

ラナ「ななな、なんのことかなぁ!?」ギックゥ

シア「…………」スッ



ドン引きです。魔女同盟みたいな言葉で括られることにすごく抵抗があります。

311Mii:2021/07/02(金) 23:45:08 ID:/0g3pETI
リンク「とにかくさ!何か、償いか罪滅ぼしか、させてくれ!」バッ!

ロゼッタ「べ、別に気にしてませんよ……大げさな…………」



というより、最終的に早合点&無茶をしたのは私の判断ですし。
…もっとスマブラについて学んでおくべきでした。



Dr.マリオ「はい、はい。露出狂は追い出すぞー」

リンク「からかうなよ、マリオ…!俺は至って真剣で…」

Dr.マリオ「…あー。実はだな。どのみちリンクは追い出さなきゃならん。
    勿論ピットも。最終的には俺もだな。…ロゼッタの名誉のために」

リンク「…そーなの?名誉って?」

Dr.マリオ「女性が弱り切っているところを見るのは失礼だろ?
     まだ峠を越えてないんだよ」

ロゼッタ「…………初耳なんですけど?」

Dr.マリオ「…すまん、ショックを受けると思って伝えてなかった」

…そ、そうは言っても。
とりあえず危機は脱して…特に容体が急変するとも思えないのですが…。
まだ、もがき苦しむことがある、と?……はは、まさか――――

312Mii:2021/07/02(金) 23:54:47 ID:/0g3pETI
…得てして、口に出した途端、考えた途端に、事態が動くことって、割とありますよね。



ドクンッ!



ロゼッタ「…あ、れ?なんだか、急に、力が、抜けて…………」ゾワッ



Dr.マリオ「やばい!もう襲ってきたか…!リンク、ピット!――すぐにここから出ろ!早く!」

デイジー「……始まって、しまった…のね!」

深刻な表情の…マリオに、デイジー姫が。より一層不安を駆り立てます。



リンク「お、おう!わかった!一応聞いとくが…大丈夫なんだよな!」

ピット「じゃ、じゃあ僕もお暇するねー!」

2人に釣られて、ラナさん、シアさん、パルテナさんも退出していきます…が。
そんなことに気を取られている場合ではありません。



ロゼッタ「――――――――――――――から、だ、が――――」バタッ

313Mii:2021/07/03(土) 00:02:14 ID:jHb9NQS.
ヒルダ「急がないと、急がないと…」タッ タッ タッ

大事な親友のために、廊下は走るな…という警告をほんのちょっぴり無視して、
速足で移動、移動、移動。…あ、教えてもらった病室が見えてきました!

思い出はたくさん作りました。でも、そろそろお別れの時のようです。
悔いを残さないよう、しっかり挨拶しておかないと!

…こう、いざ会ってみたら泣いちゃったりするんでしょうか、私。
なけなしの涙腺に期待します。もちろん、ゆる…むように。



一旦停止して、扉の前で深呼吸。
ガチャッと、勢いよく扉を開けます!

ヒルダ「ロゼッタ!最後のご挨拶に参りました――――」ギイィ







ロゼッタ「…………」

ヒルダ「…………え」

ロゼッタ「…やる気でなーい……………………」グデー

314Mii:2021/07/03(土) 00:05:28 ID:jHb9NQS.
ロゼッタ「…………あー、ヒルダ姫じゃあ、ないですかー」グデー

ヒルダ「…………ロ、ロゼッタ?」

ロゼッタ「あ、ちょうどいいですー。
    そこのリンゴ、ちょっと取って頂けますかー?そう、それー」

ヒルダ「…………?は、はい。どうぞ…?」

ロゼッタ「ありがとうございますー」



ロゼッタ「…………」ゴシッ ゴシッ





ぱくっ





ロゼッタ「ん――、美味れす」シャクッ シャクッ

ピーチ「ベッドの上で果汁垂らしつつ丸かじりしないでぇ!!」バシッ

ヒルダ「」

315Mii:2021/07/03(土) 00:08:12 ID:jHb9NQS.
Dr.マリオ「説明しよう。今のロゼッタは、
     『覚醒状態』の反動がやってきて、やる気が激減している。

     特に初回である今回は、それはそれはやる気が空っぽで、
     何をするにもグウタラのものぐさになるのだ」

デイジー「うっわー、なっつかしー…
    あのロゼッタの変貌ぶりから予感がして、スタンバイしといてよかったね…。

    他人から見ると、こんな感じなんだ…………
    人のふり見てなんとやら、だね…」

ピーチ「うわぁ…これは男性陣には見せられないわ…
   正直マリオにも見てもらいたくないわ…」

Dr.マリオ「そう言われるとは思ったが、デイジーの症例を知っていると
    いろいろと解読出来て便利だからな…大目に見てくれるとありがたい」



ロゼッタ「…………喉が渇きましたぁ」

ピーチ「あ、そこのボタンを押せばお水が入ったコップが用意されて――――」

ロゼッタ「…………むー」

Dr.マリオ「『何か美味しい飲み物を買ってきて』だって」

ピーチ「」

316Mii:2021/07/03(土) 00:10:50 ID:jHb9NQS.
デイジー「しょうがないなあ。何が飲みたい?買ってくるよ」

ロゼッタ「…………はぁ」

Dr.マリオ「『そのくらい考えて上手く選んでください。面倒です』だって」

デイジー「お、おっけー。やれるだけやってみる!」

ロゼッタ「なんだったら全種類買ってきてくれてもいいですよー」

デイジー「あ、その方が楽だからそっちにしよう!」ダダダッ!

ヒルダ「」



デイジー「…お待たせぇ!抱えるほどドッサリ買ってきた!お金なら要らないよ!
    はい、好きなだけ飲んじゃって!余ったのはこっちで飲むから!」ズイッ

ロゼッタ「…………これを」

デイジー「ああ、そのオレンジジュースね!いいよー」

ロゼッタ「…………ん」ツキカエシ

デイジー「…………??やっぱり要らないの?別のにする?」

Dr.マリオ「『開けてほしい』だって」

デイジー「お、おう」プシュッ

317Mii:2021/07/03(土) 00:15:40 ID:jHb9NQS.
ロゼッタ「――――」ゴクッ ゴクッ

ロゼッタ「ぷはぁ」

ロゼッタ「…なんだか疲れました、体が重くてー。ずっとこうして寝ていたいですー」

Dr.マリオ「『肩でも揉んでほしいです』だって」

デイジー「まあ、そのくらいなら………」モミモミ

ロゼッタ「中々気持ちいいです――――」

デイジー「そりゃあ、よかった!」

ピーチ「マリオ、流石ね…よく解読できるわね」

ロゼッタ「…………そろそろお手洗いに行きたいです」チラッ

ピーチ「…あ、ごめん。邪魔だったわね、どくわ」

Dr.マリオ「……………………一応、セクハラじゃないぞと前置きしたうえで」



Dr.マリオ「『トイレまで運んでくれないとここで漏らします』だぞ」

デイジー「そういやそうだったああああああぁぁぁぁぁ!!!」ガシィッ ダダダダッ!

ピーチ「ものぐさにも程があるでしょう!!!!
   というよりデイジー、ちょっと後で話があるんだけどっ!!!!!!」

318Mii:2021/07/03(土) 00:20:50 ID:jHb9NQS.
デイジー「…任務、完了いたしましたーっと」

ロゼッタ「どうもです、デイジー姫ー。
    …あ、そういえば。ヒルダ姫、何か御用ですかー?」

ヒルダ「やっと聴いてくれましたね、まったく…コホン。
   呆気に取られて切り出せなかった私も私ですが。
  
   実は。そろそろ、わたくし、ロウラルに帰ろうかと思います。
   あと2日くらい滞在して大会を見届けたい気持ちもあるのですが、
   やはり故郷が気になってきて仕方がなくて…。それで、最後のご挨拶にと」

ロゼッタ「……………そう、ですかー」

ヒルダ「ええ、名残惜しいですが――――」

ロゼッタ「ちゃんと故郷の皆さんにー、お土産は買ってあげてくださいねー」

ヒルダ「」ガクッ

デイジー「ヒルダ、怒らないで怒らないで。
    今のロゼッタはこういう反応しかできないから」

ヒルダ「…わかっています」ハァ・・・



ヒルダ「それでは、また。
   皆さん、本当にお世話になりました」ペコリ

319Mii:2021/07/03(土) 00:23:49 ID:jHb9NQS.
ピーチ「こちらこそ。またいつでも遊びに来て頂戴ね」

ヒルダ「…………はいっ!」



ガチャッ バタン・・・・・・



ロゼッタ「…………ふわぁ…………」

ピーチ「マリオがいるんだから、そんなに無防備に欠伸しないでよ…」

ロゼッタ「…………」ウツラ ウツラ

ピーチ「…正直、ロゼッタに早くいつも通りになってほしいんだけど。
   回復魔法使ってくれたら大助かりだし」

Dr.マリオ「…んなこと言われてもな。デイジーの例だと、
    まる1日はこんな感じだぞ。相当興味を惹かれるイベントでもない限り」

ピーチ「興味、興味、ねえ…………よし!じゃあ、こうしましょう。

   ロゼッタ!手配を早めるから、朝の9時からでも…
   とっとと医療センターに義眼を選びに行ってちょうだい!」



ロゼッタ「…………!」ピクッ!

320Mii:2021/07/03(土) 00:30:50 ID:jHb9NQS.
デイジー「選ぶって?バリエーションがあったりするの?
    一番性能のいいやつを、患者に合う大きさに調整するだけでしょ?」

ピーチ「そんなわけないでしょ?キノコ王国の技術力、あいかわらず凄いんだから。
   最新技術を駆使して、CGシミュレーションも行って、医師と相談しながら……、
   何百万通りものカラーから好きな色を選択できるの。自由度が凄まじいわ。

   もとの色に拘るもよし、気になる色におしゃれ感覚で変えるもよし。
   ロゼッタなら結構時間を潰せると思うけれど」

ロゼッタ「義眼っ!!朝一番に向かえるというのならぜひ!」バンッ!

ピーチ(食いついた!)

ピーチ「選び終えたら、ものの1時間で手術は終了するわ。
   なんなら、ロゼッタほどの回復魔法を使えば、自分でも手術できるかもね。
   こう、グイッとはめ込んで即回復、みたいな」

デイジー「そんなおもちゃの部品みたいな言い方はどうかと思うっす」

ピーチ「まあともかく。デイジー、ロゼッタの付き添いをしてあげてくれる?」

デイジー「ロゼッタ、やる気が底を尽きやすいこと以外はおおよそ健康なんだよね。
    喜んで!まかせといてよ!よーし、7時には出発するぞー!」

ロゼッタ「はい!なんでしたら今から外に向かいましょう!」

デイジー「…せめて病人服は着替えようね。今絶対、横着しようとしたでしょ」

ロゼッタ「…………」ギックゥ

321Mii:2021/07/03(土) 00:35:51 ID:jHb9NQS.
〜船場までの街道〜

ヒルダ「わざわざ見送りに加えて案内までしていただいて…ありがとうございます」

ゼルダ「ふん。わざわざ、中途半端なタイミングで帰郷しなくてもよろしいでしょうに。
   今度会ったら、どれだけ決勝が盛り上がったかを語って悔しがらせてあげますよ。
   …大会終了後に、祝賀会も開催されるというのに」

ラヴィオ「デイジー姫にちらっと伺ったのですが…大会最終日が明日の12月6日、
    祝賀会は12月7日から12月13日までの丸々1週間でしたか。
    主にファイター達だけで集まって、割と無礼講で…
    食べては飲んでは、1週間思いっきりどんちゃん騒ぎするんでしたっけ」

ゼルダ「…やたらデイジーの趣向に偏った説明のされ方ですね。彼女らしい」

ラヴィオ「それにしても…わかりやすいツンデレ具合」

ゼルダ「何か仰いまして?」

ラヴィオ「い、いえ何も!!」

ヒルダ「…ふふ。私も、ゼルダ姫と…気軽に会えるような環境に、間柄に、
   なれたらいいなと思いますよ。…おっと、間柄についてはもう十分ですよね。
   今まで本当にありがとうございました」

ゼルダ「…………手紙の一つでも出してくださいよ。リンクに運ばせますから」

ヒルダ「あ、だったら私もラヴィオに運ばせましょうか。交流できていいですね」

ラヴィオ「…ははっ!なんだかお二人を見てると、こっちまで嬉しく、楽しくなってきますよ」

322Mii:2021/07/03(土) 00:39:51 ID:jHb9NQS.
ヒルダ「ふふ。…ねえラヴィオ、帰ったら…話したいことがいっぱいあるのです。
   私、守られてばかりだったけれど、この大会の中で…………
   ずっと、ずっと、ずうっと、強くなったんですよ。まだまだ弱いですけれど。

   これからも、一緒にロウラルを良くしていきましょうね!」

ラヴィオ「ええ、私からお願いしたいくらいですよ!改めて…貴方が主で、よかったです!」

ゼルダ「…はあ。そうこう言っているうちに、ほら。
   ハイラル・ロウラルに向かうための船場が見えて来て――――」



「ストーップ!」



ゼルダ「…?」

ナンシー「きちゃ、ダメっ!!!!!!!!
    さっき、ダレかがぶつかってきたときに、コンタクトレンズをおとしちゃったんだよ!
    いま、さがしているところなんだから、動いちゃダメだよ!

    ゼッタイ!動いちゃ!!ダメだからね!!!!!!!!!!!」

ゼルダ「えっ」

ヒルダ「えっ」

ラヴィオ「えっ」

323Mii:2021/07/03(土) 00:41:27 ID:jHb9NQS.
〜1分経過〜

ナンシー「どこだろうね、こっちにもないね…」キョロキョロ

3人「「「…………」」」



〜3分経過〜

ナンシー「ほんと、どこに転がっていったんだろうね、まったく…」キョロキョロ

3人「「「…………」」」







〜10分経過〜

ヒルダ「あ、あの!せめて私たちも探させて――――」

ナンシー「いいから!余計なことしないで!
    あなたたちはただ、そこから一歩も動かずにいてくれたらいいの!!!
    そのかわり、進むのも戻るのも禁止!!!!」キョロキョロ

3人「「「」」」

324Mii:2021/07/03(土) 00:44:16 ID:jHb9NQS.
ラヴィオ「ヒルダ様、いくらなんでも埒があきません。待ちぼうけは止めましょう」ヒソヒソ

ヒルダ「さ、策があるのですか!」ヒソヒソ

ラヴィオ「深く考えることはなかったんですよ。…行儀は悪いかも、ですが。
    ヒルダ様、うんと強くなった…と仰ってましたよね。

    …ここから、ほぼ真上の、家の屋根まで…ジャンプで届きますか?
    そのまま屋根伝いに進めばいいんですよ」ヒソヒソ

ヒルダ「…あ、そういうことですか!
   …この高さと距離なら…ええ、なんとかなりそうです」ヒソヒソ

ゼルダ「もちろん私は大丈夫ですよ、考えましたね」ヒソヒソ

ラヴィオ「それじゃあ、行きますよ…せーの!」ピョンッ!

ゼルダ「それっ!」ピョンッ!

ヒルダ「えいっ!これで――――」ピョンッ!





ピシッ・・・  ピシッ・・・

ゼルダ「」

ヒルダ「」

325Mii:2021/07/03(土) 00:47:14 ID:jHb9NQS.
ナンシー「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
    ふんだね!!コンタクトレンズ!!!
    あんなに動いちゃダメっていったのに!!!!!」

ゼルダ「どうしてこんなところに落としたんですか!?」

ヒルダ「むしろ上って来てるんですけど!?」

ナンシー「アンタたちのせいだからね!べんしょうしてよ!!
    コンタクトレンズ!!!べ・ん・しょ・う!」

ヒルダ「えっと、あの、その」

ナンシー「アンタたちがそのつもりならアタシにもかんがえがあるよ。
    アンタたちが代わりのコンタクトレンズを買ってくるまで
    船場に行く道を通らせないんだから!」

ヒルダ「す、すいません!ロウラルに誓って必ず近いうちに弁償しますから、
   今はどうか――――――――」



ナンシー「ディーフェンス!ディーフェンス!」シュバッ!

ラヴィオ「うわあ!?屋根の上まで飛び上がってきた!?
    この人も中々やるみたいですね…!」ビクッ!

ゼルダ「…ここは、私に任せなさい!流石に向こうも…やりすぎです!」

326Mii:2021/07/03(土) 00:51:28 ID:jHb9NQS.
ゼルダ「何処の何方か存じ上げませんが…あまりしつこいと逆に脅迫になりますよ!
   …ああもう、今だけは一旦、押し通りますっ!覚悟なさい!」ダッ!









ナンシー「どすこーい!!!!」ドゴーンッ!

ゼルダ「ぐふぅ」ドゴォ

ゼルダ「」チーン

ヒルダ「ゼルダ姫が負けた!?」

ナンシー「今の私はマリオより強いんだからね!!!!」ムフー!!

ゼルダ「」ガタガタガタガタ



ラヴィオ「…こうなったら!私が囮になります!自信、あまりありませんが!
    私に気を取られている隙をついて…一気に駆け抜けてください!
    もちろん、日をずらして私も帰還しますから!」ヒソヒソ

ヒルダ「…ラヴィオ、申し訳ありません…では、そのように…」

327Mii:2021/07/03(土) 00:58:25 ID:jHb9NQS.
ラヴィオ「おー!我こそは、こちらにおわすロウラルの姫君、ヒルダ様の一の臣!
    中々の実力者とお見受けする!僭越ながらお相手させて頂きます!
    そこまで通したくなければ、いざ、尋常に勝負と行こうではありませんか!」バーン!







ナンシー「あ、どうぞお通り下さい」ササッ

ヒルダ「」

ラヴィオ「私はいいんですか!?通したくないんでしょう!?
     倒してでも止めたいんでしょう!?」

ナンシー「いやいや、まさかー。そんな野蛮な行動になんて出ませんよー。
     私は一介の市民ですしー」

ラヴィオ「…じゃ、じゃあヒルダ様だって別に――――いいですよ、ね?」



ナンシー「何勝手に通ろうとしとるんじゃワレェ!!」カッ

ヒルダ「ひゃああああ!?
   ラヴィオ!別の道!別の道で迂回ですっ!!」タタタッ!

ラヴィオ「ヒルダ様っ!そのまえにゼルダ様を!ゼルダ様を回収しないとっ!」

328Mii:2021/07/03(土) 01:02:18 ID:jHb9NQS.
工事の人「おっと!今はそこは通行止めだ!いつ工事が終わるかは知らん!」


少年「あんた、シショーと戦ったのか?戦ってないだって?
  先に進みたいのならシショーを倒してからにするんだな、案内してやるよ!」


大男「意味もなく通せんぼするぞー!」


キノピオ?「この先のお城は危険だからね!行かない方がいいよ!」


おじさん「こら!電車が来るかもしれないのにトンネルの中に突っ込むな!死にたいのか!」


おばさん「今ちょっと限定品の行列作っててねえ…
     悪いけど、邪魔しないでもらえるかね?割り込むつもりかい?」



ヒルダ「」

ゼルダ「」

ラヴィオ「そのぐらい通してくださいよ!」

おばさん「アンタは別にいいよ」

ラヴィオ「ますます訳が分かりませんよ!?」

329Mii:2021/07/03(土) 01:04:55 ID:jHb9NQS.
〜AM 9:30 医療センター〜

技術者「…はい。検査のほど、お疲れさまでした、ロゼッタ様。
   義眼のサイズ、性能についてはすんなり決定しましたね。全く問題ありません。

   それでは、お待ちかね…性能以外のところのカスタマイズに移りましょうか」

ロゼッタ「はい!待っていました!どんな色合いを選択していこうか、ドキドキが止まりません…!
    目は魔女の『命』ですから!」

デイジー「まさにロゼッタ、『目の色が変わってる』ね。
    その眼帯の下、一体どんな義眼になるのかなぁ?私も楽しみになってきたよ。

    でもロゼッタ、一応忠告しとくけど。
    いつぞやのドレス購入時に興味を失って5分で即断したみたいに、
    途中で飽きて適当な選び方をするのは、駄目だよー?」

ロゼッタ「もちろんですよ!」フンス

デイジー「ははは、本当にわかってるのかなあ」

技術者「それではさっそく。PC画面をご覧ください。
   今から候補をどんどん羅列していきますから、うまく絞っていきましょう。
   色彩の微調整、いくらでもできますからね。なんなりと希望をお伝えください。
   デイジー様のご意見も踏まえて、ロゼッタ様だけの義眼、用意していきましょうね」



CGを使い、手術後の想像図を映し出し。
ああだ、こうだと意見を交わしながら、私の義眼選びが、始まりました――――

330Mii:2021/07/03(土) 01:08:47 ID:jHb9NQS.
〜執務室〜



ドンッ! ドンッ!! ドンッ!!!



ピーチ「やたら煩いノックの音ね…こんな忙しい時に。
   ――――はーい、どなたかしら?」ゲッソリ



ガチャッ!!!

ヒルダ「ピーチ姫!一体これは、どういうことですかっ!!」

ゼルダ「何か仕組んだのですか、とっとと白状してください!!」

ピーチ「…あ、あれ?ヒルダ?帰国の途についたんじゃなかったの?」

ヒルダ「帰国も何もっ!船場に向かおうとするたび、
   ことごとく妨害が入って、一向に船に乗れないんですよ!!
   街の人だったり、観光客だったり、はたまた仕掛けだったり…
   狙ったかのように足止めをしてくるんです!
   お願いですから帰らせてくださいよ!」

ゼルダ「そうです!お、おまけに、街の人たちに扮して…
   あまりにも強すぎる者たちで固めている、なんて!なんたる屈辱…っ!
   意地の悪い!ヒルダ姫をキノコ王国に閉じ込めたいとでも!?」

331Mii:2021/07/03(土) 01:13:29 ID:jHb9NQS.
ピーチ「そんな訳ないでしょう、何のメリットもないじゃないの。
   …妨害を受ける?ゼルダが音を上げるほどの凄腕の?いろんな人たちから?

   そんな指示を出した覚えはないし、指示をこなせる人員もいないって。
   事実ならしょっ引かせてもらうけど…」

ラヴィオ「なんだか、私だけは問題なく帰れそうだったんですけどね…」

ピーチ「…………貴方だけ?ヒルダは駄目なのに?」

ヒルダ「…はい」

ゼルダ「ついでに言うと、帰る予定のなかった私まで止められた節があります。
   キノコ王国のやりかたは私の理解を超えています…」イラッ



ピーチ「ヒルダと、ゼルダだけ、妨害された?」

ピーチ「……………………」

ピーチ「………………………………あ」





ピーチ「………………………………あ、ああああああっ!?」

ゼルダ「……?どうかしましたか?」

332Mii:2021/07/03(土) 01:21:28 ID:jHb9NQS.
ピーチ「……………………2人ともっ!つかぬことを聞くのだけれどっ!!
   スマブラ大会に参加する全てのファイターが、厳守しなければならない…大会規約っ!



   『大会中、最低10戦、試合に出場する』って条件、満たしたの!?」バンッ!



ヒルダ「…………あ」

ゼルダ「…………まだ、1戦も、出ていません、ね」

ピーチ「言ったわよねっ!!口を酸っぱくしてっ!!パンフレットにも書いてるっ!!
   この条件満たさない限り、参加ファイターはキノコ王国から脱出できないわよ!?

   この規約は抑止力さえ味方に付ける強制力があるのっ!!」

ゼルダ「そ、そのようなことを急に言われても…
    隔離されていたのですから、仕方がないではありませんか!」

ヒルダ「そ、そうです!」

ピーチ「憤慨の気持ちは察するけど、イレギュラーな事態だからって
   規約は規約、びた一文も負けてくれないのよ!」

ラヴィオ「ちょ、ちょっと待ってください。…ってことは。まとめると…

    今日、明日中に最低10戦終えないと…ヒルダ様、とゼルダ様は。
    キノコ王国に永久に幽閉されるってことですか!?」

333Mii:2021/07/03(土) 01:30:04 ID:jHb9NQS.
ピーチ「永久ってことは、ないけど…」

ゼルダ「な、なんだ。脅さないでください――――」





ピーチ「『次回のスマブラ大会開催後に改めて10戦を終えるまで』…要するに数年間はマジで幽閉されるわよ」

ゼルダ「ちょっとおおおおぉぉぉっ!!!?」

ヒルダ「」ブクブク

ラヴィオ「ヒルダ様が倒れたぁ!」

ゼルダ「なんでそんな融通の利かない規約がっ!」

ピーチ「冷やかしで大した度胸も無い戦士が参戦希望するのを避けるため、とのことよ。
   …………なんか文句ある?」

ゼルダ「あるに決まっているでしょう!責任者を出しなさい!」





ピーチ「じゃあ抑止力にも一枚噛んだ任天堂法務部の連絡先を教えるから――――」

ゼルダ「やっぱりないです」

334Mii:2021/07/03(土) 01:34:29 ID:jHb9NQS.
ピーチ「ああもう!こうなったら!ゼルダっ!ヒルダっ!
   今日、さっさと10戦終えちゃって頂戴!ハードなスケジュールになるけど!
   むりやり試合を組ませてあげるから、覚悟しなさい!」

ヒルダ「ええっ!?」

ピーチ「明日…最終日は、午後3時頃…割と早いうちから表彰式に入るの!
   実質、残り時間は1日半しかないのよ!
   …ごほっ、ごほっ。…あんまり叫ばせないでよ」

ゼルダ「せ、せめて1日半まるまる使って消化していくというのは…」

ピーチ「別にいいけど…明日の午前は、優勝者を決めるための最終決戦…
   3強のマリオ、リンク、クッパが毎試合2人以上は確定で出場する、
   泣く子も土下座するような血みどろの『死合』ばっかりよ?

   おまけに、終了間際、僅差のポイント勝負ともなれば、撃墜数稼ぎのため
   下手すりゃ集中的に狙われて瞬殺される貧乏くじなんだけど…出たい?」

ゼルダ「さあ今日中に全て消化しましょうか!!」

ヒルダ「わあ、ゼルダ姫ったら洒落を言うなんて!面白いですね、ははは。
   でも寒気がしてきたので私も今日中に終わらせたいかも!」

ピーチ「それが賢明だと思うわ。…じゃあ、他の予定は一切入れずに…
   気合い入れて控室で待機しておいてね」

ゼルダ「…………はい」ドヨーン

ヒルダ「…………うう。結局、大会が終わるまで残ることに…」ガックリ

335Mii:2021/07/03(土) 01:46:37 ID:jHb9NQS.
〜正午  医療センター〜

ロゼッタ「もうちょっと、青みがある色で!あと、明暗もいじりたいです」

ロゼッタ「…ああ、それはすこし偏らせ過ぎです!もう少し戻してください!」

ロゼッタ「中央部分にかけて、グラデーションをつけることってできますか?
    目を凝らして観察されれば分かる、程度でいいのです」

ロゼッタ「左目…もう片方の眼球とすこし重ね合わせて色差確認したいのですが…」

ロゼッタ「FPを込めて、やや光った状態になった目は…………これまた別の見栄えになるんですよね。組み合わせも重要ということです。
    候補が本当に一杯ありそうで、探し甲斐がありますね!試しに、手術前の義眼にFPを通してみてもいいですか!?」

ロゼッタ「あ、経年による多少の色度変化についても提示をお願い致します」

ロゼッタ 「一度手術してからの、微調整用の目薬とかってあったりしますか?
    …いえいえ、無いなら無いで構いません。私の方で調合・調製しますから」

ロゼッタ「ほうき星で過ごすことが多い以上、宇宙線の影響は少なからず受けますから…
    この際、抵抗力の勝る色合いにしようかしら。…結構、変わってくるんですよ、ただの色の違いだけでも。
    FP波長、光波長の同期について解説を始めると軽く3時間は飛んで行くのですが…え、要らないですか。
    あ、じゃあ少し手前の候補に戻らせて頂けますか?すいません。
    評価値が増えるって大変ですね、でもだからこそ楽しい!」

技術者「ひいいいぃぃぃ…た、ただいま実行してみますね…」ガタガタガタガタ

デイジー「……………………」

デイジー「……………………お昼ごはん食べる隙すら無いやん」

336Mii:2021/07/08(木) 20:48:03 ID:0GtDLJ.g
――まだまだ復興真っ只中…むしろ復興開始したばかりではあるものの…
――まだまだ熱狂は消えない冷めない止まらない!残りはたったの2日間!



ピーチVSブラックピットVSルフレVSヒルダ



ブラックピット「…ほう、まあ敵はピーチのみと考えて良さそうだな…」

ピーチ「…………あら、そうかしら?」

ブラックピット「…フン。ルフレもヒルダとやらも、俺の敵などではないということだ。
       まだまだ新米のヒヨっ子だからな」

ピーチ「おっけー。貴方の気持ちはよーく分かった。そしてそういう思想が気に食わない。
   それじゃ、今大会の全ての鬱憤を貴方にぶつけるから頑張って耐えてね…!!」

ブラックピット「え」

ピーチ「私もね、ノルマはとっくに終わってるし、体調最悪だし、
   今更必死こいたところで戦績も順位も大して上がらないだろうし…。
   そこまで本気にならなくても、いいかなーって考えてたわけ。
   
   でも気が変わったわ。――――叩き潰す」

ブラックピット「え、あの、ピーチさん?
       落ち着こう!なっ!落ち着こうじゃないか!」ガクガク

337Mii:2021/07/08(木) 20:52:00 ID:0GtDLJ.g
ルフレ「…とりあえず、僕もピーチ姫と同じく、ノルマの10戦は終えてます、けど。
   ヒルダ姫のノルマ処理、手助けしますよ。よろしくお願いします。
   他のファイターに比べればだいぶ弱いと思うので、我ながら」

ヒルダ「あ…ありがとうございます!!本当に助かります!
   …でも、ちょっと開き直ってるんです。ですから――手加減は要りませんよ!精一杯頑張らせて下さい!」

ルフレ「勿論です!どちらかというと、魔法合戦の方が楽しみだったり…!」

ヒルダ「ふふ、分かりますよ。私も、リンクが認めた神軍師の戦略、
   この際、十分に堪能しようと思います!」

マスターハンド「それでは、大事件にも大混乱にもめげず挫けず――
        いつもより更に気合を入れて、試合開始のカウントダウンですっ!」

観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始です!!」

338Mii:2021/07/08(木) 20:56:28 ID:0GtDLJ.g
――ロウラルの姫君がなけなしの勇気をもって精一杯足掻く中…
――ハイラルの姫君が見劣りする訳には行かない、それが必然と言うもの――!



ルイージVSリトル・マックVSマルスVSゼルダ



ルイージ「一応言っとくと、この中で一番の実力者、僕だからね!
    今さらながら、ものすっごく勘違いされてそうだけど!」

※強さの指標の仕様上、このスレ内でのルイージは、臆病ながらも
普通にファイター達の中で10本の指に入る程度には実力者です。



リトル・マック「お、おう。わかった。わかってるって。誰に言ってるんだ。
       …なんでだろう。ルイージが言うと、生意気さというよりは
       とにかく切実な想いが込められているような気がして怒れない」

※強さの指標の仕様上、このスレ内でのルイージは、臆病ながらも
普通にファイター達の中で10本の指に入る程度には実力者です。

ゼルダ「ああ、マック。そういえば、お礼を言いそびれていました。
   なんでも、貴方と貴方のトレーナーが…ロゼッタのポテンシャルまた一つ、開花させてくれたとか。
   彼女の親友として、感謝をお伝えしておきます。――誠に、ありがとうございました」

リトル・マック「…い、いやいや。ロゼッタ自身の努力と実力の賜物さ。
       変に畏まられると…こちらも慣れてなくて照れる」

339Mii:2021/07/08(木) 21:00:16 ID:0GtDLJ.g
ゼルダ「ふふ。そうですか。それではこの位にしておきましょう。

   …ルイージ、胸を借りるつもりで全力でぶつかります。
   あまり油断していると、足元を掬われますよ」


   
※強さの指標の仕様上、このスレ内でのルイージは、臆病ながらも
普通にファイター達の中で10本の指に入る程度には実力者です。



マルス「そういえば、今大会でルイージと当たるのは初めてか。

   マリオには、中々勝てるものじゃないからね。
   さて、ルイージの方は…如何ほどかな。それでは改めて…

   ――――――――――――――――お手並み拝見!」



※強さの指標の仕様上、このスレ内でのルイージは、臆病ながらも
普通にファイター達の中で10本の指に入る程度には実力者です。



ルイージ「なんだか凄いプレッシャー…!
     …いやいや、ここで怖気づいてちゃいつもとおんなじ!うおー!頑張るぞー!

     ――――――――――――――――Oki Doki!」

340Mii:2021/07/08(木) 21:02:58 ID:0GtDLJ.g
マスターハンド「大会はまもなく終了、それでもファイター達の輝きは弱まらない!
        むしろ一層輝きを増すばかりと言ってもよいでしょう!
  


        思い思いのチカラを描いて、夢見て、期待して――



        さあ、何度でも!試合開始のカウントダウンですっ!」



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!

実況「――――さあ、バトル開始です!!」

341Mii:2021/07/08(木) 21:06:41 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「…………ふらふら〜」フラフラ

ピーチ「…うん。わかっては、いたけど。無理して参加すること、なかった、かしら。
   …また、徹夜で回復巡回するのに…………」
   
…えーっと。仮に祝賀会終了くらいまで徹夜続けるとしたら、
12徹?あれ、13徹?どっちだったっけ。

……………いやいや、違うわよ、きっと。
そう、一応1時間ちょっと仮眠をとらせてもらってるから、0徹ね。マチガイナイ。

ピーチ「早く戻って、デイジーとロゼッタに状況説明でもしておこうかしら。
   …それがいいわね、善は急げよ」タッタッタッ









〜キノコ城〜

キノじい「あの…デイジー様と、ロゼッタ様は…
    こちらにも、病院の方にも、まだ一度もお戻りになられておりませんが…」

ピーチ「……」

ピーチ「…………は?」

342Mii:2021/07/08(木) 21:10:00 ID:0GtDLJ.g






〜PM 7:00 医療センター〜







ロゼッタ「やっと…やっと!ようやく!

    候補を残り10個に絞り込めました!あともう少し!
    なんとか明日以降に掛からずとも決められそうです!

    …あ!手術時間についてはご心配なく!
    ピーチ姫の助言通り、私自ら手術してしまいますので!」キラキラ






技術者「モウカエリタイ」ウツロ

デイジー「ソーダネー」グウゥゥゥゥゥゥ

343Mii:2021/07/08(木) 21:12:17 ID:0GtDLJ.g
〜キノコ城〜

ピーチ「ねーえ、宛がった部屋に付いたわよ。まったく、世話をかけさせるんだから。
   …応答なしなら、このまま2人とも…それぞれのベッドにぶん投げるからね」ブンッ



ヒルダ「むきゅい…………ばたん、きゅー…」ベタァ

ゼルダ「ぐふっ…手荒な真似はしないでください…
   じゅ…10戦、無事に、おわり、まし、た…」ベタァ



ピーチ「運ばせておいて感謝の言葉もなしなの?はぁ…まあいいわ。2人とも、まあ、お疲れさま。
   そんなにとことん疲れてるんなら、そのまま寝ちゃいなさい。
   ぐっすり休んで、明日の最終日を十全な状態で楽しむといいわ」

ヒルダ「デイジーの、きっつい特訓がなかったら、
   肉体的にも精神的にも、とても耐えられませんでした…」

ゼルダ「あれに耐えた、時点で…大抵のことには、耐えられます、から」

ピーチ「…………」



ピーチ「さてと。仕事仕事」

ゼルダ「…………まだ働くのですか!?いい加減休まれては――――」

344Mii:2021/07/08(木) 21:18:03 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「キノじいがね。……あの、気難しい、キノじいがね。

   戦後処理終わったら、お正月含めた一か月ばかり、催事をどれもこれもほったらかしにして。
   チャーター機でバカンスに行っていいって。ゆーっくり、羽を休めてくださいませって」

ゼルダ「……………?」

ピーチ「だからお言葉に甘えて。





   ――――――――それまでは必死に頑張るわ」

ゼルダ「甘えているって言うのですか、それは」

ピーチ「…………さあ?」ゲッソリ



ヒルダ「おやすみ…なさ…い…………」

ヒルダ「――――」スヤスヤ

ゼルダ「ヒルダ姫ったら、あどけない寝顔をしちゃって。
   …相当疲れていたのでしょうね、言うまでもなく。

   …私は、どうしましょうか。一応、ちょっと様子を見て――――
   余裕が有ったら、せめて浴して、身を清めておいた方がよさそうですね…」

345Mii:2021/07/08(木) 21:21:53 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「…あら?もしかして、もうちょっと気力、残ってる?

   無理を言うつもりはなかったのだけれど、まだ大丈夫なんだったら…
   ちょっと付き合ってほしいお話があるのだけれど」

ゼルダ「…………む。勿体ぶっていましたね、水臭い。そのような気遣い、不要です。
   なんですかこの期に及んで。

   いいでしょう、お相手しましょう、いくらでも。
   とりあえず、紅茶の一杯でも淹れて頂けるのならば、ね」スクッ

ピーチ「…………紅茶だってコーヒーだって、ココアだって…
   好きなドリンク、なんだって用意してあげるから。じゃあ、ちょっと会議室に――」













ピーチ「――――――――懺悔しに、向かいましょうか」

346Mii:2021/07/08(木) 21:25:58 ID:0GtDLJ.g
ルフレ「ふわあぁぁ……一体、何だろう…………」



今日の試合結果を、振り返り議論し反省し…大会も残すところ、あと1日。

いろんなことがあったけれど、泣いても笑っても、あと1日。



試合内容をあらゆる方面から考察・研究し尽くして、ちょっとは成長できただろうか。
だがしかし、流石に疲れて眠いな。昨日の疲れもどっと残っているし。

ルフレ「まさかリンクさんが更に追い上げを見せるだなんて…
   3強の方々、もはや誰が優勝してもおかしくないな」

3人の戦いっぷりは、力強く、そして芸術的なもの。観る者全員を引きつける。
明日も本当に楽しみでならない。こんな試合を、特等席で観られるだなんて…ついてるね。



さてさて、そんなことに胸を膨らませる僕だけれど。今はどういうことか、
キノコ城に参上してテクテクと集合場所の一室まで歩いている。





――そりゃあ、ピーチ姫に直々に呼び出されたんじゃあ、断れない。

347Mii:2021/07/08(木) 21:28:52 ID:0GtDLJ.g
ルフレ「…………あ、あれは…」

華麗さを身に纏う姫君を視界に捉え、ちょっと背筋を伸ばして失礼のないように。

ルフレ「やはりそうでしたね、ゼルダ姫でいらっしゃいましたか。
    今宵はこのような所まで、如何されましたか?」

そう、疲れをぐっと飲みこんで、精一杯挨拶を――――



ゼルダ「―――――――――――――――」ブツブツ

ゼルダ「―――――――――――――――」ブツブツ
   
ゼルダ「―――――――――――――――」ブツブツ

ゼルダ「―――――――――――――――」ブツブツ



ルフレ「……………………」ギョッ



…なんだか、心ここにあらずって感じの上の空で、ふらふらと歩きながら――――
華麗にすれ違って、去ってしまわれました。…らしくないですね。

…何か、悪いことでも、あったんでしょうか。

348Mii:2021/07/08(木) 21:32:40 ID:0GtDLJ.g
ルフレ「失礼します…………って、あ、あれ?マルス様、アイク様!どうしてこちらに……?
   し、失礼いたしました!もしかしてお待たせしてしまいましたか?申し訳ありません!」

マルス「ははは、そんなに固くならなくてもいいよ。

   なに、僕とアイクも、おそらく君と同じ状態…ピーチに呼び出されたんだよ。
   到着したのもついさっきさ。リラックスしていこう」

アイク「ああ、そんなに不安がるなって。
   今までの観察で随分と成長したかと思っていたが、そんなところは
   まだまだ相変わらずだな!男ならもっと堂々と構えておけ」

ルフレ「は、はい!…ちなみに、これは…どういった集まりなのでしょうか?
   ピーチ姫から、何か伺っていますか?」

アイク「いや、全く分からないな。まあ、ピーチのことだ。
   そこまで理不尽な話ではないだろう、なあマルス?」





マルス「――――――――――――ああ、そうだね」



…なんだか、マルス様の様子がおかしい気がしましたが、気のせいでしょうか。

349Mii:2021/07/08(木) 21:36:30 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「…あら?もう全員集まってたのね。
   呼び出しておいて、遅れてごめんなさい。資料を用意していたものだから」ガチャッ

マルス「――――これで全員かい?」

ピーチ「ええ、そうね」



マルス「つまり、ルキナ以外のFE勢を集めたかったんだね?」

ピーチ「――――ええ、そうね」



マルス「…………そうか。薄々と感じては、いたけれど。
   アイク、ルフレ。楽観していたところに水を差すことになって残念だが…………

   ちょっとばかり、厄介な話を持ち掛けられるみたいだよ」
 
ピーチ「そうね、否定しないし…話が早いわ。さっさと本題に斬り込んじゃいましょう。



   ――――キノコ王国と、FE勢…いえイーリス聖王国との、戦後処理…
   ――――もとい、責任追及についてのお話を…」

ルフレ「――――――――っ!?」

アイク「――――――――っ!?」

350Mii:2021/07/08(木) 21:41:36 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「こちらの資料に、キノコ王国の物的・人的被害状況…
   ならびに、キノコ王国が責任を追及するにあたっての事細かな主張・議論点を
   できるだけわかりやすくまとめてあるわ。人数分あるから各自、目を通してちょうだい」

マルス「――――」

アイク「――――こりゃあ、酷いな」

ルフレ「――――目を覆いたくなる状況ですね。
   本当に、死人が出なかったことが奇跡としか思えない」

ピーチ「やけに他人行儀ねー。ちょっと苛ついちゃうわよ。
   …とりあえず、いま私が伝えたいのは。



   …………FE勢は、今回の事件について、どうやって埋め合わせしてくれるのってこと」

アイク「…うぐっ!」

ルフレ「…あ、そ、そういう、こと、ですか――――!」

ピーチ「もちろん、『全部が全部、FE勢のせいだ!』だなんて素っ頓狂なことは言わない。  
   主犯格のタブーが誰よりも何よりも悪いのは自明の理。

   それでも、ガノンドロフとギムレー…こいつらの責任も決して零じゃない。

   そして、こいつらを暴れされた主要因として…………
  かの国の英雄たちが『しっかり手懐けていなかった、倒し切っていなかった』ことは
  当然ながら、挙げられるはずよね?」ギロッ

351Mii:2021/07/08(木) 21:50:12 ID:0GtDLJ.g
ピーチ姫の主張はごもっともだ。
僕たちが、自分たちの王国に巣食うギムレーをしっかり打倒していなかったばかりに、
他所様に多大な迷惑を掛け、甚大な被害を被らせた。

この点について、キノコ王国は…イーリス聖王国に損害を償わせる権利が発生する、はず。



ピーチ「タブーを見過ごしたキノコ王国の自損として…ドーンと、被害の9割は免除してあげる。
   あとの損害分は仲良く、ハイラル王国と半分こして――被害の5%、貴方たちにカバーして貰わないとね。

   残念ながら――――王国同士の物価差、国力差のせいで。
   イーリス聖王国の年間予算、何年分かは吹き飛ぶでしょうけど」

ルフレ「う、げ――――!?」

場が、凍り付く。アイク様が、パクパクと口を動かして唖然としている。
そ、そんな、こと。…とても、できない。できっこ、ない!?権利も、現実性も、ありはしない!



ピーチ「…………一応聞いておくけれど。厳密に言うと、知っての通り。
   これ、『貴方の暮らすイーリス聖王国のギムレー』の仕業じゃないのよ。貴方にとっては平行世界のギムレーよ。

   ルフレ、貴方がここで突っぱねるのなら…国家間の賠償責任、
   ルキナに全部押し付けることもできるわよ?…私は責めないわ」

ルフレ「そんなことできるわけがないでしょう!!ふざけないでくださいっ!!!!」ガバッ!!

かっと血が昇る。そんな無慈悲で薄情な事、できるわけがない!そんな恥さらしになんかなるもんか!

352Mii:2021/07/08(木) 21:55:07 ID:0GtDLJ.g
マルス様が、優しげな眼を僕に向けている。
ハッと冷静になって、あわわ、あわわと取り繕って。とりあえず再度、着席。
さ、流石に感情のまま行動し過ぎた。軍師失格だ。



ルフレ「――――ルキナを呼ばなかった理由が、ようやく僕にも分かりました」

ピーチ「…じゃあ、貴方たち…あるいはルフレ、貴方だけが。
   責任を被るってことでいいのね?二言はない?」

ルフレ「――――――――正直、払えるような対価など、何もありません。
   決してイーリスは富んだ王国じゃないんです。ご存知の通り。

   せめて、支払いをできるだけ、できる限り、延ばしていただけないでしょうか?」



それこそ、100年払いとか。…我ながら虫が良すぎる発想。







ピーチ「ええ、いいわよ。1000年払いとかでどう?」

ルフレ「相手の方がもっと虫が良かった!?」

353Mii:2021/07/08(木) 22:00:27 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「…まあ、お金のほうはそれでいいのよ。実の所、全く困ってないし。
   一部、文句を言う上層部も、私が口八丁で誤魔化して見せるわ」



ピーチ姫が、机に頬杖を突いてゆらゆら顔を揺らしつつ、ジト目で睨んでくる。
高貴なお姫様らしからぬ、行儀の悪さ。

マリオさん曰く、実は日頃から案外こんな感じだとか。俄かには信じ難い。



ピーチ「問題はね。貴方たちが、まだギムレー本体がのうのうと生きている…
   ルキナの世界のイーリス聖王国をどうやって治めてくれるのかってこと」

ルフレ「…え?」

ピーチ「言ってみればさ。キノコ王国を酷い目に遭わせた悪役が、
   成敗されることもなく健在なままでいるわけなの、このままじゃ。

   わが王国の上層部は…まあ、私も含めて。
   ――――それはいくらなんでも我慢ならないでしょうってことなのよ」



蛇に睨まれた、カエルの気分。

ピーチ姫の声色、口調、そして眼光に…怒気が篭る。
大国の威圧、威厳というものを、どうして僕は忘れていたのだろうか。

354Mii:2021/07/08(木) 22:05:39 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「感情的にも我慢ならないし、いつ何時、
   またよからぬチョッカイを掛けてこないとも限らない。

   ましてや、ギムレーのために国防に余計な出費が幾ばくか払われるとしたら、
   こんな馬鹿な話はあるものかってことよね。

   ゼルダには、ついさっき、ガノンドロフの分の責任について
   それはもうきっちりと話を付けさせてもらったわ。
   祝賀会が済み次第、ハイラル総出で、オールスターで、
   何か月掛かってでもガノンドロフの勢力を削ぎに削げってね」



――――それであんなに暗かったんですね、ゼルダ姫。



マルス「残念ながら、僕やアイクは…生身の体が時代のずれに制約を受けるせいで…
   王国に帰っても、干渉は出来かねるんだ。すまない。

   直接助けに行けるのなら越したことはなかったのだけれど、
   戦力としてはカウントできないよ」

アイク「全く、酷い話だよな…!」ブツクサ



ルフレ「…そんな」

355Mii:2021/07/08(木) 22:09:02 ID:0GtDLJ.g
なけなしの頭で思案する。

だったら、僕やクロムがルキナ側のイーリス聖王国に出張して、なんとかギムレーを倒せるか。
リンクさん曰く、案内人がいるのならば、とりあえず…
平行世界との行き来自体はなんとかなるらしいから。



…いや、あまりにも非現実的だ。ギムレーをある程度の期間を経て、
全勢力をぶつけて最終的に倒し切る…という、力量的な話に限ってすら。

どうやら、僕が元々知っていた「ギムレー」より、数段強くなっているらしく。
必ず倒せるという確証が持てない。

おまけに、ふたつのイーリスを同時に守るだなんて無茶振り…どう考えたって。
戦力が分散してどっち付かずになって、共倒れになって、何も守れやしない…!



ルフレ「…あ、そうです!

   ここはいっそのこと、マリオさんに遠征してもらって、
   ギムレーを瞬殺してもらう…というのは如何でしょう!?」

アイク「おお!単純明快でおまけに確実じゃないか!
   それがいい!そうしようぜ、ピーチ!」

ピーチ「…………」

356Mii:2021/07/08(木) 22:13:21 ID:0GtDLJ.g



マルス「…………………それは、駄目だ」



アイク「どうしてだよ!?マリオならギムレーなんかには負けないだろ!」

マルス「うん。絶対負けないだろうね。
   まあ、ルキナの世界が滅ぶよりはマシだから、最終手段として残しておくのはアリかも。

   だが、覚えておいてほしい。それは、本当に――最終手段だということを」

アイク「……それは、どういう」

マルス「アイク。きみは…………

   イーリス聖王国を、キノコ王国の従属国にしたいのかい?」

アイク「…………!?」



ピーチ「マルスが居てくれると、本当に話が早いわね。助かるわぁ」



ピーチが気だるげに、それでいて満足げにニヤつきつつ、
綺麗な頭髪のひと房に指を絡めて…くるくると遊びだした。

357Mii:2021/07/08(木) 22:18:28 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「どんなに、大国だろうと。どんなに、悪を倒すための正義の軍だと主張しようと。
   一方的に他国へ兵力を動かすのは、この世のご法度、禁忌事項。
   やったら最後、任天堂の抑止力によって国が滅ぶと言われている。

   じゃあどうするかっていうと、ひとつは軍事同盟を結ぶこと。
   同盟有効のさなかに同盟国が攻められたから代理で成敗する、これはOK。
   ただあいにく、現状で軍事同盟をキノコ王国と組むのは…
   サラサ・ランドとハイラル王国だけ。今回は、この作戦は使えないわ。
   
   それで、もう一つが――――
   『属国になりますから守って下さい』って傅くことよ。

   これは、後出しが利く。つまり、今からでも有効にできる。
   イーリスが『自分たちで治められません、助けてください』って土下座外交するのなら、
   キノコ王国の庇護下に置かれ、キノコ王国に動いてもらうことができる。

   …そのかわり、属国化は一瞬でも、解消はものすごく面倒よ。
   最低でも何十年単位で、キノコ王国の指示がイーリス首脳陣より優先される。
   スマブラ含め、何かイベント事で各国が集まるようなとき、
   キノコ王国としてはイーリス聖王国だけ序列を一つ落として扱うことになる。
   
   立場や面子、色々と捨てることになっちゃうかもね」

ルフレ「――――――――――――――――」



ちく、たく、ちく、たく。
時計の秒針の音が、静まり返った部屋のなか、ただ聴こえている。

358Mii:2021/07/08(木) 22:21:25 ID:0GtDLJ.g
マルス「………………………はぁ」

マルス「ねえ、ピーチ。
   …あんまり、今世代のイーリスが誇る頭脳を、ねちねちと虐めないでくれないものかな。

   観るに堪えないよ。ルフレの姿も――――ピーチ、きみの姿もね」



ルフレ「…え?ええ?」ズルッ

マルス「こんなに汗をかいているルフレに、何か一言」

ピーチ「…はいはい、悪かったわね」ヤレヤレ



途端に、ぷしゅぅと空気が抜ける感じ。
そして、切れる緊張の糸。



マルス「ピーチもさっきチラッと言ったように…要は、『建前』なんだよ。

   ルフレ、そこから『本音』を探り当てるのがきみの仕事だ」



――――建前。そして、本音。

359Mii:2021/07/08(木) 22:24:52 ID:0GtDLJ.g
ルフレ「…………」

ルフレ「…………」

ルフレ「…………ピーチ姫は」

ピーチ「…何かしら?」



ルフレ「全部ひっくるめて、丸く収められる、策を。

   …………キノコ王国の上層部を形だけでも納得させられ、
   それでいてイーリス聖王国が不可逆な傷跡を残さずにギムレーを倒せるだけの効力を持つ
   一発逆転の秘策…いえ奇策を、僕が、提案するのを、期待して、いる…?」



ピーチ姫は、得たり、といった満面の笑顔で僕を出迎えた。



ピーチ「…ルフレに注文を出すわ。
   遅くとも…祝賀会が終了するまでに、私にその策を伝えに来なさい。
   私も、どうしても思いつかなかった、素晴らしい策を。
   有用だと私も認めれば、協力は惜しまないから――」



ルフレ「――――」ゴクリ

360Mii:2021/07/08(木) 22:28:34 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「間に合わない場合は、こちらから出向いて――――

   ルキナに私から事情を伝えるか、キノコ王国に従うか、
   はたまた…やってられるかー!と自棄になってキノコ王国と敵対するか、
   いずれかの道を速やかに選んでもらうわ」

ルフレ「最後のを選んだら最速RTAでイーリス聖王国が滅びそうなんですが…」

マルス「あはははは」

アイク「そりゃあ確かに有り得るな、はっはっは」





ピーチ「ふふふふ…………心配しなくても、一旦実家に帰るまでは
   手出しはしないでおいてあげるわよ」

アイク「マジ顔だ!?」

マルス「――っ、言うね、流石だ」

ルフレ「…………」ダラダラ





――――大変なことになりました。

361Mii:2021/07/08(木) 22:34:16 ID:0GtDLJ.g
〜PM 10:00〜

ロゼッタ「只今戻りましたー!

    見てください、この義眼っ!苦労して選んだ甲斐あって、
    素晴らしい出来ですよっ!我ながら見事な仕事でしたっ!!」

デイジー「どのみち大体の時は髪で隠れる義眼なのに…うう…
    そんなことよりピーチぃ…………何か、おりょうり、つくって…………!
    サンドイッチいっこでも、いいからぁ…………つかれたぁああああああぁぁぁぁ…………おなかすいたぁ…」

ピーチ「…………わかったわよ…人を何だと思ってるのかしら…。
   絶対私、早死にするわ…命の蝋燭燃やしてるわ…絶賛…」





デイジー「…ぷはぁ!生き返ったあ!ごちそうさま!」

ピーチ「結局言われるがまま作らされて、20個も食べてるじゃないの!!
   馬鹿なの、デイジー!馬鹿なの、私!」



ロゼッタ「……」パクパクパクパク

ロゼッタ「…御馳走様でした。まことに美味でした!」フキフキ

ピーチ(そして、ロゼッタがいつの間にか23個食べてる…!?)

362Mii:2021/07/08(木) 22:37:57 ID:0GtDLJ.g
ピーチ「…はやく寝たい。しかし夢のまた夢。夢が夢。夢だから…夢?」

ピーチは 混乱している!▼



ピーチ「…あ、ロゼッタ。せめて私に回復魔法をちょちょいと掛けて――」

ロゼッタ「お腹いっぱいになったらー、なんだか眠くー、なってきましたー」ゴロン

ピーチ「やる気が元の木阿弥になってるぅ!?義眼に満足した途端それ!?
   ちょ、ちょっと起きなさいよ!なんのために前倒しで手術させたと思って――」



ロゼッタ「くぅ」スヤスヤ

ピーチ「」



ピーチ「…栄養剤と強壮剤でなんとかしましょう」

デイジー「この社畜め」

ピーチ「うっさい。ロゼッタを適当な部屋に運んで寝かせてきてよ。
   そのままデイジーもとっとと寝てきたらどう?ふんっ!

   あっちの部屋で、ヒルダがスヤスヤお休み中よ。
   あれから意識が残っていたのなら…多分ゼルダも」

363Mii:2021/07/08(木) 22:41:30 ID:0GtDLJ.g
デイジー「ん?何かあったの?」

ピーチ「例の『大会終了までに10戦こなさないとキノコ王国から出られない』っていう
   大会規約にようやく気付けてね。なんとかこなし切ったはいいものの、
   くったくたになって倒れ込んだところよ。…多分ゼルダも」

デイジー「その『…多分ゼルダも』がすっごい引っ掛かる。まあいいや。
    その理屈だと、ロゼッタも急遽こなさなきゃならなかったはずだけど。
    …ああ、もともとキノコ王国民だもんね、関係ないか」

ピーチ「そうね、ロゼッタには関係ないわ」

デイジー「やっぱりそうなんだ!ピーチったら、相変わらず敏腕―!

    まさか、ほうき星までキノコ王国扱いとしてとっくに住所登録?できてるなんて!
    うまいこと、法の抜け道とか突っついたんでしょ!お主もワルよのう!」ケラケラ



ピーチ「――――」ピタッ



デイジー「…あれ?でも、フェアリーランドに行けなくなるのはいいのかなあ…?
    今、ロゼッタって挑戦中なんじゃなかったっけ。
    偽ロゼッタに幽閉されてた時にちょっと聞いたよ?なんでもWORLD3まで攻略したって」



ピーチ「――――――――」ピシッ

364Mii:2021/07/08(木) 22:44:39 ID:0GtDLJ.g
デイジー「……………………」





ピーチ「……………………」





デイジー「ピーチ…?まさか…………」





ピーチ「……………………」ダラダラダラダラ





ピーチ「ちょ…っと、スケジューリング、てつだって、もらえる…?」

デイジー「わ、わかったー!」

365Mii:2021/07/08(木) 22:52:04 ID:0GtDLJ.g
〜12月6日、スマブラ大会最終日!!〜

ロゼッタ「………………………………………………………………」



【第二試合 マリオVSクッパVSピカチュウVSロゼッタ】
【第四試合 クッパVSリンクVSカービィVSロゼッタ】
【第六試合 マリオVSクッパVSマルスVSロゼッタ】
【第九試合 マリオVSクッパVSヨッシーVSロゼッタ】
【第十一試合 マリオVSリンクVSリザードンVSロゼッタ】
【第十三試合 クッパVSリンクVSルイージVSロゼッタ】
【第十六試合 マリオVSクッパVSサムスVSロゼッタ】
【第十八試合 クッパVSリンクVSフォックスVSロゼッタ】
【第二十一試合 マリオVSリンクVSデデデVSロゼッタ】

【第二十五試合(最終戦) マリオVSクッパVSリンクVSロゼッタ】



ロゼッタ「                      」ギ・・・ギ・・・ギ・・・

ピーチ「…………ま、まあロゼッタにも多少なりとも原因があったんじゃないかしら」プイッ

デイジー「……うん。人生諦めも大事だと思います。ほうき星には帰りたいもんね、…ねっ?」



ロゼッタ「                                 」

366Mii:2021/07/08(木) 22:59:32 ID:0GtDLJ.g
マリオ「おーい!ロゼッター!
    とりあえず、話し合いでさ。紳士協定を結んできたぞー!」トコトコ

ロゼッタ「…えっ!」パアッ

マリオ「ロゼッタに対してに限り。
   胸やお尻など、セクハラになる箇所へのポイント攻撃は禁止」

リンク「顔への攻撃も禁止」

クッパ「服を燃やしたり肌蹴させたりするような攻撃も禁止」

ロゼッタ「…………………………………………」

ロゼッタ「それだけですか!?」

マリオ「え、ま、まあ…」

ロゼッタ「もっとあるでしょう、ほらっ!!
    手足を切断しないとかっ!ハラワタを吹き飛ばさないとかっ!
    原型を留めないようなオーバーキル禁止とかぁっ!!!?
    思う存分、手加減していただいてもいいんですよっ!!!」

マリオ「…そのあたりは、あれだ…………」

ロゼッタ「あ、暗黙の了解ということなら別に良いのですが――――!」

3人「「「白熱して来たらどうなるか分かりません」」」

ロゼッタ「」

367Mii:2021/07/08(木) 23:03:53 ID:0GtDLJ.g
ロゼッタ「    」

ロゼッタ「    」





ピーチ「あ、試合が始まりそうね。たまにはお忍び姿で観客席から見守ろうかしら」

デイジー「私もちょっと呼ばれてる所があるから、ガンバレー」



――――間もなく試合が始まります。参加予定のファイターは、急ぎお集まりください――――



マリオ「よしいくぞー」

リンク「れっつごー」

クッパ「なんだったらつれてってやるのだー」ガシッ





ロゼッタ「嫌あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」ズルズルズルズル

368Mii:2021/07/08(木) 23:19:25 ID:0GtDLJ.g
〜キノコ城 城下町〜



ブラックピット「…………ここは、それほど被害を受けていなかったみたいだな。
       …よし。気合十分。おそらくこれが、ラストチャンス。
       …今度こそ、今度こそっ!1杯だけでもいい、酒を飲み切るぞ――――」



俺はまた、大会参加帰りに、あのバーにやってきた。

しかし、今回の俺は一味違う。
あの不届きなラジオ放送に対抗するための、とっておきの奥の手を用意しているのだ。



ズバリ、早々と試合会場を抜け、真昼間にやってきた!



オープン時間は確認済だ!家族連れでもウェルカムなアットホームなバーなだけあって、予想は的中。
普通に朝の10時ごろからムーディーな音楽とともに営業中!

…要するに、ラジオ放送から逃げた。ええい、仕方が無かろう!
あれに真っ向から挑むのは馬鹿のすることだ!相手にするだけ無駄だ!
――――これでもう何も怖くない!

ブラックピット「さあ、四度目の正直…!終わりよければ全てよし…!
       ホントのホントに、リベンジ、してやる、からな――――!ひ、くひひ――――」

369Mii:2021/07/08(木) 23:24:05 ID:0GtDLJ.g
カランカラン、という、毎度のベルとともに、さあ――――

マスター「あ、ぶ、ブラックピットさん!?…ま、まさか時間帯をずらされて対策を…!?」

ブラックピット「…マスター。世の中、背に腹は代えられないこともある。
       過去のことは忘れて、頼むから初回と思って、俺をもてなしてくれるとありがたいのだが」

マスター「…そうさせていただきたいのは、山々なんですが…あの、実は、ですね――――」

ブラックピット「…?どうした、そんなに強張った表情で――――」





パルテナ「ねえピットさん!最終戦ですよ最終戦!
    本日に限り、ぐぐーんと放送時間を大延長!まるでダウンロードコンテンツ!
    朝から晩まで、私パルテナと相方のピットさんが、全力で声をお届けしまーすっ!!!!」

ピット「本当ですね!ここまで、長く苦しい戦いでした…………!
   べ、べつに、ロゼッタさんがフルボッコになり続ける残虐な描写をしたくないだとか、
   よもやそんな描写をする実力がてんでなくてビビったとかじゃないんだからねっ!」

ラジオ放送の 攻撃は まだ続いている▼



ブラックピット「ふざけるなぁ――――っ!!!!!」ガアアアァァ!!

マスター「」

370Mii:2021/07/08(木) 23:27:48 ID:0GtDLJ.g
今さら席を外すわけにもいかない!?……ちくしょう!

ブラックピット「…………マスター、例の奴を」ダンッ!

マスター「ブラックピットさん。貴方、男ですよ」

ブラックピット「慰めはよせ…」



マスターが全て悟り切って、カクテルを作りに向かう。
あ、少し泣けてきた。



パルテナ「本日は、ご存知の通り大会最終日!
    こんなラジオ番組より、大会の様子を現地やテレビ中継で観ていたい!
    …という方はごまんといらっしゃるとは思いますが!
    それでもめげずに、放送のほうをやっていきますよ!えっへん!
    大会速報も兼ねさせていただきますので、なにとぞお楽しみください!

    さーて、記念すべき最終回にふさわしい、本日の『パルテナの何でも相談室』のコーナーはー?

    なんと!サラサ・ランドのお姫様!デイジー姫をお招きしておりますっ!どうぞっ!」



バアアアアァァ――――――――ン!!!

デイジー「…………………………………………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

371Mii:2021/07/08(木) 23:30:33 ID:0GtDLJ.g
パルテナ「こ、これはこれは、凄まじい勢いで扉が開かれましたね。
    リスナーの皆さんにも、聴こえましたよね、今の激しい衝撃音!

    デイジー姫が仁王立ちしております!視覚情報としてお伝えできないのが
    なんとも歯がゆくて勿体ない気持ちであります!」





ズンッ・・・・・・。





パルテナ「……………………え?」



ピット「」チーン

デイジー「…まず、1発」シュゥゥゥ・・・

パルテナ「!?」

デイジー「…………今のは、酷い扱いをされ続けた、ロゼッタの分の恨み。
    ピットが1発なら、主のパルテナは3発くらい食らっておこうよ、ね?」

パルテナ「――――にゃっ!?」

372Mii:2021/07/08(木) 23:34:01 ID:0GtDLJ.g
デイジー「まず1発目。マリルイ2の『コバルトスター』と間違われた――
     スターストーンの分の恨みっ!」ドゴォッ!

パルテナ「ぐふっ!?」ボキィ



デイジー「続けて2発目。名前の由来でもある、超重要なイメージフラワーの『ヒナギク』を…
    勝手に『ヒマワリ』に改悪された私の分の恨みっ!」ドゴォッ!

パルテナ「あ゙ が っ」ゴフッ





デイジー「そしてこれが、勝手な意味不明解釈のせいで二重人格にされた…………
    私の分の恨みだああああぁぁぁ―――――――――――――――――!!」

パルテナ「ぶべっ」メキョッ





デイジー「あー、すっきりした」

ピット「」チーン

パルテナ「」チーン

373Mii:2021/07/08(木) 23:37:10 ID:0GtDLJ.g
パルテナ「ピットさん!ピットさん!……ただのしかばねのようだ」ユサ・・・ ユサ・・・

デイジー「まったくもう!どうしてこんなことになったのさ!わけわかんないよ!」

パルテナ「…い、一応言い訳をさせてくださいませんか?」ボロッ

デイジー「言い訳ぇ?そんじゃあ、一応聴いておこうじゃないの」

パルテナ「ではまず、ひとつ目。
   どうしてスターストーンをコバルトスターと間違えたか、ですが…」

デイジー「うむ」













パルテナ「プレイしてから時間が経ち過ぎたうえに下調べが不足していただけです、てへっ」

デイジー「オラァ!首絞めるぞぉ!へし折ってもいいんだけど!」ギリギリ

パルテナ「あがががががががががががががが」マッサオ

374Mii:2021/07/08(木) 23:40:28 ID:0GtDLJ.g
パルテナ「ごほっ…  ごほっ…   ごほっ…  ごほっ…
    そ、それで、ふたつめ、です、けどぉ。
    こ、こちらは、ちゃぁんと、りゆうが、ある、ん、で、す、よ、ごほっ」ゼェゼェ

デイジー「ほー?ヒナギクをヒマワリにする理由、ねえ?
    ぜひ聴いてみたいもんだねえ」

パルテナ「あの、ですねえ。そのぅ。



    ぱっと調べた感じ、なんですが。
    ヒマワリの種や酵母を利用したお酒は割と簡単に見つかるんですが、
    ヒナギクを使ったお酒は一向に見当たらなくて…」

デイジー「こいつ最悪だ!私のアイデンティティよりお酒の話題を優先させやがったなー!!」ガツーン!!

パルテナ「」チーン

デイジー「これからはちゃんとヒナギクを推しなさい!いいね、わかった!?」

パルテナ「ごべんなざい」ドクドク

375Mii:2021/07/08(木) 23:44:20 ID:0GtDLJ.g
デイジー「…………なんか、馬鹿らしくなってきたよ。
    それで、最後の3つ目は?どうせ大した理由、ないんだろうけど」





パルテナ「聴きたいですか?」シュババババババ

デイジー「!?」





パルテナ「聴きたいですかそうですかそうですか。
    話し出すと数十レスくらい簡単に飛んで行きますが、仕方ありませんねー。
    特別に教えて差し上げましょう、大サービス!」

デイジー「どう応答しようと話し出す勢い!…わかったよ、聴くから聴くから」






パルテナ「それをお話しするには、まず…このスレ。
    いえ、二つ前の初代スレの成り立ちから背景を説明しなければなりません」

デイジー「なん……だと……」

376Mii:2021/07/08(木) 23:49:29 ID:0GtDLJ.g
パルテナ「あ、いえ、そんなに難しい話ではないのですが…。
    まず知っての通り、一連のスレは。

    『七転八倒しながらも成長していくロゼッタとその仲間たち』が題材です」

デイジー「あ、はい」

パルテナ「その中で、ピーチとデイジーは…いわゆる先輩ポジション。
    あれこれ経験者として世話を焼く立場にあります。

    ピーチは頭脳明晰さを、デイジーは元気溌剌さをベースとして。
    まだまだ駆出しのロゼッタをサポートし元気づけていくわけですね。
    これを『背景1』と呼ぶことにします。

    一方で、初期の初期からマリオやクッパをやたらめったら、
    それこそ敵なしと言えるほど強く表現していたように。

    『登場時期の早さと出演回数がキャラの基礎体力レベルに直結する』という仕組みは
    ずーっと前から骨格が定まっていたものでした。納得してもらえますよね?
    これを『背景2』と呼ぶことにします」

デイジー「…んー、まあ、なんとなくわかる」



パルテナ「…さて。『背景1』と『背景2』をこうして並べた場合。実は…ある問題が生じます。おわかりですか?」

デイジー「…………ん?んん?なんだろう、さっぱり。
     …こうさーん。クイズ番組じゃないんだし、さっさと教えてよー」

377Mii:2021/07/09(金) 00:00:54 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「ズバリ。『背景2』を単純にルール適用させると――――
    ピーチとデイジー、2人の間に…凄まじい戦闘力差が出来上がってしまいます」

デイジー「……………………げげっ!?」

パルテナ「毎度ピーチは皆勤賞、一方の貴方はマリオランドから中々出番なし。
    このままだと、戦闘力としてはピーチに全く太刀打ちできない。
    ロゼッタにあれこれ伝授するにも、ピーチのおまけでしか役に立てない」

デイジー「そんなの嫌だよ!」

パルテナ「そこでスレ主は次のように強引に考えました。

      ・一応、総合力でピーチ>デイジーとなるのは仕方ない。
       でも、ピーチ>>デイジー、みたいなことにはしたくない。

      ・ピーチは魔法のエキスパートという描写が各方面でされている。
       デイジーは快活さ、アグレッシブさが公式でも前面に出される。
       だったら、ピーチを魔法特化、デイジーを肉弾戦特化にしよう。
   
      ・魔法面でピーチ>>>デイジー、通常時の基礎体力面でピーチ>デイジーなら、
       特殊条件下の基礎体力面でデイジー>>>ピーチにすればバランスとれて、
       お互いの面子が立っていいんじゃない?

      ・特殊条件下?感情豊かなデイジーだから、
       バーサクモードで大暴れってことにすれば面倒が少ないな!二重人格を後付けだ!
      
    ね、簡単でしょ?」

デイジー「なにその枯れた技術のハタ迷惑思考」

378Mii:2021/07/09(金) 00:12:39 ID:m0fkQJ3I
デイジー「…ってことは、私って、魔法の実力、相当ひっくいの…?」

パルテナ「…ステータスオープン!というものは、何かと白けるかもしれませんが、
    なんでしたら主要キャラについてカンニングしてみましょうか?」

デイジー「ぜひ!」



パルテナ「まず、前提として。キャラの強さを大まかに示す指標として…。
    『基礎体力レベル』と『魔法レベル』というものが存在します。 

    ポケモンでいうところの、前者が『HP・攻撃・防御・特防・素早さ』、後者が『特攻・特殊技威力』ですね。
    そのせいで、ある程度の基礎体力レベルがないと、いくら魔法レベルが高くても戦闘に不向きだったりします。   

    また、どちらのレベルも『Lv.50』、『Lv.100』、『Lv.150』、と50刻みで
    レベルアップが極端に鈍くなるキャップが存在するものと思ってください」

デイジー「今になって無駄に明かされる衝撃の事実」



パルテナ「では魔法レベルから見て行きましょう。
    敵味方ひっくるめて、一連のスレ内で堂々の1位はロゼッタです。

    そのレベルや、なんと『Lv.130』 …!

    2位に付けるピーチが現時点でLv.85〜90想定なので、異常性が分かりますね」

デイジー「ほえー」

379Mii:2021/07/09(金) 00:19:03 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「剣士タイプの人を除き、女性陣の大多数は魔法が主力です。
    魔法レベルには基礎体力レベルのような『登場時期からうんぬん』という縛りがないため、
    作品中で魔法が得意なら、登場時期に関わらずレベルが高い傾向がありますね。

    ゼルダはピーチとほぼ互角の魔法レベル、それこそ2位の座を争って一進一退。
    『神トラ2』からのヒルダですらLv.60超えです。私もLv.70程度をありがたく頂戴しています」

デイジー「私は?私はっ!?」ワクワク

パルテナ「デイジー、貴方の、魔法レベルは……………………」

デイジー「…あ、あれ?もしかして、Lv.50に到達するにもひぃひぃ言ってるの?」



パルテナ「………………………………………






     ………………………………Lv.20設定です」

デイジー「ひっっっっっっっく!!!!」ガーン!

パルテナ「ちなみにこれは、ネームドでないモブキャラでも
    必死に頑張れば100人中99人が人生の中で到達できる程度のレベルです」

デイジー「」

380Mii:2021/07/09(金) 00:23:57 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「実は、こちらに…キノコ王国で、興味深いアンケートをとった結果があります。



    内容は  『魔法が得意な女性といえば?(自由回答)』



    1位は『ロゼッタ姫』、有効回答中の割合は56%でした。
    2位は『ピーチ姫』、35%でした」ペラッ

デイジー「私の名前を答えてくれた人は9%しかいないのかぁ…」







パルテナ「あ、3位は『アシュリー』、5%です」ペラッ

デイジー「うがっ…ま、まあわからなくもないよ!世界一皆の人気者だし!」





パルテナ「4位は『ワンダ』、2%」ペラッ

デイジー「そ、そうきたかあ…まあ、実質主役っぽかったしっ!?」プルプル

381Mii:2021/07/09(金) 00:27:00 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「5位は『ビビアン』、1%」

デイジー「女性じゃないよ!?もしかして海外版!?」



パルテナ「6位は『シロップ』、0.5%」

デイジー「魔法のランプとかFP回復アイテム関連で勘違いしてないかな、それ!?」



パルテナ「7位は『ポリーン』、0.3%」

デイジー「もはや何のつながりもない!」





デイジー「なんなのさ、なんなのさ!
    じゃあ、魔法界隈で私並に魔法レベルが低い人は誰もいないっていうの!?」

パルテナ「そ、そんなことはないですよ?たとえば、ルキナとか、リトル・マックとか…。
    なんと魔法レベルはLv.1、最低レベルです」

デイジー「それは単に魔法を習ってこなかっただけじゃん!
    一応長年習ってきておいて何も開花しなかった私の方が救えないよ!
    ええい!魔法を嗜んでいて、それでいて低レベルな奴を探せ!傷をなめ合うから!」

382Mii:2021/07/09(金) 00:30:15 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「…あ!設定集を眺めていたら見つかりました!魔法レベルはLv.30、割と近いですよ!」アセアセ

デイジー「それでもまだ負けてるけど…もうその人でいいや!
    探し出して、お互い苦労してますねーって、酒盛りでもやってやる!」

パルテナ「それはちょっといただけないかな、と…」ハラハラ

デイジー「なんでさ。見せて、見せてっ!」ガバッ








ベビィロゼッタ『しょうらいのゆめはっ! りっぱなまほうつかいに なることです!』

デイジー「ふざけんじゃねええええええええええぇぇぇぇ!!!!!!」バシィッ

パルテナ「まだ本編に出ていないのに…」






ブラックピット「」

マスター「あのー。カクテル、もう、そこにおいてありますから、ね?」

383Mii:2021/07/09(金) 00:36:27 ID:m0fkQJ3I
デイジー「…………なんだろう、もう。もしかして、スレ主に…嫌われてるんかな、私」

パルテナ「…………」

デイジー「酷いよ…酷すぎるよ…」



パルテナ「何勘違いしてるんですか、呆れた。

    まだ、基礎体力レベルの話が残ってるじゃないですか」

デイジー「…………あ、そっか」ゴシゴシ

デイジー「…うん、続けて」



パルテナ「基礎体力レベルのトップは『マリオ』…そのレベルは『Lv.160』!
    クッパのLv.158、リンクのLv.147…改めLv.148が後に続きます。

    リンクだけ僅かながらLv.150に到達していませんが、
    手数の多さ、ファイとの連携でカバーするとみなしているみたいですね。

    そして、3強の方々からは流石に間が空くものの、
    堂々の4位に…『覚醒デイジー』が来るわけです。Lv.115…いえ、

    現在の正確な値としては『Lv.117』と言う強さで、ね」

デイジー「うん」

384Mii:2021/07/09(金) 00:39:22 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「ピーチはというと、Lv.65くらいの想定です。
    通常デイジーがLv.60、ゼルダがLv.55、ロゼッタがLv.44…
    あ、そういえばLv.45に上がったみたいですねー。タブーの経験値のおかげで」

デイジー「ぷーくすくす!基礎体力レベルは流石にピーチもひっくいんだね!
    もっと体を鍛えた方がいいんじゃない?…あ、通常状態の私にもブーメランになっちゃうか」

パルテナ「……………………」

パルテナ「…………はぁ」



パルテナ「………………………ちなみに。







    ………………………………これでも、ピーチは女性では第2位です」

デイジー「…………はい?」

パルテナ「もっと言うと、『覚醒デイジー』さえいなければ、女性陣の中でトップです」



デイジー「……………………………………………………は?」

385Mii:2021/07/09(金) 00:46:49 ID:m0fkQJ3I
パルテナ「先ほど、貴方は。スレ主に嫌われているだとか言っていましたが。とんでもない。

    スレ主に『贔屓要素』を3つ挙げさせるなら、確実に…
    『ロゼッタ』、『3強』、そして――――『デイジー』になります。
    


    特に『デイジー』は…
    中々作品に出させてもらえない不遇、後発のキャラに易々と出番を奪われる不遇、
    ピーチのコンパチ扱いされる不遇、グッズ展開してもらえない不遇、などなど…。

    ありとあらゆる不遇の反動で、スレ主の趣味から、嫌というほど覚醒時の底上げがなされています。
    …言ってみれば、ただの精神統一、自己暗示だけだというのに、
    ここまでデイジーを強キャラにする変人はいないんじゃないでしょうか。

    この逸脱した強さが、どのくらい凄い設定かというと…真剣勝負の場合。


   
    『サムスとピーチとゼルダとWii Fit トレーナー(女)とロゼッタ&チコと私とヒルダ』の7人チームに対して、
    『覚醒デイジー』1人放り込むだけで99.9%勝てます。
    残機無し、逃走禁止の大乱闘ならば…7人側が全員1時間以内に屍に変わります」

デイジー「バランス調整、両極端すぎやしませんかねぇ――――――!?」





ブラックピット「」

386Mii:2021/07/09(金) 00:57:55 ID:m0fkQJ3I
デイジー「…まあ、なんとなく、私の扱われ方が分かってよかったよ。もうちょい普通な方がよかったけど」

パルテナ「一芸は大事だと思いませんか?私も一芸は大好きです!ぜひ欲しいですよね!」

デイジー「そうかな?……そう、かも。よーし!じゃあ、このチカラ、もっと有効活用していこうっと!
    少しずつ暗示を慣らしていって、それこそ平常時でも発揮できるように…!」

パルテナ「あ、物語のお約束として。ペナルティを踏み倒したり克服したりした天才能力・覚醒能力って
    出力が凡化しますからね?某サッカー漫画の心臓病の人みたいに」

デイジー「何から何まで面倒くさいぞおおおぉぉぉぉぉぉ!!」ドゴオオオッ!!!

パルテナ「」チーン

デイジー「むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない」スタスタ

スタッフ「一旦止めろー!…………放送が乱れております、今しばらくお待ちください」





ブラックピット「こんなのばっかりじゃないか!最後までっ!!クソがあああああぁぁぁぁ!!!!」



マスター「…学習したので、はい、これ。お持ち帰り用に密封して包んでおいたご所望のカクテルです。
     お好きなタイミングで味わってくださいな」サッ

ブラックピット「マスター。お前がナンバーワンだ」

387Mii:2021/07/18(日) 12:11:49 ID:E.ElLwKM
〜選手控室〜

デイジー「…………やんや、やんや!声を張り上げよ!心躍らせよ!
    さあ諸君!泣いても笑っても、次の第二十五試合が…今大会の最終戦、だああああぁぁ――――っ!!」

ピーチ「…なにやってるの?自分は参加ファイターですらないのに」

デイジー「秒殺で心抉ってきたぁ!?鬼め、悪魔め!
    …いやいや、ここは流石に盛り上げていくべきとこでしょ!

    見てよ、あの得点掲示板をっ!!!」バッ!!



掲示板「現在の順位表デス!

     1st MARIO
     2nd KOOPA     -3pts.
     3rd LINK       -7pts.
     
               以下省略デス」



デイジー「掲示板め、手抜きやがって…って、そうじゃなくて。
    あの3人にとっちゃ、もうこれは有って無いようなポイント差っ!
    本当に、誰が優勝してもおかしくない大混戦、大接戦だよっ!!」

ヒルダ「わぁ…!す、すごいことになってきました…!!」

388Mii:2021/07/18(日) 12:16:40 ID:E.ElLwKM
ゼルダ「…本当に、一手が全てを分かつような好ゲームとなりましたね。
   異常な速度でここまで追い上げていたリンクが、勢いのまま押し切るのか…
   それとも失速してしまうのか、それが焦点になりそうです」

ピーチ「…というか、これ。
   ロゼッタを撃墜することがものすっごく勝利に繋がるんじゃない?」

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

デイジー「…………」

マリオ「……して、そのロゼッタは?さっきから見当たらない…というか、
   今日はずーっと、試合の時以外はどこにいるのかさっぱりなんだが」

ピーチ「ロゼッタなら、女子トイレに 『ずーっと』 こもってるけど」

マリオ「薄々と予想はつくけど、一応聞いとく。…なんで?」

ピーチ「『胃の中のもの全部吐き出しても吐き気と震えが全然止まらないから
    洗面所から離れられません』だって」

リンク「すっげー生々しい!?」

クッパ「ちとやりすぎたかもしれないのだ」

マリオ「確かに試合のたびに、胃液の臭いがしてたなぁ……フィールドで吐かなかっただけ天晴れってことか……」

ピーチ「…………マリオ、サイッテー」ギロッ

389Mii:2021/07/18(日) 12:20:05 ID:E.ElLwKM
ゼルダ「ロゼッタの友としては御三方を今すぐ処断したいところなのですが」ギリギリ

マリオ「いやいや待て待て!?これ、れっきとした試合!正当行為!」

デイジー(暴走した私ですら、あそこまでは追いつめなかったんだけどなー。
    良くも悪くも、3強はおっそろしいってことだね、うん)



マリオ「てか、そんなにロゼッタの身が心配なら、
   とっとと自分からフィールド飛び降りるとか、させればいいじゃん。
   そこまでされたら流石に追わないぞ」

ヒルダ「…信じられません。ロゼッタを――侮辱しないでください。
   観客からどんな目で見られるか、分かっていますか!

   それに、そんなこと、ロゼッタが頷くはずもないでしょう。
   ――――彼女の眼は、まだ、死んでなんかいませんから」

マリオ「…だろ?ロゼッタの事、よく分かってくれて俺も嬉しいぞ、ヒルダ」

ヒルダ「…う、謀りましたね?
   …………こうなったら、ロゼッタの精神力を信じるしかありません。

   きっとロゼッタなら、だいじょうぶ」ギュッ

ゼルダ「ええ、自信を持って言い切れますよ。――――彼女は……強い」

デイジー「マリオ達が思っているよりも、更に更にずっと、ね!」フフッ

390Mii:2021/07/18(日) 12:22:54 ID:E.ElLwKM
〜女子トイレ〜



ロゼッタ「―――――――――――――――――――――――うぼぁ――」ゲホッ



ロゼッタ「からだ、つながってるって、いいなあ…はは、はははははははは」

ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――」

ロゼッタ「――――――――っ」プルプルプルプル

ロゼッタ「チョ、チョール、さん。
    どうか、わた、しに、『すっきり爽快』かけ、て、ください…………
    じょしといれに、はいってきても、もんくいいません、からぁ…………」グズッ





チコ「こ、ここの女子トイレは立ち入り禁止なの!だーめ!」

チコ「プライバシーの侵害ってやつ!」

チコ「別のトイレを使ってくださーい!お願いします!」

サムス「あ、うん、そうか。…えーっと、死ぬなよとだけ伝えておいてくれ」

391Mii:2021/07/18(日) 12:27:53 ID:E.ElLwKM
〜選手控室〜

ピーチ「…………なんだか、ロゼッタの惨状がありありと目に浮かんだわ。
   最終戦、持つかしら。今更引っ込めやしないけど」

デイジー「ロゼッタ本人がズルもイカサマも敵前逃亡もする気が無い以上、
    もう当たって砕けるしかないだろうね…………。

    代われるなら代わってあげたい。むしろボコボコにされようとも私が出たい」    

クッパ「…だが、少々驚いたことがある。
   短い間にも、ロゼッタは…撃墜までの時間、伸ばしているのだ。
   最初の内は一撃で落ちて行ったものだが」

リンク「あ、それ俺も思った。なんか、効果的に隔壁バリアを使って
   即死になりうる攻撃を和らげてるんだよね。今じゃ3撃くらいは見ておかないと。
   あれは、中々センスがあるぞ。将来が楽しみだ」

ルイージ「上から目線の筈なのに、偉そうに感じさせない威厳があるよぉ。
    流石というかなんというか…雰囲気が違うなあ。
    
    雰囲気と言えば。まだフィールドに誰も降り立っていないっていうのに、
    観客たちの大声援が鳴り響いてて、凄い状況だよ!どう?プレッシャー感じたりするの?」



リンク「ん?どれどれ…?」チラッ

392Mii:2021/07/18(日) 12:31:08 ID:E.ElLwKM
観客「「「「「「「「マリオ!マリオ!マリオ!マリオ!マリオ!マリオ!マリオ!マリオ!」」」」」」」」ワアアアァァ

観客「「「「「「「「クッパ!クッパ!クッパ!クッパ!クッパ!クッパ!クッパ!クッパ!」」」」」」」」ワアアアァァ

観客「「「「「「「「リンク!リンク!リンク!リンク!リンク!リンク!リンク!リンク!」」」」」」」」ワアアアァァ



リンク「うおおお…こりゃあ、気合入るなあ。みっともない所、見せられないぜ。
   プレッシャーは感じないが、武者震いなら少し…ってところかな」

マリオ「紆余曲折ありながら、ここまで観に来てくれているんだからな。
   迫力ある戦いを、求められていることを自覚しないと」

クッパ「ふん。しかし、3人バラバラというのが気に食わん。
   最後には、ワガハイだけのための掛け声としてやらなければなるまい」

ピーチ「……………………」





観客「「「「ロゼッタ!ロゼッタ!」」」」ワアアァ




――――負けっぱなしだけど、決して諦めない所が胸に響いたのか…
――――ロゼッタのファンも着実に増えてる。いい兆候ね、ロゼッタもちょっとは報われるわ。

393Mii:2021/07/18(日) 12:36:09 ID:E.ElLwKM
…そこへ、スイ―――――――――――ッと、浮遊移動してきた剣の精霊、1人。



ファイ「マスター。最終戦、頑張ってください。応援しています」

リンク「…………最終戦を応援してくれるのは、嬉しいんだけど。結局、この大会、ファイはあんまり居てくれなかったよな。
   俺としては最初から最後まで、しっかり観戦してほしかったわけなんだけど」

ファイ「そ、それは――――――――」

リンク「今日の試合に限ってすら、そうだろ?いつの間にかどこかに行っちゃって…俺の試合、観戦してたか?」

ファイ「――――――――っ」

リンク「なあ、ファイ。終わったことはあれこれ言いたくないんだけどさ。
   大会期間中、何をしてどこにいたのかだけでも教えてくれないか?
   原因があって、その対処のために足止め食ってた…とかなら、何も文句言わないよ」

ファイ「…………………………………………」

リンク「言えないのか?」

若干おどおどしているように見える剣の精霊さん。一体、本当にどうしたのかしら。リンクの半身のようなもののはずなのに。



ファイ「……………………まだ、駄目です。申し訳ございません」

リンク「まだってなんだよ、まだって!」

394Mii:2021/07/18(日) 12:39:00 ID:E.ElLwKM
ゼルダ「ふふふ、そのままギクシャクしてしまいなさい
   (まあまあリンク落ち着いてください、ファイにも外せぬ事情があったのでしょう)」

デイジー「うっわぁ…………」

ヒルダ「ゼルダ姫…………」



ファイ「――――――――最終戦が終わったら、必ずやお伝えいたします。
   ですから、勝ってください。優勝してください」



ピリッとした、空気の変化。
ファイがふざけているわけではないことに、リンクも気付いたようね。



リンク「……………………やれやれ。約束だぞ?
   そんじゃ、まあ、頑張ってみますか。ファイの為にも」フッ

ファイ「…ありがとう、ございます!」パアアアァァ

ヒルダ「なんだかんだ言って、お互いを信頼しているのですね…!」

ゼルダ「ギルティ、ギルティ、ギルティ・・・・・・」ブルブル

ほどなく、満身創痍ながらやる気だけは残っているロゼッタが合流し…………
いよいよ、最終戦の幕が上がる。

395Mii:2021/07/18(日) 12:44:24 ID:E.ElLwKM
――泣いても笑っても、最終戦。これで、3か月弱に及ぶ大会の勝者が決まる。

――瞬き一つ、慎重に。決定的瞬間を、見逃すな。





マリオVSクッパVSリンクVSロゼッタ





マリオ「…まず最初に、ロゼッタを倒して――――」

クッパ「…まず最初に、ロゼッタを吹っ飛ばして――――」

リンク「…まず最初に、ロゼッタを斬り伏せて――――」

ロゼッタ「聞こえてます、聞こえてますからね!?集中攻撃やめてください!?
    …うぷ、御三方を見ているだけで、猛烈な吐き気と眩暈が…!

    がんばって、私…!もうちょっとよ、私っ…!!」ヨタッ ブルブル・・・

マリオ「いや、このポイント差だと、マジでロゼッタ撃墜分が決勝点になりそうだし…」

ロゼッタ「どうしてですかっ!?単純に、この試合で1位…
    とにかく最後まで生き残っていればよいのでは!?
    別に私をいの一番で狙わなくとも、それで十分な差が付くでしょう!?」

396Mii:2021/07/18(日) 12:49:45 ID:E.ElLwKM
マリオ「そりゃあ、1人しか立っていなけりゃ確かにそうだが。
   2人以上残ったままタイムアップ迎える可能性もあるし…」

クッパ「そのくらいワガハイたちの実力は拮抗しているからな。
   最終戦は最初で最後の三すくみ状態、膠着状態になることも十分あり得るのだ。
   その場合、撃墜点がロゼッタの分のみになることも想定しなければならん」

リンク「ぶっちゃけちゃうと、3強同士でポイントを奪い合うより…
   いかにロゼッタを瞬殺して確実にポイントを貰うかを考えた方が
   優勝には近づきやすいからなあ…そればっかりを狙うつもりはないけど…」

ロゼッタ「」ガクガクブルブル





観客「ロゼッタさーん!!がんばれー!」

ロゼッタ「――――――――えっ…………」ハッ!



観客「そうだ、ロゼッタァー!勝てとは言わないけれど諦めるなー!
  アンタの頑張り、十分伝わってきてるぞー!!最後の最後まで魅せてくれー!」

観客「女の意地ってもんを、男らに知らしめしちゃいなよー!」

観客「あんなに、でっかい彗星だって落としてみせたじゃん!こわーい敵を、ド派手に倒してみせたじゃん!
  ――――-貴方だって、じゅうぶんに立派な英雄だ!もっともっと、カッコいい、すっごい技を披露してくれ!」

397Mii:2021/07/18(日) 12:54:45 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「――――――――――――――――っ!!」ブルッ!



我に返る。こんな弱気な私を応援してくれている人に、深い感謝を。

…そうだ、ここで引っ込み思案になっていても、何も始まりません…!
タブー戦で学んだことが、あるでしょう!むしろなぜ、忘れていたというのですか!



――――勝ち気という、大切な想い!



ロゼッタ「半ば自棄かもしれませんが…覚悟、できました!」キリッ!

マリオ「うっしゃあ!」



ロゼッタ「…あ、その前に…ちょっとタイムをばっ!」ササッ

マリオ「お?まあ、いいけど?」



最後のあがきで、カチャカチャと。慣れない操作で、ポチポチと。
…専用端末から必殺技の見直しをさせていただきますっ!
――――レッツ、カスタマイズ!

398Mii:2021/07/18(日) 13:03:33 ID:E.ElLwKM
端末「通常必殺:キラキラ落とし   【600 F レベルフラット時ダメ―ジ14%】
        チコたちを速度を稼ぐために十分な高さの天空にスタンバイさせ、
        棒立ち状態の重力操作で一気に急降下させる。表示はチコ1人目の威力。
        全弾当てれば14+7+4+3+3+3+3+3で40%も削り取る。
        物陰でやり過ごされるが、自分と相手の位置に関係なく繰り出せる遠隔攻撃。
        2セット目以降は3%×8に威力低下するうえ、他の必殺技の威力まで以後4分の1になるので要注意。

    上必殺:バレットパンチ   【2〜5F レベルフラット時ダメ―ジ4%】
        まずダッシュリングの力を使用して任意の方向に急加速し、その後、
        何重にも硬化された鉄拳を叩きこむ。復帰、移動手段としても。
        一度までなら加速中にも方向転換が可能。ただし加速の程度は低下。
        最大限加速されたときのパンチ速度は全ファイター中でも最速の部類。
       ※実分身《リアルアバター》不在でダッシュリングを作成するため、初回のみ最初に300Fの予備動作が必要。

    下必殺: T-ホールド   【60 F ダメージ判定無し】
         魔法ひとつをそのまま自分の体に強制ストックし、任意のタイミングでいつでも発動させられる状態にする。同時ストックは不可。
         スタンバイ状態で視界にさえ入った魔法なら規模や距離は問わない。ただしストック中は1秒ごとに0.5〜1%自傷ダメージを負う。
         ※現状では、コントラクト(契約)を結んだゼルダ・ヒルダ以外の魔法に対しては発動できない。
          つまり本試合では死に技。ロゼッタ選手の単なる酔狂です。

     横必殺:パイロキネシス  【12 F レベルフラット時ダメ―ジ10〜8(減衰)%×1〜3】
         空間魔法で作りだした火球を剛速球で投げ飛ばす。断続3連投が可能。
         投げる前の火球は自分の周囲に留まっており、反撃効果および仰け反り防止効果あり(消費)。
  
   最後の切り札:亜空切断  【レベルフラット時ダメ―ジ∞%】
           フィールドの小空間1か所を指定して、一定時間後に5秒間発動。
           発動中に空間内に立ち入った選手の残機(ストック)を1減らす。
           発動完了後、レバガチャ無効のピヨリ状態が試合終了まで続く」

ロゼッタ「端末に余計なツッコミを入れられたのは無視して――――よし」

399Mii:2021/07/18(日) 13:08:17 ID:E.ElLwKM
マスターハンド「私、緊張して参りました…いよいよ、最後の時。
        優勝を決める、最後の試合が始まろうとしています!
        さあ!残るチカラを全てぶつけて!試合開始のカウントダウンですっ!」

観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



――――心なしか、いつもより、間が空いている、気がする。
――――緊張あまりの錯覚?それもまあ、しかたがないでしょう。
――――今はまだ、無理ですが。いつかはこの感覚を、楽しめるようになれたら、いいですね。



パアアアァァン!!





実況「――――さあ、試合開始です!!」

400Mii:2021/07/18(日) 13:12:06 ID:E.ElLwKM
マリオ「ハッ――――――――!早速ですまんな!!」ダダダッ!!!!



マリオが、開始そうそうに私に突撃を仕掛けて来て――――!
己の体に対して直接起動させるためのダッシュリング作成、とても間に合わないっ!
まだそれよりは出の早い、パイロキネシスの火球で…ガードッ!!



マリオ「そんなガード、関係ないぞっ!!」ゴウッ!!

ロゼッタ「…くっ!」バッ!

もちろん分かっていました、押し通られてしまうことは。だから――――
あからさまなガードの後方に、不可視のガードをおまけします!

場所を絞って、ただひたすらに重ね掛けした隔壁を…一斉展開っ!!
タブー製よりもずっと練度が高いですよ!1枚当たり5倍くらいは頑丈です!
…FPの制約上、枚数が100分の1とかですけれどね!ええ!

拳を突き出していともあっさりファイアボールを破壊したマリオは、
勢い余って隔壁に突入してしまい…………1枚、5枚、10枚…………



ロゼッタ(って、普通に全部破壊してきてます!?デイジー姫以上の力押しっ!)

それでもっ!初速に比べれば大減速っ!
慌てて自らの掌で、最終到達してきたマリオの拳をガシッと受け止めます!

401Mii:2021/07/18(日) 13:15:30 ID:E.ElLwKM



グキィッ!!!



…いま、変な音がしたんですけど。
…あれぇ?なんだか受け止めた左手首がブラブラしてますねえ。あはは。



マリオ「おうおう、よく止めたなー!」ニヤリ

ロゼッタ「ふ、ふふふふふ…………!」

――――やっぱりムチャぶりじゃないですかー!!



半ば役割を失った左手をさしおいて、右手の裾に忍ばせていた杖をするりと滑らせ、
バッと握り締めてFPを集中、集中!



マリオ「――――!」バッ!!

あんまり魔法の杖を前面に出すとぽきりと折られそうですが、躊躇する余裕なんて、ない!
…よしっ!少しずつダッシュリングができてきました!

402Mii:2021/07/18(日) 13:21:34 ID:E.ElLwKM
ちなみに、ここまで時間を稼げた理由は…私の実力がどうのこうの、ということではなく。

追撃(トドメと読む)に掛かったマリオをリンクが横槍…もとい弓矢で不意打ちしたから。
流石のマリオも、爆速の弓矢を食らうのはたまらないと、私を放置して緊急回避した模様。

無理な体勢で、それこそ弓矢を食らいつつ私をK.O.する術くらいあったとは思いますが、
そんなことをしても優勝争いからは却って遠ざかること、分かっているのでしょう。
いくら私の撃墜ポイントを得ても、後の戦いが苦しくなっては本末転倒というわけですね。
3強たるもの、そのくらいの天秤確認は瞬時にできるみたいです。

3強の皆さんからしてみれば、私は「無傷で」倒さなければ意味がない。
リンクの牽制は、マリオが私を狙う状態を一旦諦めさせる効果をハナから期待していた一撃、ということ。



そのリンクが続けて私に射掛けようとすれば、そうはさせまいと灼熱のブレスをクッパが繰り出して妨害。

身を翻さざるを得なかったリンクを尻目に、クッパがショルダーチャージ狙いで突撃してきて。

それをマリオがジャイアントスイング狙いで近づいて減速させて。



言葉にするとどれもこれも単純ですが、壮絶な読み合いと牽制の連続です。



そこまでやるなら、素直に3強同士で本格的に戦闘状態に入ればいいのでは?
…多分それをすると、「2人がぶつかり合って身動き取れない時に1人が不意を衝いて私を倒す」ような、
不本意な事態がいつか起こるのでしょう。2人側にはなりたくない、と。なるほど勉強になりますねー。

403Mii:2021/07/18(日) 13:25:57 ID:E.ElLwKM
…思惑が絡み合う危うい均衡に、私は生き永らえる「ように仕向けられている」といったところでしょうか。
一応感謝しておきます、皆さん。



ロゼッタ「……」ドクドク

ただひとつ問題がありまして。
あらゆる化かし合い騙し合いの合間にも、容赦なく流れ弾が飛んでくるんですよ。
風の刃を纏う弓矢とか、霧散し切らぬ火炎とか。

というより、どうせならついでに少しくらい狙っておこうって魂胆ですよね。
当然ですね、うん。はっきり言って、非常に痛いです。普通に出血箇所増えてます。
一応恨んでおきます、皆さん。



ロゼッタ「…………………………………………」プルプル

穏やかな微笑を浮かべているようで、目を見開いて面構えは強張って、プルプル震えて。
涙が目尻に溜まっていく。口をキュッと噤んでいるのはせめてもの意地。

なんだか、脚が動かないと思ったら。リンクの放った弓矢の1本が、
ドレスに隠れていた足を靴ごと貫いて地に縫い付けてますね。放心のせいで気付くのが遅れました。
通りで、激痛が走って、焼けるように熱くて、涙ぐんでいる自分がいるわけです。

ドレス、下の方にちょっと穴が空いただけでよかったですねー。
引っ張られてビリビリと大きく裂けていたりしたら、恥ずかしい姿になる所でしたー。
ただ、ダッシュリングが無意味になっちゃってざんねーん。

404Mii:2021/07/18(日) 13:29:17 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「…………」ジワァ

ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「…………………………どのみちチャンスなんて滅多にめぐって来ないんなら、
    最初からフルパワーで行くしか…当たって砕けろしか、ないってことですよね。
    ふふふふふふふふフフフフフフフフ」ドクドク





ロゼッタ「――――――――」プッツン





ロゼッタ「…………パイロキネシス、特大弾っ!!!!!」パアアアアアァァァ

マリオ「!?」

クッパ「!?」

リンク「!?」

もう深く考えることなど止めて、後のことも考えるのをやめて!
直径5メートルになろうかという超特大の火球を、ボンッ!と繰り出します!!
…よし、反則とかは取られない模様!あくまで「派生」扱い!

405Mii:2021/07/18(日) 13:32:50 ID:E.ElLwKM
しかし、ごっそりFPを吸い取られて行きました…やむなし!
あとは、所在なく佇むダッシュリングを再利用――――!
さすがにこの大きさは、私がポイッと投げる訳にも行きませんから!



ロゼッタ「…………撃ち出しなさい――――!!!」スッ!



杖を振り下ろす先は、当然、あちら。
ダッシュリングの効果に従い、大きな大きな火球が手の為る方へ。
御三方目指してぶっ飛んで行きます!これで、一矢だけでも…いえ、まだまだ足りない!

火球のサイズが大きいのが祟って、速度があまり出ていない。
…作戦ミスですね、仕方がありません。反省はあとで。
ですから、結果を確認するよりも早く、すでに次弾を準備しています!



ロゼッタ「――――――――キラキラ落としっ!!」パアアアアアアアアアアアァァ

チコ「「「「「「「「わああああああああああぁぁぁぁ――――!!!!!」」」」」」」」



チコ8人を、手加減なにそれという感じで限界の限界まで速度を付けさせ、
一気に――――天空から、叩きつけるっ!!容赦は、しません!既にFPはすっからかんになりました!

たとえチコたちが上空にスタンバイしていることはわかっていても、狙われた者たちは為すすべ無し!

406Mii:2021/07/18(日) 13:38:30 ID:E.ElLwKM
前から火球、上から煌めくお星さま!さあ、どうされますか!
…おやおや、無謀にも、火球に条件反射で向かってこられたではないですか――――
キラキラ落としを食らうくらいならばと、妥協したということで――――





マリオ「あっつー!中々あっつー!」 \0.2%/

クッパ「ロゼッタにしては上出来なのだぁ!」\0.2%/

リンク「心頭滅却すれば火もまた涼しっ!」\0.3%/





マリオとクッパとリンクが凌ぎを削るエリアを 飲みこむはずの パイロキネシスは
とっさの反撃をまとめて受けて 10倍速で跳ね返された!▼



ロゼッタ「ふえっ」

ロゼッタ「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁ――――!!」チュドオオォーン!!



デイジー「何この無理ゲー」

407Mii:2021/07/18(日) 13:42:17 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「……あ、れ?まだ、私、K.O.されて…ない?」ムクッ



うつ伏せで、顔だけゆーっくりと上げ、状況確認。
というより、全身が真っ赤というか、プスプス焦げているというか、満身創痍というか。
一言でいうと、まるで動きません。



マリオ「お疲れー。10戦のノルマ達成だな」

クッパ「お疲れさんなのだ」

リンク「ロゼッタ、健闘したな!」



瀕死で倒れ伏す女性を、しゃがみ込みつつ囲む男性3人。悪趣味です。
そして、どんな甘い言葉で励まされようと、まったく健闘した気がしません。
そして、痛覚がマヒしたのか、痛みをあまり感じていないのが怖いです。



そうですか。試合、とうとう…終わってしまいましたか。
…って、どうして残念そうなのですか、私。終わってくれて、よかったよかった。

408Mii:2021/07/18(日) 13:45:22 ID:E.ElLwKM
マリオ「たった今、試合なら終わったぞー。今、しっかりとポイント集計をやってくれてるところだ」

リンク「ここでポイント計算ミスとか、やっちゃいけないからなー。結局ロゼッタ、撃墜できなかったし。
   いやはや、これは大きな誤算だったぜ…」

ロゼッタ「…………どう、してですか?気を失ってから、結構時間が経った気が」



自分ですら、あの跳ね返された火球を食らってすぐ気絶したのか、
それともふらつきながら少し足掻いてから倒れ込んだのか…それすら記憶があやふや。
ただ、倒されるだけの時間は十分すぎるほどあったはずなのに――――





リンク「いやぁ。やっぱり、ここまでフルボッコになってる女性を、
   無情に倒して優勝を勝ち取るってのは、スポーツマンシップから外れてる気がして」

マリオ「途中から狙わなくなったというか」

クッパ「3強同士だけでの真剣勝負に本気になりだしたというか」

ロゼッタ「その心境はもっと前に獲得しておいて欲しかったんですけどっ!!?」



思わず叫んだら、激痛走る。イタッ!本当に痛いっ!?
体のあちこちが千切れそうな感覚!?でも生きていると実感できてちょっと良かった!

409Mii:2021/07/18(日) 13:50:59 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「はやく結果を教えてもらってピーチ姫に回復してもらいましょう…」

ぐっ。ぐぐっ。ぐぐぐっ。
歯を食いしばって、よろよろと立ち上がろうとして…よろけて、よろけて。



観客「ロゼッタァー!よくやったー!お疲れさまー!」



心、少し温まりながら、どうにかこうにか立ち上がって…
今さらながら足の大怪我のせいで片足しかまともに使えないことに気付いて。
また倒れそうになる所、皆さんに腕を掴まれ助けてもらいました。
さ、さすがに倒れ込んで抱き止められるとかは恥ずかしいので、気を付けないと。



マスターハンド「それではぁ!!結果がまとまったようなので発表させていただきます!
       マリオ選手!クッパ選手!リンク選手!3人の最強ファイターたち!
       一体、誰が勝利の女神に愛され、優勝者となったのか!

       各大会、毎度のことですが。わたくし、胸がドキドキして参りました。手じゃんとか言わないで。
       この場をお借りして、盛り上げて下さった観客の皆さんに。関係者の方々に、感謝です――――」



パルテナ「うーん、誰を優勝させるのが一番お得でしょうか。こう、見返り的に」

ピット「女神違いですパルテナ様」

410Mii:2021/07/18(日) 13:57:09 ID:E.ElLwKM
マスターハンド「それでは…どうぞっ!…………ええっ?」



ザワザワザワザワザワザワ・・・・・・・・・・・・・!!!!

私はスクリーンを見上げるのも苦しいのですが、会場が騒がしくなってきました。



スクリーン「最終順位表デス!

     1st MARIO
      1st KOOPA     -0pts.
      1st LINK       -0pts.
     
                               以下省略デス」



マリオ「これはめずらしい!」

クッパ「三権分立…じゃなかった、三者同率とは」

リンク「追いついた!追いついたぞっ!よっしゃああああ!!

   …でも、こんなこと初めてなんだけど!これ、どうなるの?
   い、いくらなんでも1位保持期間が長い順に順位付けとかやめてくれよ!?」

マスターハンド「ええと……これ、どうなるんですかね、大会責任者のピーチさん!」クルッ

411Mii:2021/07/18(日) 14:01:12 ID:E.ElLwKM
ピーチ「…………あ、そ、そうね。私が答えなきゃならないのね。
   マイク、マイクっと。…ありがと。
   
   皆さん!私が、只今の状況について、公正に解説いたします!

   現状、マリオ選手、クッパ選手、リンク選手が同率1位のポイントとなっております。
   2位以下で同率順位のファイターが存在するまま大会が終了した場合、
   特に該当する2人以上について、順位付けは行いませんが――――
   最終戦が終了して同率1位が発生したケースに限っては、その限りではありません。
   優勝者は2人は要らない、が本大会の原則です。

   大会規定により、ポイント差が生じて真の1位が改めて決定するまで――――
   回復を挟まず、最終戦と『同じ対戦カード』で、サドンデスとなります!」



マリオ「」

クッパ「」

リンク「」





ロゼッタ「……………………え?」ドクドクドクドク

――――マダ、タタカワサレルノ?

412Mii:2021/07/18(日) 14:04:14 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――――――――――」



ロゼッタ「…ねえ、クッパさんクッパさん」ニコッ

クッパ「おう。どうしたのだ、ロゼッタ」

ロゼッタ「ちょっと、これ、みてください。私の王冠。
    灼熱の炎に炙られて、結構どろっと融けかけてますよね」ユビサシ

クッパ「…そうだな」

ロゼッタ「これ、実はですね。あの火球を跳ね返される前の、貴方のブレスで融けた結果なんですよ。
    そもそも、炎の温度的にも私の火球なんかより高かったみたいですし」

クッパ「う、うむ」

ロゼッタ「つまり、意図しなかったとはいえ、貴方の攻撃が私の装飾品を駄目にしたんですよ」

クッパ「ああ、ならば弁償してや―――――」





ロゼッタ「言い換えると、私の服を燃やしたようなものですね?」ニコッ

クッパ「え」

413Mii:2021/07/18(日) 14:07:10 ID:E.ElLwKM
ロゼッタ「ねえ、マリオさん。ちょっと聴いていただけますか?」ニコッ

マリオ「な、なんだ?」

ロゼッタ「あんまり時を遡って、こういうことは言いたくなかったのですが。
    本日の第十六試合。覚えていますか?

    マリオさんったら、強烈で猛烈なパンチを繰り出して、
    私の背中から胸部にかけて、あっさりズドンと貫きましたよね?
    
    私も血反吐吐きましたが、目の当たりにしたサムスさんも顔が真っ青になってました。
    本当に痛ましい、すっごく痛い事故でしたよ、我ながら」

マリオ「う、うん、そだね。そ、それが、どうしたの、かな?」





ロゼッタ「要するに、マリオの拳の前面とか側面とか。
     …………私の胸を触ったと言ってもいい状態でしたよね?」

マリオ「…それは暴論じゃないか?」

ロゼッタ「いえいえ、別にセクハラで訴えるとかではないですよ、
    マリオは不埒な人物ではありませんし、真剣勝負の最中ですから。

    ええ、それはもう、かねがね分かっています。…………ただ」ニコッ

マリオ「…………ただ?」

414Mii:2021/07/18(日) 14:12:38 ID:E.ElLwKM



ロゼッタ「 紳  士  協  定 」ボソッ

マリオ「!?」

クッパ「!?」



ロゼッタ「 し  ん  し  きょ  う  て  い 」ドクドクドクドク



クッパ「王冠融かしたから負けを認めろと?それは流石に――」

マリオ「無理やりセクハラをこじつけられても困るぞ――」



ロゼッタ「ねえ」ガシッ

マリオ「い、いや、そんな両肩掴まれても。血がべっとり付くだけじゃないかハハハ」



ロゼッタ「ねえねえ」ユサユサ

マリオ「お、脅しには屈しないぞ!」

415Mii:2021/07/18(日) 14:17:58 ID:E.ElLwKM



ロゼッタ「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ
     ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」ユサユサユサユサ



マリオ「リンク君が優勝でいいと思いまっす!」ガクガクブルブル

クッパ「仕方がないのだ!ここはリンク君に勝ちを譲ってあげよう!」ガクガクブルブル

マスターハンド「なんとっ!これは意外な幕引きだっ!
        3人の協議の結果――――マリオ選手、クッパ選手が試合放棄っ!!2人は、同率2位ということに!
        これにより、サドンデス待たずして、リンク選手が優勝ということになりましたー!」



ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ――――――――!!



リンク「」

416Mii:2021/07/18(日) 14:23:45 ID:E.ElLwKM
リンク「…………え、本当に俺が優勝でいいの?本当にいいのか!?2人はそれでいいのか!?
   俺が一番納得しがたいんだけど…!すっげえモヤモヤするんだけど…!」

マリオ「まあ、いいんじゃね?確かに紳士協定を作ったのは俺達だし」

クッパ「ぐっふっふ。煙に巻いたまま優勝させて、
   リンクに優勝の実感をさせなくして苦しませるという高度な作戦なのだ…!」

リンク「か、軽いなあ…」

ロゼッタ「よかったですね、リンク。

    貴方の弓矢がドレスを引き千切っていたら、
    貴方から先に優勝辞退させるところでした」ドクドクドクドク

リンク「」



ピーチ「運ぶわよ」ダンッ!

ロゼッタ「…………運ばれます」フワッ・・・

ダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・・・・・・。





リンク「あ、うん。そんなに早く休みたかったのね。ほんとゴメン」

417Mii:2021/07/25(日) 13:54:17 ID:kJrWaewE
〜 表彰式の準備中! 〜



ロゼッタ「体中が痛いです…………」

痛いのもそうですが、まるで次の瞬間に大量出血するような恐怖の錯覚が
じわじわと襲い掛かってくる。穏やかじゃありません。

ピーチ「全回復したんだからそんなわけないじゃない。
   単なる思い込みよ、分からなくはないけど。一時的なものに過ぎないわ」

デイジー「それだけ3強にぼこぼこにされたのが脳裏に刻まれたんだね…。
    まあでも、精神面で立て直しが利かなくなるほどじゃあ、全然ない。
    さっすがロゼッタ、余裕ってカンジ?」

一旦場を整え、再度ファイター達が試合会場に集結しての表彰式が予定されています。
あと2時間くらい。長いような、短いような。
もちろん、熱狂する観客たちにとって、2時間程度の待機など、どうってことはない様子。

マリオ「おい、みんな。大会フォトコンテストの優秀作品が決まったみたいだぞ。
   試合会場のすぐそこに張り出されてるから、今のうちに見に行かないか」

ピーチ「ああ、早かったわね。そうね…見に行きましょうか」

ロゼッタ「フォトコンテスト…?」

マリオ「主に観客たちが撮った、試合の一幕が大会期間中どしどし応募されて、
   最も優れた作品を選ぶんだよ。…面白さ部門もあるけど。
   入賞している作品はどれもこれも迫力があるぞ!何気に超人気な催しだ!」

418Mii:2021/07/25(日) 13:59:46 ID:kJrWaewE
リンク「…とは言っても、タブー戦のいざこざで撮影どころじゃなかった人も多いだろうし、
   中々いい写真は撮れなかったんじゃないかな…残念だ」

マリオ「…まあ、そうかもしれんが」

デイジー「ふっとんで叩きつけられたピーチとかも探してみるか、にひひ。
     時たま、弾き漏れでドレスの中をのぞき込まれてる問題作品もあったりするよね…探すぞー!」

ピーチ「…意地も趣味も悪いわね」

これまでの大会に比べて不安要素もあるみたいですが。
面白そうなので、皆さんに連れられて…見に行きたいと思います。



〜フォトコンテスト ギャラリー〜

マリオ「…………」

リンク「…………」

クッパ「…………ワガハイが映っていないのはちと承服しがたいが…」



ロゼッタ「…すごい」

デイジー「ロゼッタったら、自分も映ってるからって贔屓してー」

ロゼッタ「い、いえ!そんなつもりは一切なく…!」

419Mii:2021/07/25(日) 14:05:06 ID:kJrWaewE
一番手前に、剣を握った勇ましい姿のリンクが。その奥には――――
マリオ。
ピカチュウ。
ピット。
むらびと。
サムス。
マルス。
リトル・マック。
ヨッシー。
カービィ。

…そして、私と引き続き。

躍動感あふれる、揃い踏みで今にも動き出しそうな…「生きた」1枚の写真。



「最優秀賞    『大乱闘スマッシュブラザーズ3DS』」



リンク「うっわ!うっわあ!いい1枚じゃん!最終盤、タブーに立ち向かってるとこだな、これっ!
   厳密には試合中の写真じゃないが、文句なしに神懸かって出来がいいぞ!」

マリオ「しかし、この構図…完璧なアングルの為に、フィールドに降り立ってないか!?
   一体何時の間に…!?命張ってるな、ただの写真家じゃないぞ!?」

クッパ「うーむ。専属で雇いたいくらいの見事な腕なのだ。
   …しかし、『匿名希望』とあるな。いやはや勿体ない。
   だが、それも乙なものか。選別者も、よくぞ選んだというところだろう」

420Mii:2021/07/25(日) 14:10:56 ID:kJrWaewE
あまりの見事な構図、もちろん撮影スキルも素晴らしい、究極の1枚。
きらびやかなはずの額縁のほうが、嫉妬のあまり逃げ出してしまいそうな、写真。
皆さんが惚けてしまうのも、無理はないでしょう。

…あ、人気が人気を呼んで、どんどん人が集まってきました。
このままだと目立ちますね、退散しましょう。





ネス「…………やってくれたなあ、まったく」フフッ

ロゼッタ「…ネスさん?どうかしましたか?」

ネス「…ううん、なーんでも。あ、記念に一枚買っておこうかな。すいませーん!」

リンク「俺も俺も!これはいいものだ!」

ピーチ「そうね、じゃあ私も…」

デイジー「…ピーチはどのみち現物が手に入るでしょ?」

ピーチ「ここで買うことに意義があるんだってば」





思いがけない息抜き挟んで、いよいよ、お待ちかねの…表彰式です。

421Mii:2021/07/25(日) 14:15:31 ID:kJrWaewE
〜表彰式〜

もちろん結果は全て確定していますが、ファイター達が登場するや否や、
まるで試合がまた始まるのでは?と勘違いしてしまうほどの大声援。

思えば、私の嘆願のせいで最終戦が中途半端に終わったとも言えなくもなく、
それを不満に思われることもあり得たのですが。どうやら、杞憂だったようですね。


ピーチ「表彰状――――リンク殿。

   貴殿は『第4回 大乱闘スマッシュブラザーズ世界大会』に於いて頭書の成績をおさめたので、
    その栄誉を讃え優勝杯を授与してこれを表彰する。

   20XX年12月6日     キノコ王国当主 ピーチ



   …………ま、こんなところかしらね。はい、どうぞ」スッ

リンク「ありがたく頂戴しまーす!」



パチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・・・・・・!!!



割れんばかりの拍手が、一斉に湧き起こります。

422Mii:2021/07/25(日) 14:18:06 ID:kJrWaewE
リンク「これ、なにか一言スピーチでもした方がいい流れ?毎回、どうだったっけ。何も考えて来なかったんだけど」

ピーチ「いらないいらない。時間も押してるから余計なことはしなくていいわ」

リンク「…上位8位まで表彰するだけだろ?開始時刻も予定通りだし」

ピーチ「時間が押してるのは『私が徹夜で片づけてる戦後処理』よ」

リンク「…すんませんでした」

ピーチ「大丈夫よ、まだリンクが1人に見えてるわ」

リンク「なんだか末期症状!?」

ピーチ「では続いて2位以下の表彰に――――――――」



キノじい「姫様ぁ――――――――!少々、お待ちくださいっ!こちらの方々から、緊急連絡がある模様ですっ!」

ピーチ「…へ?」



任天堂スタッフ「あ、お邪魔して申し訳ありません。
        実は、このタイミングで発表しておきたいことがございまして」

ピーチ「え、ええ!?」

リンク「…なんだ、なんだ?」

423Mii:2021/07/25(日) 14:20:33 ID:kJrWaewE
突如現れたスタッフさん。表彰式が中断されてしまいました。
でも、ピーチ姫はヤレヤレとため息ついて、大人しくマイクを譲ります。
観客席の皆さんもざわつき始めました。何が起こっているのでしょうか。



ピーチ「…手短にお願いしますね」

スタッフ「あ、えーと。それはちょっと難しいかも、しれません。
    頑張りに頑張って、15分くらいの動画には収めてきたのですが」

リンク「…動画?」

スタッフ「リンクさん、優勝おめでとうございます。
    おかげさまで、ファイさんと我々の努力が無駄にならずに済みました」

リンク「…一体どうしたというんですか?それに、ファイとって、どういう…
   ファイがこそこそ居なくなっていた事と、関係があるってことですか!?」

スタッフ「なーに、リンクさんは幸せ者ですねーと言いたいだけですよ。
    それでは皆さんっ!巨大スクリーンの方を、御覧下さいっ!」



ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・!!!!
    


スタッフの合図とともに、どこかの景色が、鮮やかに映し出されて――――

424Mii:2021/07/25(日) 14:24:00 ID:kJrWaewE
ハイラル王国。
世界で有数の伝説処として知られるこの王国に、ある問題を抱えるお城がありました。

……ハイラル城。
…………この城が抱える問題、それは――――





――――  物件1024 イベントがない城  ――――





堂々たる佇まいを見せるハイラル城は、築100年の、伝統的なハイリア調の造りの伝統建築。

かつて伝説が紡ぎ出されたこの街で、長きにわたって続く誇り高き王家の住まい。
統治の始まりの時から変わらない、由緒正しき指導力と実績を代々受け継ぎ、現在で四代目。

そんな歴史ある城を、2X歳の時から1人で切り盛りしている四代目当主……
それが、かの有名なゼルダ姫。

100年前にここで統治を始めた、これまた別のゼルダ姫による旗揚げ以来、
数々の将を率いて王国を治める、世界でも名高い王国になりました。

今ではすっかり、キノコ王国のピーチ姫と並び立つ稀有の実力者。
やむを得ない王国事情で他国との交流を避けてきたとはいえ、
友好関係を結ぼうとする国々もずいぶん現れてきました。

425Mii:2021/07/25(日) 14:27:29 ID:kJrWaewE
こうして引き継がれていく権威ある城。
しかし、一見趣ある伝統建築も――――観光面、遊興面では悲惨なありさま。

何十年も、他国の者がほとんど誰も足を運んだことがないというその場所は、
完全に堅苦しい公務専用と化し、とても人が集まるような状態ではありませんでした。

建物全体の老朽化も酷く、1階のあちこちに、上層に行かせないためのこんな謎解きが。
この辺りは魔物エンカウント地帯でもあり、夜は更に魔物が狂暴になるため、
素人はとても寄り付けず、問題は深刻でした。

そんな不安を抱えながらも現状に妥協し、家臣たちと暮らすゼルダ姫。



――100年続くハイリア王朝の未来を守るため、
――安心して国を富ませながら観光客を呼び込める城に。



そんな切なる願い(ゼルダ姫は知る由もない)を受け、
1つの企業がふたたび立ち上がりました。



スタッフ「こんにちはー」

ファイ「よろしくお願いします」

スタッフ「よっしゃ!みんな、頑張るぞー!!」オオオオォォォォー

426Mii:2021/07/25(日) 14:31:03 ID:kJrWaewE
使える面積はおよそ1平方キロメートル。
ハイラル城の敷地そのものがその半分以上を占め、
城の入口を飛び出してすぐのあぜ道が、剣の精霊みずからが改装したというスタート地点。
もちろん、簡易的なものにすぎず、まだまだ手入れが必要です。



スタッフ「この石段とかはどなたがやられたんですか?」

ファイ「これは私が敷きました、サルボに運んでもらって」

サルボ「なんだか違う時代にきちゃったみたいだけど、ファイ様のためなら任せてケロ!
   緑のマスターにオイラの凄さを再認識してもらうケロ!」



よりにもよってハイラル城周辺は、魔物が不定期に現れるハイラルの中でも、
特に不意打ち召喚に悩まされるターゲット地帯。言うまでもなく、ガノンドロフの暗躍。

ハイラル城の敷地内にも年に100匹は敵が湧き出し、集客の際は大きな負担となります。
100年以上、毎年のように敵の攻撃を受け続けた城壁は、所々欠けたり崩れたりし、
イメージダウンにもつながっていました。





…これは、根本的な所から、対策が必要なようです。
しかし、怖気づく匠…いえスタッフたちではありません。むしろ腕が鳴るというものです。

427Mii:2021/07/25(日) 14:36:28 ID:kJrWaewE
リフォーム初日。



ハイリア「あ、その大きいベッドはもう要らない!こっちの鏡は…まあ要るかな。
    この趣味の悪い胸像は…作り替えね。あのゲートはもうちょっと簡略化していいわ!」

女神ハイリアの元気な声が、城じゅうに響き渡っていました。

ファイ「お手数をお掛けします」

ハイリア「いいのいいの!私の趣味だか美的センスだか買って、
    わざわざ別の伝説にまで迎えに来てくれて…むしろありがとう!暇してたのよね。

    …ほらそこ、きびきび動く!私だって労働(魔法)やってるんだから!
    不敬罪になっちゃうわよー!まあ、私は楽しんでやってるけど!」

インパ「は、はいいいいいいぃぃぃ……ただ、い、ま……」ガタガタガタガタ



ハイリアさんのスペック:
  ・トライフォースに関して原初にすっごい活躍をした女神
  ・リンクがトライフォースを集めまくりパトロールまでするのでお役御免、自由奔放に
  ・時代を行き来して、いろんな伝説のゼルダを霊体で観察するのが趣味
  ・常に霊体、リンクが平和にした伝説の中なら魔法で人やモノへ干渉できるが魂1つ分のゼルダにも劣るため弱っちい
  ・ただしゼルダに頭を垂れる者ならだいたいは下僕にできる御身分


インパを始めとした、プライドある古参の家臣たちも、ハイリアに言われるがまま。

428Mii:2021/07/25(日) 14:40:59 ID:kJrWaewE
スタッフ「いやはや、借りてきた猫のように皆さん従順ですね。結構こき使っていて驚きです」

ハイリア「ファイに依頼されるがまま私を探し出した貴方たちに言われたくはないけど…。

    そりゃ、主君のゼルダより更に上位の存在には逆らい難いでしょ。女神よ女神。
    このお城を勝手に改築して許されるのって私くらいなんじゃない?見事な人選…いえ神選よ、ファイ。

    『名前区別ができる』おかげで、ゼルダの数ある魂のうちの1つにならずに済んだのが、
    別人として存在できる怪我の功名だったわね!スレ主に盲点を衝いてもらったわ!」

スタッフ「…というかハイリアさん、性格変わってませんか?」

ハイリア「性格を変えとかないとゼルダと区別が付きにくくな…おっほん。
    色々と時代を巡っているうちに学習し感化されたのよ 。

    …あ!そっちの無駄に邪魔な鉄格子も運んでくださいな!」







スタッフ「へえ」トオイメ

スタッフ「あんまりやると原作無視で怒られるな」

スタッフ「今更感もあるけど」

429Mii:2021/07/25(日) 14:44:32 ID:kJrWaewE
複雑怪奇な部屋割となっていた上層からも、次々と荷物が。
何十年ぶりかに、一般人が入った上層。…すると、その時。



魔物「ギャオオオオオン!」

ファイ「――――ハッ!…大丈夫ですか?」シュンッ!

スタッフ「こ、こっわー。魔物が湧きますよ、ここ。死にかけました」

ファイ(身のこなし的に、そうは見えませんでしたが…)

魔物が湧き出すことすら皆無というわけには行かない、このお城。
いつエンカウントするかわからないため、みんな気が気ではありません。
今では使われていないスペースだらけのエリアも多く、埃をかぶったアイテムが何十個も出てきました。

スタッフ「こういうのは作るのがすごく大変で、できる職人さんも随分減ってるのに。
    この王国は道具を得ようとする人に対して厳しすぎるよなあ…
    隠し部屋だったり特別な鍵が必要だったり…。
    ああっ!このルピー、かなり年代物ですね!額面の何百倍もの価値が有りそう!」

ハイリア「まあ、他国に売っ払って小金稼ぎ、なんて目の眩み方をしなくてよかったけど。
    要らないのなら私が持って帰りたいくらい」

ファイ(…どこに持って帰るのでしょう)

――こうして、上層にあった埃まみれの荷物は、
――武器防具、機材、道具、美術品、果ては秘蔵の酒に至るまで、くまなく。
――取捨選択のうえで、廃棄あるいは裏庭に一時保管されることになりました。

430Mii:2021/07/25(日) 14:50:27 ID:kJrWaewE
スタッフ「オーライオーライ、どんどん運んでー!」



壁を壊し、柱を取って、間口を大きく広げると。そこに運ばれてきたのは、
トラック何十台分にもなる、工事用の土と敷石。

スタッフ「さあ、こっから正念場だぞ!夏じゃないのが幸いだ!一気にやっていこう!」

スタッフ「「「「「「「「おりゃーー!!」」」」」」」」

数百人態勢でテキパキと道を作り、それを伸ばしていく工程が待っています。

なんとも原始的な方法ながら、スタッフ、いい仕事をしています。
ただし、石畳は最低限の量で十分。というより、既に石畳となっていた箇所の補強のみ。

立派な道が、城の入口から外へ外へどんどん伸びて行きます。
目標とする経路と城の一部がぶつかってしまう場合…
なんと、城側に頭を下げさせます。城を取り壊す、とも言います。

いきなり大掛かりな土木工事が始まって失神したインパを、気にしてはいけません。
今ある申し訳程度の道では幅も強度も足りないのです。



ここからようやく、城の中も本格的な改築が始まりました。
行く手を遮るような遮蔽物や突起物、低い天井などを剥がし、空間を作っていきます。

そこに一切の容赦は有りません。重臣たちが顔を青白くしてワタワタとしています。

431Mii:2021/07/25(日) 14:54:38 ID:kJrWaewE
インパ「あ、あのっ!ハイリア様っ!僭越ながら申し上げますっ!
   こちらに数多く並べられている物は、歴代の姫君たちが大切になさった、
   この城のカナメであり歴史であり、失い難い思い出でありますっ!何卒ご容赦を…どうか…!」

ハイリア「よく言うわよ。私、霊体で度々うろうろして、よーく知ってるんだから。
    カナメも何も、城が守られるのは全部リンクのおかげでしょ?
    まともに守護像や警報システムが働いた試し、あるの?

    リンクの到着がちょっと遅れたらガノンドロフにあっさり壊されるだけの存在で。
    おまけにゼルダは政務に手一杯で鑑賞することもなくて。
    むしろ…なんかこう、TASで引っ掛かる出っ張りにしかなってないじゃない。邪魔なんだけど。

    流石に捨てたりはしない。ちゃんと保管して、別の場所に置き換えるだけよ。これでもまだ文句ある?」

インパ「う、う…!」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




ゼルダ「」

ピーチ「やっぱりお城はシンプルな方がいいわよね。お尻でワープされることもあるけど」

デイジー「ピーチの場合『自分で清掃や保守管理しやすくて』って文言が行間に隠れてるよね」

432Mii:2021/07/25(日) 14:58:02 ID:kJrWaewE
城の外へ伸びゆく道を、橋の途中であえて途切れさせて落とし穴に。
橋なので当たり前ですが、数十メートルほども高低差がある、大きな穴…むしろ崖。
向こうの崖までは…50メートル、いえ100メートルほどもありそうです。

ハイリア「この距離は、一体なんなの?どうやって向こう側へ行けばいいの?」

スタッフ「簡単な話です。――――飛べばいいんですよ」

ハイリア「へえ、飛ぶんだ!スカイロフトみたい!その技術に驚くわ!
    …でも、物をぶつけられてグラついたりしたら真っ逆さまね」

スタッフ「それはまあ、仕方ないですね。
    落ちる要素はグライダーでぐらついた時ぐらいだー、なんちゃって」

ハイリア「ふふっ」ブッ

スタッフの非常につまらないダジャレが女神のツボに入ったみたいです。



スタッフたちは並行して、敷き詰めた道の上に、更に土や石畳を敷き詰めていきます。
頑丈さに妥協はできません。もちろん、敷き詰め、敷き固めの悪さから、
後々陥没や傾きを作らせるわけにもいきません。

ハイラルに「任天堂の技術力ってこんなものですか」とか笑われたら噴飯物です。



土が何百トン単位で次々と運び込まれていく様は壮観の一言。
敷石も非常に硬くて、ファイが自らの剣戟でせっせと加工処理していきます。

433Mii:2021/07/25(日) 15:02:09 ID:kJrWaewE
スタッフ「歴史を感じさせ見栄えを損なわないことは前提として…
    もちろん、使わせて頂くのは唯の石畳ではない超強化品ですよ。
    このくらい徹底的にしないと、過酷な環境に持たないんですよ。
    しょっちゅう爆発や爆風に巻き込まれますからね。

    石畳はアスファルトに比べ調温・調湿効果がありますが、
    こちらについては、まあ…おまけみたいなものでしょう。
    …あ、走るたび音が出て、迫力があるというのは大きいかもしれませんね」

ファイ「なるほど…迫力は大事ですね」

スタッフ「そりゃあ、もう」



長年の風雨や戦にさらされ、もうボロボロで耐え切れなくなった箇所を、
その周囲もろともしっかりと固め直すことも同時に行っています。

今後の負荷に対する備えを万全にし、更には。
造り続けている大きな道にピッタリと沿う、観光客のためのスペースを新たに設けました。

グラウンドエリアの構造補強を終えると、今度は、がらんとスペースの空いた城内へ。
ファイとハイリアの期待に応えるため、一層頭を絞る、スタッフたち。



スタッフ「何も我々は全ての装飾物を否定したいわけじゃありません。
    何か、『これだけは飾っておきたい』ってもの、ありますか?」

ハイリア「…………うーん、パッとは思いつかないけど…………」

434Mii:2021/07/25(日) 15:05:51 ID:kJrWaewE



ファイ「――――マスターソード」



スタッフ「…え?」

ファイ「――可能ならば、マスターソードを飾りたいです」

ハイリア「でも、今ってリンクがどんどんマスターソードを手元に集めてて…

    …あ!そういえば、うち(スカイウォードソード)の1本だけは…
    元の台座に返したんだっけ、じゃあ残ってるわね!一瞬借りちゃいましょう!」

スタッフ「過去スレの会話について行けなくなる人が多発しそう」

ファイの提案で、懐かしいマスターソードがまだ工事中の城の中へ。
議論しながら配置の微調整を繰り返し、置かれたのはど真ん中。
基礎まで組んだ特等席が用意されました。

スタッフ「通路を通り抜けた先に神秘的な聖剣が佇んでいて…
    こう、ギミック的にロックが解除されていたら加速装置として使える、というのはいかがでしょうか」

ハイリア「それ、謎解きみたいで素敵!もちろんあのお約束メロディも忘れないでね!」



新しいイベントの要となるシンボルとして、聖剣が収まったところで、工事が再開。

435Mii:2021/07/25(日) 15:09:05 ID:kJrWaewE
ハイリア「あら!それって、さっき埃を被ってたルピーじゃないの?」

スタッフ「はい。折角ですから、有効活用したいと思いまして。
    歴代の姫君もきっと思い入れがある品物でしょうから、残せるものは残しますよ」

ハイリア「…と、いうと?」

スタッフ「終了後にコインとの交換という形で回収するとして。
    この立体的でキラキラと輝く宝石がコインの代わりに道に置かれていたら、雰囲気が凄く出ると思いませんか?」

ハイリア「……!!素晴らしいわ!ぜひやってちょうだい!」

スタッフのアイデアはまだまだ尽きません。
今度は道の脇で、何かを作り始めました。

ハイリア「きゃっ!?デクババよっ!?ファイお願い、対処して――――」

スタッフ「待って待って!これ、さきほど植えたばかりです!斬り捨てないで!」

デクババ「ぐるるるるる…………」

ファイ「う、植えた?」

スタッフ「パックンフラワーの代わりです。相当近づかない限り襲ってこないですし、
    攻撃手段は噛みつきだけ、それほど強くもないですから大丈夫ですよ」



ハイラル城100年の歴史を繋ぐ、そのリフォームの全貌を――――
ご覧いただきましょう。

436Mii:2021/07/25(日) 15:13:50 ID:kJrWaewE
100年、四代にわたって受け継がれてきた、ハイラル王家。
ハイラル王国の統治を担う、大きく荘厳なハイラル城は。



歴史を感じさせる伝統的で立派な城であることはそのままに。
あちこち傷ついていた城壁や敷地を、綺麗に化粧直し。

道の傍には、一般の観光客を気遣えるセーフティエリアが作られ、そこには――――
魔物が決して召喚されなくなりました。

その代償として、数か所に押し込められた魔物のホップスポットには…なんということでしょう。
待っていましたとばかりに、特別製のデクババが待ち構えていて、
昼でも夜でも餌として一瞬で飲みこんでしまう頼もしさ。

このデクババは耐久性バツグン、食い溜めができ、人に対しては逆らわず、
レーサーに対してはとりあえず噛みついておくように調教されているため、
すぐさまみんなの人気者になることでしょう。

魔物対策を十分にしたおかげで、仰々しい城郭を一部無くして広く開放することができ。
風なびく芝生の上から光が落ちてくる、明るい広場へと大変身。
かつて兵たちの詰所だったスペースも、依頼者念願の…何千人もが収容できる、バリアフリーの観客席となりました。

道のあちこちに設置されたルピーは、改築のなかで見つけて活用を閃いた…この「コース」ならではのオリジナル。
もちろん、任天堂の許可は下りているため、心置きなくアピールできます。

とっておきの注目ポイントは、城内エリアで煌々と輝き続ける、
思わず拝みたくなるような神秘的なマスターソード。
手前通路にある3つの絡繰りをチェックすると、ソードに触れて加速できるようになるためのスロープが
突如として出現するようなギミックが設けられました。これぞセルダの伝説の真骨頂。

437Mii:2021/07/25(日) 15:21:48 ID:kJrWaewE
使われていないアイテムばかりが場所をとり、あちこちぶつかる城内。



スタッフは、走行ルートの分布を徹底的に研究し、コースの幅の広さを管理できる規模に合わせ。
安全性と臨場感を兼ね揃えた工夫を施しました。
大きなコースで繰り広げられる熱戦は、各所に設置される高性能撮影機で、直接、実況用スクリーンへ。

まるで舗装されたかのようながっちりとした走路は、
雨にも負けず、風にも負けず。

甲羅にもブーメランにもファイアボールにもボム兵にも落雷にもスタックルにも負けず、

激しい乱打戦にも耐え、砂ぼこりも易々とは舞わせず、
鮮明な状況を刻一刻と伝えるための手助けをしてくれることでしょう。



外見は立派でも、相当な老朽化が進んでいたハイラル城。

最後の粗探しとばかりにメンテナンスが済まされたそのお城は、
まるで完成して1年も経っていないかの如く鮮やかに生まれ変わり。
レース目的で観光客が増えてみたら城にガッカリされて却って評判が下がった、なんて心配もありません。



どのくらい素晴らしい改築かというと、最終的に…
あのインパが、「私は信じていました」と掌返しで大絶賛するほどの成果です。
機能性ばかりでなく、デザイン性の面でも、細やかな配慮を忘れないスタッフたち。

438Mii:2021/07/25(日) 15:23:36 ID:kJrWaewE
――――こうして、ハイラル至上最大のリフォームは無事終了。

ちゃっかりしているハイリア様が、使い道が特にないからと…
「スカイウォードソード」の金銀財宝を惜しげもなく差し出したため、
「こちらの伝説」としてのリフォーム費用予算は、なんと、タダ同然で済みました。



果たして、関係者たちは喜んでくれるでしょうか――――――――



パン!パン!パパパーン!





スタッフ「というわけで!
    祝っ!『ハイラルサーキット』、爆誕でーす!!」

ファイ「…………」パチパチパチパチ





リンク「」

ゼルダ「私のお城なんですけどおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!?」

439Mii:2021/07/25(日) 15:27:36 ID:kJrWaewE
    「…何か言いました?」

ゼルダ「…何奴っ!?」クルッ

ハイリア「こんにちはー」

ゼルダ「」

ハイリア「駄目だよ、ゼルダ。あれだけ散々リンクに『ハイラルにもイベントを!』って
    進言されておきながら、数多の伝説で無視し続けるなんて。そのうち愛想つかれちゃうよー?
    まあ、当時は記憶がなかったゼルダに言うのも酷だとは思うけど」ポンッ

ゼルダ「ハイ・・・ハイ・・・」ビクビク



マリオ「なんかゼルダに似た人が登場してきた!そしてなんだか神々しい!
   …で、どうしてゼルダはあんなに逆らう気が失せてるんだ?」

ピーチ「マリオ…伝統を殊更重んじる格式高いハイラル王朝にとって、
    よっぽどヘマをしでかさない限りはご先祖さまって現当主より高位扱いよ?
   ましてや始祖と言っていいお方だったら、逆らう方が愚かってものよ」

デイジー「ゼルダは堅苦しいなー。私なんか、メイドたちとお菓子の争奪戦で鬼ごっこするくらいの気さくな仲なのにー」

ピーチ「アンタはもうちょっと格式ばりなさい」

ルイージ「本物の女神かあ…僕、初めて見たよ。生きてみるものだねえ、兄さん」

パルテナ「えっ」

440Mii:2021/07/25(日) 15:30:32 ID:kJrWaewE
リンク「え、えっと」

リンク「すまん、まだあんまり事態が飲みこめてない。
   要するに、俺のためにハイラルにサーキットを作ったって?
   藪から棒だな、なんのために?そんなこと頼んでないぞ?」

ファイ「その……………………………………私からの、ささやかな、サプライズを…と」

リンク「…え?どうした?サプライズ?」



ファイ「――――――――マスター。







   ――――――――お誕生日、おめでとう、ございます」







その一言に、リンクが頭をハンマーで殴られたかのような顔をしたのでした。

441Mii:2021/07/25(日) 15:38:09 ID:kJrWaewE
リンク「…………た、たんじょう、び?い、いや、だって」

ファイ「…はい、もちろん、存じております。
   マスターは数々の伝説にて人生を送られており、生年月日などというものが定かではないことは。

   ですが、それは――人一倍、人生に振り回されているマスターが。
   こうして生きてくれていることに対する、祝いのための日が設けられないということは。
   とても切ないことではないでしょうか。……そこで、スタッフの方々に相談させて頂いたのです」

スタッフ「ええ。そこで、我々はこうアドバイスしたのですよ。

    11月21日、神トラおよび時オカの発ば…いや伝説の始まり。
    11月23日、スカイウォードソードの伝説の始まり。
    ちょうど、こんな感じに…代表的なものがスマブラ大会終盤にかぶさっていたもので。

    とりあえず、リンクさんの誕生日を11月22日ってことにして
    大会終了直後に、遅ればせの誕生日を祝ってあげたらどうっすか?
    困惑されてもその場の勢いでなんとかなるでしょう!…と!」

リンク「」

スタッフ「ファイさんが、『マスターにふさわしい飛び切りのプレゼントを渡したい』とか
    言うもので。考えた挙句、ハイラルにイベント事を呼び寄せるのが一番かな、と。
    リンクさん、割と不満を垂れてましたからね。
    もちろん無茶振りではあったもので、最初は我々も苦い顔をしていたのですが、

    『賭けましょう。マスターが優勝しなければ如何様にも罰は受けます。企画自体も白紙に戻して頂いて構いません』

    とまで豪語されちゃあ、流石に奮起せざるをえないってもんですよ!
    最後の最後まで、ファイさん自ら手伝ってくれましたし!」

442Mii:2021/07/25(日) 15:42:05 ID:kJrWaewE
スタッフ「これで、遅れがちのマリオカート8の完成にも弾みがつくといいな!
    マリオカート7がまだまだ持ってくれていると言えば持ってくれているけど!」

リンク「」

ファイ「えっと、その。受け取って頂けますか?」

リンク「」

ファイ「あ、あの、マスター?」



ゼルダ「冗談ではありませんっ!勝手に人の城を滅茶苦茶にしておいて!
   私は勿論怒り心頭ですが!リンクだって心底呆れていますよっ!ねえ、リンク!」






リンク「――――――――」ポロポロ

リンクに 効果は 抜群だ!!▼



ヒルダ「泣いてる!?」

ゼルダ「」

443Mii:2021/07/25(日) 15:44:53 ID:kJrWaewE
リンク「――――お、俺。ファイが…言った、通り。
   誕生日、なんてものとは、無縁で。祝われたことなんて、なくて。
   ピーチがみんなの誕生日パーティ開くたび、ずっと羨ましくて。
   でも、勇者の宿命、だからって、半ば…諦めてて。

   こんな、俺の事、祝って…くれる、のか?」ポロポロ

ファイ「―――――――――――もちろんです。私は貴方の半身なのですから。
   今後とも、よろしくお願い致します」

リンク「ありがとう――――!ありが、とう――――!!
   ファイ、お前がいてくれて…ほんとうに、よかった――――!!」グズッ



ウオオオオオオオオオォォォォォォ!!!
ヒューヒュー!



ルキナ「み、見ているこちらが恥ずかしくなってきてしまいますね…」カアァ

ルフレ「この絆、他の人が割り込める隙なんてなさそうだ」



ゼルダ「……………………」ズモモモモモモ

ロゼッタ「や、闇のオーラが!?ゼルダ姫がなんだか黒化してますっ!
    これ、大丈夫なんですか、皆さん!?ねえ、ねえ!?」

444Mii:2021/07/25(日) 15:48:17 ID:kJrWaewE
ゼルダ姫が、再開を待つ表彰式を更に遮って、修羅の顔でリンクとファイの前に躍り出たではありませんか。

感極まっていたリンクが、ゼルダ姫に気が付いて…慌てて涙をゴシゴシ擦って、不思議そうに向き合います。

リンク「あの、ゼルダ姫?今は表彰式の最中ですよ?どうされましたか?」

ゼルダ「――――リンク。貴方、ファイにそこまで言うのならば。そこまでファイを持ち上げるの、ならばっ!
   …私にも、何か、言うことがあるのではないですかっ!」



観客「おおっ!修羅場かー!」

観客「相変わらずリンクは隅に置けないなー」

HAHAHAHAHAHAHAHA!!



…観客は、このハプニングを割と楽しんでいるようですが。



リンク「え?え?何か、言うこと、ですか?」

ゼルダ「そうですっ!私の奮闘に対してっ!――――何か、思い当たる気持ちとか、あるでしょう!!」

ピーチ「お、思いの外、ぐいぐい行くわね、ゼルダったら。もう後に引けなくなったってことかしら…!」

デイジー「これが女の戦いってやつか…!いやまあ私たちも女だけど」

445Mii:2021/07/25(日) 15:52:41 ID:kJrWaewE
リンク「――――ああ、そういえば」

ゼルダ「――――!!」

――はたと、何かを気付いたリンク。



リンク「――――私、勘違いしてしまっていました、貴方のことを想う気持ちに。
   申し訳ございませんでした」

ゼルダ「――――!!!!」パアァ

ゼルダ「――――教えて、ください。貴方の、言葉で。
   どんな言葉も、受け止めます。遠慮なく、思ったままを」

リンク「…えっと。それは流石に身分違いというか、畏まってしまうのですが」

ゼルダ「そんなこと、一切気にしませんから」ウルウル

リンク「そ、そうですか?そ、それじゃあ――――」モジモジ

ゼルダ「―――――――――――――――――――――」ドキドキドキドキ



リンク「ゼルダ姫。私、ようやく分かったんです。ゼルダ姫、貴方は私の――――」

ゼルダ「――――そうです、私は貴方の運命の――――――――」

446Mii:2021/07/25(日) 15:54:21 ID:kJrWaewE





リンク「――――――――――――味方だったんですねっ!!!!!!」





ピーチ「        」

デイジー「        」

ロゼッタ「        」

ヒルダ「        」

シア「        」

ラナ「        」

ルキナ「        」



ゼルダ「        」

ハイリア「――――っ、ははははははは!!」クスクス

447Mii:2021/07/25(日) 16:00:42 ID:kJrWaewE
ゼルダ「        」

ゼルダ「                」

ゼルダ「――――み――――――――か――――――――た…………??」カタカタカタカタ

リンク「伝説のたびにノルマ与えられて、面倒事だけ全部押し付けられて。
   むしろ私に仕掛けられたトラブルメーカーとばかり思うようになってたんですが!
   私の大きな勘違いでした、反省します!普通に、非常事態となったら私を助けて頂けるのですね!

   タブー戦では本当に助かりました!咄嗟に『女神の詩の逆再生』を弾いてくれるだなんて!
   その演出がなんとも心憎かったですね!」

ピーチ「ちょ、ちょっと待ちなさいよリンク!これまでだって、色々とゼルダには恩を受けてきたでしょ!ねっ!」

リンク「…………へ?いつ?」

ピーチ「いつって、そんなの――――――――」


アイテム:あちこち隠されているうえ、過去の伝説のものを使い回すので有難味があまりない
褒賞、爵位:貰ったことがない
催事:呼ばれたことがない、そもそもやってない、勧めてみれば断られる
平和:キノコ王国で生活しているので享受にまるで関係がない
交流:すれ違いからほとんどない
戦闘:リンク1人に任せきりのバランス リンクがまともに使える鍛錬場もない
共闘:ほぼ全てトゥーンゼルダに取られた 「ゼルダ無双編」は一連スレではゼルダが仕組んだ側


ピーチ「…………………………………………」

448Mii:2021/07/25(日) 16:07:18 ID:kJrWaewE
デイジー「なんか一切好感度を上げて来なかった主人公って感じだね。
    …とりあえず、その、友人から目指したら?」

ゼルダ「」

ゼルダ「――――――――はっ!『女神の詩の逆再生』って、一体どういうことですかっ!
   『ゼルダの子守唄』っていうちゃんとした名前が――――」

リンク「『ゼルダの子守唄』…?なんですか、それは」

ゼルダ「――――!?」

マリオ「あ、時オカの頃のリンクは相当に精神分裂の最中にいたから
   教えていたところで歌の響きや名前なんか印象に残っちゃいないぞ、これ豆な」

ピーチ「あー、そういえば…そんなこともあったっけ」トオイメ

ゼルダ姫が、がっくりと地面にうなだれます。肩を震わせ、顔を覆って、静かに泣き出してしまいました。
…見ていられない、もの悲しさ。ですが、私などではどうすることもできません。

ゼルダ「どうして――――どうして。こんなことに、なってしまった――――のですか。
   誰のせいで、そんなに、ファイとだけ、絆を深めて――――」ポロポロ

リンク「誰のせいと、言われましても…………」

リンク「…………強いて言うなら、(スカイウォードソードの)インパのせい?」

ゼルダ「私、ちょっと用事ができました」スクッ

ピーチ「ゼルダゼルダ、すっごく目が濁ってる!」

449Mii:2021/07/25(日) 16:12:16 ID:kJrWaewE
〜 12月7日 祝賀会開幕! 〜



ロゼッタ「…どれも、本当においしいですね…!」

特設会場には、ずらりと並ぶ料理。大勢…というか、ほぼファイター全員が集う。
時折、簡単なスピーチやゲームを挟んでの、7日間の祝賀会の始まりです。



…あのときは、ゼルダ姫を宥めるのに、小一時間掛かりました。リンクも罪な人です。
アタフタしている間に表彰式がいつの間にか終わっていて、ちょっと残念でした。
注目されていなかった側のマリオやクッパは、全く気にせずケラケラ呑気に笑っていましたが。



できるかぎりお淑やかにあちこち歩き回っては、テーブルから溢れんばかりに
並べられた食事に舌鼓。ほっぺたが落ちそうなくらいです。

…なんだか食事量が本当に増えてきて、昔の私に見られたとしたら、
「そんなにガツガツ食べて何がお淑やかですか」とか言われたりして。
…ちょっと食べる速度を落としましょう、はい。

これだけの料理が1週間も続くだなんて、ピーチ姫も用意周到です。
これでもタブー戦の被害を受けて質素にしたというのですから恐ろしい。

何故だか私も、他のファイター達からちやほやされる存在に。
よく頑張っただの、凄い魔法を使えるんだな、だの。
…実力との乖離に恥ずかしくなりますが。まだまだ、です。

450Mii:2021/07/25(日) 16:14:38 ID:kJrWaewE
リンク「いやあ、幾らでも食べられるな!さっすがピーチ、
   ここまで料理の質を高められるとは!料理人たちをいつか紹介してくれ!」

ピーチ「それはお褒めに預かりまして光栄だわ。頑張ったかいがあるものよ」ニコッ

リンク「…………」

ピーチ「…………」

リンク「………………………いい加減、休んだらどうっすか?いつか死ぬぞ。

   まあ、聞いちゃいないんだろうけど。…よし、じゃあ俺からも。
   こんなすっげー料理を用意してくれたことだし、俺からも御馳走をプレゼントだ!」

ピーチ「あら、一体なにかしら?」

リンク「はい、これ!!」サッ







リンクは ハチノコを くりだした!▼

ピーチ「」ピシッ

451Mii:2021/07/25(日) 16:17:48 ID:kJrWaewE
ピーチ「きゃああああああああああああっ!?む、虫っ!!
   ななな、なんてもの持ってくるのよっ!?とっととしまってちょうだい!
   場にそぐわないこと極まりないわっ!!!」
   【見た目の嫌悪感から思い切り拒否して怒る人】

デイジー「うわっ!こ、これが噂に聞くハチノコかっ!グロテスクだね…!
    …いい事考えた!ビンゴ大会の最下位罰ゲームでこれを食べることにしない!?」
   【嫌悪感より好奇心が勝る人】

ゼルダ「リンク、そんなものを持ち込まないでくれますか!?
   リンクが嗜好するのは聞き及んでいましたが…マナーがなっていません、よ!
   (一時の我慢で食べて見せればリンクの好感度が…あ、上がるのでは…?)」チラッ
   【本当は食べたくもないが損得勘定の天秤に掛ける人】

ルキナ「」
   【公認で典型的な虫嫌いの人】

サムス「ふっ、この程度の姿かたち、それほど気にするまでもない。好んで食べたいとは思わないがな」
   【こういったグロテスクさには耐性がある人】





ロゼッタ「…あ、これ罰ゲームで私が食べる展開ですか…
    せめて、調理場から調味料探してきましょう――――」スタスタ
    【自分の運の悪さから色々諦めている人】

デイジー「ちょ」

452Mii:2021/07/25(日) 16:21:45 ID:kJrWaewE
リンク「…え、誰も食べたがらないの?おいしいのに」

ピーチ「いいから片付けなさいっ!誰も欲しがりなんかしないわよ!
   周り全員引いてるじゃないっ!」

リンク「いやいや、男性陣なら流石に…」





マリオ「ま、まあ失敗料理と思えば…いや、でも…」

ルイージ「無理無理無理無理」フルフル

リュカ「あれはおいしい御馳走だ、あれはおいしい御馳走だ、
   泥沼だって思い込めば温泉になるんだから…………」

クッパ「ワガハイは割とグルメだからな」

リンク「あっれえ?」





リンク「しょうがないな……まあ、ヨッシーとカービィなら安牌だろ。
   折角取り出したんだし食べてもらうことにするか。

   ……………………………………ん?」

453Mii:2021/07/25(日) 16:26:09 ID:kJrWaewE
ヒルダ「………………………………」キラキラキラキラ

リンク「………………………………食べる?」

ヒルダ「よいのですか!?ありがとうございます!」

ゼルダ「えっ」



パクッ。

ヒルダ「ん〜〜〜〜!!ロウラルのハチノコも悪くはないのですが、やっぱりリンクの物には敵いませんね!
   リンクお手製の味付けまでされていてまさに高級、絶品です!
   貴重なたんぱく源で栄養面でも言うこと無し、嫌うだなんて勿体ない!」
   【普通にハチノコに慣れ親しんでいた人】

リンク「そうだろそうだろ!ヒルダはわかってるなー!
   なんだったら、あきビンに詰めてやるから持って帰るか?
   遠慮なんてしなくていいぞ!喜んでくれて俺もうれしいよ!」

ヒルダ「よろしいのですか!ぜひ!…あ、えっと。ラヴィオの分も頂くわけには、いかないでしょうか」

リンク「そのくらいお安い御用さ!そんじゃ、あきビン2本ぶんな!」

ヒルダ「わああぁぁ!!!!」パアアァ

ゼルダ「…………出遅れたっ!」ガーン

ピーチ「ヒルダはそんなこと一切考えてないと思うわよ」

454Mii:2021/07/25(日) 16:30:34 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「調味料、調味料っと…」

やや人気のなくなった廊下を歩いていると、剣の精霊さんに出くわしました。



ファイ「…………」



小休憩のためのソファに座り込んで、なんだかあんまり元気が有りません。
…まあ、ちょっと表情は掴みにくい方ですが。こんなところで、一体どうしたのでしょう。

ロゼッタ「あの、どうかされたのですか?もしかして、料理が口に合わなかったとか。
    あるいは、場の雰囲気にあてられて気疲れしてしまったとかですか?」

ファイ「…ロゼッタ様。いえ、そのようなことはありません。
   まあ、私の体はもともと食事を必須とはしないのですが…。
   心配をおかけして申し訳ありません」

ロゼッタ「…………」

なんだか放っておけなくて、ファイさんの隣に座ります。
ちらりと伺うと、やっぱり何かを思い詰めているよう。

ロゼッタ「リンクへのサプライズプレゼントのことで、なにか思う所があるのですか?」

ファイ「…お見通しでしたか」

ロゼッタ「流石にそのくらいしか考えられませんよ」フフッ

455Mii:2021/07/25(日) 16:33:42 ID:kJrWaewE
ファイ「…………衝動的に動いて、後ろめたかったのかもしれません。
   結果的に丸く収まったから多少はよかったものの、多くの方にご迷惑をかけてしまいました」

ロゼッタ「衝動的…なにか、焦っていたのですか?」



ファイ「…そうですね。私は、焦っていました。

   私などより、マスターは何歩も先を歩いている。
   今のままでいいのか、何かできないのか、自問自答して。
   もっと強くなりたい、お役に立ちたいと思っても、何も見つけられなくて。

   結局、贈り物を差し出すという形で終わってしまいました。
   私自身は、何も成長できていません…半身失格です」

ロゼッタ「贈り物だけでも、凄いことではないですか!
    ファイさんの気持ち、しっかりリンクに伝わっていますよ!大丈夫!
    あんなに泣いて喜んでいたではないですか!」

ファイ「…ですが。やはり、半身としては…戦いで貢献したい。
   贅沢な悩みであると分かっては、いるのですが…………」



そこにあるのは、剣の精霊としての、矜持のようなものでしょうか。



ロゼッタ「…………半身としての、意気込み、ですか…」

456Mii:2021/07/25(日) 16:36:19 ID:kJrWaewE
正直、半身って言われても。どういう経緯でどういった立場になったのか、
まるでわかっていません。お恥ずかしながら。

それでも、とにかくパートナーとして恥じないチカラを得たいという気持ち。
それはひしひしと伝わってきました。そして、それが無理難題だという悲しみも。



ロゼッタ「……………………」



でも、第三者の介入があれば、無理難題じゃなくなったりして。



ロゼッタ「…………………………………………ふむ」





ロゼッタ「――――――――閃きましたっ!!!」

ファイ「…!?」



いいことを、思いついちゃいました!!

457Mii:2021/07/25(日) 16:41:11 ID:kJrWaewE
デイジー「あ、ロゼッタがようやく戻ってきた!まったくもう、早とちりが過ぎるんだか――――――――」

ロゼッタ「リンク!リンク!ちょっとお話が!」

リンク「ど、どうしたどうした。今せっせとヒルダのためにハチノコ詰めてるんだけど」

ピーチ「目に毒だから、せめて別の場所でこっそり作業してちょうだいよ…」



ロゼッタ「いつぞや、病院でリンクが私に土下座したときの罪滅ぼしについてですが!」

リンク「ういっ!?」ピタッ

ロゼッタ「祝賀会の間だけ、何も聞かずにファイさんを貸してください!
    ちょっとだけ、試したいことが有るんです!」

ファイ「私からも、お願いします。マスター」

リンク「え、ええ!?……………………まあ、ファイもOK出してるんなら…いいか。そのくらい喜んで。
   ただし、あんまり変な事させないでくれよ?ロゼッタだから大丈夫だと思うけど」

ロゼッタ「ありがとうございます!あんまり期待せずに待っておいてください!
    では早速行きましょう、ファイさん!」

マリオ「え、ちょっと、どこ行くんだ!?何をしに!?」

ロゼッタ「ファイさんとの作戦会議をしっかり済ませたあと、祝賀会抜けさせてもらって、
    適当な原っぱに行ってきまーす!何をするかは…秘密でーす!!」ダダダッ

458Mii:2021/07/25(日) 16:44:39 ID:kJrWaewE
ルフレ「…………んー」



マルス「ルフレ、ワインがぽたぽたと零れて行ってるんだけれど。
    あまり根詰めてないで。たまには息抜きをしよう」

アイク「そうそう!旨いもの食ってりゃ、いい案も浮かびやすいだろ」

ルフレ「そ、そうは言いましても。
    僕の判断次第で、王国が潰れるかどうかが決まっちゃうかもしれないのに…
    うわあ…頭が、痛い…………………!!
    中々名案の糸口も見つかりませんし…………!!」



ルキナ「…………??」





ルフレは未だに悩んでいた。

459Mii:2021/07/25(日) 16:50:03 ID:kJrWaewE
――――ファイさんは、凄い精霊に違いありません。

使えそうな「モノ」の候補を頼んでみたら、予想以上の代物がやってきました。
正六角形8面と、正方形6面とで形成された多面体構造、おおよそ丸っこいその珠は――――――――!



ロゼッタ「…これが、ファイさんの地元の…時を司る鉱物『時空石』を加工した…



    ――――――――神聖な、『時空珠』――――!!



    すごい、すごいですよ、これは!なんて力に溢れているのでしょう!
    私の空間魔法と、これほどまで相性がいいとは…!!
    どんどん術式が浸透していきます、怖いくらいに!これならば、もしかして――――――――」パアアアアァァァァ

ファイ「元の材料である時空石も大量にお持ちしました。持ってくるのに時間が掛かり、申し訳ございません。
   …それで、これを一体、どうするのですか?」





ロゼッタ「これに、私の魔法を編みに編み込んで――――
    ファイさんだけの、新たなる攻撃手段に仕上げて見せます!!」グッ!

ファイ「――――!!」

460Mii:2021/07/25(日) 16:55:41 ID:kJrWaewE
〜 12月11日 〜

リンク「どうしたんだ、ロゼッタ。急にこんな草原まで連れて来て」

ファイ「…………」スッ

リンク「なんだかファイが妙に緊張してるっぽいし。
   ロゼッタが言ってた用事が済んだのか?そんでもって、またもやサプライズ?」

ロゼッタ「…はい!成功するか未確定…駄目元といえば駄目元だったのですが、
    なんとか形になりました!細かい所は後でお二方で詰めて行ってくださいね!」

リンク「形になった?何が?」

ロゼッタ「ファイさんの、新たな攻撃手段ですっ!
    これでもう、ファイさんが力不足を悩むこともなくなる、はず!」

リンク「力不足…?ファイ、そんなことを気にしていたのか。
   もう十分、ファイは頑張ってくれてるぞ。気にし過ぎだよ」

ファイ「…そのお言葉は非常に嬉しいのですが。
   やはり、現状に胡坐をかいていたのでは、あまりにも怠惰でありますので。
   ロゼッタ様に、思わぬ助言を頂いた次第です」

リンク(ファイの胡坐姿とかなんだか想像しがたいな)

リンク「よーし。じゃあ、その新しい攻撃手段とやら、さっそくみせてくれよ。
   そこまで意気込むからには…期待していいんだよな?」ニヤッ

461Mii:2021/07/25(日) 16:59:09 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「うう、ちょっとプレッシャー…ですが、お任せください!
    ターゲットはとりあえず、あの岩ということで!」ビシッ

100メートル程先に、5メートルほどの大きさの、中々大きな岩塊が。

リンク「…ほう?」

ロゼッタ「ちなみに、ここからリンクがあの岩を攻撃するとしたら、どうします?」

リンク「接近禁止が前提だよな。弓矢じゃちょっと荷が重いし、まあバクダンかな…。
   ただ、バクダンの威力は俺の戦闘力と関係ないから、ちょっと時間が掛かるかも」

ロゼッタ「…簡単だよとか言われたら困り果てていたところでした」

リンク「ははは。それで?ファイはどうやってあれを攻撃するのかな?」



ロゼッタ「では、やっちゃってください、ファイさん!」

ファイ「はい!」



深呼吸したファイが、ブゥンと力を籠めると。
目の前に、直径2メートル超えの、青白く文様輝く「時空珠」が現れました。



リンク「うわっ!そ、それって、時空珠じゃんか、懐かしい――――」

462Mii:2021/07/25(日) 17:02:38 ID:kJrWaewE
リンクの呟きは半分正解、半分間違い。

もともとリンクが馴染みのある時空珠は、この半分以下の大きさだったはずです。
ファイさんに時空石の加工をお願いしながら…スペックと相談し、徐々に大きくしていった成果です。
そして、異空間から出現させられるようにしたのは、もちろん私の鉱石…いえ功績です。

ロゼッタ「余所見しちゃいけませんよ、まだまだこれからです!」



ファイさんが自身を剣の形に変貌させて、――――時空珠を、強烈に、叩くっ!!



ガキイイイイイィィィィン!!!

リンク「…!?」



叩く!叩く!叩く!まだまだ、叩く!
短い間の余りの連撃に、激しすぎる衝撃音が響き渡ります!
不思議なことに、浮かんだままの時空珠は、動き出す気配はありません。しかし――!



リンク「なんだこりゃ!?へんなヤジルシ…いやベクトル、か?
   珠っころからグングン伸びて行ってるぞ!?」

463Mii:2021/07/25(日) 17:08:43 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「自他が方向と速度を理解把握しやすいように…
     シンプルながら、視認性アナウンサーを付けさせていただきました!

    そろそろ十分ですよっ!ファイさん!!  3、2、1――――ハイッ!!」



ファイさんが元の体に戻り、最後のトリガーとなる魔力を込めます!

ファイ「――――リスタートッ!!」パアァ

リンク「こ、これって、タブーを仕留めた時の――――!?」



制止した珠に与えられるだけ運動エネルギーを与え続けて、気の済むまで与えたところで、一気に放出――!!
この「静と動」の組み合わせは、思いの外、敵に対して絶大なる効果をもたらすみたいなので!



時空珠は、有り得ないほどの超高速で、岩に向かって突き進み。



ズガガガガガガガアァァァァ―――――ン!!!

リンク「なああぁぁぁぁ――!?」

いともあっさり、遠方の岩を完全粉砕して見せました!
轟音に、上空の鳥たちが一目散に離れていくほどのド迫力です!

464Mii:2021/07/25(日) 17:11:28 ID:kJrWaewE
ファイ「――――――――――――キャッチ」



大地にめり込み、もうもうと土煙を巻き上げながらようやく止まった時空珠は、
これまた私の編み込んだ魔法の賜物で。
ファイさんが一言発せば、「プンプンの持つ手裏剣」のように。
たちまちファイさんの手元にシュンッと戻ってきます。



ロゼッタ「静止状態のまま、威力をチャージしてチャージして…一気に解き放つ!

    これが、リンクを支えるファイさんの新たなるチカラ。
    リンクが欲しがっていた、遠距離攻撃の第一候補となり得るチカラ。
    僭越ながら、私が勝手に命名してしまいました。







   その名も――――――――    ピ  タ  ロ  ッ  ク   !!」



リンク「す、すげええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ――――!!!!」

465Mii:2021/07/25(日) 17:14:18 ID:kJrWaewE
リンクもこれ以上ないほど驚いてくれて、大層満足!

ロゼッタ「これで、ちょっと早いですが、ファイさんはお返しいたします」

ファイ「ロゼッタ様、本当にありがとうございました!私、少し自信が付きました!」

ロゼッタ「いえいえ、ファイさんのパワーと強靭性があってこそ為せる技ですよ!
    私も、お役に立てて本当に嬉しかったです!」

リンク「そっか。いやいや、俺もロゼッタに罪滅ぼしができて本当によかった――――」





リンク「…………………………………………」





リンク「……って、ちっともよくないぞおおおぉぉぉぉ――――――――!?」

ロゼッタ「!?」

リンク「よくない!まったくよくないっ!返せてないよ!?
   こんなすっごいプレゼントまでもらっちゃって、どうすんの俺!?

   これ、借りを返すどころか利子まで付きまくったんですけどっ!?
   ダメじゃん!なんの解決にもなってないよ!悪化してるよ!」

466Mii:2021/07/25(日) 17:20:17 ID:kJrWaewE
ロゼッタ「駄目…でしたか?」ショボン

ファイ「…………」ショボン



リンク「駄目じゃないよ!すっごく嬉しいよ!だからこそ駄目なんだよ!
   ロゼッタに返せてないよ何もかも!
   というかよく1週間…いや5日で完成できたな!?」

ロゼッタ「私は思いっきり空間魔法を行使出来てスッキリしました!」ムフー!

リンク「そういうことじゃなくてですね!ほんと天然だな!
   …ああもう、俺どうすればいい!?なんでもするから何か言い付けてくれよ!
   なあ!なあ!生き恥は嫌なんだけど!」

ロゼッタ「そ、そんな大げさな…!わ、分かりました、考えておきます」

リンク「絶対だぞ!絶対だかんな!!」



…あれ?なんだか、予想と違う展開になってしまいました。
まあ、こうなったら、適当に負担とならないお願いを考えておきましょう。





祝賀会は、残り2日です。

467Mii:2021/07/30(金) 21:23:47 ID:1j/hfldE
〜 祝賀会 会場 〜

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」

ヒルダ「あ、あの、恐縮ながら、いつまで飲み比べを―――」ビクビク

ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」



サムス「はやく次回作が出てほしいんだあ…………ZZZ」

ファルコ「フォックスっ!酒とノンアルの区別もできねえのか…………ZZZ」

ゼルダ「リンクのばぁかぁ…………ZZZ」

ヒルダ「……………………」

ラヴィオ「は、はい、お二方、どうぞ…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」ダンッ!

ヒルダ「あ、あの―――?」

468Mii:2021/07/30(金) 21:27:40 ID:1j/hfldE
ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」

ヒルダ「…………」

ラヴィオ「は、はい、どうぞ、お二方…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「ほんと、キノコ王国のお酒は美味しいわね…幾らでも飲めちゃいそう。
    さあ、次の盃、持ってきなさい!」ダンッ!

ヒルダ「あ、あの、だいぶ酔われていらっしゃいますね?」

ハイリア「酔ってないわ!」

ヒルダ「なんだか言い回しが固定されてきましたよ?」

ハイリア「そんな適当な言い掛かりをつけて、逃げる気ね!」

ヒルダ「い、いえ、滅相も無い…………ですが、そろそろ終わりにしても…」

ハイリア「それはもう、どちらかが潰れるまでよ!
    他の人たちはみんな、逃げるか潰れるかしちゃったし!」

ヒルダ「……………………助けてくださいぃ」

469Mii:2021/07/30(金) 21:30:25 ID:1j/hfldE
ラヴィオ「は、はい、どうぞ、お二方…………」

ハイリア「――――」ゴクゴク

ヒルダ「――――」コクコク

ハイリア「これ、水じゃないのっ!ふざけてるの!」バシャッ!!

ラヴィオ「ひ、ひいっ!申し訳ございませんっ!!」

ピーチ「……ハイリアさんハイリアさん、ここはちょっと酒の趣を変えてみませんこと?」

ハイリア「どういうことかしら、どれもこれも、一級品のお酒ばかりだと思うけど。
    安酒なんてこの場には一つもないでしょう?」

ピーチ「いえいえ、この程度で満足されているようでは、女神失格では?
   こちらのお酒こそが、ぜひ召し上がっていただきたい絶品酒なのですが…」

ハイリア「…へえ?そこまで挑発するのなら乗ってあげる。――――頂くわ」

ヒルダ「あ」



ハイリア「――――――――ZZZ・・・」

ヒルダ「…………さすが『桃葵の誓い』、一瞬で意識を失いましたね。
   恍惚の表情で倒れ込みました、おかげで助かりました」

ピーチ「まったくもう、とんだ女神様だこと」

470Mii:2021/07/30(金) 21:33:53 ID:1j/hfldE
パルテナ「でぇすから!私はっ!好きで人間を攻撃したわけじゃないんですよっ!
    操られてただけなんですよっ!酷いとぉ、思いませんかっ!
    守ろうとしていた者を知らず知らずのうちに苦しめていた、この仕打ちっ!
    やってられませんよっ!神は私がお嫌いですかぁっ!」ヒック

ピット「そうですね。私も分かってますよ、パルテナ様は何も悪くありません」

パルテナ「――――」ゴクゴク

パルテナ「だというのにっ!私のこと、勝手に呑気だとか能天気だとか決めつけて!
    傷ついていないだなんて決めつけてっ!労わるどころか後ろ指指す始末っ!
    みんなして、酷いとぉ、思いませんかっ!もう泣きたいですよっ!」

ピット「もう泣いてますパルテナ様」

パルテナ「そこはツッコむところじゃないでしょう!」バシャッ!

ピット「…………」ポタッ・・・ポタッ・・・

パルテナ「でぇすから!私はっ!好きで人間を攻撃したわけじゃないんですよっ!
    操られてただけなんですよっ!酷いとぉ、思いませんかっ!
    守ろうとしていた者を知らず知らずのうちに苦しめていた、この仕打ちっ!
    やってられませんよっ!神は私がお嫌いですかぁっ!」ヒック



ピット「…………」ポタッ・・・ポタッ・・・

ピット「そうですね。私も分かってますよ、パルテナ様は何も悪くありません」ポタッ・・・ポタッ・・・

471Mii:2021/07/30(金) 21:36:45 ID:1j/hfldE
ピーチ「パルテナ、悪酔いし過ぎよ…………女神ってみんなこうなのかしら。
   いい加減飲むの辞めなさい。はた迷惑だから。
   ピットったら、ずぶ濡れになって…はい、このハンカチで拭いて」

ピット「ありがとう、ピーチ」フキフキ

パルテナ「だというのにっ!私のこと、勝手に呑気だとか能天気だとか決めつけて!
    傷ついていないだなんて決めつけてっ!労わるどころか後ろ指指す始末っ!
    みんなして、酷いとぉ、思いませんかっ!もう泣きたいですよっ!」

パルテナ「――――」ゴクゴクゴクゴク

ピーチ「…………」イラッ

ピーチ「…………ちょっとふん縛って、パルテナを部屋に放り込んでおくわね…
   今の今まで任せっきりでごめんなさい、別の所で楽しんできてちょうだい」





ピット「あ、パルテナ様に信頼され切っている現状に満ち足りているので
   このまま僕たちは気にせず放置しておいてください」キリッ



ピーチ「」

ピーチ「ア、ウン、ヘエ、ワカリマシタ」

472Mii:2021/07/30(金) 21:41:19 ID:1j/hfldE
パルテナ「…………」

パルテナ「――――」スゥッ



パルテナ「酔い覚めの奇跡っ!!」パアアァァァ



ピット「あーっ」

パルテナ「何をがっかりしているのですか、ピット。これ以上迷惑かけられません。
    でもスッキリしました、ありがとうございます」

ピット「勿体ないお言葉です!」ビシッ

パルテナ「それで、ピーチさんピーチさん!今、色々と祝賀会の様子を見て回っているところなんですか、もしかして!
     私も付いて行ってもよろしいですか!」

ピーチ「べ、別に構わないけど…………さ、酒臭いっ!
   酔いは醒めてもアルコールが抜けた訳じゃないの!?」

パルテナ「ありがとうございます!それでは、レッツゴーですね!
    御歓談相手を探しに参りましょう!」

ピーチ「まるで聴いてくれていないし…」

473Mii:2021/07/30(金) 21:45:15 ID:1j/hfldE
ソニック「おー、ピーチじゃないか。楽しんでるか!俺は楽しんでるぞ!」

ピーチ「どっちかというと、管理する立場として…おちおち寝てもいられなくて
   疲労が積み重なっていってるけどね」

ソニック「しかし、こうも体が酒で火照ってくると、あれだな。
    思いっきり走って競争でもしたくなるぜ!」

ピーチ「走り切った後の皆さんが悲惨なことになるからやめてよね?フリじゃないわよ?」

パルテナ「ときにソニックさん、タブー戦ではお疲れさまでした。
    自分も戦いたいのをグッと堪えて、情報収集に努める!
    なかなかできることじゃありませんよ!」

ソニック「まあ、褒められたからには任務を全うしなきゃな!」

パルテナ「ピーチもなにかお褒めの言葉とか、褒賞とか、ないんですか?
    流石になにもなしはどうかと思うのですが」

ピーチ「…言われなくても分かってるわよ。
   ソニック、私が偽ロゼッタ達に隔離されている間、よく頑張ってくれたわね。
   貴方の功績は、数値には現れなくとも、素晴らしい物よ。
   なんなりと欲しい物を言ってちょうだい、可能な限り用意させてもらうから」

474Mii:2021/07/30(金) 21:51:35 ID:1j/hfldE
ソニック「…………ふむ、なら折角だから貰っておくか。
    こう、より己の素早さが鍛えられるアイテムが欲しいぞ!」

ピーチ「『スバヤクカワール』と『センセイサレナイ』、どっちのバッジがいい?」

ソニック「…いや、それはちょっと素早さを鍛えるとは違うだろう」

ピーチ「じゃあパワフルダッシュキノコで」

ソニック「一時的なブーストが欲しいわけじゃない」

ピーチ「…インドメタシン1個っと」メモメモ

ソニック「おい」

ピーチ「…冗談よ、冗談」

ソニック「全く…………」









ピーチ「10個もあればいいわよね?」

ソニック「数の問題じゃないぞ!」

475Mii:2021/07/30(金) 21:54:26 ID:1j/hfldE
ポケトレ「…………」



ピーチ「噂をすれば、ドンピシャな相手が見つかったわ」

ポケトレ「…………」バッテン

ニャース「お酒は二十歳になってから、俺は永遠の10歳だ!…と言ってるニャ」

ピーチ「…みょ、妙にカレーコーナーに群がってるわね。何杯目?」

ポケトレ「…………」モグモグ

ニャース「最新作の販促でもしておくぞ!…と言ってるニャ」

ピーチ「やめて時間軸が狂うから。…聴くところによると、
   偽ロゼッタたちがせっせと設置した爆発物…もとい砲台を、
   ステルス戦法で粗方除去してくれたんですって?

   市民や観光客に死者が出なかったのは、間違いなくあなたのお陰ね。
   いくらお礼を言っても言い足りないわ」

ポケトレ「…………」グッ!

ピーチ「…えーっと、褒賞として、何か欲しい物って、ある?」

パルテナ「なんでも言っちゃってくださいまし。ピーチがささっと叶えてくれますって」

ピーチ「パルテナ、貴方ねえ…まあ、大概のものなら用意できるけど…」

476Mii:2021/07/30(金) 21:56:55 ID:1j/hfldE
ポケトレ「…………」

ポケトレ「…………」

ポケトレ「…………!」ピコーン











ニャース「――――切断のない世界、と言ってるニャ」







ピーチ「――――――――ごめんなさい、私ごときでは無力なの…
   で、でも一応、任天堂に掛け合ってみる、わね…?
   というか、掛け合ってみるだけで許してちょうだいね…?」ガタガタガタガタ

ポケトレ「…………」ショボン

477Mii:2021/07/30(金) 21:59:20 ID:1j/hfldE
ネス「あー!ピーチじゃん!こんにちはー!
   僕、もっといろんなソフトドリンクが飲みたい!ここお酒ばっかりだよ!」

リュカ「あ、あのさあネス、流石に図々しいって。
   ソフトドリンクだって30種類くらいは用意されてるじゃない」

ネス「30種類程度じゃ飽きたっ!お酒は何百種類とあるのにずるくない?」

リュカ「…腹いせというか免罪符にしたというか、料理の方を馬鹿食いしてるけどね…」

パルテナ「そういう時は、ソフドリ同士を混ぜて新たな味を開拓しましょう!」

ネス「子供かっ!いやまあ僕たち子供だけれどもっ!」

ピーチ「…んー、MOTHER組はMOTHER組で、最後の踏ん張りで石化対策。
   見事に大当たりして、持ちこたえてくれたのよね。
   貴方たちが居なかったら、本当にまずいことになっていたわ。
   …ほかのみんなはどちらに?」

ネス「ファイターじゃないのに祝賀会に居座るのは居心地悪いので――
  とかなんとか言って、城下町の方に繰り出しちゃったよ。付き合い悪いなあ。
  ようやく羽を伸ばせるーって、アナとかポーラとかはしゃぎまわっていたけどね。

  …あれ、もしかして皆に用があった?」

ピーチ「あ、急ぎってわけじゃないけれど。何か欲しい物とかあったら――――」

ネス「褒賞っ!褒賞だね!わーい!」

478Mii:2021/07/30(金) 22:02:41 ID:1j/hfldE
ピーチ「…え、ええ。まあ。それでは今から、追加のソフトドリンクを」

ネス「いやいや、そんな褒賞はいやだからね!?何にしようかなー…

  そうだ!サンドイッチ1年分とか、どうかなっ!1年間サンドイッチ食べ放題!」

ピーチ「へえ、やっぱり子供らしくて可愛いわね。サンドイッチ…ロゼッタの出番かしら」

ネス「チョコチップと相性抜群!とっても美味しくて、思わず走り出してスキップしたくなって、
  厄介な敵も、広大な大地も、そしてたくさんの思い出も、一切合財スルーして行ける優れものグフフフフ」

ピーチ「…なんだか禍々しい感情が混ざり込んでない?気、気のせいよね?」











ネス「…あ、そういえば。ちょっといい、ピーチ?」コソッ

ピーチ「なになに、内緒話?」シャガミ

リュカ「…………??」

479Mii:2021/07/30(金) 22:05:44 ID:1j/hfldE
ネス「さっきさ。罰ゲームで黒歴史話す羽目になって、
  『内面世界で素っ裸で延々と歩き回ったことがある』って暴露しちゃったんだけど。
  言ったそばから、無茶苦茶恥ずかしくなった僕のことは一旦置いといて。



  一緒にゲームで遊んでたデイジーが、酔っ払いながら
  『現実世界で裸になったピーチよりはマシじゃーん!』とか言って
  根も葉もない噂、というかホラ話を面白おかしく語り出しながら大笑いしてたんだけど」ヒソヒソ

ピーチ「」グシャッ

ネス「女性陣はえらく引いてたし、ムッツリな男性陣の数名が鼻血出す事態になってたし。
  …変に騒ぎが大きくならないうちに止めといたほうがいいよ?いやほんと」



ピーチ「…………エエソウネ、本当ニアリガトウ、ネス」ゴゴゴゴゴゴゴゴ



ネス「うんうん、そりゃあぶち切れたくもなるよね…わかるわかる。
  あれじゃあピーチが手の施しようのない露出狂みたいな扱いだったもん。
  僕は子供だったことが幸いして逆に冷ややかだったけど」



ピーチ「……………………エエソウネ、本当ニアリガトウ、ネス」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

パルテナ「」

480Mii:2021/07/30(金) 22:09:40 ID:1j/hfldE
デイジー「……おぉぉぇえぇ…謎のピンクの悪魔にフライパンのようなもので背後からしこたま殴られて、
    なんか記憶がぶっ飛んだ気がするんだけど…私、何してたっけ…?
    
    …あるぇ?なんか、周りにも頭から血を流して倒れてる人がいっぱいいるんだけど…?
    みんな、だいじょうぶぅ…?事件?事件なのか…!?」

ピーチ「ねえデイジー、そういえばあなたの褒賞がまだだったわね!」

デイジー「うわっ、ピーチ!?…褒賞?」

ピーチ「遠慮はしないでいいのよ?
   貴方が偶然とはいえゼルダ、ロゼッタ、ヒルダと合流してくれたからこそ、
   そして彼女たちを短期間で強引に鍛え上げてくれたからこそ、
   戦いを打開することができたのだから。

   素晴らしい活躍よ!何が望みかしら!」

デイジー「…………褒賞、かあ」

デイジー「…………」

デイジー「先生。スマブラがしたいです」

ピーチ「よし、認めます」

デイジー「わーい、やったー…………」



デイジー「………………………って、マジっ!?ホントにっ!?ホントッ!?」

481Mii:2021/07/30(金) 22:14:39 ID:1j/hfldE
ピーチ「嘘なんてつかないわよ」

デイジー「ホントなんだね!?嘘じゃないの!?クーリングオフはできないからね!?

    ――――いやったぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!
    最高の褒賞だよぉ――――――――!!
    これであと20年は戦えるぞー!!」

ピーチ「よかったわね!おめでとうデイジー!」

















ピーチ(元から任天堂より通達されたペナルティ期間が終了して、
   次の大会で参戦させるつもりだった、ということは黙っておきましょ!)

482Mii:2021/07/30(金) 22:17:30 ID:1j/hfldE
リトル・マック「褒賞、だと?」

ピーチ「そ。ロゼッタにパンチの極意というものを叩き込んでくれたでしょ?
   結構あれ、意義が大きかったのよ」

リトル・マック「要らない要らない、そんなもの。
       別に対価が欲しくてロゼッタを鍛えたわけじゃない。
       教えるべきだと思ったから教えたまでだ」

ピーチ「そこをなんとか。私の思いを無碍にするのも失礼よ?」

リトル・マック「…………あ、じゃあ…………」

ピーチ「なになに?」



リトル・マック「うちの馬鹿コーチがロゼッタを鍛える合間合間にしでかしたセクハラを
       俺に免じて不問…いやせめて鞭打ち5回くらいにしていただけないでしょうか。
       何度か腰まわりを触ってロゼッタが青筋を立ててたので」ドゲザ

ピーチ「え、あ、うん。一応ロゼッタにも聞いてみる」

パルテナ「正直者ですねー」

デイジー「でも流石にロゼッタでも温情はくれないと思うなあ…」

483Mii:2021/07/30(金) 22:20:05 ID:1j/hfldE
トゥーンゼルダ「…ああ、統率したときの功績に対する褒賞ですね?
       そんなの、要りませんよ。困ったときはお互い様です。
       …なんだか、当時の振る舞いはあんまり思い出したくないですし…」

デイジー「そんなこと言わずに!バシバシ要求しちゃいなよ!」

ピーチ「どうして貴方が付いて来てるのよ」

デイジー「なんとなく面白そうだったから!」

パルテナ「というか、ゼルダにトゥーンゼルダにハイリア様に、
    なんというか出せるだけ出したというゴチャゴチャ具合ですね」

ピーチ「…………空耳が聴こえたわ」

トゥーンゼルダ「…………で、では1つだけ」

デイジー「なに、なにっ!1つと言わず3つでも100個でも――――」



トゥーンゼルダ「トゥーンの私たち…いえ私がもっと強くなる機会をください!
       ヒルダ姫にも追い越されたっぽくて、ちょっと悔しいというか。
       (トゥーン)リンクに相応しいパートナーになりたいんです!」

デイジー「くっ!?純真過ぎてみていられないっ!?ははーっ!」

ピーチ「…HD化だけじゃだめ?…駄目よね、そうよね…新作じゃないと意味がないわよね…」

パルテナ「あらあら」

484Mii:2021/07/30(金) 22:22:50 ID:1j/hfldE
デイジー「いやー、みなさん中々謙虚だよね、もっと欲しがればいいのに」

ピーチ「そんな、ファイターが誰も彼も浅ましいみたいな言い方止めなさいよ」

デイジー「でも、それだけ凄い事やってきたじゃん。
    やってきたからには、ちゃんと認めてもらうことは大事じゃない?
    それがピーチの信条、信賞必罰ってものでしょ?」

パルテナ「そうですよねー」

ピーチ「まあ、それは否定しないわ。
   凄いことをやった分だけ、いくらでも感謝し報いる、それが私のモットーよ」

パルテナ「わああ…!さっすがキノコ王国のトップ!そこに痺れる憧れる―っ!」

ピーチ「ふふっ、おだてても何も出ないわよ」







パルテナ「ということは、体を張ったラジオ番組で王国中を和ませて、ロゼッタの至宝の眼を奇跡の力で実質2度も治して
    スレの説明不足の解説役を一手に引き受けた私もむちゃくちゃ褒賞を期待していいんですよね!」

ピーチ「」

デイジー「」

485Mii:2021/07/30(金) 22:25:53 ID:1j/hfldE
ピーチ「貴方、それが狙いだったのね…妙に不自然についてくると思ったら…」

パルテナ「いぃえぇ、催促したみたいでかたじけない。
    実はですね私っ!欲しい物は既に決めてるんです!
    あの、究極のお酒っ!あれさえあれば他に何も要りません!
    というわけで、『桃葵の誓い』を下賜してくださいませ!
    飲んだ傍から、喉が切望してやまないのです!」

デイジー「まさに傾国の美酒」

ピーチ「下賜って…そんな言い方でいいの、プライドは?全く…
   それで?どれだけ欲しいのよ。言っちゃなんだけど、あげられるとしたら――」

パルテナ「いえいえ!まさか、そんな!
    キノコ王国のピーチ姫ともあろう御方に、こんな素晴らしいお酒を!
    1本で国ひとつが動きかねないような途轍もない価値があるお酒を!
    図々しく『何本ください』だなんて言えませんよ!」

ピーチ「…………え?」

デイジー「…………???」



パルテナ「で・す・か・ら!どれだけ下さるかは――――――――
    ピーチ御自ら、決めてしまってくださいな!」

ピーチ「」ピシッ

デイジー「…………??????」

486Mii:2021/07/30(金) 22:28:59 ID:1j/hfldE
パルテナ「もちろん!

    『こんな些細な功労でこのお酒を欲しがるだなんて図々しいっ!
    ロゼッタを2度も救ったあ?それがどないしたんや?』

    ということなら、それこそ耳かき一杯の量でも構いませんよ!
    ピーチの裁量に全てお任せ致します!」

デイジー「…………あっ」

ピーチ(……………………女狐に嵌められたぁっ!!?私、女だけどっ!)



――――身動き、取れないっ!?
提示する量が少なければ少ないだけ、王国とロゼッタを軽んじたって不名誉が残るっ…!?
結局見栄を張らざるを得なくなって、何本もパルテナに持っていかれることに…!?



パルテナ「回答は祝賀会が終わるまでにしてくださいねー!」タタタタタ

ピーチ「…………くうぅ…やられた…」

デイジー「す、すなおにさっさと1本確約しとけばよかったね…
    別に、今からでも遅くないよ。パルテナの挑発なんて無視して、
    何食わぬ顔で1本だけ渡せばそれでよくない?」

ピーチ「――――それは、私のプライドが」

487Mii:2021/07/30(金) 22:31:23 ID:1j/hfldE
ピーチ「…………頭が痛いわ、ほとんどアルコールなんて摂取してないのに」



――――ぱた、ぱた、ぱた、ぱた。



ロゼッタ「ピーチ姫っ!デイジー姫っ!一体どうしたというのですか!」

デイジー「あ、見かけなかったロゼッタがようやく戻ってきたか。
    おっそいよ、祝賀会も終盤に差し掛かろうとしてるのにー」

ロゼッタ「…い、いまはそんなことはどうでもいいのです!
    どうしてそんなにお二人とも表情が曇って――――

    会場に舞い戻った途端、真っ先に目に付くほどの。
    どんよりとした雰囲気を醸し出しているではないですか!」

ピーチ「だ、大丈夫よ、ロゼッタ。心配かけてごめんなさい。
   私たちで解決できる…解決してみせる。その程度の困りごとだから。
   そんなに深刻な話じゃないの。パルテナにちょっとからかわれただけで」

ロゼッタ「なっ…!そんな!文句を言いに行ってきます!
    親しき仲にも礼儀あり!許せません!」

ピーチ「い、いいからいいから!むしろそれは都合が悪いというか、
   私が惨めになるというか、いろいろとややこしい事情があるの!」

ロゼッタ「ですがっ――――」

488Mii:2021/07/30(金) 22:35:19 ID:1j/hfldE


凛とした、左目。魔眼のチカラが新たに宿った、左目。



ピーチ「…………ねえ、ロゼッタ。それはともかく、ちょっとお願いがあるんだけど。
   私を助けると思って、そのまま30秒ほど…私のこと見つめてほしいの」

ロゼッタ「えっ」



デイジー「…………」

ピーチ「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」

ピーチ「…………」

ロゼッタ(あ、あれ?何かのドッキリ?罰ゲーム?呪いの儀式?
    それとも隠し撮りされてまた変な挿絵に使われる?あれ?
    祝賀会をすっぽかしすぎて、激怒される5秒前?)ダラダラ



そのまっすぐで純粋な瞳に圧倒されて、わだかまっていたもの、全部飛んで行った

489Mii:2021/07/30(金) 22:40:18 ID:1j/hfldE
ピーチ「…………はい、ちょっとだけお辞儀して頭を下げなさい。ただでさえロゼッタは背が高いんだから」

ロゼッタ「……は、はあ」スッ








ピーチ「いい子いい子」ナデナデ

デイジー「あ、私もやる私もやるー」ナデナデ

ロゼッタ「」

ロゼッタ(何が何だかさっぱりわかりません!?)









ロゼッタの頭をそっと愛おしく撫でて、撫でて。
そうだ、大切なもの、しっかり守れたんだ。
こんなに嬉しくて、心穏やかになれる話はないってこと。

490Mii:2021/07/30(金) 22:42:27 ID:1j/hfldE
ピーチ「…ん。ありがとう、もういいわ」

デイジー「堪能したねー」

ロゼッタ「あ、はい。ええと。ではパルテナのもとへ――――」

ピーチ「それはもういいから。大人しく他の人たちと歓談してなさい。
   ……………………私たちとの約束よ、守ってね?」

ロゼッタ「…………………そこまでおっしゃるのなら」

しぶしぶという感じで、ようやくロゼッタが折れてくれたみたい。
そのまま、人の集まりに吸い込まれて行った。











ピーチ「さてと、デイジー。

   ちょっと、サラサ・ランドのお姫様に向けてご提案があるのだけれど」

デイジー「…………ほうほう、乗った」

491Mii:2021/07/30(金) 22:45:35 ID:1j/hfldE
ピット「え、ええ…?そんな挑発めいたことをやったんですか?」

パルテナ「ふふふ、本当にあのお酒は美味しかったんですから。ピットもさぞや美味しく飲めたでしょう?」

ピット「ま、まあ天にも昇るような味でしたけれど…天使なだけに」

パルテナ「…おや。ピーチが早速息を切らせてやってきましたね。
    ふふ、これでしばらくお酒には事欠きません」

ピーチ「…………パルテナ。話がまとまったわ」

パルテナ「ありがとうございます!話が早くて助かりました!
    それで、結局どうなりましたか本数は!」ニヤニヤ





ピーチ「在庫分10本と、向こう9年の先約90本で、100本あげるわ。あとでしっかり目録も渡すわね」

パルテナ「ふっふっふ、さっすがピーチったら太っ腹―。
    まさか100本も頂けるなんて思ってもみな――――――――」






パルテナ「……………は?」

492Mii:2021/07/30(金) 22:49:38 ID:1j/hfldE
ピーチ「デイジーともよーく話し合って、考えに考えて。
   王国の名誉とロゼッタの為なら、このくらい屁でもないって結論になったわ。
   良かったわねパルテナ、これだけあれば小国のひとつやふたつ、余裕で買収できるわよ?羨ましいわあ」

デイジー「これでパルテナも天界で好き勝手できるねえ、すごーい!」

パルテナ「」

ピット「」



ピーチ「そのかわり、肝に銘じておいてね?
   この決定…向こう10年、キノコ王国とサラサ・ランドに神酒が一切出回らなくなることと同義だから。
   そのことを十分に噛みしめて、余すことなく味わって飲んでね?

   ただの1滴でも地に零したり飲み残したりしたら、最後。
   たちまちもがき苦しんで血反吐吐いて死ぬような呪いを『気持ちだけ』掛けておくから」

デイジー「この神酒を冒涜するような飲み方をしたら、衝動的に夜陰に乗じて
    パルテナの寝首を掻っ切るかもしれないけど、そこんとこ了承して
    平時から遺書を手放さないようにしておくんだよ?

    あと、ここまでロゼッタのことが大事だと明言したこと、よもや忘れないでね?
    ロゼッタのことで次また揺すりタカリを仕掛けてくるようなら
    適当な牢屋に閉じ込めて100年くらい過ごしてもらうかもしれないよ。

    綺麗な綺麗な女神さま…………国同士のパワーバランスって知ってる?」

パルテナ「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

493Mii:2021/07/30(金) 22:54:23 ID:1j/hfldE
パルテナ「…あ、あ、あ、あの、ややややっぱり、
    1本だけでででもも貰えたらじゅうぶんんだなっててえ」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

ピーチ「嫌でも受け取って貰うから。拒否するようなら天界に送り付けるから」

パルテナ「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

ピット「」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



パルテナ「キノコオウコクバンザイキノコオウコクバンザイキノコオウコクバンザイ…」フラ・・・

ピーチ「…まあ、このくらい脅しておけば問題ないでしょ」

デイジー「…でも、脅しと言えどもしっかりお酒は渡すんだよね?い、痛手すぎるぅ…勿体ないなあ…」

ピーチ「…キノコ王国で70本持ってあげる。サラサ・ランドは30本でいいから」

デイジー「ピーチ愛してるっ!」ダキッ

ピーチ「…………くっつくのは暑苦しいからやめなさい」

デイジー「えへへ…………」



ピーチ「というより、自分の後始末ってことでロゼッタ本人に対価を払わせようかしら」

デイジー「台無しだよ!!」

494Mii:2021/08/01(日) 07:08:57 ID:1bf7iop2
ルフレ「…………………………………………」ブツブツブツブツ

ルフレ「…タイムリミットが刻々と近づいて来てるっていうのに、
   碌な案が浮かばない……………………どうしよう…………………」

ルフレ「……………………」

ルフレ「――――――――」ゴクッ ゴクッ

ルフレ「…………ぷはぁ」

ルフレ「…………ちょっと気分転換に夜風にでも当たってこよう」



カーテンの向こう、月の見えるバルコニーに躍り出て、ぼけーっとする。
アルコールが入ってふんわりした頭が、程よく冷やされて気持ちがいい。

欄干にもたれ掛かり夜の景色を楽しむことが済んだら、
ちょうどいい感じにぽつんと用意されていた丸テーブルと椅子を利用させてもらって…
突っ伏して、そのままキープ。…あ、この体勢なんだか楽だ。ほどよく机が冷たくて気持ちいい。



コン、コン、コン、コン。



別に眠たいわけじゃない。指を1本繰り出して、テーブルの上を小刻みに叩いて暇つぶし。

495Mii:2021/08/01(日) 07:11:17 ID:1bf7iop2
ルフレ「……………………どうすればいいんでしょうね、はあ」



ロゼッタ「あの、大丈夫ですか?気分が悪いとか?」

ルフレ「……………………ここから変えられるのか?うーん」

ロゼッタ「もしもーし」

ルフレ「…………うわあっ!?」



ビックリした!いつの間にか、ロゼッタ姫がテーブル挟んで反対側に。
全然気づかなかった…これ、戦場だったら死んでたな…。

ルフレ「も、申し訳ありません。少し考え事をしていたもので!」

ロゼッタ「考え事、ですか。すごく深刻そうだったんですが、一体どうされたのですか?よかったら話してみてください。

    …なんだか、人の相談を聴いて解決する自信がついてきたところなので!
    一時的な気まぐれ、過信、安請け合いかもしれませんがっ!」

ルフレ「い、いえいえ、そんな。国家間のトラブルを、無関係なロゼッタ姫にいきなり振るというのは流石に」

ロゼッタ「国家間のトラブル!?」ズイッ

ルフレ(あ、口が滑った…!)

496Mii:2021/08/01(日) 07:14:15 ID:1bf7iop2
ますます興味を持たれてしまった。ま、まずい。
口外厳禁な、こんな重要な極秘情報。ペラペラと話すわけには行かないぞ…!
どうにかして話を逸らして、去って貰わないと…!





ルフレ「…………あれ?その割に…口止めされていない?」





よくよく思い起こしてみれば、誰かに相談するなとも口外するなとも…
もちろん情報を漏らした場合の処遇なんかも、一言たりとも釘を刺されていない。



――――してやられました。



最終的な判断を、責任もって下せばよいだけで。
それまでの過程は、もっと融通利かせて自由に振る舞えってことですねピーチ姫。
他の人たちからのアドバイスは進んで聴いてみるべきだった。
…うん、間違った解釈かもしれないけれど、そういうことにしておこう。

目の前には、目をキラキラさせて僕が話し始めるのを待っている麗らかな女性1人。
いつまでも待たせるのも、立たせたままにするのも失礼というものでしょうか。

497Mii:2021/08/01(日) 07:20:26 ID:1bf7iop2
ルフレ「…長い話になるかもしれませんよ?夜風に当たり過ぎて風邪を引きかねないくらいに。
  ちなみに、僕の方はひとまず気にしませんが、ロゼッタ姫が今後『逢引していた』と揶揄されることになって困ることになるかも…」



ロゼッタ姫が、目をぱちくりして、一瞬赤面して、すぐに落ち着いて。

ロゼッタ「ルフレさんとしばらく2人っきりになるだけでそんな噂を立てる方なんていませんよ。ルフレさんも真面目な方ですし」

ルフレ「はは、そこまで品行を評価してもらえているのなら幸いです。あと、どうかルフレとお呼びください」

ロゼッタ「わかりました、ルフレ!よろしくおねがいします」

ルフレ「……………………」



ルフレ(自警団のメンバー同士の恋愛模様に一喜一憂する、微妙に不真面目な人間ですけどね、僕っ!
   仕方ないじゃないか!会話を眺めるだけで、互いの絆の程度が何故か分かるんだもん!
   …あ、思い出したらちょっと不謹慎な興味が湧いてきた!後でコッソリ遊んでみよう!)



ルフレ「では、せめて簡単につまめるものと飲み物を。さすがに何もなしというのも堅苦しいですから――――」



さあ、何からどんなふうに話そうか。
ロゼッタ姫も、キノコ王国民ってことで、一応合っているんだよね…たぶん。
ピーチ姫との接点も多そうだし、何か解決策の糸口を引っ張り出せないか――――

498Mii:2021/08/01(日) 07:24:03 ID:1bf7iop2
〜 12月12日 AM 0:30 執務室 〜

ピーチ「そろそろ日付変わりそう…あ、変わってた。あと2日…………」



――――ごくっ ごくっ ごくっ。



ピーチ「…………そろそろ強壮剤すら効かなくなってきたわね…頑張ろう…」

鏡を興味本位で覗いてみる。
…うわあ、死相が出てる。これは祝賀会にもう出ない方がいいかも。
子供が見たら泣くかもしれない。それくらいヤバイ。化粧で誤魔化せるか分からない。

ピーチ「とりあえず、魔法で扉をロックして。1時間だけ仮眠の為にベッドにだーいぶ――――」



ドンッ! ドンッ! ドンッ!!

ルフレ「ピーチ姫ぇっ!!いらっしゃいますかぁ――――!!」



彼らしからぬ、扉を叩き壊したいの?と思ってしまうような猛烈な殴打音。
…ノックのつもりなんだろうけど。

ピーチ「…………」ドサッ

499Mii:2021/08/01(日) 07:26:59 ID:1bf7iop2
ピーチ「…………ロック解除っと」スタスタ

ピーチ「入ってちょうだい」

うんざり顔で声を掛けてみれば、とんでもない勢いで扉が開けられて。
ズカズカとルフレが入ってきた。えらく興奮しているわね。

ルフレ「申し上げます!不肖このルフレ!
   まだまだツギハギだらけの策かもしれませんが!ピーチ姫に提示するための策をお持ちしました!

   …………って、顔こわっ!」

ピーチ「――――――――ほう?」

ルフレ「失言でしたぁっ!!!」ドゲザ

ピーチ「…ツギハギだらけならまだ持ってこないで。
   今の私、なっかなか気分も機嫌も悪いの。控えめに言って最悪よ」

ルフレ「じょ、冗談です!自信あります!お願いします!」

ピーチ「下らない案だったら窓から放り出すわよ…………あら?
   お仲間を連れてきたのね?ロゼッタと…………リンク?」

ロゼッタ「お仲間その1です!そして若干眠いです!そしてピーチ姫の顔が怖いです!」

リンク「お仲間その2だな!そして割と眠いんだけどな!」

え、なに?たった1日、日付跨いだだけで眠いとか言ってるの?
私の目の前で喧嘩売ってるのかしら。…おっといけない、思考回路がずれて来てる。

500Mii:2021/08/01(日) 07:33:05 ID:1bf7iop2
ルフレ「…それでは、ピーチ姫。
   なんとしてでも、この戦局、変えて御覧に入れましょう!僕たちの未来のために!

   そのために必要なピースは、おかげさまで揃いましたから!」

ロゼッタ「…………」

リンク「…………」



ピーチ「…………」



ロゼッタとリンクが、ちらりと私の顔を伺う。真剣な表情に変わって、嫌いじゃない。

私はというと、ため息ひとつついて、するりと移動し、
ささっと交渉台の机と椅子を用意して。

どっしりと座って、ジト目で3人にも掛けるように促して。



ピーチ「…………さあ、存分に話して貰おうじゃないの」



疲れ切っているけれど…何とも言えぬこの感覚は、捨てがたい。

501Mii:2021/08/01(日) 07:36:20 ID:1bf7iop2
〜 ルキナの部屋 〜

ルキナ「…………いたた、頭が…痛い、です」ズキッ

私なんて、大したことは何もしていないのに。正式なファイターですらないのに。
皆さんに励まされ続けて、促されるままお酒を嗜んで、
生まれてこの方食べたことのない絶品料理に感動して過ごす毎日。

寝る間際はいつも、自分の腑抜けっぷりを自分の内面に罵倒されている。そんな錯覚。
…でも、それと同時に、きっと英気も養われている、はず。
以前のような後ろめたさ、自責の念、絶望感は消え失せてくれました。

目を覚ましてまどろんでいるとほどなくして、ピーチ姫お抱えのメイドが挨拶をしに来てくれました。
これも既に日課。色々と気に掛けて頂いているみたいで、感謝のしようがありません。



メイド「ルキナ様、おはようございます。お体の具合はいかがでしょうか」

ルキナ「おはようございます。おかげさまで万全です、ありがとうございます」

ちょっとした頭の痛みなんて、気にしない方向で。

メイド「ふふ、一昨日は相当に御歓談が弾まれたようで。本当にぐっすりお休みになられていましたね」

ルキナ「そ、そう言われると恥ずかしいですね……………………」

変な寝相を見られたのかもしれないですね。これは確かに府抜けています。

……………………え?一昨日?

502Mii:2021/08/01(日) 07:39:57 ID:1bf7iop2
ルキナ「…ちょっと待ってください、何を言っているのですか。昨日は12月11日、今日は12月12日で――――」チラッ









日付表示「12月13日です」

ルキナ「」









ルキナ「まさか丸一日、緊張感のきの字もなく、ぐぅぐぅ眠りこけたままだなんて…
   本当に腑抜け切っています、だらけ切っています、私…………まずくないですか…?」ズーン

物ごころついた頃からの思い出を探ると、こんなに寝っぱなしだったのは初めての可能性が高いです。
体力面では元気いっぱいなのに、心が低空飛行。

…まあ、それでも。祝賀会最終日、楽しむつもり…なんですけれど。
その後の苦難に挑むにしても――――思い残すことはないようにしておきたい。

503Mii:2021/08/01(日) 07:43:08 ID:1bf7iop2
〜 祝賀会 会場 〜



ルキナ「…………?」



ぐるりと見渡せば。妙に、周囲から変な目で見られている気がします。
悪感情というわけではないのですが、なんだか、こう、避けられているような。

会話しようとすれば一応できるのですが、すぐに切り上げられてしまう。
妙にどもられて、目をそらされて、ビクビクされてしまう。
…私がいない昨日の間に、何かあったのでしょうか。

所在なく佇んでいると、流石に不憫に思われたのか、声を掛けて頂きました。



ルイージ「や、やあルキナ!今日もいい天気だね!」

ルキナ「は、はい、そう…でしたか?小雨が降っていた気がしたのですが」

マリオ「ルイージ、赤点」

クッパ「ぬるい。0点」

デイジー「むしろマイナス100点で国外追放」

ルイージ「酷いよ!」

504Mii:2021/08/01(日) 07:46:18 ID:1bf7iop2
ルキナ「……………」

リンク「…そ、そうだルキナ!ルフレ!とうとう最終日になっちゃったけど…
   祝賀会が終わった今日の晩にでも、最後に1戦、鍛錬場で模擬戦やっとくか?」

ルキナ「ほ、本当ですか!願ってもないご提案です!ぜひお願いします!」

ルフレ「それは僕も嬉しいですね、喜んで!
   流石に食べて飲んでだけだと、体がなまりそうだったんですよ」



ゼルダ「そうやって、またリンクったら口説く!手癖が悪いですよ、少しは自重しなさい!」

ヒルダ「お、落ち着いてくださいゼルダ姫…!」

ラナ「こんな人たちはほっといて。ほらリンク、ワイン注いであげるー!」

リンク「え、いや、割と結構飲んでるから…俺的には…」

シア「そんな情けないこと言わないの、優勝者様」

デイジー「よっ、モテモテだねリンクさーん!」ケラケラ





ルフレ「……………………」

505Mii:2021/08/01(日) 07:51:18 ID:1bf7iop2
ルフレ(全神経を集中させて、じ―――――――――――――――っ!)



実は、僕こと軍師ルフレには、何故か所持している凄い?能力がある。

それは――――――――絆解析能力っ(勝手に命名)!!

ある2人の会話を眺めている、たったそれだけで。
2人の間の共闘、共演により、どれだけ絆が培われてきたかがざっくりとわかる。
互いの好感度のうち「低い方」が唐突に思い浮かんでくるって考えればいいかな。
頭の中に「A」とか「B」とかが湧いて出てくるから、最初はなんだこりゃ!?と思ったものだ。

昔は、高い順にS/A/B/C/表示なし、と本当にざっくりすぎたんだけど、
不謹慎ながら自警団の仲間たちの観察をしていくうちに多少は精度が向上し、
S/A+/A/A-/B+/B/B-/C+/C/C-/D/表示なし…くらいにはなってきた。

…うむ、我ながら意味不明だ。意味不明、なんだが。
妄想とか気が触れているとかではなく、本当に正しく認識できるらしい。
今の所、間違った試しがないから信じるしかない。案外便利だし。誰にも言ってないけど。

ちなみに、自分と誰かの絆の強さは、この変な能力では調べないことにしている。
頑張れば調べられるのかもしれないけれど…なんだか、作戦段階で目が曇りそうで。
そのくらい普通に読み取れないで、何が軍師か。

        Dならば、知り合ったばかりの友人程度。
        Cならば、頻繁につるむことうけあい。
        Bならば、巷で大親友と呼べるくらいには仲がいい。
        Aならば、こいつに背中預けてもいいというくらいの戦友。
        Sならば、多分すでに結婚しています。

506Mii:2021/08/01(日) 07:56:33 ID:1bf7iop2
ルフレ(じ――――――――――――――――――っ!!)



皆の会話を盗み聞き…いや覗き見だ! 黙ってれば、誰にも怒られませんからね!





    マリオ⇔ルイージ   A
    マリオ⇔デイジー   A
    マリオ⇔クッパ     A
    マリオ⇔リンク     A
    ルイージ⇔デイジー A-
    ルイージ⇔クッパ   A-
    ルイージ⇔リンク   A-
    デイジー⇔クッパ   A-
    デイジー⇔リンク   A-
    クッパ⇔リンク     A-





ルフレ(いきなり恐ろしく高いのが出たっ!特にマリオさん、ド安定です!)

まだ上にSやA+があるからといって、AやA-は十分すぎるほど高い。
普通は、どれだけ仲が良くたってB止まりだからね!
Sなんかはもはや結婚前提のランクだから。

507Mii:2021/08/01(日) 08:00:18 ID:1bf7iop2
ルキナ「あの、ピーチ姫とロゼッタ姫はどちらでしょうか」

デイジー「…ロゼッタはちょっと用事があるって自室にこもってた。
    ピーチは、えっと、戦後処理が終わらなーいってぼやいてた」

ルキナ「そうですか、残念です…」

マリオ「気にしない気にしない」



…僕も残念だ。絆の解析ができないという不謹慎な理由のせいで。
マリオとピーチの絆は、Aだろうか、A+くらいはあるだろうか。







まあ、ピーチ姫がいない理由は…僕、というか「一部の人以外」は知ってるんですが。
…ロゼッタ姫はよくわからないけれど。







ふう、結構神経をすり減らしたけれども…もうちょっと続けてみよう!

508Mii:2021/08/01(日) 08:05:06 ID:1bf7iop2
リンク「そういやお礼しそびれてたな。ラナにシア。
   お前たちのお陰で戦いを有利に勧められたのは本当に助かったよ、ありがとう」

ラナ「…リンク――!!えへへ、そう言ってもらえると疲れもパアっと飛んで行くよ!」

シア「…ふん、感謝が遅いのよ」



    リンク⇔ラナ    C-
    リンク⇔シア    C-



うわっ、たった1日の戦闘だけでC-まで登ってきたなんて。何気に凄いぞ、これ。
…まあ、やたらハードな戦闘でしたから絆も深まりやすかったですけど。
これはゼルダ姫にとって強力なライバルになりそうだ…。

いや、別にゼルダ姫贔屓という訳じゃないけど。
あそこまであからさまにアピールしていたら、応援したくなるよね。うん。
まあ、長い付き合いでしょうし、気を抜かなければそうそう負けることは――――



    リンク⇔ゼルダ    D
    リンク⇔ヒルダ    B-



ルフレ「    」

509Mii:2021/08/01(日) 08:08:08 ID:1bf7iop2
ゼルダ「…おや?いきなり私を見て固まって、どうしましたかルフレ」

ルフレ「ななななななななななんでもありませんですハイっ!!」



ゼルダ姫っ!祝賀会に出ている暇じゃないかもしれませんよっ!
もっとリンクに好印象与えて行かないとまずいですよっ!
というよりヒルダ姫に負けているってどういうことですか!?おっかしいぞー?



ファイ「…………何か叫び声が聞こえました。マスター、異常発生ですか?」フワフワ

リンク「ははは、ルフレがいきなりゼルダ姫に問い詰められて叫んだだけだよ」

ゼルダ「どこが『問い詰めた』ですか!失礼ですね!
   その言い回しですと私が悪いみたいではありませんか」





リンク⇔ファイ A+





ルフレ(あ、これもう無理なやつだ)

510Mii:2021/08/01(日) 08:12:58 ID:1bf7iop2
うん、そりゃあ、そうだったね。本命相手に逆転とか無理だね、これ。
相手が3周目の最終コーナー曲がった状態からようやくスタートした程度には絶望だね。

い、いや、でも。ファイさんはあくまで半身、剣の精霊だし。
そうだよ、伴侶は別に他にいてもいいじゃないか。そうとも!まだ可能性はありますよ、ゼルダ姫!
よし、一旦切りが付いたところで、傍のグラスで喉を潤して――――

リンク「さっきからルフレの顔色が目まぐるしく変わってるが、大丈夫かな、あれ。
   まさか祝賀会の最中にも戦術のイメトレを…?マジで末恐ろしい奴だな…!」

ルキナ「ルフレさんなら、そのくらいの芸当はやってのけるかもしれませんよ?
   お父様、そして自警団一同が認める『神軍師』なのですから」

リンク「ああ、今回の大会でまざまざと見せつけられてる所だよ。
   ルフレ、まだまだ弱いけれど…凄いよな。幾らでも伸びるぞ。
   もちろん、ルキナの剣の才覚だって負けてない」

ルキナ「そ、そんな…恐縮です!ですが、お褒めいただきありがとうございます!」





    リンク⇔ルキナ    B+





ルフレ「ぶふううううぅぅぅ!!!???」ブフォッ

511Mii:2021/08/01(日) 08:18:07 ID:1bf7iop2
マリオ「どこからともなく取り出したマントっ!」バサァ!!

ルフレ「…………あ、わ、わわわわわ」

リンク「ちょっとマリオ、やりすぎだろ。自業自得とはいえ、ルフレがびしょ濡れだぞ」



――――てくてく、ダンッ!!

ルフレ「…………ゼルダ姫っ!!どうか…強くっ!強く生きてくださいねっ!!」ボロボロ

ゼルダ「な、なんですかいきなり!?肩から手を離しなさいっ、セクハラですよっ!
   それもお酒で濡れた手でっ!」





ルフレ「…………はあ、驚いた…」

トントンッ。

ルフレ「…………?」



ハイリア「…………あんまりオイタはだめよ?覗き見好きな軍師さん」

ルフレ(能力の事がばれてるっ!?)

512Mii:2021/08/01(日) 08:21:27 ID:1bf7iop2
リンク「それにしても、最後の最後まで料理がふんだんに…これ、残ってたら捨てられるのか?勿体ないなあ」

マリオ「そんな勿体ないこと、当然しないぞ。祝賀会のあと、給仕の人たちが打ち上げで消費してくれるし…
   それにこれから、一気に食ってくれる奴がいるからな」

リンク「…あ、いつもの大食いコンビね」

クッパ「それは違うぞ。ヨッシーとカービィには別口で、料理が既に用意されているのだ」

リンク「…じゃあ誰が食うんだ?」

マリオ「おいおい、前回大会のこと忘れたのかー?」

リンク「前回大会…?たしかあの時は――――

   優勝者のマリオが、優勝祝いとか称して周囲から無理やり
   大皿料理をぐいぐい口の中に詰め込まれて地獄絵図に――――

   ――――――――えっ」

マリオ「…………」ニヤリ

クッパ「…………」ニヤリ

リンク「ちょ、ちょ、ちょっと待った!まさか俺が食うのか!?
   無理無理!結構この1週間食い続けてるんだ!これ以上無理――――」

マリオ「うおーーーーす、みんなー!時間的にも頃合いだ!
    俺とクッパがリンクをがっちり抑えとくから、
   片っ端から料理を食わせてけー!盛大に優勝者を祝ってやるぞー!!」

513Mii:2021/08/01(日) 08:23:47 ID:1bf7iop2
リンク「おいやめろ!こんな古臭いパワハラ演芸会イベントなんか止めちまえ!
   だからみんなやめろって喜々として料理持ってくんな!!」

マリオ「前回はリンクも煽ってた側だがな」

ワリオ「はーい、リンクちゃん、口を大きく開けましょうねー」グイイイィィィッ!!

リンク「もごごごごごごごごごごご」



ゼルダ「とりあえずこのローストビーフから行ってみましょうか。
   軽く1kgはありますけれどリンクなら大丈夫でしょう。
   は、はい、あーんしてくださいねー」ズズッ

フォックス「脂っこい物の後はサッパリしたもので口直ししたいよな!
     ソーメンとかどうだソーメン!ツユごと流し込んでやるから!」

オリマー「栄養が偏ってるから、ここはひとつ野菜を食べないか?
    赤ピーマンに黄ピーマンに青ピーマン!紫ピーマンに白ピーマンもあるぞ!
    もしかしたら2文字ほど字が違うかもしれないが」

デイジー「ヨッシーですら残した激辛トウガラシ、消費してくれる?
    ちょっと舌が悶えるかもしれないけれどなんとかなるっしょ!」

ネス「辛いものは甘いもので中和しよう!ほら、特製ケーキ!
  どれもこれもほっぺたが落ちそうになるくらい甘くておいしいよ!
  とりあえず5ホールほど行ってみようか!」

リンク「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」ビクッビクッ

514Mii:2021/08/01(日) 08:27:49 ID:1bf7iop2
リンク「………………………………ぬおお…は、腹がまだ痛いっ…………!
   あやうく漏らすとこだったぞ、やっべー」ギュルギュル

俺、勇者リンク。死闘のすえ、一目散にトイレに駆け込んで…ギリギリセーフ。
あやうく尊厳を失うとこだった。パワハラはんたい。
なんだかゼルダ姫が一番楽しそうだったのは気のせいか。

…………1時間くらいはトイレの住人にならざるを得なかった。
なんとか耐えきって、めでたしめでたし。
手を洗ったけれど、また腹痛が起こることを警戒して。
ちょっとトイレ内で待機して様子見だ。こんちくしょう。



リンク「それにしても、ピーチのほうは順調かな…。ルフレもなかなか思い切ったことを考えたもんだ」



ルフレの奇策が成立すれば、物事は一気に解決に向かう、かもしれない。
そして今は、ピーチが倒れそうな体を鞭打って「交渉」してくれている真っ只中だ。
多分ピーチなら…吉報をもたらしてくれるはず。信じよう。

リンク「まあ、ひとつ気懸りがあるとするなら、作戦決行中の俺が、
   新たな伝説に召喚されてしまわないかってことだけど…」

それをされると、全部パーになっちゃうんだよなあ。
ほんと唐突に体が光って、新たな魂植え付けられて、俺の意思関係ナシに飛ばされるから。
ほら、ちょうどこんな感じにピカーッと…………。

リンク「……………………」ピカーッ!

515Mii:2021/08/01(日) 08:32:15 ID:1bf7iop2
リンク「ぎゃああああぁぁ――――!?よりにもよってこのタイミングで召喚だとぉ!?
   そんなもん、許可できるかっ!ふざけんじゃねぇ!!
   
   …ピーチ、ごめん!前に嫌というほど忠告はされたけどっ!
   トゥーンのときみたいに、魂を強引に引っぺがすぞっ!!
   勇者分裂の責任問題とか、もう知らん!

   いっせーのー…でっ!!」



ベリイイイィィィィッ!!

ポンッ・・・・・・!!









リンクル「やっほー!!わたし、リンクル!よっろしくー!!」

リンク「」

リンク「」

リンク「…………性転換してる!?」

516Mii:2021/08/01(日) 08:34:52 ID:1bf7iop2
現れたのは、おれと同じく緑の衣を纏った、ボーガン持ってる女の子。
首に掛けたコンパスがキラリとひかる。



リンクル「私だって、もう一人の勇者だもんねー!
    どういうわけか、貴方の生まれ変わりであることと、魂の知識に関しては
    頭にしっかり記録されてるよ!!」

リンク「」

リンクル「…くんくん。
    ところでなんだか変な臭いがするけれど、ここどこ?」

リンク「見ての通り男子トイレっす」

リンクル「嫌あああぁぁぁ!?この人、痴漢ですっ!!
    いたいけな女の子をこんなところに連れ込むだなんて!」ズサァッ!!

リンク「叫ぶなおいっ!誰かに聞かれたらどうする!

   しっかし、まあ、驚いたな…。まあ、帰って来たらしっかり面倒は見てやるから。
   うむ、生活面はお兄ちゃんに全て任せておきなさい、妹よ。
   新たな伝説にむけて、どうぞ召喚されちゃってください。いってらっしゃーい。

   それで、今回はどんな伝説を紡ぐことになるんだろうな」



リンクル「誰が兄で妹よ、冗談じゃない――――うぐっ!?」

517Mii:2021/08/01(日) 08:39:52 ID:1bf7iop2
――――リンク達の活躍によって魔王ガノンドロフは倒され
――――ハイラル城は闇の力から解放されました。

――――これで平和が戻る――
――――誰もがそう思っていたそのとき、ハイラル城に
――――再び魔物の群れが押し寄せてきました。

――――ガノンドロフが倒され統率を失った魔物達が
――――凶暴な本性の赴くままに人々を襲い始めたのです。
――――今はゼルダもリンクもいません。
――――工事現場で働いていた任天堂スタッフ達も、もういません。

――――それでもインパは、ハイラルの人々を守るため
――――まだ先の戦いの傷が癒えていない兵士達から
――――戦える者を集めて魔物を迎え撃ちました。
――――デクババたちも、餌が飛び込んできたと張り切っています。



リンクル「頭の中に、情報が、かき、こまれて、いく…!行かなきゃ…!わたしがみんなを救うんだ!

    ………………………ぐ、ぐ。でも、そ、その召喚、ちょっと、待って。
    私だけじゃ、てんで力不足、かも…!
    こ、これ、新たな伝説、というより…この前の戦いの後半戦、だよぉ!
    ガノンドロフの残党たちが暴れ出してるんだって…………!」ガタガタ

リンク「この前の…って、ゼルダ姫が引き起こした、あの戦いのことか!
   まだ終結してなかったのか…魂1つ分のお前じゃ、ひょっとして荷が重い?」

リンクル(こくこく)プルプル

518Mii:2021/08/01(日) 08:43:15 ID:1bf7iop2
なんか、召喚に抗ってプルプル震えながら涙目になってる。
変な気分にはならないが庇護欲はちょっとあるかな。
…うん、俺に比べると確かにかなり弱っちい感じがする。比較対象があれだけど。

このまま乱戦の舞台に立たせたら結構命が危ないか?
でもすまん、俺が助太刀する訳にいかない事情があるんだ。



――――仕方ない、ちょっと周りを巻き込もう。



リンク「おいリンクル、だっけか。体感で、あとどのくらい召喚に抵抗できる!?」

リンクル「た、たぶん、が、がんばっても2,3分が限界…………!」プルプル

リンク「よっしゃ!こうなったら妹のためだ、手伝ってやるよ!とりあえず…!」

リンクル「と、とりあえず…?」プルプル







リンク「そこの個室に入って30秒でさっさと服を脱げ」

リンクル「」

519Mii:2021/08/01(日) 08:46:13 ID:1bf7iop2
バアアアァァ――――――ン!!



会場の扉が、勢いよく開かれて――――――――



リンク「――――――――はぁっ!はぁっ!はぁっ!」ピカーッ!

ゼルダ「ど、どうしたのですかリンク!そんなに乱暴に扉を押し開けて!
   マナーというものがなっていません!…え、その体の輝き、は」

リンク「ぜ、ゼルダ!大変だ!ハイラル城が危ない!
   ガノンドロフの残党が暴れ出してるらしい、よ!今こそ、勇者の使命を果たすとき――」ピカーッ!

ゼルダ「!?」

リンク「ほ、ほら、お、おれの体、見てくれ!召喚されそう!
   一気にハイラルまで飛ばされるみたい、だっ!この体が、恨めしいっ!

   お願いしますっ!ゼルダ、も、なるべく早く、舞い戻って、くださいっ!
   ハイラル、ゆかりの、他の方々も、ぜひっ!

   先に行って、待ってますからっ!!!」ピカーッ!



ゼルダ「な―――――――!?そ、そんな突拍子もないこと――――」

520Mii:2021/08/01(日) 08:49:01 ID:1bf7iop2





リンク「ゼルダっ!黙って、俺に、付いて来いっ!」ピカァーーー!!

ゼルダ「」

リンク「――――」シュンッ!!



「リンク?」を エリアから ロストしました。▼



ゼルダ「」

ゼルダ「」

ゼルダ「即刻ハイラルに戻りますっ!!」

マリオ「ちょ、ちょっと待てよ――――」

ゼルダ「待ちませんっ!リンクが私を必要としてくれているのですっ!!!」クワッ!



ザワザワザワザワ・・・・・・・・・!!!

521Mii:2021/08/01(日) 08:53:56 ID:1bf7iop2


ヒルダ「…………そーっと」コソコソ



ゼルダ「ヒルダ姫、貴方も当然行きますよね!手伝いなさいっ!ユガ役っ!」ガシッ!

ヒルダ「きゃああああ!!見逃してくださいっ!ユガ役って何ですか!?

   帰りたいですっ!祝賀会が終わったらすぐにロウラルに帰りたいだけなんですっ!!
   これ以上ロウラルを放置したくないんです巻き込まないでくださいぃ――!」ズルズルズルズル・・・

ラヴィオ「ヒルダ様ぁ――――!え、ぼ、僕もですか!?
    ま、まあヒルダ様が向かわれるのなら当然同行させていただきますけれど!」バタバタ

ゼルダ「それでは、みなさん!
   突然のお別れになってしまいましたが、お暇させていただきます!御機嫌よう!」

ヒルダ「たーすーけーてぇ――――」ズルズルズルズル

マリオ「…………リンクがいなくなっちまっただと?やっべ、作戦が…!」ボソッ

ゼルダ「何か言いましたか?」クルッ

マリオ「い、いやなんでもない。わ、忘れてくれ。いってらっしゃい…」

ラヴィオ「この程度の戦い、勇者くん…リンク1人でお釣りがくるじゃないですかぁ…!」バタバタ

デイジー「す、すこしでも早く解決したいってことじゃないのかな、ハハハ」

522Mii:2021/08/01(日) 08:56:19 ID:1bf7iop2
ラナ「私だってもちろん手助けに行くからね!勝手に連れてって許さない!」タタタ

シア「そうね、魔物達を地獄の業火で焼いてあげましょう」タタタ

リンクル「ゼルダ様、ヒルダ様、負けないでくださいねっ!
    お姉さんたちも、頑張って下さーい!」ブンブン

ラナ「ありがとー、名前も知らない女の子―!」タタタ

シア「任せておきなさい、この程度の残党狩りなどあっさりと――――」タタタ







ラナ「――――」ピタッ

シア「――――」ピタッ





ラナ「…………」クルッ

シア「…………」クルッ

リンクル「あ、あの?どうかされましたか?」ギクッ

523Mii:2021/08/01(日) 09:00:05 ID:1bf7iop2
ラナ「……………………」ジーッ

シア「……………………」ジーッ

リンクル「い、いやですわそんなに見つめられて恥ずかしい……………………」

ラナ「…私たちって、さあ。これでもいっぱしの魔女だから。
  観察している人の魂の区別、しっかりできたりするんだよね」

リンクル「えっ」



チャキッ。――――――――カシャッ!



シア「――――お宝写真ゲット。これでご飯3杯は行けるわね」キラキラ

ラナ「あとで私にも見せて見せてー!…状況がよくわかんないけど『貸しイチ』にしとく♪」

リンクル「」

ラナ「よーし!ゼルダ姫!急いでハイラルに戻ろうよ!
  そこに間違いなく『リンク』がいるから!そう、勇者『リンク』が!」タタタ

シア「『リンク』があれだけ懇願していたら、『リンク』を助けるためにハイラルに戻る以外の選択肢などないわね。
   ゼルダ、『リンク』のためにも全力疾走で駆けなさい!」タタタ

ゼルダ「言われなくても当然です!」ダダダダダッ!

524Mii:2021/08/01(日) 09:02:23 ID:1bf7iop2
リンクル「…賑やかに去っていった」

リンクル「…………」

リンクル「だが、よぉし。開き直るぞー。これでスムーズに作戦が進行――」


















マリオ「…………それで、一体あれは誰だったんだ、『リンク』さん?」

リンクル「なぜバレた!?」

クッパ「なぜバレないと思った」

デイジー「いやまあ、素体がいいから女装姿もさまになってるけど」

525Mii:2021/08/07(土) 14:16:13 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「………………………」パアアアァァァ

ロゼッタ「………………………」パアアアァァァ

チコ「ママ、これ何作ってるのー?」

ロゼッタ「ルキナさんに渡すお守りを作っているのよ。まあ、気休め程度の効果かもしれないけれど」



机の上の小さめな魔法陣には。
小さな星型のペンダントが、ふわりと浮かんで光り輝いています。
結構、造形制御が難しいんですよね。



チョール「おー、やっとるやっとる。いつ頃に準備ができるかのう」

ロゼッタ「あ、星の精の皆さん!えっと、あと1時間くらいお待ちください」パアアアァァァ

チコ「…………?」フヨフヨ

チョール「ほっほ、星の子よ。ロゼッタ姫は、かつてピーチ姫がマリオに渡したお助けアイテム――
    そう、『ラッキースター』なるものを作ろうとしておるのじゃ。
    最後に、我々星の精たちが一晩かけて、星々の願いのチカラを降り注いで完成じゃな!」

チコ「…らっきーすたー?」

ロゼッタ「そう、ラッキースター。持っていると、うまくいけばアクションの効果を高めることができるわ。
    ママには原理はまったく分からないけれど」

526Mii:2021/08/07(土) 14:19:43 ID:JgP6WN9o
残念ながら、私の担当箇所は「星の精たちがチカラをこめられる、綺麗な形のペンダントを作る」ところだけ。
空間把握能力を最大限発揮して、ちょっとずつちょっとずつ削り取っていって、
幾何学的にできるだけ完璧な星型を作ります。こうすることで神秘性が増すんだとか。

……マジックアイテムとしての効力に関しては、一切関与していません。
私の領分は空間魔法と回復魔法だけですからね、あしからず。



チコ「アクションの効果を高めるって、どういうこと?」

チョール「例えば、ジャンプ攻撃の回数が1回から2回になるとか」

マール「ハンマー攻撃の威力が格段に上がるとか」

ハール「敵からのダメージを1減らすとか」

ニール「敵からの状態異常付与をシャットアウトするとか」

ネール「いつまでも連続ジャンプし続けるとか」

テール「仲間をノーダメージにするとか」

ダール「ダメージが半分になる代わりに5回攻撃になるとか」



チコ「へえぇー」

ロゼッタ「へえぇー」

527Mii:2021/08/07(土) 14:23:17 ID:JgP6WN9o
マール「…でも、祝賀会最終日とかだったんでしょ?1人こうして自室にこもってるのは、ちょっと残念ね…」

ロゼッタ「まあ、ピーチ姫に是非にと依頼されましたので。こうして私ならではの役割を果たせますし、それに――」

マール「…それに?」

ロゼッタ(『ロゼッタはうっかり屋さんだから何かの拍子に口を滑らせて作戦漏らすかもしれないからね』とか言われちゃいましたし)

ロゼッタ「…なんでもありません」ズーン



ロゼッタ「――――できました!どうぞ!」

魔法陣を解除し、ゆっくり落ちてくるペンダント。
自らの手で優しく受け止め、何度も様子を確認。…うん、いい出来です!

チョール「…うむ、素晴らしい出来じゃ!我々のチカラも馴染みやすいじゃろう!
    明日の朝までには万全の状態でお返しするぞ!楽しみに待っておれ!

    ロゼッタ姫よ、せっかくじゃ!製作者として、改めて銘打つとよい!
    このアイテムならではの、カッコいい名前を付けてやるのじゃ!」

ロゼッタ「め、銘打ちですか!?考えてもいませんでした…。『ラッキースター』そのままではだめなのですか?」

チョール「そういったところで手抜きをすると、意匠登録とか権利関連とかが面倒なのじゃ、たぶん」

ロゼッタ「たぶん」

チョール「そう、たぶん」

528Mii:2021/08/07(土) 14:26:29 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「……わ、わかりました!それでは――――――――ええと。




    
    ――――――――『流星』でお願いします」

ダール「ロゼッタ姫にピッタリ!シンプルながらカッコいいですな!」

ロゼッタ「使って頂くのは私じゃなくてルキナさんですけれどね」



ロゼッタ「ふ――――う、疲れましたー」

周囲に誰もいないことを確認して、ググっと伸びをする私。今はトコトコ、キノコ城まわりを散策中です。
祝賀会会場に向かってしまうとうっかりボロが出てしまうかもしれないので、ええ。
…なんだかあんまり納得できませんが。



大会スタッフ「あっ!ロゼッタさん!ちょうどいいところに!」

ロゼッタ「……はい?」

大会スタッフ「大変申し訳ございませんが…ちょっと来ていただけますか!
       選手登録の際、必須項目の入力不手際があったもので!」

ロゼッタ「…………?わかりました」

529Mii:2021/08/07(土) 14:30:40 ID:JgP6WN9o
〜測定室〜



大会スタッフ「いやあ、ヒルダさんは同スタイル扱いのゼルダさんのデータを完コピすることで強引に乗り切ったんですが!

       飛び入り参加状態だったロゼッタさんの身長と体重、今の今まで登録するのを忘れてたんですよっ!
       ふむ、身長は205.0cm、当初の設定のまま変わらずですね。それでは――――――――」





体重計「こちらへどうぞ」

ロゼッタ「」





大会スタッフ「大丈夫です、私も女ですから!気にせずドーンと!
       体重計に乗るだけで、自動的に値が公式記録に反映されます!」

ロゼッタ「いいいい嫌ですよっ!?記録に残るってことでしょう!?」

大会スタッフ「…………それは他の皆さんも同じですよ?特別扱いはできません」

ロゼッタ(私、大会中に相当ふとっ……たくましくなった自信があるんですけどっ!?)

530Mii:2021/08/07(土) 14:35:11 ID:JgP6WN9o
ロゼッタ「何のために体重なんか載せるんですか!?」

大会スタッフ「ふっとばされやすさの目安ですけれど…
       そもそも運動競技でアスリートの身長体重を載せるのは普通でしょう?」
      
ロゼッタ「くっ、反論できません…!」

大会スタッフ「というわけで、さあさあ――――」

ロゼッタ「…い、嫌っ、ちょっと待ってください――――!!」



ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「自動的に記録される?」

大会スタッフ「……?はい、そうです」

ロゼッタ(つまり、たとえ変な値が出たとしても、この場で突っ込まれて
    測り直しになることはない、ということですか…)



ロゼッタ「…分かりました、ええ分かりましたとも。覚悟を決めました。
    …………チコ、お願いだから来てちょうだい」

チコ「はーい」

531Mii:2021/08/07(土) 14:38:15 ID:JgP6WN9o
大会スタッフ「あはは、自分から重くしちゃってどうするんですか。
       なるほど、合計体重にして有耶無耶にしちゃう算段ですね、まあOKですよ。
       それでは測定しますからねー」





ロゼッタ(――――――――   反   重   力   っ  !)ガシッ!!

チコ「ふおおおおおおおおぉぉぉ!!」↑





体重計「5.9kg、登録しました」ピコーン

大会スタッフ「プリン(5.5kg)よりはおもいけどピカチュウ(6.0kg)よりかるぅい!!?」

ロゼッタ「いやあこれはおどろきですねえ」

チコ「でも、流石に軽すぎたんじゃないの?」ヒソヒソ

ロゼッタ「いいのよ。ふふっ、なんとか難局を乗り切ったわ!
    とくに反重力の強さを調整したつもりはないのだけれど!」ヒソヒソ



ロゼッタ「…………………………………………」

532Mii:2021/08/07(土) 14:42:21 ID:JgP6WN9o
……………あれ?ってことは、私のホントの体重、これよりチコの体重分…40kg重いだけ?
妙に軽くなっているような…………これなら普通に測っても良かったのでしょうか。



…いやいや、そんな馬鹿な。ナニカがおかしい。



あんまり思い出したくはありませんが、いつぞやのタブー戦で、割と体重があることが発覚したはずで…
パルテナさん曰く、あの土煙のせいで、な、70kg超えが確定したとかなんとか。
あの戦闘だけでさすがに何十kgも痩せるとはとても思えないのですが。

大会スタッフ「お、おーい!ロゼッタさんの体重、もう測って貰っちゃったかー?
       くっそー、遅かったかっ!修正ができなくなってるぞ、あっちゃぁ!」

大会スタッフ「…う、うん。何か問題があったの?」

大会スタッフ「もともと、『ロゼッタ&チコ』で1選手扱いだろ?
       でも、公式記録を見る人の大半は、ロゼッタさんの体重と捉えるはずだ。

       一緒に体重計に乗って、重く見られたらロゼッタさんが可哀想だから、
       特別にマイナス40kg計算するように設定されてたんだよ!
       逆にロゼッタさんだけで乗ることを想定もせずに!」





ロゼッタ「        」

533Mii:2021/08/07(土) 14:45:18 ID:JgP6WN9o
大会スタッフ「なぁんだ、それなら大丈夫よ。ちゃんと2人で体重計に乗ってくれたから」

大会スタッフ「…あ、それなら別によかったんだが。要らぬ心配だったってことか」

大会スタッフ「…あれ?じゃあロゼッタさんとチコさんで2人合わせて、
       実際はゴニョゴニョ(45.9kg)だったってことか。
       …チコさんがやたらめったら軽かったのかな…?」



ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「はち、じゅう、ごー、てん、きゅう…………!?」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



身長205cm-体重85.9kg   BMI:20.4
普通体重に到達! ロゼッタは 至って健康だ!▼



ロゼッタ「しばらく霞だけ食べて生きて行きたい…」フラ・・・フラ・・・

チコ「ママ!しっかりしてー!ママー!」ペシッ ペシッ

534Mii:2021/08/07(土) 14:48:55 ID:JgP6WN9o
〜 12月13日 22:00 小会議室 〜

マリオ「いやー、最高の祝賀会だったなー。綺麗に幕を閉じられた。
   リンク、優勝の余韻には十分浸れたか?」

リンク「腹を壊した…もとい壊された場面以外はね、うん。
   思い出したくもないぞ…まったく。

   そんで、ピーチ。首尾のほうは?」



ピーチ「……………………」

ピーチ「……………………」ニンマリ

ピーチ「――――――――勝訴っ!!」

マリオ「勝訴て」

ピーチ「――――――――勝訴っ!!!!」

クッパ「お、おう。相当に無理をして頑張ったのだな。
   そんなにコワーイ目を見開かなくても苦労は分かるのだ」

ルフレ「やったっ!本当に!本当にありがとうございます!」ウルッ

マルス「ルフレ、さすがに涙ぐむのはまだ早いよ。最後の仕事が残ってる。
   …いや、無粋か、すまない。これはもう…ただただ感謝するしかないね」

535Mii:2021/08/07(土) 14:51:37 ID:JgP6WN9o
ピーチ「明日の準備と行動段取り、ちゃんと予定通りに…お願いするわよ?」

マルス「ああ、誓って」



ルフレ「…それで、ロゼッタ姫は、どうしてそんなにやつれていらっしゃるのでしょうか」

ロゼッタ「なんでもありません…」ボロッ

ピーチ「…きっと、相当に魔法を行使して疲れちゃってるだけよ。
   ルキナ用のマジックアイテムの作成を依頼してたの」

ルフレ「そ、そんな状態になるまで必死に作業に当たって頂けるとは…っ!
   感服いたしました、本当に…本当に有難く…!」

ロゼッタ「いえ、そんなことは、これっぽっちも…………ははは」

デイジー(ロゼッタの目がなんだか死んどる)



ピーチ「さあみんな!ラストスパートよ!」

オオオオオオオオオ――――ッ!



ロゼッタ「――――――――――――――――おー」

536Mii:2021/08/07(土) 14:56:38 ID:JgP6WN9o
〜 ルキナの部屋 〜

メイド「まあ、そうですか!明日、帰郷されるのですね。ルキナ様のご武運をお祈り申し上げます」

ルキナ「…………あまり芳しくない…いえ、そんな言い方では生ぬるい。
   正直、かなり無謀な戦いが待ち受けてはいます。いつ何時、絶命しても全くおかしくないほどの。

   それでも、勇気と希望、ここにいる間にたくさん、受け取り育みました。
   …やれるだけのことは、やってみようと思います」



既に帰郷の段取りはマルス様やアイク様、ルフレさんと相談済。
…とはいっても、故郷の領域に近づいた途端に各々の時代・世界線へ自動転送されるから
特に用意することも準備するものもない…とかいう、
学のない私には理解が及び難い内容だったのですが。

…………最後まで、ルフレさんは、
「なんだったら僕たちの世界に一緒に来てもいいんだよ」と提案してくれました。
適当に手でも繋いでおけば、私本人の世界線はそっちのけで、連れて行ってもらえるそう。



ギムレーが倒され、完全とは言いませんが平和になった世界。



とても魅力的。とても喜ばしい。思わず頷いてしまいそうになる。
…それでも最後まで、私が頷き切ることはありませんでした。
ここまでの積み重ね、全部無駄にしてしまいますから。

537Mii:2021/08/07(土) 14:59:39 ID:JgP6WN9o
ルキナ「貴方にも、長い間お世話になりました」ペコリ

メイド「メイドの仕事がようやく降ってきて『ひゃっほーい!』って感じです
   (メイドとしての当然の務めですから)」

ルキナ「…え?」

メイド「…………メイドとしての当然の務めですから
   (メイドの仕事がようやく降ってきて『ひゃっほーい!』って感じです)」

  ※キノコ城のメイドは大抵の仕事(雑務含む)をピーチ直々に奪われているため
    どれだけキノコ城が広かろうがたとえ5人しかいなかろうが非常に手持無沙汰です。

ルキナ「そ、そうですか」

メイド「はい!」

流れるような手つきで、紅茶を淹れていく彼女。
一切無駄のない洗練された動きで、武骨な私からするとすこし羨ましい。

差し出されるまま、口を付けます。
…………本当に美味しい。これが飲めるのも、今日…いえ明日で最後ですか。

メイド「とりあえず、明日の正午ごろに起こしに参りますね」

ルキナ「…あ、いえ、できれば明日は…朝から出発したいと考えています。
   延ばしても後ろ髪を引かれてしまうだけですから。

   ああ、そういえば微妙に出発準備が不十分でした!
   就寝前に最後の清掃片付けと持ち物整理を行っておかないと――――」スクッ

538Mii:2021/08/07(土) 15:02:31 ID:JgP6WN9o
メイド「――――いえいえ、たった今から、正午までどうぞごゆっくり」

ルキナ「それって、どういう――――――――」



ぐらっ。



ルキナ「――――えっ」

猛烈な、眠気。足元覚束なく、体を支えられなくなり、メイドの方へ倒れ込んでしまう。
幸い、彼女は驚きもせず…ガシッと私を支えてくれました。

――――そうなることが分かっていたみたいに。
――――そうしているうちにも、瞼がますます重くなる。

ルキナ「い、いったい、なにが、起こって――――」

メイド「――――おやすみなさいませ、ルキナ様」



ルキナ「くぅ」スヤァ

メイド「…本日の睡眠導入剤も、仕込み問題無し。前回より量は抑えて…と。
   推定される覚醒時間帯、明日12月14日の11時から13時までの間。

   これにて任務完了いたしました。ルキナ様、お大事に」

539Mii:2021/08/07(土) 15:04:22 ID:JgP6WN9o
ルキナ「――――――――――――――――」

ルキナ「――――――――――――――――」

ルキナ「――――――――――――――――あ、れ?」パチッ



のそっと身を起こして、しばし静止してまどろんで、違和感。

なんだか、就寝前の記憶が曖昧です。
ベッドには収まっているので、普通に寝静まった…?おや?

…ああっ!そうです、とにかく今は出発の準備をしないと!
昨晩は準備し損ねた感があります!



メイド「ルキナ様、おはようございます」

ルキナ「…あ、おはようございます!すいません、寝過ごしてしまっていたようで…」チラッ



日付表示「12月14日  12時30分です」

ルキナ「本気で寝過ごし過ぎています!?」

メイド「ふふっ」

540Mii:2021/08/07(土) 15:07:58 ID:JgP6WN9o
メイド1「髪をセットさせていただきますね」

ルキナ「あ、あの」



メイド2「お疲れのご様子。消化のよい朝食…いえ昼食を部屋にお持ちしました。どうぞ召し上がって下さい」

ルキナ「え、えっと、そのあたりは端折ってしまってですね…」

メイド2「召し上がっていただけないのですか?」

ルキナ「…………た、食べます」



メイド3「僭越ながら、帰郷用の服装を見繕わせていただきました。
   ピーチ様が仰るには、着の身着のままのご来訪であったということで…。それぞれご試着されてください」

ルキナ「そ、そこまでしていただかなくても…それより出発を…」

メイド4「…ねえ、まだなの?まだ姫様の極秘会合が長引いているの?」ヒソヒソ

メイド5「もうちょっと!もうちょっとだけだから時間稼いで!もう1回様子見てくるからっ!」ヒソヒソ

メイド4「あんまり引き留めるネタもないのだけれど…………」ヒソヒソ

メイド5「『ルキナ様の御出向を祝し、ここで1曲歌わせていただきます!』とかどうかな」ヒソヒソ

メイド4「却下です、そのような幼稚な作戦は」ヒソヒソ

541Mii:2021/08/07(土) 15:09:55 ID:JgP6WN9o
メイド5「…………」



メイド4「…………」



メイド4「ルキナ様!ここはひとつ、チェスでもしましょうか!
    どことなくFEに似ていますし!復活しない所とかも!」

ルキナ「」






メイド5(あんまり作戦レベルが変わってないよ)

542Mii:2021/08/07(土) 15:13:21 ID:JgP6WN9o
〜 17:00 乗船場 〜

ルキナ「…………すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。
   あれよあれよと時間を潰してしまい、このざまです。

   なんだかメイドの皆さんにそそのかされていたような気もしなくはないのですが」

ロゼッタ「…あはは」

大幅に時間が後ろにずれこみ、ルキナさんが落ち込んでいます。



アイク「いいってことだ。俺達も今来たとこ――――」

マルス「アイク、それは流石に無理がある」

アイク「いや、でも本当に――――」

マルス「――――ア イ ク?」

アイク「なんでもない!なんでもないぞルキナ!」ビクビク

ルキナ「…はぁ」

マルス「……ルキナ。一応、連絡だけしておくよ。ルキナがいた、そして今から戻ろうとしている『絶望の世界』に、
   僕やアイク、あるいはマリオなんかが飛び入り参戦して万事解決…ってことができるのが一番よかったんだけれど、
   事情あって無理なんだ。本当に申し訳ない。お役に立てず、悔しい限りだ」

ルキナ「…!い、いえいえ、そのような!マルス様が謝られることではありません!」

543Mii:2021/08/07(土) 15:16:47 ID:JgP6WN9o
ルフレ「ルキナ、そのかわりといってはなんだけどね。
   リンクさんとロゼッタ姫が、時間の都合が付いたってことで。
   わざわざ見送りに来てくれたんだよ。怪我の功名という奴だね。
   別れるところぎりぎりまで、乗船までしてくれるって!」



まさかこのような待遇を受けるとは露ほども思っていなかったのか、
ルキナさんが大層驚いています。



ルキナ「本当、ですか!…………ひ、日付を跨ぎかねないのに、ご迷惑ではないのですか?」

リンク「いやいや、こんくらいお安い御用さ。弟子たちの見送りはしっかりやってあげないとな、なんちゃって」

ロゼッタ「私の場合は実利も兼ねていますけれどね。ルキナさんにお渡ししたいアイテムがありまして。
    乗船中が最後の機会、使い方を教えておかないと。

    ピーチ姫を始めとして、本当はまだまだ見送りに行きたいという方は
    大勢いらっしゃったのですが。あまり多くても目立つということで…
    戦後処理で手が離せないままのピーチ姫の推薦もあって、リンクと私ががこうして見送りに参りました」

ルキナ「…………!きょう、しゅくです!」グズッ



感極まったのか、とうとう泣き出してしまうルキナさん。
そんな彼女を、私はそっと抱きしめます。

544Mii:2021/08/07(土) 15:19:37 ID:JgP6WN9o
そのまましばし。ルフレも貰い泣きしている様子。
ゆっくりと解放してみるや、眩い笑顔で見上げられて。

ルキナ「…どうかルキナとお呼びください。それで十分…いえ、それが好ましいです」

ロゼッタ「では、ルフレともども『ロゼッタ』と呼んでくれるのですよね?」

ルキナ「…わかりました。ありがとう、ロゼッタ。

   私は、ロゼッタを尊敬しています。あのタブーへ立ち向かう姿も、凄いの一言でした。
   …貴方のような、強くたくましい戦士になりたい。
   戦闘分野は大きく異なりますが、貴方を倣って成長して参りたいと思います」



照れくさそうな表情で、驚きの言葉が飛び出して――――







ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………私みたいに、成長、したい?」

545Mii:2021/08/07(土) 15:21:46 ID:JgP6WN9o
〜 妄想中 〜



ルキナ「良かった…!また強くなれました」

ルキナの HPが 1上がった!
ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!▼

■■■「おおっ!よかったな、ルキナ!」

ルフレ「うんうん」

・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「この調子で、もっともっと強く…」

ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!
ルキナの 速さが 1上がった!
ルキナの 守備が 1上がった!▼

■■■「さすがだぞ、ルキナ!いい成長だっ!」

ルフレ「………… 」

546Mii:2021/08/07(土) 15:23:23 ID:JgP6WN9o
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「もう誰も…死なせはしません…!」

ルキナの HPが 1上がった!
ルキナの  力が 1上がった!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技が 1上がった!
ルキナの 速さが 1上がった!
ルキナの 守備が 1上がった!
ルキナの 魔防が 1上がった!▼

■■■「凄い!凄すぎるぞ!ルキナ、お前は最高だ!」







ルフレ「…………それにしても。

   何か月も戦っているのに、一向に幸運だけ上がらないね…」

ルキナ「」ギクッ

■■■「そ、そんなのは偶然だ!そのうち上がるだろ!ルキナの幸運成長率を舐めるな!」

547Mii:2021/08/07(土) 15:25:32 ID:JgP6WN9o
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

ルキナ「ここまで強くなれば未来も変えられるかも…!」

ルキナの HPは 限界値です!
ルキナの  力は 限界値です!
ルキナの 魔力が 1上がった!
ルキナの  技は 限界値です!
ルキナの 速さは 限界値です!
ルキナの 幸運が 1下がった!
ルキナの 守備が 1上がった!
ルキナの 魔防が 1上がった!▼









ルキナ「」

■■■「」

ルフレ「動いたと思ったら下がったああああああああぁぁぁ――――!?」

548Mii:2021/08/07(土) 15:29:39 ID:JgP6WN9o
〜 妄想おわり 〜





ロゼッタ「やめましょう」





ルキナ「えっ」

ロゼッタ「それはやめましょうルキナ!本気で!ろくなことになりませんっ!

    ぜっっっったいに、私なんかの模倣成長はなさらないでくださいっ!
    いいですねっ!約束ですよっ!命に関わりますっ!」ガシィッ!

ルキナ「どうしてですか!?」



リンク「見事なまでの後ろ向きだなあ」

アイク「はははははははははははは」

マルス「…くっ…さ、さすがに、これは…くくっ」

ロゼッタ「言っておきますけれど冗談ではありませんからねぇっ!」

549Mii:2021/08/09(月) 13:37:24 ID:28rO9.d.
〜 乗船移動中 〜

リンク「スカイウォードォ!!――――よっしゃ!命中っ!」

ファイ「お見事です」

マルス「…何をやっているんだい、リンク」

リンク「海上遠くに石をぶん投げて着水前にぶった斬る練習!
    爆散させず、適度な力を込めてスパッと斬るって難しいんだぜ!」

マルス「…………危ないからやめてくれないか」



ロゼッタ「えーっと、星の精たちのアドバイスによると…
    タイミングよくアクションをすると、そのペンダント…………
    ルキナが首に掛けたペンダントの効果が発揮されます」

ルキナ「…タイミングよく?」

ロゼッタ「はい、タイミングよく」

ルキナ「…とはいえ、攻撃を敵に当てる、あるいは敵の攻撃を正しく防ぐこと自体が
   既にタイミングを図った結果の産物ではないでしょうか…?

   敵の急所を狙うということでしょうか、それとも不意を衝くということでしょうか。
   はたまた、躊躇せず速やかに仕掛けるということでしょうか。
   もしかすると、攻撃間隔を調節してリズミカルに攻撃しろということでしょうか」

550Mii:2021/08/09(月) 13:41:21 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「もっとちゃんと説明を聞いておけば良かったですね、申し訳ありません…。

    それっ!…ちょっと、このスターピースを試し斬りしてみましょう。
    軽く投げますから、思い切ってズバッと剣を振るってみてください」

ルキナ「わかりました。――――――――ハッ!」ガンッ!!



ヒュウウウウウウウウウウウウウウ――――――――!!!



ロゼッタ「わあっ!素晴らしい精度ですっ!海に飛んで行きました。

    …ですが、斬って真っ二つ、というわけではなかったですね。
    スターピースって頑丈ですから…」

ルキナ「このマジックアイテムがしっかり発動していれば斬れていたかも、
   ということでしょうか。今の所、何か不思議な力が付与された感じはありませんが」

ロゼッタ「も、もう少し続けてみましょう!」

ルキナ「は、はい!」



ルキナ(も、もしかして、私の『技』がまだ低いから発動しにくいのでは…………?
    ロゼッタの厚意を無駄にしないように頑張らないと…!!)

551Mii:2021/08/09(月) 13:46:57 ID:28rO9.d.
〜 海上  PM 22:00 〜


船長『みなさーん!お待たせしましたー!本船は間もなく、イーリス大陸の領海内に入りまーす!

  領海内に入り、更に大陸にある程度近づいたところで、マルス様、アイク様、ルキナ様…
  それぞれの世界線に繋がる時空扉を開きまーす!それを潜ることで、元いた世界線に戻ることができます!

  ロゼッタ様!扉の同時解放のため、空間魔法で出力補助して頂けると大助かりです!
  現状世界線に帰郷されるルフレ様は、このまま港まで乗船しておいてOKでーす!』

ロゼッタ「引き受けましたっ!」タタタッ

船長『ハイラル王国ほどではないですが時間の揺らぎが発生しているので、
  迷子にならないように突入、帰郷されてくださーい!
  万が一間違われても、戦乱の最中に飛び込んでしまっても、私は責任取れませーん!
  なお、次の巡回時期は未定でーす!』

ルキナ「時空、扉…ですか?」

アイク「ああ。最寄りの港、あるいは海岸までひとっ飛びだ。
   距離を離して飛ぶことで、現地人をオーパーツ技術でビックリ仰天させないで済む。
   向こうからすると『なんか人が急に現れたぞ!?…魔法かっ!』って認識になる」

ルフレ「…なんだか想像しがたいですね」

マルス「はは、僕たちにとっては出港にも帰港にも、何度も活用している常識だけれど…
   ルキナの為に放送してくれるとは粋な船長だね、助かるよ。さあ、アカネイア大陸までもうすぐだ」

ルフレ(い、今はイーリス大陸って呼ぶんですけど、言いずらい)

552Mii:2021/08/09(月) 13:50:24 ID:28rO9.d.
船の明かりと月の光だけが照らす、ほぼほぼ真っ暗闇。
船長は、船の現在位置をしっかり把握できているようですが。



ルキナ「――――あ」



キノコ王国で見た、「転生の扉」とは、だいぶ違う。
人が2、3人ほど入ればいっぱいになりそうな…小規模な光の扉が3つ。
本当に、船の甲板上にパッと、現れました。

神秘的で、吸い込まれそうな光の扉。うっすらと光って、私たちを誘い込む。



マルス「…直感で分かるだろう?…自分が、どの扉を潜るべきかは」

ルキナ「――――――――」



たしかに、わかる。
懐かしい匂いというか、運命の導きというか。
3つあるうちの、真ん中の扉が、そう。

甲板に佇むということは、扉自体は船と一緒に動いているということ?
どういった原理で?どんな技術で?正しく機能する保証はどこに?
…そんなことを問いかける気も起こさない、有って当然と主張するその姿。

553Mii:2021/08/09(月) 13:52:17 ID:28rO9.d.
これを通り抜ければ、私は―――――――――――――――――



元の世界に、戻されてしまう。
…いいえ。元の世界に、「戻ることができる」。



マルス様が、アイク様が。それぞれ、左と右の扉に向かって歩いて行って。
扉の目の前まで進んだところで、立ち止まってこちらを振り返って。



マルス「心が整ったら、歩き出すといいよ、ルキナ」

アイク「覚悟は十分だろうな、ルキナ」



ルキナ「――――――――」コクッ



私も、同様に――真ん中の扉に向かって前進、前進。



最後の最後に、身に着けている武器防具、道具、携帯食料をチェック。
かなりの部分について、ピーチ姫の援助を受けることができました。

554Mii:2021/08/09(月) 13:54:20 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「――――いよいよですね、ルキナ」



後ろから掛かるロゼッタの声に振り向く。ロゼッタと一緒に並ぶのは……
緑の衣を身に纏う勇者、神妙に佇む剣の精霊、「知っているけれど知らない」神軍師。



ファイ「貴方ならきっと、大丈夫です」

ルフレ「そちらの世界の『僕』…いや『僕(ギムレー)』にもよろしく。
   いつか必ず、完膚なきまでに何度でも叩きのめしちゃって」

リンク「――――さあ、準備はもちろんできているな!ここからが始まりだ!」

ルキナ「――――はいっ!みなさん!これまで長らく――――お世話に、なりましたっ!」



零れる涙をぬぐいもせず。
扉を再び見据えて。

マルス様が扉の先へ、アイク様も扉の先へ。





そして、私も――――――――

555Mii:2021/08/09(月) 13:57:43 ID:28rO9.d.
ザザァ・・・ ザザァ・・・

波風が、夜の海原に静かに響く。



ロゼッタ「…行ってしまわれましたか」

ルフレ「…行ってしまいましたね」



2人とも、感無量といった感じで、黙りこくる。



ロゼッタ「引き続きルフレの見送り続行というわけですが…………
    私、とりあえず今、無性にやりたいことがあるんです」

ルフレ「ほほう、何でしょうか」

ロゼッタ「驚かれるルキナを想像しながらハイタッチとかどうでしょう」

ルフレ「いいですね、身長差があるのが男としては悲しいですが。
   ちょっとくらいは屈んでもらえると助かるなあって…せぇのっ!」



2人「「大・成・功――――っ!!」」パチーン!!

556Mii:2021/08/09(月) 13:59:28 ID:28rO9.d.
ルキナ「――――――――」

ルキナ「――――――――」

ルキナ「――――――――ここ、は」パチッ

閉じていた目をゆっくりと開ける。



そこにあったのは、潮香る海辺を臨む、傷んだ畦道と、焼け焦げた草原。
キノコ王国からは極度にランクの落ちた、周囲環境。

荒れに荒れ、死と隣り合わせの、絶望の世界。
僅かに生きる人々が、身を震わせ糊口を凌ぐ、悽惨な世界。



――――戻って、来たんだ。



装備などは、一切失っていない。まさに、準備してきたままの万全状態。
でも、人員は、味方は――――すべからく欠落した状態。
お父様もいない。ルフレさんもいない。…誰も、いない。
強大な敵と、魑魅魍魎だけが、数多居る。

ここは、そう。そんな、「過去」の世界。
「未来」からやってくるという裏技を使っておきながら救うことができなかった世界。
時間帯のずれが生じたのか。目に眩しい朝日だけが、僅かに私を支えてくれる。

557Mii:2021/08/09(月) 14:02:57 ID:28rO9.d.
一旦、目を閉じて、物思いにふける。

――――そんな弱気で、どうしますか。
――――死ぬ確率の方が何百倍も高くても、足掻くと決めた。とっくに、決めた。



村人「いやぁっ! 助けて…! だれかぁっ! たすけてぇーっ!」

ルキナ「――――――――っ!!」カッ!



何を、ぼうっと突っ立っているのか。
畦道の少し向こうに上がる火の手。――――休む暇など、ありはしない。

ギムレー本体を倒すことも、大事。
村や町の人々を見つけ次第ことごとく助けていくことも、大事。
異形が蔓延らないよう対策をとることも、大事。

あらゆる自警活動が、一切手抜けないほど、一刻の猶予もないほど――――大事なのに。

ならず者「ぐはははっ! 奪えっ! 殺せっ!奪い終わった家には火を放て!町ごと消し炭にするんだ!
    これを見りゃ、抵抗しようなんて気が起きなくなるだろうからな!」

生き残りの人間同士ですら、強弱が生まれる。心を悪に染めた者が…
異形たちと徒党を組んでまで、略奪、殺戮の限りを繰り返す状況になるなんて。

彼らも、もしかしたら切実な苦しみ…已むに已まれぬ境遇に陥ったのかもしれませんが、
だからと言って無実の一般人を襲っていいはずがない。…当然、成敗対象です。

558Mii:2021/08/09(月) 14:06:07 ID:28rO9.d.
1人1人は私に比べて弱くとも、時として多勢に無勢は起こり得るもの。
気を引き締めて、再臨した最初の一歩を踏み出すことに、いたしましょう。





リンク「考えるより動けだ、ルキナっ!絶対誰も殺させやしないぞっ!!」ダダダダダッ!

ルキナ「はいっ!この剣に誓って、護り抜きますっ!!」ダダダダッ!



私たちの、夢と希望は、ここから始まっていくのです――――――――!!!







ルキナ「…………………………………………?」クルッ



リンク「余所見してんじゃねぇぞルキナ!」ダダダダダッ!

ファイ「マスターに完全に同意します」スイーッ

ルキナ「――――――――!?!?!?!?!?!?!?!?」

559Mii:2021/08/09(月) 14:09:24 ID:28rO9.d.
ルキナ「り、り、り、リンクさんっ!?それにファイさんっ!?
   え?あれ?ど、ど、どどどどうしてここに!?」



リンク「水臭いぞルキナぁ。『タッグ組んでやる』って言ったじゃないかー。
   まだまだ弟子が心配だから、ちょいと派遣されてきましたー!

   おっとぉ、時空扉はとっくに消えてるし、こりゃしばらく帰れないなー!
   しゃーない、1年か2年か、ルキナの御供でも頑張るかー!」





ルキナ「」





ファイ「マスター、ルキナ様が完全に固まっていますが」

リンク「ははっ!ドッキリ大成功ってか!そこまで驚かれるとこちらとしても本望だ!
   村人の救援に向かいながら、種明かしをするとだな――――――――」

560Mii:2021/08/09(月) 14:12:17 ID:28rO9.d.
・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・

〜 12月12日 AM 0:30に遡る 〜



ピーチ「…ハァ?リンクをイーリス聖王国に送り込んでギムレーを倒す、ですって?」

ルフレ「はい!その通りです!」



ピーチ「……………………正直がっかりよ、ルフレ。それをして何になるの?
   マリオの代わりにリンクを派遣したところで、今度は――――
   イーリス聖王国が、ハイラル王国の属国になるだけよ?馬鹿なの?

   時間かけて導いた答えが、それなの?」イライラ



ルフレ「…………」フッ

ルフレ「さあ、馬鹿と解釈されるのは、果たして僕の方でしょうか。
   ピーチ姫こそ、実は…とんでもない固定概念に囚われていませんか?」

リンク「いつぞやの袋小路に嵌ってた俺みたいになー」

ピーチ「…………固定概念?」

561Mii:2021/08/09(月) 14:14:46 ID:28rO9.d.
ルフレ「ちょっと質問させていただきますね、ピーチ姫。

   マリオさんって、その強大な戦力がどこの軍の管轄かと言われたら…
   ――――当然、キノコ王国軍ですよね?」

ピーチ「当たり前じゃないの。王国の危機にはマリオに目一杯働いてもらうんだから」

ルフレ「僕もそれに同意しますが、さて。一方のリンクさんの戦闘力って、ハイラル王国軍の管轄ですか?」

ピーチ「もちろんよ、そんなの決まって―――――――――」









リンク「いーや?俺、べつにハイラル王国軍に含まれる戦力じゃねーぞ?」ニヤリ







ピーチ「……………………」

ピーチ「――――――――はああああぁぁぁぁ!?」

562Mii:2021/08/09(月) 14:19:43 ID:28rO9.d.
リンク「驚くことじゃないだろ、考えても見ろよ。

   ハイラルに問題が生じたら、ゼルダ姫やインパの命令もなしに俺が速攻で片づける。
   強いて言うなら伝説の幾つかでゼルダ姫に
   『リンク、お願いですから(部下も軍資金も付けずに)あれやってください』
   って頼まれることがあるくらいで、見返りも何にもないボランティア。
 
   伝説間のパトロールだって、自主的行動だからハイラル軍全く絡んでない。
   
   住んでるのは専らキノコ王国だから、実効従属と言い切るのも無理がある。

   …こんなふうに何の庇護も受けてないのに、管轄されてるって言えると思うか?」



ピーチ「…………」パクパク



リンク「むかしマリオとピーチが言ったんだぞ、『勇者の肩書に縛られるな』って。
   俺の立場は、正式には…せいぜい妙に戦闘力が高い自称勇者ってとこだ。

   …要するに、俺がどっかの国のいざこざにしゃしゃり出ても、
   無所属の旅ガラスが自己責任で暴れたってだけで、国際問題にはあたらないはずだ。
   ゼルダ姫に塩対応され続けていたのが逆によかったってことだな。

   ハイラル王国側からハイラルの名に泥を塗ったとは『マナー違反で』糾弾されるかもしれないが、
   そのくらいはまあ、甘んじて受けるよ」

ピーチ「な―――――――」

563Mii:2021/08/09(月) 14:25:48 ID:28rO9.d.
ルフレ「はい、これでピーチ姫が無意識のうちに却下していた大前提が崩れました。
   あと必要なものは…僕が思うに、3つです。

        『単独行動とはいえ、大義名分があるか』
        『誰がリンクさんに依頼するのか』
        『依頼に対し、万人が納得する正当な対価を払えるか』

  これらについても、幸いながら目途が立ったんですよ。

  大義名分は、なんのことはない。
  ギムレーがキノコ王国に喧嘩を売った。キノコ王国とハイラル王国は軍事同盟関係。
  一個人として、義憤に駆られたリンクさんが動いた。以上です。
  同盟の『効力』としての協力は不可ですが、動機付けにはなるということですね」

リンク「残る2つなんだけどさー。ピーチも知っての通り(プラスアルファあるけど)、
   実は最近、ロゼッタにものすっごい借りができたんだよね、俺。
   で、なんでもしますからって頭を下げたら、ロゼッタがさ。
   『世界平和のため、ルキナさんの世界を守ってあげてください』とか言い出して。
   そんなら渡りに船ってことで。

   俺の時間的拘束とロゼッタへの借りとの価値を比較すると、
   少なく見積もっても丸1年はルキナを手伝って文句は言われないと踏んでる。

   『ロゼッタ』と『リンク』の個人間の仕事依頼で、
   『ロゼッタ』がもたらした恩恵の対価として、『リンク』が世界平和に貢献する。

   何なら貢献できるかなと探してたら、好き放題やってるワルモノ発見。
   調べてみたら俺とファイだけが飛び込む分には国家に迷惑かけなさそう。
   ハイラル王国民のはしくれとしてキノコ王国を助けるのも吝かじゃない、よし決めた。
   …………悪くない筋書きだろ?俺も感心したよ」

564Mii:2021/08/09(月) 14:32:04 ID:28rO9.d.
ピーチ「……………………」

リンク「ふふん、ルフレを存分に褒めてくれてもいいんだぜ。
   あとは、任天堂さんに間違っても抑止力働かせないようピーチが話し合って――」



ピーチ「……………………駄目ね」

リンク「なんでさ!?」

ピーチ「…話はわかった。綻びが有るけど、私の口八丁で埋め合わせできる程度には
   イイ線のツギハギ方をしてると思う。なんとかスタッフを丸め込みたいところ…だけど。
   でも、肝心のところが抜けてる」

リンク「…肝心の?」

ピーチ「にっくきギムレーはね、頭に来ることに――――
   立場上は、キノコ王国に敵対する、なんて宣言はしてないのよ。
   あくまでタブーの暗躍の傍らでちょっとちょっかい掛けてきた扱い。
   さんざん興味本位だったともほざいていたわね…。
   言質を取られないように、あいつもずる賢く動いていたの」

リンク「べ、別に動機づけなんだからいいだろ?
   実際の所は、軍事同盟があろうとなかろうと俺は怒るよ」

ピーチ「その感情はとてもうれしいけれど、交渉では使えない。まるで駄目ね。
   強引にリンク派遣のためのストーリーを組み立てるとしたなら、
   『軍事同盟の効力発動』自体は実際に起こってくれないと主張が弱い。
   リンクが義憤に駆られてそこまで動こうとするには、必須事項」

565Mii:2021/08/09(月) 14:36:16 ID:28rO9.d.
ルフレ「……言質という無形の物だけが後は必要ということならば、なんとかなるかもしれませんね」

ピーチ「…………え?」

ロゼッタ「実はですね。あの戦いで、たっくさんの分身体を、この身に還元して。
    ――――最後の最後で、記憶と経験値、一切合財戻ってきたんですよ。
    忌まわしい内容に恐れ戦き続けましたが、今となっては大戦果です。
    ギムレーと一緒にいた『私の分身体』が、ギムレーをそそのかしてくれてですね。



    ――――堂々とやってくれてるんですよ、キノコ王国への宣戦布告を、ねっ!!」

ピーチ「――――――――!?」

ルフレ「そんでもって、ロゼッタ姫の記憶を頼りに、一直線にイベント現場に向かって、
   手当たり次第に監視カメラの録画結果から探し当てた映像がこちらです。
   はい、プロジェクターどうぞ」



ギムレー『我、ギムレーが、『ギムレー本人』の立場として無慈悲の鉄槌を下そう。

     愚昧なるキノコ王国に対して、我がペレジア王国は――――
     傘下のイーリス、フェリア、ヴァルムとともに――ここに宣戦布告する!
     全てを破壊し尽くし、滅ぼしつくし、奪い尽くして見せよう!』



ピーチ「                」

566Mii:2021/08/09(月) 14:40:04 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「……そ、そんなわけで…大変心苦しいのですが。もうひと頑張り、ですね。
    ピーチ姫には、なんとかリンク派遣のための段取りをしていただきたいなあ、と」



カシュッ・・・。

ピーチ「――――――――」ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク



ロゼッタ「栄養剤一気飲みしました!?」

ピーチ「…やってやろうじゃないの、そこまでお膳立てされたんならね。
   楽しみに待ってなさい、皆。そして、楽しみに首を洗って待ってなさい、ギムレー。フフフフフ…!」



〜 12月12日 おひる 〜

ロゼッタ「ピーチ姫が、2日でやってくれるそうです。大量の原稿と資料片手に、意気込んで会議室に向かわれました。
    『ルキナはベッドに拘束しているから安心ね』とか不穏な言葉を口にしていましたが…」

ルフレ「ピーチ姫には頭が下がりますね…。あ、お分かりかとは思いますが、今回の作戦。
   ルキナは勿論として、リンクさん以外のハイラル関係者に漏らしてはいけませんよ。
   念のため、ヒルダ姫にも。他の方にもよくよく注意しておきましょう」

ロゼッタ「…どうしてですか?」

ルフレ「リンクさんが年単位で居なくなると知ったら一部で暴動が起きます」

567Mii:2021/08/09(月) 14:45:29 ID:28rO9.d.
〜 12月14日 あさ 〜

ピーチ「…と、いうわけで、ファイターの皆!ちゅうもーくっ!
   リンクがギムレーを懲らしめに行く件について、任天堂からの許可が下りたわっ!抑止力は一切発動なしっ!
   
   具体的には、『リンクおよびファイの1年以上3年以下の共闘・支援』!
   そして『ルキナによるハイラル由来品の有効携帯』を勝ち取ったわっ!
   私、凄くないっ!?褒めて褒めてっ!」



デイジー「テンションがおかしくなって私みたいになっとる」

ルイージ「自分で言っちゃう?」

デイジー「ルイージ酷いっ!私のテンションがおかしいですって!?」

ルイージ「」



マルス「それでは、予定調和かもしれないが…宣言しておこう。
   
   英雄王マルスとして宣言する。
   このたびの『ルナティック+世界線イーリス聖王国へのリンク達の介入』について、
   リンク達が意図的にイーリス聖王国に害をなすことがない限り、
   一連の介入を是とし、拒絶・非難・損害請求等の対抗措置を検討・実施しない。

   また、第三者が我々に代わって同等の対抗措置を実施しようとした場合、
   この実施を解消することに尽力するものとしよう」

568Mii:2021/08/09(月) 14:48:45 ID:28rO9.d.
ルフレ「分岐世界線のFE組代表ルフレとして宣言します。
   このたびの介入は現状世界線の意向に沿うと同時に歓迎される類の助力であるため、
   僕たちはリンクさん達が最大限のパフォーマンスを出せるよう、
   必要な物資や情報を彼らに提供することを約束します。

   また、この同意内容について、現状世界線の仲間たち、家族たちに
   十分に浸透・承認させるための努力を惜しみません」

リンク「えーと、ルキナをしっかり護衛しつつ、ルキナを鍛えて自立させ、
   ついでにギムレーをボコってきます。以上」

ピーチ「まじめにやりなさいよ!」

リンク「分かりやすい方がいいじゃん…」

ピーチ「…まあ、いいわ。これで(ハイラル勢除く)全員に内容が行き渡ったわね」

マルス「……とりあえず言えることは。――――ギムレー、ご愁傷さま」

アイク「そうだよな、よりにもよってリンクを送り込まれるとは…」

ファイ「私の計算では。ネオ・マスターソード装備のマスターが駆け回った場合。
   ギムレー8192人までなら……マスターと私のみでも勝つ確率、99%」

パルテナ「ルナティック+のギムレーがいくら強いからって、
    経過成長込みでも基礎体力レベルはたかだかLv.40設定ですからね…
    そこにただでさえ相性絶対有利のLv.148とLv.70の核弾頭を放り込んだらぶっ壊れですよ」

ルフレ「なにそれこわい」

569Mii:2021/08/09(月) 14:53:44 ID:28rO9.d.
リンク「…ところで、『ルキナによるハイラル由来品の有効携帯』ってなに?」

ピーチ「私は、リンクが去った後のことも考えて交渉したってことよ。
   
   リンクは知らないかしら。本来、マジックアイテムの収納には制約が有ってね。
   『所持者の出身』が『アイテムの由来』に合致しないといけないの」

リンク「…………?????」

ピーチ「たとえば、キノコ王国由来の1UPキノコがあるでしょ?
   これを、マリオが鞄に入れようとすると99個だか999個だか入るのよ。
   でも、リンクが自分の鞄に詰め込もうとすると1個か2個しか入らないわ。
   この仕様は、無闇に他国に強力なアイテムを輸送させない役割を持ってる」

リンク「…ああ!要するに圧縮効果が働かなくなるってことか!
   本来なら、適用するアイテムしか碌に持ち運びできないってことだな!」ポンッ!

ピーチ「でも、今回は違う。ハイラル由来のアイテムなら、ルキナは――
   自分の鞄の中にほぼ無尽蔵に詰められるわ。うふふふふ…」

リンク「…でもさ、水を差すようだけど、俺、というかハイラルって、その。
   あんまり有用な、局面を一気に打開できるようなアイテムの候補がなくて…。
   そりゃ、キノコ王国なんかだと、条件次第でとんでもない効果を発揮するアイテムとか、
   俺が知ってるだけでもワンサカあるけどさ」



ピーチ「大丈夫よ、全く問題はないわ。ガワさえハイラル由来のアイテムなら大丈夫だから」

リンク「…どういうことだ?」

570Mii:2021/08/09(月) 14:56:02 ID:28rO9.d.
ピーチ「そういうわけで、リンク。















    ありったけの『あきビン』を出しなさい」



リンク「今んとこ100本くらいしかないけどいいかな?」ドサッ



マルス「」

アイク「」

ルフレ「」

571Mii:2021/08/09(月) 14:58:44 ID:28rO9.d.
ピーチ「さあっ!みんな!…強者どもよ!!」



ザワザワザワザワ・・・・・・・・・・・・・・・・・!



ピーチ「再取得可能な消費アイテムで構わないから…

   便利アイテム!万能アイテム!チート級アイテム!

   ルキナのことを応援したいなら、どんどん出してちょうだいっ!
   あんまり大きいのは入らないけどっ!

   安心して!私の意地で、相場の倍のコインを払わせて頂くわっ!!」



一同「…………………………………………」



マルス「…ま、まさか――――――――」

アイク「え?ちょ、おま――――――――」」



タブーにむかっ腹を立てていたファイター達の心が、いま、ひとつに――――――――

572Mii:2021/08/09(月) 15:07:11 ID:28rO9.d.
マリオ「攻撃アップ、防御超アップっ!言わずと知れた無敵アイテム、『スーパースター』!」

ルイージ「遠くの敵を消費無しで遠距離攻撃、『ブーメランフラワー』!」

カービィ「ハーイ!(『コピーのもと』つめあわせ)」

サムス「破壊力バツグン、なんでも吹き飛ばす『パワーボム』!」

ピット「触れたもの一瞬で凍らせる!『冷却ブレスレット』!」

ポケトレ「…………………………………………」

ニャース「自軍全体を最高クラスの生命蘇生力で全回復っ!『聖なる灰』!…と言ってるニャ!」

ロゼッタ「火球で自在に遠距離攻撃、『ファイアフラワー』!……え?しつこい?そそそそんなことないですよ!」

ルカリオ「ガチ対戦では日陰に隠れるが、攻撃のたびに与えたダメージに応じて体力を回復、『貝殻の鈴』!」

ヨッシー「視界内の敵全員に大ダメージ、『どこでもPOW』!」

ワリオ「謝礼は弾めよ?…ジャンプ力アップ、空まで飛べる!『ジェットの壺』!」

ルフレ「…はっ!僕からの分は別にあきビンってやつに詰めなくてもいいんですよね。
   よし、マスタープルフやらチェンジプルフやら術書やら、あるだけルキナにあげちゃおうか」



マルス「」

アイク「」

573Mii:2021/08/09(月) 15:10:43 ID:28rO9.d.
ピーチ「残りのあきビンには、片っ端から1UPキノコと緊急キノコを詰め込むわ!
   リンク、最初は自分で持っておいて、そのうちルキナに説明がてら渡してね!

   …そういうわけで、ロゼッタ」

ロゼッタ「…な、なんでしょうか?」

ピーチ「依頼主の貴方が、リンクに『ギムレーを殺ってこい』と――――
   最後に気迫篭った指示して締めなさい。私が言うと問題になるから。
   ふふふふふ、結果が楽しみでたまらないわ――――――――」

ロゼッタ「いやですよ、そんな乱暴な言い方はっ!?」

デイジー「あ、ピーチったら何気に怒髪天突いてる」













アイク「ここにギムレーの墓を建てよう、スコップ持ってくるわ」

マルス「駄目だよアイク、ちゃんと街の外に移動してからじゃないと」

574Mii:2021/08/09(月) 15:12:54 ID:28rO9.d.
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

リンク「――――みたいなカンジ?」

ならず者たち「「「「「「「「」」」」」」」」チーン

ファイ「そうこうしている間に、村の暴動の鎮圧が完了致しました」

ルキナ「」



リンク「ま、やってきたもんは仕方がない。世界平和のため頑張るぞ!エイエイ、オー!」

ルキナ「」

リンク「いつまで呆然としてるんだよ。とっととこの王国、平和にしてやろうぜ!
   それがルキナの願いでもあるんだろ!次だ次、さあ行くぞルキナ!
   この瞬間にも、誰が死んでるかわかんねーんだろ!
   とりあえずは、いの一番に、ギムレーさんを〆に行こうぜ!案内よろしくぅ!」スタスタ
   
ファイ「さあ、一歩を踏み出しましょう。でなければ置いていきますよ?」

ルキナ「え、ちょ、ちょっと待ってくださ――――――――い!
   嬉しい、ですけれど!嬉しいんですけどっ!ま、まだお話が終わっていませんっ!!」バタバタ


私たちの、夢と希望は、こ、ここから、始まっていく、みたいです――――――――!?

575Mii:2021/08/09(月) 17:37:37 ID:28rO9.d.
〜キノコ城 城下〜

デイジー「…………はあ」ピッ

デイジー「……………………まずった。
    『桃葵の誓い』をロゼッタのためにパルテナへ差し出すのは後悔してないけど。
    勝手に決められたことに、うちの家臣たちがむっちゃ怒ってる。

    そりゃそうだよね、提供ノルマ30本…年3本計算のうち、
    私個人に割り当てられてるのは1本だけだからなー」

メールで簡易報告だけして済ませようとしたら、怒涛の着信。
10回目あたりで観念して恐る恐る出てみれば、大臣さんのキッツイお叱り。
順繰りに代わられて、ひとりひとり怒られて泣かれて叫ばれて。

いやあ愛されてるなあ、あの神酒。あれだけで財務が動くのは伊達じゃない。
大多数の人にとって、一生で一度飲めたらそれだけで豪運だものね。

デイジー「どうしよっかなー、ちょっと帰るのが怖くなってきた…………
    対策を考えないと…………代わりの物、何か用意できるかな…………
    このままだと冗談抜きで、首輪付けられて執務室に1年くらい閉じ込められるよ…」



――――メールダヨ!メールダヨ!



デイジー「…ん?ピーチからだ、なんだろ」ピッ

576Mii:2021/08/09(月) 17:41:04 ID:28rO9.d.





ピーチ『大事なお話があるから、誰にも悟られずに執務室に来てちょうだい。
   特にロゼッタにバレるわけには行かないから、遠出している今しかないわ。
   下手したら半日、いえ1日掛かる長丁場になるだろうから、食事は先に済ませておいて』





デイジー「…………な、な、なんだろ、ホントに」ビクビク



デイジー「…………」コソコソ

デイジー「…………」コソコソ

デイジー「…………」ササササ

デイジー「誰にも見つかりませんように、見つかっても悟られませんように…」





ルイージ「……ん?」

577Mii:2021/08/09(月) 17:42:24 ID:28rO9.d.
ルイージ「…デイジー、こそこそ壁に張り付いて何やってるの?」

デイジー「のわあぁっ!?」



ルイージ「……?」

デイジー「何でもない何でもない!放っておいて!
    ちょっとピーチと、かくれんぼしてるだけだから!」

ルイージ「…へ、へえ、そうなんだ」

デイジー「じゃ、じゃあ私はこれでっ!」スタコラ



デイジー(よし、ごまかせた!)







ルイージ(…………何あれ怪しい)

578Mii:2021/08/09(月) 17:48:05 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「ルフレも無事に見送って!帰ってきましたキノコ王国!
    余裕で日付を跨いで、かなり眠いししんどいですが…
    とりあえず、ピーチ姫に報告をしに行かなければなりませんね」



何気に海の上の小旅行って感じで、初めての体験で楽しかったというのはあります。
ですから、眠いといえどもちょっと興奮気味でもある。複雑な心意気。

ピーチ姫も、ルフレやルキナのことをとっても気に掛けていましたから。
無事に故郷へ送り届けられたことをお伝えして安心してもらいましょう。



〜キノコ城〜

キノじい「大変申し訳ない、ロゼッタ殿。
    姫様は只今、戦後処理のラストスパートで面会謝絶中ですじゃ。
    ご報告は後日でも全然かまいませんので、本日はお引き取り願いますかの」

ロゼッタ「…そ、そうでしたか。こちらこそ失礼いたしました、お忙しい時に」



若干ぶっきらぼうな門前払いを食らいました。
しかたありませんね、ピーチ姫の体がすでにストレスで悲鳴を上げていそうです。



それでは、ここは諦めるとしましょう、か。

579Mii:2021/08/09(月) 17:55:31 ID:28rO9.d.
〜キノコ城 城下〜

ロゼッタ「それでは適当な喫茶店で遅めの朝食でも――――――――
    あら?ルイージ?どうしたのですか?」

ルイージ「うーん?うーん?むむむ…」

ロゼッタ「…ルイージ?」

ルイージ「あ、やあロゼッタ、ごめんごめん!戻ってたんだね。
    その様子だと皆を無事に送り届けられたようで何よりだよ。

    …うんうん唸ってる、変な所を見られちゃったなあ。いや、ただデイジーが挙動不審だったから…」

ロゼッタ「…挙動不審、とは?」

ルイージ「周りを警戒しながら、人目のつかない裏道脇道進んでるみたいで。
     なんでも、ピーチとかくれんぼしてるんだってさ」

ロゼッタ「かくれんぼ」

ルイージ「そう、かくれんぼ」

ロゼッタ「それは確かに変ですね。しかし、ルイージにはあっさり見つけられたと」

ルイージ「ふふふ、影が薄すぎて警戒されなかったのさ!」

ロゼッタ「…………そ、そ、そうだったんですかー!なるほどー!」

ルイージ「ごめん!今更ながら自虐で苦しみだしてます!」

580Mii:2021/08/09(月) 17:59:16 ID:28rO9.d.
ルイージ「と、とにかくだね!人目を忍んでコソコソ動いて、かくれんぼ中の子供みたいだったけど。
    妙に不自然で怪しかったというか…。気になってさ。
    …でも、ピーチとかくれんぼしているという割にはキノコ城に近かったんだけど」

ロゼッタ「…それ、単純にコッソリとキノコ城に向かいたかっただけじゃないですか?」

ルイージ「あー、そうかもしれない。やっぱり他の人にこそ見つかりたくなかったのか」

ロゼッタ「…わざわざ、戦後処理中のピーチ姫の名前を出すというのも変な話ですね…」



もしかして、ピーチ姫と重大な話を抱え込んでいるのかも。
ちょっと、探りを入れてみるのもアリかもしれません。
私でも少しは手伝えるかもしれませんし。踵を返しましょう。














――――――――この安直な考えが、のちに私を大いに苦しめることになりました。

581Mii:2021/08/09(月) 18:01:38 ID:28rO9.d.
キノじい「ど、どうかされましたかな、ロゼッタ殿」

キノじい、そしてキノピオたちは…どうやら私をピーチ姫に会わせたくないみたいです。
改めてお城に向かってみたら、あからさまによそよそしかったので間違いありません。

…そう、『よそよそしい』。ピーチ姫の時間が取られる、というよりは、
私が向かうことで不都合が生じる、とでも言いたそうな言動っぷりです。
これは、ますます怪しくなってきました。



ロゼッタ「どうしても、執務室に向かってはならないと?」

キノじい「大変申し訳ないのですが、はい――――」

ロゼッタ「…それでは、別にピーチ姫の所ではなくて構わないので、
    どこかで休ませて頂けないでしょうか…?少し、船旅でくたびれてしまいまして」

キノピオ「あ、そういうことならどうぞどうぞ!こっちです!」

ロゼッタ「ありがとうございます」テクテク

皆さんには悪いですが、ここは素直に引き下がった振りをして――――




ロゼッタ(分身体の私。囮役は任せました)

ロゼッタ(分身)「……………」グッ

582Mii:2021/08/09(月) 18:05:28 ID:28rO9.d.
「本体の私」は、何食わぬ顔でコソコソと、逆側を探索していきましょう。
…なんだか、私も悪知恵が働くようになってきましたね。

なんだかんだ言って、私も体が鍛えられてきました。身のこなしは上々。
おまけに、念には念を押して、久しぶりの魔法浮遊歩行…歩行?

音を立てずに、物陰に隠れて逐一キノピオたちをやり過ごし、
割とあっさりと執務室の前までたどり着きました。
監視カメラの類は、流石にわかりません。後でばれてしまうのは諦めましょう。







扉『面会謝絶』ドドーン







…確かに、何か重要なことを中でやっていそう。
ピーチ姫と…おそらくデイジー姫が、大事な打合せでもしているのでしょうか。
いきなりノックするというのも、ましてや扉を蹴破って入るというのも、できるわけがなく。

仕方ありません、はしたないですが身を扉にピッタリ付けて、耳をそばだてて――――
下品とは分かりながらも盗み聞き。割と聴覚は鋭い方ですから――――

583Mii:2021/08/09(月) 18:07:23 ID:28rO9.d.













ピーチ「――ロゼッタは、まだ子供よ。大人の辛さをまるで知らない。
   それでいいの、この議題を対処するのは絶対に不可能よ」














――――ピタリと、体が固まって。頭の中が真っ白になりました。

584Mii:2021/08/09(月) 18:11:15 ID:28rO9.d.
デイジー「そんな言い方は…まあ、わからなくはないけど……」



ピーチ「とにかく、保護者代わりの私たちが全部面倒みることにする、それでいいわね?
   繰り返すけど…ロゼッタに、こんな責任はポテンシャル不足、荷が重すぎるわ。
   全力で助けてあげないと、音を上げて泣きわめくのが目に見えてるじゃない」



デイジー「…なかなかキッツイなあ、その尻拭いの代償、立て替えるの…………。
    サラサ・ランドの大臣たち、ますます無茶苦茶怒るだろうなあ。
    私、しばらく遊びに行けそうにないよ、とほほ。…………でも。
 
    そうだね、そうだよね。…全く、手のかかる子なんだからー。
    ロゼッタは負の面を知らずに、朗らかに笑ってるのが一番だよ。
    あんまりこれ以上、苦労掛けさせてあげないようにしなくちゃね」



ピーチ「いい?今回の議題については、絶対にロゼッタに漏らさないでよ?
   最後の最後まで騙し通さないと、ロゼッタが悲しむからね?
   ちゃんと責任とります、みたいな…勢いに任せた安請け合いをしかねないからね?」




――――なにか、崩れていく、音がする。
――――培ってきたもの、グラグラと、崩れていく、簡単に。
――――嘘だ。こんなこと、お二方が陰で言うはずがない。

585Mii:2021/08/09(月) 18:13:33 ID:28rO9.d.
デイジー「まっかせときなさい!ロゼッタの性格、人となりはしっかり理解してるよ!
    じゃあ、この書類は万が一ロゼッタに見られでもしないよう、処分しといてね!
    大丈夫!私の頭の中に、しっかりとインプットされたから!
    …というか、よくここまでぎっちりと正式文書を試し書きする時間があったなぁ」

ピーチ「もちろんそうするつもりよ。
   ぎっちり書き込んだ理由は…まあ、デイジーにしっかり理解してほしかったからね。
   あとで『忘れた』とか言われるのもなんだったし。…ロゼッタの事、しっかり護りきるわよ」

デイジー「うん!――――さぁて、やっぱりお腹がすいちゃった。
    打合せも終わったところで、何か食べに行こうよ、さあ――――――――」ガチャッ



デイジー「」ピタッ



ピーチ「…どうしたのデイジー、いきなり固まったりし――――――――」



ピーチ「」ピシッ



ロゼッタ「――――――――どう、して」ボロボロ

固まるお二人をよそに、その場に泣き崩れました。

586Mii:2021/08/09(月) 18:16:24 ID:28rO9.d.
ピーチ「…な、なんで?どうして!?人払い、してたはずなのに…!
   ――――――――っ!ロゼッタ!?まさか、聴いてたのっ!?」



うつむいたまま、力なく、頷きます。



――私は、浅はかでした。一人前と認められているだなんて早合点して、調子に乗って。
――まさか、2人の目からは全然対等に見えていなかっただなんて。
――よくよく考えてみれば当たり前のこと、気付けていなかった私がなお恨めしい。

悔しい。悔しい。涙が一向に止まりません。
ピーチ姫とデイジー姫は、顔を青くしてオロオロするばかり。



キッと泣き腫らしたまま顔を上げ、固まるピーチ姫の手から、
分厚い分厚い書類の束をひったくります。

ピーチ「ちょ、ちょっと!ロゼッタ、それは見ちゃ駄目っ!!!」



書類「議題  ロゼッタによる、マリオカート8に向けた新規コースの製作について」



衝撃の事実に目を見開きつつ、ページを手繰る手を止めません。

587Mii:2021/08/09(月) 18:19:44 ID:28rO9.d.
――――このたびのタブー戦での活躍に対する褒賞の一環として。
――――ロゼッタに、新規コースの製作を手掛ける名誉を与える。
――――該当のコースは、絶賛調整中の『マリオカート8』の1コースとして
――――特段の承認工程を踏まず、無条件で正式採用させられるものとする。
――――以降、この文面において、コース名を仮に『スカイガーデン』と呼称することとする。

あまりに慌てたピーチ姫が奪い返そうとする行為を、チコたちに協力してもらって…
私も、上がってきた基礎体力を活かして、なんとか回避。そのまま、どんどん読み進める。

何が援助され支給され、何を自分で考案しなければならないかが、つらつらと。



――――私なんかでは、とても処理できない案件と捉えられたのですね。
――――ちょっと前、『ロゼッタプラネット』を作った実績は有りますが…
――――何も気にせず自由気ままに作っていったのとはわけが違う、ということでしょう。



紙の束から目を離し、フラッと立ち眩み。どうにかなりそうです。

デイジー「…………あわわわわ」

ピーチ「…よ、読んじゃった、の?」オロオロ

ロゼッタ「…………はい」



沈黙が、3人を支配する。

588Mii:2021/08/09(月) 18:23:03 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「そこまで――――私、信頼されて、いなかったんですね」

自嘲するしかありません。なんと滑稽な事か。



デイジー「違うっ!違うよっ!ただ私たちはロゼッタのことを思って――――」

ピーチ「そ、そうよ!ロゼッタにできるわけがないじゃないっ!!」

ぐさりと、言葉の刃が襲い掛かる。
本当に、なんにも、信頼されていなかったんだ。



ロゼッタ「――――どうしてっ!どうして、私に任せていただけないのですかっ!
    私は…私はっ!お二人の子供でも、操り人形などでもありませんっ!!」

ピーチ「――――っ!」

デイジー「――――っ!」

ロゼッタ「…こんな、弱弱しい、私でも。
    出会ってから、ほんのちょっとずつ、強くなって、期待されて。
    それなりに、責任ある仕事を、担って行けるようになって。
    それが嬉しかった、信頼されていると思った…

    私の想いは、ただの幻想、私の想い違いだったのですかっ!?」ボロボロ

ピーチ「そ、そんな、つもりは、ぜんぜん――――」

589Mii:2021/08/09(月) 18:26:19 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「ならば、私に、私自身の責務、果たさせてくださいっ!!
    どれだけ苦難が待ち構えていようと、四苦八苦する私に心無い言葉が投げ掛けられようとっ!
    当然の運命として、打破すべき逆境としてっ!誠心誠意受け止めますっ!

    後ろめたい気持ちを持ちながら今後皆さんと付き合っていくなんてこと、
    私には、できません!お願いしますっ!!」

ロゼッタ「おねがい…………します、どう、か――――」ボロボロボロボロ



滴が、上から、落ちてくる。
ピーチ姫が、私と同じように、ボロボロと泣いていました。



ピーチ「…ごめんなさい、ごめんなさい――――」ボロボロボロボロ

ロゼッタ「――――――――」

ピーチ「私、ロゼッタの事分かってるようで、なんにも分かってなかったのね。
   偉そうに上から目線で、なんでも世話してあげなくちゃって考えて…。
   ロゼッタの気持ち、願い、ぜんぶ踏みにじってきたんだわ。

   貸し借りなしじゃないと、本当の対等な付き合いだなんて、できないわよね…」ボロボロ

デイジー「ピーチ…………」グズッ

ピーチ「私のバカ、バカ、バカ…………!」ボロボロ

590Mii:2021/08/09(月) 18:28:46 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「どうか、その仕事…私に、一任してください。
    精一杯、励みます。そして、必ずクリアして見せますから。
    その出来しだいで、再び私が子供同然だと判断されるのなら…
    もうそれは、甘んじて受けます」

ピーチ姫が、ブンブンと首を振る。とんでもない、と言ってくれているかのよう。



ピーチ「そんなこと、絶対に二度としない。もう、私と貴方は対等なのだから。

   …デイジー、わざわざ私の与太話に付き合ってくれて、ありがとう。
   でもあれは、忘れてちょうだい、全部。一切合財、ロゼッタに…任せるから」

ロゼッタ「…それは、本当ですか」

デイジー「…………わ、私は、別に、そのくらい気にしないけど…い、いいの!?
    ロゼッタの心配はしなくて…!?進捗次第だと、本当に槍玉にあげられるよ!?
    大げさに言うと、牢屋に閉じ込められちゃうかも…っ!」

ロゼッタ「…デイジー、姫」

デイジー「そ、そんな悲しそうな目で見ないでっ!わ、わかった!わかったよ!
    私だってロゼッタのことは信用したい…いや、信じてるから!
    なんとか奇跡的なすっごいことが起きて、ロゼッタが上手くやってくれるって!」



ロゼッタ「――――」ズキッ

591Mii:2021/08/09(月) 18:32:16 ID:28rO9.d.
言葉の刃は、時折、続く。



ピーチ姫にも、デイジー姫にも、まだまだ私はひよっ子に見えている。



…やってやる。ぜったいに、やってのけてみせる。
むしろ、見返したい気持ちで、いまは一杯。
私の精神は、以前からは十分に…強かになったはず。



ピーチ「そのかわり…最後まで絶対に、諦めないで。
   私も心を鬼にして、一旦ロゼッタを突き放すから――――」

ロゼッタ「――――のぞむ、ところです。
     贔屓もなにもない唯のロゼッタとして、そのままに批評してください」

ピーチ「…ああ、ロゼッタがこんなに強い女性になっていたなんて。
   私って、本当に…バカだったわ」グズッ





三者三様に泣いて、泣き腫らして――――
私の想いは、なんとかお二人に届いた、そういうことにしておきました。

592Mii:2021/08/09(月) 18:35:08 ID:28rO9.d.
ピーチ「じゃあ、その書類はそのままロゼッタが持っておいて。
   その書類、もう処分はしないわ。むしろ残しておくべきだし。

   私は、このことを心変わりしないうちに大臣たちにすぐに周知させるから。
   みんな、やきもきしていたのよね…」

ロゼッタ「私を責務から逃がす代償に釈明に追われていた、ということですね…
    大口を叩きはしましたが、本当に…申し訳ありません」

デイジー「改めて、その書類、しっかり細部まで目を通しておいてね。
    なんだったら、そこの椅子と机を使うといいよ」

ピーチ「私の固定席なんだけど…まあ、いいわ。好きに使って。それじゃ」バタン

デイジー「私はご飯でも食べてくるねー」バタン



ロゼッタ「……………………」



ロゼッタ「……………………ほっ」



涙の跡をしっかり拭いて、書類をしっかり握りしめて、示された席へ。

流し読みしてしまいましたから、ちゃんとゆっくりと読み直しましょう。
失敗したり、仕様を勘違いしたり、ずさんな仕事をしてしまったりしてはいけません。

593Mii:2021/08/09(月) 18:38:44 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「製作概要…………」ペラッ

ロゼッタ「期日…………」ペラッ

ロゼッタ「費用…………」ペラッ

ロゼッタ「デザインポイント…………」ペラッ

ロゼッタ「安全性…………」ペラッ

ロゼッタ「レース展開、逆転性…………」ペラッ

ロゼッタ「観客動員、収益性…………」ペラッ



詳細を読めば、ますますピーチ姫の知識と頭のキレに驚愕するばかり。
ここまで丁寧な内容なら、実行する私としてもかなり助かります。
それこそ読むのが面白くて、読みふけってしまうほど。瞬く間に、1時間ほど経って行きました。

…ふう。特段、奇天烈すぎる内容は有りませんでしたね。
真面目にコツコツ工程を組めば、なんとかなりそうです。

チコ「がんばれ、ママー!」

チコ「負けるな、おー!」

チコ「元気出して、ピーチ姫を見返してあげよー!」

ロゼッタ「ええ、もちろんよ。しょげてばかりじゃ、駄目だもの」

594Mii:2021/08/09(月) 18:40:30 ID:28rO9.d.



チコ「…あれ?まだ書類が残ってるよ?」



ロゼッタ「…あ、本当だわ。議題が終わったとばかり勘違いしていたのだけど。
    添付資料でも付いていたのかしら」











書類「議題 ロゼッタに対しての諸費用請求について」








ロゼッタ「………………………………しょひようせいきゅう?」ペラッ

595Mii:2021/08/09(月) 18:43:49 ID:28rO9.d.



  『ロゼッタは、このたびのタブー戦において、キノコ王国に対し
   看過できない程度の被害・損害・特別経理の計上を負わせた。

   そのうち、分身体らによる一切の被害は本人の意思がないため除外するとして、
   以下に挙げる項目について、賠償責任を負うものとする。

   ・スマブラ試合会場ならびにフィールド構成システムを自らの意思で半壊させ、
    実質的に全体を再建築せざるを得なくなったことに対する責

   ついては、ロゼッタはキノコ王国に対し、

   42億9496万7296コイン(430億円相当)の金員、あるいはその額と等価以上の物品を支払うこと。

   支払い完了までの利息は年1%とする』





ロゼッタ「…………………………………………………………………………
    よんじゅうにおくきゅうせんよんひゃくきゅうじゅうろくまんななせんにひゃくきゅうじゅうろくこいん?」





ロゼッタ「――――!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」サァッ

596Mii:2021/08/09(月) 18:47:34 ID:28rO9.d.
デイジー「お腹いっぱいになって戻ってきましたー!」ガチャッ

ロゼッタ「デ、デ、デデデデデデ――――」

デイジー「…デデデ大王?」

ロゼッタ「デイジー姫っ!こ、こ、これっ!
    この損害賠償って、いったいなんですかっ!?!?!?」バンッ! バンッ!

デイジー「……??何を今さら。さっき確認してたじゃん。
    ロゼッタ、最後のでっかい隕石でフィールドぶっ壊したじゃない」

ロゼッタ「え、あの、その」マッサオ

デイジー「已むに已まれぬ不可避行動ならもちろん免責になるんだけどね。
    余裕もって倒せたはずのマリオ達の助力を断って、あの攻撃でトドメを刺したってことは…
    不必要な破壊ってことで、あの場面の被害はどう解釈しても、法律上は…

    100%、ロゼッタの有責器物破損行為になっちゃうんだよ」

ロゼッタ「」

デイジー「おまけに、あのフィールドだけじゃなくてさ。
    根本的なフィールド呼び出しシステムがお釈迦になったみたいで。
    まもなく、試合会場全体を一から建設し直しになるみたいだよ。

    国家プロジェクトで何年か掛けて作ってた施設だし、高くついたみたいだね…
    ピーチが嘆いてたよ。半壊というよりむしろ全壊って言いたいくらいだって」

ロゼッタ「」

597Mii:2021/08/09(月) 18:52:34 ID:28rO9.d.
デイジー「…本当に、どうしたの?」

ロゼッタ「……………………かくかく、しかじか」

デイジー「かくかく、うまうま」

ロゼッタ「……………………」

デイジー「……………………」

デイジー「――――!? 二つ目の議題知らずに大口叩いちゃったのぉ――――っ!?」

ロゼッタ「…………ハイ」

デイジー「えっ、ちょっと落ち着こう。こんがらがってきた。…じゃあ何?ひょっとして、あれ?

     私たちが『ロゼッタにコース製作なんてできるはずありませんわオホホホホ』みたいな
     シンデレラの継母的なイジワルをしてるって思ってたわけ!?悲しくなってくるんだけど!?」

ロゼッタ「すいませんすいませんすいません………!で、ですが、
    それでは一体どうして、私を護るとかいう発言が…?」

デイジー「多大な出費を強いられて難しい顔をする上層部に、信賞必罰のプラマイ相殺を強引に持ち掛けて
    コース製作の名誉を諦めてもらう代わりに借金帳消し・肩代わりに動いてたんだけど…
    賛同した私も、おまけで責任被ることにして…ロゼッタよりはお金の工面の余地があるし…」



ロゼッタ「」

598Mii:2021/08/09(月) 18:56:23 ID:28rO9.d.
ガチャッ!



ピーチ「おまたせっ!しっかりと皆には伝えてきたわ!
   文句垂れていた人たちも、私たちの目を醒まさせた顛末を聴いて、
   『さすがはロゼッタ様だ!素晴らしい責任感と潔さ!』って絶賛してたわよっ!
   しっかり借金返してくれるのなら、なにも文句言わないって!」バンッ!



ロゼッタ「あ、ああ、ああああ」マッサオ

デイジー「」

ロゼッタ「あ、あの、わ、わたし、そんな大金、どこにも――――」ガタガタガタガタ

ピーチ「わかってるわよ、ロゼッタの懐事情くらいは。






   
   大丈夫、これから頑張って体で払ってくれれば問題ないから!算段は付いてるの!」



ロゼッタ「」

599Mii:2021/08/09(月) 19:00:30 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「        」



ロゼッタ「                」



ロゼッタ「………………………………………………………………………………………
    …………………………………………………………………………………………
    …………み……………………う……………………り…………?」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ



ピーチ「」

デイジー「幻滅しました。ピーチのファンやめます」

ロゼッタ「許してください他のことならなんでもしますお願いします」ドゲザ

ピーチ「ちっがーう!何から何まで違うから!…もうっ!ちょっと来なさいっ!」





ロゼッタ「――――――――――――」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

デイジー「ドナドナー」

600Mii:2021/08/09(月) 19:05:21 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「私、どこに連れて行かれるんですか…なにを、されるんですか…?」ガタガタガタガタ



放心状態で書斎に連れて来られたと思ったら、一冊の漫画を押し付けられました。

ピーチ「付箋の付けられたところから読んでみて?」

ロゼッタ「………………………は、はあ――――」ペラッ



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ロゼシ「うわああああああぁぁぁぁぁ――――!!」ヒュウウウウ

デイ太「わああっ!ロゼシさんが底も見えない崖から落ちたっ!
   …ああっ、なんとか掴まってるみたいだけど時間の問題!
   早く助けに行かないと一巻の終わりだよ!ピチえもん、なんとかしてよ!」

ピチえもん「だから、便利な道具はみんな置いてきちゃって……あ、待って。あれが使えるかも…………!
     
                      『重力ペンキ』――――っ!!

     これを塗ると、塗ったところが下になる!
     ペンキの道を踏み外したら真っ逆さまだけど、崖に塗りたくって助けに行きましょう!

     それっ、ペタペタペターッと!」ヌリヌリ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

601Mii:2021/08/09(月) 19:12:50 ID:28rO9.d.
ロゼッタ「…………………付箋の間の箇所は、よ、読み終わりましたけど…???」



ぱたりと本を閉じると、満足気に突っ立ったままのピーチ姫。
私はただただ怖くて、体が震えています。

ご、ごくごく短い量でしたし。ものの2分も掛かっていません。
い、いったいこれに、何の意味があるのでしょうか…………!

それともこれは、思わせぶりのダミーの仕掛けで、既に何かしらの魔法拘束によって
ピーチ姫の都合のよい状況に追い込まれて……まな板の鯉状態、だったり…っ!





ピーチ「そう、読んだわね?」ニヤッ

ロゼッタ「は、はひっ」

ピーチ「さてと、ものは相談なんだけど――――」





ロゼッタ「え、どうして顔を近づけてくるんですか、
    あの…………こ、こわいです――――、誰か、助けて――――っ!」ガタガタガタガタ

602Mii:2021/08/09(月) 19:17:31 ID:28rO9.d.
〜イロドリタウン〜

僕は、ペンキ―!ペンキのことならなんでもお任せの名アシスタントさ!
そしてここは、色彩の楽園と名高いイロドリアイランドの中心部、、イロドリタウン!
大人の雰囲気がするリゾート地のイロドリタウンの一番の観光スポットは、
6つのビッグペンキスターから色とりどりのペンキが枯れることなく湧き出る「イロドリの泉」!

…そんな、ペンキの聖地が、ある日突然――――



クッパ「さあ、どんどんペンキを運ぶのだ―!
   クッパシップに積載してキノコ王国まで運ぶのだー!」

ヘイホー 「ヘイホー!」

ヘイホー「ヘイヘイホー!」

ペンキ―「なにごと!?」

クッパ「うむ!すでにイロドリタウンの市長には話をつけてあるのだ!
   そのご自慢の無尽蔵のペンキ、我々が適正価格で大量に買い付ける!」

ペンキ―「え、ええ?」

クッパ「とりあえず10万リットルくらい第一陣として買い取るが、
   調子が良ければまだまだまだまだ買い取るぞ!
   せいぜいイロドリの泉のメンテナンスは欠かさずやっておくのだ!」

ペンキー「」

603Mii:2021/08/09(月) 19:21:57 ID:28rO9.d.
〜キノコ城〜

キノピオ「オーライオーライ、どんどん運んじゃってくださいっ!特設タンクに流し込んでくださーい!」

トゲノコ「よしきたっ!追加注文は早目にお願いするぞ、輸送手続きにもある程度時間かかるからなっ!」

キノピオ「お気遣いありがとうございまーす!」





〜 キノコ城地下室 研究ラボ 〜

大量のフラスコにビーカー、そして薬品が所狭しと収められている。
他の研究機関の追随を許さない設備を誇る一室――――――――





ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――



          『反重力ペンキってあったらいいな、できたらいいな』――――



    ―――って、なんですかああああああああああああああぁぁぁぁ――――――――っ!!!」パアアアアアアァァァァ

604Mii:2021/08/09(月) 19:24:56 ID:28rO9.d.
ピーチ『本当にごめんなさいっ!マリオカート8の準備が遅れに遅れてて!

   反重力で浮き上がる、未来志向の斬新なコースを作りたくて…
   ずーっと研究に研究を重ねてたんだけど!
   研究班の開発が一向に進まないのよ、やばいくらいに!

   マリオカート7による延命もそろそろ限界なの、実はっ!
   そういうわけでロゼッタの力を借りたいわ!それはもう!
   
   こう、なんというか。塗りたくるだけで反重力場が形成されるような、
   お手軽で使い勝手のいいペンキみたいなもの、作ってくれない!?それも大量にっ!
   とりあえず、素の状態のペンキは用意できるから自由に使って!
   ペンキ発注量は開発進捗次第でロゼッタに委ねるわ!研究ラボも開放するから!

   成果を挙げるまで、ほうき星には帰らないでね!それがけじめってものよ!



   とりあえず、最終目標は――――100万リットルくらい!!
   安全マージンをとると、その3倍量くらいは欲しいんだけどね!!』



ロゼッタ「ひいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」パアアアアァァァァ



ピーチ姫の台詞が繰り返し繰り返し思い起こされます。
いくら呑気な私にも分かりますっ!
これ、下手すると、何十年もほうき星に帰れないっ!準地下牢生活ですっ!?

605Mii:2021/08/09(月) 19:28:44 ID:28rO9.d.
キノピオ「あ、お忙しい所すいません、ロゼッタさん!
    ペンキの第一陣、10万リットルが無事届いたとのことです!
    言われればすぐさま持ってきますからね!お願いします!」

ロゼッタ「ま、まだ理論構築段階、それに試験管レベルから徐々にスタートですからっ!!
    今は1リットルもあれば十分ですっ!プレッシャー掛けないでくださいっ!
    あと、ピーチ姫にどうしても言いたいことがっ!」

キノピオ「…姫様なら、手続きを済ませてバカンスに行ってしまわれましたが」

ロゼッタ「」

キノピオ「あと、姫様からの言伝があります。
    
      『バカンスから帰ってくるひと月の間に、最低限の仕事はしてちょうだいね、じゃないと考えがあるわ』

    とのことです」

ロゼッタ「…………………………」ガクガクガクガクガクガクガクガク

ロゼッタ(ピーチ姫、本気かも、しれま、せん。あまりに酷いと、本当に、身売りの憂き目に遭う、かも)ガタガタガタガタ

ロゼッタ「おとなこわいおとなこわいおとなこわいおとなこわいおとなこわい
    いっしょうこどもでいいですあはははは…………」ガタガタガタガタ

キノピオ「お気を確かにっ!!」

ぐつぐつ。ぐつぐつ。
繰り出す魔法陣の数々と、怪しげな沸騰する液体に囲まれて、
私ロゼッタの…強敵(ピーチ姫)との決死の戦いが、始まってしまったのでした。

606Mii:2021/08/10(火) 08:50:54 ID:VfyrD.AE










〜 第4章 〜








          ロゼッタ、お金を稼ぐ

607Mii:2021/08/10(火) 08:52:31 ID:VfyrD.AE
〜12月24日〜



ルイージ「ジングルベール、ジングルベール、すっずーがー、なるー!
    やっほーロゼッタ、様子を見に来たよー!!」







ロゼッタ「        」ボロッ

ルイージ「出だしから机に突っ伏して灰になってる!?」





ロゼッタ「………………………………………………………
    クリスマス・イヴだというのに………今日も変わらず、実験、実験…。
    体の浄化と食事とお手洗いと僅かな睡眠以外はずっと実験…………。
  
    お風呂に入りたい…………せめてシャワーを浴びたい…………」ボロッ

ルイージ「…………うわあ、魂が抜けかけてる」

608Mii:2021/08/10(火) 08:55:15 ID:VfyrD.AE
デイジー「あ、ルイージじゃん。どうしたの?疲れ切って無防備なロゼッタの姿を眺めて鼻の下伸ばしてる、
    とかなら私じきじきに正義の鉄拳制裁を――――」

ルイージ「違う、違うっ!心配になったから様子を見に来ただけだって。
    ピーチはバカンスに行ってるし、兄さんはピーチの付き添いだし、
    ロゼッタの面倒を見てあげられる人が少なくなってそうだったからね」

デイジー「いまごろ、お二人さんいい雰囲気になってるのかな、いひひ…」

ルイージ「それはないでしょ。ヨースター島にはヨッシーたちがワンサカ居るし」

デイジー「なんでそんなところ選んだ!?」

ルイージ「なんでも、兄さんが口寄せの術の話をしたらピーチが興味津々だったんだって」

デイジー「へ、へええ?」

デイジー(口寄せってなんだろう…忍者?)

ルイージ「ロゼッタも、1日くらいしっかり休んだらいいのに」



ロゼッタ「――――先日、夢を見たんです」

ルイージ「…夢?」

ロゼッタ「はい。…その夢の中では、私は相変わらず借金返済に追われていて。
    頑張っても頑張っても、積み重なる利息分すら支払えなくて。
    ほうき星を借金の一部のカタに取られてしまったんです――――」ウツロ

609Mii:2021/08/10(火) 08:58:31 ID:VfyrD.AE
〜回想(夢)〜

ピーチ「へえ、これだけ?これっぽっちしか返せないって?」

ロゼッタ「…………」ブルブルブルブル

ピーチ「駄目ね、全然足りない。もうちょっと真面目にお金を稼いだらどう?」

ロゼッタ「…………すいません、すいません――――」ブルブルブルブル

ピーチ「もう面倒だわ、ほうき星から呑気にやってきた魔法使いさん。
   いつかは自分たちの彗星に帰りたいと、星を眺めていたわね…
   
   アルティメット・ギャラクシー・ヒステリックボムゥ―ッ!!」

ロゼッタ「…………………え、ほ、ほうき、星」



デイジー「デデ――――――――ン!!」

ほうき星は きれいさっぱり なくなりました。▼



ロゼッタ「あ…あ……ああああああああああああぁぁぁ!!!」ボロボロ

〜回想(夢)おわり〜

デイジー「」

610Mii:2021/08/10(火) 09:01:03 ID:VfyrD.AE
ロゼッタ「ぴ、ピーチ姫に、なんの、前触れもなくっ!
    ほうき星がっ!一瞬の気まぐれで、消し去られてっ!!

    うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」ボロボロボロボロ

ルイージ「ロゼッタ!それ夢!ただの夢っ!
    ちゃんとほうき星はあるから!残ってるから!」

デイジー「なんか私が悪魔の片棒を担がされてるんですけど!?」





ロゼッタ「…手なんか抜けないんだ…死に物狂いでやるしかないんだぁ…」ボロボロ





ルイージ「これは末期症状かもしれない。対策必須だね…!

    …よし、デイジー!ピーチとマリオがいない間、僕たちでなんとかしないと!
    デイジーはとりあえず、この場を収めて、今日は無理やりにでも休ませて!
  
    僕は、なにかロゼッタがストレス発散できそうなイベントを練ってみる!」

デイジー「よしきた!」

611Mii:2021/08/10(火) 09:03:52 ID:VfyrD.AE
〜12月24日 夜〜



ロゼッタ「ねむれません……………………ほうき星を取られるのは、嫌…
    身売りするのも、絶対嫌……………」ガタガタガタガタ

デイジー「そんな要求、ピーチがするわけなかろうに」



ロゼッタ「そんなことどうして言えますかっ!
    心を鬼にしたピーチなら、不出来な私の様子次第では十分あり得ます!」

デイジー「ピーチさーん!なんか脅しが効き過ぎて、
    ロゼッタからの信頼度がものすっごく下落してるぞー!?」



ロゼッタ「……………………」ブルブルブルブル

デイジー「とりあえず、今は、寝れっ!とっとと眠れ!
    疲れたままだとなんにもいいことないよ、健康が資本!」

ロゼッタ「ねむれません、よぉ……………………」

デイジー「じゃあ強引に眠らせる!」

ロゼッタ「…………え?」

612Mii:2021/08/10(火) 09:06:19 ID:VfyrD.AE
デイジー「…ふふっ!まあ、念のためにね、奥の手を用意しておきましたっと!

    星の精のマールさん、おでましー!!」

マール「呼ばれてきたわー!」

ロゼッタ「――――あっ。ど、どうも」

マール「私の子守唄で、多少強引にでも眠って貰うわよ。
   これで今夜はぐっすり眠れるはず!自然に起きるまでそのまま寝かせておくわ!」

ロゼッタ「…わ、わあ!それは助かります!」



なんだかんだ言って、しっかり睡眠をとりたいのは本心ですから…!



マール「――――――――そぅれ!!!」パアアアアァァァァ





ロゼッタ「――――――――くぅ」スヤァ

デイジー「はぁ、これでようやく一安心、だねえ。ありがとう、マール!」

マール「このくらいお安い御用よ!」

613Mii:2021/08/10(火) 09:08:31 ID:VfyrD.AE
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



ファイアロゼッタ「―――――――――」パチッ

ファイアロゼッタ「ここは…………」



ふと目を開けて、しばしのまどろみのあと、起き上がります。
まわりをキョロキョロ見渡せば、不思議な空間。

なにぶんつい最近、似たような目に遭ったため、慌てて立ち上がって警戒しますが…。

なんとも周りがグニャグニャで、おぼろげで。
星がところどころ、キラキラとファンシーに輝いています。
何者かの空間魔法に囚われた、というよりは――――



ファイアロゼッタ「…………って、いつの間にかファイア状態になってる。
        ――――ああ、これ、夢の中ですか」ポンッ

なんとなく分かることがあるんですよね、自分が夢の中にいるってことが。
いざ起きてからは、内容を覚えていないことがほとんどなんですが。

614Mii:2021/08/10(火) 09:10:11 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「これはマールの子守唄がバッチリ効いてくれたみたいですね。
         少しは疲れも取れるとよいのですが…………。
 
         さて。夢の中と分かったならば、一体何をしましょうか」



ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「あんまりはしゃぎまわると、夢の中とはいえ睡眠効果が薄れますよね?」



ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「よし、寝ましょう!寝れないまでも、せめて安静にしておきましょう!
         つまらないと言われようと、より体を休ませるためです!」

ベッドなどありませんが。再び地べた?にコテンと横になり。
ああ、なんだかいい寝心地です。さすが夢の中、万能です。



現実の私と同じく、夢の中の私もすやすやと深い眠りに――――

615Mii:2021/08/10(火) 09:12:37 ID:VfyrD.AE

    「起きてください」



ファイアロゼッタ「――――――――――――」スゥ・・・



    「起きなさい」



ファイアロゼッタ(――――――――――――ん?)



    「もう無理やり起こさないっかなー☆」

    「それもそうですね」

    「じゃあー、さっそく……」



ぽかっ!



ファイアロゼッタ「…!?」

616Mii:2021/08/10(火) 09:14:23 ID:VfyrD.AE
ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!ぽかっ!



   「起きろと言っているでしょう」

   「おっきろー☆」

   「起きないと、どんどん力を強めていくのー」



ファイアロゼッタ「痛い痛い痛いっ!
         誰ですかっ!レディの頭を好き勝手にポカポカ叩くのは!」ガバッ!








ハロウィンロゼッタ「Trick or Delete!消されたくなかったら悪戯されなさい!」キリッ

オーロラロゼッタ「やっほー! オーロラロゼッタ、ここに見参☆」キラッ

スイマーロゼッタ「眠いのはわかるのー。私もちょっと眠いのー。
         スイマー…じゃなくて睡魔がガルルーって襲ってくるのー」ウトウト

ファイアロゼッタ「本当にどちら様ですか!?」

617Mii:2021/08/10(火) 09:16:53 ID:VfyrD.AE
私ですか!?それもなんだか不思議な…コスプレ、をした!?



イタズラが好きで、冷静そうな……
魔法帽子被って杖を片手に澄まして見せる、魔女っぽさなら一番の1人目。

ちょっぴり見栄っ張りで、陽気そうな……
アイドルのようにポーズを堂々と見せ付ける、オーロラの色合いを醸し出す2人目。

昼寝を良くする、おっとりそうな……
南国に似合う涼し気なワンピースを着こなす、なんだかのほほんとした3人目。



ファイアロゼッタ「特に2人目っ!イタイ!なんだかすごくむず痒いので、
        控えて頂けませんか!せめてもっと優雅にですねっ!」

オーロラロゼッタ「恥ずかしさは何も生み出さない!ありのままに自分を表現するのが大事よ!
        皆の注目を浴びることが、私を何より輝かせるの!
        さあ貴方もご一緒に!世界が開けるわ!」シャラララーン

ファイアロゼッタ「ハイテンションでウインクとか止めて頂けませんか!?
        本当にお願いしますからっ!悪い意味でトリハダ物ですっ!?」ゾワッ

スイマーロゼッタ「慌てず騒がず落ち着くのー。焦ってもいいことないのー。
        目を閉じて、深呼吸して、そのままふかーいふかーい眠りに…」

ハロウィンロゼッタ「せっかく起こしたのにまた眠らせちゃだめでしょう。
          急ぎ、やって貰わなきゃならなないことがあるんですから」

618Mii:2021/08/10(火) 09:19:29 ID:VfyrD.AE
やってもらいたい…こと?一体なんなのでしょう。

ファイアロゼッタ「それにしても、それ…その、アクセサリ…」

スイマーロゼッタ「それ?どれー?」

ファイアロゼッタ「…貴方がたが付けている、その…黒光りする棘付きの首輪ですよ。
         クッパが付けているような。やたらめったらゴツゴツして、首を回すのも辛そうな。

         なんといいますか、すっごく悪趣味ではないでしょうか…?正気を疑うのですが…」



3人とも漏れなく装備済み。…正直、全然似合わないと思います。まるで奴隷の雰囲気、背徳感までプンプンします。
夢の中の流行ファッションとかだったら二重にビックリです。
クッパならば強面、そして大魔王としてのパワフルさと相まってサマになると思いますが。



ハロウィンロゼッタ「人のこと、言える立場なのですか?ふう…」

ファイアロゼッタ「な、何を言って――――――――」ピトッ



ファイアロゼッタ「………………………………………」サワサワ



ファイアロゼッタ「――――何か首に付いてますっ!?」ガーン!

619Mii:2021/08/10(火) 09:21:32 ID:VfyrD.AE
いつ!?誰が!?どのタイミングで首輪なんて取り付けたのですか!?
あれ?あれれ!?いくら力を加えても一向に外れません!
というより、ロック機能もなにもない唯の輪っか構造で、取り方そのものがわかりません!
…イタッ!?我武者羅に引っ張っていたら、普通に棘で手を引っ掻いて痛いです!



ファイアロゼッタ「ちょっと!これっ!どうにかしてくださいよっ!
         いつまでもこんなもの付けておきたくありません!」

オーロラロゼッタ「お揃いお揃い!みんな仲良しだね☆」

ハロウィンロゼッタ「…………さあ、始めますよ」サッ



アタフタする私をよそに。ハロウィンスタイルの私が、ため息ついてから、杖を一振り。
まばゆい光が、前方の広い、ひろーい空間を包み込みました!



ゴゴゴッ……ズガガガガガガガッ!!



激しい地鳴りが起こり、ギョッとします。

何もなかった…ように、少なくとも私は思っていた、目の前の空間に。
まるでキノコ王国の試合会場に、フィールドがゴゴゴッ…と呼び出されるのと同じように。
氷と星空に覆われた、どこか見慣れたコースが出現しました…!

620Mii:2021/08/10(火) 09:24:10 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「貴方もよく知る、『ロゼッタプラネット』。ちょっと改変した箇所はありますけれどね。
          相似拡大させ、1周あたり21.0975kmの長大コースに作り替えています」

ファイアロゼッタ「――もう、いいです。相手にしてくれないのなら、首輪の外し方は1人でじっくり考えます。

         21.0975km、ですか。1周、凄まじく長いですね…!?おまけにやたら中途半端。
         一体どうしてですか?というより、どうして今、コースを急造したのですか?」

話についていけません。それにしても凄い魔法ですね、私も出来る…かもしれませんが。
私にやって貰いたいことと関わりがあるのは確実そうです。
問題は、どこにもカートが見当たらない所ですが…。



ハロウィンロゼッタ「それが今回の本題ですよ。今から――――」

ファイアロゼッタ「…今から?」










ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「どうして!?」

621Mii:2021/08/10(火) 09:26:30 ID:VfyrD.AE
いきなりそんなこと言われてもですね!?ほかの2人も、特に異論はなさそう。私は大ありです!

ファイアロゼッタ「何が悲しくて、夢の中でそんな疲れることをしなければならないのですか!
         意図があるのでしょうが、お断りします!やりたかったら自分で勝手に走って下さ――――」



ハロウィンロゼッタ「――――『無性に42.195km走りたくなる魔法』!!」ポワワワワーン

ファイアロゼッタ「きゃあああああああっ!?
   
         一体何をしでかすのですか!いきなりっ!
         だいたいですっ!いきなり人の夢の中に乱入してきておいて、
         こんな暴虐、こんな仕打ち!失礼極まりないとは思わないのですか!
         せっかく人が休もうとしていたのにっ!

         あああ、こんな相手に、非効率で無駄な話をしている暇ではありません!
         早く42.195km走り切らなければっ!それが私の使命ですっ!邪魔ですっ!どいてくださいっ!!」

ハロウィンロゼッタ「はいどうぞ。『スイマー』、1周目だけ案内してあげて」

スイマーロゼッタ「2周頑張れとか言われたらどうしようかと思ったのー。
         1周だけならまあ…しぶしぶ合点承知なのー」

オーロラロゼッタ「私もいっくよー!」

ハロウィンロゼッタ「貴方はいいから。気温がもっと下がるわ」

オーロラロゼッタ「ええええー☆」

622Mii:2021/08/10(火) 09:28:38 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「それじゃあ、しっかり付いて来るのー!
         どこもかしこも滑りやすいから気を付けてー!

         あ、私のことは『スイマー』って呼んでほしいのー」タッタッタッ

ファイアロゼッタ「はい、わかりました」ダダダッ

案内、とは言われても。設計者であるからには、このコースは知り尽くしています。
相似拡大以外にも、宣言通り、ちょっと改変されたっぽい箇所はちらほらありますが、
気にするほどの差ではありません。

スイマーロゼッタ「カートじゃないけど、ジャンプアクションすればあら不思議―!
          しっかりと加速できるのー!見てて、こんな風に――――」



ツルッ。



ファイアロゼッタ「あ」

スイマーロゼッタ「ふんぎゃ!?」ベチィ



ファイアロゼッタ「だ、大丈夫ですか?」

スイマーロゼッタ「……滑るとこうなるってことを実演してあげたのー。わかったー?」グズッ

623Mii:2021/08/10(火) 09:30:32 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「は、はい。それでは――――やってみます!」ピョン



――NICE! ――GREAT! ――EXCELLENT! ――FANTASTIC!



ファイアロゼッタ「ふっ!それっ!えいっ!確実に――踏み切って!
       
         …なんだ、簡単じゃないですか!初見でもこのくらい余裕しゃくしゃく!
         特殊なポーズを取らなくていい分、運転時より大幅に楽なのでは?
         速度が落ちなくて不思議な感覚ですが、気持ちいいですね!」ダンッ! ダンッ!

スイマーロゼッタ「な、なにおー!私だって当然そのくらい――――――――」



――――NICE!    ―――NICE!    ――――NICE!



ファイアロゼッタ「……………………」

スイマーロゼッタ「…い、いやー。今日は調子が悪いのー。コンボが繋がらないのー。
         わ、わわっ!?なんかちょっと足を捻ったの!痛い!助けて!」グキッ



ファイアロゼッタ「……あれれ?」

624Mii:2021/08/10(火) 09:33:45 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「はあっ、はあっ…ちゃ、ちゃんとついて来て、るー?
         どうしてもっていうんなら、一休みしてあげても、いいのー」ゼェ ハァ

ファイアロゼッタ「申し上げにくいのですが、むしろ、こっちの台詞なんですけど…。
         『スイマー』、割とフラフラになってきていませんか?
         私は息ひとつ上がっていないのに。…その、案外運動は苦手だったり?
         口笛吹きながらでも余裕で付いて行けるような速度まで落ちていますよ」タタタ

スイマーロゼッタ「何気なく発せられた、上から目線の突き刺さる暴言なのー!
          しょうがないの!私は悪くないのー!脚本が悪いの!
          私、登場したてなの!アプリ内の話でいうならLv1.0なの!」

ファイアロゼッタ「アプリ内…?Lv.1.0…?」

スイマーロゼッタ「しっかたないの!ここは夢の中ってことで、なんでもあり!
         私のステータス見せてあげるの―!貴方も復唱ねー!
         すううぅぅ……ステータス、オープン!」バーン!

ファイアロゼッタ「す、すてーたす、おーぷん!?」バーン!
    


【スイマーロゼッタ  基礎体力レベル Lv.1.0(現実世界換算Lv.10)
          最大HP      00020
            魔法レベル   Lv. 7.0(現実世界換算Lv.70)
           最大FP      00256              】パパッ!


スイマーロゼッタ「ほらね、目の前に、異世界アニメっぽいスクリーンが現れたでしょー!
         これが私の実力なの。ハロウィンとオーロラも大体同じ――――」チラッ

625Mii:2021/08/10(火) 09:38:47 ID:VfyrD.AE
【ファイアロゼッタ  基礎体力レベル Lv.4.6(現実世界換算Lv.46)
       最大HP         00800(通常ロゼッタ時00675)
        魔法レベル      Lv. 13.0(現実世界換算 Lv.130)
        最大FP          02048               】パパッ!

ファイアロゼッタ「ふむふむ…私、強く、なりましたね…」シミジミ

スイマーロゼッタ「」

スイマーロゼッタ「…………うがー!!」

ファイアロゼッタ「!?」

スイマーロゼッタ「ああ、もー!要するに私…ううん、私たち3人はみーんな、
          現実世界でいうところの基礎体力レベル10なの!
          アプリ換算でLv.5に到達せんとする人にはこの辛さが分からないの!
          まとめると、もうちょっと労われーってことなのー!」

ファイアロゼッタ「よく意味が分かりません…私より弱いということだけは分かりましたけど…」

スイマーロゼッタ「むきー!そんなことを言う人は…
          挙動制御できないまま、つららに当たって痛い目に遭えばいいの!」

ファイアロゼッタ「並走する私なんか見ずに、前見てください前っ!!」

スイマーロゼッタ「ほへ?」

つらら「やあ」

626Mii:2021/08/10(火) 09:40:40 ID:VfyrD.AE








スイマーロゼッタ「ふべらっ!」ゴチーン!










スイマーロゼッタ「…………ふえぇ…ポイントは増えたから、いい、のー…」



ファイアロゼッタ「…な、なんだかすっごく懐かしい気分…!!」

スイマーロゼッタ「化石化した前々スレのネタを持ってくるのはアウトなの…」

627Mii:2021/08/10(火) 09:42:21 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「とりあえず1周おわり!2周目です!」ダダダダッ

スイマーロゼッタ「つーかーれーたー。リタイア、なのー」

オーロラロゼッタ「がんばれー☆応援してるよー!」





ハロウィンロゼッタ「…『スイマー』。そのまま2周目も走り続けてください」ヒラヒラ

スイマーロゼッタ「ちょっとちょっとー。約束が違うの―!?」

ハロウィンロゼッタ「1周、48分も掛かってる。遅すぎます。
          このタイム…『下の道』を通っていないでしょう?
          貴方の減速が足枷になったのがまるわかりです。
          ちゃんと全部案内してください!」

スイマーロゼッタ「…え、でも――――
         わ、わかったのー。そうするべきなら、やってみるのー」



ファイアロゼッタ「…………下の道?」



なにか…意味深な助言を『スイマー』にした彼女を通り過ぎて、
私たち2人は2周目に入っていきました。

628Mii:2021/08/10(火) 09:45:09 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「じゃあ、少し違うルートを通っていくのー!覚悟はいーい?」

ファイアロゼッタ「ふふふ、任せてください!この位の速度ならへっちゃらです!」

スイマーロゼッタ「よしきたー!
        
         それじゃあ、氷の割れ目から――――冷たーい水の中に飛び込むの―!!それー!」バッ

ファイアロゼッタ「それー!



         ――――え、水?……………………水ぅ!?」



水の中、コースアウトにならないのですか!?
私、そんなつもりで水を張った覚え、ないのですがっ!?



〜ヨースター島〜

ピーチ「いや、普通に水中コースアウトの概念なくしてレースに採用してるからね?
   ロゼッタ、デイジーと試走したときは走ってなかったけど。マリオカート7舐めないでほしいわ」

マリオ「どうかした?」

ピーチ「…気の迷いで呟きたくなったのよ」

629Mii:2021/08/10(火) 09:47:34 ID:VfyrD.AE
ザッブゥーーーン!

スイマーロゼッタ「ひゃっほー!加速、加速なのー!

         水中は私の庭みたいなものなのー!
         ぶっちゃけ、泳いだ方が走るより速いくらいなのー!」ゴウッ!

スイマーロゼッタは 潜水耐性レベル70で 水中負荷が69%軽減!
減速しにくいうえに 溺れない!▼



スイマーロゼッタ「さあ、遅れないで付いて来てるー? 」クルッ



ファイアロゼッタ「            」ゴボゴボゴボ

ファイアロゼッタは 潜水耐性レベル3で 水中負荷を ほぼモロに受けた!▼



スイマーロゼッタ「…あれれ?」

ファイアロゼッタ「                」ゴボゴボゴボゴボ

スイマーロゼッタ「あ、やばいのー!?残機制度とか、ここには無いのー!
         死なれたら夢から醒めた時に魂が欠落して大変なことになるのー!
         とっととさっさと救助するのー!」ヒュゴウッ!

630Mii:2021/08/10(火) 09:50:09 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「とりあえず連れ帰ったのー!なんだか重かったの!
          ドレスが水をたっぷり吸ったからかなー?」

ファイアロゼッタ「寒い寒い寒い寒い寒い寒い――」ガタガタガタガタガタガタガタガタ



もともと、このコースは確かに気温が低い、ですが。
流石に水の中に飛び込むなんて愚挙をしでかすと、寒さが半端ありませんっ!

ファイアロゼッタは 氷耐性を 持っていない!▼



オーロラロゼッタ「情けないぞっ☆私たちの中で一番厚着なのに!」

ファイアロゼッタ「…え、え?」

オーロラロゼッタ「むしろもっと冷やしちゃえ!ア イ ス ☆ ボ ー ル 3連だーん☆」ブンッ!

ファイアロゼッタ「ひぃあ!?危ない、掠めましたよ、ドレスもろとも凍り付かせる気ですかっ!?
         状況悪化させてどうするんですか寒い冷たい寒い冷たい痛い――!?」

ハロウィンロゼッタ「いい加減にしなさい、『オーロラ』。…仕方ないですね。
           ドライの魔法を掛けてあげますよ」パアアアア

魔法を掛けられたそばから、熱風が凍り付いた体を包み込んで、
体温が正常に戻っていきます。纏わりつく氷は水に戻り、その温度も上がってきて。
ああ、なんとか持ち直してきました!服も徐々に乾いて…乾き切りました!

631Mii:2021/08/10(火) 09:52:09 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「…ありがとうございます!えっと――――」

ハロウィンロゼッタ「『ハロウィン』と呼んでください。ファイアボールには到底劣りますが、
           このぐらいの威力なら他系統魔法もお手の物です」

オーロラロゼッタ「私は『オーロラ』でいいよ☆」

ファイアロゼッタ「わ、わかりました。つまりは――
         ハロウィンが『魔法多彩の私』で。
         オーロラが『氷特化の私』で。
         スイマーが『水特化の私』…ということなのでしょうか」

ハロウィンロゼッタ「おおよそはその解釈で構いません」

スイマーロゼッタ「とりあえず、今回の所はー。
         水中経路はやめておいた方が無難そうなのー。
         うまくやればアクションポイント稼げたんだけどー。

         まあ、そんなわけで、こんどは1人で――
         普通に陸路を、自分なりに走り切ってほしいのー。
         まだ2周目は続いてるのー」

ファイアロゼッタ「そうでしたそうでした!はやく走り切らなければ!
         時間を大幅にロスしてしまいました、急がないと!
         ――――『スイマー』、案内ありがとうございました!」

スイマーロゼッタ「どういたしましてー」ニコニコ

健康状態が良好となったので、ふたたびコースに戻って走り始めます!

632Mii:2021/08/10(火) 09:54:14 ID:VfyrD.AE
〜32分後〜

ファイアロゼッタ「…ゴール!まあまあ疲れました……」キキーッ

オーロラロゼッタ「おめでとー☆42.195kmを80分かあ、まずまずだね!
         がんばればもっともっと短縮できるはずだよ!
         基礎体力レベルの低い私たちが言うのは失礼かもしれないけど☆」

ファイアロゼッタ「体を凍えさせながら全力疾走して、その仕打ち…
         …いえ!そもそも私は一体どうして42.195kmも走って…!?
         まさか操られて…?本当に何をしたのですか!」

ハロウィンロゼッタ「まあ、それはそれとして」

ファイアロゼッタ「置いておかないでください!」

私を無視して話を進めることに少し慣れてきましたが、「ハロウィン」の態度は相変わらず。

そんな彼女に手招きされて、どこからか新たな人物が現れました。男性のようです。
なにか大きな箱を抱えて、ブツブツ言いながら近づいてきます。
な、なんだか影を抱えていますね。振り回されているのでしょうか、私みたいに。



ファイアロゼッタ「は、はじめまして」

「……………………ああ」

ややぶっきらぼうな態度。一体何者なのでしょう。
さすがに敵とかではないと信じたいですが。状況的に。

633Mii:2021/08/10(火) 09:57:44 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「あの、この方は一体、どういった方なのですか?」

するとハロウィンは、ぱちくりまばたきして、ちょっと思案して。
彼のそばに駆け寄り、殊更に明るい表情になって、言いました。

ハロウィンロゼッタ「ダーリンです」

ファイアロゼッタ「ダーリンさんですか、それはそれはってえええええええええええええええええ!?」

え?ええ?えええええ!?寝耳に水にも程があるんですけれどっ!!

ハロウィンロゼッタ「おかしいですか?」

ファイアロゼッタ「…………そ、そうですよね。いくら私と瓜二つっぽくても、夢の中といえば夢の中。
    彼氏がいることくらい、有り得る話ですよね。驚きすぎました」

一体、彼とどんな邂逅があったのか知りませんが。
いえ、そもそも夢の中のそんな設定など、それこそ何の根拠も理由付けも要りませんね。

ファイアロゼッタ「で、では。その、貴方にとって、ダ、ダーリンである彼について。
        うう、聴く方が恥ずかしくなってきます…。改めて詳細なところを紹介して――――」



オーロラロゼッタ「ふふっ!ちなみに、私にとっても彼はダーリンだよー」

スイマーロゼッタ「右におなじくー」

ファイアロゼッタ「ちょっと待ってええええええぇぇぇ――――!?
         なんでそんなインモラルな関係が構築されているんですかぁ――――っ!?」

634Mii:2021/08/10(火) 10:03:35 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「ちなみに、貴方にとってもダーリンだったりしますよ」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「それはいいい一体どういうことですかわけがわかりません正しい王国の言葉で
         話してもらいたいものですねそれとも私の耳が腐ってきたのでしょうか脳が理解を
         放棄していますああもしかして3人とも彼の毒牙に掛かってあるいは催眠にでも掛
         かって服従を誓わされているとかそれで今度は私を巻き込もうとしているのですね
         なんということでしょう一刻も早く助け出さなければなりませんああでも3人が抗え
         なかったからには私も回避の術も自信もありませんもしかして絶望が待っているの
         でしょうか急ぎ夢から目を覚まさなければ一体何をどうすればいえちょっと待ってく
         ださいもしかしてもしかするともしかしなくてもこれは未来視というやつで将来の私
         のパートナーだったりするのでしょうかいえでもですね今の私にはそんな気も覚悟
         も心の準備もまるでできていなくてですね刺激が強すぎてどうにかなってしまいそう
         ですとりあえず失礼かもしれませんが一旦ここはお帰りになって頂いてですね気持
         ちを整理してしっかり心持が定まったら改めてこちらから声を掛けさせていただきま
         すのでどうかお待ちいただけないでしょうか申し訳ございません私もその時になれ
         ば少しはマシな挨拶と落ち着いた言動ができることをここに宣言しておきますから
         何卒、何卒誠に恐縮ですがよろしくお願い申し上げま――――」

スイマーロゼッタ「というより、誰にとってもダーリンなんだけどねー」

ファイアロゼッタ「――――はい?」

ハロウィンロゼッタ「以上、ダーリンもとい『ダークリンク』を使った会心のドッキリでした」

ファイアロゼッタ「ちょっとキレてもいいですか!?喧嘩なら買いますよ!?」

635Mii:2021/08/10(火) 10:06:28 ID:VfyrD.AE
オーロラロゼッタ「私は止めようとしたんだよ!でもハロウィンがどうしてもって☆」

スイマーロゼッタ「だーかーらー、焦りは禁物なのにー」

ファイアロゼッタ「貴方たちも同罪です!」

ダークリンク「さっきから黙ってりゃ、人をダシにして遊ぶなコノヤロウ!」イラッ

ロゼッタ「ご、ごめんなさい!
    …ちょっと待ってください。どうして私だけ謝るのですか。
    貴方たちも謝って下さいよ。理不尽なことこの上ありません」



ダークリンク「チッ、めんどくせぇ。…まあいい、俺は俺の仕事をする。
       お前、42.195km走り切ったんだな?そら、20ルビーやるよ」

ファイアロゼッタ「あ、ありがとう、ございます…?」



ファイアロゼッタは 20『ルピー』 手に入れた!▼



ファイアロゼッタ「…あれ?ルビー?ルピー?ルビーって赤色のはずですよね…?
         これ、思い切り緑色なんですけど…?というより、
         これってルビーじゃなくて、ハイラルの代表通貨であるルピー…………」

ダークリンク「…………」ズーン

636Mii:2021/08/10(火) 10:09:59 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「そこは突っ込んではいけません。どのみち使用してしまえば同じことです。
          何せ、彼は――――



          ルビーとルピーっていう詰まらない繋がりだけで
          わざわざスレ主から『夢の中のイベント管理者』という…
          他に話の広げようもない、地味な出番を貰ってしまった不運な方なので」

ファイアロゼッタ「」



ダークリンク「こんなのってないぜ…スレ主張っ倒してやる…!串刺しにしてやる…!
       リンクの野郎が他所の王国に出張中、ゼルダその他は掃討戦に大忙し…
       だからって残り物の俺を、関連性のへったくれも見出せない、
       こんな意味不明なところに釘付けにするとか。ガノンも引く人権侵害っ…!

       リンクがハーレム状態だからって俺も適当にロゼッタに囲まれとけ、
       みたいな馬鹿な発想してたりしないだろうな…!
       こんな役、チンクルにでも任せとけよ…クソが…!」イライラ



ファイアロゼッタ「」

ハロウィンロゼッタ「ダークリンク、本題に移りましょう」

637Mii:2021/08/10(火) 10:12:07 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…はいはい。俺もこんな仕事さっさと終わらせてぇよ。
       で、今しがた渡した20ルピーを使うとだな。
       こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができるんだな。
       白玉がハズレ、赤玉が当たり。

       クジの総数は…そう、97個。
       当たりは、たったの1個だ。分かったら、さっさと4個引いてくれ。

       ちなみに夢ならではのご都合主義、完璧なブラックボックスで、
       のぞき込んでも何も分からないし空間魔法でも内部を解析できない。
       ズルをしようとしても無駄だぞ」

ファイアロゼッタ「それはまた、当選確率が低いですね…まあ、やってみましょう」



クジを引く理由、および当たった時の効果もサッパリですが、
「やって貰いたいこと」の一部なのでしょう。断るのも馬鹿らしいです。



1個目。…………白、ハズレ。
2個目。…………白、ハズレ。
3個目。…………白、ハズレ。
4個目。…………白、ハズレ。



4個目を引く直前に、格好を付けてちょっと時間を溜めてみましたが、
案の定、全く効果なし。まあ、予想通りの結果でしょう。

638Mii:2021/08/10(火) 10:14:02 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…………チッ」

ハロウィンロゼッタ「…………はぁ」

オーロラロゼッタ「ざーんねん!」

スイマーロゼッタ「がっくりなのー…」

ファイアロゼッタ「この結果が一番確率高いのに、そこまで非難される筋合い無いんですけど!」

もうちょっと私のやる気を引き出す努力をしてくださいよ!まったくもう!

ハロウィンロゼッタ「…こうなっては仕方がありません。それでは、今から――――」

ファイアロゼッタ「…今から?」









ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「」

どういう訳か、夢の中。
長い、ながーい旅路のスタートです。

639Mii:2021/08/10(火) 10:15:58 ID:VfyrD.AE
訳が分かりません。
全く訳が分かりません。

ファイアロゼッタ「嫌です!さっき走ってきたばかりなのに!賽の河原の石積みですか!
         鬼ですか、悪魔ですかっ!ですから、勝手に自分で走って来れば――――」

ハロウィンロゼッタ「――――『無性に42.195km走りたくなる魔法』!!」ポワワワワーン

ファイアロゼッタ「デジャヴ――――!?…ぐ、ぐ、ぐぐぐぐぐう…!!

         ああ、あああ、あああああ!はやく走りたい!走らなければー!!」ダダダダダ



ハロウィンロゼッタ「頑張ってください」ヒラヒラ

オーロラロゼッタ「貴方ならきっとできる!」

スイマーロゼッタ「千里の道も一歩から、なのー」



ダークリンク「…………」

BOXの中身が 強制リセットされた!▼



ダークリンク「さて、何時までかかることやら」

640Mii:2021/08/10(火) 10:18:31 ID:VfyrD.AE
〜60分後〜

ファイアロゼッタ「はあっ!はあっ!2周、走り切りましたよっ!…つ、疲れすぎです…!」

スイマーロゼッタ「そう言いつつ、まだまだ余裕はあるよね、凄いのー。
          しかもしっかりタイムを縮めて来てるのー!」
   
ダークリンク「おつかれさん。お前、42.195km走り切ったんだな?
       そら、20ルビーやるよ」

ファイアロゼッタ「…ぐっ、またデジャヴ…ということは…?」

ロゼッタは 20『ルピー』 手に入れた!▼

ダークリンク「…はいはい。俺も同じような事思ってるよ。
      で、今しがた渡した20ルピーを使うとだな。
      こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができるんだな。
      白玉がハズレ、赤玉が当たり。

      クジの総数は…そう、97個。
      当たりは、たったの1個だ。分かったら、さっさと4個引いてくれ。
      
      ちなみに夢ならではのご都合主義、完璧なブラックボックスで、
      のぞき込んでも何も分からないし空間魔法でも内部を解析できない。
      ズルをしようとしても無駄だぞ」

ファイアロゼッタ「ハズレクジがもとに戻ってます!?」

周りの3人から、無言の圧力。引けば、引けばいいのでしょう!?

641Mii:2021/08/10(火) 10:20:33 ID:VfyrD.AE
1個目。…………白、ハズレ。
2個目。…………白、ハズレ。
3個目。…………白、ハズレ。
4個目。…………白、ハズレ。

今度は毎回、ちょっと時間を溜めてみましたが、
案の定、全く効果なし。まあ、予想通りの結果でしょう。

ダークリンク「…………チッ」

ハロウィンロゼッタ「…………はぁ」

オーロラロゼッタ「ざーんねん!」

スイマーロゼッタ「がっくりなのー…」

ファイアロゼッタ「ですからっ!その反応は絶対におかしい!
         この結果が一番確率高いのに、そこまで非難される筋合い無いんですけど!」

ハロウィンロゼッタ「…こうなっては仕方がありません。それでは、今から――――」

ファイアロゼッタ「……………え、ちょ、ちょっと待ってください、あの?」





ハロウィンロゼッタ「このコースを2周、全力疾走してきてください」

ファイアロゼッタ「誰か助けてっ!!」

642Mii:2021/08/10(火) 10:22:46 ID:VfyrD.AE
ぶっ通しで走り続けることは、無理難題とわかりました。体力が持ちません。
頑張れば、2周60分は、まあ安定。そのたびに60分休むことにしました。
休む時は、座り込んで、ただひたすらに休みます。



…ええ。こんな計画を立てなければならないほどに――――
サイクルが、延々と繰り返されます。――――延々と。そう、延々と。



〜6サイクル目 走破!〜

ファイアロゼッタ「もう250km以上走って…ます…」グッタリ



これは、もう、あれですね。
当たりをなんとか引かないと、半永久的に走らされるループ仕様のようです。
まったく、末恐ろしい悪夢です。

夢から醒めるのを待った方がいいのかも…と思ったこともありましたが。
『スイマー』から、

    『こちらでミッションを達成するまでは、現実世界の貴方は…
    易々とは起きない仕様になってるのー。むしろ強引に起こされると魂が抜けるのー。
    時間の進み方は違うけど、早くしないと、周りが大騒ぎ、貴方も不幸になるよー?』

という、笑っていられないトンデモナイことをのほほんと宣告されたので、
ただひたすらに走って走って走って…!走るしか、選択肢が、ありませんっ!

643Mii:2021/08/10(火) 10:25:45 ID:VfyrD.AE



    『ちなみに、この夢の世界の14日間が、現実でいう1日に相当するのー。
    つまり、こっちで14時間経つと、現実では1時間経ってるのー』



疲れ果てたまま寝始めた、そのことは周りも知っているので。
現実世界でいうと、8時間なら寝続けても余裕でしょう。
10時間でも、多分放置される。大丈夫。

…12時間も眠りこけると、流石に不審に思われて、無理やり魔法で覚醒させられるかも。
スイマーの言ったことが本当ならば、周りを悲しませ、私も不幸になります。



ファイアロゼッタ「…つまり、最長でも7日間くらいしか猶予がありません…」



2時間ごとにクジを引く。
睡眠や食事は本質的に不要な空間とのことですが、それらを全て切り捨てたとしても――
最大で、1日12回が限度。単純計算で、理論上は84回引けます。
…すでに6連敗しています。

期待値としては、これだけ引けば…相当高い確率で当たる、はずですが。
なにぶん、私は運に見放されがちなので。当たるまでは安心できません。
おまけに、疲労蓄積によるサイクル遅延も無視してしまっています。

644Mii:2021/08/10(火) 10:28:17 ID:VfyrD.AE
    『あと、大事なことー。
    この夢の世界では残機制度が働かないのー。



    それだけじゃなくて、回復魔法が  使 え な い のー!



    アプリゲームならではのダメ要素なのー!スタミナ制、無駄に再現するなんてー!
    よりにもよって、このアプリに関してはスタミナ制じゃないのに、ひっどいのー!
    自然回復に任せるしかないから、HPの管理と怪我の回避には本当に気を配って―!』



ファイアロゼッタ「……もう。意味不明な単語もいくつか出てきましたが――
         現実世界でも、回復も無しにここまで走りつくす人は…そうは、居ませんよ…………」



6敗目のクジを目の当たりにしたダークリンクが、
疲れ果てた私を眺めて呆れた顔をしています。





ダークリンク「…………………」

645Mii:2021/08/10(火) 10:34:00 ID:VfyrD.AE
〜その頃、遠い土地〜

リンク「料理番任せちゃって悪いな、ルキナ。それじゃ、いただきます」

ファイ「いただきます」

ルキナ「いえ、このくらいさせてください、リンク様。
   間違っても料理上手なんて豪語はできませんが…」

リンク「…その『リンク様』って、やめない?」

ルキナ「いいえっ!このような状況になったからには、下につく者として、
    マルス様やアイク様に劣らぬ敬意は当然払ってしかるべきと考えます!」

リンク「…やれやれ、堅苦しいなあ…それ、直してけよ…?とりあえず食べるか。
   はは、俺なんか基本『採ったまま』か『丸焼き』の料理素人だから、俺よりは絶対に上手いって」

ルキナ「全く自信がありません…。
    そういえば、ファイ様と、何を話されていたのですか?伺ってもよろしいですか?」

リンク「いや、そのな?進軍計画を議論してたんだ。俺としては、こんなシナリオを描いてる。

   まず、元凶のギムレーを『速やかに』ぶっ叩く。敵軍の士気もガタ落ちになるしな。
   居城を完全制圧したら、そこから徐々に手を広げて安全地帯を増やす。
   自衛できるくらいの味方を集めて配置して、拠点を盤石にする。
   あとは、遠方に出征して残党も迅速に撃破する」



ルキナ「…素晴らしいシナリオだと思います!」パアァ

646Mii:2021/08/10(火) 10:36:18 ID:VfyrD.AE
リンク「そこまで素晴らしくはないんだよなあ…。

   このあたりの村々に寄り道すれば助けられる命を、
   最速でギムレーの所に向かうがために拾い逃すことがある、かもしれないぜ?

   全体としては被害を一番抑えられるからっていう…
   俺としても苦渋の決断だ。ルキナはそれでも納得するか?」

ルキナ「…はい。大丈夫です。よろしくお願い致します」

リンク「ルキナの知識と記憶によれば、ここからギムレーの本拠地まで、
   直線距離でざっと700km…道なりに進めば1000kmほどあるんだよな?」

ルキナ「はい。通ったことのある道ですし、方角も大体のことはわかっているつもりです」

リンク「…モグ。うん、食べられる食べられる。旨いぞ。
   それでさ、ファイとの打合せで、ギムレーの所に直行するとこまでは、
   問題なく意見が合致したんだけど。ファイが、ルキナの体力を考慮せず、



   『明日の朝一に出発して夕方にはギムレーを討ちましょう』



   とかいうもんで」モグモグ

ファイ「申し訳ございません、思慮不足でした」

ルキナ「」

647Mii:2021/08/10(火) 10:39:01 ID:VfyrD.AE
ルキナ「え、ええ!?そ、そんなの無理です!」

リンク「だろだろ?だから、なんとか俺がファイを説得して大幅に遅らせたよ」

ルキナ「ホッ…どんな強行軍になるのかと…ペガサスでもなければとても無理――
   いえ、それ込みでもとても――――」



リンク「そういうわけで。

    明日の朝一に出発して明後日の朝日と共にギムレーを討とう」

ルキナ「」



リンク「だから、早めにゆっくり休んで明日に備えてくれな。
   最悪、ルキナが嫌がろうと俺が無理やり背負って連れてくぞー。
   体を密着させるのが嫌ってんなら、頑張って厚着しておいてくれー」

ルキナ「」

ルキナ「」

ルキナ「お、お待ちください!リンク様!
   恐れながら、1日、2日でたどり着ける距離ではありません!

   接敵への対処で手間取ることも考慮するならば、
   せめて2週間くらいは所要時間を見た方がっ!」

648Mii:2021/08/10(火) 10:42:11 ID:VfyrD.AE
リンク「え、なんで?

   俺、その気になれば悪路だろうと……
   特に副作用や反動もなしに、時速150kmくらいでまる1日走り続けられるぞ?
   ルキナを背負って、安全面のケアを欠かさないとしても時速100kmは堅い。
   街中でやると、家屋やら道やらズタズタにして周囲からキレられるけど」

ファイ「私はそこまでの高速移動はできませんが、
   ネオ・マスターソードに宿っていれば全くの無問題なので…」

ルキナ「」





ルキナ「……せ、せめて…3日掛けて、くださいませんか…?」プルプル

リンク「その1日の差で、ギムレー軍の被害を被る奴が増えるかもしれないぞ?

   ホントのホントに強行軍で行くなら、それこそ筋肉痛覚悟で…
   ルキナのことをファイに任せて、この瞬間に俺一人で時速300kmで駆ければ
   今日中にカタを付けることもできなくはないんだよ。…道に迷わなきゃ、うん。
   流石にぽっと出の俺1人でそんなことしたら大顰蹙だからやらないけど。

   そっから比較すると、さすがにこれ以上ノロノロ進軍するのはなぁ」

ファイ「マスターのMAXスピードは、ソニックには劣りますがマリオ以上、
   堂々の世界二位設定です」

649Mii:2021/08/10(火) 10:44:27 ID:VfyrD.AE
ルキナ「…時速、300、きろ?…ノロ、ノロ?」



ルキナ「…………」

ルキナ「………………………………ガンバリマス」



リンク「よし、決まり。明後日はどうやってギムレー倒そっかなー。
   この王国内だと耐久力が反映されちゃうから、剣を使うのは論外だな。
   ギムレーなんぞにそんなコストを支払うのは勿体ない。

   面倒だから普通に殴り飛ばして…いや、その辺の石ころで…」

ファイ「また私の唄で消し去るのは如何でしょう」

リンク「それもいいな。……あ、でもそれだと
   『ルキナにトドメの一撃を任せて溜飲を下げる』ことができないな、
   ホントに一瞬で消し炭になっちまう。ちょっと考えさせてくれ」

ファイ「わかりました、期待しておきます」フフッ



ルキナ「え、え、えええええ?冗談、です、よね?そうだと言ってください!」アゼン

650Mii:2021/08/10(火) 10:47:42 ID:VfyrD.AE
〜ロゼッタの夢の中〜

ダークリンク「…そんな馬鹿なら、案外いるかもしれないな」ボソッ


ファイアロゼッタ「…ダークリンク?何かおっしゃいましたか?」

ダークリンク「…いや、何も」



…おっと、彼のことを気にしている余裕なんてありません。
休むことに専念しないと。

ダークリンクにはのぞき込まれないよう、ドレスをほんの少しめくって。
酷使している自分の脚を、見やります。…ちょっと熱を持っている、程度。
ガタガタ震えて動きが鈍ってきたこともなければ、腫れていることもなく。
ねん挫や骨折をしているわけでもありません。

回復魔法なしで250km以上走ったにしては、意外なほどに…持っています。
Lv50間近にまでのし上がってきたらしい、基礎体力の賜物です。
かつての私からすると信じられない光景で、ちょっと嬉しい。



ファイアロゼッタ「ですが…84セット、フルで走ったとしたら…ええっと…
         ……さ、3500km以上ですか、うわあ…………絶対無理な気がしてきました」

651Mii:2021/08/10(火) 10:49:43 ID:VfyrD.AE
…気の滅入る発想はやめておいたほうが良さげです。
ちらりと、『ハロウィン』、『オーロラ』、『スイマー』の方を見やります。



オーロラロゼッタ「クリスマスが〜今年も〜やってくるぅ〜☆
        コインボックスに喜ぶ〜みなの懐、痛めながらぁ〜☆」ネッショウ

ハロウィンロゼッタ「運営さん、Trick or Treat!
           …間違いました。Trick or Ticket!
           …またまた間違いました。――Trick or UR Ticket!」エイショウ

スイマーロゼッタ「15時更新、お仕事ちゅうー。帰ってさっそく、記録かくにーん。
          勝っていても気を抜くなー。追い抜かれてたら追い抜き返せ―!
          でもでもぉ、無理と悟ったら大人しく寝るの―!…ぐぅ――」スリープ



ファイアロゼッタ「いい加減に理解できる会話を聞きたいです…」



ため息付く私に頷き返してくれたかのように。
不本意に首に付けられてしまっている首輪が、コトリ、と小さな音を立てました。
…別に外れてくれたわけではないですけれどね。
ちょっと首輪に触れてみて―――ふたたびため息ついて。



さあ、続きをやっていきましょうか。

652Mii:2021/08/10(火) 10:51:55 ID:VfyrD.AE
〜10サイクル目 走破!(約420km)〜

ファイアロゼッタ「……まだまだ、当たりは遠い感じですね、とほほ…………」ガクッ



――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!















ハロウィンロゼッタ「…それにしても、暇ですね」

オーロラロゼッタ「何か遊んでおこっか〜☆」

スイマーロゼッタ「Zzz・・・」コックリ コックリ

653Mii:2021/08/10(火) 10:57:37 ID:VfyrD.AE
〜16サイクル目 走破!(約675km)〜

ファイアロゼッタ「…………さす、がに。足腰が、きつく、なって、きました。
         やはり、理想通りには、いきま、せん…………」フラッ

――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!

ハロウィンロゼッタ「1番、ハロウィンロゼッタ、物真似やります。
           『この面汚しめ』と侮蔑の形相で目前の相手を見下す、バケーションピーチ姫!」ハッ!

スイマーロゼッタ「わ、迫真の演技!怖い、怖すぎる顔なのー!」ビクッ

オーロラロゼッタ「よりにもよって、清楚系のバケーションピーチ姫が
         誰相手だろうとそんな顔する訳ないよ〜☆名誉棄損〜☆」



ハロウィンロゼッタ「ただし目の前にいるのは探検家ピーチ姫とする」

オーロラロゼッタ「それなら納得ですね」マガオ

スイマーロゼッタ「探検家ピーチ姫が何をやったっていうの!風評被害なの!」ガーン!

ハロウィンロゼッタ「ちなみにスレ主は、マリカツに限っては。派生数が多い=CPU妨害が目に付く、
          おまけに悪役or黒色でイメージに合うわけでもないのにボム兵キャノン持ちの影響で…
          誰かをリストラしなければならないと運営に言われたら
          クッパ7人衆でもなくそのほかのクッパ軍の人気低めの誰かでもなく
          即答で『マリオかピーチをリストラして』と答えます」

スイマーロゼッタ「」

654Mii:2021/08/10(火) 11:00:59 ID:VfyrD.AE
〜24サイクル目 走破!(1000km突破)〜

ファイアロゼッタ「…………まずい、まずいです、タイムがみるみる落ちてきました。
         試行回数が狂ってきてしまいます、どうにかしない、と…!
         で、も、脚がぁ…!!期待値的には当たってもよくなってきた、のに…!

         …駄目です、よね。ここまでで当たっていたら運が悪いとは言いません。
         ふふ、分かっていましたよ、ふふふ……はあああああぁ……」

―――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ! ――ハズレ!





スイマーロゼッタ「――――リイィィィーーッチ!!」ドンッ!

ハロウィンロゼッタ「…………ぐっ!?…………これは、通るっ!!」バチッ





スイマーロゼッタ「…………ふーっふっふっふ。
         ――――その『トゲゾーの甲羅』、貰いーなの!出た、一発ロンッ!!」ジャラッ

ハロウィンロゼッタ「…え゙」

オーロラロゼッタ「あ、やっちゃった☆」

655Mii:2021/08/10(火) 11:04:08 ID:VfyrD.AE
スイマーロゼッタ「リーチ一発で二翻!
          緑甲羅、赤甲羅、ハテナボックス+の『三暗刻』で二翻!
          さらに『甲羅三色』で二翻!
          さらにさらに、現状1位のハロウィンに最下位からトゲゾー牌でトドメを刺した『下剋上』で一翻!」

ハロウィンロゼッタ「ああああああ……あっという間に最下位に転落…
           くっ、なんとか盛り返さないと…!!」



スイマーロゼッタ「…………何を言っているの?」

ハロウィンロゼッタ「…………はい?」

スイマーロゼッタ「さらにさらにさらに、ハテナボックス+は『1牌あたり二翻』だから
         六翻追加で役満なの。ハロウィンが断トツの最下位で終局なの」

ハロウィンロゼッタ「」

オーロラロゼッタ「」

スイマーロゼッタ「ダッシュリングやアイスフラワーごときと一緒にしないでほしいのー」



ハロウィンロゼッタ「…………」ボカボカボカボカ

オーロラロゼッタ「…………」ゲシゲシゲシゲシ

スイマーロゼッタ「痛い、痛いのー!?冗談、冗談なの!」

656Mii:2021/08/10(火) 11:08:14 ID:VfyrD.AE
〜28サイクル目 走破!(約1180km)〜

ファイアロゼッタ「脚が…重い、です…へとへと…!なんとかしたいぃ…!
         なのに、全然、進展してくれない…!」

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ハロウィンロゼッタ「思えば、私たちって…物凄く優遇されていますよね」

オーロラロゼッタ「どういうこと〜?」

ハロウィンロゼッタ「考えてもみてください。

          スレでもまさに取り上げられているロゼッタツアーで
          満を持してファイアロゼッタとメタルマリオをリセマラゲット、
          手に入るルビーを片っ端から後半ドカンにつぎ込んで私たち3人をゲット。

          ニューイヤーツアー後半ドカンでURマリオを効率的にゲットでき、
          アーバンスタイルドカンでほどなく探偵ベビィロゼッタが手に入り、
          通常ロゼッタ・ベビィロゼッタはゴールドパス等で自然入手。
 
          ちゃんと計画を立ててさえいれば、
          ゴールドパス以外は無課金でも、かなりの高確率で…
          ほんの数か月で全ロゼッタが揃い、副産物でかなりのマリオも揃い、
          おまけにログインボーナスが豪華な期間をしっかりと味わえる。

          ご存知の通りスイマーに集中投資しておけば
          それだけでスコアが初心者と思えないほど鰻登りになり、
          更には戦力が高まってきたころにトータルポイントチャレンジ等の
          利便性の高いミッションが開始されたという」

657Mii:2021/08/10(火) 11:18:40 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「スレ主も思う存分あやかったみたいですが、
           怖くなるくらいの至れり尽くせりっぷりではないですか?」

スイマーロゼッタ「確かに、キャラの中で一番…
         控えめに言ったとしても、マリオの次くらいには優遇されてると思うのー!
         取り立てて嫌われるスペシャルスキルもないのー。

         ファイアロゼッタは『ロゼッタ(ファイア)』表記じゃなくて
         しっかりとモデル確立しているのも隠れた評価点だし、
         このスレを作ってた影響でさっさとLv.6にしてみたら…
         どういう風の吹き回しか、思いのほか痒い所に手が届く最適性だったの!

         よりにもよって忍者道場と野球場に貰うとか、このスレを製作者が見てるんじゃないのー?」

オーロラロゼッタ「まっさかー☆」

ハロウィンロゼッタ「ふふ、でも恵まれているのは確かですね」









オーロラロゼッタ「でもロゼッタプラネットの適性についてだけは一言――」

ハロウィンロゼッタ「それは禁句です」

658Mii:2021/08/10(火) 11:21:16 ID:VfyrD.AE
〜32サイクル目 走破!(約1350km)〜

ファイアロゼッタ「はぁ、はぁっ…また、げき、てきに、タイムが……脚の動きが、おか、しい…!
         このまま、…はぁ、行くと…はぁ、脚、壊れ、ます…!
         や、休む時間、90分…いえ、120分に伸ばし、ましょう…はぁっ!

         ずる、ずる、伸びて…96時間も、ここまでに使ってしまったのです、か!?
         もく、ひょう、64時間、なの、に…!大変なビハインド、ですっ!!

         現実時間に換算して…ほ、ほぼ7時間も経ってしまいました…!!」



――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



――――――――当たり!



ダークリンク「――――おっ!」

ハロウィンロゼッタ「――――っ!!」

オーロラロゼッタ「――――ああああっ!それって!」

スイマーロゼッタ「わあ――――」

ファイアロゼッタ「――――――――え?」

659Mii:2021/08/10(火) 11:22:56 ID:VfyrD.AE
どうせ外れるものと早合点して、碌に確認もせず引いたクジ。
その、4個目に引いたクジは――――



それまで散々引いてきた白さなど、まるでなく。
綺麗な綺麗な、赤色をした玉でした。



ファイアロゼッタ「これって――――まさか――――」



突如として、私の体に異変が。
天空から、玉と同じく赤色の光が、避ける間もなく、私に祝福として降り注ぎ。



ポンッ!!



ファイアロゼッタ「わ、いきなりビックリしました――――
         って、あれ?首輪が、無くなってます!」



首元から――散々嫌がっていた首輪が、真っ二つに切断された状態で、
がっしゃんと地面に落ちました。

660Mii:2021/08/10(火) 11:24:37 ID:VfyrD.AE
パチパチパチパチ・・・・!!

一拍おいて、周りの皆さんが、拍手で私を迎えます。



ハロウィンロゼッタ「おめでとうございます。ミッション完遂、お疲れさまでした」

オーロラロゼッタ「凄く頑張った!褒めてあげてもいいよ!
         それとも賛美のダンスを踊ってあげようか☆」

スイマーロゼッタ「長い、長い旅だったの―!やきもきさせるだなんて、悪い子なのー。
        でもでも、本当におめでとうなのー!」

ダークリンク「…はあ、ようやくお役御免か。まあ、運が悪いと言ってた割には、
       そこそこの回数で終えられたんじゃないか?」

ファイアロゼッタ「はぁ、はぁ…あ、ありがとう、ござい、ます――――!」

そもそも、この苦行が始まった理由も分からずじまいですが。
なんとか無事に終えられたようで、よかったです――!



ハロウィンロゼッタ「…………それでは。…うん、許可が下りていますね。
           ――――それっ!!」パアアアアアア



目の前に、光り輝く扉が、現れました。

661Mii:2021/08/10(火) 11:26:31 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「今の状態なら、貴方は支障なく元の現実世界に戻れます。
          さあ、扉の先の通路を、振り返らず走り抜けてください。
          精神疲労は少しあるでしょうが…夢から醒めることができますよ」

ファイアロゼッタ「――――はいっ!えっと、色々ありましたけど、お世話になりました!
         ちょっとは筋力が付いてくれていると嬉しいですね、夢の中ですけど!」

なんだかんだ、体感で4日間も一緒にいたので、ちょっと情が湧いた気がします。
でも、夢の中ですから。私の脳波次第で、なんだってありじゃないでしょうか。

ファイアロゼッタ「また、いつかお会いしましょう!それでは!」



ハロウィンロゼッタ「――――――――ええ、そうですね」

オーロラロゼッタ「――――――――また会える日、楽しみに、してるよ」

スイマーロゼッタ「――――――――もちろん、なのー!健康には気を付けるの―!」



少し後ろ髪引かれながらも、私は――――その場を後にして扉を潜って。



ばたん、と扉を閉めて、前を見てみれば。
わあ。光り輝く通路が、私の通過を心待ちにしています。

私は、迷いもくれずそのまま――――

662Mii:2021/08/10(火) 11:28:39 ID:VfyrD.AE
ハロウィンロゼッタ「――――――――――――」

スイマーロゼッタ「――――――――――――」

オーロラロゼッタ「――――――――――――――――」フラッ



ファイアロゼッタが駆けて行ってから、1分ほど、経過したか。
糸が切れたかのように、『オーロラ』がその場に、へたり込む。

ダークリンク「…おいおい、大丈夫かよ」

オーロラロゼッタ「…うん、大丈夫」

ハロウィンロゼッタ「――――――――『オーロラ』…」

オーロラロゼッタ「ねえ、みんな。

         私、ちゃんと…笑えてたかな?」



この声は、さっきまでとは…打って変わって、震え声。

スイマーロゼッタ「うん、最後がほんのちょっと怪しかったけど、大丈夫だと、思うのー。
         よく頑張ったのー。よく堪えたのー」

オーロラロゼッタ「――――――――そっか。そっかあ。――――よかった、な」

663Mii:2021/08/10(火) 11:30:15 ID:VfyrD.AE
ポタリ。ポタリ。

オーロラロゼッタ「――――あ、れ。
         どうして、わたし、泣いてるん、だろう」ポロポロ

ハロウィンロゼッタ「…………泣いても、いいんですよ?」

スイマーロゼッタ「そーなの。むしろ泣くべきなの。
         本体が生還できたからって、私たち自身がどうでもいいなんて…
         そんな達観、する必要は――どこにも、ないのー」

オーロラロゼッタ「――――っ!―――――――うわあああぁぁぁぁ…」ポロポロ



すすり泣きはやがて号泣へ。
『ハロウィン』と『スイマー』が、優しく『オーロラ』を抱き止める。



オーロラロゼッタ「――――――――死にたく、ない、よぉ」ポロポロ

ハロウィンロゼッタ「――――――――まったく、です、ね」

スイマーロゼッタ「――――受け入れがたい、苦難、なの…」ションボリ

ダークリンク「…………」

ハロウィンロゼッタ「…あ、関係のないダークリンクは大丈夫ですよ。
         普通に『本体の覚醒』と同時に元の世界に戻れますから」

664Mii:2021/08/10(火) 11:32:31 ID:VfyrD.AE
ダークリンク「…あ、ああ。だが何とも後味の悪い結末、だよな。
       前もって聞かされてはいたけれどよ。

      そんなに辛くて悲しいんなら、本体に言えばよかったじゃないか。
      『どうかもっと苦労して、私たちを助けてください』って」

オーロラロゼッタ「…そんな、こと、言えない、よぉ」

ダークリンク「じゃあ、せめて真実を伝えるくらいの努力はしろよ。一瞬だろ?
       結局、本体自身、相当に悔やむんじゃないのか?
       …まあ全てを闇に葬るつもりなんだろうが」

スイマーロゼッタ「そんな酷な話、絶対に伝えられないの―…」



ハロウィンロゼッタ「そうですよ――――いくらなんでも。

          『このまま本体が覚醒したら、首輪が締まって私たちの命が事切れる』

         なんてこと、伝えられるわけ、ないじゃないですか。
         伝えたら最後、どんな行動に出るか、分かるでしょう?

         所詮私たちは、夢の産物。命の優先順位は、はっきり、させておかないと」

ファイアロゼッタ「私はそういう考えは嫌いです。大嫌いです!
         命の貴賤なんて悲しいこと言わないでくださいよ…」

ハロウィンロゼッタ「そうは言っても、これは譲れない所なので
          どうか分かって頂けないで、しょう、か…………?」

665Mii:2021/08/10(火) 11:34:19 ID:VfyrD.AE
オーロラロゼッタ「……………………??」

スイマーロゼッタ「……………………???」

ダークリンク「……………………????」





ファイアロゼッタ「……………………………………」ニコッ





4人「「「「…………………………………………」」」」ダラダラダラダラ





ファイアロゼッタ「とりあえず。まずは一言。



         ――――全員、正座しなさいっ!!!!!!」

ダークリンク「何で俺まで!」

666Mii:2021/08/10(火) 11:36:15 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「何か、おかしいと思ったんですよ、全くっ!
         私にも付いていた首輪と同じ首輪をしていて、
         私の首輪が当たりを引いたとたんに砕け散るってことは、
         何か別の『当たり』によってそれらも解除できるんじゃないかって!
         …いえ!解除しないと、大変なことになるんじゃないかって!

         ちょっと、懐を改めさせてください!はい、Trick or Treatですよっ!」

ハロウィンロゼッタ「……ああっ!?なん、です、か、いきなり…!」ヒュッ

オーロラロゼッタ「……きゃっ!?」ヒュッ

スイマーロゼッタ「…ちょ、ちょっと、何するの―!?この人、痴漢なのー!
          基礎体力レベル差の暴力なのー!!」ヒュッ



ファイアロゼッタ「……こんなことだろうと、思いました」ガシッ



3人からそれぞれ奪い取ったもの。



『ハロウィン』からは、ちょっぴり怪しげな紫の。
『オーロラ』からは、凍てつくほど冷たさを感じる青色の。
『スイマー』からは、透き通るような清らかな水色の。

明らかに白くはない、綺麗な綺麗な、玉でした。

667Mii:2021/08/10(火) 11:40:06 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「私を帰らせることを最優先にした結果――――

         どういう原理かは相変わらずさっぱりですが、
         自分たちの当たりクジ、あらかじめ、抜いておいたんですね。
         総数97のクジとか、いかにも中途半端です」



ダークリンク「…おっといけねえ。

       今更ながら、注意です。本当に、正真正銘の注意です。
       スレ内で取り扱う『クジ』は、その構成、キャラ確率などが、
       実際のアプリの内容とは…それはそれは大きく異なります。

       『どのURロゼッタも同時に1%ピックアップか!』と信じた結果生じた…
       皆様の懐事情や友人関係への一切の損害についてスレ主は責任を取りません。
       くれぐれも、あらかじめご了承ください。楽しくドカンしようぜ!

       …まあ、ツアー期間はとっくに終了してるけどな!」



スイマーロゼッタ「…………そ、それ、どうする、の?」

ファイアロゼッタ「決まっています!ダークリンク!クジの箱を貸してください!」

ハロウィンロゼッタ「――――だ、駄目っ!!」

ハロウィンに、これからやることをなんとなく悟られましたが、関係ない!
そこには歴然たる体力差、私を止めることなんてできないですから!

668Mii:2021/08/10(火) 11:42:38 ID:VfyrD.AE
『ハロウィン』の制止も難なく振り切り。ダークリンクから箱をひったくって。
確保したばかりの3つの玉を、箱の中に強引に放り込んで――――



ファイアロゼッタ「えい、やああああああっ!!」



箱ごと砕けよとばかりに、あらんばかりの力をもって、地面に叩きつけました。



ぐしゃりという不吉な音と共に、中の玉が大量に零れ出します。
3人が息を呑むのがわかりました。
じっと私を見つめる、最後の1人に問いかけます。



ファイアロゼッタ「ダークリンク!イベント管理者とかいう、よくわからない役職の貴方に問います!
         このクジの取り扱いは、不正行為に相当しますよね!」

ダークリンク「……ああ、そうだな。それでは処置を言い渡す。

      ――――先刻のクジの結果、無効!――――最初からやり直し!
      クジの構成内容に変更あり!――クジの総数、100!――当たり、4!」

BOXの中身が 強制リセットのうえで再構成!▼

3人「「「!?」」」

669Mii:2021/08/10(火) 11:45:02 ID:VfyrD.AE
ファイアロゼッタ「よしっ!予想通りです――――うぐっ!」

クジの結果が無効となり 再び首輪に囚われた!▼



ファイアロゼッタ「…………これでいいです、うん!」ブルブル

唖然としたままの3人。

さあ、時間の猶予など、これっぽっちも…ありません!



ファイアロゼッタ「さあ!もうひと頑張りしてみますか!よーい…どんっ!」ダッ!

ハロウィンロゼッタ「――――!!無茶ですっ!!無茶すぎますっ!!
          4個中4個を当たりにするなど、貴方でなくても不可能です!」

オーロラロゼッタ「…………そん、な――――」

スイマーロゼッタ「…………こうなること、わかってたのー」

ファイアロゼッタ「そんな境遇を。そんな理不尽さを。――そんな泣きそうな顔を。
         ――――放って、見過ごしてしまえるわけ、ないでしょうがあああぁぁ――!!」



「唖然」が「絶叫」に変わっても、私の想いは変わりません!
新たな思いを背負い、再びコースを走り始めますっ!

670Mii:2021/08/15(日) 19:56:29 ID:yi3EbC9s
去りゆく背中は、すでに遠く。



ダークリンク「…………ははっ」

ハロウィンロゼッタ「何が。…何がおかしいのですか!」

ダークリンク「いや、そりゃあな。あいつ自身が貧乏クジの塊みたいな行動選択をしているのに、
       よりにもよってあいつが一番諦めずに頑張ってんだ。なのに、観てるだけのお前らが投げ出すのが滑稽で」

オーロラロゼッタ「滑稽…って…………!私たちの気も、知らないでっ!!」

ダークリンク「そいつは、偉い御身分からの大層な逆恨みだな。
       正直なところな。俺は御免被りたい。終わったと思ってた面倒事が延びたんだぜ?
       冗談じゃねぇやと言いたい。あいつに割と腹を立ててる。

       でもよ、お前らだけは応援してやらなきゃ駄目だろ。
       『あいつ』は『お前ら』で、『お前ら』は『あいつ』なんだから」

ハロウィンロゼッタ「―――――――――っ!!」

オーロラロゼッタ「――――――――っ!」

スイマーロゼッタ「――――なんだかちょっとカッコイイと思っちゃったのー。
         一生の不覚―。ダークリンクの癖に生意気なのー」

ダークリンク「剣の錆にするぞこのアマァ!」

スイマーロゼッタ「もっちろん海女なのー!」

671Mii:2021/08/15(日) 20:04:08 ID:yi3EbC9s
〜33サイクル目 走破!(約1390km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「うぐぅ…」

ハロウィンロゼッタ「……ほら、みなさい」

スイマーロゼッタ「……」

オーロラロゼッタ「…………どうしようどうしよう」



〜34サイクル目 走破!(約1430km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「ダメですか…」

ハロウィンロゼッタ「……本当に、貴方、大変なことをしたのですよ!」

スイマーロゼッタ「……まったくなのー」

オーロラロゼッタ「…………」グズッ



テーレッテレー!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.47に 上がった!▼

672Mii:2021/08/15(日) 20:08:46 ID:yi3EbC9s
〜35サイクル目 走破!(約1480km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「な、なんてことないです!」ダラダラ

3人「「「……」」」




〜36サイクル目 走破!(約1520km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――青玉!  ――ハズレ!



オーロラロゼッタ「――――っ!!」パリーン! ガシャーン!

オーロラロゼッタの 首輪が 外れた!▼



ファイアロゼッタ「あ!やった!ひとつ外せました!」

ハロウィンロゼッタ「どこがですか!当然リセットですからねっ!」

スイマーロゼッタ「なんにも解決してないの!」

オーロラロゼッタ「…わあ…これが首輪が外れた…解放、感…」ウツロ

673Mii:2021/08/15(日) 20:11:22 ID:yi3EbC9s
〜37サイクル目 走破!(約1560km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!

ファイアロゼッタ「…あ、うん。別に当たり出すとか、ないですよねー。ははは」



ハロウィンロゼッタ「笑っている場合ですか!!」ボカッ!

スイマーロゼッタ「このバカー!!」バシッ!

ファイアロゼッタ「痛くないけれど心が痛い!!」





オーロラロゼッタ「」





オーロラロゼッタは 動く気力が 残っていない!▼



ファイアロゼッタ「」

674Mii:2021/08/15(日) 20:15:30 ID:yi3EbC9s
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



〜41サイクル目 走破!(約1730km)〜

――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



ファイアロゼッタ「………………………ちょっと、きゅう、けい」バタッ



このままだと、いくら足掻いても、やっぱり、駄目。
なにか、策を、かんがえ、ないと…!



ファイアロゼッタ「…………長めに…6時間だけ、休ませて、くだ、さい」

ハロウィンロゼッタ「…はい」



半ば、諦めてしまったような顔の3人から…眼を逸らすような形で、
汗びっしょりのまま、ゴロンと横になりました。

675Mii:2021/08/15(日) 20:22:09 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「……………………」



窮地に陥った時、私はこれまでどのように解決してきましたっけ。
仲間がいるならば土下座してでも頼ればよいのですが、あいにくそれは難しそう。



…ああ、そうだ。久しぶりに禅問答でもやってみましょう。



疲れ果てつつ、大の字に寝ころんだままで。

――――なるべく、呼吸を、ゆっくり、ゆっくりにしていきます。
――――目を閉じて、心落ち着かせて――――



ファイアロゼッタ「……………………」スゥッ



――――問題は、なにか。



当たりが4個ある100個のクジから4つ引いて、全て当たりにするという、
超低確率の前にまるで歯が立たない。

676Mii:2021/08/15(日) 20:28:14 ID:yi3EbC9s
――――問題は、なにか。



当たりを覗き見することも、ハズレを当たりと偽ることもできない。
そもそもの「首輪を外すために当たりクジが必要」という所からしておかしい話だが、
この前提を覆すことは…この夢の世界では出来ない模様。理不尽さを嘆くのは後にするべき。



――――問題の噛み砕き、実行。



当たりを4個とも引くには、取り出し個数が4個というのは少なすぎる。
どうにかしてこれを緩和し、たとえば「8個までOK」となれば、
チャレンジ数が増えるほど、成功率は劇的に、指数関数的に変わってくる。



――――問題の噛み砕き、実行。



そもそも、取り出し個数は何によって決まるか?
…そう。コースを2周し、42.195km走り切ると、ルビー20個が与えられ、結果的に
クジ4個分の取り出し権が得られるらしい。全く意味がわからないが、そういうものだと飲みこんでおく。
更に、あくまで私が走り切らないとクジを引く権利は得られない様子。

なら、この権利を溜め置いて、一気に使うことはできないか。

677Mii:2021/08/15(日) 20:32:25 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…………………………………………そうだ!
         あ、あの!ダークリンク!ちょっとよろしいですか!

         たとえば、まとめて50周走ってからクジを引くことにして、
         通常の25倍である100個引きをするというのは可能ですか!?」

瞬いた名案に、思わず体を起こして問いかけます。
これが可能なら、問題は一気に解決に向かうはず!



ダークリンク「駄目だ」

…あっさり却下されました。



ダークリンク「…俺も、脳内に叩き込まれたルールを参照するしかない立場なんだが。
       あくまで42.195km以上走り切った報酬として、ルビーが与えられ、
       クジを引く権利が与えられるらしい。『42.195kmごとに』じゃない」

ファイアロゼッタ「え、えっと。それでは…そもそもの対価であるルビーをストックしておけば…
         500ルビーまとめて使えば、問題ないですか?」

ダークリンク「それも駄目だ。42.195km再び走り出そうとクジ箱から離れるたびに、
       残しておいたルビーは自動消滅する。ストックは効かないそうだ」

ファイアロゼッタ「そんなあ…」ガクッ

消沈して、ふたたび大の字に寝転がる。…………八方塞がり、ですか。

678Mii:2021/08/15(日) 20:39:36 ID:yi3EbC9s
――――問題の噛み砕き、再開。



つまり、42.195km走り切った段階で、ルビーをどうにかして大量に確保しなければならない。
しかし、ルビーを大量に確保したかったら、その分、42.195kmという距離をたくさん走らなければならない。ああ矛盾。



ファイアロゼッタ「……………………」



ファイアロゼッタ「……………………猫の手も借りたいです…」



ファイアロゼッタ「……………………」







ファイアロゼッタ「……………………………………ちょっと、待ってくださいよ?」



一か八か、妙案を思いつきました。

679Mii:2021/08/15(日) 20:41:50 ID:yi3EbC9s
宣言通り、十分休んで、体力を回復して。
起き抜けに、溌剌とした声を、頑張って張り上げます。



ファイアロゼッタ「――――――――実分身《リアルアバター》っ!!」

ハロウィンロゼッタ「…え!?」



ボカン! ボカン! ボカン!



とりあえず、頭の中で計画を立てた、おためし実験ということで。
分身体を3人、出現させてみせました。



ファイアロゼッタ「2人は私に付いて、一緒に42.195km走り切ってください!残る1人は待機でお願いします!」ダダッ

ファイアロゼッタ(分身体1)「はい、わかりました!」ダッ

ファイアロゼッタ(分身体2)「さっさと走りましょう!猶予が有りません!」ダッ

ファイアロゼッタ(分身体3)「お待ちしております!」

当然ながら、私の分身体たちは「私の意図」をしっかり理解。
素早く行動に移ってくれます。さあ、本当に急ぎましょう!!

680Mii:2021/08/15(日) 20:47:14 ID:yi3EbC9s
〜42サイクル目 走破!(約1770km)〜

ファイアロゼッタ「…ふう、休んだおかげで…それなりに余裕がありますね。さて、と」


待機していた、3人目の分身体と合流。そして、何を思ったか、私。



ファイアロゼッタ「あの、『オーロラ』。技量に不満かもしれませんが、彼女らと踊ってあげていただけますか?」

オーロラロゼッタ「…え、えええ?べ、別に、いいけど…何のために?時間が、勿体ない…」



目を逸らして、気まずそうに、怖気ている『オーロラ』を強引に呼び込んで。
音楽など掛かっていませんが、小さなダンスパーティの開幕です。
そう、自分を大きく鮮やかに表現するのが、なにより『オーロラ』らしい。

…さすが『オーロラ』、脚の運びが見事です。非の打ちどころがありません。
くるくる回って、ステップ踏んで、アクロバティックに飛び跳ねて。まさに踊り子といった感じです。

分身体たちは、それに比べると動きがなんとも粗いですが、楽しそうに踊っています。
…そう。1人は『オーロラ』と一緒に、残る2人も組になって。



ハロウィンロゼッタ「……いい光景ね」

スイマーロゼッタ「皆、とっても輝いてるのー!」

681Mii:2021/08/15(日) 20:50:57 ID:yi3EbC9s
最初は、後ろめたさか何かで表情が優れなかった『オーロラ』も。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、ダンスにノッてきたのか、明るい表情になってきました。躍動感が増していきます。
ならば負けじと、『オーロラ』に比べて基礎体力で優れる分身体たちも、それに追随。
ナチュラルに組替えをしていきながら、踊り、踊り、踊り尽くします…!!



15分ほどの宴が、無事に終了しました。



オーロラロゼッタ「――はあっ!――はあっ!――はあっ!…………とっても楽しかったぁ☆みんな、ありがとう!!」

ファイアロゼッタ(分身体)「いえいえ、こちらこそ!」

ファイアロゼッタ(分身体)「本当に楽しかったです!」

ファイアロゼッタ(分身体)「ここまで踊りに酔いしれるとは考えてもみませんでした!」



皆、とてもいい笑顔。企画した甲斐があったというものです!
…まあ、一旦それは、おいといて。



ファイアロゼッタ「それでは、踊りに惚けていたダークリンク。クジを引きたいのですが、構いませんか?」

ダークリンク「…はっ!?惚けてないし!勝手な事言うんじゃない!
       ほら、さっさとルビーを俺から貰ってクジを引けよ。いつまで待たせるつもりだ」

682Mii:2021/08/15(日) 20:53:31 ID:yi3EbC9s
言われた私は、さっそくルビー20個を貰いました。
ただ、クジを引く前に…ちょっと聞いてみます。

ファイアロゼッタ「あのー。あとルビーを20個貰いたいのですが、特例とか認められませんか?」

ダークリンク「認められるわけないだろう、馬鹿」

ファイアロゼッタ「馬鹿とは酷いですね…」

すごすごと引き下がって…………では、テスト開始です。



ファイアロゼッタ(分身体)「では、私もついでにルビーを――――」

分身体の1人がルビーをついでに貰おうとしたところで。
ダークリンクが、たちまちその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「え?そ、そこをなんとか――――」

ダークリンク「駄目ったら駄目だ」

ファイアロゼッタ(分身体)「…はい、わかりました」シュン



1人目、許可されず。

683Mii:2021/08/15(日) 20:55:46 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ(分身体)「それでは、私ならどうでしょう――――」

別の分身体がルビーを貰おうとしたところで。
ダークリンクが、再びその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「しょうがないですね…」シュン



2人目、許可されず。



ファイアロゼッタ(分身体)「では、今度こそ――――」

最後の分身体がルビーを貰おうとしたところで。
ダークリンクが、みたびその腕を掴みます。

ダークリンク「駄目だ。お前にルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ(分身体)「ちょっと、冷たくないですか?もう…」シュン





…………3人目、許可されず。――――結果、全滅。

684Mii:2021/08/15(日) 20:58:58 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「なんだ、そういうことをやりたかったの…?でも、見事に無駄に終わっちゃったの…」

ファイアロゼッタ「いえ、もうちょっとだけ足掻いてみましょう」

スイマーロゼッタ「…え?」



……そう。もうちょっとだけ、テストは続いているのです。



ファイアロゼッタ「ところでダークリンク。私は全然余裕なんですけれど…
         貴方、分身体3人の区別って、付いていますか?」

ダークリンク「…なに?」

彼は、つい先ほど順番に会話をした3人を見やります。
ただでさえ外見が同じ上に、ダンス中に頻繁に位置替えを繰り返しました。
まず間違いなく、断言できるまで分かっているのは私だけです。

ダークリンク「いや、さっぱりわからん。それがどうかしたか?」

ファイアロゼッタ「いえいえ、その回答で十分です。
         貴方は、どの分身体が『42.195km走らなかった分身体』か、断言することができない。
         つまり、貴方の主観で、分身体たちに…何かしらの待遇差を、
         付けることはできないとみてよろしいんですね?」

ダークリンク「…?そういうことになるな?」

685Mii:2021/08/15(日) 21:02:10 ID:yi3EbC9s
さてと、仕掛けは済みました。ここからが…本番。
唐突に。私は、分身体の1人を消し去り、経験値を「還元」します。

ファイアロゼッタ(分身体)「後のことは任せましたよ!」シュウ・・・

ファイアロゼッタ「任されました!」

ダークリンク「!?」

ファイアロゼッタ「さてさて、それではいい加減クジを引きたいのですが、その前に。
         私に追加のルビーを下さいな」

ダークリンク「あのなあ!さっきから言ってるが、そんなこと、できるわけないだろう!」



ダークリンクはそう捲し立てて――――――――





――――――――私に、20ルビー差し出したのでした。



ダークリンク「全く…で、今しがた渡した20ルビーを使うとだな。
       こちらの箱から、玉が沢山入ったクジを4個引くことができ――あれ?」

――――第一関門、突破です!!

686Mii:2021/08/15(日) 21:06:01 ID:yi3EbC9s
ダークリンクが激しく混乱していますが。クジを引くのを更に待ってもらって、第二の作戦。
残った分身体のうち更に1人を、同じように還元します。…その結果。



ファイアロゼッタ「はい、追加で20ルビーくださいな」

ダークリンク「駄目だ。追加でルビーを渡すことは許可されてない」

ファイアロゼッタ「ですよねー。さっきの分身体は42.195km走ってないですもん」

ダークリンク「な…」

ファイアロゼッタ「つまり、今の私は、『42.195kmを2重に走った私』として
         判定を受けているみたいですね」

ダークリンクの意思とは別の、超越的な判断から、分身体の走破フラグまで認識されたうえで、
ルビーが貰えるかどうかが決まるみたいです。掻い潜り甲斐がありそうです。

では、今度こそクジを引いてみましょう。



――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!
――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!  ――ハズレ!



ファイアロゼッタ「あちゃあ…相変わらずというか、なんというか…」

687Mii:2021/08/15(日) 21:08:59 ID:yi3EbC9s
さて、それでは最終テスト。

最後に残っていた、「42.195km走り切った分身体」を還元します。
これで、今の状態としては「42.195kmを3重に走った私」扱いになるはずですが…?

ファイアロゼッタ「ぐっ…脚が…!…さてさて。追加のルビーを貰えるはずですよね?」





ダークリンク「駄目だ。追加でルビーを渡すことは許可されてない…え、そうなのか?」





オーロラロゼッタ「え、どうして!?」

ハロウィンロゼッタ「何故…!?」

スイマーロゼッタ「頭がこんがらがってきたのー!」

ファイアロゼッタ「…………」

ファイアロゼッタ「試しておいて、よかったあ…!!」ホッ!



そして、今さらながら、我慢していた脚の痛みに…倒れ込んだのでした。

688Mii:2021/08/15(日) 21:13:39 ID:yi3EbC9s
結論その1。

分身体にもコースを走らせて、クジを引く前に経験値を還元しておけば…
ダークリンクの拒絶とか非難とかは関係なく、その分だけ、追加のルビーが手に入り、
結果としてクジを沢山引くことができる。

ただ、クジを引く権利とともに肉体負荷までまるごと引き継ぐので、
一度に還元しすぎると最悪…脚への負担が一気に跳ね上がって大ダメージ、再起不能になる。



結論その2。

一旦クジを引き始めると、その時点で新たにルビー報酬を受け取る権利を失う。
後付けでクジを引く回数を増やすことはできない。

要するに、「クジを引き切った、当たらなかった、もうちょっとルビーを足そう」という
チマチマとした日和見の安全策が使えない。
最初から、最終的に引きたいクジ数に相当する分身体を一度に還元し、
ルビーを大量確保しておく必要がある。



皆に解説したのは、ざっとこんな感じです。たぶん、合ってる、はず。





ファイアロゼッタ「…ということで、このクジには…苦しむこと必至ながら、単純明快な必勝法が有ります!」

689Mii:2021/08/15(日) 21:25:23 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…………必勝法!?」

オーロラロゼッタ「…………ほんとうに!?」

スイマーロゼッタ「どんなのどんなの!?」

ファイアロゼッタ「ズバリ!分身体を24人作って、私含めた25人全員で42.195kmを走り切り、
        経験値を全て私に還元して、クジを4×25で…100個分、箱の中全てを一気に引けばよいのです!」

3人「「「おおおお――――っ!」」」

ダークリンク「…ずるくね?…あ、いや、なんでもないぞ。そんな目で見るな、睨むな」

感心する3人。これは私も自画自賛したくなるナイスアイディアです!
…ん?3人が感心すること自体が自画自賛なんでしょうか?ややこしいですね。

オーロラロゼッタ「…で、でも、それって。脚は…脚は、大丈夫なの?負担が集約されて大変なことに…」

ファイアロゼッタ「ふふふ、大丈夫ですよそのくらい」

オーロラロゼッタ「そうなんだ、よかった〜☆」



ファイアロゼッタ「ちょっとバキボキっと原型留めないくらいに複雑骨折して、
         骨が飛び出ちゃったりして、周囲を赤く染め上げるかもしれませんが、
         まあ数時間くらいは絶命しないでしょう。クジは引けます」

オーロラロゼッタ「全然だいじょばない!?」ガーン!

690Mii:2021/08/15(日) 21:34:09 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…あの、そもそも24人も…分身体を作れるのですか?」



――――痛い所を衝かれました。



ファイアロゼッタ「…そこがネックなんですよね。今まで目一杯頑張って、最高で11人ですから…。
         あのときはアドレナリンがドバドバ出ていたので気にも留めませんでしたが、結構、魔法回路が飽和状態でした。
         まあ、その時の感覚からするに、ちょいと分身体の出来を落とせば…きっとなんとかなるでしょう」

というより、なんとかしなくてはありません。魔法レベルの成長はほぼない状態ですが…!
体力的にも、時間制約としても、ラストチャンスに近い状況です…!



ダークリンク「あ、ちなみに『450ルビーあれば100個引けるんじゃね?』
      ……っていうツッコミはなしな。この夢の中に10連ドカンとかないから」

スイマーロゼッタ「融通利かないの」ボソッ



ファイアロゼッタ「それでは、改めて最後の休憩を行い、できるだけ万全の状態から作戦を開始したいと思います」

スイマーロゼッタ「勝っても、負けても、最後、なの…」

オーロラロゼッタ「……………………がんばって」

691Mii:2021/08/15(日) 21:37:13 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…一つ、忠告しておきますね。

          その作戦を実行し、貴方が助かると知れた段階で。
          私たち3人の中から『救いの手から漏れる者』が居たとしても――

          今度こそ、そこで終えて、元の世界に戻ってもらいますから」

ファイアロゼッタ「――――え?」



ハロウィンロゼッタ「……あまりにも未練がましい、その時は――――
          私が代表して、責任を持って――――




          救いの手から漏れた者の首を掻っ切ります。…諦め、つけてもらいます」



ファイアロゼッタ「そんなこと――――」ギリッ

ファイアロゼッタ「そんな、こと――――」ギリリ





――――絶対に、させませんっ!!

692Mii:2021/08/15(日) 21:40:35 ID:yi3EbC9s
休憩、終了。スタミナ、回復。
回復魔法が使えないせいで完全回復ではさらさらないのが、ちょっと気懸り。

『ハロウィン』が。『オーロラ』が。『スイマー』が。ダークリンクが。
それぞれ私のことを見守ります。期待には、応えたい。

神妙に、両手を組み合わせて印を結び。――――全神経を集中させて……いざっ!!



ファイアロゼッタ「参りますっ!!
 
         ―――――――― 実 分 身 っ!!!」



ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!
ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!ボカンッ!



ハロウィンロゼッタ「お、おお!この数の分身体を、よくも見事に…!!」

オーロラロゼッタ「凄い!凄い!凄すぎるよ〜☆」

スイマーロゼッタ「さすがオリジナルなの〜!」

ダークリンク「――――こりゃあ、壮観だな、おい」

693Mii:2021/08/15(日) 21:43:13 ID:yi3EbC9s
ちょっと1人1人の出来は悪いですが…分身体、見事に作成完了!いい感じですっ!
我ながら、惚れ惚れしますねっ!走り切るくらいまでは余裕で持つでしょう!
さあ、ここから反撃!そのまま終止符を打ってしまいましょう!



ファイアロゼッタ「さあみんな!しっかり42.195km走り切りますよ!
         ゴールは目の前です!私たちの勝利が近付いていますよ!
         ――――心の準備は…よろしいですかー!」



ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」







ハロウィンロゼッタ「…………む?」

オーロラロゼッタ「…………あれ?」

スイマーロゼッタ「…………ひい、ふう、みい…」



3人「「「――――!?」」」

694Mii:2021/08/15(日) 21:50:53 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「ちょ、ちょ、ちょっと!!ちょっと待つのっ!
         ファイア、分身体が23人しかいないのっ!1人足りないの!!」

オーロラロゼッタ「ね、ねえ!あと1人くらい、ちゃんと増やしてからにしよう!」

ファイアロゼッタ「え?あ、本当です…!それでは、えいっ!」





ぽすんっ。

【ERROR! キャパシティオーバーです!】





ファイアロゼッタ「…………あ、私の魔法制御限界でこれ以上増やせないっぽいです。
         まあ、ただでさえ超高難易度の魔法なので仕方ありませんね。
         幾ら私の魔法レベルが高くても厳しいということでしょう。

         でも、私より格段に魔法レベルが低いタブーにはできたのに。
         がん細胞みたいに悪人化すると増殖制約が無くなる…?」ブツブツ

ハロウィンロゼッタ「…まさか…全体人数が4の倍数にしかなれないというマリオゲーの呪縛……!?」

オーロラロゼッタ「」

695Mii:2021/08/15(日) 21:56:21 ID:yi3EbC9s
スイマーロゼッタ「だ、だったら考え直すの!保留にするのっ!私たちが悪かったから!
         何か別の案を探してみるの!1人でも引けなかったら後悔するんでしょ!?」

ファイアロゼッタ「まあ、いくら私の運が悪くても大丈夫ですよー!なんといっても、これで…
         100個のクジから96個も引けるんですよ?勝ったも同然ではないですか!」

スイマーロゼッタ「あああああ!?嫌な予感がするの!オチが見えたのー!!
         ハロウィン!オーロラ!ファイアを、本体を止めるのっ!」

ハロウィンロゼッタ「もちろんっ!」

オーロラロゼッタ「あたりまえだよねっ☆」



ファイアロゼッタ「…………くどいっ!!」バッ!!

妙に心配性が過ぎる3人に必死に抱き着かれつつも、
体のバネだけであっさり振りほどいてしまいます。身体能力差万歳。

ファイアロゼッタ「行ってきまーす!!」ダダダダダッ!

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――ゴー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」ドドドドドドド・・・



3人「「「」」」チーン

ダークリンク「」

696Mii:2021/08/15(日) 21:59:01 ID:yi3EbC9s
〜 1人+23人、まとめて走破っ!! 〜

ファイアロゼッタ「――――走り、きり、ましたっ!」

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――とうちゃーく!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

3人「「「――――」」」

ファイアロゼッタ「…………すぅ、はぁ。深呼吸して、痛みの覚悟決めて――――
         ―――――――――――――――――全員、経験値、還元っ!!!」

ファイアロゼッタ(分身体)×23
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「――――それっ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

流れるように、分身体の皆が私にタッチしては消えて行き―――――――――



ファイアロゼッタ「――――――――はうっ」



ぐちゃっという不吉すぎる音。
一瞬にして脚の感覚が消失し、前のめりになって顔面から倒れ込みました。



テーレッテレー!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv.48に 上がった!▼

697Mii:2021/08/15(日) 22:03:18 ID:yi3EbC9s
3人「「「――――」」」ビクゥッ!



ファイアロゼッタ「―――――――――――――――――っ!あああああああっ!!!
         ――――――――あ、あの、い、ま。私の、あ、し。どう、なっ、て」ボロボロ

スイマーロゼッタ「…だ、だいじょうぶ!真っ赤なドレスのおかげで、そんなに血が目立ってない…気が、するの!
         具体的にはちょっとバキボキっと原型留めないくらいに複雑骨折して、
         骨が飛び出ちゃったりして、周囲を赤く染め上げて――――――――」

ファイアロゼッタ「やっぱり説明はもういいです!痛いっ!とにかく痛いぃっ!!」



とりあえず、この夢の中では、少なくとも。もはや私の脚は使い物にならなくなりました。
まさにラストランだったというわけです。

あ、そうか。今は残機制度が働かないから、特に精神が不安定になっているんですね。
タブー戦で学習しました。平時の切羽詰まった戦闘にも身を投じなければいけませんね。
涙堪えて…みることは無理っ!ですが、歯を食いしばって、痛みに耐えて、耐え続けます!



ファイアロゼッタ「…………る、ルビーを、わたしに、くだ、さい、な!」ドクドク
   
ダークリンク「…ほ、ほれ。480ルビー、やるよ。
      …しつこいようだが、45ルビーで10個分引くとかはできないからな。話の進行的に」

ファイアロゼッタ「なんですか、それぇ…………!」ドクドク

698Mii:2021/08/15(日) 22:08:16 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…ほ、ほかの、事に意識を、傾け、ない、とっ!!
         痛みをいちいち、意識、して、たら、追いつかないっ!キリがないっ!
         そ、それでは、さっそくクジを引いていきましょう!
         幸先よく、1個目から当たったりして――――せーの!」ガシッ

わざわざ身を屈めて箱を傍に持ってきてくれたダークリンクに心の中でお礼を言いつつ、
震える手をのろのろと箱の中に投じ、ボールを1個、掴みますっ!それっ!



――――――――1個目、白玉。



ダークリンク「…箱を近づけた俺が言うのもなんだが…引き始めちまったか、もう俺も知らん。
       ここに箱置いとくぞ、勝手に引いてけ。俺はあっち行ってる」

ファイアロゼッタ「…………むむ、この、玉…ぱっと見で、白玉の、ようですが、
         よーく、見ると、うっすらと、水色っぽくありませんかっ?
         ひょっとして、『スイマー』の、当たりクジ――――」プルプル

スイマーロゼッタ「目の錯覚なの。御覧の通り、私の首輪もそのままなの」

ファイアロゼッタ「……………………フンッ!」ブンッ

ダークリンク「うおぉい!あっぶねぇ!どこ投げてるんだ!?」

ちょっとバツが悪くなって、および流血の痛みから目を背けたくて、
背後に広がるロゼッタプラネットのコースの方に思いっきりぶん投げました。
ほぼ寝そべりながらの手投げの割には、良く飛びましたー!

699Mii:2021/08/15(日) 22:13:28 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…………大人げない」



オーロラロゼッタ「さて…もう、あなたと一蓮托生☆」



スイマーロゼッタ「あとは野となれ山となれ、なの…」



ファイアロゼッタ「――――それだけ文句を言う元気が有れば、十分ですね。
         私が貴方がたを見事救い出す瞬間を、心待ちにしておいてくださいまし!」



ハロウィンロゼッタ「…貴方と心中ですか…それも、まあ、悪くは有りませんが――――」

ファイアロゼッタ「心中とは失礼な!気を取り直して、気持ちゆっくり――――



        さあ、どんどん引いていきますよっ!!」バッ!



私には、明るい未来が見えています!4人で喜び笑い合う、そんな未来が…!!

700Mii:2021/08/15(日) 22:18:06 ID:yi3EbC9s
〜 2時間後 〜



ファイアロゼッタ「……………………」



1分間に1個くらいの、贅沢に時間を使ったクジの引き方。
体力が徐々にすり減り、動きが鈍くなっていくのですから、仕方ありません、ね。

…もとい。なかなか当たらなくて、少し冷や汗かいてきて、慎重に引くようになっていったので、仕方ありません、ね。

とはいえ、100個のうち96個引けるという、圧倒的有利な物量攻めの威力は絶大。
そして、とうとう…4個の当たりクジが。…赤と、紫と、青と、水色の、真ん丸な玉が。見事に集ったのです―――――!!





レアリティごとの残数:
        ウルトラレアピックアップ・・・4/4
        ウルトラレア       ・・・0/0
        その他          ・・・0/96

……………………もともと100個の玉が入っていたらしき、BOXの中に。



ファイアロゼッタ「                 」

701Mii:2021/08/15(日) 22:22:00 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「                 」

スイマーロゼッタ「ふわああああぁぁぁぁ…!!す、凄いのっ!!!
         こ、こ、これは感動ものなのっ!奇跡なのっ!!
         96個も引いて、全てのハズレクジを引き切るだなんてっ!!
         神懸かってるとしか言いようがないのっ!!悪運ここに極まれりなの――――っ!!!」

ハロウィンロゼッタ「そんなこと言って感動している場合ではないでしょうが――っ!!」

オーロラロゼッタ「あ、あ、ああああああ…」マッサオ

ダークリンク「マジか。これ、最初の4個引きで当たり4個全部かっさらう確率と一緒だぜ」

ファイアロゼッタ「」

ファイアロゼッタ「」



ファイアロゼッタ「    」サァッ

とんでもないことを、わたしは、やってしまいました。



ハロウィンロゼッタ「運がないのにも程が有りますよっ!どうしてくれるのですっ!?
          ああもう、色仕掛けでもなんでもしてあと4個引かせて貰いなさいよっ!」

ファイアロゼッタ「ふえっ!?」

702Mii:2021/08/15(日) 22:26:30 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「ななな、何をいきなり言い出すのですか!冗談はよして――――」



ハロウィンロゼッタ「…………そのくらい、そのくらい、我慢してでも――――っ!
          助かるのなら、どんなに、よかったこと、か――――」ポロポロ

ファイアロゼッタ「――――」



私の首元掴んで必死の形相でとんでもないことを言い出していた『ハロウィン』も、
10秒もしないうちに無駄だと悟り、力が抜けてしまいました。

私は自分の考えの甘さを呪います。『ハロウィン』の言葉は冗談なんかではありませんでした。
…いえ、色仕掛けでなんとかなるとか言われたらそれはそれで大問題なんですけどね!

もはや策なし…悲しみのあまり、彼女はへなへなと地に伏します。



ハロウィンロゼッタ「……………」グズッ

ファイアロゼッタ「…………あ、あの」

ハロウィンロゼッタ「…………」キッ

――パンッと。涙ぐんだまま、乾いた音の平手打ち。避けることができませんでした。
――あまり痛くはないのですが、心はとても痛いです。
――彼女も、せめて私だけはどうにか夢の世界から脱出させたいと必死なのでしょう。

703Mii:2021/08/15(日) 22:29:33 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「――――行きますよ」スクッ

ファイアロゼッタ「――――行くって、どこ、へ」ドクドク

ハロウィンロゼッタ「躊躇している暇などありません――――こうなったらっ、貴方を担ぎ上げてでも、
          コースを回らせて限界が来るまでクジを引き直させます。…諦めて、なるものですか」



――――それは、無茶すぎる。
――――仮に私を庇い、背負いつつコースを2周することが有効だとしても、
――――いったいそれにどれだけの時間がかかることか。



ハロウィンロゼッタ「さあっ!!一刻の猶予もありませんっ!2人ともっ!少しは手を貸しなさいっ!!」

オーロラロゼッタ「あ―――う、ん」

スイマーロゼッタ「…わかった、の」

――――『ハロウィン』のほかに『スイマー』と『オーロラ』が助太刀してくれたとして、
――――満身創痍の私が2周するのに、優に3時間は経ってしまうでしょう。
――――おそらく、それより前に――――出血多量でHPを刻一刻と失う私の命が、儚く消える。

――――そもそも、それでぎりぎり間に合ったところで、ルビーは20個しか集まらない。
――――つまりクジを引ける個数は再び4個に逆戻り。一方のBOX中身はリセットされている。

――――はっきり言って、絶望です。
――――結局、自分の運のなさを過小評価していた私が、全て悪かったのです。

704Mii:2021/08/15(日) 22:33:36 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「でも――――ほかに、てが、ない」ドクドク

ハロウィンロゼッタ「そういう、ことですよ」

ファイアロゼッタ「すいません、ダークリンクさん!後生です、からっ!
         あと4個だけ!4個だけ、クジを、引かせてくださいっ!!」

ダークリンク「断る。今のお前はそのためのルビーを持ってない」

ファイアロゼッタ「です、よ、ね――――」ガクッ



悲しみの渦に包まれる私たち。ダークリンクすら、呆れた面持ちでこちらを見やります。

……って、呆れた表情?え?ダークリンクってこんなに薄情だったのですか!?
彼も本心では私を助けたいと思っている、みたいな考えは間違っていたのですか…!?しょ、衝撃、です…。



ダークリンク「…………」

自立できない私の体が、ゆっくりと3人の手によって持ち上がり。
脚の感覚がないせいで、千切れ落ちていたり、して。
血濡れが拡がることなんてみんな気にせず、ただ悲痛で死んだ目をして持ち上げられ。



このまま歩かれて行ったら、垂れる血が道を作っちゃう、なあ――――
そんな、とてもくだらなくて無駄が過ぎる現実逃避を――――

705Mii:2021/08/15(日) 22:41:42 ID:yi3EbC9s
ダークリンク「…そういうわけだから。とっととその――――
       20ルビーで、クジを4個引けよ。アンタ。やってることがまどろっこしいんだよ」ハァ

ファイアロゼッタ「――――はい?」



全然深刻そうにみえないダークリンクが、ある方向を向いて、訳知り顔。
意識朦朧としながら、私も、釣られて同じ方向に視線を投げました。



   「――――――――わっかりましたー!でも、やっぱりクジを引くのは『引くべき人』がっ!」



『ハロウィン』、『スイマー』、『オーロラ』も、今更ながら、気付いた。

誰かが、いつの間にか、傍にいた。
…そうか、クジを引くことに躍起になって、他のことにまるで気が付かなくて…!



ファイアロゼッタ「――――え?」

ハロウィンロゼッタ「な…………」

オーロラロゼッタ「…いったい」

スイマーロゼッタ「なんなの…………!?」

706Mii:2021/08/15(日) 22:47:43 ID:yi3EbC9s
口をポカンと開け、動揺するしかない私たちのもとに「到着していた彼女」は。
まだ軽く疲れたような雰囲気で、しかし表情は晴れやかで。

    「『ハロウィン』、『オーロラ』、『スイマー』・・・
    彼女たちが走ったところで、夢の世界の住人ということでマラソンを走ったことにはならない。
    でも…『自分自身』が走る分には、しっかりカウントされるんです!

    そして、『クジを引き切る前』になら、ルビーもしっかり貰えましたっ!
    これは盲点、思わぬ先入観というやつですね!」

ファイアロゼッタ「――――――――!!」

    「まあそれにしても…運よく、1個目に拾い上げてくれて、よかったぁっ!
    なん、とか!作戦を、投げ出される前に、走り切れてっ!!頑張りましたよっ!
    乱暴にポンッと投げられてタンコブができたことは大目に見てさしあげますっ!

    ――――――――――――――――そういう、わけでっ!!」ニコッ!









ロゼッタ(R)「私の分の、20ルビー……………………ミンナニハ ナイショダヨ!」ポンッ

ファイアロゼッタ「あ――――――――」キャッチ

707Mii:2021/08/15(日) 22:54:39 ID:yi3EbC9s
シュパッ――――――――!

彼女が光の粒となり、私の体に融け込んで――――――――



レベルアップ!!
(ファイア)ロゼッタの 基礎体力レベルが Lv50に 上がった!
第一レベルキャップに到達! レベルが極端に上がりにくくなります!▼

ファイア状態時 ハイスピンジャイロファイアが 使えるようになりました!!▼



――――ひとまずの、強さの到達点に来た、感覚……これは!?



まじまじと、そのルビー(ルピー)を見て、ぎゅっと握り締めて。



ダークリンク「お前らがクジ箱の前でアタフタしてる間に、
       コッソリ近づいて驚く顔が見たかったんだと。困った奴だなあ。

       そんで、どうよ。クジ、引くか?」



ファイアロゼッタ「――――――――はい」

708Mii:2021/08/15(日) 22:59:20 ID:yi3EbC9s
1個目…………紫。天空から、玉と同じく紫の、『ハロウィン』への光の祝福。

ハロウィンロゼッタ「……ああ、これが――――」



2個目…………青。天空から、玉と同じく青の、『オーロラ』への光の祝福。

オーロラロゼッタ「…なんて、綺麗――――」



3個目…………水色。天空から、玉と同じく水色の、『スイマー』への光の祝福。

スイマーロゼッタ「…とてもやさしくて暖かい光なの――――」



4個目…………赤。天空から、玉と同じく赤の、私への――――フィナーレとなる、光の祝福。

ファイアロゼッタ「――――――――」



4人の、全員分の――忌まわしい首輪が。
がっしゃんと、地に落ちて…消えて行きました。
       
ファイアロゼッタ「――――――――や」

4人「「「「やったああああぁぁぁぁ――――――――っ!!!!」」」」

709Mii:2021/08/15(日) 23:02:20 ID:yi3EbC9s
私含めて、みんなして。わんわん泣きながら笑って、拳高く突き上げて。
気持ちが高揚したまま、抱き合って、4人仲良くハイタッチ!!
わわっ!気付いたら、脚のケガもいつの間にか完治していますっ!
ミッション完了のご褒美ってことですか、嬉しいです!

オーロラロゼッタ「…う、うわあぁぁーん!よ、よかった、よかったよぉ――――」ポロポロ

スイマーロゼッタ「一時はどうなることかと思ったの…ヒック」グズッ

ファイアロゼッタ「…ふふっ、だから何とかしてあげると言ったでしょう?」ジワァ

ハロウィンロゼッタ「…全くっ、ほんと、調子がいいのだから――――」ホロリ



ダークリンク「ははっ、ようやく俺もお役御免か」

ファイアロゼッタ「…あ、ダークリンク…………」

ダークリンク「――――よせやい。そういう目で見るな。
       単に暇つぶしに付き合ってやっただけだ、感謝の言葉なんていらねぇ」

ファイアロゼッタ「…………それでも。ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました」ペコリ

ダークリンク「…まあ、なんだ。1人じゃ無理な事でも、4人もいれば何とかなるもんだ。
      これからは精々助け合って生きていってくれ」

ファイアロゼッタ「――――はいっ!!」

彼はすっごく照れくさそうに、視線を横に反らしつつ。

710Mii:2021/08/15(日) 23:09:51 ID:yi3EbC9s
ダークリンク「そんじゃ、もう会うことも無いとは思うが…じゃあな」

少しずつ、体が透けて行って――――フッと、消えて行きました。
お役目御免というのは、どうやら本当のことだったみたいです。



ハロウィンロゼッタ「…はっ!まだ気を抜いてはいけません。
         いつ、現実世界の貴方がむりやり起こされるかわかりません。
         安全のため、一刻も早く現実世界に戻るべきです。

         ――――さあ、帰りの道を作りました。
         ――――今度こそ、振り向かずに通り抜けてください」パアアアァァ



『ハロウィン』が作り出したるは、
ベッドから起き上がり、仲間たちと再び会うための…光り輝く脱出口。
ええ、もう心残りは…ありません。

ハロウィンロゼッタ「では、もう…この長大な『ロゼッタプラネット』も、
          要らなくなりましたね。消しておきましょう――――
          …って、なんですその目は」

ファイアロゼッタ「…………い、いえ。特に支障がないなら、このまま私の夢の中に残しておけないかなーと」

夢の中に残したまま目を醒ますことで、また夢に出やすくなるのかな。
走り出した最初のころはなんでこんな目に遭うのかとゲンナリさせるばかりのコースでした。
…今は、ちょっと名残惜しい、記念に残しておきたいと思ったり。

711Mii:2021/08/15(日) 23:12:50 ID:yi3EbC9s
ハロウィンロゼッタ「…ふふ、それならば残しておきましょうか」

オーロラロゼッタ「4人の思い出のコースだもんね☆」

スイマーロゼッタ「それはグッドアイディアなの!」



こころが絆で温まる。とてもいい感じです。



ファイアロゼッタ「――――――――それでは帰りましょうか、現実世界へ。
         …というより、貴方たちは私が夢から醒めたらどうなるのです?
         もしかして、起きた私の周りにポカンと次々に現れて、
         これから賑やかな4人での共同生活が始まるとか…ですね?

         私もあんまり裕福ではないですが、というより絶賛借金返済中ですが、
         めげずにくじけずに一緒に楽しく暮らして――――」






ハロウィンロゼッタ「…ええ、そうですね」

オーロラロゼッタ「…そう、これからはずーっと一緒☆」

スイマーロゼッタ「しょうがないから、貴方のこと、陰ながら応援してあげるの―」

712Mii:2021/08/15(日) 23:14:49 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…あ、あれ?みんな?なんだか急にしんみりとして――――
      
         って、体、薄れてきていませんか!?
         お、おっかしーなー?私はまだまだそんな事態になってないのにー?」



ハロウィンロゼッタ「…大丈夫、いつか、会える」



オーロラロゼッタ「もう、二度と会えないなんてことはないから」



スイマーロゼッタ「じゃあ、またねー!」



ファイアロゼッタ「――――!?」







3人の体が、ダークリンクの時みたいに、光の粒と化して――――
ぐるぐると私の体を何度か回ったあと、私の胸の中に――――
吸い込まれて、消えて行きました。

713Mii:2021/08/15(日) 23:17:49 ID:yi3EbC9s
ファイアロゼッタ「…………………………………………」

ファイアロゼッタ「…………………………………………」



ファイアロゼッタ「ここまでやっておいて結局消えちゃうんですかっ!?
         なにそれ酷い!酷くないですかっ!?感動を返してくださいっ!?
         い、いえ、別に貴方がたが嘘をついていたとは思いませんけれどっ!?
        
         これ、皆を助けたことになってるんですか!?ねえ!?誰か答えて下さいっ!?この――――」



ファイアロゼッタ「馬鹿ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!」





・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・



ロゼッタ「馬鹿ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!!」ガバッ!

デイジー「きゃああぁぁぁ!?」ビクッ

714Mii:2021/08/15(日) 23:20:44 ID:yi3EbC9s
ロゼッタ「…………あ、れ。デイジー、ひめ?」

デイジー「いきなり大声上げないでよ!?心臓止まるかと思ったよ!」

ロゼッタ「――――もどって、きた?夢の世界から…………」

デイジー「…マールの子守唄で眠っておきながら悪夢を見るとか、
    ほんとロゼッタってついてないというかなんというか…
    その悪運には同情するよ、可哀想になってくる…。

    それでそれで?どんな夢見てたの?悪い夢は人に話すことで正夢じゃなくなるってよく言われるよね!
    最初から最後まで話してごらんよ!面白…興味深いから!!」



ロゼッタ「…………あれ?私、どんな夢、見てましたっけ」



デイジー「あらら、忘れちゃったかあ…ざんねーん。
    ロゼッタの深層心理を見抜けそうで興味深…面白そうだったのに」

ロゼッタ「ええ…………」アキレ

ロゼッタ「…………」



ロゼッタ「でも、なんだか。楽しい夢だったような気がします。
    心の奥底に残るような、心がほんのりあったかくなるような」

715Mii:2021/10/24(日) 00:01:00 ID:nJa12BZA
デイジー「あんなに叫んだのに…?忘れっちゃったのに…?
    ま、まあ。ロゼッタを幾ら責めたてても意味ないか。
    
    それよりさあ、今日は12月25日だよ!クリスマスだよ!
    遅めの朝食でも、食べにいこ!今日も念のため体を十分休ませるべきだよ!
    おいしい紅茶とケーキを出してくれる店、最近見つけたんだ!」

ロゼッタ「…わかりました。借金返済に焦りすぎるのもよくない、ですね。
    それでは、エスコートしていただけますか?」

デイジー「お任せあれ!一緒に食べ放題コースで食い倒れるぞ、おー!!」

ロゼッタ「そ、それはちょっと!あ、あの!太ってしまいます!
    普通!普通のメニューをばご検討ください!お願いします!
    ちょ、ちょっと!話を聞いてくださいよー!!」パタパタ



――――今日は、いいことありますように。







ロゼッタの 魔法経験値が 少し貯まった!
ロゼッタは 氷耐性Lv.10を 会得した!
ロゼッタは 潜水耐性Lv.10を 会得した!▼

716Mii:2021/10/24(日) 00:06:08 ID:nJa12BZA
とりあえず、デイジー姫イチオシのお店で小腹を満たして。
紅茶をこくこくとゆっくり味わっています。
さすがイチオシ、甘すぎないケーキは美味の一言でした。

ぐーるぐると、2杯目に選んだコーヒーをかき混ぜ中のデイジー姫に、唐突に尋ねられました。



デイジー「ところで前々から気になってたんだけど、ロゼッタの収入源ってなんなの?
    別に遺産があるとかでもないよね?」

ロゼッタ「……」ギクッ

デイジー「ほうき星で、パンづくりのための小麦くらいは育てられるかもしれないけどさ。
    他の食材とか、その他にもいろんなもの、必要になってくるでしょ?

    ロゼッタは確かに倹約家っぽいし、ことさらに大きな出費行事とも無縁だけど、
    それでもひもじくならない程度にはお金は使うよね?」

ロゼッタ「…………えっと」

デイジー「うん」

ロゼッタ「…………ト、トレジャーハンター的なことを少々」モジモジ

デイジー「一攫千金!?なにそれカッコいい!意外だなあ!!今度私も連れてってよ!」



ロゼッタ「あの、いえ、そんな高尚な話でも何でもなくですね…………」

717Mii:2021/10/24(日) 00:13:08 ID:nJa12BZA
〜回想、ほうき星〜

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・

ざくっ! ドドドドドドドドド・・・・・・・・



ロゼッタ「コース作成(ロゼッタプラネット)のために魔法で岩肌を削って削って…………
   ふふふ、もうちょっともうちょっと…!私の予感が正しければ…!」パアアアアア

チコ「ママ、ごきげんー!」



ガキンッ!

魔法で衝撃を与え、掘り進めていた岩肌が、突如として明らかに異質な音を立てる――――



ロゼッタ「うわあ…!!あいかわらずこの星は、素材の宝庫ね!
    ちょうど、いい感じの鉱脈にぶつかれたみたいだわ!
    天の恵みよ、これでなんとかあと1か月は凌げる…っ!

    採掘、採掘!頑張るわよ!」パアアアアア

チコ「キノコ王国で高く売れるといいねー!」

718Mii:2021/10/24(日) 00:16:18 ID:nJa12BZA
〜回想(take2)、ほうき星〜

チコ「ママー!また新しい子がママに会いたいんだってー!
  とっても元気で明るくて、それでもって礼儀正しい子なんだよー!」

チコ「は、はじめましてっ!新入りのチコですっ!
  ずーっとロゼッタさんに…ママに、こうして会いたかったの!嬉しいなっ!わーい!」

ロゼッタ「ふふ、丁寧にありがとう。歓迎するわ、ゆっくり過ごしてね。
    いつお出かけしてもいいし、いつ戻ってきてもいいのよ。
    困ったことがあったら何でも言ってね」ニコニコ

チコ「あ、そうだ、例のもの」

チコ「あ、わ、忘れてたっ!はいっ!お近づきになったしるし!



  ――――――――ダイヤモンドの原石ですっ!故郷にあったの!」キラッ!

ロゼッタ「」

チコ「これをあげると、ママがとっても喜んでくれるんだよ!」

チコ「ぜひ受け取って!お願いします!」

ロゼッタ(上納金!?)

719Mii:2021/10/24(日) 00:19:17 ID:nJa12BZA
チコ「…………」ジーッ

ロゼッタ「…………」ダラダラ



ロゼッタ「う、うわぁー!ありがとう!いただいていいのかしらー?
    ちょ、ちょうど欲しかったところなのよー!」ナデナデ

チコ「わあっ…!本当に喜んでもらえたぁっ!!ありがとう先輩!」

チコ「えっへん、どういたしましてー!」









ロゼッタ(後ろめたくならない後ろめたくならない後ろめたくならない)

チコ「???」フヨフヨ

チコ「…や、やっぱり要らない?」



ロゼッタ「…………欲しいですごめんなさい」

720Mii:2021/10/24(日) 00:23:14 ID:nJa12BZA
〜回想(take3)、キノコ城〜



ロゼッタ「いきなり呼び出されましたけれど、どうされましたか?」



ピーチ「ロゼッタ、ちょっと肩もんで。書類とにらめっこばっかりで疲れちゃった」

ロゼッタ「…は、はい」モミモミ



ピーチ「ロゼッタ、今日1日お料理は任せるわ。たまには息抜きしたかったの。
    拒否権なんてないからね」

ロゼッタ「簡単なものしか作れませんが…」シャカシャカ



ピーチ「ロゼッタ、適当に城の隅々まで掃除しておきなさい。
   私は優雅に会議に出かけるけど、手抜きはしちゃ駄目よ?魔法を使ったズルも禁止ね。

   はい、モップと雑巾、ホウキとチリトリ」

ロゼッタ「…わ、わかりました」サッ サッ

721Mii:2021/10/24(日) 00:26:17 ID:nJa12BZA
ピーチ「さてと、ロゼッタ。お友達料金なんだけど」

ロゼッタ(来てしまいましたっ…………)ズーン







ピーチ「とりあえず残高が心もとなくなってきたみたいだから、
   口座に10万コインほど振り込んでおくわ。今日はありがとうね」

ロゼッタ「ですからっ!!そんな大金いりませんっ!!
    これ見よがしに雑用させて対価として押し付けて!!」

ピーチ「私が自由に使えるお金に限っても、10万コイン程度、はした金なんだけど…
   そのお金を有効に使って、もっとお姫様らしく過ごす努力も、多少はしなさい。
   いつ、部下を抱えて政を行うようになるか、わからないんだから」

ロゼッタ「ほうき星の主としてチコたちと楽しく暮らす現状で十分ですよ…」

ピーチ「とにかく!いいから、受け取っておきなさい。
   鉱脈狙いとか…経済基盤不安定にも程があるんだからね。
   なんやかんやで入用なんだから。襤褸を纏って過ごしたいの?」



ロゼッタ「…………わかりました」ズーン

722Mii:2021/10/24(日) 00:34:00 ID:nJa12BZA
〜回想おわり〜

ロゼッタ「偉そうなことを叫んでおいて、確かに全く自立できてない…」

デイジー「……………………お、おう。気付くのが遅いと言って欲しい?」

ロゼッタ「…………仕事しなきゃ…バイトでも探しましょうか…
    求人広告はどちらで手に入るでしょう…」

デイジー「面接官や客がビックリ仰天するだけだからやめい」



デイジー姫と別れて、さあ働こう。気落ちしようが、地下牢、もとい仕事場に戻ります。
…あれ?今日はもう働かないことにしたような…あれ?

まあ、国家プロジェクトに携わっている、と考えれば立派な、立派過ぎる仕事ですよ!
給料だってしっかり出ている勘定です。出たそばから借金返済に消えていくお金ですが。



今回のことで、思い至ったのは…………
定職に就くのは無理でも、機会あるごとにキノコ王国でこまめにお金を稼いだ方が
とっさの支出にも余裕で対応できていいに決まっています。
生活だってきっとよりよくなります。派遣の魔法研究職とか、いいかも。

「ロゼッタを易々と民間で働かせられないわよ!」というピーチ姫の叫びが
心の中に響いて…まさか、ありえませんね。幻聴です。働けるなら御の字です。
働かざる者、食うべからず。うん、頑張ろう。

723Mii:2021/10/24(日) 00:40:51 ID:nJa12BZA
また研究室に篭って、こそこそと実験を開始しようとしたところ。
様子を見に来たキノピオに、とある提案をされました。
きっと、昨日までの私を観察して、見るに見かねたというところでしょうか。



キノピオ「実験三昧に気が滅入るようでしたら、気分転換として。
    『スカイガーデン(仮称)』の建設に取り掛かってもいいんですよ?」



ロゼッタ「…………え?」



キノピオ「姫様は抜かりありませんから。ふふん。

    既に建設予定地は確保済、やろうと思えば近日中に
    作業に取り掛かれるような状況です。…色々と準備は必要でしょうけど。

    まあ、いますぐ作り始めるのは難しいにしても、たとえば下見――――
    ひろーい建設予定地に、ささっと案内いたしましょうか?
    汽車に乗ってざっと30分ってところですが」



私はその提案に、ものすごーくあっさり飛びつきました。

724Mii:2021/10/24(日) 00:48:07 ID:nJa12BZA
〜スカイガーデン建設予定地〜



ロゼッタ「…………ふわぁ」



見上げるは、広い広い、青空。ところどころに、白い雲。
まさにイメージにぴったり。



キノピオ「要するになんにもない、簡易柵で囲っただけのだだっ広い空き地ですけど」

ロゼッタ「気にしていたことを!!」



…いやでも、とにかく広い。やたらめったら広い。柵の内側、全部!?
高台から見渡せば、500メートル四方くらいは余裕である、茶褐色の土地が広がっています。
全部使っていいんですか、太っ腹!

キノピオ「まず、地上でコース全体をしっかり作成します。
    必要な機材、備品、人員…すでに構想を練り始めてくださいよ。

    でも、スカイガーデンは空中コースにするっていう注文が姫様から来ていますからね。
    コースに固定化魔法を掛けたあと、キノコ王国お抱えの魔法使いたち総出で、ふわりと浮かび上がらせます。
    少なくとも、ざっと100メートルくらいは。
    …あ、これはロゼッタさんにお任せした方がいいくらいですか」

725Mii:2021/10/24(日) 00:52:53 ID:nJa12BZA
ロゼッタ「せっかくですから雲も一緒に固定化して、足場にしてみたりですね…。
    浮遊足場と雲を飛んで、渡っていくコース!ああ、胸が高まります。
    でも、浮遊足場をそんなにたくさん、作成できるでしょうか。

    …いえ、怖気づいてはいけません!大丈夫!
    隔壁で、バディブロックで片っ端から支えてやればいいのです!善は急げ!」バッ

キノピオ「……!?お、お一人で、それもたった今から造られるおつもりですか!?
    そんなことができるのは、マリオさんくらいのものですよ!?無謀すぎます!」

ロゼッタ「これ以上時間を掛けていたら『反重力ペンキ』の方が間に合いません!
    基礎体力Lv1でロゼッタプラネットをなんとか造ることができたくらいですから!
    このくらい、たぶんお茶の子さいさいです!!

    さあ張り切っていきましょう!危ないかもですから後ろに下がっていてください!」





キノピオ「…………そんなに研究の方、ノイローゼ気味だったんですね」



――――ばれてます。

726Mii:2021/10/30(土) 06:44:41 ID:/W4lGY0Y
タララッ タッタッタッタッ。

タララッ タッタッタッタッ。

ロゼッタの3時間メイキング!



だだっぴろい空間が、目前に広がっています。
ここにどんどん物を設置して、私だけのコースを建設していくわけですね。

え?さっきキノピオに「まずは地上で建設しろ」って言われた?
ふふ、最初から空中にとどめておけるならば、それに越したことはありません。
全体像を常に把握するうえでも、ベストであるに決まっているではないですか。



さてさて、運び込まなければならない物は数多ありますが。
なによりも必要なのは…そうですね、基礎となる足場です。つまるところ、土砂とか岩盤です。
舗装、飾りつけの体積、重量だなんて、その下の土台に比べれば微々たるものです。

ちなみに、土砂や岩盤といった資材は、国有地から持ち出してよいそうです。なんとタダ!
「業者に頼んで大型トラック、浮遊船等で運んでもらえ」というのが通常の作戦になるんでしょうが。経費も出るみたいですし。



空間魔法使いの私の場合、ちょっと違った様相を呈します。
ロゼッタプラネット建設の際に得られた過去の実績もふまえて、なんとも小狡い手を使います。

727Mii:2021/10/30(土) 06:51:40 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「当然、この建設予定地も国有なんですよね?巻き込みそうな配管なんかもなさそうです」

キノピオ「…それがどうかしまし――――――――」



すたすたと何メートルか歩いて行って――――突然、地面に土下座。
…もとい、ぺたんと両手を地面にくっつけます。



ロゼッタ「人払い、よし。安全、確認。…今の私の魔法制御力とFP量から鑑みて…
    2mくらいなら、きっとだいじょうぶ――――――――えいっ!!」パアアアアアア



さくっ!
シュインッ!



幅、約2メートル。  奥行、約2メートル。  そして深さ、約2メートル。



一瞬、地面に光り輝く切れ目がさくっと入ったと思ったら、次の瞬間。
立てた両ひざのすぐ前に、突如として、2m角の四角い穴が空きました。
中のキューブが、ごっそり消えた状態です。

キノピオ「」

728Mii:2021/10/30(土) 06:55:29 ID:/W4lGY0Y
…おっとと、あやうく前のめりに落ちる所でした。
落ちても2メートル程度、今の私には頭から落ちようと痛くもかゆくもないですが。

キノピオ「えっ?えっ?ええっ???」

慌てふためくキノピオを他所に、杖を片手にふわりと浮かび上がって、上昇、上昇、ぐんぐん上昇――――

キノピオが豆粒くらいに見えるところまで、慎重に慎重に上昇して。
うわっ、結構風がきついですね。ふらつかないように気をつけないと。



ロゼッタ「というわけで、足場用に用意した土が…はい。こちらになります」パアアアアアア



PON!!!!

キノピオ「…………!?」



私のすぐそば、上空100メートルあたりに、突如として。
1辺が私の身長とおんなじくらいの、綺麗にカットされたサイコロ足場が現れました。
準備がいいですねー。…異空間に収納してたのを出しただけですが。
あとは、角度や位置を微調整してですね。



ロゼッタ「はい、ストップ!それでは、空間に固定化させますね…設置おわり!!」パアアアアアア

729Mii:2021/10/30(土) 07:01:08 ID:/W4lGY0Y
ここまで重くて巨大な物を扱うと、流石に杖は不可欠ですが。
魔法をレジストするなんてもこともないただの地面でしたし、問題なし問題なし。
注ぎ込むFP量さえ潤沢ならば。見事、上空100メートルに小島がひとつできました。
まだ1つ。たったの1つですが、これが最初の一歩になります。

この足場はしっかりと絶対座標で固定化したので、もう落ちてきません。…落ちてきませんよね?
久しぶりでちょっと不安だったので、1分ばかり傍で様子を見守ります。

…ふう、大丈夫大丈夫。ひゅるひゅると降下していって着地。
キノピオはどうやらさっきから口をあんぐり開けたままです。



ロゼッタ「さあ、このやり方で問題なさそうなので、…この調子で――――」パアアアアアアアアアア

キノピオ「ま、ま、まちがっても上空で制御しそこねて落としたりしないでくださいねっ!!」

ロゼッタ「勿論ですよ、命に関わりますしね!安全第一!」



キノピオ「…………」





キノピオ(…………こんなことができるんだったら、攻撃手段に乏しいとか言いながら
    重量物を敵の上から落とせば普通に攻撃できるんじゃあ……………)

730Mii:2021/10/30(土) 07:04:57 ID:/W4lGY0Y
地面に降り立ち、地面をキューブ1つぶん異空間に格納し。
上空に舞い上がり、切り出したばかりの地面を取り出してセットする。
ケーキを切り分けて配膳していくみたいに、地面がさくさくと切り出されていきます。…負荷は、大きい、ですけど。

アバウトながら、事前に考えていた構想に沿って…上空にて、整列、整列っ!!
…こういったクリエイティングって、妙に面白かったりするんですよね!

キノピオ「…マインクラフト?」



さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!

さくっ!
シュインッ!
PON!!!!



キノピオ「うっわー…………」ドンビキ

731Mii:2021/10/30(土) 07:45:16 ID:/W4lGY0Y
コースの幅は、どうしましょうか。一般的なコースを思い起こすなら――
ざっと言うと、舗装面を20メートル、後は悪路部分を両側10メートル、そして壁……。

いえいえ、折角の空中コースということでしたら、開放感を出すためにも
狭い幅の方がいいですよね。こう、柵として蔓(つる)を這わせてオシマイ、とか。
うん、空中庭園に根付くツタや蔓。想像してみましょう、幻想的でいい感じです。



そうと決まれば、キューブは10個ほど並べてくっつけてコース幅として…
曲面を描くのは次工程にお任せして、とにかく思いつくままに並べて、並べて、
ただひたすらに並べ倒してしまいましょう!!

工期を6か月…いえ3か月くらいにして、ここに試走も含めてしまいましょう。
やるべきこと、用意するものは山積みです。計画をしっかり立てないと。
そうです、ピーチ姫のお怒りをすっかり忘れてしまっていました。油断してはいけません!

工夫すべきところは…ああ、そうだ。
FP枯渇の心配はしすぎることはないですから、チコたちにも応援に来てもらいましょう。
あと、ある程度の固定化は、キノコ王国お抱えの魔法使いさんたちに委ねるべきですね。
ひとりで抱え込もうとすると自滅しそうです。

…あ。人海戦術は相変わらず有効なのですよね、そういうことなら――――



ロゼッタ「キノピオ!いくらか、お借りしたい物や援軍があるのですが――――!」

キノピオ「は、はい!どうぞなんなりと申しつけ下さい!」

732Mii:2021/10/30(土) 07:50:31 ID:/W4lGY0Y
〜3時かn…………6時間後〜

キノピコ「…………様子を見に来たんだけど、なにこれ」



ロゼッタ(分身体)「オーライ、オーライ!あと50cm近づけて!」パアアアアア

ロゼッタ(分身体)「せーのっ!…よし、ドッキングOK!
         ズレなし、凹みなし、たわみなし!次持ってきてください!」パアアアアア

ロゼッタ(分身体)「そこの分身体!魔法のキレが悪くなってます!
         地上に戻って休憩とってください!10分離脱!」

ロゼッタ(分身体)「はらひれ……夕闇がぐるんぐるん回って見えます…疲れましたあ…」フラッ

ロゼッタ(分身体)「はい、FP欠乏してる人にメイプルシロップ配って回りますよ!とっとと口を開けてください!」

ロゼッタ「2番と6番っ!キューブの繋ぎ方が間違ってます!修正してください!そう、それ!
    今目の前にある経路方向、約10ブロック分!そろそろカーブを描き出しますから!」

ロゼッタ(分身体)「…うわ、確かにこのままだと…あっちのキューブ群と連結できない…!
        急ぎ固定化を解除してやり直します!見つけていただき感謝します!!」パアアアアア
        
ロゼッタ(分身体)「あ、すいません!そろそろマップがおぼろげになってきて…
         その予定図、もう一度みせてください!」

ロゼッタ(分身体)「そろそろ今日はやめにしませんかー!
         ちょうど、照明用の強力ライトも電池切れっぽいのでー!」ガシッ

733Mii:2021/10/30(土) 07:58:26 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ(分身体)「もうちょっとだけ!切りのいいところまで進めましょうよ!」

ロゼッタ(分身体)「駄目です!そういうメリハリのない作業が事故のもとになるんです!」

ロゼッタ(分身体)「そろそろ、別の所から土を持ってこないと限界に近いですね…まだまだ足りない。
           土壌汚染もない、いい質の土のありかを探っておきましょう」



キノピオ「…………土砂支給、最前線活動、ダブルチェック、救護、回復、監督、照明…
    役割分担を持ち回りでこなしてます、あのロゼッタさんたち」

キノピコ「ロゼッタさん1人いるだけで、建設業の人たち上がったりだねー。
    …っていうか、コースの下の地面が抉れに抉れてるんだけど。採掘場か何か?」



ひとまず、スタートダッシュでノリにノッてみて、いい感じに作業が捗りました。
でもさすがに3時間では気が済みませんでしたね!





…時間は掛かろうとも1人1人によく聞いて回って本日の進捗確認をすればよかったのに、
分身体に消えてもらって全員の経験値を還元したところで…極度の疲労でぶっ倒れる羽目になったのは内緒です。
みんなの気付いた点も含めて手っ取り早く把握しようとして横着しましたが、駄目でしたね。

もう二度としません。おそらく。

734Mii:2021/10/30(土) 08:06:42 ID:/W4lGY0Y
ほうほうの体でキノコ城に帰って、一晩空けて、目覚めのいい朝。

肉体的には大層疲れていたはずなのに、それでも精神的に参っていた時よりはいい感じの体調です。
今日なら、なんだか実験も上手くいきそうな気がします。さえずる小鳥の鳴き声に応援されているかのよう。

…よし。これからも、実験に躓くたびに、思う存分コース作りに邁進する、ということに。
城の片隅にいつの間にかドンと陣取った超巨大タンクと、大量の大量のペンキさんたち、
もうちょっと待っておいてくださいね。





都合よく重力を操れる魔法を完成させ。

それを、ただのペンキに基本特性として馴染ませ、浸透させ。

時間の経過や繰り返し使用、荒れたレースでも劣化しないことを十分に検証し。

仮にそこまでできたとして、無尽蔵とも言える膨大な量をただひたすら製造していく、
スケールアップの方法を思いつかなければならなくて。





…気が滅入りそうな話ですが、着実にこなしていきたいと思います。

ロゼッタ「魔法使いとして…そう、腕が鳴りますよね!」

735Mii:2021/10/30(土) 08:10:12 ID:/W4lGY0Y
〜12月31日〜



ガヤガヤガヤガヤ・・・・・・・・



技術者「よし、皆、準備はいいか!覚悟はできたか!
   怖気づいて年の最後までだらだらと延ばしてしまったが…しかと責務を果たすぞ!
   微力ながら、ロゼッタ様をお助けするのだ!」



技術者「私たちにできるだろうか…」

技術者「不安だ…足手まといになるだけなのでは…」

技術者「…ええい、いつまで不安がっている!情けない!
   確かに、ロゼッタ様の魔法の実力は物凄い!まぎれもない事実だ!

   だが、姫様より言いつけられた、塗料のマジックアイテム化には
   手がかりがつかめず、なかなか難儀されている模様!
   数年前から研究を重ねて来て、実績もある我々が指導してやらなくてどうする!」

技術者「『実績もある』っていうけど…これだけの人数がよってたかって研究重ねて、
   達成したのは、たかだか反重力作用効率0.5%じゃあないですか…
   まだまだ使い物にならない、有って無いような実績っすよ…」

技術者「情けない弱音を吐くな!」ドンッ!

736Mii:2021/10/30(土) 08:15:43 ID:/W4lGY0Y
反重力作用効率とは、すぐ上に位置する物体に対して及ぼすことのできる反重力が
もともとの重力の何パーセントまで到達しているかを表す数値である。



0%ならば、それは唯の地面である。物体の全重量が塗布面にかかり、
単純に接触による反作用によって支えられる。

50%ならば、重力の半分を反重力作用が打ち消してくれる。
いつもの半分の力を加えるだけで、物体は持ち上がる。
多少なら塗布面から離れた位置にも、反重力作用は働くからだ。

100%ならば、重力まるごと、反重力作用が打ち消してくれる。
指にちょっと力を加えるだけで、持ち上がる、押し出せる、引っ張れる。
面白いのが、重力が塗装面と逆向きにはたらいていれば、
反重力は塗装面に吸い付く向きにはたらく。
つまり、「上下さかさまのコースを走っているときでも落ちなくなる」。

ただし、反重力作用効率100%という一定値を常時発揮しているのでは困ってしまう。
このままでは、段差でのジャンプ、クラッシュなどで塗装面からの距離が変化した場合、
距離が変わったままになってコースに復帰できない。
いつもなら当たり前の「重力に従ってコース上に戻り距離が(0に)保たれる」流れがないからだ。



カートが塗装面に近づき始める、離れ始める瞬間瞬間に、即座に反重力作用効率を100%を中心に上下させて、
「浮かせつつも、気持ち吸い付かせ続ける」効果をもたらしてくれる必要がある。
そうすることで、レース中のカートは抵抗なくふわりと浮き上がって走ることができる。

この臨機応変、ご都合主義な制御力をただのペンキに付与する…並大抵のことではない。

737Mii:2021/10/30(土) 08:19:32 ID:/W4lGY0Y
…まあ、そもそも現状では1%にも到達しておらず、先は長い。
それも、トップデータで1%である。そして、たった1滴作るのにも莫大な時間と経費が掛かっている。
研究とは、中々骨の折れる、そういう地道なものである。



技術者「我々の研究成果自体は既にロゼッタ様に資料でお渡ししてますし、
   別にわざわざ出向かわなくてもいいじゃないですか…。
   目の前でアッサリ我々の成果が追い抜かれていくところ、見たくないよ…」

技術者「…それは、仕方のないことだ。それでも!
   いくらロゼッタ様と言えど、0から1を生み出すことはできんのだ!
   ロゼッタ様が研究の最初の一歩を踏み出すところのアシストこそ、我々の役目!
   王国お抱えの技術者としての矜持、自尊心というものはないのか、みんな!

   一仕事したあとで、ロゼッタ様が1から100を生み出すところを
   ニマニマしながら眺めようじゃないか!今のロゼッタ様の功績があるのは我々のお陰だ、と!」

技術者「…………!!」

技術者「…………!!」

技術者「…………!!」

技術者(…ようやく目が醒めたか……やれやれ。世話が焼ける部下たちだ。
    でも分かってくれたようで何より。その想い、その輝き、忘れるなよ)

技術者「いざ、ロゼッタ様が彷徨う実験室へ、レッツゴー!」

技術者「「「「……………おおおおおー!!!」」」」

738Mii:2021/10/30(土) 08:25:47 ID:/W4lGY0Y
〜実験室〜

やや荒っぽく打ち鳴らされるノック音。



技術者「「「「「「「「ごめんくださーい!!!!」」」」」」」」ドドドド・・・!!



ロゼッタ「わわっ!お、大勢でいらっしゃいませ!どうかなさいましたか?」

技術者「実は私たち、反重力作用のアイテム研究における先駆者として居ても立ってもいられなくなりまして!
   大したことはできない技術者揃いではありますが、お困りの様子のロゼッタ様の手助けになればと、駆けつけた次第であります!
   少しでも気持ちを楽にして新年を迎えて頂きたいので!」

ロゼッタ「まあ、まあ!それは大助かりですっ!大したことはできないだなんてとんでもない!!
    まさしくグッドタイミング、意見を伺いたかったところなんですよ!
    はい、どうぞこちらの椅子にお座りください!」パアァ



――――技術者たちは思った。我々が来たのは無駄ではなかったと。



技術者「そうでしょうそうでしょう、さすがのロゼッタ様も研究開発方針を決めかねていたことでしょう!
   敵は超難題、100年に1度ともいえる世紀の大仕事ですから!

   資料は一応お渡ししておりましたが、やはり直接打ち合わせをするのが一番――」

739Mii:2021/10/30(土) 08:28:37 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「そう、それです!頂いた資料の内容の課題点を1個1個潰していってですね!
    必要に応じてどんどん改変、改良もしていってですね!

    



    この1週間であれこれ挑戦して試行錯誤した結果、とりあえず。
    反重力作用効率 10% の『1次ペンキ』が10Lばかり完成したんですが
    使用感を確かめて頂けないでしょ――――――――」



技術者「「「「「「「「お邪魔しましたー!!!!!!!!!」」」」」」」」バタンッ!!!

技術者たちは 逃げ出した!▼





ヤッパリ アドバイスナンテ イラナイジャネーカ、リーダー!キテソンシタ!
テンサイハ ボンジンノドリョクナンテ アッサリ ダシヌイテイクンダ・・・・
エエイ、サケダ!サケモッテコイ!ノマナキャ ヤッテラレネェ!





ロゼッタ「…………え?ええ?」ズルッ

740Mii:2021/10/30(土) 11:55:22 ID:/W4lGY0Y
チコ「体重計に塗ってから乗るとー!あら不思議!
  ボクたちの体重も、ママの体重も、10%軽くなるー!!」

チコ「だから何だと言われると…なんだろー」

ロゼッタ「痩せた気になれてちょっといい気分ー!」



ロゼッタ「…………………………………………」



ロゼッタ「そ、それ元の場所に隠しておきなさい!気の迷いの暴挙だからっ!
    見られてないわよね!?ちゃんと隠せてたわよね!?
    …体重計をこんなところに持ち出したママもママだけど!」

チコ「まっかせなさーい!」フヨフヨ

チコ「気にしなくてもいいのに、体重なんか」フヨフヨ

ロゼッタ「んもう。…………第一段階まではクリアしたことにしておきましょうか。
    そうですね、新年もなんとか心置きなく迎えられそうですね」



年末…………午後の時間を軽く使って、実験室の掃除でもやっておきますか。
あとは街角で買い物でもしながら、つかの間の休息を楽しみましょう。
最近どうにもおろそかになりがちな身だしなみを整え終えたら、デイジー姫に声を掛けてみましょうか。

741Mii:2021/10/30(土) 12:00:25 ID:/W4lGY0Y
結局、掃除を済ませた後は運よくデイジー姫と都合が付き、
いつもどおりと言いますか、あれこれ見て、食べて、年越しイベントに参加して。
デイジー姫はアルコールまで少し飲んでいましたが、私は遠慮しておきましょう、か。

もうすぐ日付を跨ぐというのに、花火が賑やかに、人々の心を潤します。
カウントダウンを心待ちにしている人たちで、イベント会場は大賑わい。
…というか、クリスマスの段階で薄々と感じてはいましたが。
タブー戦からの復興、恐ろしく早いです…。



ルイージ「兄さんもピーチもいないし、クッパに任せるのもなんだしってことで、
    どういうわけが僕が巡回パトロールやってるよ、はあ…」

デイジー「お勤めご苦労様―!まあ、そんなに問題起こすような人もいないでしょ!
    ほれほれ、配られてたお酒の余りを進ぜよう」

ルイージ「とりあえず、目の前に問題を起こしそうな人が1人いるんだけどね…」

デイジー「どこどこ?」



テンションが低いルイージとも合流しました。
マリオとピーチ姫がバカンスで不在なこともあって、抜擢されたということで。
責任重大ですね、頑張ってください。ささやかながら回復魔法を掛けておきました。
効いてきたのか、ちょっと笑顔になってくれました。

…ところが、どうしたことでしょう。不可解です。
私を見るなり、一転して本当に元気になって、ニヤケ笑いを浮かべ出したのですから。

742Mii:2021/10/30(土) 12:03:12 ID:/W4lGY0Y
ルイージ「ところで、ロゼッタ!ちょうどいいところに!
    というか、あやうく伝えそびれるところだったよ!ほんと危なかった!

    最近ためてばっかりのストレスを発散するための、
    ナイスなイベントを企画したんだけど!」

デイジー「おおっ!例の件か!」

ロゼッタ「例の件?」

デイジー「私も内容までは知らないけど!憔悴したロゼッタを気分転換させる策!」



あらま。そこまで気を遣ってもらっていたとは、かたじけない。



ルイージ「元旦から、さっそくキノコ城前に集合してくれるかな!詳しいことはその手紙に書いてあるから!」

そのままニマニマと笑いながら、手紙を差し出してきました。…手紙?



ロゼッタ「はあ…読ませて頂きます――――」

特に拒否することもなく、すなおに受け取ってみますが。
あ、デイジー姫も同じように受け取っていますね。興味津々なご様子。
それにしても、元旦からとは……。

743Mii:2021/10/30(土) 12:05:51 ID:/W4lGY0Y



ロゼッタ「…………元旦、から?」ピタッ

ルイージ「うん!」





ちょっと、日付を確認してみます。
…あ、つい先ほど1月1日になりました。ハッピーニューイヤー。ぱちぱちぱち。



ロゼッタ「あと数時間で何かイベントが始まる、と?」

ルイージ「そうだよ!正確には午前8時頃にまずは集まってもらうけど!
    準備が間に合ってよかった!観客も無事に動員できそうだ!」フフン

ロゼッタ「…………かん、きゃく?」

デイジー「…………」



デイジー「話が急すぎるわアホンダラァ――――!!?」ドゴォ

ルイージ「」チーン

744Mii:2021/10/30(土) 12:15:11 ID:/W4lGY0Y
ロゼッタ「よ、よ、用意とか何にもしていないのですがっ!!」

こういった観客を呼び寄せる催し事って、常識的には
もっともっと前から関係者には内容を伝えられるんじゃないでしょうか。

ルイージ「…と、とくに用意はいらないです。
    早く寝て、起きて、集まってくれさえすればいいです。
    あとはこっちでお膳立てしますです、はい」ボロッ

デイジー「ったく、無責任な仕切り方をしてくれるんだから…
    どうなっても知らないよ、ルイージが全責任負ってね。
    …とにかく、明日の朝に城の前に集まればいいんだね?

    …ってか、観客まで集めるってことは私たちへの情報統制までやってたんかい。
    全くイベントとやらに気付かなかったよ。努力の方向音痴とはこのことだね」

ルイージ「え?別にそこまで隠そうとはしてなかったけど…?正直、ある程度ばれているものとばかり…」

デイジー「企画担当の影が薄いとイベントにも伝染するのか」

ルイージ「」グサッ



いったい、何のイベントでしょうか?しっかり手紙の内容を読んでおかないと。
明日が…いえ、日付的に今日が非常に心配です。



とりあえず、一にも二にも、早く寝て備えましょう。

745Mii:2021/10/30(土) 12:19:16 ID:/W4lGY0Y
〜1月1日 AM 7:30 キノコ城前〜

ワルイージ「おうおう、お揃いで。お前らもルイージに呼ばれたクチか?」

ロゼッタ「ワルイージではないですか!お久しぶりです!」

デイジー「妙な組み合わせだなあ…いや、違うか。
    今回のイベントとしては、むしろ… ベストメンバー か。憎いことをするなあ」



とりあえず軽く睡眠をとって、言われた通りに集まってみれば。
すでにスタンバイ状態の人が。そう、ワルイージでした。
彼も、ルイージから手紙を送られて、面倒だけどやってきたそうです。



ワルイージ「イベント事に参加できるってだけでもありがたいことだからな」

デイジー「切実感がひしひしと伝わってくるね。私も身に染みてわかってるよ…」

ロゼッタ「なるほど、私にもよくわかります…」





2人「「嘘つけ」」

ロゼッタ「なんでですか!?」ガーン!

746Mii:2021/10/30(土) 12:21:54 ID:/W4lGY0Y
あ、駄弁っているうちにルイージも現れました。



ルイージ「よーし!皆、集まってるね!
    不肖ながら、今日だけは僕が リーダー を務めさせてもらうよ!
    困ったことがあったらなんなりと聞いてね!」

ワルイージ「ええええええ」

デイジー「ええええええ」

ロゼッタ「きょ、今日だけと言わずいつでもどうぞ!」

ルイージ「ロゼッタの優しさが眩しい」



――――さて、さっそく会場に向かいましょう…!





ルイージ「会場に向かいたくてうずうずするのも分かるけど、まずは初詣に行こう!」



――――違ったようです。

747Mii:2021/10/30(土) 12:25:41 ID:/W4lGY0Y
〜神社〜



デイジー「勝利祈願?また、大層な」

ワルイージ「とにかく勝利の為に、藁でも縋りたい気持ちなのは察するけどよ」

ルイージ「進行役なのに酷い言われよう!」

ロゼッタ「お賽銭箱にコインを投げ入れて、今年1年が良い年であるよう願うと共に
    願いごとや目標を誓えばいいんですよね」



人払いでも、されているのでしょうか。他の参拝客が、不自然なほど見当たりません。



デイジー「くっ!こんな場所に来るんなら浴衣を着て来たらよかった!」

ルイージ「いや、着物ならともかく浴衣は駄目でしょ。なんで浴衣?」

デイジー「なんかピンときた」



鳥居をくぐって進んで行って、お賽銭を入れて、鈴を鳴らして。
…スーパーベルが取り付けられている気がしますが気のせいです。絶対に気のせいです。

748Mii:2021/10/30(土) 12:28:05 ID:/W4lGY0Y
ぱちりと両手を合わせて、心の中でお願いごと。
横目でちらりと伺えば…皆さん、真剣な顔つきです。私も、ええっと。





ルイージ(ルイージの年が末永く続きますように)



ワルイージ(せめてマリオカートで大活躍できますように)



デイジー(ピーチは一応大丈夫とは言ってくれたけれど…
    次回スマブラにしっかり参加できますように)



ロゼッタ(3Dワールドに新要素とか追加されちゃったりして、いつかまた脚光を浴びますように…
     ハッ!?変な電波が飛んできました!?)





いよいよ本当に、会場に向かうことになりそうです。

749Mii:2021/10/30(土) 12:31:01 ID:/W4lGY0Y
〜ミニゲーム会場〜

キノピオ「司会進行をさせていただきますキノピオです!」

キノピコ「同じく、司会進行役のキノピコでーす!」



ワー!ワー!



――――何度かイベントを経験する中で、流石に怖気づくことはなくなりましたが。
――――大勢の観客に恥ずかしいところを見られやしないかとヒヤヒヤです。



キノピオ「それではっ!これより!

    『マリオパーティ100 ミニゲームコレクション大会』を開催いたします!

    これまで開催してきたマリオパーティ大会に収められてきたミニゲームを、
    ドドンと100種類もピックアップ!有効活用ですね!

    懐かしい、あのミニゲーム!楽しかった、そのミニゲーム!
    さまざまなミニゲームが、再び皆さんの目の前に現れますよ!
    本日は存分にお楽しみください!」

ウオオオオオオオオ!!!

750Mii:2021/10/30(土) 12:39:34 ID:/W4lGY0Y
観客「俺、初代マリオパーティの第1回大会から観戦してるもんね!」

観客「すっげー!暇じ…熱心なんだなー!この迫力と駆け引き、たまんないよな!」

観客「今回はボードを動き回ることはせず、ひたすらミニゲームで争うんだってよ!
  なになに…ほほう、午前の部がチュートリアル、午後の部が本戦って感じか…」

観客「なにそれ、どういうことなの?」



観客「ええっと、今回はメンバーが固定されているんだって。



   初代から皆勤賞、ベテランのルイージさん。
   
   それに立ち向かうのが、第2回以降の大会に向けてモニターも兼ねた
   デイジーさん、ワルイージさん、そしてロゼッタさん。



   慣れている人と慣れていない人を集めて、
   観客にはギャップを楽しんでもらおうっていうコンセプトらしいぞ、パンフレットによると」

観客「それって、ルイージさんが超有利ってこと?」

観客「いや、そこはしっかりと配慮されているらしくて――――」

751Mii:2021/10/30(土) 12:42:27 ID:/W4lGY0Y
〜生中継、ミニゲームアイランド〜



キノピオ「ミニゲームがいっぱいの島、『ミニゲームアイランド』へようこそ!
     ミニゲームのウデだめしをしながらどんどん進んでいきましょう!

     それでは、さっそくスタートです!
     まずは、ルイージさんの待つ本戦会場をめざして進みましょう!」



ロゼッタ「…本戦会場?」

ワルイージ「一体どういうこった?そこまで詳しいことは手紙にも書いてなかったぞ?」

デイジー「ありゃ?そういや、ルイージがいない?」キョロキョロ

キノピオ「はい。ルイージさんは、皆さんに比べてミニゲームの経験値が高いですよね。
    なにせ、初代マリパから参戦してますから。

    このままぶっつけ本番だと慣れ不慣れの差が思いっきり効いて、ルイージさんの圧勝になってしまいます。
    そこで、午前の部では…このミニゲームアイランドで幾ばくか鍛えてもらうという流れです。
    ルイージさんは実況解説のゲストとして本戦会場でひたすら頑張ります。

    このミニゲームアイランド攻略中は、特に順位付けや得点勝負の要素はありません。
    御三方でミニゲームに慣れ親しんで行ってください!

    そして、いよいよ午後の部で、満を持してルイージさんを加えた4人で本戦を行います!」

752Mii:2021/10/30(土) 12:47:06 ID:/W4lGY0Y
デイジー「…とは言っても、しょせん1回ずつこなすだけでしょ?
    やっぱりルイージとの経験の差は如何ともしがたいんじゃないのかな」

キノピオ「もちろん分かっていますから、特別ルールを適用し…今日午後の本戦は。

    『3人の1位獲得数合計』と『ルイージさんの1位獲得数』で勝敗を決めます。

    ルイージさんもそれで大丈夫大丈夫、と高を括っていましたよ」

デイジー「ちょっ!?」

ワルイージ「なあっ!?そいつは流石にハンデ貰い過ぎだろ!ルイージの奴、舐めてんのか!気に食わねえ!」

キノピオ「ちなみに、会場で販売されている公営賭博のベットとしては
    ルイージさん側にちょっと分がある…勝つと見込まれているみたいですね」

デイジー「むっきー!!よしワルイージ!カメラに向かってルイージに宣戦布告だ!
    ふんぞり返って調子に乗って、あとで泣き面見せるのはどこのどいつになるだろうな、って!」

ロゼッタ(…『ハンデ貰えるのなら貰っておきましょう』と呑気に言えない雰囲気です)



色めき立つデイジー姫とワルイージをまあまあと宥めながら、
午前の部では…ミニゲームアイランド、というチュートリアルをこなしていくことになりました。
…わわっ!こちらにも結構観衆が集まってますっ!?て、テレビ中継まであるんでしたっけ!?

最終的な勝敗も大事ではありますが、なによりも…みっともない結果をお見せしませんように!

753Mii:2021/10/30(土) 12:50:58 ID:/W4lGY0Y
〜まきわりNo.1【マリオパーティ9】〜



ヨッシー「ミニゲームの対戦メンバーでーす!」

ワリオ「給料くれるんならなんだってやるぜー!」

ヨッシー「じゃあまずは私から――――」



ワルイージ「なるほど、このミニゲームアイランドじゃ…
       ヨッシーとワリオ、2人のうちどっちかが、毎度4人目として入ってくれるんだな」

デイジー「マリオとピーチがバカンス中、ルイージはシードだから仕方ないね。
    よーし、さっそくやっていくよ!やったことないのはロゼッタだけか。頑張って!
    いちはやく薪(まき)を3本割ったら勝ちだからね!

    ボム兵に斧を振り下ろすと1回休み!
    斧をかざして防御していなかった他の人も、爆風受けて休みになるから気をつけて!」

ロゼッタ「わ、わかりました!」



デイジー姫に急かされて。4人の中央にある切り株にむけて、斧をしっかり構えます!
観客の皆さんがたも、しぃんと静まり返り、固唾を飲んで見守ります!

754Mii:2021/10/30(土) 12:53:06 ID:/W4lGY0Y
――――ハイヨッ!

薪が 置かれた!▼



ロゼッタ「薪だから振り下ろしてだいじょ――――」スッ



ワルイージ「どりゃああああああ!!!」スパコーン!! +1pt

デイジー「負けるかああああああ!…って言ったそばから負けたああああぁぁ!」スカッ!!

ヨッシー「私は『ふつう』に頑張ります。慣れてもらわないと意味がないですから。
    …でも、あんまり気遣う意味がないですか?」

ロゼッタ「」



振り上げた状態で固まって、何もできませんでした。
…ああ!そういう早い者勝ちミニゲームなんですね!!理解が遅くてすいません!





はい、気を取り直して、次!

755Mii:2021/10/30(土) 12:56:07 ID:/W4lGY0Y
――――ソイヤッ!

薪が 置かれた!▼



ロゼッタ「(腕に小さなダッシュリングを嵌めて)高速で振り下ろすッ!!」スパコーン!!

デイジー「おおおっ!!」



審判「魔法を使用してミニゲームを有利に進めるのはルール違反です。
  ロゼッタ選手、得点無効のうえで1回休み」

ロゼッタ「」

ワルイージ「ま、当然だな!ズルはいけないぜぇ?」



――――ホイッ!

薪が 置かれた!▼



デイジー「今度はもろたでぇ!!」スパコーン!!

ワルイージ「ちぃっ!」

756Mii:2021/10/30(土) 13:00:14 ID:/W4lGY0Y
ヨッシー「だーかーらー。ロゼッタさんに慣れさせましょうってばー」

デイジー「手を抜くのは好きじゃない!」

ワルイージ「同じく!」



――――アラヨットッ!

ボム兵が 置かれた!▼



ヨッシー(しょうがないなぁ、ボム兵の爆風の防ぎ方を学んでもらうためにも
    あえて振り下ろしてあげますか。親切心親切心っと)スゥッ

デイジー(血迷ったか、ヨッシー!)

ワルイージ(男だな、ヨッシー!…男だっけ、ヨッシー?)





ロゼッタ(……………………!!)

757Mii:2021/10/30(土) 13:02:24 ID:/W4lGY0Y



デイジー「…………!」

斧を前に据えて ガード!▼



ワルイージ「…………!」

斧を前に据えて ガード!▼



ロゼッタ「…………こ、こうですか!」



斧を前に据えて ガード!
しかし 体に対して 斧が小さすぎて すり抜けた爆風が 普通に当たった!▼



ヨッシー「ぶわぁあー!」チュドーン!

ロゼッタ「ぶふぅっ!?」バタッ!

デイジー「審判さん!審判さん!ロゼッタの斧が不良品っ!取り替えてあげて!」

758Mii:2021/10/30(土) 13:04:19 ID:/W4lGY0Y
〜カウント1・2・3【マリオパーティ2】〜



ウロウロ、キョロキョロ。ゴソゴソ、ガサガサ。



ボム兵「動き回るぜー!頃合い見て爆発してくぜー!」



デイジー「うっわ、嫌っちゅう程に大量のボム兵だ…!
    これは、私やワルイージもやったことないや。
    似たようなミニゲームを探せば割とありそうではあるけど」

ワルイージ「ほうほう…最後に残ったボム兵の数を数えるのね。りょーかい」

ワリオ「給料出てるからな、まあ程々にいい成績出してやるぜ」









ロゼッタ(…………えっと、今が34体で…)

759Mii:2021/10/30(土) 13:09:08 ID:/W4lGY0Y
デイジー(ひい、ふう、みい……おいこら、重なって動くんじゃない!)

ワルイージ(こういうのは落ち着いて、グループを考えて各個カウントするといいんだよな。
     あんまり発生しないグループ間の行き来は視界の端で捉えて処理する。
     これぞ頭脳プレイってやつ?)

ワリオ(こんなもん、端っこから数えて、あとは雰囲気でプラスかマイナスに振れば大体何とかなるだろ)



ロゼッタ(…………………………………………………あれ?



    舞台の外から不定期に乱入してきたりするわけじゃない?
    特に面白いことも起きず、34体ですよね、うん。何かの引っ掛け?
    …あ、1体爆発して33体になりました。

    というより。数がどう変化しようと、終了1秒前に舞台を眺めれば一瞬で答えが出ますね。





    …もしかして今は寝てていいんでしょうか。いや、起きておきますけど)

760Mii:2021/10/30(土) 13:11:18 ID:/W4lGY0Y
〜ボタンでクライミング【マリオパーティ9】〜



ロゼッタ「」ポツーン



デイジー「どうしたのロゼッタ!早く登らないと!」ドドド

ワルイージ「カベのボタンをすばやく押して、てっぺんを目指せ!」ドドド

ヨッシー「棒立ちになって一体どうしたというのですか?さあ早く!
    A、B、A、B、X、Y、X、Y、上、下、右、左、リズムよく!」ドドド

ロゼッタ「何故か腕が動かないんですけど!?皆さんには何が見えているのですか!?
    AとかBって一体なんのことですか!?」

ヨッシー「やっていればそのうちわかります!
    登りたい気持ちが強ければ、おのずとナニカが思い浮かんでくるはず!
    その通りに心の中で叫びましょう!」

ロゼッタ「え、えええ!?」

ロゼッタ「…の、登る!登りますっ!なんでもいいのでこの崖を登りますっ!!
    意地でも登りますからねえっ!!」ガシッ!



案外 なんとかなった!▼

761Mii:2021/10/30(土) 13:13:58 ID:/W4lGY0Y
〜チョロプーのリベンジ【マリオパーティ7】〜

ロゼッタ「地上のチョロプーに叩かれないように、それでいてできるだけ
    地上に顔を出すと勝ち…体が砂だらけになりそうで億劫なのですが」

デイジー「そう言いつつも芸人さながら潜っていこうとするロゼッタを私は評価したい」

ロゼッタ「その言い方はやめてください。
    …これ、同じ穴から顔を出そうとする人が2人以上いたらどうなりますか?」

ワルイージ「そりゃ、少しでも後から来た奴は出られなくて真下で待ちぼうけだぞ?」

ロゼッタ「……………………真下からドレスの中を覗かれる!?嫌らしい!」サササッ!

ワルイージ「覗かねぇし覗けねぇよ!任天堂の不思議パワー働いてるよ!
     そんな心配が必要だったらマリパのミニゲームの半分は出来なくならぁ!」

ワリオ「そうだぞロゼッタ!言い掛かりもいい加減にしろよ!」

ロゼッタ「…す、すいません」



ワリオ「ったく――――さてと。金の臭いがするから一応カメラ用意しとくか」

ロゼッタ「ちょっとした冗談だと訂正しますよね?ね?今ならば許します」

デイジー「ミニゲームの話をしよーよ!」

762Mii:2021/10/30(土) 13:20:20 ID:/W4lGY0Y
〜まめのきジャンプ【マリオパーティ5】〜

デイジー「でりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!!登れ登れ登れー!!
     馬鹿と煙とデイジーちゃんは高い所が好きなんだー!」ゴオオオオ

ワルイージ「お前は馬鹿の範疇でいいだろ」ゴオオオオ

デイジー「このミニゲーム終わったら張っ倒す」ゴオオオオオ

ヨッシー「ひたすらジャンプして高く、高くっ!ちょっとでも高い所まで!」

ワルイージ「それにしても、ジャンプするほど一緒に伸びていくこの豆の木は一体何なんだろう」

ロゼッタ「…………これ、ミニゲームの特性的にどんなに頑張っても
    ジャンプ力自慢のルイージに勝てなくないですか…?まあ、いいですけど…
    ひょい、ひょい、ひょいっと…」






ロゼッタ「そして何より問題なのが、観客から様子が見えません!!」

ジュゲム「高い所の撮影もお任せをば!!」シャキーン

ロゼッタ「あ、はい」

デイジー「高さ1000メートル踏破ぁー!!」

763Mii:2021/10/30(土) 13:22:55 ID:/W4lGY0Y
〜ぜんまいヘイホーレース【マリオパーティ2】〜

デイジー「なるほど、ただひたすらにぜんまいを巻けばいいのか。
    巻き過ぎて壊れちゃったりしない?」



ワルイージ「壊れるらしいぜ、風の噂によれば」



デイジー「…え、壊れるの?」

ワルイージ「いや、ぜんまい仕掛けのヘイホー側じゃなくて。
     力をこめ過ぎた手のひらが、ボッロボロに壊れるらしい」

ロゼッタ「なんですかそれ、怖いですね…やめておきましょうか?」

ワルイージ「怖気づくのもカッコ悪いから、やるけどよ。所詮は唯の噂だ。
     おおうロゼッタちゃん、まさかビビったか?」

ロゼッタ「…び、ビビってなんかいません!」グルグルグルグル




ワリオ「……………………噂だったら良かったんだけどな。
   良い時代になったもんだなあ」トオイメ

デイジー「顔に似合わず達観されている方がこちらに1人」

764Mii:2021/10/30(土) 13:25:14 ID:/W4lGY0Y
〜クリボーボウリング【マリオパーティ9】〜



クリボー「整列して道幅方向に往復してやるから、倒したいんなら
    投げる向きを合わせてできるだけたくさん倒しやがれー!」

クリボー「「「「「「「「うおおおおおおお―――――――――っ!!」」」」」」」」ゾロゾロ



ロゼッタ「なるほど、投げる角度と位置を微調整して微調整して…
    クリボーたちの移動速度と、投げる甲羅の左右方向のベクトルの大きさを
    できるだけ揃えれば、クリボーの軌道に追随できるという寸法ですね。

    摩擦だとか壁との反発係数だとかは未知数ですが…えいっ!!」



クリボー「「「「「「うわあああああ――――――――っ!?」」」」」」ポコーン



ロゼッタ「…よしっ!先陣切ったので不安でしたが、うまくいきました!
    16体にヒット!8割倒すことができましたよ!どうですっ!!」

765Mii:2021/10/30(土) 13:26:39 ID:/W4lGY0Y
デイジー「要するに、深く考えずに角度なんて差し置いて、移動時間を与えないくらい
    ものすっごい剛速球で投げればいいんだよねっ!!知ってる知ってる!!」ゴオオオオオオッ!!! 18タイ!!

ワルイージ「変に理論計算とかやってると環境に左右されるからな!」ゴオオオオオオッ!!! 19タイ!!

ヨッシー「さながら、2次元の1直線に最初から身動き取れず1列に並んでいるがごとく!
    …ハッ!?わたしとしたことがつい本気で」ゴオオオオオオッ!!! ストライーク!!





クリボー「「「「「「「「ぎゃ――――――――っ!?」」」」」」」」ポコポコポコーン





ロゼッタ「競技の趣旨と駆け引きを無視しすぎていませんか!?
    指摘されてみると確かにそうですけれどもっ!?」

766以下、名無しが深夜にお送りします:2022/03/01(火) 04:25:16 ID:J.banIVQ
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/

767以下、名無しが深夜にお送りします:2023/03/26(日) 12:22:27 ID:o5kdvGlI
幕張メッセ・47ストリーマー
配信者ハイパーゲーム大会
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□タイムテーブル
▼マリオカート8DX▽PUBG▽VALORANT
(10:30〜放送開始)

ttps://www.openrec.tv/live/em8xge3dvr2


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