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花丸「太ったおら」

1 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:37:13 ID:aDe97des
国木田花丸は食べることが好きだった。
静岡県で販売されてる長いパンも、親友のルビィが作ってくれるお菓子も、日々のご飯も。
いつも腹ぺこではなく、美味しいものを食べると気持ちが嬉しくなり幸せになれるから。
みんなとの日常が幸せじゃない、ということではなくまた違う意味での幸せ。

「花丸は美味しそうに食べるわね」

祖母の手料理を美味しく食べてる時、いつも喜んでくれたのを今でも覚えてる。
その時は分からなかったけど、自分の料理を美味しく食べてもらえることは幸福らしい。
だからこそ花丸は食べることが好きだった。

しかし、

学校の帰り道、国木田花丸はどうしても欲しかった本のために沼津までバスで揺られた。
親友の黒澤ルビィと時々訪れるその本屋は花丸にとって心が落ち着く場所であり、独特な香りを楽しみながらお目当ての棚へ足を向ければ。

2 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:38:13 ID:aDe97des
「ねぇねぇ。Aqoursってさ、みんなスタイルいいよね」

「うん。同じ女子高生だと思ってたけど維持凄いよね」

Aqours、という単語に足が止まってしまう。
花丸も今年ルビィ、そして千歌達に誘われてスクールアイドルを始めたから。

「でもさ、1人だけなんか違うよね」

「わかる。あの地味な子だよね」

地味な子、心臓が掴まれたような気分になり立ち去りたいのに動けない。

「ずらとか言っちゃうし、なにより──太ってるよね」

「ずっと食べてるって聞いてるよ?他のメンバーは知らないけど、あんなのでもスクールアイドルやれるの凄くない?メンバーに迷惑だよね?」

「てかさ、東京のライブで上手くいかなかったのって絶対あのデブのせいだよね?」

気がついた時には欲しかった本も買わず、バス停へ走っていた。

3 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:40:22 ID:aDe97des
♢

千歌「疲れたよぉ!」

本番が近いのもあってか放課後の練習はいつもより大変で、部室に戻ってきた時には疲労故にテーブルへ突っ伏す千歌にダイヤが呆れる。

ダイヤ「全く、練習がハードだったのも分かりますが、バスの時間もありますから早く帰りますわよ」

千歌「分かってるよ〜.......」

渋々制服へ着替え、他のメンバーも汗を拭き制汗剤を使用してから下校の準備をしていく。夕日が差し込む部室には次第に和気あいあいとした活気が戻り、まだ時間あるからと鞠莉が鞄から袋を取り出す。

鞠莉「じゃじゃーん!頑張った皆にはマリーからのご褒美デース!」

ルビィ「わぁぁぁ!マカロン可愛い!」

テーブルの上に広げられた宝石のように彩り鮮やかなマカロンは、空腹と疲労状態な千歌達の食欲を刺激するには充分だった。

ダイヤ「鞠莉さん!バスの時間もありますのよ?」

鞠莉「もうダイヤは固いんだから。疲れた身体には甘いものがベストマッチよ!それにほら」

ダイヤが止める前よりも早く千歌達は各々手を伸ばし糖分を補給する。
「仕方ありませんわね」と、ダイヤはため息を吐いてルビィの隣に腰掛け抹茶味のマカロンへ。
咎める人はいないとなれば、自然と練習後の疲れは消えたように楽しく会話に花が咲く。
しかし、

4 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:45:52 ID:aDe97des
千歌「あれ?花丸ちゃんどうしたの?」

花丸「え?」

千歌「いや、ほら。いつもなら美味しそうに食べてるから」

花丸だけが全く手を伸ばさず、周囲の会話に相槌を打ってるだけだった。

花丸「あ、あぁ〜.......ちょっと疲れすぎちゃったみたいで。大丈夫だから心配ご無用だよ」

そうマカロンを口へ運ぶ花丸だけれど、1口がほんの少し重いのか飲み込むまで時間がかかった。

ルビィ「花丸ちゃん.......」

善子「.......」

5 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:50:31 ID:aDe97des
だから部室から出る前、花丸を捕まえて善子は捕まえた。

善子「あんた一体どうしたのよ」

花丸「なにが?」

善子「なにがってあんた.......」

「嘘だよ」と舌を覗かせて悪戯っぽく笑う花丸。
分かってるのだろう、善子が何を言いたいのか。

花丸「部室でのことだよね。あまり心配しなくて大丈夫だから」

善子「本当に大丈夫なの?」

花丸「もう堕天使は優しいな〜」

善子「ちょ、私は本気で心配してっ!」

花丸「ほら皆待ってるよ!」

まるで誤魔化されてるようで、善子は僅かなイラつきを覚えてしまう。見え見えなのに、誤魔化せていると思ってるの?と。
だから、

善子「だったらこれだけ答えて。無理、してないでしょうね?」

6 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:54:38 ID:aDe97des
なにか抱えてるなら素直に話してほしい。
その願いを込めての質問なのに花丸は背中越しに優しく、温かい声音で返す。

花丸「無理はしてないよ。今日は本当に疲れてたから」

こちらは見ない。

善子「あんたは嘘が昔から下手くそなんだから。疲れてる時こそよく食べてるじゃない」

花丸「お見通しなんだね」

隠し事があるのは確かなのに誤魔化されてしまうもどかしさに、善子はついにイラつきを我慢できなくなる。

善子「いい加減にして。ルビィだって心配してるわよ」

花丸「.......うん。そうだね。ごめんね」

寂しそうに微笑む花丸に「そうじゃない」と言葉が飛び出そうになり、遅い善子と花丸が気になったのか、呼びに来たルビィの声すらどこか遠く感じた。

7 ◆XksB4AwhxU:2019/08/20(火) 22:55:44 ID:aDe97des
♢♢♢

善子「Aqoursの動画また伸びてるわね」

通学のバス内。
沼津から内浦までは距離があり、沼津組である善子と曜は毎朝肩を並べて座席に座っている。

曜「わぁほんとだ。花火大会のライブ大成功だね」

善子「そうでないと困るわ」

曜「はは。にしてもこの時の花火すごく綺麗だね」

善子「ええ、ほんとにね」

揺れるバスの中、朝はまだ眠たくて気を抜けば瞼を閉じそうだけど曜と眺めるライブの映像は、どうしても熱くなるものがある。
だからか、小さな身体で元気よく踊る花丸をつい見てしまう。


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