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とこのうえのねこ【安価】

1以下、名無しが深夜にお送りします:2019/12/21(土) 23:12:09 ID:3ac0lzx6





クロが冷たくなっていた。





ある朝、いつも起きているはずの愛猫は、側に横たわったまま動かなくなっていた。
触れた手が冷える。
体毛の下は既に硬い。

そうして、2分間だけ亡骸に触れた自分はワイシャツのボタンを留める。
勝手にネクタイを締め、スーツを着ている。
カバンを持つと、その中のPCと図面に意識が飛ぶ。
昨日の打ち合わせの内容が頭に流入してくる。


弔うことすらできない自分の心は完全に擦り切れてしまった。

もう、ダメだ。

喪失感が絶望に変わる。


まだ陽も昇らない早朝の闇の中。
古く硬質な部屋の鍵を閉める音と、心の支えが折れる音は似ていた。

211以下、名無しが深夜にお送りします:2020/02/28(金) 00:21:24 ID:dq3cgo4k
9
おつおつ

212以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 21:53:25 ID:dSa8PcWY

9【就寝】


視界が閉じたり開いたり。

意識が明滅している。

「まず……い」

身体が持たない。

寝落ちは良くない。

床で寝ると身体が軋む。

転がるようにして布団へ。

感覚の遠い手で毛布を引っ張る。



「……ぁ」




ふわりと届いた休息の香りが、

以降の思考をシャットダウンした。

213以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 21:58:33 ID:dSa8PcWY

「ご主人、出たよ……あ」

「……うん。ご主人、お疲れさまでした」



パチッ。



「起こさないように……っと」



「あれ……ご主人? 大丈夫?」

「なに、これ……知らない人の、気持ち……?」

「や、やだ、くっつかないで……取れない。ご主人をいじめないで……!」

「ご主人は休まなくちゃ、休まなくちゃダメなのに……!」

214以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:07:26 ID:dSa8PcWY


……ルルルル

…ルルルルルル

トゥルルルルルル!!


ピッ!
「はい自分です。申し訳ございません」
「すぐ伺います。あれ?」
「仕事、あれ?夢?」

そういえば、こないだの摺動板に図訂依頼来てたな。やらなくちゃ。

無能だから。早くしないと後輩に追い付かれるし、もう追い抜かれてる。使えない。クズだ。

『あいつホント時間だけかかるよな』
『給料泥棒。帰れよマジ』
『業績もアレだし、ほいっと整理解雇されねーかな』

声が聞こえる。絶対言ってる。そう言われてる。

もう無理だ。死ぬか。心臓を握り潰そう。

…………………

215以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:15:37 ID:dSa8PcWY


……………………ッッッア゛ァ!!!!!??!?

ビクン!!!

…………
……


胸に激痛、血は……出てない。
ここは……布団? 時間は……見えにくい。
4時か。

なにも思い出せないけど……辛い……怖い。
何か夢を見ていた気がする……。

「……ごしゅじん」
「あ――」

クロを起こしてしまったみたいだ。
けど、それ以上に悲痛な顔で、潤んだ瞳で、抱きつかれている事が……申し訳ない。

「クロが、そばにいるよ……」

あたたかい。
あたたかいけど……ごめん、クロ。
心配かけてごめん。ごめんな。

「ごしゅじん……」

216以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:22:49 ID:dSa8PcWY

「護れなくて、ごめんなさい」
「分かってるのに、助けられなかった……」

クロが……謝ってる。悪いのはたぶん自分の方なのに。

「気にしないで」
「……っ」

胸にすがり付かれた。

「……、……、っく……、」

胸に熱い感触がある。……泣くこと無いと思うんだけど。
それに、少し目が覚めてきた。
二度寝したら起きられるか分からないし、クロをなだめて起きてしまおうか?
変に寝直すよりは体も回復するかもしれないし。


↓1

1【寝る】
2【起きる】

217以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:25:33 ID:RMVXwPlg
2

218以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:35:43 ID:dSa8PcWY

2【起きる】


「クロ……せっかく早く起きられたし、クロは寝かせといてあげるから一旦離して」
「……っ、――……――」
「え、何?」
「〜〜〜ッ」

顔がガバッと上げられる。
白く美しい肌の、目元だけを真っ赤に腫らして。

「ごしゅじんのばか」
「どうせ仕事する気でしょ」
「ばか……」



「…」

頭をガン、と殴られたような気がした。
変な夢なんてどうでも良いくらい心に刺さった。
クロに拒絶された。
ごめん。
何かしたか? したんだよな。ごめん。

クロの涙がパジャマに染みてて、胸が冷たい。
しばらく、布団の中で呆然と動けないままだった。

219以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:40:40 ID:dSa8PcWY



トイレに行く。腹痛は治っていた。
腰が痛い。
寒い。だるい。
なんとなく吐きそうな感じがする。
会社に行きたくない。


4:30

X【触れ合い】
2【食事】
3【仕事】
4【入浴】
X【家事】
X【外出】
7【息抜き】
X【】
X【出社】

↓1

220以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:45:02 ID:6SjTDbas
7

221以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:52:34 ID:dSa8PcWY

7【息抜き】




TVを点ける。
真っ暗な部屋の壁にチラチラした薄明かりがついた。








4:30 → 4:45

X【触れ合い】
2【食事】
3【仕事】
4【入浴】
X【家事】
X【外出】
7【息抜き】
X【】
9【出社】

↓1

222以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/01(日) 22:54:46 ID:RMVXwPlg
2

223以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/03(火) 11:36:37 ID:AN6Bv8Z6

2【食事】


「……」

キャベツと玉ねぎを炒める。

昨日の朝から何も食べてなかった事を思い出した。
油の香りを感じると、突き抜けていた空腹感が蘇ってくる。
身体は現金なものだ。
よしウインナー投下。

チーン!

レンチンご飯が炊けた……今ある分はこれで最後だな。





「ご主人、おはようっ」
「クロ」

Day 5
Wed


あのあと突っ伏していたクロが起きてきていた。
……自分としては気まずい。

224以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/03(火) 11:58:19 ID:AN6Bv8Z6

「ご主人、作りながらで大丈夫だから聞いて」
「……。どうしたの?」
「ご主人、今のお仕事してるところで、イヤな気持ちを向けられてるみたいなの」

イヤな気持ちか……心当たりは…………複数。

「ご主人が弱ってると、そういう悪いのが夢に出て、ご主人を休ませてくれないみたい」


「でも、私が一緒に眠れるなら……うん。 ――――絶対、大丈夫だよ。ご主人がどんなに弱っててもきっと護るから」
「クロ――」

「もしも怖い夢見て、起きちゃったら……私を頼って欲しいな。少しの間だけでも、一緒に寝よ」



「だから……その…… さっきは酷いこと言って、ごめんね?」

……ごめんだなんて、とんでもない。護りたい相手に頼られなくては、やりきれなくもなる。
クロの好意も厚意も、自分は無下にしていた。
自分は、クロに……

↓1

1【礼を言う】
2【抱き付く】
3【謝る】

225以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/03(火) 12:05:27 ID:GTZD2CDY
2

226以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 12:48:14 ID:EtkRX6V6

2【抱き付く】


気が付けば、菜箸を放り投げ、その小さな体躯余すところなく抱き付いていた。


「……」
「えへへへ……うん。いいよ」


腕を深く回し、クロの肩を締め付け、子供のように。
言葉が出てこない。

「自分は、……」
「ごしゅじん。だいじょうぶだよ」
「……」
「だいじょうぶ」

自分という布人形を押し洗いするみたいに。
胸の奥底にある、辛苦や恐怖からなる染みを……押し潰すみたいにして、ふわふわの優しさの塊に吸ってもらえるように。

みっともなくて、情けなくて……それを、受け入れてくれる存在が居て。
押し潰した胸から滲んだ滴が、目頭からこぼれていた。


【習慣:依存Ⅰを獲得】

227以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 21:47:19 ID:EtkRX6V6

……

「いただきます」
「いただきます」

少し焦げた炒め物と、半分のご飯と、野菜ジュースと、幸せそうな笑顔。

「……うーん。香ばしい」
「ちょっとだけね」


ふさぎ込みそうな心がほどかれて、言葉少なく、自然に振る舞える。
ありふれて優れたところのない食物を、穏やかに無心で口に運び、味わう。


「ごちそうさま! 運んじゃうね」
「ごちそうさま。……ありがとう、クロ」


恥ずかしくて言えなかったけれど……実はそんなものが美味しかった。

228以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 21:51:36 ID:EtkRX6V6

……

しかし、こっちはダメだなこれ。
頭は痛いし腰も痛い。飯を食べて吐き気は治ったが、身体が全体的に重い。
せっかく気分はすっきりしたというのに、困ったものだ。


4:45 → 5:30

1【触れ合い】
X【食事】
3【仕事】
4【入浴】
5【家事】
X【外出】
7【息抜き】
X【】
9【出社】

↓1

229以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 21:57:10 ID:8mLSBmNc
7

230以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 23:07:50 ID:EtkRX6V6

7【息抜き】


スーツに着替え、ソファーに腰を降ろす。
つい、掌で腰を押すように伸ばしていた。

「ご主人、腰痛いの?」
「ああ……」

のけぞるようにぐいぐいと伸ばす。

「私がやろっか?」

時間も充分にある。快く了承し、フローリングに寝そべった。

……

「ど、どうかなっ、ご主人っ」
「うーん」

正直に言ってしまえば、クロは見た目通り非力であった。
本職のようなマッサージは望むべくもないが、小さな手が背中をおずおずと押し揉んでくれるのも……まあ。
……残念ながら痛みは取れそうに無い。

「それなら、手首を後ろに引いてみてくれる?」
「う、うん」
「そうそう、両方の手首を後ろに……」

231以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/11(水) 23:47:40 ID:EtkRX6V6

「――えいっ」

ゴキィ。

「あ」
「……ぁ」

体重をかけて手首を後ろに引かれた瞬間……肩と背骨と腰と首となんか繋がってるところが全部イった。
痩身とはいえ、女の重みを持ったそれなりの衝撃が意識をぶっ飛ばした。

……


「ごめんねっ、ごめんねご主人っ!!」
「うん……」

幸いにも……大事はなさそうだ。
クロに【相応の運動能力】があれば、人並みのマッサージを頼めるかもしれない……


とりあえず落ち着いた。歯を磨いて支度しよう。
それとも、1本目の電車を逃してやることが何かあっただろうか?

↓1

1【ない。行こう】
2【そういえば……】

232以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/12(木) 00:07:19 ID:i./UrMHM
1

233以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:13:56 ID:ErvNKOWs

1【ない。行こう】


「よし……それじゃ、出てくる」


褪せた革鞄を拾い上げ、しわくちゃのコートを羽織る。

「ご主人っ」

艶やかな黒髪をはためかせ、真っ白なパジャマが駆けてくる。

「クロ」

惜しむように抱き締める。

「えへへ。大好きだよ」
「……。いってきます」



「いってらっしゃい!」

234以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:18:52 ID:ErvNKOWs

……
…………
………………

電車に揺られる。

いつものシャツ、いつものコート、いつものカバン。
やつれた男たちに溶け込んで、騒がしい箱に押し込まれる。

始業前に進める仕事をぼんやり思い浮かべながら、町を離れてゆく……




……

「定例会に向けたクレームの資料は……少し掛かりそうだな」

「……性に合わない。終わらせよう」

「っと、始業か……こんなもんかな」

235以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:42:30 ID:ErvNKOWs

一日が始まる……


「打ち合わせは……11時か」
「メールメール……あ、昨日のお礼」
『これ組図通りだと現合で合わないんだけどさ、見てくんね?』
「えーと……あった。いやいやいや、出図は△△さんですし、検図の▽▽さんじゃ駄目なんですか?」
『またまた、とか言ってどうせやってくれるんでしょ?』
「……。頼むだけ頼んで違うところ行くし。PHS置きっぱなしって、報告される気無いでしょ……」
「あ、やべ、打ち合わせっ! ……っ、……っ、は、すいません、遅くなりました」
『ちょっとー、やりっぱなしは無いんじゃないの? 流石に。責任持って最後までやるのが技術でしょ?』
「ごめんなさい、私も打ち合わせで……」
『そういうのは普通さぁ、行く前に連絡するでしょ? 社会人として常識でしょ?』

キーンコーン……

『あー、待った待った切らないで。それとは別に図面訂正して欲しいのあるからさ、注釈入れといたの現場の机に置いとくから。よろしくね』
「……。…………眠い。食う気にならないし、寝るか」

キーンコーン……

「っ。ねむ……」
「――この組図改善前のじゃん! 合わないわけだよ」
「というわけで、これは管理部にお願いします。ですから、おねがいしますっ!」
「……はぁ。頭働かない」
「机片付けるか……開発の進捗報告もまとめないとな……」
「…………。ねむい」

キーンコーン……

236以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:48:28 ID:ErvNKOWs

(ふー……小休止しないと……)

「……図訂めんどくさい」
「これの留めネジ図面指示ないのか……あの人は何をやってんだ……」
「腹へった。カロリー棒」
「ねむ、っ……トイレトイレ」
「……」
「出来たけど……▽▽さん午後不在か。また明日、検図頼むか」
「…………駄目だ。もう頭働かない」

……パタン。

「……お先です」


ガタンゴトン……

237以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:57:05 ID:ErvNKOWs

「……」

ガチャッ。


「あ、おかえり。ご主人」

トテトテトテ……

「お疲れさま。カバンちょうだい?」
「ただいま……クロ。ありがとうね」

幾分慣れた様子で、クロが出迎えてくれる。
半開きの視界に、にゅっと黒い頭が入ってきた。

「……。……」
「ご主人、眠い?」
「うん」
「少しだけ休む?」
「……うん」

238以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 22:59:50 ID:ErvNKOWs

「っ。」
「……起きた? すっきりできた?」
「水……」

22:00 → 22:30

1【触れ合い】
2【食事】
X【仕事】
4【入浴】
X【家事】
6【外出】
7【息抜き】
X【】
9【就寝】

↓1

239以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/19(木) 23:00:45 ID:ppygL67E
2

240以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/20(金) 01:48:04 ID:MeTTDvoo

2【食事】

米を炊いておらず、レトルトご飯も無い。
仕方なく袋麺を開ける。

弾ける湯だまりに2人前の麺と、カット野菜が投げ入れられた。

……

「いただきます」
「いただきます!」

流石に出来上がるのは早い。
用意された塩気の香りが、まさしくインスタントな欲求を満たす。

「また買い物行かなきゃな……」
「ふーっ、ふーっ、」

もう2回もこれを食べたら、まともな夕食は家に残っていない事になる。
そんな事を悶々と考える横で、猫舌の同居人は滑る麺の熱さに悪戦苦闘しているのだった。

241以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/20(金) 07:47:24 ID:MeTTDvoo

……

「ごちそうさま」
「えへへ、ごちそうさま! 運んじゃうね!」

片方に汁を移されたお椀が重ねて運ばれていった。
そのまま洗い物に勤しむクロの背中を眺める。


22:30 → 22:30

1【触れ合い】
2【食事】
X【仕事】
4【入浴】
X【家事】
6【外出】
7【息抜き】
X【】
9【就寝】

↓1

242ねぼけてました。時よ止まれッ:2020/03/20(金) 08:11:44 ID:MeTTDvoo

22:30 → 23:00

1【触れ合い】
2【食事】
X【仕事】
4【入浴】
X【家事】
6【外出】
7【息抜き】
X【】
9【就寝】

↓1

243以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/20(金) 08:29:05 ID:Ew2nhkCY
1

244以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/22(日) 02:38:50 ID:TzBggWEk

1【触れ合い】


「クロ、おいで」
「はぁい、ご主人」

ソファから手招きすると、クロは猫であった時のように飛び乗り、頭を腿へ預けてくる。
昔からずっと変わらない、するりと抜ける美しい毛並みへ指を通す気持ち良さ。
無機質で安普請な昼光色の下でも、清水を湛えたような輝き。

「んふふ……」

何度も何度も、飽くことなく濡羽を梳く。


「……むかーしね」

撫でる手に促されるように、クロはぽつぽつとこぼし始める。

「ご主人が、私を連れてきてすぐのころね。私、自分が黒色なの、好きじゃなかったんだ」

「黒いせいで子供の悪戯に遭うし、ご主人のお母さんも、黒猫なんてやめておきなさいよって言うし。黒い色は悪い色なんだって思ってた」
「その時のこと、おぼえてる?」

自分は記憶を辿り……首を横に振った。

245以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/22(日) 02:59:26 ID:TzBggWEk

「その時ね、ご主人なんて言ったと思う?」

嬉しそうに喉を鳴らす同居人の上で……やっぱり覚えていない。


「どうしてウチのクルマも黒いのに、このテレビも黒いのに、おばあちゃんが大事にしてるタンスも黒いのに、この子はダメなの、って」
「その当時、私には人の言葉の意味は分からなかったよ? でもね」

「 黒は綺麗だよ って」

「そう言って、怯える背中を撫でてくれたの。言葉は分からないけど、私を肯定してくれたの」

クロがうっとりした様子で、自分の腰に腕を回す。

「……えへへへへ。私、その時、オチちゃったなぁ。」

「その時から、ご主人が呼んでくれる『クロ』って言葉が……ご主人だけが呼んでくれる時は特別で、大好きになった」
「私を見つめて、まっすぐ認めてくれるみたいで。」
「毎日、綺麗なクロになれますように、って願った」
「黒も、そのうち好きになれた」

「今も……えへへへ。」

手に取ったその黒髪に、不快でない……とても大切な重さを感じた。

246以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/22(日) 03:16:53 ID:TzBggWEk

「これからも、クロを、大事にしてね?」
「ああ……大事にするよ」

「……あう」

流石に恥ずかしかったのかもしれない。
クロは回した腕をぎゅうっと強め、自分の身体に顔をうずめる。

ぐりぐりと眼前のものへ額をこすり付けて……って、ちょっと。

「クロ、そこは」
「んぅ……んん?」





「……あはぁ。いいにおい」


直感的に、『スイッチ』を入れてしまったことを察した。

247以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/22(日) 03:17:03 ID:yX8bN4A2

「これからも、クロを、大事にしてね?」
「ああ……大事にするよ」

「……あう」

流石に恥ずかしかったのかもしれない。
クロは回した腕をぎゅうっと強め、自分の身体に顔をうずめる。

ぐりぐりと眼前のものへ額をこすり付けて……って、ちょっと。

「クロ、そこは」
「んぅ……んん?」





「……あはぁ。いいにおい」


直感的に、『スイッチ』を入れてしまったことを察した。

248まちがえました:2020/03/22(日) 03:28:27 ID:yX8bN4A2

上げた顔はにんまりと。
頬は赤らんでいる。

まるで獲物になったような感覚に強張って……その一方で期待が心臓を打つ。
心臓に押し流された血流はぴくん、と。
一拍だけ。
それでも、顔を押し付ける彼女が感じ取るに充分な、かすかな反応を示してしまった。

「……んふふ。」
「クロ、っ」
「なんですかぁ……?」

記録として、昨日のことは覚えている。
記憶として思い出してしまえば……クロの眼前で形になるくらい、膨れ上がってしまうだろう。


「ご主人」
「う……」
「――いいの?」


この柔らかくて美しくて愛しい少女に、自分は。


↓1

1【ああもうお前ってやつはもう】
2【おねがいします】
3【だめです】

249以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/22(日) 03:45:18 ID:M9BntW3.
1

250以下、名無しが深夜にお送りします:2020/03/24(火) 02:37:49 ID:1f5lduJ2

1【ああもうお前ってやつはもう】


いいの、とは。
私からシても……いいの? だなんて。

クロは確かに前から綺麗だったが、その他にも仕草や振る舞いだって可愛いし、一途なところも優しいところも魅力的だし。
近日に至っては、よりストレートに想いを伝えてくる上、女の魅力まで纏うようになって。

……惚れない方が難しいってものだ。
これでされるがままなんて、まるで自分はクロに夢中じゃないみたいじゃないか。

「クロ」

頭を撫でていた掌に力がこもる。
やり方なんて浮かんで来ないけど、長らく眠っていた自発的な意思が沸いてくる。



愛してくれて、嬉しくて。
なら自分からも愛したい。

「……しよう」
「!」

その意思を相手に示すこと。
小さい一歩で、確かな前進だった。

251某ロナで仕事が減ったぜ! おせーよ:2020/04/06(月) 20:32:17 ID:RTDnGeRI

言い切った自分は、もうこの高揚を隠さないでいい。
腰に重なる温かさと柔らかさから、存在を感じる。

愛でたい。
愛したい。


触れて、撫でて、抱きしめて。
心も身体も幸せにしたい。
自分を信じて、クロを信じて、思うままに。



ふたりで、はだかになりたい。



「クロ」

想いを込めて、肩に触れる。
置いた自身の掌から、どことなく熱を感じる。

もう片方の掌で、大好きな黒髪を撫でつける。
情愛を込めて、たっぷりと、優しく。




……

252以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/06(月) 20:55:16 ID:fTEh67sc
まってたぜ!
クリロナサンキュー!

253以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/06(月) 21:15:48 ID:RTDnGeRI

時間をかけて、彼女の形をなぞる。
感情を解き放つように、熱を加えていく。


……ふつふつと。
少しずつ、物足りなくなっていく。


頭から、わき腹へ。
腰から、太ももへ。

熱以外のものを加えたくなって、指先でなぞる。


「……」
「……」


同時に、目が合う。
確認、同意。





「クロ、っ」
「ごしゅ、じん……!」

……パジャマの中は、嘘みたいに熱かった。

254以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/06(月) 22:25:52 ID:RTDnGeRI

「――」

ぐぐっと視野が狭くなって、背中まで一気に手を回して、抱きしめる。
頭が、耳が熱い。

「ク、ロっ!」
「きゃっ! う」

腕を差し込んだ勢いのまま……自分じゃ信じられないくらいの勢いで上のパジャマを脱がせた。
黒髪がばさっと舞う。
まどろっこしくて、自分もワイシャツと肌着を脱ぎ捨てた。
服が首を通る時、クロに触れられなくて、見つめられなくて、寂しい。


服を放り投げ、少女を抱きしめる。
色気も何もなく、胸と胸を突き合わせるようにして。


けれども、強く滾る愛情を、両の腕に込めて。

255以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/07(火) 02:03:31 ID:.fdMWcRI

大好きな少女
大好きな存在
大好きなクロ。

愛しい
それを、伝えたい
俺だって、クロが、好きなんだって



「ごしゅ、じん」
「……ん?」
「ご主人のきもち、つたわってるよ……」


見れば、自分の腕が震えている。
らしくなかった……かも。

誰よりも自分のことを案じてくれてたんだ。知らないわけがない。
誰に張り合う必要だってない。
きっと、乱暴に気持ちをぶつけたら、後悔する男だって事も知ってる。

「……ありがとう」
「うん」
「キスしよう」
「ん」

256以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/09(木) 17:34:52 ID:SDwLYJIk

「……」
「んふ」

胸の高さにある、クロのもとへ顔を寄せる。
嬉しさを隠さない微笑みが迎えてくれた。

「んっ」

手も添えず、微かに震えた唇をそっと合わせた。
思うようにいかず、離れてしまう。


……自分から、もう一度。

「ん……」

クロが身体を委ねてくれる。
上手くいかなくても大丈夫だと教えてくれる。
寄り掛からせるようにして、折れないように上を向かせ、さっきより深く口を付ける。

しっとりと吸い付いた、上と下の唇が微かに開き……温かく柔らかく、ぬめった舌がつんつん、と。
自分も……舌を出す。

257以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/10(金) 03:29:55 ID:ogGsZFks

「ん……っ」
「ふふ……」

前にクロからしてもらった時とは比べるまでもなく、稚拙で緩慢で臆病な口づけ。
キスって想像以上に難しい。

「!」

舌の先が胡麻ほどに触れて……驚いてまた少し戻る。
クロは腕の中で力を抜き、ゆるやかに自分を待っている。


……自分から、もう一度。

触れ合った舌を臆せずに動かすと、ぬるりとした感触が遅れてやってくる。
心地良くてもう一度。気持ち良くてもう一度。
次第に深く、強く、大きく。
舌をより前に出し、左右にこすって味わって。

「ん……ふ、っ、く」
「ふ、にゅ……んん……」

キスは難しいけど、ディープキスへ進むのは自然と出来るものみたいだ。

258以下、名無しが深夜にお送りします:2020/04/10(金) 03:56:06 ID:ogGsZFks

「ん……っ!」
「う、にゅ……!」

唇の距離はゼロの先へ。
自分の舌がクロの口内へ侵入するのと同時に、クロの舌が自分の歯茎をなぞり上げていた。
互いの味で満ちた粘膜が、ひとつの空間で繋がる。


あ やっと、こないだと同じに。
あとはもう考えなくてもいいし、考えられない。

……愛する少女と口で交わる幸せ。
ひとつずつ先に進んで、初めて解る、唇の深い悦楽。
今夜は犯されることなく、流されることなく、自分の意思で、溺れる。



「ん……」
「……。んん」

口の中が熱くて、半裸のふたりは身震いする。
意図を察してくれたクロが、口づけを続けたまま引き寄せる。
腰を支え 覆い被さり 膝を付き 押し 前へ 背中を支え 肘を付き

深いキスをやめないままクロを布団に押し倒す。
これからセックスをすると告げたような体勢で、更に唇を擦り合わせた。

259以下、名無しが深夜にお送りします:2020/05/30(土) 02:14:27 ID:bpm.SGNs
待つ

260以下、名無しが深夜にお送りします:2020/07/21(火) 14:51:42 ID:j63K3plg
待ってる


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