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少女「愛をください」
1
:
HAM
◆HAM.ElLAGo
:2020/04/29(水) 20:52:49 ID:nPAva3e2
オレの神様としての能力。
人間に「なにか」を与える。
その代わりに「なにか」を奪う。
与えたものと、同じ価値の対価をもらう。
その能力を使って、オレは人間に干渉すればいいらしい。
……別に干渉しなくてもいいらしい。
ヒマだし、人間はわりと面白いし、オレは度々人間に接触しては遊んでいた。
89
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/04(月) 23:07:21 ID:.5maPa62
また明日です ノシ
90
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 15:08:03 ID:qK31LCVQ
待ってます
91
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 20:31:47 ID:1JRrYNyc
そのまま空を飛んで行ってもよかったが、姐さんが(また呼んでしまった)ビックリするといけないので、普通に地面に着地した。
振り返らず、人通りの多いほうへ行こうとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。
「おう兄ちゃん、お行儀の悪いこって」
遥かにオレよりもお行儀の悪そうな二人組が、オレを捕まえていた。
「うちのシマで好き勝手遊んでくれたみたいじゃねえか」
やばいのに見つかってしまった。ボスに迷惑がかからなかったらいいんだが……
「舐めてると痛い目……」
ふと男どもの言葉が止まる。
オレは二人の顔を見つめる。
どうした? 顔になんかついてるのか?
「ミ、Mr. GOD……!?」
賭けボクシングの客だった。
92
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 20:38:13 ID:1JRrYNyc
なんとなく見逃してもらった。
オレは敵マフィアのシマで遊んだという負い目がある。
あいつらはオレの方に賭けて儲けたという負い目がある。
痛み分けだ。
あいつらにしたって、敵マフィアに賭けて勝って喜んでるなんて、格好がつかないだろうから。
それから一人で、ぶらぶらアジトに戻る方へ歩いた。
変な一日だった。
でも少しは気分が晴れた気がする。
人間らしくなっている気がする。
それがいいのか悪いのかわからないけど、それでもお嬢にとっては人間らしいオレの方がいいはずだ。
93
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 20:42:45 ID:1JRrYNyc
娼館に払った分を引いても、まだずいぶん残っている。
この残った金はお嬢にあげよう。
もしくは、なにか服とか靴とかを買ってプレゼントしてもいい。
そして、またたまにボクシングで稼いで、そんな日々を過ごそう。
お嬢の犬として、人間らしく仕えよう(変な言葉だ)。
そう決意していると、聞き覚えのある声が横から飛んできた。
「ドッグ、こんなところまで来てなにしてんだ!!」
言うまでもなく、お嬢の声だった。
94
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 20:47:59 ID:1JRrYNyc
怒られた。
ちょっとアジトを離れすぎたようだ。
確かにあのお行儀の悪い二人組が賭けボクシングにも来ていたくらいだから、この辺一帯敵マフィアの縄張りなんだろう。
「勝手にどっか行きやがって……」
少し涙声になっていた。
お嬢はいつからオレのことを探していたのだろう。
ただそれを聞くと無粋な気がして、オレはなにも尋ねずにこう言った。
「すみません、お嬢」
「これからはそばを離れません」
お嬢はなにも返さず、オレの背中をばしんと叩いた。
95
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 20:53:59 ID:1JRrYNyc
帰り道、喫茶店に寄った。
お嬢のお気に入りの店だそうだ。
カランコロンと小気味いい音が鳴る。
「メロンソーダ!!」
お嬢は席に着く前に注文を済ませた。
いつも飲んでいるのだろう。店員もいつものことだというように、特に反応しなかった。
「あんたは?」
「じゃ、同じので」
メロンソーダってのは飲んだことないな。
そういえばメロン自体も食べたことがない。
96
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 21:02:11 ID:1JRrYNyc
「うっま! なにこれうっま!!」
「大げさ」
初めて飲んだメロンソーダは極上の味がした。
今まで飲まなかったことを激しく後悔した。
「お嬢、いつもこんなうまいもの飲んでたのかよ!!」
「大げさ」
店員もあきれている。
でもオレは感動してしまった。
この味に。そして、これを作り出した人間に。
97
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 21:16:34 ID:1JRrYNyc
また来よう、とオレは心に決めた。
そしてまたメロンソーダを飲もう。
世の中にはまだまだオレの知らない凄いものがたくさんある。
人間の底はまだまだ奥深いものだと知った。
「また絶対飲みに来よう」
「いつでも来れるわよ」
「お嬢作れるか?」
「作れるわけないでしょ」
自宅でメロンソーダを飲む習慣はないらしい。
確かにあの毒々しい緑色を、アジトで見た覚えはない。
だけどこの店に来れば、いつでも飲める。
その安心感で、オレは満足だった。
98
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 21:26:09 ID:1JRrYNyc
「守ってくれて、ありがとう」
お嬢がうつむきながら言う。
「言ってなかったなと思って、お礼」
「あの時はびっくりしちゃったけど……わたしを守ってくれたんだもんね」
「ありがとう、ね」
胸に暖かいものが溢れた。
「あの時ドッグが動いてくれなかったら、わたしは撃たれて死んでた」
「拾った命、大事に使うから」
人間って、面白い。
オレはもっともっと、人間をそばで見たいと思った。
特にこの小さな殺し屋を、そばで見守り続けたいと思った。
「これからもお嬢の命は、オレが守るから」
偽りないオレの気持ちだった。
99
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 21:33:07 ID:1JRrYNyc
人間臭い神様って、いいですよね ノシ
100
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/05(火) 23:39:00 ID:DN.T6zLc
雰囲気がよい
101
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 01:03:16 ID:aKHop42A
まだつづくよな?
102
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 20:34:28 ID:K5NmSYD6
……
「お嬢、殺さず動けなくする撃ち方が上手くなったな」
「そお?」
地べたに倒れる敵マフィアども。
誰の息の根も止めていない。
それなのに誰も動けない。
「ひざ、ひじの関節をちゃんと狙えば、誰でもできるわよ」
「誰でもはできないんじゃないか……さすがに」
あれからお嬢は、あんまり人を殺さなくなった。
103
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 20:43:42 ID:K5NmSYD6
慈愛の心を持ったという訳じゃないようだ。
だがオレが手加減できずに人を「壊して」しまった後、お嬢は明らかに命を奪うことを減らした。
ボスも暗殺をお嬢に指示することが減った。
その必要がなくなったのか?
多分オレという存在が、他のファミリーに知れ渡ったのだろう。
あのボスなら意図的に情報を流すくらいのことはするかもしれない。
最近、敵マフィアがオレを見てビビるようになった。
「金髪の悪魔」なんて呼ばれたこともある。
悪魔って。
当たらずとも遠からずではあるけれど。
104
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 20:57:46 ID:K5NmSYD6
「ドッグ、買い物に行くから付きあって」
「仕事は?」
「今日はもうないわ」
「じゃあ付きあおう」
ちょっと遠くの町に二人で出かけたりもした。
今では誰も、オレがお嬢について回ることを訝しまなかった。
オレはお嬢の飼い犬で、他の誰にも懐かない。
それが当たり前の認識になっていた。
「今日はなにを?」
「服が欲しいの、可愛い服が」
105
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:05:59 ID:K5NmSYD6
「これは?」
「似合う」
「これは?」
「似合う」
「これは?」
「似合う」
「ちょっとドッグ、どれも同じ感想じゃない!」
「お嬢はどれでも似合うよ」
「もうちょっと真面目に見てよ!」
「真面目に見て、真面目に言ってる」
106
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:17:31 ID:K5NmSYD6
はたからは、きょうだいに見えるだろうか。
オレたちのことを知らない町では、お嬢は本当に子どもみたいな顔をした。
普段、重そうな銃を振り回して、敵対するマフィアを蹴散らしているとは思えない。
「んー、これと、これと、どっちにしよっかなあ」
「どっちも買っちゃえ」
「高いのよ……」
「んじゃあ片方、オレが買ってあげるから」
「え!? あんたそんなお金持ってるの!?」
「おう」
107
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:25:51 ID:K5NmSYD6
お嬢は「なんか癪だわ……」とつぶやきながらも、オレからのプレゼントを受け取ってくれた。
「神だからお金を偽造できるとかじゃないでしょうね」
「違う違う、ちゃんと労働の対価として稼いだ金だよ」
「ていうか、神だったらなんでも手から作り出せたりするんじゃないの?」
「そういう神もいるけど、オレは違うんだ」
「ふうん……不便なのね」
オレは特に不便とは思っていないが、人間からしたら神は「全知全能」ってイメージがあるのだろう。
今、神はそういう存在とは少し違う。
だが、それをお嬢に懇切丁寧に説明してやろうとは思わない。
どうでもいいことだ。
108
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:32:24 ID:K5NmSYD6
「よっし、ドーナツが食べられるお店を探すわよ!!」
「ドーナツ?」
「たぶんメロンソーダも飲めるわよ!!」
「え、マジで!! 行く行く!!」
メロンソーダが飲めるのなら、行くしかない。
ドーナツとやらは知識としてはなんとなく知っているが、食べたことはない。
まあお嬢がテンションを上げているのだから、美味いのだろう。
そういう新しい発見があるというのも、お嬢と過ごしていて楽しいことのひとつだった。
多分オレはお嬢の好きなものを一緒に見て、一緒に食べて、一緒に感じて、暮らしていくのだろう。
109
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:40:51 ID:K5NmSYD6
「なあお嬢、なにか欲しい力はないのか?」
ドーナツを食べながら、オレはお嬢に尋ねた。
結局オレはお嬢の願いを叶えていない。
必ず叶えないといけないというものでもないが、なんだかこのままでは収まりが悪い。
「んー、今の生活に満足しているし、別に」
「対価が怖いのか?」
「そういうんじゃないけど」
お嬢は紅茶をくるくると混ぜながら、言葉を濁した。
無理に叶えさせるつもりはないが、本当にいいのだろうか。
110
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 21:56:48 ID:K5NmSYD6
「わたしの命は、あんたが守ってくれるでしょ」
「ファミリーの脅威になるようなやつらを排除して、あの町でなんだかんだうまくやって」
「もうあんまり殺さなくてもいいよってなったら、それで幸せかなあ」
お嬢にとって殺し屋は天職だと思ったんだが。
「そんなわけないでしょ」
「必要とされているからそうしているだけで、ほんとは……」
その先は沈黙だった。
まあ、お嬢が望まないのなら、願いを叶えなくてもいいか。
111
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 22:11:20 ID:K5NmSYD6
本当は、なにをしたいのだろう。
聞こうと思えば聞けたが、やめておいた。
あんまりずけずけ聞いてくる飼い犬でも嫌だろう。
いい塩梅の距離感という奴も大切だ。
それからは願いの話を避けて、とりとめもないことばかり話した。
ファミリーの中で誰と誰が恋仲だとか。
料理が一番うまいやつが誰で、足が一番臭いのは誰か、とか。
本当に、どうでもいい話をして過ごした。
そんな休日も楽しかった。
そういえば、ドーナツという奴は、まあまあ美味かったな。
メロンソーダのついでに、これからもたまに食ってもいいかもな、と思える程度には。
112
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 22:17:04 ID:K5NmSYD6
明日で最後です
GW(?)中、お付き合いいただきありがとうございました ノシ
113
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/06(水) 23:44:57 ID:aKHop42A
恐怖も乙です!終わってしまうのか‥‥
114
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 21:18:48 ID:/ITmekEM
……
楽しい日々の終わりは唐突にやってくる。
人間には寿命があるし、事故や病気で死ぬこともある。
お嬢は殺し屋なんてことをしているくらいだから、そりゃあ死ぬのは早い方だろう。
それでもやはり、その日が来たことを、オレは信じられない思いだった。
人間の一生というのは、とても短いのだなということをオレは思い知った。
115
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 21:27:02 ID:/ITmekEM
少しのミスがあった。
相手の力量と執念を軽く見すぎていたこと。
オレがお嬢の盾になることで、今までそれなりにうまくやれていたからこそ、油断があったこと。
お嬢がオレに頼りっぱなしになるのを嫌がり、ちょっと突撃を早まったこと。
人間よりずっとずっと早く動けるオレでも、すでにお嬢の脇腹を貫いた弾丸に対してできることはなにもなかった。
時を戻すことも。
傷を癒すことも。
オレにはできなかった。
116
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 21:34:44 ID:/ITmekEM
お嬢の体を銃弾では死なない体質にすることはできたが、お嬢はそれを拒んだ。
「ふふっ、そうしたら、対価で化け物じみた体にされちゃうんでしょ、どうせ」
「いいのよ、わたしは人間のまま死ぬ方が」
そういうものだろうか。
オレは忠犬のように、お嬢の横たわった体にぴったりと寄り添っていた。
「あいつらは……?」
「殺しといた」
117
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 21:40:54 ID:/ITmekEM
あっけなくみんな逝った。
もうどうせそんなことをしても意味がないとも思ったが、それでもオレの手は止まらなかった。
この場で生き残っているのは、お嬢とオレだけだった。
「先に地獄で待ってると思うから、地獄でリベンジしてこい」
「ふふっ、嘘でも天国って言っておきなさいよ」
「お嬢を撃ったような奴らが天国に行けるわけねえだろ」
「わたしのことよ」
「殺し屋が天国に行けるわけねえだろ」
「ふふっ」
118
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 21:52:01 ID:/ITmekEM
なあ、お嬢。
本当に望むものはないのか。
足音のしない歩き方ができるようになったり。
透明人間になったり。
抜群のスピードを手に入れたり。
気配を消せたり。
銃弾をはじいたり。
空を飛べたり。
そんな突飛な能力を欲しいとは思わなかったのか。
今更だが、なぜお嬢がそんな力を欲しがらなかったのか、なぜ結局うやむやにして望みを言わなかったのか、オレにはわからなかった。
望みを言ってしまえば、オレがすぐにいなくなると思ったから?
そんなわけないか。
119
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:00:05 ID:/ITmekEM
「なあ、お嬢……」
「聞いて、ドッグ」
突然お嬢の声が力強く遮った。
腹から血を流して死にそうになっているとは思えない、力強い声。
「わたし、愛が欲しい」
「は?」
「愛よ、愛。愛をください」
120
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:08:43 ID:/ITmekEM
「それが願い?」
「そう、死に際に願うには、ロマンチックでしょう」
あいまいな願いだ。難しすぎる。
だがここで、「そんなあいまいな願いは叶えられない」と神様らしく不遜な態度で突っぱねることはしない。
オレは今、神ではなく単なるお嬢の飼い犬、ドッグなのだから。
「OKOK、お嬢は死後もボス並びにファミリーのみんなから愛され続け、その死は悼まれ続け、立派な墓が作られるだろう」
「ふふふ、いいわね」
121
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:21:41 ID:/ITmekEM
「葬式ではお嬢の亡骸にみんなが殺到し、棺に入れる花があふれ、蓋が閉まらなくなる」
「迷惑よねそれ」
「ボスは悲しみのあまり後追い自殺をし……」
「待って」
「ドッグことオレは墓の前でたびたび墓荒らしと戦い蹴散らし、骨になるまでその場を離れなかったとさ」
「無理がある」
誇張もしたが、お嬢が死後も人々から愛されるということは、可能な気がした。
もちろん人殺しもしているのだから、地獄行きは間違いないが、それでも彼女を大切に思う人たちが確かにいるのだ。
122
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:32:12 ID:/ITmekEM
「特別なお墓はいらないわよ」
「みんなと一緒の場所でいい」
「今まで死んでいったファミリーの墓に、わたしも入れてもらえれば」
あの敷地の端っこの寂しい墓地にお嬢が入るのだと思うと、少し残念な気がした。
しかしオレがお嬢を特別に思っていても、ファミリー全体から見れば有象無象の話なんだろう。
お嬢も、特別扱いよりも「みんなと同じように」を望んでいるようだった。
123
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:41:05 ID:/ITmekEM
「じゃあ、対価の話をしよう」
「うん……」
オレは望みを叶え、なにかを与える代わりになにかを奪う。
そこに例外はない。
「お嬢が死後も愛され愛を与えられる代わりに、お嬢から人の痛みを奪う」
「うん……うん?」
「つまり、痛覚を奪う」
「ん?」
「これ以後、痛みを感じずに死んでいく」
「……それはメリットでは?」
「知らん」
124
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 22:58:31 ID:/ITmekEM
オレはお嬢に手をかざし、痛みを奪った。
お嬢はなんだか不思議な顔をしていたけど、無視した。
銃に撃たれ、銃弾に倒れ、地に伏し、血を流し死んでいく際に、痛みがないというのは少しでも救いになるのではないだろうか。
それがオレなりの愛だった。
「おやすみ、お嬢」
「人間界、お嬢のおかげでちょっと楽しかったぜ」
お嬢はもう目を閉じている。
激痛があっただろうに、無理してオレと会話していたのだ。
それがふっとやわらいだら、そりゃあ緊張も解けるだろう。
オレはお嬢の髪の毛をなでながら、いつまでもお嬢の寝顔を見ていた。
125
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 23:05:28 ID:/ITmekEM
……
「ドッグ、もう行くのか」
立派とは言えないが、墓地に一つ墓石が増えた。
名前はオレが彫った。できるだけ立派に、格好よく掘った。
「ああ、ここにいたのは、お嬢を守るためだから」
オレはまた根無し草のように別の町へ行こうと思っている。
今度はどこの国にしようか。
メロンソーダが気軽に飲めるところがいい。
126
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 23:12:24 ID:/ITmekEM
「お前は不思議なやつだったな」
「あのころから、姿が変わらないように見える」
「お嬢、お嬢って、あいつの周りをついて回って、ずっと同じことをして」
「ほんとに老けないな」
ボスはずいぶん歳をとった。
髪の毛はもう真っ白だ。
自分の力では歩けない。いつも誰かに車いすを押させていた。
その姿は、愛嬌のあるタヌキにそっくりだった。
127
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 23:19:35 ID:/ITmekEM
一方オレは、神だし、歳なんかとらない。
もちろん老けたように見せかけることもできるが、気を抜いていた。
さぼっていた。
お嬢はそれに対してなにも言わなかったし、オレも気にしていなかった。
今までに比べれば、オレは同じ人間と長く関わりすぎたのかもしれない。
「オレの成長しない姿」を見られるのは、考えてみれば初めてのことだった。
「ボスこそ老け込むのが早いんだよ」
オレは笑って言ってやった。
128
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/07(木) 23:26:31 ID:/ITmekEM
「ここでの生活、楽しかったよ」
「ボスにも感謝している」
オレはお嬢の墓に別れを告げ、立ち上がる。
「じゃあ、もう会うこともないだろうが」
ボスも手を挙げて別れの挨拶をする。
「あいつを守ってやってくれて感謝している」
「俺の娘を長生きさせてやってくれて、ありがとう、ドッグ」
ふっと胸の奥に熱いものが広がった。
だがそんなことは気取られまいとして、オレは強がって言った。
「オレをドッグと呼んでいいのは、お嬢だけだ」
★おしまい★
129
:
HAM
◆HAM.ElLAGo
:2020/05/07(木) 23:29:45 ID:/ITmekEM
あっさり目でしたが、好きなようにかけました。
人間臭い神様、今回も書いていて楽しかったです。
∧__∧
( ・ω・) ありがとうございました
ハ∨/^ヽ またどこかで
ノ::[三ノ :.、
http://hamham278.blog76.fc2.com/
i)、_;|*く; ノ
|!: ::.".T~
ハ、___|
"""~""""""~"""~"""~"
130
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/08(金) 09:08:29 ID:CFtox8Y6
相変わらず素晴らしい物語を‥‥ありがとうございました!!
131
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/08(金) 09:09:00 ID:CFtox8Y6
乙です!
132
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/08(金) 12:26:39 ID:ytJ2Tbu6
お嬢は長生きできたのね…良かった!
おつです!
133
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/08(金) 21:59:35 ID:CFtox8Y6
>>132
あっそうなんすか?
134
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/09(土) 01:57:27 ID:.qxFTzIo
あっそういうことか!
135
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/09(土) 02:00:55 ID:.qxFTzIo
ん?やっぱなんか引っ掛かるかも‥‥‥
136
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/09(土) 08:44:28 ID:pqE4hbqA
「長生き」ってボスは言ってるけど、ボスよりは早く死んでるわけで、「殺し屋をやっているわりには長く生きた」くらいのことなのかな?
137
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/09(土) 19:52:37 ID:1UFet8EU
おつー、面白かった。また書いてくれ
138
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2020/05/14(木) 14:07:19 ID:HzxIU6yQ
>>136
そういうことね
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